JP2001272396A - 男性の不妊症の検出方法 - Google Patents

男性の不妊症の検出方法

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JP2001272396A
JP2001272396A JP2000082728A JP2000082728A JP2001272396A JP 2001272396 A JP2001272396 A JP 2001272396A JP 2000082728 A JP2000082728 A JP 2000082728A JP 2000082728 A JP2000082728 A JP 2000082728A JP 2001272396 A JP2001272396 A JP 2001272396A
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sperm
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testis
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Makiko Kamata
真喜子 鎌田
Takekuni Ko
建国 胡
Hachiro Nakagawa
八郎 中川
Hiroaki Shibahara
浩章 柴原
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Abstract

(57)【要約】 【目的】精子の運動性を含めた、「精子の質」を簡便に
評価し得る男性不妊症の検出手段を見出し、不妊治療の
選択を含めた、その後の対処方法を的確に判断する途を
提供すること。 【解決手段】精子における精巣型アンギオテンシン変換
酵素の活性の上昇を、精子の生殖能力の低下と関連付け
て男性の不妊症を検出する、不妊症の検出方法、および
この検出方法に関連する検出・測定用のキットを提供す
ることにより、上記の課題を解決し得ることを見出し
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、疾病の検出方法に
関する技術分野の発明である。より具体的には、本発明
は、男性の不妊症の検出方法に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】不妊症とは、結婚後の避妊期間を除い
て、2年以上経過しても生児を得られない状態をいう。
不妊の原因は、様々であり、男性、女性のいずれに原因
があるかで、「男性不妊」と「女性不妊」に大別され
る。そして、その比率は2:3程度で、やや女性不妊の
方が多いといわれている。
【0003】しかしながら、近年、男性不妊の増加が報
告されている。原因では、内分泌攪乱物質や社会的なス
トレスの増加など、様々な原因が推測されているが、確
実なところは定かではない。特に、若年層における精子
数の減少や精子の異常などが報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特に、この
近年増加しているといわれている男性不妊の検出手段を
提供することを課題とする。
【0005】すなわち、男性不妊に対しては、実際に被
験者の精液を検査する精液検査、具体的には、通常、精
子数と精子の運動性の検査がおこなわれ、その結果に応
じて、様々な不妊の解決方法が選択される。
【0006】この精子の運動性の検査は、実際に顕微鏡
下で、精子の運動性を目視で評価する方法であるが、経
験を要する検査であり、検査施設間によって評価が異な
ることも少なくなく、必ずしも簡便な評価方法とはいい
がたい面がある。また、精子の受精能力は、精子の数と
運動性だけに左右されるのではなく、他の要素、例え
ば、受精能、先体反応、卵の透明体を通過する能力など
によっても左右される。よって、精子に内在する受精能
力に関連する要素について判断することは、男性不妊の
検出をする上において、非常に有用である。
【0007】本発明が解決すべき課題は、精子の運動性
を含めた、「精子の質」を簡便に評価し得る男性不妊症
の検出手段を見出し、不妊治療の選択を含めた、その後
の対処方法を的確に判断する途を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、精巣にもそ
の存在が確認されている、アンギオテンシン変換酵素
(以下、ACEともいう)に着目して、この酵素が男性
不妊症を検出するうえでの指標となるのではないかと考
え、検討を行った。その結果、ACEのうち、精巣型A
CEが、男性不妊の指標となり得ること、しかも、従来
の一般的な技術常識に反して、男性不妊では、精巣型A
CEが明らかに増加することを見出し、本発明を完成し
た。
【0009】すなわち、本発明者は、本願において、精
子における精巣型アンギオテンシン変換酵素の活性の上
昇を、精子の生殖能力の低下と関連付けて男性の不妊症
を検出する、不妊症の検出方法(以下、本発明検出方法
ともいう)を提供する。
【0010】ACEは、主に血管内皮細胞の膜酵素とし
て存在し、アンギオテンシンIを加水分解して、活性型
のアンギオテンシンIIに変換する酵素である。アンギオ
テンシンIIには、血管収縮作用とアルドステロン分泌促
進作用が認められており、昇圧物質として知られてい
る。また、ACEには、内皮型と精巣型の2つのアイソ
ザイムが認められている。そのうち、内皮型ACEは、
血圧の維持に関係しているものと考えられている。
【0011】1998年に、精巣型ACEが、生殖に関
与している旨が報告された〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,
95:2552-2557(1998)〕。すなわち、内皮型ACEと精巣
型ACEのノックアウトマウス(stst)と内皮型ACEの
ノックアウトマウス(sTsT)をそれぞれ作出して、ststの
出産率と、野生型STSTおよびsTsTの出産率を比較する
と、ststの出生率が有意に低いことが報告されている。
また、ststの精子は、卵管をほとんど通過できなかった
ことも報告されている。
【0012】これらのことから、精巣型ACEを測るこ
とによって、精子の雌性生殖路内での受精能が評価でき
ること、具体的には、精巣型ACEの存在量の減少が、
男性不妊に対して促進的に働くことが想定され得る。
【0013】しかしながら、本発明者は、上記の想定と
は逆に、精子における精巣型ACEの増加が、驚くべき
ことに、男性不妊症の指標になり得ることを臨床的に見
出して、本発明に想到するに至ったのである。
【0014】なお、後述する実施例において示すよう
に、本発明者は、精巣型ACEと内皮型ACEに対する
抗体を用いて、精子中に存在するACEが精巣型である
ことを、直接的に示しているが、これは、本願におい
て、新規に明らかにされた事項である。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。本発明検出方法における男性不妊症の検出の指標
となり得る精巣型ACEの酵素活性は、精子に存在する
精巣型ACEの酵素活性である。よって、精液中の精漿
に存在するACEは、検出の対象から除外されて、精子
中の精巣型ACEの酵素活性のみが、本発明における定
量の対象となる。
【0016】かかる精子中の精巣型ACE活性を精度良
く定量するには、精子における精巣型ACEを、可能な
限りばらつきなく、かつ、効率よく分離する手段を講ず
ることが好ましい。
【0017】具体的には、例えば、精子中の精巣型AC
Eを、精子膜に付着して存在する精巣型ACEと、
精子内部全体に存在する精巣型ACEに分けて、別々に
定量することが好ましい。
【0018】精子膜に付着して存在する精巣型ACE
の分離は、比較的容易である。すなわち、精液から、遠
心分離などの手段で精漿を除いて得た精子を洗浄するこ
とにより行うことができる。この洗浄工程は、後述する
ように1回でほぼ十分である。また、精子内部に存在
する精巣型ACEの分離は、精子膜を破壊し、その内容
物における精巣型ACEを定量することにより行うこと
ができる。精子膜の破壊は、一般的な動物細胞の破壊手
段、例えば、界面活性剤による細胞膜の破壊、超音波処
理による細胞膜の破壊、トリプシンなどのプロテアーゼ
によるタンパク質部分の分解などを挙げることができ
る。これらの中で、界面活性剤は、精巣型ACEが局在
する細胞膜のみを特異的に破壊して、タンパク質を変性
させる能力が比較的緩徐であり、本発明における細胞膜
の破壊手段として好適である。特に、TritonX 100 など
のアルキル・フェノール縮合型の陰イオン性界面活性剤
は、好適な界面活性剤として例示することができる〔Bi
ochem.J.(1987)247:85〜93〕。
【0019】このようにして、精子から分離される精巣
型ACEは、公知の方法で定量することが可能である。
かかる定量法としては、比色定量法、エンザイムイムノ
アッセイ法、ラジオイムノアッセイ法、フルオロメトリ
ーによる解析、ウエスタンブロット法などを挙げること
ができる。これらの定量法の中でも、ACEの特性に基
づく特異的な比色定量法を選択することが、抗体を用い
ることなしに、簡便かつ鋭敏に精巣型ACEを定量する
ことが可能であり、好ましい。このような比色定量法と
しては、例えば、クッシュマン(Cushman )変法を挙げ
ることができる。
【0020】クッシュマン変法〔Clin Chem.1981;27(1
1):1922〜1925〕は、基質としてp-ヒドロキシベンゾイ
ル- グリシル-L- ヒスチジル-L- ロイシンに、ACEを
作用させ、最終的に生じるキノンイミン色素を、505
nmで比色定量する方法である。このクッシュマン変法に
おける反応形式は、概ね、以下の反応式に従う。
【0021】
【化1】
【0022】上述したような手段で、精子における精巣
型ACEの酵素活性を定量することができる。本発明検
出方法においては、精子における精巣型ACEの酵素活
性の上昇を、精子の生殖能力の低下と関連付けて男性の
不妊症を検出することができる。
【0023】前述したように、ノックアウトマウスによ
る動物実験において、精巣型ACEが欠損したマウスに
おける出生率が低く、さらにこのようなマウスの精子は
卵管をほとんど通過できなかったことが既に報告されて
いる。このような知見からすると、精子における精巣型
ACEの酵素活性が低下すればするほど、精子の生殖能
力が低下するはずである。
【0024】しかしながら、本発明者は、このような予
想とは全く逆に、精子の運動性や精子数が低下すればす
るほど、精巣型ACE活性が上昇することを見出した。
このような現象を示す原因は、現在のところ定かではな
いが、精子における精巣型ACEの酵素活性の上昇を、
精子の生殖能力の低下と関連付けて男性の不妊症を検出
することができることが見出されたのである。
【0025】すなわち、検体である、精液中の精子にお
ける精巣型ACE活性を定量して、定常値よりも高い値
であれば、その検体提供者が、男性不妊症の要素を有し
ていることが示されることとなる。
【0026】本発明検出方法と検体提供者(男性)の履
歴を対照することにより、検体提供者が不妊症であるこ
とを検出することができる。また、他の男性不妊症の検
出方法、例えば、精子数や精子の運動性の評価と組合せ
て本発明検出方法を用いることで、さらに確度高く男性
不妊を検出することが可能である。
【0027】本願においては、本発明検出方法と同様の
工程により、精巣型ACEを測定するための測定用キッ
トおよび本発明検出方法そのものを行うための検出用キ
ットをも提供する(これらのキットを、本発明キットと
もいう)。
【0028】かかる本発明キットには、上述した本発明
検出方法と同様の工程により、精巣型ACEを測定する
ための要素、または、本発明検出方法を行うための要素
を含ませることができる。
【0029】本発明キットが、精巣型ACEの測定用キ
ットである場合には、精巣型ACEを検出する対象を処
理するための要素(洗浄液、希釈液、ACEの抽出液
等)、精巣型ACEを測定するための要素(ACEを検
出するための発色基質等)等を含ませることができる。
【0030】かかる測定用キットは、男性不妊を検出す
るための本発明検出方法を行うための検出用キットの基
礎として用いることができる。具体的には、上記の精巣
型ACEを測定するための要素に加えて、この精巣型A
CEの測定値を、男性不妊に関連付けるための要素を、
かかる検出法キットに含ませることができる。
【0031】具体的には、検体として採取した精液から
分離した精子を洗浄するための洗浄液、精子を所望の濃
度に希釈する希釈液、精子膜を破壊してACEを抽出す
るためのACE抽出液(界面活性剤等の精子膜を破壊す
るための薬剤等が含まれていてもよい)、精子中の精巣
型ACEを検出するためのACE検出用試験管(ACE
を検出するために用いる基質等が封入等されていてもよ
い)等を、上記の精巣型ACEの測定用キットと同様の
要素として例示することが可能である。また、これらの
要素により測定された精子中の精巣型ACEの測定値
を、男性不妊の有無や程度と関連付けるための相関表や
相関ソフトウエア等を、上述した関連付けの要素として
挙げることができる。また、かかる関連付けの要素とし
て、インターネット等の電子的な双方向の通信手段によ
り、精巣型ACEの測定者から提供される精巣型ACE
の測定値を、男性不妊の検出情報として返信して提供す
るシステム等を用いることも可能である。
【0032】キットの態様に応じて、これらの要素から
適宜選択して、本発明キットに含ませることができる。
これらのキットの要素を用いて、本発明検出方法等を行
い、精巣型ACEを測定し、さらに、男性の不妊症を検
出することができる。
【0033】なお、本発明キットにおいて用いるさらに
具体的な薬剤等は、本明細書中に、本発明検出方法にお
いて用いることが可能とするもの全てを選択することが
できる。
【0034】
【実施例】本発明を、実施例を用いてさらに具体的に説
明するが、この実施例により、本発明の技術的範囲が限
定して解釈されるものではない。 〔試験例1〕比色定量法を用いたACEの定量の信頼性
などに関する試験サンプル: 精液のサンプルは、男性ボランティアから得
た。これらのサンプルは、提供日または1週間以内に用
いられ、解析時までは4℃で冷蔵保存された。
【0035】精子の可溶化:精子は、20mLの保存精液
に対する15000×g 、20分間の遠心によって分離
された。HTF培地(Irvine Scientific)で洗浄した
後、精子のペレットを、20mLのバッファーA(20mM
Hepes,0.3M KCl,100μM ZnCl2
0.1% Triton X-100 )で可溶化した。この懸濁液
を、上清(Lisinoprilカラムクロマトフラフィーによっ
て精製された) を得るために遠心した。
【0036】LISINOPRIL−COUPLEDセ
ファロースの調製 この調製は、Hooperらの方法とEhlersらの方法を応用し
て行った。すなわち、エポキシ活性化セファロース6B(P
harmacia Biotech) を、0.1Nの水酸化ナトリウム中
のN-(4-Aminobenzoyl)- β-alanine(Adrich)で、16時
間室温で反応させた。エポキシ残基を、1Mグリシン
(pH10.0)でブロックし、修飾されたセファロー
スを精製水でよく洗浄し、ジオキサン(Wako) で仕上げ
た。セファロースは、N-Hydroxysuccinimide esterに活
性化され、0.3MのK2CO3 (pH11.0)水溶
液中のLisinopril(Sigma)(2.2mM)と、4℃で18時間反
応させた。反応性基は、1Mのグリシン(pH10.
0)でブロックした。その結果得られるLisinoprilセフ
ァロースは、使用前によく洗浄した。
【0037】Lisinoprilのカップリングは、カップリン
グ後のセファロース溶液におけるACE阻害の現象によ
りモニターされた。アフィニティゲルにおける共有結合
したLisinoprilの濃度は、0.5mmol/mL(ゲル) である
ことが判明した。
【0038】なお、Lisinoprilは、ACEの活性部位と
結合することによって、ACE活性を阻害する低分子
(MW405.5 )インヒビターであり、降圧剤としても用い
られ得る。
【0039】ACEの精製 精子の可溶化上清を、Lisinoprilセファロースカラムに
アプライした。バッファーB(20mM Hepes,0.3M
KCl,100μM ZnCl2 )で洗浄した後、カラ
ムに結合した酵素を50mMのホウ化ナトリウム(pH
9.50)で溶出し、ACE活性アッセイによりモニタ
ーした。ACEを含有するフラクションを保存し、酢酸
でpHを8.30、NaClの最終濃度を0.15Mに
再調整した。その後、ACEのフラクションを、MW3
000の膜による限外濾過によって濃縮した。精漿と精
子洗浄培地は、同様の手順で精製した。
【0040】精巣型ACEに対する特異抗体 ウサギ抗体は、ペプチド(NH2-QQVTVTHGTSSQATTSSQC-CO
OH)(Sawady Technology 製)に対するものを調製した。
このペプチドは、ヒト精巣型ACEのアミノ酸断片(3
3−50)(accession number P22966;SwissProt Datab
ase)に該当する。この合成ペプチドは、傘貝ヘモシアニ
ンに、C末のシステイン(Sawady社) のスルフィド基を
介して結合させた。ニュージーランド白ウサギに、フロ
インドの完全アジュバンドにおいて調製したエマルショ
ンを皮下注射した。その後、フロインドの不完全アジュ
バンドで、隔週で、免疫強化を行った。IgG 画分は、5
回の接種の1週間後に集められた抗血清から精製した
(4) 。特異的IgG 画分は、抗原性ペプチドを結合したイ
ムノアフィニティーカラムによって精製した。抗体の蛋
白量は、BCAプロテインアッセイキット(Pierce製)
を用いて定量した。
【0041】ウエスタンブロッティング SDS-PAGEを、7.5%ポリアクリルアミドのゲルで行っ
た。単離された蛋白は、電気泳動的にPVDF膜(Immob
ilon P;Millipore) 上に移動して、室温で1時間ブロッ
キングバッファー(1%スキムミルク含有PBS)と共
にインキュベートした。3回の洗浄後、この膜を一次抗
体〔マウス抗内皮型ACE(Chemicon)またはウサギ抗精
巣型ACE(自家製)〕と共にインキュベートして、さ
らに3回洗浄した。この膜を西洋ワサビペルオキシダー
ゼ結合抗マウスIgG(ヤギ;Tago Immunologicals) または
同抗ウサギIgG (ヤギ;Zymed)と共に、1時間室温でイ
ンキュベートした。洗浄後、結合した抗体をケミルミネ
センス(ECL;Amersham-Pharmacia)で発色した。
【0042】ACE活性のアッセイ ACEの酵素活性は、基質としてp-hydroxyhippuryl-L-
histidyl-L-leucineを用いたACEカラーキット(富士
レビオ)で定量した。ACE活性は、505nmの吸光度
で計測した。
【0043】分析方法 検量線 :精巣型ACEの検量線は、上述のLisinoprilア
フィニティークロマトグラフィーによって精子から精製
した精巣型ACEの2倍希釈物を用いて作成した(第1
図)。初期のACE活性は160mU/mL であった。希釈
にはPBSを用いた。
【0044】希釈カーブ:ヒト精液のサンプルは、HT
F培地で連続希釈した。精子を、上述したように洗浄し
て可溶化した。可溶化された上清におけるACE活性を
計測して、希釈カーブを作成した(第2図)。
【0045】保管用希釈:5検体に由来する様々な精子
濃度の精液のサンプルを、アッセイまで冷蔵保存した。
それぞれの検体の3サンプルを毎日アッセイした。それ
ぞれの検体の全平均ACE値は各日のACE値の総平均
から算出した。平均ACE値の全平均ACEに対する差
異は、偏差(%)として算出した。
【0046】精度:日内再現性は、検量線に含まれる3
濃度のACE活性について、5回ずつアッセイすること
により決定した。日差再現性は、8日間にわたって希釈
カーブに含まれる5濃度のACE活性について、3回ず
つアッセイすることにより決定した。
【0047】結果 精子中に現れるACEの型を決めるために、精子から抽
出したACEを精漿由来のACEと比較した。ヒト精液
を遠心し、上清の精漿を除去した。精子ペレットをHT
F培地で5回洗浄した後、Triton X-100で可溶化した。
ACEは、可溶化上清から、Lisinoprilセファロースに
よって抽出した。溶出画分を濃縮し、ACEのウエスタ
ンブロットを行った。第3図〔この図は、抗精巣型AC
E抗体(上図)と抗内皮型ACE抗体(下図)を用い
た、ACEに関するウエスタンブロッティングの結果を
表す写真像を示す図面である。内皮型ACEが精漿中に
存在し(レーン2)、精巣型ACEが精子に現れた(レ
ーン8)。レーン3〜7は、第一番目〜五番目の洗浄培
地についての結果を示している。また、レーン1は、内
皮型ACEの標品(100ng)で、レーン9は、精巣型
ACEの標品(400ng)である〕に示すように、精子
中に現れるACEは、精巣型ACEで、精漿中に現れる
ACEは、内皮型ACEであることが判明した。また、
内皮型ACEが、一番目の洗浄培地に認められたが、精
巣型ACEは、残りの洗浄培地には認められなかった。
【0048】また、PBS中に懸濁した洗浄済みの精子
中に、ACE活性が認められた。細胞が破壊された場合
に何が起こるかを知るために、培地で2回洗浄した精子
ペレットをTriton X-100で可溶化した。可溶化した精子
溶液は、2つの部分に分離された。一つの部分には超音
波処理を施し、他の部分には超音波処理は施さなかっ
た。11名の健常人の精液サンプルをテストした。第4
図(上方の棒が超音波処理前、下方の棒が同処理後の結
果を表している)に示すように、ACE活性は2つの部
分では差異は認められないことが分かった。
【0049】精巣型ACEの活性を計測するための検量
線を、上述したように作成した。第1図に示す検量線
は、活性が0〜40mU/mL およびO.D.(505nm)
が、0〜1.2の範囲では線型を示した(r2 =0.9
91)。後のアッセイでは、O.D.(505nm)が
1.2を超えるサンプルを、再度のアッセイのために希
釈した。次に、精巣型ACE活性の線型性における希釈
の作用を検討した。精子の濃度が2000×104 〜2
2000×104 /mL の濃度範囲では、第2図に示す希
釈カーブは線型を示した(r2 =0.996)。精子濃
度が2000×10 4/mL未満のサンプルもまた、精巣型
ACEの活性が0〜40mU/mL の範囲であり、正確にア
ッセイし得る。
【0050】ACE活性を損なわずにどの位長く精子を
冷蔵可能かを検討するために、5検体からの異なる精子
濃度のサンプルを一定量ずつ分注し、精液レベルで冷蔵
保存した。第5図に示すように、可溶化した精子を前述
のように調製し、ACE活性を毎日計測した。
【0051】日内再現性と日差再現性は、上述したよう
に決定した。日内再現性は、第1表−1に示すように、
1.38〜2.71%であった。日差再現性は、希釈範
囲7%未満で5種類の精子濃度において算出した(第1
表−2)。
【0052】 第 1 表−1(日内再現性) (n=5) ──────────────────────────────────── サンプル 精巣型ACE活性(mU/mL) CV(%) ──────────────────────────────────── High 100.1±1.38 1.38 Medium 52.71±1.427 2.71 Low 21.56±0.566 2.62 ────────────────────────────────────
【0053】 第 1 表−2(日差再現性) ──────────────────────────────────── サンプル 精巣型ACE活性(mU/mL) CV(%) ──────────────────────────────────── A 178.2±3.11 1.75 B 81.06±2.706 3.34 C 46.75±2.259 4.83 D 21.36±1.408 6.59 E 14.82±0.684 4.62 ──────────────────────────────────── (n=3/日:8日間)
【0054】上述した比色定量法によるACE活性のア
ッセイでは、内皮型ACEと精巣型ACEを判別するこ
とはできないので、精子において現れるACEの性質を
確認することが必要であった。上記の結果により、精子
において現れるACEが精巣型であることと、精漿にお
いて現れるACEが内皮型であることが確認された。
【0055】また、精巣型と内皮型ACEは、最初の洗
浄培地に認められたが、残りの洗浄培地には認められな
かった。つまり、培地による2回の精子の洗浄で、精漿
の内皮型ACEを除去には十分であり、これにより精子
の精巣型ACEは、全く損なわれることはないと結論付
けられた。内皮型ACEは、残りの精漿に由来する最初
の洗浄培地において認められた。
【0056】精巣型ACEは、精子細胞の外側に活性部
位を出して、精子膜に組み込まれている酵素である。そ
れが、細胞破壊の前にPBSに懸濁した精子にACE活
性が認められた所以である。超音波処理は細胞全体を破
壊するが、Triton X-100は、精子膜を破壊する。そし
て、超音波処理の前後でACE活性に差異は認められな
かったことから、精巣型ACEが精子膜に局在して現れ
るということである。
【0057】また、第5図にに示すように、ACE活性
は、1週間の精液の冷蔵保存によっても減少しない。よ
って、ACE蛋白は安定であると結論付けられた。〔試
験例2〕精子の精巣型ACEの活性と精子の外形的な受
精能との関係の検討次に、精子、特に精子膜に局在する
ことが判明した精巣型ACEと、精子の受精能力を検討
した。具体的には、精子の外形的な受精能(精子数と精
子の直進運動率)と、精子の精巣型ACEの関係の検討
を行った。
【0058】検体である精液の提供者の内訳は、正常
精液者(精子数:2000×104/mL以上、精子の直進
運動率:50%以上)44名、乏精子症者(精子数:
2000×104/mL未満、精子の直進運動率:50%以
上)8名、精子無力症者(精子数:2000×104/
mL以上、精子の直進運動率:50%未満)19名および
乏精子・精子無力症者(精子数:2000×104/mL
未満、精子の直進運動率:50%未満)9名である。
【0059】それぞれの検体の精液中の精子を、上述し
た要領により分離し、さらに同様に、5回洗浄した精子
のACE活性を比色定量法により定量した。その結果、
正常精液者の精子のACE(精巣型ACE)活性は、
0.04±0.02(μU/106sperm) 、乏精子症者
は、0.67±0.75(μU/106sperm) 、精子無力
症者は、0.07±0.11(μU/106sperm) および
乏精子・精子無力症者は、1.49±3.45であっ
た。
【0060】この結果より、まず、乏精子症者は、正常
者と比べると、有意に精子のACE活性が高いことが明
らかとなった(p<0.05)。また、乏精子・精子無
力症者の精子のACE活性も高い傾向が認められた。
【0061】そして、精子の運動率・精子数共に問題の
ある、乏精子・精子無力症者群の精子のACE活性は、
比較の対象となった群の中で最も高かった。この結果
は、精子のACE活性の上昇を、精子の生殖能力の低下
と関連付けて男性の不妊症を検出することが可能である
ことを、明らかに裏付けるものである。
【0062】
【発明の効果】本発明により、精子の運動性を含めた、
「精子の質」を簡便に評価し得る男性不妊症の検出手段
が見出され、不妊治療の選択を含めた、その後の対処方
法を的確に判断する途が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】精子のACE活性のアッセイの検量線である。
【図2】精子のACE活性の希釈カーブである。
【図3】精子のACEに関する免疫ブロットの結果を示
す図面である。
【図4】精子に対して超音波処理を施した場合のACE
活性について検討した結果を示す図面である。
【図5】精子の冷蔵サンプルのACE活性の持続性につ
いて検討した結果を示す図面である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中川 八郎 埼玉県川越市的場1361番地1 株式会社ビ ー・エム・エル総合研究所内 (72)発明者 柴原 浩章 栃木県河内郡南河内町祇園3−1−3 自 治医科大学教職員住宅D−302 Fターム(参考) 2G045 AA27 BA13 BB10 BB16 BB18 BB29 CB14 DA20 DA80 FA13 FA29 FB01 FB02 FB03 GC10 JA01 4B063 QA01 QA19 QQ03 QQ36 QR10 QR48 QR66 QS02 QX02

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】精子における精巣型アンギオテンシン変換
    酵素の活性の上昇を、精子の生殖能力の低下と関連付け
    て男性の不妊症を検出する、不妊症の検出方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の検出方法を行うための要素
    を含む、精巣型アンギオテンシン変換酵素の測定用キッ
    ト。
  3. 【請求項3】測定用キットが男性用不妊症の検出用キッ
    トである、請求項2記載の測定用キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20170130012A (ko) * 2016-05-17 2017-11-28 한양대학교 산학협력단 정자의 활성 측정방법

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR20170130012A (ko) * 2016-05-17 2017-11-28 한양대학교 산학협력단 정자의 활성 측정방법
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