JP2001252293A - 卵子または胚のガラス化用具及び方法 - Google Patents
卵子または胚のガラス化用具及び方法Info
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Abstract
し、安定して高い生存率を達成するための簡便な方法、
及び用具を提供する。 【解決手段】 卵子または胚をガラス化するためのガラ
ス化用具であって、筒状の極細管部と、該極細管部に続
く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含
み、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部
分において対向する2点間の最短距離が、卵子または胚
の最小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大
外径よりも長いため、当該極細管部の中に入った卵子ま
たは胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個
以上並存しえないことを特徴とするガラス化用具と、こ
れを用いた方法。
Description
または受精卵を含めた胚をガラス化するための器具及び
方法に関し、更に詳細には、卵子または胚を良好な生存
状態で保存し、体外受精、胚移植や哺乳動物クローン作
出に利する器具及び方法に関するものである。
直ちに新鮮な状態で仮親体内へ移植し、着床させること
が望ましい。しかし、動物の種類やその他種々の因子に
よっては、仮親の性周期、健康状態が好ましい時期に卵
管あるいは子宮に移植しなければ成功裡に着床、妊娠す
ることが極めて困難となる。このような好時期を見計ら
って移植しようとすると、受精後から移植までにかなり
の時間を要する場合が頻発するので、受精卵や胚を長期
間保存する必要がある。
はり、受精卵を適切な時期に除核して核移植した後、移
植することが多いので、受精卵あるいは胚を保存する必
要が生じる。
損傷を与えることなく、より生物活性を維持した安定な
状態でガラス化できる方法が希求されてきた。
チックストローを引き延ばして内径を800μm〜1m
m程度としたものの中に毛細血管現象を利用して卵子ま
たは胚を含むガラス化液を吸い上げ、これを液体窒素に
浸漬してガラス化する方法(オープン・プルド・ストロ
ー(OPS)法)が採用されてきた。しかし、この方法
によってもやはり融解後の生存率が低く、また吸入液量
も一定しないので保存する卵子または胚を安定的にガラ
ス化保存することは困難であった。
窒素中へ投入する法も提案されているが、この方法では
液体窒素から卵子または胚をすべて再現性よく回収する
ことが困難であり、さらに卵子または胚の個別認識がで
きなくなるという不都合もあった。
鑑みて、卵子または胚を良好な生存状態で安定にガラス
化して保存することができる器具及び方法を提供するこ
とを目的とする。
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、卵子または胚が、
長手方向に対する垂直断面の内空部分に2個以上並存し
えない極細管部を有するガラス化用具によって、個々の
卵子または胚を超急速にガラス化することにより安定な
保存を実現できることを見出し、本発明を完成するに至
った。
第八発明をその要旨とする。
ス化するためのガラス化用具であって、筒状の極細管部
と、当該極細管部に続く、吸引及び吐出用器具に装填す
るための連結部とを含み、前記極細管部の長手方向に対
する垂直断面の内空部分において対向する2点間の最短
距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よりも短く、且
つ卵子または胚の最大外径よりも長いため、該極細管部
の中に入った卵子または胚が、極細管部の長手方向に対
する垂直面上に2個以上並存しえないことを特徴とする
ガラス化用具である。このような構造を有するガラス化
用具によれば、極細管部で卵子または胚が長手方向に略
一列に並ぶように導入されるので、液体窒素に浸漬する
などして低温に曝した場合に即座に卵子または胚がその
温度に平衡化され、速やかにガラス化に至る。また融解
時にも同様に速やかに融解温度に平衡化されるので緩徐
に温度が変化する際に細胞組織が受ける損傷が最低限に
抑えられる。よって、保存期間を経て融解した後の卵子
または胚の生存率が高くなり、細胞の変性も低減でき
る。しかも、該ガラス化用具は吸引及び吐出用器具に装
填して用いることにより一定量の卵子または胚を正確に
導入できるので、保存個数の制御も容易である。また、
ガラス化した後、卵子または胚を封入してガラス化用具
ごと保存できるので、各ガラス化用具に導入した卵子ま
たは胚の由来を記入しておき、個々に識別しておくこと
が容易である。
るためのガラス化用具であって、前記極細管部の長手方
向に対する垂直断面の内空部分が、内径100〜200
μmの円形であり、極細管部と、連結部との間に接続部
が設けられている請求項1記載のガラス化用具である。
通常、ヒトを初めとして、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、
ヤギ、サル、ウサギ、マウス等の哺乳動物の卵子は、外
径70〜140μm程度の球状を有している。このよう
なサイズの卵子が極細管部内で長手方向に略一列に並ぶ
よう、且つ、温度変化が一気によりムラなく及ぶよう、
極細管部の断面は円形であり、その内径が上記範囲に定
められる。当然ながら、かかる内径範囲以下では卵子を
極細管部内に導入できないし、このような内径範囲を超
えれば極細管部内の長手方向に対する垂直断面の内空部
分に2個以上の卵子が並存することとなるので、OPS
法におけるごとく卵子がガラス化時/融解時に温度変化
を急速に万遍なく受けることができなくなり、その結果
卵子への損傷が大きく生存率に劣る結果を引き起こすこ
ととなる。
ガラス化用具であって、前記極細管部の長手方向に対す
る垂直断面の内空部分が、内径150〜250μmの円
形であり、極細管部と、連結部との間に接続部が設けら
れている請求項1記載のガラス化用具である。前述のご
とき哺乳動物の受精卵は、実質的に卵子と形状及び寸法
は同じであるが、その後経時的にサイズが大きくなり、
胚盤胞期に至っては外径125〜200μm程度とな
る。従って、胚のガラス化用具にあっては、極細管部の
断面が前記範囲を有する円形となるように設計し、卵子
について本願第二発明の説明で記載したと同様に極細管
部内の長手方向に対する垂直断面の内空部分に2個以上
の胚が並存しないようにしたものが好ましい。
方法であって、筒状の極細管部と、該極細管部に続く、
吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含み、
前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分に
おいて対向する2点間の最短距離が、卵子または胚の最
小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大外径
よりも長いため、当該極細管部の中に入った卵子または
胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個以上
並存しえないことを特徴とするガラス化用具を、吸引及
び吐出用器具に装填して、ガラス化液に懸濁された卵子
または胚を極細管部先端から導入し、極細管部に卵子ま
たは胚を入れた状態で該極細管部を−190〜200℃
の低温に曝すことにより瞬時に卵子または胚をガラス化
するガラス化方法である。この方法により、卵子または
胚に対する損傷を最小限として安定な生存率で細胞の変
性を起こすことなくガラス化を成し遂げることができ
る。
て、前記極細管部を低温に曝すには、液体窒素への浸漬
が最も好適に行われ得る(本願第五発明)。
存方法であって、筒状の極細管部と、該極細管部に続
く、吸引及び吐出用器具に装填するための連結部とを含
み、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部
分において対向する2点間の最短距離が、卵子または胚
の最小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大
外径よりも長いため、当該極細管部の中に入った卵子ま
たは胚が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個
以上並存しえないことを特徴とするガラス化用具を、吸
引及び吐出用器具に装填して、ガラス化液に懸濁された
卵子または胚を極細管部先端から導入し、極細管部に卵
子または胚を入れた状態で該極細管部を−190〜20
0℃の低温に曝すことにより瞬時に卵子または胚をガラ
ス化し、前記ガラス化用具を保存用外筒内に挿入嵌合し
て卵子または胚が入れられた極細管部を保護し、−19
0〜200℃の低温下に保つことを特徴とする保存方法
である。この保存方法によって、卵子または胚を長期
間、安定に保存することが可能となる。
る、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、マウスなどの
種々の哺乳動物が含まれる。
配偶子であり、いわゆる卵、卵細胞を総称することとす
る。また胚は、いわゆる「受精卵」を含めて受精後の個
体発生初期、卵割後の胚盤胞期に至るまでを総称するこ
ととする。
す先細ストロー20の卵子5の導入部の長手方向に対す
る垂直面の内径L20が800μm内外であるので、毛細
管現象によって導入された卵子5は、図5(b)に拡大
して示すように卵が当該垂直上に複数個、すなわち最大
8個程度も並列することとなる。かくして、液体窒素に
投入しても卵子5に対する温度の伝導が不均一になって
しまい、その結果超急速冷却がなされやすい卵子と緩徐
に温度が低下してガラス化の際に損傷を受ける卵子が多
発すると考えられる。これが、従来のOPS法で高い生
存率が達成できなかった原因の一つである可能性が考え
られる。そこで、本願第一発明にかかるガラス化用具を
開発し、卵子をガラス化した場合の生存度を観察したと
ころ、従来法に比して格段に好ましい結果が得られた。
参照してさらに詳説する。
0の斜視図を、図1(b)にはその断面図を示す。この
ガラス化用具10は、卵子が導入される筒状の極細管部
1とそれに続く接続部2、及び接続部2に続く、吸引及
び吐出用器具に装填するための連結部3を含んでいる。
このガラス化用具10は、例えば、ガラス、プラスチッ
ク、テフロン(登録商標)等の耐低温性を備えた素材で
製造されても構わないが、好ましくは、耐低温性と適度
な可撓性と剛性を有し、内部のすべり抵抗が低いため取
扱上、破損の可能性が低いポリエチレン等のプラスチッ
クが素材として用いられる。吸引及び吐出用器具への装
填も、プラスチック素材を用いる方が良好な係合関係が
得られるので好ましい。
すが、ここで極細管部1の長手方向に対する垂直断面の
内空部分の対向する2点間の最短距離Lすなわち、この
内空部分の円の内径は、卵子5の最小外径L5の2倍よ
りも短く且つ最大外径L5よりも長いため、極細管部1
の中に入った卵子5は、極細管部1の長手方向に対する
垂直面上に2個以上並存しえない。従って、極細管部1
で卵子5が長手方向に略一列に並ぶように導入され(図
2(a))、極細管部1を液体窒素に浸漬するなどして
低温に曝した場合に、即座にガラス化液6中に懸濁され
ている卵子5がその低温に到達して速やかにガラス化に
至る。そして融解時にも、同様に速やかに卵子5とガラ
ス化液6が融解温度に到達するので、緩徐に温度が変化
する際に細胞組織が受ける損傷が最低限に抑えられる。
よって、保存期間を経て融解した後の卵子5の生存率が
高くなり、細胞の変性も低減できる。L5はウシの卵子
または胚に適用される場合、100〜250μm、より
好ましくは180〜220μmとなるようにするとよ
い。
μm、好ましくは90〜100μmとされる。この範囲
よりも厚すぎると熱伝導性に劣る場合が多いためガラス
化、低温保存後の生存率の低下を招き、薄すぎると製造
時の作業性や製品としての強度、使用性に劣ることにな
る。そして極細管部1の長さは10〜15mmが好まし
く、長すぎると使用性に劣り、短すぎると卵子または胚
の導入量が制限されてしまう。
すように真円であることが均一に熱伝導が行われるとい
う点で好ましいが、楕円その他、種々変形した形状でも
許容される。但し、極細管部垂直断面において対向する
2点間の最短距離は、卵子5の最小外径L5の2倍より
も短く、且つ卵子5の最大外径L5よりも長く、従って
極細管部1の中に入った卵子5が、極細管部1の長手方
向に対する垂直断面の内空部分に2個以上並存しえない
ようにする必要がある。
に位置して、内径2.0〜3.0mm、好ましくは2.
1〜2.8mmであって、長さ2.0〜2.5cm、好
ましくは2.3〜2.5cmを有する。管壁の厚みは4
00〜600μmとして、極細管部1よりも強度、剛性
を高めるとよい。この接続部2を設けることで、本発明
のガラス化用具10を把持したり、保存用外筒7への装
填が容易になる。
する形状に開口しており、市販のオートピペットを吸引
及び吐出器具8として使用する際には、2.5〜5.7
mm、好ましくは2.8〜5.4mmの内径とするとよ
い。
化用具10としては、前記極細管部1の断面が、100
〜200μm、好ましくは180μmの内径L5を有す
る円形であり、極細管部1と、連結部3との間に接続部
2が設けられていることが望ましい。なお、卵子5でな
く胚をガラス化するためのガラス化用具では、前記極細
管部の断面が、150〜250μm、好ましくは200
μmの内径L5を有する円形であるとよい。
用器具8に装填して用いる(図3参照)ことにより一定
量の卵子または胚を正確に導入できるので、ガラス化用
具10にて保存される卵子の個数の制御も容易である。
この吸引及び吐出用器具8としては、市販のオートピペ
ットが好適に利用されうる。
に卵子5をガラス化用具10ごと保存用外筒7(図4
(a))に封入した状態として(図4(b))そのまま
保存できるので、各ガラス化用具に導入した卵子5の由
来をガラス化用具10または保存用外筒7に表記してお
けば、個々に識別することが可能である。保存用外筒7
としては、例えば精液プラスチックストロー(IMV社
製)などが好適に利用できるが、内径2.6〜2.8m
m、長さ9〜10cmを有する強度に優れたプラスチッ
ク性等の筒であればとくに限定されることはない。
方法は、ガラス化用具10を、吸引及び吐出用器具8に
装填して、ガラス化液6に懸濁された卵子または胚を極
細管部先端から導入し、極細管部に卵子または胚を入れ
た状態で該極細管部を−190〜200℃、好ましくは
約−196℃(液体窒素中など)の低温下に1〜4秒
間、好ましくは2〜3秒間曝すことにより瞬時に卵子ま
たは胚をガラス化するガラス化方法である。この方法に
より、卵子または胚に対する損傷を最小限として安定な
生存率で細胞の変性を起こすことなくガラス化を成し遂
げることができる。
クロース、20%エチレングリコール、20%DMSO
(ジメチルスルホキシド)及び20%子ウシ血清(C
S)を含むTCM199(Gibco−BRL社製)液が挙げら
れ、pH7.2〜7.4のものを用いるとよいが、適宜
の変更を加えてもよい。また、ガラス化液として、0.
6Mスクロース及び40%エチレングリコールを含む液
を用いることもできる。
培養時に、リノール酸アルブミンなどの既知の安定化用
試薬を25〜30mg/ml濃度で添加した培養液を用
いることで、融解後の生存性を向上させ得ることが知ら
れているが、本発明のガラス化用具10を用いると卵子
または胚の生存率が格段に向上されるので、かかる安定
化用試薬を使用する必要がまったくないか、または従前
の方法よりも低減することができるようになる。
は1〜10個/μl、より好ましくは2〜8個/μlと
なるように調製した後、ガラス化用具10の極細管部1
内へ、吸引及び吐出用器具8で量を調節して、例えば
0.5〜1μl、好ましくは0.6〜0.7μl程度の
量が導入されるがこの量は適宜変更してよいことはもち
ろんである。
えば、10%エチレングリコール及び10%DMSOを
含む20%子ウシ血清を添加したTCM199液)を用
いて、1〜2分間、好ましくは約2分間、37℃にて卵
子または胚を平衡化しておくことが、ガラス化液への投
入時の毒性を低減させることができるという点で望まし
い。
化のために冷却する前に、前記ガラス化液に卵子または
胚を懸濁して25〜40秒間、好ましくは約30秒間、
ガラス化液への平衡化を行うことが、ガラス化を容易に
する点で望ましい。
胚の保存方法は、如上のガラス化方法により卵子または
胚をガラス化した後、ガラス化用具10を低温下、例え
ば液体窒素中で保存用外筒7内に挿入嵌合して卵子また
は胚が入れられた極細管部1を保護して、−190〜2
00℃、好ましくは−194〜196℃、より好ましく
は−196℃の低温下に保つことを特徴としている。細
胞損傷を抑制してガラス化を行ってから、長期保存が可
能な温度下に維持することで、卵子または胚を安定に保
存することが可能となる。実際、受精卵を上記ガラス化
用具10に導入してガラス化後、液体窒素中で保存した
結果、365日以上、高い生存率で保存可能であること
が明らかになっている。
に、繁用されている液体窒素保存容器9の中に保存用外
筒7に挿入嵌合して浸漬しておくことで、卵子または胚
を保存する。
グラス(コーニング社製)に0.25Mスクロースを含
む30%子ウシ血清添加TCM199液約1mlを入れ
て37℃に加温しておき、ガラス化用具10の卵子また
は胚が導入された極細管部1を3〜5秒間浸漬して融解
し、直ちに連結部3の開口部側を指で覆うことによって
ホローグラス内へガラス化液ごと内容物を移動させる。
1分間浸漬後、次にやはり37℃に加温した0.13M
スクロースを含む25%子ウシ血清添加TCM199液
約1mlへ卵子または胚を移して5分間保持し、次いで
20%子ウシ血清添加TCM199液約1mlへ移し変
えるという三段階にて、ガラス化液を除去することが望
ましい。このような多段階操作でスクロース濃度を変化
させつつガラス化液中のDMSO及びエチレングリコー
ルを除くことが、高い生存率を得るという点で好まし
い。しかし、この工程で使用する液体も適宜の変更が可
能であり、細胞への損傷を保護できる環境下におくよう
留意さえすれば、例えば培養液としてTCM199液の
他に、ダルベッコリン酸緩衝液(D−PBS)などが利
用でき、また、スクロースの配合量を例えば0.6Mか
ら段階的に、0.3M、0.15M、最後に0Mに変化
させて用い、多段階にガラス化液を除去してもよい。
れた卵子または胚は、新鮮卵または胚と同等の生物学的
活性を保持しているので、効率のよい胚移植やクローン
作出のために適用することが可能である。
ス化方法及び保存方法を実施例によりさらに詳細に説明
するが、本発明はもとよりこれら実施例に限定されるも
のではない。
にあるウシ初期胚を、本発明のガラス化用具を用いてガ
ラス化し、所定時間液体窒素中で保存した後の発生能に
ついて検討した。
eriogenology,47巻、357頁)の方法に準じて行った。す
なわち、屠殺雌ウシの卵巣から2〜5mmの卵胞を5m
lシリンジを用いて吸引採取し、D−PBSで洗浄処理
してCOC(卵丘細胞−卵母細胞複合体)を得た。
FSH(卵胞刺激ホルモン)0.002AU/ml、エ
ストラジオール1μg/mlを含有するTCM199液
を入れた4ウェルのマルチディッシュ(ヌンク社製、カ
タログ番号176740)に1ウェル当たり30〜50
個を投入し、38.5℃にて5%CO2を含む空気中で
22時間培養して成熟させた。
後、37℃で融解し、2.5mMのテオフィリン及び1
5μg/mlのヘパリン、1%のBSA(ウシ血清アル
ブミン)及び0.25%のグルコースを含むBO液に5
×106個/mlとなるように懸濁して、この精子懸濁
液100μlに20〜30個のCOCを添加し、38.
5℃にて5%CO2を含む空気中で6時間培養すること
により媒精を行った。
除去するために0.025%のヒアルロニダーゼを含有
するPBS(−)液(カルシウム、マグネシウム不含)
中で受精卵をボルテックスミキサーを用いて洗浄した。
次いで、受精卵をミネラルオイルを被覆した4ウェルの
ディッシュにて、0.75mlの培養液中で培養した。
この際、受精後72時間までは25mg/mlのリノー
ル酸アルブミン(LAA)と3mg/mlの脂肪酸不含
BSAを添加したCRlaa培養液中で培養し、以後5
日目までBSAの代わりにCSを5%の割合で添加し、
さらに7日目まで0.1mMβ−メルカプトエタノール
を含む20%CS添加TCM199液で培養して胚を発
生させた。培養は、38.5℃にて、5%CO2を含む
空気(受精から5日目までは、空気でなく5%O2及び
90%N2となるように調整)中で行った。
して、その後1日目(2細胞期)、2日目(4〜8細胞
期)、3日目(6〜12細胞期)、4日目(8〜12細
胞期)、5日目(16細胞期〜桑実期)及び7日目(胚
盤胞期)の発育段階にあるものを用いた。
roduction and Development, 51巻、53〜58頁)の方法
を一部修正してガラス化保存を行った。すなわち、ガラ
ス化平衡液(10%エチレングリコール及び10%DM
SOを含む20%CSを添加したTCM199液)0.
05mlに3〜4個の上記供試胚を移した。2分間、3
7℃にて平衡化した後、ガラス化液(0.6Mスクロー
ス、20%エチレングリコール、20%DMSO及び2
0%CSを含むTCM199液)7μlに上記胚を移し
て37℃で保持した。次いで、本発明にかかるガラス化
用具(内径200μmのGL Tipの先端を約10m
m切断して、極細管部の長さを12mm、内径0.2m
m、接続部の長さを23mm、内径最小2.1〜最大
2.8mm、そして連結部の長さを15mm、内径最小
2.8〜最大5.4mmとしたもの)の中に、吸引及び
吐出用器具であるオートピペット(ピペットマンP−
2)を用いて、0.6〜0.7μlのガラス化液ごと胚
を吸引し、オートピペットにガラス化用具を取り付けた
まま、30秒後に液体窒素中へ胚が導入された極細管部
を浸漬し、3秒間保持した。そして、液体窒素中で長さ
10.5cm、内径2mmの保存用外筒(精液プラスチ
ックストロー、IMV社製)にガラス化用具の極細管部
を保護するように挿入、固定して、保存用外筒ごと液体
窒素保存容器に投入し、1〜30日間保存した。
ホローグラス(コーニング社製)内で、37℃に加温し
た0.25Mスクロースを及び30%CSを添加したT
CM199液約1mlに極細管部を3秒間浸漬すること
によって融解した。融解後直ちに、ガラス化用具の連結
部の開口部側を指で覆うことによってホローグラス内へ
ガラス化液ごと内容物を移動させた。
℃に加温した0.13Mスクロースを含む25%子ウシ
血清添加TCM199液約1mlへ胚を移して5分間保
持し、次いで20%子ウシ血清添加TCM199液約1
mlへ移し変えるという三段階にて、ガラス化液を除去
した。
各段階にまで発生を遂げ、ガラス化を行わなかった新鮮
胚と、上記ガラス化、保存、融解の各工程を経た後の胚
について、以下、発生能の評価を行った。
胞期胚にまで発生した胚数を計測した。また、新鮮区、
ガラス化区のうち受精7日目に胚盤胞期胚にまで発生し
た胚のいくつかを免疫蛍光2重染色法で染色し、内部細
胞塊細胞(ICM)と栄養膜細胞(TE)とを別々に計
測し、総細胞数及び内部細胞塊細胞比率(内部細胞塊細
胞/総細胞数)を算出した。すなわち、0.25%プロ
ナーゼ(Sigma社製)を添加した3mg/mlのB
SA(Sigma社製)を含むm−PBS(Gibco
一BRL社製)のドロップに胚を3〜5分間入れ、透明
帯を除去した。その後、5%血清(三菱化成社製)を含
むTCM199液(Gibco一BRL社製)のドロッ
プで5回洗浄し、10mMトリニトロベンゼンスルホン
酸(TNBS)(ナカライテスク社製)を4mg/ml
のポリビニルピロリドン(PVP、Sigma社製)を
含むPBS(日水社製)(pH7.4に調整)に融解し
た液でドロップを作って胚を入れ、氷上で10分間保持
した。5%血清を含むTCM199液のドロップで3回
洗浄し、90μlのウサギ抗ジニトロフェノール(DN
P)−BSA抗体(ICN社製)を210μlのTCM
199液で希釈し、ドロップを作って胚を入れ、38〜
39℃で30分間保温した。次に5%血清を含むTCM
199液のドロップで胚を5回洗浄し、100μlのモ
ルモット補体(Sigma社製)を10%ヨウ化プロピ
ディウム(Sigma社製)と10%ヘキスト3334
2(Sigma社製)を含む400μlのTCM199
液で希釈し、38〜39℃で15〜30分間保温した。
次に3mg/mlのBSAを加えたm−PBS中に胚を
入れて1回洗浄し、少量のm−PBSとともに胚をスラ
イドグラス上に置き、胚の細胞が重ならず、一層になる
ように拡げた。胚が完全に乾かないうちに、マウンティ
ングメディウム(K&P社製)をかけ、カバーガラスを
のせ、蛍光顕微鏡のUV励起下で鏡検した。内部細胞塊
細胞数は青く染まり、栄養膜細胞はピンクに染まるた
め、両者の識別は可能である。
示す。表1にはガラス化処理した実験区とガラス化処理
しない対照区の細胞数、内部細胞塊細胞数、栄養膜細胞
数及び内部細胞塊細胞比率を示し、図7には胚盤胞への
発生率を示した。
を用いてウシ体外受精由来の初期胚をガラス化、保存後
融解しても、新鮮胚と有意差のない、高い発生能が保持
されていることが明らかになり、従って、本発明の方法
により、損傷を与えることなく安定にガラス化を成し遂
げることができることが判った。
外受精由来初期胚に対して、このような高い生存率が得
られたのは、本発明のガラス用具によって、従来にはな
い著しく速い冷却速度が得られ、全ての胚が同様な速度
で冷却されるため、安定したガラス化が確実に行われ、
極めて細胞損傷の少ないガラス化保存を可能にしたため
である考えられる。
も高い評価を得ているOPS法と、本発明のガラス化方
法についての比較を行った。
ガラス化を行った。不飽和脂肪酸であるリノール酸アル
ブミン(LAA)を培養液へ添加することにより、融解
後の生存性が向上するが、同時に添加する血清が、胚の
安定なガラス化を困難にしているといわれている。そこ
で、OPSを用いた体外受精4日目胚のガラス化におい
て、培養液への血清の添加時期がLAA添加に及ぼす影
響と、OPSの代わりに本発明のガラス化用具を用いた
ガラス化でのLAA添加の影響とを調べた。
に行った。受精後の卵子をLAA添加区と無添加区に区
分して培養を行った。血清の添加時期については、受精
後3日(72時間)から添加する区を基準とし、精子除
去後(0時間)から添加する区と、受精後1日(24時
間)から添加する区を設けた。各区の受精4日目胚をO
PSでガラス化保存した。
ガラス化液から胚を吸引し、液体窒素へ浸漬する容器と
してOPSを用いた。すなわち、ガラス化平衡液に胚を
2分間浸漬し、次にガラス化液へ胚を移し、OPSに約
1〜2μlのガラス化液とともに胚を吸引し、30秒後
に液体窒素に浸漬した。
型3穴ホローグラス(コーニング社製)内で、37℃に
加温した0.25Mスクロースを含む30%血清を添加
したTCM199液約1mlにOPS先端を3秒間浸漬
することによって融解した。融解後直ちに、OPSの反
対側の開口部から1mlシリンジで徐々に空気を送るこ
とでホローグラス内へガラス化液とともに胚を移動させ
た。その後のガラス化液の除去については実施例1と同
様に行った。
ず、培養を継続する新鮮胚と、上記のガラス化保存、融
解の各工程を経た後の胚とについて、以下の発生能の評
価を行った。
胞期胚まで発生した胚数を計測した。受精後24時間か
ら血清を添加した実験結果を図8に示す。対照である新
鮮胚の発生率には血清の添加時期、LAAの添加の有無
に関わらず差がなかった。OPSによるガラス化保存融
解後の胚の発生率は血清の添加時期による差はなく、ど
ちらもLAA添加区の発生率が高かった。また、精子除
去後直ちに(0時間)血清を添加した実験結果を図9に
示す。対照である新鮮胚の発生率に血清の添加時期、L
AAの添加の有無による差はなかった。ガラス化融解後
の胚の発生率には血清の添加時期による差が無く、どち
らもLAAを添加した区で発生率が高かった。
果を図10及び図11に示す。新鮮区で血清の添加時期
の違いによる細胞数の変化は見られなかった。ガラス化
区においては、特にLAA無添加区で細胞数が少なく、
ガラス化による胚の傷害が大きいと思われた。
化ではLAAの添加によって生存性が高まるが、LAA
無添加では高い生存性を得られず、細胞数も新鮮胚に比
べて少ないことが分かった。ここで、OPSの代わり
に、ガラス化する際の液量を一定にできる本発明のガラ
ス化用具を用いてガラス化を行い、その際のLAA添加
の影響を調査した。
受精4日目胚を本発明のガラス化用具を用いてガラス化
を行った。実施例1の体外受精法、体外培養法を用いて
作成した胚について、ガラス化液から胚を吸引する際に
本発明にかかるガラス化用具を用いて、実施例1と同じ
ガラス化及び融解を行った。
わず培養を継続する新鮮胚と、ガラス化保存融解後の胚
について、7日目の胚盤胞への発生率を比較した。
に示す。 LAA添加の有無は新鮮胚の発生率には差が
無く、本発明のガラス化用具を用いたガラス化区でも差
は見られなかった。
化した場合は、LAA添加の効果が見られたが、本発明
のガラス化用具を用いたガラス化ではLAA無添加区で
も高い生存率が得られることが明らかとなった。これら
の結果から、内径の細い本ガラス化用具を用いること
で、ガラス化時の胚に対する条件がより良好になり、培
養液へのLAAを添加せずとも高い生存性を得る事が可
能になると思われた。
明によると培養液へのリノール酸アルブミンの添加の有
無に関わらず、新鮮胚と遜色のない発生能が達成される
ことが明らかになった。
段に抑制されるためにOPS法で要求されるガラス化安
定剤を添加する必要も回避されることが判った。
卵子または胚を安定に長期間、高い生存率をもって保存
することを可能とするためのガラス化用具及び方法が提
供される。
受精、胚移植、哺乳動物クローン作出等の効率を高める
ことが可能となる。
ラス化用具の斜視図であり、(b)はその断面図であ
る。
が導入された様子を示す極細管部の縦断面図であり、
(b)は(a)のAA線における垂直断面図である。
た様子を示す概略図である。
する際に用いる保存用外筒の斜視図(a)と、ガラス化
用具を適用した際の様子を示す斜視図(b)である。
視図(a)と、卵子が導入された様子を示す断面図
(b)である。
が保存される様子を示す概略図である。
すグラフである。
グラフである。
グラフである。
すグラフである。
すグラフである。
示すグラフである。
Claims (6)
- 【請求項1】 卵子または胚をガラス化するためのガラ
ス化用具であって、 筒状の極細管部と、該極細管部に続く、吸引及び吐出用
器具に装填するための連結部とを含み、 前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内空部分に
おいて対向する2点間の最短距離が、卵子または胚の最
小外径の2倍よりも短く、且つ卵子または胚の最大外径
よりも長いため、該極細管部の中に入った卵子または胚
が、極細管部の長手方向に対する垂直面上に2個以上並
存しえないことを特徴とするガラス化用具。 - 【請求項2】 卵子をガラス化するためのガラス化用具
であって、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の
内空部分が、内径100〜200μmの円形であり、極
細管部と、連結部との間に接続部が設けられている請求
項1記載のガラス化用具。 - 【請求項3】 胚をガラス化するためのガラス化用具で
あって、前記極細管部の長手方向に対する垂直断面の内
空部分が、内径150〜250μmの円形であり、極細
管部と、連結部との間に接続部が設けられている請求項
1記載のガラス化用具。 - 【請求項4】 卵子または胚のガラス化方法であって、 筒状の極細管部と、該極細管部に続く、吸引及び吐出用
器具に装填するための連結部とを含み、前記極細管部の
長手方向に対する垂直断面の内空部分において対向する
2点間の最短距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よ
りも短く、且つ卵子または胚の最大外径よりも長いた
め、該極細管部の中に入った卵子または胚が、極細管部
の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえないこ
とを特徴とするガラス化用具を、吸引及び吐出用器具に
装填して、ガラス化液に懸濁された卵子または胚を極細
管部先端から導入し、 極細管部に卵子または胚を入れた状態で該極細管部を−
190〜200℃の低温に曝すことにより瞬時に卵子ま
たは胚をガラス化するガラス化方法。 - 【請求項5】 前記極細管部が、液体窒素への浸漬によ
り低温に曝される請求項4記載のガラス化方法。 - 【請求項6】 卵子または胚の保存方法であって、 筒状の極細管部と、該極細管部に続く、吸引及び吐出用
器具に装填するための連結部とを含み、前記極細管部の
長手方向に対する垂直断面の内空部分において対向する
2点間の最短距離が、卵子または胚の最小外径の2倍よ
りも短く、且つ卵子または胚の最大外径よりも長いた
め、該極細管部の中に入った卵子または胚が、極細管部
の長手方向に対する垂直面上に2個以上並存しえないこ
とを特徴とするガラス化用具を、吸引及び吐出用器具に
装填して、ガラス化液に懸濁された卵子または胚を極細
管部先端から導入し、 極細管部に卵子または胚を入れた状態で該極細管部を−
190〜200℃の低温に曝すことにより瞬時に卵子ま
たは胚をガラス化し、 前記ガラス化用具を保存用外筒内に挿入嵌合して卵子ま
たは胚が入れられた極細管部を保護し、 −190〜200℃の低温下に保つことを特徴とする保
存方法。
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