JP2001253899A - ペプチドライブラリーの製造方法 - Google Patents

ペプチドライブラリーの製造方法

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JP2001253899A
JP2001253899A JP2000068023A JP2000068023A JP2001253899A JP 2001253899 A JP2001253899 A JP 2001253899A JP 2000068023 A JP2000068023 A JP 2000068023A JP 2000068023 A JP2000068023 A JP 2000068023A JP 2001253899 A JP2001253899 A JP 2001253899A
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mviic
conotoxin
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Kazunori Sato
一紀 佐藤
Toru Sasaki
亨 佐々木
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 分子内ジスルフィド結合を有するペプチドの
多数の変異体を効率的に合成するための新しい方法を確
立すること。 【解決手段】 2以上の分子内ジスルフィド結合を有す
るペプチド及びその1以上の変異体から成るペプチドラ
イブラリーの製造方法であって、(1)変異部位に導入
されるアミノ酸として2以上のアミノ酸から成るアミノ
酸混合物を供給してペプチドの化学合成を行うことによ
って、ペプチドとその1以上の変異体を同時に化学合成
してペプチド混合物を調製する工程;(2)工程(1)
で調製されたペプチド混合物中のペプチドを溶液中で空
気酸化することによって分子内ジスルフィド結合を形成
させる工程;及び(3)分子内ジスルフィド結合を形成
したペプチド及びその1以上の変異体の混合物を分離す
る工程:を含む、ペプチドライブラリーの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はペプチドライブラリ
ーの製造方法に関する。より詳細には、本発明はジスル
フィド結合を含むペプチドとその1以上の変異体から成
るペプチドライブラリーの製造方法、並びに当該ペプチ
ドライブラリーを用いた生理活性物質のスクリーニング
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電位差感受性カルシウムチャンネルは多
くの生物学的プロセス(例えば、神経伝達物質の放出、
筋収縮など)を制御しており、電気生理学的性質に基づ
いてL型、N型、P/Q型、R型またはT型カルシウム
チャンネルに分類される(Nooney, J.M., et al. (199
7) Trends Pharmacol. Sci. 18, 363-371)。その分子
構造の相違はα1サブユニットの多様性に由来するが(B
irnbaumer, L., et al., (1994) Neuron 13, 505-50
6)、全カルシウム電流に対する各チャンネルの寄与
は、特異的ブロッカーを用いることによって薬理学的に
分析される。ω−コノトキシンは各種ブロッカーの中で
も最も有望なものの一つであり、特にN型およびP/Q
型カルシウムチャンネルを効率的にブロックする(Oliv
era,B.M., et al. (1994) Annu.Rev.Biochem. 63, 823-
867)。ω−コノトキシンGVIA及びω−コノトキシ
ンMVIIAはN型チャンネルに結合し、ω−コノトキシ
ンMVIICはP/Q型チャンネルに高親和性で結合し、
N型チャンネルに低親和性で結合する。N型及びP/Q
型カルシウムチャンネルは、シナプス前部神経末端にお
ける神経伝達物質の放出を調節し、神経系で重要な役割
を担い、ω−コノトキシンを用いてこれらのチャンネル
を識別することは各チャンネルの生理活性を解明する上
で重要である。
【0003】ω−コノトキシンGVIA(Sevilla, P.,
et al. (1993) Biochem.Biophys.Res.Commun. 192, 12
38-1244; Davis, J.H., et al. (1993) Biochemistry 3
2, 7396-7405; Pallaghy, P.K., et al. (1993) J.Mol.
Biol. 234, 405-420;及びSkalicky, J.J., et al. (199
3) Protein Sci. 2, 1591-1603)、MVIIA(Kohno,
T., et al. (1995) Biochemistry 34, 10256-10265; Ba
sus, V.J., et al. (1995) FEBS Lett. 370, 163-169;
及びNielsen, K.J., et al. (1996) J.Mol.Biol.263, 2
97-310)、及びMVIIC(Nemoto, N., et al (1995)
Biochem.Biophys.Res.Commun. 207, 695-700;及びFarr-
Jones, S., et al. (1995) J.Mol.Biol.248, 106-124)
の三次元構造を核磁気共鳴(NMR)分析により調べた
結果、これらのコノトキシンは同一の構造モチーフを有
することが判明した。Alaの単独置換実験の結果か
ら、カルシウムチャンネルへの結合に重要な残基はTy
r13とLys2であると同定されたが(Sato, K., et
al (1993) Biochem.Biophys.Res.Commun. 194, 1292-1
296; Kim, J.-I, et al (1994) J.Biol.Chem. 269, 238
76-23878; Kim, J.-I, et al (1995) Biochem.Biophy
s.Res.Commun. 206, 449-454; Kim, J.-I, et al (199
5) Biochem.Biophys.Res.Commun. 214, 305-309; Nadas
di, L., et al. (1995) Biochemistry 34, 8076-8081;
及びLew, M.J., et al. (1997) J.Biol.Chem. 272, 120
14-12023)、チャンネル特異性を決定する残基は未だ明
らかにされていない。MVIIAと配列類似性が高いMV
IICはN型チャンネルよりもP/Q型チャンネルに効率
的に結合するという事実から、MVIICはN型チャンネ
ルとP/Q型チャンネルにおける孔形成領域の構造上の
相違を明らかにするためのツールとして使用できること
が示唆されている(Sato, K., et al (1997) FEBS Let
t. 414, 480-484; 及びNielsen, K.J., et al (1999)J.
Mol.Biol. 289, 1405-1421)。N型チャンネルとP/Q
型チャンネルに対する選択性を決める残基を調べるため
には、MVIIC変異体を多数作製して評価することが必
要である。
【0004】ω−コノトキシンMVIICのようなジスル
フィド結合を含むペプチドを効率的に化学合成するため
には、システインの酸化条件を適切に選択することによ
り、正確な組み合わせのジスルフィド結合を有するペプ
チドを優先的に生成する必要がある。例えば、3つのジ
スルフィド結合を有するペプチドを合成する場合、6つ
のシステインの組み合わせは15通り存在し、その中の
1つの組み合わせが優先的に形成される条件を選択する
必要がある。ジスルフィド結合を形成するための一般的
方法としては、酸化還元剤を共存させる等の適当な条件
を選択して空気酸化を行う方法が挙げられる。しかし、
最も効率的な条件を用いてもジスルフィド結合の組み合
わせに基づく異性体の生成を完全に回避することは困難
である。上述の通り、ジスルフィド結合を有するペプチ
ドの化学合成は困難であることから、ジスルフィド結合
を含むペプチドを化学合成する場合には、1回の化学合
成で1種類のペプチドのみを合成するのが一般的であ
る。
【0005】また2種類以上のペプチドを同時に調製す
る方法としては、遺伝子組み換え技術による発現系を用
いる方法が知られている。しかし、ジスルフィド結合を
含むペプチドを発現させる場合には目的物が一つであっ
ても効率的な発現系の構築は困難であり、スクリーニン
グ系と組み合わせた2種類以上のペプチドの発現系の構
築はさらに困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】分子内ジスルフィド結
合を有するペプチド、特には2つ以上の分子内ジスルフ
ィド結合を有するペプチドの中には有用な生理活性を有
するペプチドがある。例えば、上述したω−コノトキシ
ンMVIICのような選択的イオンチャンネルブロッカー
は多種多様なイオンチャンネルの作用や役割を解明する
上で必須と言える分子ツールであるばかりでなく、医薬
としての実用性も期待されている。イモ貝やクモなどの
毒腺から得られる天然の選択的イオンチャンネルブロッ
カーは、10から60程度のアミノ酸残基の中にジスル
フィド結合を複数含むペプチドであり、これらの構造活
性相関研究は選択性の解明や医薬のデザインなどにおい
て大きな意義を有している。構造活性相関関係の研究に
おいては天然物のアミノ酸残基を置換して多数の変異体
を合成することが必要であるが、前述した通り、分子内
ジスルフィド結合を含むペプチドの合成は1回の化学合
成で1種類のペプチドを合成するのが一般的である。多
数の変異体を1種類ずつ合成することはコストや時間な
どの観点から効率が悪く、有用な変異体を迅速に開発す
る妨げになっていた。そこで、分子内ジスルフィド結合
を有するペプチドの多数の変異体を効率的に合成するた
めの新しい方法を確立することが望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するために鋭意検討した結果、ペプチド自動合成機
を用いてペプチドを化学合成する際に、変異部位に導入
するためのアミノ酸として2種類以上の保護アミノ酸の
混合物が封入されたカートリッジを通常の1種類の保護
アミノ酸が封入されたカートリッジの代わりに用いるこ
とによって、保護基を有するペプチド前駆体の混合物を
同時に化学合成し、これらのペプチド前駆体を脱保護し
た後、好適な条件下で分子内ジスルフィド結合を形成す
ることによって、少なくとも2以上の分子内ジスルフィ
ド結合を有するペプチド及びその1以上の変異体から成
るペプチドライブラリーを簡便かつ効率的に製造できる
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、本発明によれば、2以上の分子内ジ
スルフィド結合を有するペプチド及びその1以上の変異
体から成るペプチドライブラリーの製造方法であって、
(1)変異部位に導入されるアミノ酸として2以上のア
ミノ酸から成るアミノ酸混合物を供給してペプチドの化
学合成を行うことによって、ペプチドとその1以上の変
異体を同時に化学合成してペプチド混合物を調製する工
程;(2)工程(1)で調製されたペプチド混合物中の
ペプチドを溶液中で空気酸化することによって分子内ジ
スルフィド結合を形成させる工程;及び(3)分子内ジ
スルフィド結合を形成したペプチド及びその1以上の変
異体の混合物を分離する工程:を含む、ペプチドライブ
ラリーの製造方法が提供される。
【0009】好ましくは、変異部位のアミノ酸残基は、
分子内ジスルフィド結合を形成するシステイン残基以外
のアミノ酸である。好ましくは、変異部位に導入される
アミノ酸がシステイン以外のアミノ酸である。好ましく
は、分子内ジスルフィド結合を形成したペプチド及びそ
の1以上の変異体の混合物はゲル濾過クロマトグラフィ
ーによって分離される。好ましくは、ペプチドはω−コ
ノトキシンMVIICである。
【0010】本発明の別の側面によれば、上記した本発
明の方法により製造されるペプチドライブラリーが提供
される。本発明のさらに別の側面によれば、本発明の方
法により製造されるペプチドライブラリー中の各ペプチ
ドの生物学的活性を対照ペプチドの生物学的活性と比較
し、対照ペプチドよりも有用な生物学的活性を示すペプ
チドを選択することを含む、変異ペプチドのスクリーニ
ング方法が提供される。本発明のさらに別の側面によれ
ば、本発明のスクリーニング方法により得られる変異ペ
プチドが提供される。
【0011】本発明の一態様によれば、本発明の方法に
より製造したω−コノトキシンMVIICとその変異体か
ら成るペプチドライブラリー中の各ω−コノトキシンM
VIIC変異体の生理活性を野生型ω−コノトキシンMV
IICの生理活性と比較し、P/Q型カルシウムチャンネ
ルに対する阻害活性の選択性が野生型ω−コノトキシン
MVIICの選択性よりも高い変異体を選択することを含
む、ω−コノトキシンMVIICの変異体のスクリーニン
グ方法、上記方法により得られるω−コノトキシンMV
IICの変異体、並びに上記ω−コノトキシンMVIIC変
異体を含む、(P/Q型)カルシウムチャンネルブロッ
カーが提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は、少なくとも2以上の分
子内ジスルフィド結合を有するペプチド及びその1以上
の変異体から成るペプチドライブラリーの製造方法に関
する。分子内ジスルフィド結合とは、一つのペプチド鎖
中の2つのシステイン残基により形成されるジスルフィ
ド結合を意味する。本発明で製造されるペプチドはこの
ような分子内ジスルフィド結合を少なくとも2以上有す
る。
【0013】本明細書で言うペプチドとは、2個以上の
アミノ酸がペプチド結合によって結合したものを広く意
味し、オリゴペプチド又はポリペプチド等の全てを包含
し、その鎖長は特に制限されないが、ペプチド合成機で
化学合成できる程度の長さを有するものが好ましい。本
明細書で言うペプチドの変異体とは、あるペプチドのア
ミノ酸配列において1以上のアミノ酸が置換しているペ
プチド、あるいはあるペプチドに対して1以上のアミノ
酸がN末端又はC末端に付加されたペプチドを意味す
る。1以上のアミノ酸が置換している場合、置換される
部位の数は特に制限されず、1以上の部位のアミノ酸を
置換することができるが、置換される部位の数は合成後
変異体を分離するためには、現在の分離技術から一般的
には1から数個であり、好ましくは1から10個、より
好ましくは1から5個である。1以上のアミノ酸が付加
される場合、付加されるアミノ酸残基の数は特に制限さ
れないが、一般的には1から数個であり、好ましくは1
から10個、より好ましくは1から5個である。
【0014】本明細書で言うペプチドライブラリーと
は、あるペプチド並びにその1以上の変異体から構成さ
れるペプチド混合物を意味する。ペプチドの変異体は上
述した通りのものであり、ペプチドライブラリー中のペ
プチド変異体の数は特に制限されない。ペプチド変異体
の数は、ペプチド化学合成の際にアミノ酸変異を導入す
る部位の数と、ある部位に変異として導入されるアミノ
酸の種類の数に依存する。
【0015】ペプチド自動合成機を用いたペプチドの固
相合成法は当業者に周知である。合成すべきペプチドの
カルボキシル末端のアミノ酸残基を導入した不活性樹脂
を装置内の容器に入れ、そこにアミノ酸を1残基ずつ導
入し、ペプチド鎖を伸長させていく。α位のアミノ基の
保護基の除去、ペプチド結合の形成、過剰な試薬を除去
するための樹脂の洗浄などの一連の操作を一定のプログ
ラムに従って実行できるように構成されている。アミノ
酸の導入には、9−フルオレニルメトキシカルボニル
(Fmoc)化アミノ酸又はt−ブトキシカルボニルア
ミノ酸(Bocアミノ酸)が主として用いられている。
ペプチド自動合成機を使って先ず樹脂上でペプチドを合
成し、次にこの樹脂を化学的に処理してペプチドを樹脂
から取り出し、これをさらに高速液体クロマトグラフィ
ーなどで精製することにより目的ペプチドを得ることが
できる。
【0016】本発明の方法では、ペプチド自動合成機上
において複数の保護アミノ酸の混合物を封入したカート
リッジを通常のカートリッジの代わりに用いる以外は、
通常のペプチドの固相合成法と同様にして、保護基を有
するペプチド前駆体を合成することができ、また脱保護
も通常のペプチド合成の手法を用いて行うことができ
る。ペプチド前駆体の混合物を適当な溶液に溶解してジ
スルフィド結合の形成を同時に行った後、ゲル濾過によ
り目的物を含むモノマー画分を分離する。さらにイオン
交換クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーの組
み合わせなどによって複数の目的物を分離かつ精製す
る。以上の方法は、ジスルフィド結合を含む多種多様な
ペプチドの合成に適用が可能である。
【0017】保護基を有するペプチド前駆体の固相合成
はペプチド自動合成機上においてFmoc法、Boc法
の何れを用いても通常の方法で行うことができる。以
下、Fmoc法による合成例についてより詳細に説明す
る。保護基の略称は次の通りである。 Boc:tert−ブチルオキシカルボニル基; tBu:tert−ブチル基; Fmoc:9−フルオレニルメトキシカルボニル基; OtBu:tert−ブチルエステル基; Pmc:2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニ
ル基; Trt:トリチル基
【0018】目的物のC末端を考慮して、合成機の反応
容器に適当な樹脂を加える。例えば、C末端がアミド化
された目的物に対しては、4−(2’,4’−ジメトキ
シフェニル−Fmoc−アミノメチル)フェノキシアセトア
ミドエチル樹脂のようなアミド樹脂を用いる。以下、配
列に従い、Fmocアミノ酸(Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pmc)
-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Cys
(Trt)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmo
c-Gly-OH、Fmoc-His(Trt)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc
-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、
Fmoc-Val-OHなど)のカートリッジをセットする。複数
の置換を導入する部位に対しては、Fmocアミノ酸の合計
が規定の等量になるようにカートリッジに詰める。修飾
アミノ酸や非天然型アミノ酸のFmoc体も同様に導入する
ことができる。通常の方法で合成機を作動させ、Fmoc法
の原理に従い、N末端の脱保護と縮合を繰り返して合成
されたペプチド樹脂の混合物を合成機から取り出して乾
燥する。
【0019】樹脂からの切り出しと側鎖の脱保護もFmoc
法で合成された通常のペプチドと同様に行う。具体的に
は、TFA(トリフルオロ酢酸):水:エタンジチオー
ル:チオアニソール:フェノール=8.25:0.5:
0.25:0.5:0.75(体積比)の割合で混合し
た溶液を氷冷下でペプチド樹脂に加える。溶液の量はペ
プチド樹脂0.5gに対して10ml程度とし、室温に
戻しつつ3時間撹拌する。冷ジエチルエーテルを溶液の
約10倍量加えてペプチドを沈殿させ、グラスフィルタ
ー上で濾過し、ジエチルエーテルで洗浄する。2M酢酸
などの適当な酸性水溶液でペプチドを抽出する。
【0020】ペプチドの抽出液、あるいはこれを凍結乾
燥して得られた固体を再溶解して得られた溶液を適当な
弱アルカリ性緩衝液に加え、空気酸化によりジスルフィ
ド結合をペプチド混合物の状態において形成する。前駆
体混合物の濃度、緩衝液の組成、酸化還元剤の量比など
は天然物の合成などにおいて確立された条件を用いる。
例えば、ω−コノトキシンの場合、ペプチド中の3つの
ジスルフィド結合は一般に、酸化型および還元型グルタ
チオン存在下に溶液中で室温または4℃で一定の時間に
渡って空気酸化することにより形成することができる。
【0021】またP/Q型カルシウムチャンネルブロッ
カーであるω−コノトキシンMVIICの変異体の場合、
0.05mMのペプチドをグルタチオン酸化型10等
量、還元型100等量の共存下で1mMのエチレンジア
ミン四酢酸を含む1.0M酢酸アンモニウム緩衝液(p
H7.8〜8.0)中4℃で2〜4日間撹拌して空気酸
化を行い、ジスルフィド結合を形成させる。酢酸をpH
が4.5以下になるように加えて反応を停止させ、TF
Aを約0.1%加えておく。反応溶液量が少なく塩濃度
も低い場合は凍結乾燥によりペプチド混合物を固体とし
て得ることができるが、そうでない場合は溶液を濾過し
た後、中圧ポンプなどでペプチドをODS(オクタデシ
ルシラン)カラムなどに吸着させ、アセトニトリルを含
む酸性水溶液で溶出させて濃縮する。
【0022】精製の方法は混合物の一部を分析してクロ
マトグラム上における目的物の分離パターンを調べるこ
とにより決定できるが、目的物が多い場合は一般に異な
るクロマトグラフィーを組み合わせて用いることが必要
となる。ω−コノトキシンMVIIC変異体の混合物を例に
すると、先ずゲル濾過により分子内ジスルフィド結合を
形成したモノマーペプチドを分子間でジスルフィド結合
を形成したポリマーから分離する。続いてモノマーをC
M−セルロースを用いたイオン交換クロマトグラフィー
で複数の画分に分け、最後に各画分に含まれる目的物を
ODSカラムを用いた逆相クロマトグラフィーで単離精
製する。逆相クロマトグラフィーだけでは分離できない
複数の目的物もイオン交換クロマトグラフィーで予め分
離しておくことにより精製が可能となる場合が多い。
【0023】目的物の同定は先ず質量分析を用いて行
う。分子量が近似の目的物が複数ある場合は、アミノ酸
残基特異的な酵素を用いて限定加水分解を行い、断片化
されたペプチドを分析する方法が効果的である。限定加
水分解による断片化は目的物が本来のペプチドと同じジ
スルフィド結合を有しているか否かを確認する上でも役
立つ。ジスルフィド結合の組み合わせが本来のペプチド
と異なる異性体はクロマトグラフィー上において溶出時
間に顕著な差を示すことが多く、目的物を暫定的に同定
する上での1つの指標となる。
【0024】適正な分子内ジスルフィド結合を形成する
ための条件および適正な分子内ジスルフィド結合を有す
るペプチドの精製法が確立されているペプチドに関して
は、目的ペプチドを異性体から分離することは比較的容
易であり、複数の変異体を同時に化学合成することが可
能である。また、活性評価に用いるペプチドの量は比較
的少量でよい場合が多く、ペプチド自動合成機での反応
スケールから活性評価の対象となり得る目的ペプチドを
多数得ることも十分可能である。
【0025】本発明はまた、上記した方法により製造さ
れるペプチドライブラリーをも提供する。本発明のペプ
チドライブラリーには、2以上の分子内ジスルフィド結
合を有するペプチドおよびその1以上の変異体から構成
される。このようなペプチドライブラリーは、有用な生
理活性物質の探索のために出発材料として有用である。
天然の生理活性ペプチドの中にはアミノ酸変異を導入す
ることによってさらに優れた生理活性を有するものも多
く存在する。そのような優れた生理活性を有する変異ペ
プチドを探索するためには、多数の変異ペプチドを合成
し、それらを所望の生理活性についてスクリーニングす
ることが必要である。本発明のペプチドライブラリーを
そのようなスクリーニングに供することによって、所望
の変異ペプチドを同定することが可能になる。
【0026】従って、本発明はさらに、上記した方法に
より製造されるペプチドライブラリー中の各ペプチドの
生物学的活性を対照ペプチドの生物学的活性と比較し、
対照ペプチドよりも有用な生物学的活性を示すペプチド
を選択することを含む、変異ペプチドのスクリーニング
方法も提供する。本発明のスクリーニング法の実施に際
しては、ペプチドライブラリーから各ペプチドを予め分
離しておくことが好ましい。ペプチドの分離方法は特に
限定されず、逆相クロマトグラフィーやイオン交換クロ
マトグラフィーなど当分野で公知のペプチド分離技術を
用いて行うことができる。
【0027】単離した各ペプチドの生物学的活性はそれ
ぞれの生物学的活性をアッセイするために確立されたア
ッセイ系で行う。例えば、あるタンパク質(標的タンパ
ク質)との結合活性や相互作用を調べる場合には、標的
タンパク質と変異ペプチドを接触させた後、その結合物
を検出することにより結合活性または相互作用を測定で
きる。あるいは、標的タンパク質(受容体)とそのリガ
ンドとその変異リガンドとを接触させて、標的タンパク
質への結合に関してリガンドと変異リガンドとを競合さ
せることにより当該変異リガンドと標的タンパク質との
結合活性または相互作用を検出することもできる。本発
明の一例として以下の実施例ではω−コノトキシンMV
IICとその変異体から成るペプチドライブラリーを製造
し、各ω−コノトキシンMVIIC変異体の生理活性を野
生型ω−コノトキシンMVIICの生理活性と比較し、P
/Q型カルシウムチャンネルに対する阻害活性の選択性
が野生型ω−コノトキシンMVIICの選択性よりも高い
変異体を探索した。
【0028】本発明はまた、上記のようなスクリーニン
グ法により得られる変異ペプチドも提供するものであ
り、このような具体例としては、P/Q型カルシウムチ
ャンネルに対する阻害活性の選択性が野生型ω−コノト
キシンMVIICの選択性よりも高いω−コノトキシンM
VIICの変異体が挙げられる。P/Q型カルシウムチャ
ンネルに対する阻害活性の選択性が野生型ω−コノトキ
シンMVIICの選択性よりも高いω−コノトキシンMV
IICの変異体は、P/Q型カルシウムチャンネルに選択
的なカルシウムチャンネルブロッカーとして、P/Q型
カルシウムチャンネルの生理活性を解明する上で有用で
ある。以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説
明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等
は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更すること
ができる。しがたって、本発明の範囲は以下に示す具体
例に限定されるものではない。
【0029】
【実施例】(A)材料と方法 (A−1)材料 ペプチド合成機で使用するFmoc−アミノ酸、Fmo
c−アミド樹脂および他の試薬は、Perkin-Elmer Appli
ed Biosystems Japan(千葉、日本)から購入した。[
125I]GVIA及び[125I]MVIICはNEN(ボス
トン,MA,USA)から購入した。
【0030】(A−2)ペプチドの合成と精製 固相ペプチド合成は、Perkin-Elmer Applied Biosystem
s 433Aペプチド合成機を用いて行った。マトリックス・
アシスティッド・レーザー脱着/イオン化飛行時間質量
スペクトル(MALDI-TOF-MS)は、マトリックスとしてα
−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を使用してPerSeptive
Biosystems Voyager Linear DE質量スペクトル測定器
において測定した。分析用HPLCは、オクタデシルシ
ラン(ODS)カラム(4.6×250mm)を用いてShimadzu
LC-6Aシステムで行った。分取用HPLCはODSカラ
ム(20×250mm)を用いてShimadzu LC-8Aシステムで行
った。
【0031】置換部位に導入すべき2種類以上のFmo
c−アミノ酸は、その全量がプログラムに基づいて適正
な量となるように各々等モル量を通常のカートリッジ内
に装填した。合成および精製の他の工程はω−コノトキ
シンMVIIC変異体の製造に関して既報されている通り
に行った(Sato, K., et al., (1997) FEBS Lett. 414,
480-484)。簡単に言うと、先ずFmoc固相合成の通
常のオペレーションにより組み立てω−コノトキシンM
VIIC変異体の直鎖状前駆体を脱保護し、空気酸化し
た。酸化したペプチドを中圧ポンプを用いてODSカラ
ムで濃縮し、モノマーペプチドを粗ペプチド混合物から
Sephadex G-50Fを用いたクロマトグラフィーにより単離
し、CM-セルロースCM-52上でのクロマトグラフィーによ
りフラクションに分離した。各変異体はODSカラムを
用いた分取用HPLCにより各フラクションから最終的
に精製し、MALDI-TOF-MS測定により同定した。得られた
変異体のうち、変異体34(表1中)をスペクトル分析
用に大量に再合成した。
【0032】(A−3)結合活性 ラット小脳P2膜を既報の通りに調製し(Martin-Mouto
t, et al., (1995) FEBS Lett. 366, 21-25)、フィル
ター結合アッセイを既報の方法に改良を加えて行った。
ω−コノトキシンGVIAとの競合実験においては、変
異体および[125I]GVIAを、0.04%ウシ血清
アルブミン(BSA)を含有する25mMのTris-HEPES
緩衝液50μl中においてP2膜(10μg)と一緒に
4℃で1.5時間インキュベートした。混合物を0.1
6M塩化コリン及び0.1%BSAを含有する氷冷した
0.8mMのTris-HEPES緩衝液で希釈し、次いで同じ緩
衝液に浸したGF/Cフィルター(Whatman)で減圧下
速やかに濾過した。フィルターを氷冷した緩衝液で2回
洗浄し、その放射活性をγ−カウンターで測定した。ω
−コノトキシンMVIICとの競合実験においては、変異
体および[125I]MVIICを、0.1%BSAを含有
するTris緩衝化生理食塩水(TBS)(150mMのN
aCl、25mMのTris-HCl、pH7.4に調整)50
μl中においてP2膜(10μg)と一緒に4℃で1.
5時間インキュベートした。混合物を1.5mMのCa
Cl2、0.1%BSAおよび0.05%Tween-20を含
有する氷冷したTBSで希釈し、次いで0.03%ポリ
エチレンイミンで予め処理したGF/Cフィルターで減
圧下速やかに濾過した。フィルターを希釈に使用した氷
冷した緩衝液で2回洗浄した。両方のアッセイにおい
て、結合は3回測定し、非特異的結合は競合物質として
1μMの未標識のGVIA又はMVIICを使用すること
によって評価した。
【0033】(A−4)NMR分析1 H−NMRスペクトルはBruker DRX-500 スペクトル測
定器で500MHzで作動させて288Kで測定した。
試料は、90%H2O/10%D2O中pH4で9mMの
濃度で調製した。
【0034】(B)結果 (B−1)MVIIC変異体の合成と精製 置換すべき残基は、ω−コノトキシンMVIICの構造活
性相関関係に関するこれまでの研究に基づいて選択し
た。配列および置換は図1に示す(MVIICのアミノ酸
配列は配列表1に示す)。ラン1においては、活性に必
須な3つの残基(Lys2、Met12、及びTyr1
3)を活性及び選択性の有意な変更を生じさせることが
予測される残基で置換した。ラン2においては、これま
での研究(Sato, K., et al., (1999) Peptide Science
1998 (Kondo, M., ed,), pp.29-32, Protein Research
Foundation, Osaka)で活性に重要な残基として同定さ
れなかった残基の代りに塩基性残基を導入した。ラン3
およびラン4の置換の組み合わせは、ラン2からの変異
体の分析で得られた結果に基づいて選択した。幾つかの
電荷を有する残基(即ち、Lys4、Asp14、及び
Lys25)の置換をラン3およびラン4において導入
した。また、MVIICのN末端はNMR分析で測定した
溶液構造において溶媒に露出しているという事実に基づ
いて、ラン5およびラン6ではN末端の伸長の効果を調
べるために変異体の構築を行った。
【0035】保護された直鎖状前駆体の混合物を、通常
のFmoc固相法で合成し、各ランにおける全前駆体を
HPLC及び質量分析で検出した。直鎖状前駆体の粗製
混合物を酸化によるジスルフィド結合形成に付してMV
IIC変異体の混合物を得た。この混合物は、多種多様な
不純物(即ち、ポリマー、ジスルフィド結合異性体な
ど)を含有しているが、これは単一の変異体の通常の製
造でも見られる現象である。ポリマーはゲル濾過によっ
て除去し、モノマーをイオン交換クロマトグラフィーに
よって複数のグループに分離し、逆相HPLC及びMALD
I-TOF-MS測定により分析した。変異体のジスルフィド結
合の組み合わせに基づく異性体は質量分析によって区別
することはできないが、MVIICと同一のジスルフィド
結合の組み合わせを有する変異体はHPLCプロフィー
ルの突出したピークに該当した。ラン1で得られた各フ
ラクションのイオン交換クロマトグラフィーのプロフィ
ール及びHPLCプロフィールを図2に示す。
【0036】表1に記載した精製ペプチドは全て放射標
識したMVIICと10-7Mの濃度で競合したので、それ
らは異性体ではなくMVIIC変異体とみなした。これ
は、カルシウムチャンネルはω−コノトキシンを非常に
厳密な様式で認識し、異性体がチャンネルに特異的に結
合する可能性は低いためである。ジスルフィド結合の組
み合わせを決定して最終確認するべきであるが、MVII
CよりP/Q型カルシウムチャンネルに特異的なブロッ
カーを開発することが目的であったので、最も強力な変
異体についてのみ構造を調べた。
【0037】単離した変異体と変異体の理論数の比率
は、ラン1〜6において各々11/12、10/16、
10/18、9/16、2/3及び8/9であった。除
外された変異体のうち幾つかは単離するのに不十分な量
しか生成せず、また幾つかは上手く精製できなかった。
例えば、Asp14をAsnで置換すると、正確な折り
畳みが妨げられるようであり、Asn14を含むはずの
幾つかの変異体はラン4において単離されなかった。ラ
ン3においては、全ての変異体が十分に形成されたよう
であるが、8種の変異体は不適切に精製されたことが分
かり、除外した。最終的には、6個のランでMVIIC及
び47種の変異体を調製することができた(表1)。
【0038】
【表1】
【0039】a:慣用名は以下の通りである:K2Qは
[Gln2]-MVIICであり、G−MVIIC及びKG−MVII
Cは各々グリシルG−MVIIC及びリシル−グリシル−
MVIICである。 b:値はペプチド合成機での構築について計算した理論
値に対する精製ペプチドの重量比として計算する。 c:10-7M又は10-8MのMVIICおよびその変異体
による[125I]GVIA及び[125I]MVIICの結合
の置換率。値は平均±標準偏差を示す。
【0040】(B−2)N型及びP/Q型のカルシウム
チャンネルに対するMVIIC変異体の結合活性 N型及びP/Q型のカルシウムチャンネルに対するMV
IIC及び47種の変異体の結合活性を、放射標識したM
VIICとの競合については10-8Mで、放射標識したG
VIAとの競合については10-7Mで評価した(表
1)。ラン1で得た変異体は両方のアッセイでMVIIC
より低い親和性を一般に示す一方、選択性に対する影響
は様々であった。例えば、Tyr13をTrpで置換し
た場合には(変異体5)、GVIAとの競合において親
和性はより低下し、Met12をThrで置換した場合
には(変異体3)、MVIICとの競合の場合にのみ親和
性は低下した。ラン2からの変異体の場合、親和性は、
特にMVIICとの競合においては十分に維持され、Se
r17又はSer19を塩基性残基に置換するとP/Q
型カルシウムチャンネルに対する選択性が増加する傾向
にあった(変異体14及び15)。Ser17又はSe
r19の置換の効果をラン3でさらに調べ、Ser19
を塩基性残基又は嵩高い残基で置換すると、N型カルシ
ウムチャンネルに対する親和性が減少することが判明し
た。Lys25をArgで置換すると、Ser19の置
換と組み合わせた場合、P/Q型カルシウムチャンネル
に対する選択性の増加に有効であることも判明した。
【0041】ラン5及び6においてN末端の伸長した場
合には一般に、N型およびP/Q型の両方のカルシウム
チャンネルに対する親和性が減少したが、幾つかの変異
体はMVIICよりもP/Q型カルシウムチャンネルに対
してより高い選択性を示した。Ser17、Ser19
及びLys25を各々Lys、Arg及びArgで置換
した変異体34は、P/Q型カルシウムチャンネルに対
するMVIICの親和性と同様の親和性を保持する変異体
の中でN型カルシウムチャンネルに対する親和性が最も
低かったことから、変異体34をP/Q型カルシウムチ
ャンネル選択的ブロッカーの候補として選択した。変異
体34の[125I]GVIA及び[125I]MVIIC結合
関係の濃度阻害を変異体3の濃度阻害とともに図3に示
す。変異体3は、P/Q型カルシウムチャンネルに対す
る親和性が減少し、N型カルシウムチャンネルに対する
親和性を保持する。
【0042】(B−3)NMR分析 変異体34のNMR構造分析ではNH化学シフトの分散
を示し、その一部は保存され、残りはMVIICのものか
ら偏差を示した(図4)。NH化学シフトが十分に保存
されている残基は主としてβ鎖に分布し、偏差は他の領
域の残基に見られた。
【0043】(C)考察 MVIICよりもP/Q型カルシウムチャンネルに対する
選択性が高いMVIIC変異体を探索した結果、結合アッ
セイにおいてP/Q型カルシウムチャンネルに対する親
和性を保持しつつN型カルシウムチャンネルに対する親
和性が減少した複数の変異体が得られた。Tyr13は
GVIA、MVIIA及びMVIICの活性に最も重要な残
基であるが、MVIICにおいてTyr13をTrpに置
換すると両カルシウムチャンネルに対する親和性は減少
した。しかし、N型カルシウムチャンネルに対する親和
性の減少の方が大きかったため、P/Q型カルシウムチ
ャンネルに対する選択性が増加した。本実施例の結果か
ら、複数のアミノ酸置換によりペプチドの活性と選択性
に対して予期できない影響が生じることが判明した。例
えば、Lys25をArg25で置換すると、Ser1
9のArg19による置換と組み合わせた場合にはN型
カルシウムチャンネルに対する親和性は減少したが、S
er17をLysで置換した場合にはほとんど影響しな
かった。
【0044】本実施例では、コンビナトリアル法を使用
することによって、6回のランでMVIICと47種類の
変異体を製造することができた。得られた各変異体の量
は個別に合成した場合の量より少なかったが、変異体の
同定と活性評価のためには十分な量であった。また、単
一の変異体を合成する場合と比較して、重合化や凝集が
進行する傾向は見られなかった。本実施例で実施したよ
うな数種類のペプチドを含むペプチド混合物のジスルフ
ィド結合を同時に形成する方法は、より高い親和性や選
択性を有するカルシウムチャンネルブロッカーなどのイ
オンチャンネルブロッカーを探索するために有用な方法
である。さらに、カルシウムチャンネルブロッカーなど
のイオンチャンネルブロッカー以外の機能性分子、例え
ば蛋白質/蛋白質相互作用を調節する分子の探索におい
ても応用可能である。
【0045】
【発明の効果】本発明により、ジスルフィド結合を有す
るペプチドの多数の変異体を効率的に合成するための新
しい方法を確立することが可能になった。
【0046】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Mitsubishi Chemical Corporation <120> A process for preparing a peptide library <130> A01138MA <160> 1
【0047】 <210> 1 <211> 26 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Synthetic Peptide <400> 1 Cys Lys Gly Lys Gly Ala Pro Cys Arg Lys Thr Met Tyr Asp Cys Cys 5 10 15 Ser Gly Ser Cys Gly Arg Arg Gly Lys Cys 20 25
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、MVIICの一次構造と、MVIICの置換又は
伸長部位の構造を示す。ジスルフィド結合の組み合わせ
は配列の上に示す。
【図2】図2のAは、実施例1のラン1で得たモノマー
フラクションのイオン交換クロマトグラフィーを示す。
ペプチドは0.01Mの酢酸アンモニウム緩衝液(pH
4.6)500mlと0.8Mの酢酸アンモニウム緩衝
液(pH6.5)500mlから形成した濃度勾配中で
CM−セルロースCM−52(18×200mm)から
溶出した。フラクションを5つのグループ(F1−F
5)に分けた。図2のBは、各フラクションにおけるペ
プチドの逆相HPLCプロフィールを示す。ペプチド
を、5〜29%アセトニトリルと0.1%トリフルオロ
酢酸水溶液の直線勾配中で流速1ml/分で24分間O
DSカラム(4.6×250mm)から溶出した。ピー
クの上に記載した数字は表1に記載した変異体の番号に
対応する。
【図3】図3は、ラット小脳P2膜への[125I]GVI
A又は[125I]MVIICの結合に対する、代表的変異
体及びMVIICの濃度と阻害の関係を示すグラフであ
る。
【図4】図4は、変異体34におけるMVIIC天然値か
らの化学シフトの偏差を示す。MVIICにおけるβ鎖に
位置する残基は太線によって示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/15 G01N 33/50 Z 33/50 A61K 37/02 Fターム(参考) 2G045 BB05 BB20 BB41 BB46 BB50 BB51 CB17 DA36 FB06 FB08 4C084 AA17 CA62 DA35 ZC502 4H045 AA10 AA20 BA16 BA17 BA18 CA50 DA83 FA33 FA58 GA22 GA23

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2以上の分子内ジスルフィド結合を有す
    るペプチド及びその1以上の変異体から成るペプチドラ
    イブラリーの製造方法であって、(1)変異部位に導入
    されるアミノ酸として2以上のアミノ酸から成るアミノ
    酸混合物を供給してペプチドの化学合成を行うことによ
    って、ペプチドとその1以上の変異体を同時に化学合成
    してペプチド混合物を調製する工程;(2)工程(1)
    で調製されたペプチド混合物中のペプチドを溶液中で空
    気酸化することによって分子内ジスルフィド結合を形成
    させる工程;及び(3)分子内ジスルフィド結合を形成
    したペプチド及びその1以上の変異体の混合物を分離す
    る工程:を含む、ペプチドライブラリーの製造方法。
  2. 【請求項2】 変異部位のアミノ酸残基が、分子内ジス
    ルフィド結合を形成するシステイン残基以外のアミノ酸
    である、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 変異部位に導入されるアミノ酸がシステ
    イン以外のアミノ酸である、請求項1又は2に記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 分子内ジスルフィド結合を形成したペプ
    チド及びその1以上の変異体の混合物をゲル濾過クロマ
    トグラフィーによって分離する、請求項1から3の何れ
    か1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 請求項1から4の何れか1項に記載の方
    法により製造されるペプチドライブラリー。
  6. 【請求項6】 請求項1から4の何れか1項に記載の方
    法により製造されるペプチドライブラリー中の各ペプチ
    ドの生物学的活性を対照ペプチドの生物学的活性と比較
    し、対照ペプチドよりも有用な生物学的活性を示すペプ
    チドを選択することを含む、変異ペプチドのスクリーニ
    ング方法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載のスクリーニング方法に
    より得られる変異ペプチド。
  8. 【請求項8】 請求項1から4の何れかに記載の方法に
    より製造したω−コノトキシンMVIICとその変異体か
    ら成るペプチドライブラリー中の各ω−コノトキシンM
    VIIC変異体の生理活性を野生型ω−コノトキシンMV
    IICの生理活性と比較し、P/Q型カルシウムチャンネ
    ルに対する阻害活性の選択性が野生型ω−コノトキシン
    MVIICの選択性よりも高い変異体を選択することを含
    む、ω−コノトキシンMVIICの変異体のスクリーニン
    グ方法。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の方法により得られるω
    −コノトキシンMVIICの変異体。
  10. 【請求項10】 請求項9に記載のω−コノトキシンM
    VIIC変異体を含む、カルシウムチャンネルブロッカ
    ー。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017051143A (ja) * 2015-09-10 2017-03-16 国立大学法人埼玉大学 機能性ペプチドをコードするdnaの探索方法及び機能性ペプチドの調製方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017051143A (ja) * 2015-09-10 2017-03-16 国立大学法人埼玉大学 機能性ペプチドをコードするdnaの探索方法及び機能性ペプチドの調製方法
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