JP2001249135A - ペプチド結合でタンパク質に結合したホモシステインの測定方法 - Google Patents

ペプチド結合でタンパク質に結合したホモシステインの測定方法

Info

Publication number
JP2001249135A
JP2001249135A JP2000059056A JP2000059056A JP2001249135A JP 2001249135 A JP2001249135 A JP 2001249135A JP 2000059056 A JP2000059056 A JP 2000059056A JP 2000059056 A JP2000059056 A JP 2000059056A JP 2001249135 A JP2001249135 A JP 2001249135A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
homocysteine
hcy
protein
bound
derivative
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000059056A
Other languages
English (en)
Inventor
Fumio Ukaji
文緒 宇梶
Naohiro Haniyu
尚広 羽生
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokuyama Corp
Original Assignee
Tokuyama Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokuyama Corp filed Critical Tokuyama Corp
Priority to JP2000059056A priority Critical patent/JP2001249135A/ja
Publication of JP2001249135A publication Critical patent/JP2001249135A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 被験者の負担が軽く、しかも正確に動脈硬化
症発症の危険度を判断することのできる血中ホモシステ
インの測定方法を提供する。 【解決手段】 例えばヒト血漿等のペプチド結合でホモ
システインが結合したタンパク質、遊離したホモシステ
イン及び/又は低分子量ホモシステイン誘導体、並びに
ジスルフィド結合でホモシステインが結合したタンパク
質を含む原被検体から、ジスルフィド結合で結合したホ
モシステインを遊離させて被検体を調製し、この被検体
から、遊離したホモシステイン及び低分子量ホモシステ
イン誘導体を除去してペプチド結合でホモシステインが
結合したタンパク質を分離した後、分離された当該タン
パク質を加水分解等の方法により分解してホモシステイ
ン又はその誘導体を得、次いで得られたホモシステイン
又はその誘導体の量を測定し、その測定値に基づいて被
検体中に存在するタンパク質にペプチド結合で結合した
ホモシステインの量を決定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はペプチド結合でタン
パク質に結合したホモシステインの測定方法、および当
該ホモシステインの動脈硬化症危険因子又は腎症マーカ
ーとしての使用に関する。
【0002】
【従来の技術】メチオニンは人間の必須アミノ酸で、タ
ンパク質を構成すると共に、生体内のメチル化反応にお
いてドナーとなるなど重要な働きをしている。ホモシス
テイン(以下Hcyと表記することもある)はメチル基
転位反応の結果メチオニンが脱メチル化され生成するア
ミノ酸である。生体内で発生するHcyは葉酸からメチ
ル基を受け取り再びメチオニンに変換されるか、または
セリンと縮合し、シスタチオニンを経てシステインへと
変換される。
【0003】通常、血中Hcyは上述の代謝系により低
濃度(数μM)に保たれているが、Hcy代謝系の酵素
(シスタチオニンβシンターゼ、メチルテトラヒドロ葉
酸メチルトランスフェラーゼ、メチレンテトラヒドロ葉
酸レダクターゼなど)の異常やHcy代謝系の酵素反応
に必要な補酵素(葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6
など)の不足により、血中Hcy濃度が増加することが
知られている[J. Clin. Invest., 98, 24-29(1996)、N
ature Med., 4, 386-389(1996)、N. Engl. J.Med.,338,
1042-1050(1998)]。
【0004】Hcyは側鎖にメルカプト基を持っている
ので、チオール化合物とジスルフィド結合を介して結合
しやすく、血中Hcyは、全体の70%以上がタンパク
質中のシステイン残基(側鎖にメルカプト基を持つ)に
ジスルフィド結合で結合しているといわれている[J. C
lin. Invest., 77, 1482-1486(1986)]。現在、臨床検
査の場で測定されている血中Hcy濃度は、総Hcy濃
度と呼ばれており、遊離のHcy濃度とタンパク質にジ
スルフィド結合で結合したHcy濃度の両者を合計した
値を指す。
【0005】総Hcy濃度測定法としては、種々の方法
が報告されている。これらの方法は、通常、血漿また
は血清を、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイト
ール、水素化ホウ素ナトリウム等で還元し、タンパク質
にジスルフィド結合で結合したHcyを遊離させる工
程、限外濾過膜等を用いた分子量分画またはトリクロ
ロ酢酸添加による酸沈殿などにより、タンパク質を除去
する工程、及び種々の方法にてHcyを定量する工程
という3つの工程から構成されており、3番目の工程の
定量法としては、高速液体クロマトグラフィー法(以下
HPLCと表記する場合がある)[Clin. Chem., 39, 1
764-1779(1993)]、抗体法(特表平8−506478号
公報、特表平9−512634号公報)、酵素法(PCT/
GB97/02266)が報告されている。
【0006】報告により多少ばらつきがあるが、総Hc
y濃度が15μM以上の人を高Hcy血症と言い、この
ような症状の人は動脈硬化症を発症しやすくなることが
明らかとなっている[N. Engl. J. Med., 324, 1149-11
55(1991)、JAMA, 274, 1049-1057(1995)、JAMA, 277, 1
775-1781(1997)]。また、高Hcy血症患者に葉酸、ビ
タミンB6、ビタミンB12を数mg〜数十mg摂取させる
と、多くの場合、総Hcy濃度が正常値まで低下する事
も知られており[JAMA, 274, 1049-1057(1995)、Nutrit
ion, 8, 28-34(1997)]、このことから、総Hcy濃度
を測定して異常値の場合には、該値を正常範囲に保つよ
うに適切な処置を行なえば、動脈硬化症発症が抑制でき
ると思われる。このように、総Hcy濃度は動脈硬化症
の新たな危険因子として注目を集めている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、血中総Hc
yとして測定されている、遊離Hcyとジスルフィド結
合でタンパク質に結合したHcyの量は食事の影響を受
けることが知られており、通常、食後2〜4時間で上昇
し、約8時間後には食事前のレベルに低下する。どれく
らい上昇するかは食事の内容により異なる。このため、
血中総Hcy測定は、上記食事の影響を避けるため、約
12時間絶食した後の空腹時に採血して行なう必要があ
り、検査を受ける者にとって負担となっている。
【0008】また、葉酸とビタミンB12が不足してい
る人は空腹時の血中総Hcy濃度が上昇するのに対し、
ビタミンB6が不足している人は、一定量のメチオニン
を飲んだ後における総Hcy濃度は健常人の約2倍に増
加するにもかかわらず、空腹時の総Hcy濃度は正常値
であることが知られている[J. Clin. Invest., 98,177
-184(1996)]。ビタミンB6不足群も動脈硬化症発症の
危険が高いと考えられており、このような被験者につい
て正確に動脈硬化症発症の危険度を判断するためには、
一定量のメチオニン(体重1kg当たり100mg)を
経口摂取させ、時間を追って(多くの場合、摂取直前、
摂取後4時間、摂取後8時間)血中総Hcyを測定する
メチオニン負荷試験を行なう必要がある。しかしなが
ら、該メチオニン負荷試験は、検査に要する時間が長
く、また、被験者の負担も大きいので、広く実施される
には至っておらず、空腹時血液を用いる従来の血中総H
cy測定法では、このような人達を見落とすことが懸念
されている。
【0009】このように、被験者の負担が軽く、正確に
動脈硬化症発症の危険度を判断できるHcyの測定方法
はこれまで知られておらず、このようなHcyの測定方
法が望まれている。そこで、本発明は、簡便かつ正確に
動脈硬化症発症の危険度を判断できるHcyの新たな測
定法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく、鋭意研究を行ってきたところ、血中にはペ
プチド結合でタンパク質に結合したHcy(以下、単に
「PB−Hcy」ともいう)が存在することを確認する
に至った。
【0011】なお、PB−Hcy、換言すればペプチド
結合によりHcyが結合したタンパク質(以下、単に
「Hcy化タンパク質」ともいう)は、培養細胞におい
ては存在することが確認されており[J. Biol. Chem.,
272, 1935-1942(1997)]、血中においても、存在するこ
とが示唆されてはいるものの[Atherosclerosis, 69, 1
09-113(1988)、Atherosclerosis, 88, 61-68(1991)]、
血中におけるその存在はこれまで確認されていないもの
である。
【0012】そして上記のような新たな知見に基づき更
に検討を行なった結果、従来の血中総Hcyを測定する
定法では測定することができないPB−Hcyの量を測
定する方法を見出すと共に、該方法によって測定された
PB−Hcy濃度(量)は従来測定されていた空腹時血
漿を用いて測定された総Hcy濃度と良好な相関関係を
有し、動脈硬化症の危険因子や腎症マーカーとなり得る
こと、さらに該PB−Hcy量は食事の影響を受けない
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】即ち、本発明は、ペプチド結合でホモシス
テインが結合したタンパク質(Hcy化タンパク質)、
遊離したホモシステイン及び/又は低分子量ホモシステ
イン誘導体を含む被検体から、遊離したホモシステイン
及び低分子量ホモシステイン誘導体を除去してペプチド
結合でホモシステインが結合したタンパク質を分離した
後、分離された当該タンパク質を分解してホモシステイ
ン又はその誘導体を得、次いで得られたホモシステイン
又はその誘導体の量を測定し、その測定値に基づいて被
検体中に存在するタンパク質にペプチド結合で結合した
ホモシステイン(PB−Hcy)の量を決定することを
特徴とするペプチド結合でタンパク質に結合したホモシ
ステイン(PB−Hcy)の測定方法である。
【0014】上記本発明の測定方法では、ペプチド結合
でホモシステインが結合したタンパク質(Hcy化タン
パク質)、遊離したホモシステイン及び/又は低分子量
ホモシステイン誘導体、並びにジスルフィド結合でホモ
システインが結合したタンパク質を含む原被検体から次
のような方法により調製した被検体が好適に使用でき
る。
【0015】すなわち、前記原被検体から遊離したホモ
システイン及び低分子量ホモシステイン誘導体を除去す
る工程、及び該工程を経た原被検体中のジスルフィド結
合でホモシステインが結合したタンパク質から当該タン
パク質に結合していたホモシステインを不可逆的に遊離
させる工程を含む方法により調製した被検体;または、
原被検体中のジスルフィド結合でホモシステインが結合
したタンパク質から当該タンパク質に結合していたホモ
システインを不可逆的に遊離させる方法により調製した
被検体が好適に使用できる。
【0016】また、これら本発明の測定方法においてH
cy化タンパク質を分解する前に当該Hcy化タンパク
質に結合したHcyのメルカプト基を保護した場合には
上記のHcy化タンパク質の分解をするときにより多く
の方法が使用可能となるばかりでなく、前記原被検体か
ら被検体を調製する場合において、ジスルフィド結合で
ホモシステインが結合したタンパク質から当該タンパク
質に結合していたホモシステインを不可逆的に遊離さ
せ、除去するときの操作条件が大幅に緩和されるという
メリットがある。
【0017】また、他の本発明は、ペプチド結合でタン
パク質に結合したホモシステイン(PB−Hcy)の動
脈硬化症危険因子、又は腎症マーカーとしての使用であ
り、更に他の発明は、ペプチド結合でホモシステインが
結合したタンパク質(Hcy化タンパク質)の動脈硬化
症危険因子、又は腎症マーカーとしての使用である。
【0018】なお、一般に、Hcy化タンパク質の生成
にはホモシステインチオラクトン(以下HcyTと表記
する)が関係していると考えらている[Nature Med., 4,
386-389(1996)]。該HcyTはタンパク質合成の際に
Hcyより酵素反応により生成することが示されている
[FEBS Lett., 317, 237-240(1993)]。タンパク質とH
cyTが混在すると、HcyTは非酵素的にタンパク質
のアミノ基に結合し、Hcy化タンパク質が生成する
[Nutr. Metab. Cardiovasc. Dis., 4, 70-77(1994)、
J. Biol. Chem., 272, 1935-1942(1997)]。このため、
ペプチド結合でタンパク質に結合したHcy(PB−H
cy)濃度は、HcyT濃度と高HcyT持続時間によ
り規制を受けると考えられる。さらにHcyTの生成量
はHcy量と比例関係にあることが示されていることか
ら、本発明の測定方法によって測定されるPB−Hcy
量は、例えば、糖化タンパク質が血中グルコース濃度の
中長期的マーカーとして使用されているように、血中H
cy濃度の中長期的マーカーとしても使用できることが
期待される。
【0019】さらに、前記したように、空腹時の血中総
Hcy濃度は正常値であるビタミンB6が不足している
人は一定量のメチオニンを飲んだ後にHcy量が健常人
の約2倍に増加することから、ビタミンB6不足群にお
いては食後のHcyT量も上昇し、それに伴いPB−H
cy濃度も上昇していると思われる。このことから、P
B−Hcy濃度を測定することによりビタミンB6不足
群を見分けることができるようになることも期待され
る。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明のPB−Hcyの測定方法
では、ペプチド結合でホモシステインが結合したタンパ
ク質(Hcy化タンパク質)、並びに遊離したホモシス
テイン及び/又は低分子量ホモシステイン誘導体を含む
被検体中のPB−Hcyの量を測定する。
【0021】ここで、PB−Hcyとは、タンパク質中
のアミノ酸残基のアミノ基とHcyのα−カルボキシル
基との間で形成されたペプチド結合を介して、タンパク
質に結合したHcyを指す。Hcyがペプチド結合で結
合するアミノ酸の種類は特に限定されない。例えば、ア
ミノ酸のα−アミノ基にHcyが結合したPB−Hc
y、または、リジンのε−アミノ基にHcyが結合した
PB−Hcyなどがこれに含まれる。
【0022】また、ペプチド結合でHcyが結合したタ
ンパク質(Hcy化タンパク質)とは、PB−Hcyで
述べた様式によりHcyがペプチド結合で結合したタン
パク質を指す。なお、ペプチド結合により結合したHc
yは、ホモシステイン酸の形態を採ることもある。本発
明で使用されるHcy化タンパク質は生体由来のもので
も化学的に合成されたものであってもよい。
【0023】Hcy化タンパク質を合成する場合は、例
えば文献記載のNaruszewicsらの方法[Nutr. Metab. Ca
rdiovasc. Dis., 4, 70-77(1994)]やFergusonらの方法
[J. Lipid Res., 39, 925-933(1998)]に従って、タン
パク質とホモシステインチオラクトン(HcyT)を反
応させることにより得ることができる。
【0024】また、遊離したホモシステインとは被検体
中に遊離して存在するホモシステイン(Hcy)を意味
し、遊離した低分子量ホモシステイン誘導体とは、ホモ
システイン酸、2分子のHcyがジスルフィド結合によ
り結合したホモシスチン、システイン(以下Cysと表
記することもある)にジスルフィド結合でHcyが結合
したもの、及びグルタチオンのような低分子量のCys
含有ペプチド(分子量5000以下)にジスルフィド結
合でHcyが結合したものであって、タンパク質に結合
せずに被検体中に遊離して存在するものを意味する(以
下、これらを総称して「遊離Hcy等」ともいう)。遊
離Hcy等には、はじめから被検体中に存在するものの
他、後述するような原被検体中に存在するジスルフィド
結合でHcyが結合したタンパク質に処理を施して当該
タンパク質から遊離されたHcyやホモシステイン酸も
含まれる。
【0025】本発明で使用される被検体は、Hcy化タ
ンパク質および遊離Hcy等を含有する溶液であれば特
に限定されない。例えば、血漿、血清、尿等の体液、或
いは生体から採取した臓器、組織、細胞等を含む溶液、
体液或いは組織等から特定の成分を分離或いは精製する
ことにより得られた画分、或いはこれらに何らかの処理
を施した溶液、人工的に調製されたHcy化タンパク質
溶液等が使用できる。
【0026】ただし、正確にPB−Hcyを定量するた
めには、0.1〜10mgのタンパク質を含有する被検
体を用いるのが望ましい。
【0027】また、被検体がジスルフィド結合でHcy
が結合したタンパク質、即ちタンパク質中のシステイン
(Cys)残基にジスルフィド結合を介してHcyが結
合したタンパク質を含有しない場合にはそのまま被検体
とすることができるが、該タンパク質を含有する場合
(本発明ではこのようなタンパク質を含む被検体を「原
被検体」といい、被検体と区別して用いる)には、PB
−Hcyの測定精度の観点から、当該タンパク質にジス
ルフィド結合で結合しているホモシステインを不可逆的
に遊離させる処理(単に「遊離化処理」ともいう。)を
施したものを被検体とするのが好適である。
【0028】例えば、後述するように、PB−Hcy、
Hcy化タンパク質は、動脈硬化症の危険因子、または
腎症マーカーとして使用することができるので、臨床検
査の目的で本発明のPB−Hcy測定法を使用する場合
は、採取し易い体液由来の溶液若しくは懸濁液について
測定を行なうのが好適であるが、これら溶液若しくは懸
濁液は、一般にジスルフィド結合でHcyが結合したタ
ンパク質を含むので、遊離化処理を行なうのが好適であ
る。
【0029】原被検体を遊離化処理する方法は、ジスル
フィド結合を切断し、タンパク質からジスルフィド結合
により結合したHcyを切り離すことができる方法であ
れば特に限定されず、還元または酸化によりジスルフィ
ド結合を切断する方法等が採用できる。
【0030】還元によるジスルフィド結合の切断は、還
元剤を用いて行なうことができる。この時、好適に使用
できる還元剤を例示すれば、トリ−n−ブチルフォスフ
ィン、ジチオトレイトール、2−メルカプトエタノー
ル、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。この方法
では、原被検体に上記還元剤を終濃度0.1〜100m
Mとなるように添加し、15〜70℃で0.5〜2時間
放置することにより、ジスルフィド結合を還元し、ジス
ルフィド結合でタンパク質に結合した実質的に全てのH
cyをタンパク質から切り離すことができる。なお、P
B−Hcyはペプチド結合でタンパク質に結合している
ので、このような還元処理をおこなってもHcy化タン
パク質から遊離することはない。
【0031】酸化によるジスルフィド結合の切断は、過
ぎ酸を用いて酸化することにより好適に行うことができ
る。例えば、新生化学実験講座 第1巻 タンパク質II
一次構造(第1版 東京化学同人 1990年発行)76
ページに記載されているように、9.5mlの99%ぎ
酸に0.5mlの30%過酸化水素を加え、室温で2時
間放置して調製した過ぎ酸溶液を、原被検体に適当量添
加し、−5℃にて2.5時間反応させ、過ぎ酸酸化を行
えばよい。このような操作により、ジスルフィド結合は
開裂し、ジスルフィド結合によりタンパク質に結合した
Hcyはほぼ全量ホモシステイン酸に酸化されて遊離す
る。なお、このような処理でPB−Hcyはそのメルカ
プト基が酸化されてホモシステイン酸(ホモシステイン
酸は、後述するメルカプト基が保護されたHcyに相当
する)となるが、ペプチド結合は過ぎ酸酸化によって切
断されず、Hcy化タンパク質は実質的な影響を受けな
い。
【0032】このような原被検体の遊離化処理は、予め
原被検体から当該原被検体中にはじめから存在する遊離
Hcy等を除去してから行なってもよい。遊離Hcy等
の除去は、後述する被検体からの遊離Hcy等の除去方
法と同様に行なうことができる。
【0033】遊離化処理が施された原被検体が本発明の
測定方法で用いられる被検体となるが、原被検体に直接
遊離化処理を行なって被検体を得た場合には、得られる
被検体中の遊離Hcy等は、原被検体中にはじめから存
在する遊離Hcy等、及び遊離化処理によって遊離した
Hcy又はホモシステイン酸になる。これに対し、予め
原被検体から当該原被検体中にはじめから存在する遊離
Hcy等を除去してから遊離化処理を行なって被検体を
得た場合には、得られる被検体中の遊離Hcy等は、遊
離化処理によって遊離したHcy又はホモシステイン酸
となる。
【0034】本発明の測定方法では、先ず、被検体から
遊離したホモシステイン及び低分子量ホモシステイン誘
導体(遊離Hcy等)を除去してHcy化タンパク質を
分離する(このような工程を「Hcy化タンパク質分離
工程」ともいう)。被検体から遊離Hcy等を除去して
Hcy化タンパク質を分離する方法は特に限定されない
が、タンパク質と遊離Hcy等との分子量や溶解度の差
異を利用して被検体を分画し、Hcy化タンパク質を含
むタンパク質画分を回収することにより好適に行なうこ
とができる。
【0035】例えば、分子量の差異により遊離Hcy等
を除去する場合には、ゲル濾過カラムクロマトグラフィ
ー、限外濾過等が利用できる。ゲル濾過カラムクロマト
グラフィーによる場合には、担体を充填したカラムに被
検体を添加し、タンパク質溶出画分を分取すればよい。
担体としては、セファデックスG−25、G−50(ア
マシャムファルマシアバイオテク社)、バイオゲルP−
2、P−4(バイオラッド社)等の市販のゲル濾過担体
を使用することができる。また、限外濾過による場合に
は、市販の分画分子量5000の限外濾過膜(ミリポア
社、ザルトリウス社など)等を使用して被検体を濾過
し、タンパク質画分を回収すればよい。この場合、遊離
Hcy等を完全に除去するために、タンパク質画分に、
例えば、緩衝液等の溶液を添加し、3〜5回濾過を繰り
返すのが好適である。
【0036】また、溶解度の差異により遊離Hcy等を
除去する場合には、被検体に酸や有機溶媒を添加し、タ
ンパク質のみを沈殿させ、これを分離回収することによ
り実施することができる。例えば、酸を使用する場合
は、トリクロロ酢酸、過塩素酸等を終濃度5〜50%と
なるように被検体に添加し、タンパク質を沈殿させた
後、遠心分離にてタンパク質を回収すればよい。また、
有機溶媒を使用する場合には、アセトン、エタノール等
を終濃度10〜80%となるように被検体に添加し、遠
心分離にてタンパク質を回収すればよい。これら溶解度
の差異による方法においては、遊離Hcy等を完全に除
去するために、回収されたタンパク質画分に、例えば、
5〜90%の有機溶媒を含む溶液を添加し、遠心分離で
タンパク質画分を回収するという洗浄操作を3〜5回繰
り返すのが好適である。
【0037】通常、このような方法で遊離Hcy等とタ
ンパク質成分とを分離し、95%以上の回収率でタンパ
ク質成分を回収することができる。
【0038】なお、原被検体から被検体を調製するに際
し、ジスルフィド結合を過ぎ酸酸化により切断した場合
には、上記Hcy化タンパク質分離工程中にジスルフィ
ド結合が再生することはないが、ジスルフィド結合を還
元により切断した場合には、酸素等との接触によりメル
カプト基が再酸化され、ジスルフィド結合によりタンパ
ク質に結合したHcyが再生されることがあるので、還
元後の遊離Hcy等の除去操作は、使用するクロマトグ
ラフィー担体、溶液等から酸素を除去し、このような再
生が起こらないように注意深く行う必要がある。ただ
し、後述するメルカプト基の保護を還元操作に続いて実
施すれば、特に酸素に注意しなくてもジスルフィド結合
が再生されることはないので操作の簡便性が高まる。
【0039】本発明の測定法では、Hcy化タンパク質
分離工程で分離されたHcy化タンパク質を分解してH
cy又はその誘導体を得る。すなわち、上記Hcy化タ
ンパク質のペプチド結合を切断し、Hcy化タンパク質
からPB−HcyをHcy又はその誘導体の形で遊離さ
せる(以下、これら遊離物を総称して、「PB遊離Hc
y等」ともいう。また、このような工程を「PB−Hc
y遊離工程」ともいう)。
【0040】PB−Hcy遊離工程においてHcy化タ
ンパク質からPB遊離Hcy等を得る方法としては、前
記の様にして分離された、Hcy化タンパク質を含む全
タンパク質(以下、「全分離タンパク質」ともいう)中
の全ペプチド結合を切断する方法(「全ペプチド切断
法」ともいう)、及びPB−Hcyが結合しているペプ
チド結合を含む特定のペプチド結合を切断する方法
(「選択的ペプチド切断法」ともいう)等が挙げられ
る。
【0041】全ペプチド切断法としては、例えば、新生
化学実験講座 第1巻 タンパク質II一次構造(第1版
東京化学同人1990年 発行)25〜30ページ記載
の、酸加水分解法、アルカリ加水分解法、又は酵素加水
分解法等が利用できる。また、選択的ペプチド切断法と
しては、例えば、新生化学実験講座 第1巻 タンパク質
II 一次構造(第1版 東京化学同人1990年 発行)
153〜198ページ記載のエドマン分解法、又はPB
−Hcyのペプチド結合を特異的に切断する酵素を用い
る方法等が利用できる。以下、これら分解方法について
詳しく説明する。
【0042】1.全ペプチド切断法 (1)酵素加水分解法 該方法は、酵素を用いた方法の一般的な特徴であるが、
温和な条件(10〜50℃、pH5〜9、常圧)で実施
できるので、Hcyが破壊されることはない(このこと
は他の酵素を用いた方法についても言えることであ
る)。該方法は、例えば、パパイン、ロイシンアミノペ
プチダーゼ、プロリンジペプチダーゼ等の基質特異性の
広いプロテアーゼとペプチダーゼの混合物を用いて行な
うことができる。
【0043】(2)酸加水分解法およびアルカリ加水分
解法 酸加水分解法としては、全分離タンパク質に塩酸を加
え、2〜6N塩酸とし、減圧下100〜150℃にて1
2〜48時間加水分解するという方法を示すことができ
る。アルカリ加水分解法としては、全分離タンパク質に
水酸化ナトリウム溶液を添加して水酸化ナトリウム濃度
を20〜80%とし、減圧下100〜150℃にて12
〜48時間加水分解するという方法を示すことができ
る。
【0044】ただし、これら加水分解法では、Hcyは
破壊されることがあるため、PB遊離Hcy等の量の測
定が困難となる。このため、測定の正確性を高めるため
に、Hcy化タンパク質の分解を行なう前にPB−Hc
yのメルカプト基を保護するのが好適である。
【0045】Hcyのメルカプト基の保護は、保護され
たHcyがペプチド結合の加水分解に対して安定となる
ような方法、例えば、Hcyのメルカプト基を酸化す
る、又はアルキル化する等の方法により好適に行なうこ
とができる。
【0046】過ぎ酸酸化の結果生じるホモシステイン酸
は、酸加水分解耐性であため、Hcyのメルカプト基の
酸化による保護は、例えば過ぎ酸を用いた酸化によって
好適に行なうことができる。原被検体から被検体を調製
する際の遊離化処理において過ぎ酸酸化を行なった場合
には、すでにPB−Hcyはホモシステイン酸の形に変
化しているため、改めてメルカプト基の保護を行なう必
要はない。
【0047】また、Hcyのメルカプト基のアルキル化
は、ヨード酢酸、4−ビニルピリジン、4−(アミノス
ルフォニル)−7−フルオロ−2,1,3−ベンゾキサ
ジアゾール{4-(Aminosulfonyl)-7-fluoro-2,1,3-benzox
adiazole;以下「ABD−F」と表記する}、アンモニ
ウム 7−フルオロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジア
ゾール−4−スルフォネート(Ammonium 7-fluorobenzo
-2-oxa-1,3-diazole-4-sulfonate;以下「SBD−F」
と表記する)等のアルキル化試薬を用いて、例えば、新
生化学実験講座 第1巻 タンパク質II 一次構造(第1
版 東京化学同人1990年発行)77〜80ページ記
載の方法、Toyo'okaらの方法[Anal. Chem.57, 1931-19
37(1985)]、Treuheitらの方法[Anal. Biochem. 212,
138-142(1993)]に従って実施することができる。
【0048】なお、メルカプト基のアルキル化は、該メ
ルカプト基が酸化されている場合には進行しないので、
このような場合には、トリ−n−ブチルフォスフィン、
ジチオトレイトール、2−メルカプトエタノール等の還
元剤を用いてメルカプト基に還元する必要がある。
【0049】例えば、還元による遊離化処理とHcy化
タンパク質分離工程を経て得た全分離タンパク質をアル
キル化する場合には、該分離工程中にメルカプト基が酸
化されてしまう可能性があるので、これに還元剤を0.
1〜100mM添加し、15℃〜70℃で0.5〜2時
間放置することで還元し、次いで、アルキル化剤を0.
1〜1M添加し、10〜70℃で0.5〜18時間放置
することでメルカプト基のアルキル化を行うことができ
る。また、例えば、還元による遊離化処理に引き続いて
アルキル化を行う場合は、遊離化処理によって調製した
被検体にアルキル化剤を0.1〜1M添加し、10〜7
0℃で0.5〜18時間放置することでメルカプト基の
アルキル化を行うことができる。なお、メルカプト基の
アルキル化を行う場合は、メルカプト基に特異的に反応
がおこるようにするために、反応液のpHを8〜9の範
囲に保つことが必要である。この目的のためには、0.
01〜5Mの緩衝液を使用するればよい。緩衝液の種類
としては、pH8〜9で緩衝能が高いものであれば、公
知の緩衝液が制限なく使用できる。好適に使用できる緩
衝液を例示すれば、トリス塩酸緩衝液、ほう酸緩衝液等
が挙げられる。
【0050】アルキル化剤として4−ビニルピリジン、
ABD−F、SBD−Fを使用する場合は、還元剤とし
てトリ−n−ブチルフォスフィンを用いれば、還元とア
ルキル化が同時に行え、操作を簡便にできる。この場合
は、終濃度0.1〜1Mとなるようにアルキル化剤を添
加し、次いで還元剤を終濃度0.1〜100mMとなる
ように添加し、15〜70℃で0.5〜18時間放置し
反応させれば、ほぼ完全に両反応を行なうことができ
る。
【0051】2.選択的ペプチド切断法 (1)エドマン分解法 該方法では、遊離のα−アミノ基を持つアミノ酸のみを
タンパク質から切断するので、Hcy化タンパク質か
ら、PB−Hcy(誘導体)を遊離させることができ
る。なお、該方法では同時にタンパク質本来のN末端ア
ミノ酸も遊離する。
【0052】該方法では、先ず、トリエチルアミン存在
下にHcy化タンパク質のPB−Hcyのアミノ基にフ
ェニルイソチオシアネート(「PITC」ともいう)を
反応させ、フェニルチオカルバモイル化(PTC化)す
る。次いで、これにトリフルオロ酢酸を加えて酸性にし
てアミノチアゾリノン化(ATZ化)し、遊離させる。
【0053】なお、遊離したATZ化されたHcyは、
ヘプタン−酢酸エチル(1:5)またはベンゼン−アセ
トニトリル(2:1)等で抽出し、トリフルオロ酢酸、
塩酸等の酸を添加することによって、フェニルチオヒダ
ントイン化(PTH化)することもできる。
【0054】また、PITCの代わりに、例えば、新生
化学実験講座 第1巻 タンパク質II一次構造(第1版
東京化学同人1990年 発行)182〜194ページ
に記載されている4−ジメチルアミノアゾベンゼン−
4'−イソチオソアネートのようなPITC誘導体を使
用し、同様の操作によりエドマン分解を行うことができ
る。この場合には、使用したPITC誘導体により修飾
されたHcyが遊離する。
【0055】エドマン分解法を採用する場合も、酸又は
アルカリ加水分解を行なうときと同じ理由により、予め
Hcyのメルカプト基を保護しておくのが好ましい。
【0056】(2)PB−Hcyのペプチド結合を特異
的に切断する酵素を用いる方法 該方法は、例えば、Hcy化タンパク質中のアミノ酸残
基のアミノ基とHcyのα−カルボキシル基との間で形
成されたペプチド結合を特異的に切断する酵素を利用す
ることにより実施できる。このような性質の酵素は、例
えば、微生物、植物、動物組織などの抽出液を合成Hc
y化タンパク質に作用させ、酵素活性をスクリーニング
することにより得ることができる。
【0057】PB−Hcy遊離工程においては上述した
ような種々の分解法が使用できるが、定量性、簡便性の
点から、全ペプチド切断法を採用するのが好適であり、
なかでも確実にほぼ全てのペプチド結合を切断できると
いう点で、塩酸を用いた方法を採用するのが特に好適で
ある。
【0058】本発明の測定方法では前記PB−Hcy遊
離工程において得られたPB遊離Hcy等の量を測定す
る。PB遊離Hcy等の定量測定は、PB−Hcy遊離
工程で得られた他の分解生成物(他のアミノ酸)の中か
らPB遊離Hcy等を分離し、定量する(このような工
程を「PB遊離Hcy等定量工程」ともいう。)ことに
より実施される。
【0059】例えば、(i)PB−Hcy遊離工程におい
て酵素を用いた方法を採用した場合には、PB遊離Hc
y等としてHcy又はホモシステイン酸を、(ii)アルキ
ル化によりホモシステインのメルカプト基の保護を行な
いPB−Hcy遊離工程を行なった場合は、使用したア
ルキル化試薬の種類に応じて、S−カルボキシメチルH
cy、S−4−ピリジルエチルHcy、S−ABD−H
cy、S−SBD−Hcy等、およびこれらのPTH誘
導体(エンドマン分解法を採用した場合)を、(iii)酸
化によりホモシステインのメルカプト基の保護を行ない
PB−Hcy遊離工程を行なった場合は、ホモシステイ
ン酸またはホモシステイン酸のPTH誘導体(エンドマ
ン分解法を採用した場合)を分離、定量すればよい。
【0060】PB−Hcy遊離工程で得られた他の分解
生成物(すなわち、他のアミノ酸およびその誘導体等)
との混合物の中からPB遊離Hcy等を分離する方法と
しては、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ
ィー、電気泳動等の公知の方法が特に制限なく利用でき
る。これら方法の中でも、操作の簡便性、分析の容易
さ、定量値の正確さなどから、液体クロマトグラフィ
ー、特に液体カラムクロマトグラフィーを採用するのが
好適である。
【0061】液体カラムクロマトグラフィーとしては、
イオン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロ
マトグラフィー、疎水性カラムクロマトグラフィー、等
電点カラムクロマトグラフィー、アフィニティーカラム
クロマトグラフィー、ゲル濾過カラムクロマトグラフィ
ー等が挙げられる。分離に使用するカラムは、市販の充
填済みカラムが何ら制限なく使用できる。また、市販の
クロマトグラフィー担体をカラムに充填し、使用しても
よい。カラムの材質としては特に制限はなく、例えば、
ガラス製、プラスチック製、ステンレス製等のカラムが
使用できる。
【0062】しかしながら、PB遊離Hcy等の種類に
よって分離に適したクロマトグラフィーがあるので、実
際の測定に際しては、PB遊離Hcy等の種類に応じて
適したクロマトグラフィーを適宜選択すればよい。例え
ば、比較的疎水性の高いS−ABD−HcyとS−SB
D−Hcy、及びメルカプト基が保護されたHcyのP
TH誘導体を分離するときには逆相カラムクロマトグラ
フィーを採用するのが好適であり、Hcy、ホモシステ
イン酸、S−カルボキシメチルHcy、S−ピリジルエ
チルHcyを分離するときには、逆相カラムクロマトグ
ラフィー又はイオン交換カラムクロマトグラフィーを採
用するのが好適である。
【0063】また、液体カラムクロマトグラフィーを実
施する際の、カラムへの送液方法は、ポンプを用いずに
静水圧差によって行ってもよいし、ポンプを使用しても
よい。高性能ポンプを搭載した専用装置を使用し、いわ
ゆる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分
離を行うと、短時間に分析ができ、自動化も容易であ
る。被検体の分解産物を各種カラムクロマトグラフィー
によって粗精製し、夾雑物をある程度除去した後にHP
LCにより分析し、HPLCによる定量を容易にするこ
ともできる。
【0064】また、PB遊離Hcy等の分離には、アフ
ィニティーカラムクロマトグラフィーを利用することも
できる。例えば、新生化学実験講座 第12巻 分子免疫
学III抗原・抗体・補体(第1版 東京化学同人1992
年発行)1〜31ページ記載の方法により、各PB遊離
Hcy等の種類に応じてそれらに特異的な抗体を作製
し、当該抗体を、例えば新生化学実験講座 第1巻 タン
パク質I 分離・精製・性質(第1版 東京化学同人19
90発行)214〜257ページ記載の方法に従って、
抗体が結合したアフィニティー担体を調製し、アフィニ
ティーカラムクロマトグラフィーを実施することで分離
することができる。このとき、抗体作製を容易にするた
めに、PB遊離Hcy等のアミノ基またはカルボキシル
基を修飾し抗原性の高い化合物を結合させ、これを抗原
として特異的な抗体を調製し、アフィニティーカラムク
ロマトグラフィー担体を調製することもできる。
【0065】このような方法により分離されたPB遊離
Hcy等の検出・定量には、公知の方法が何ら制限なく
利用できる。すなわち、吸光度、蛍光、或いは発光の測
定、質量分析、又は電気化学的方法等の公知の方法の中
からPB遊離Hcy等の種類に応じて好適な方法を適宜
選択して採用すればよい。
【0066】例えば、Hcyはメルカプト基をもつの
で、Malinowらの方法[Circulation,79, 1180-1188(198
9)]と同様に、金−水銀電極を用いた電気化学検出器に
より検出することができる。なお、この検出器によれば
遊離のメルカプト基を特異的に検出することができる。
【0067】また、メルカプト基が保護されたHcy、
メルカプト基が保護されたHcyのPTH誘導体を検出
・定量する場合には、保護剤に特異的な吸光度や蛍光が
あれば、この性質を利用してこれらを定量することがで
きる。保護剤由来の吸光度や蛍光をモニターすれば、保
護剤の結合していない他のアミノ酸は検出されないの
で、液体クロマトグラフィーによる分離が不十分であっ
てもメルカプト基の保護されたHcyの定量が可能にな
る。ただし、Cysのメルカプト基もHcyと同様に保
護されるので、CysとHcyの分離だけは完全に行わ
なければならない。
【0068】このようなPB遊離Hcy等の検出に利用
できる保護剤を例示すると、4−ビニルピリジン、AB
D−F、SBD−F等が挙げられる。S−ピリジルエチ
ルHcyは254nmに特異的な吸収があり、S−AB
D−HcyとS−SBD−Hcyは蛍光(励起 380
nm、発光 500〜510nm)を発する。特に、S
−ABD−HcyとS−SBD−Hcyは強力な蛍光を
発するので、高感度測定が可能である。また、エドマン
分解の結果生じるメルカプト基が保護されたHcyのP
TH誘導体は、PTH誘導体に特異的な吸収(269n
m)をモニターすることによっても検出、定量すること
ができる。
【0069】また、新生化学実験講座 第1巻 タンパク
質II 一次構造(第1版 東京化学同人1990年発行)
30〜53ページに記載されているアミノ酸分析のよう
に、検出容易な標識物でPB遊離Hcy等を標識し、こ
れを検出・定量する方法も好適に採用できる。具体的に
は、イオン交換カラムによってアミノ酸を分離し、ニン
ヒドリン、o−フタルアルデヒド等アミノ酸標識剤によ
りアミノ酸を標識しこれを検出・定量する所謂ポストカ
ラム法、又はo−フタルアルデヒドやフェニルイソチオ
シアネート等の標識剤により予めアミノ酸を誘導体化し
た後に逆相カラムで分離し、標識物を検出・定量する所
謂プレカラム法が好適に採用できる。
【0070】液体カラムクロマトグラフィーによりPB
遊離Hcy等を分離し、これを検出・定量する場合に
は、操作の簡便性、正確性という観点から、“PB遊離
Hcy等の種類、クロマトグラフィー法、および検出・
定量法との組み合わせ”としては、PB遊離Hcy等が
Hcyであり、分離法が逆相カラムクロマトグラフィー
あり、電気化学検出器により検出・定量する組合わせ;
PB遊離Hcy等がS−ABD−HcyまたはS−SB
D−Hcyであり、分離法が逆相カラムクロマトグラフ
ィーであり、蛍光をモニターすることで検出・定量する
組合わせ等が好適である。
【0071】本発明の測定方法では、このようにして測
定されたPB遊離Hcy等の量に基づいて被検体中、ひ
いては原被検体中に存在するPB−Hcyの量を決定す
る。該PB−Hcy量の決定は、実際の操作手順に則し
て、前記したHcy化タンパク質分離工程におけるHc
y化タンパク質の回収率、PB−Hcy遊離工程におけ
るPB遊離Hcy等の遊離効率、およびPB遊離Hcy
等定量工程に供したサンプルの使用量(より具体的に
は、全サンプル量に対する分析に実際に使用したサンプ
ル量の割合)を考慮して行なえばよい。また、原被検体
中のPB−Hcyの量は、さらに被検体を調製する際の
希釈率や濃縮率等を考慮することにより簡単に決定する
ことができる。
【0072】血漿を原被検体とし、PB−Hcy量を測
定する場合を具体例として、以下説明する。
【0073】すなわち、先ず、一定量のヒト血漿(例え
ばタンパク質量 0.1〜10mg)を原被検体とし、
これを還元アルキル化で使用する緩衝液(pH8〜9)
で平衡化したゲル濾過カラムでゲル濾過し、遊離Hcy
等の低分子量成分を除去し、タンパク質画分を回収す
る。次いで回収されたタンパク質画分にABD−Fまた
はSBD−Fを添加し、次いで、トリ−n−ブチルフォ
スフィンを添加し、一定時間放置し、ジスルフィド結合
の切断とメルカプト基の保護を行い、被検体を調製す
る。次いで、ゲル濾過により被検体から遊離Hcy等
(ジスルフィド結合でタンパク質に結合していたHc
y)を除去し、タンパク質画分(全分離タンパク質)を
回収する。回収した全分離タンパク質に塩酸を添加し、
減圧下封管後加熱しタンパク質成分の全ペプチド結合を
加水分解する。次いで、この分解物の全量を逆相HPL
Cで分析し、蛍光をモニターすることで、S−ABD−
HcyまたはS−SBD−Hcyを検出・定量する。こ
の場合、Hcy化タンパク質分離工程におけるHcy化
タンパク質の回収率とPB−Hcy遊離工程におけるP
B遊離Hcy等の遊離効率はほぼ100%であるので、
原被検体から被検体を調製する際の希釈率を考慮して、
原被検体中のPB−Hcy量を決定する。
【0074】また、上記方法で測定されるPB−Hcy
量から決定される、ヒト血漿中のPB−Hcy濃度は、
後述する実施例で示されるように、既に動脈硬化症の危
険因子として使用されている血中総Hcy濃度と高度に
相関する。また、腎症患者を対象に上記方法と同様にし
て測定されたPB−Hcy濃度は、健常者のそれに比べ
て有意に高いことが明らかになった。従って、ペプチド
結合によりタンパク質に結合したHcyは動脈硬化症の
危険因子又は、腎症マーカーとして使用できることが実
証された。
【0075】また、本発明者らが本発明の測定方法に基
づいて、ヒト血漿についてPB−Hcy濃度の測定を行
なったところ、PB−Hcy濃度は血漿中のタンパク質
濃度に比べて著しく低いことから、ヒト血漿中のHcy
化タンパク質には1分子につき1分子のPB−Hcyが
結合していることが明らかとなった。したがって、Hc
y化タンパク質濃度もPB−Hcy濃度と同様に動脈硬
化症の危険因子及び、腎症マーカーとして使用できるこ
とが確認された。
【0076】なお、Hcy化タンパク質は、特異的抗体
を用いた方法、または各種液体カラムクロマトグラフィ
ー等のような公知の方法により測定することも可能であ
る。
【0077】特異的抗体を用いた測定法に使用されるH
cy化タンパク質特異的抗体は、例えば、Fergusonら
[J. Lipid Res., 39, 925-933(1998)]のように、試験
管内でタンパク質とホモシステインチオラクトン(Hc
yT)を反応させて合成したHcy化タンパク質をウサ
ギに注射して調製することができる。または、抗体の調
製を容易にするために、PB−Hcyのメルカプト基を
修飾し、抗原性を高めたHcy化タンパク質誘導体を抗
原とし、当該Hcy化タンパク質誘導体特異的抗体を調
製することもできる。
【0078】特異的抗体を用いた測定方法としては、例
えば、新生化学実験講座 第12巻分子免疫学III 抗原
・抗体・補体(第1版 東京化学同人1992年発行)
33〜117ページ、または、酵素免疫測定法(第3版
医学書院 1987年発行)記載のラテックス凝集法、
ラジオイムノアッセイ法、エンザイムイムノアッセイ
法、蛍光イムノアッセイ法、化学発光イムノアッセイ法
等を挙げることができる。
【0079】Hcy化タンパク質の定量に使用する各種
液体カラムクロマトグラフィーとしては、例えば、イオ
ン交換カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマト
グラフィー、疎水性カラムクロマトグラフィー、等電点
カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。Hcy化タ
ンパク質の検出は、紫外部(205〜280nm)での
吸光度によって実施してもよいし、例えば、同仁化学研
究所総合カタログ(第21版)244〜277ページ記
載の、市販の各種ラベル化剤によりタンパク質をラベル
し検出してもよい。
【0080】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明は以下の実施例によって限定されるもので
はない。
【0081】実施例1[アルブミン中のPB−Hcyの
測定] 原被検体としてヒト血液中の主要なタンパク質であるア
ルブミンを含有する液使用し、PB−Hcyの測定を行
った。
【0082】(1)[S−ABD−Hcyの合成] 100μmolのDL−ホモシステイン(シグマ社)を
3mlの純水に溶解し、トリエチルアミンでpHを8.
5に調整した。90μmolのABD−F(同仁化学研
究所)を1mlのアセトニトリルに溶解し、このABD
−F溶液を全量ホモシステイン溶液に加え、よく混合
し、トリエチルアミンでpHを8以上に調整した。60
℃で20分間反応させた後、反応液を逆相HPLCにて
分離し、S−ABD−Hcyを分取した。質量分析によ
り目的物の純度検定と同定を行った。逆相HPLCの条
件は以下の通りである。
【0083】ポンプ:600E マルチソルベントシス
テム(ウオーターズ) カラム:Lichrosorb 100 RP−18(4.
6×250mm関東化学) 溶媒A:0.09%トリフルオロ酢酸(以下TFAと表
記する場合がある) 溶媒B:0.075%TFA,80%アセトニトリル 溶出:0−28%溶媒B/25分 流速:1ml/分 検出:蛍光(励起 380nm、発光 500nm)。
【0084】(2)[アルブミンのメルカプト基のAB
D−Fによる保護] 0.799mlの0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(S
DS)と2mM エチレンジアミン4酢酸(EDTA)
を含む100mM ほう酸緩衝液(pH8.2)、0.
1mlの20mg/mlヒト血清アルブミン(シグマ
A3782)溶液 、0.1mlの40mM ABD−F
溶液(ジメチルホルムアミドに溶解)、0.001ml
の0.5M トリ−n−ブチルフォスフィン溶液(ジメチ
ルホルムアミドで希釈)を混合し、総容量1mlの反応
液を調整した。この反応液を60℃で30分間保温し、
アルブミンのメルカプト基とABD−Fを反応させ、被
検体を調製した。反応終了後、20mlの0.05%S
DSで平衡化したPD−10カラム(アマシャムファル
マシアバイオテク社)で被検体をゲル濾過し、遊離Hc
y等(ジスルフィド結合でタンパク質に結合していたH
cy)と過剰の試薬を除去した。PD−10によるカラ
ム操作は以下のように行った。1mlの試料をアプライ
し、次いで1.5mlの0.05%SDSをアプライ
し、これらの部分の溶出液を廃棄した。2mlの0.0
5%SDSをアプライし、この時の溶出液(全分離タン
パク質)を回収した。
【0085】(3)[塩酸によるアルブミンの加水分
解] 全分離タンパク質(2ml)に2mlの12N塩酸を分
注し、減圧下に封管した。これを110℃で20時間加
熱して全ペプチド結合を加水分解した。
【0086】(4)[S−ABD−HcyのHPLCに
よる分析] 加水分解後の溶液を試験管に移し、試験管エバポレータ
ー(TVE1000、東京理化器械社)で乾固した。乾
固した試料に1mlの純水を加えて溶解させ、再度エバ
ポレーターで乾固した。同様の操作をもう一度行った
後、2mlの純水に溶解させた試料を小試験管に移し、
遠心濃縮機で乾固した。これに0.5mlの0.09%
トリフルオロ酢酸(TFA)を加え良く懸濁し、遠心
式フィルター(0.22μm)を用いて、5000rp
mで1分間遠心することで不溶物を除去し、逆相HPL
Cにて分離定量した。カラムはLichrosorb
100RP−18(4.6×250mm,関東化学社)
とInertsil ODS−2(4.6×250m
m,ジーエルサイエンス社)を使用した。溶媒A(0.
09% TFA)で平衡化したカラムに試料を吸着させ、
溶媒B(0.075% TFA、80%アセトニトリル)
の濃度を直線的に増加させ(0−28%溶媒B/25
分)、1ml/分の流速で溶出を行った。S−ABD−
Hcyは蛍光(励起380nm、発光500nm)によ
りモニターした。試料の分析に先立ち、合成S−ABD
−Hcyを分析し、各逆相カラムでのS−ABD−Hc
yの溶出位置を確かめた{図1(カラム:Lichro
sorb 100RP−18)、図2(カラム:Ine
rtsil ODS−2)}。
【0087】合成S−ABD−Hcyと同じ溶出条件
で、試料をLichrosorb 100RP−18で
分離し、約28分のピークを分取した(図3)。この画
分を遠心濃縮機で乾固し、溶媒Aに溶解し、次にIne
rtsil ODS−2で分離した。(図4)図中矢印
で示したピークがS−ABD−Hcyである。このピー
クの同定と純度検定は、ピークを分取し、プレラベル法
のアミノ酸分析と各種逆相HPLCにより実施した。
【0088】S−ABD−Hcy量はピーク面積から算
出した。計算には合成S−ABD−Hcyにより作製し
た検量線を使用した。この結果、30nmolのアルブ
ミンには0.03nmolのPB−Hcyが含まれるこ
とが明らかとなった。即ち、0.1%のアルブミンに、
Hcyがペプチド結合により結合していることが判明し
た。
【0089】実施例2[ヒトプール血漿中のPB−Hc
yの測定] 市販のヒトプール血漿(コスモバイオ社712−10)を
原被検体として、PB−Hcyの測定を行った。
【0090】(1)[血漿中の遊離Hcy等の除去] PD−10カラムを20mlの0.5%SDSと2mM
EDTAを含む100mM ほう酸緩衝液(pH8.
2)で平衡化した。このカラムを用いて、ヒトプール血
漿1mlをゲル濾過し、血漿溶液を調製した。この操作
により、遊離Hcy等が除去できる。PD−10のカラ
ム操作は実施例1の(2)と同様に行った。
【0091】(2)[血漿タンパク質のABD−Fによ
るメルカプト基の保護] アルブミン溶液のかわりに実施例2(1)で調製した血
漿溶液を使用する他は実施例1(2)と同様にして、血
漿タンパク質のメルカプト基のABD−Fによる保護を
実施し、被検体を調製した。反応終了後、実施例1
(2)と同様の方法にて遊離Hcy等(ジスルフィド結
合でタンパク質に結合していたHcy)と過剰の試薬を
除去し、全分離タンパク質(2ml)を回収した。実施
例1(3)と同様の方法にて全分離タンパク質の塩酸に
よる酸加水分解を実施した。
【0092】(3)[HPLCによるS−ABD−Hc
yの分析] 実施例1(4)と同様の方法で、血漿中に含まれるPB
−Hcy量を測定した。Lichrosorb 100
RP−18で分離し、約28分のピークを分取し(図
5)、次にInertsil ODS−2で分離した
(図6)。図中矢印で示したピークがS−ABD−Hc
yである。ピーク面積から算出されたS−ABD−Hc
y量は25pmolであった。これは被検体1ml中に
含まれるPB−Hcy量であるので、被検体中のPB−
Hcy濃度は0.025μMであることが分かった。被
検体の調製の際に原被検体は20倍希釈されているの
で、原被検体、すなわち、ヒトプール血漿のPB−Hc
y濃度は0.5μMであることが明らかとなった。
【0093】実施例3[食事のPB−Hcy定量値への
影響] 健常者(15名)と人工透析を受けている腎症患者(1
0名)から、空腹時(12時間以上絶食)と、食後2〜
6時間後に採血し、血漿を調製した。これらの血漿を原
被検体とし、実施例2と同様の方法にて血漿中のPB−
Hcy濃度の測定を行った(表1)。PB−Hcy濃度
は空腹時と食後でほとんど変化がなく、PB−Hcy濃
度は食事の影響を受けないことが明らかとなった。
【0094】
【表1】
【0095】実施例4[健常者血漿と腎症患者血漿中の
PB−Hcyの測定] 健常者血漿(50検体)と人工透析を受けている腎症患
者血漿(32検体)を原被検体とし、実施例2と同様の
方法にてPB−Hcyの測定を行った(図7)。PB−
Hcyの測定に使用した血漿は、採血前に特に絶食はし
ていない。本発明の測定方法により測定されたPB−H
cy濃度は腎症患者群で健常者の値に比べ高濃度を示す
ことが明らかとなった。
【0096】実施例5[血中総Hcy濃度と血中PB−
Hcy濃度の相関関係] 実施例4と同じ被験者(健常者50名、腎症患者32
名)より、空腹時(12時間以上絶食)に採血して血漿
を調製し、抗体法(ホモシステインEIAキット、バイ
オラッド社 M194−5361)により血中総Hcy
を測定した。血中総Hcy濃度と、実施例4で測定した
PB−Hcy濃度との相関を示す(図8)。図8から明
らかなように、両者の間には非常に良好な相関関係が見
られた。
【0097】比較例1[食事の総Hcy定量値への影
響] 健常者(15名)と人工透析を受けている腎症患者(1
0名)から、空腹時(12時間以上絶食)と、食後2〜
6時間後に採血し、血漿を調製した。実施例5と同様の
方法にて、血漿中の総Hcy濃度を測定した(表2)。
総Hcy濃度は食事の影響を受け、食後では正確に測定
できなかった。
【0098】
【表2】
【0099】これらの結果から、たとえ食後であって
も、本発明の測定方法を使用すれば、高Hcy患者を正
確に見分けることが証明された。また、PB−Hcy濃
度は、動脈硬化症の危険因子である従来法で測定された
血中総Hcy濃度と高度に相関するので、PB−Hcy
濃度も動脈硬化症の危険因子として使用できることが明
らかとなった。
【0100】
【発明の効果】本発明により、ヒト血液中にPB−Hc
y及びHcy化タンパク質が存在することが確認され、
これらの量を測定することが可能となったばかりでな
く、血液中のPB−Hcy及びHcy化タンパク質濃度
が腎症マーカーまたは動脈硬化症の危険因子として有用
であることが明らかとなった。さらに、これら濃度は、
被験者の食事の影響を受け難いことも明らかとなり、本
発明の測定法方によれば空腹時血漿を用いなくても高H
cy患者を正確に見分ける事が可能となる。
【0101】このように、本発明は、臨床検査の上で有
用な新たな項目、およびその測定方法を提供するもので
あり、その意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本図は合成S−ABD−Hcyを逆相HPL
Cにて分析したときの溶出プロフィールである。
【図2】 本図は合成S−ABD−Hcyを逆相HPL
Cにて分析したときの溶出プロフィールである。
【図3】 本図はアルブミンのメルカプト基をABD−
Fにより保護した後、酸加水分解し、この加水分解物を
逆相HPLCにて分析したときの溶出プロフィールであ
る。
【図4】 本図は図3で分取したピークを逆相HPLC
にて分析したときの溶出プロフィールである。
【図5】 本図は市販のヒトプール血漿中に含まれるタ
ンパク質のメルカプト基をABD−Fにより保護した
後、酸加水分解し、この加水分解物を逆相HPLCにて
分析したときの溶出プロフィールである。
【図6】 本図は図5で分取したピークを逆相HPLC
にて分析したときの溶出プロフィールである。
【図7】 本図は健常者と腎症患者の血漿中のPB−H
cy濃度を測定した結果である。
【図8】 本図はPB−Hcy濃度と従来の方法で測定
された総Hcy濃度との相関図である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ペプチド結合でホモシステインが結合し
    たタンパク質、遊離したホモシステイン及び/又は低分
    子量ホモシステイン誘導体を含む被検体から、遊離した
    ホモシステイン及び低分子量ホモシステイン誘導体を除
    去してペプチド結合でホモシステインが結合したタンパ
    ク質を分離した後、分離された当該タンパク質を分解し
    てホモシステイン又はその誘導体を得、次いで得られた
    ホモシステイン又はその誘導体の量を測定し、その測定
    値に基づいて被検体中に存在するタンパク質にペプチド
    結合で結合したホモシステインの量を決定することを特
    徴とするペプチド結合でタンパク質に結合したホモシス
    テインの測定方法。
  2. 【請求項2】 ペプチド結合でホモシステインが結合し
    たタンパク質、遊離したホモシステイン及び/又は低分
    子量ホモシステイン誘導体、並びにジスルフィド結合で
    ホモシステインが結合したタンパク質を含む原被検体か
    ら、遊離したホモシステイン及び低分子量ホモシステイ
    ン誘導体を除去する工程、及び該工程を経た原被検体中
    のジスルフィド結合でホモシステインが結合したタンパ
    ク質から当該ホモシステインを不可逆的に遊離させる工
    程を含む調製方法により調製された被検体を用いる請求
    項1記載のペプチド結合でタンパク質に結合したホモシ
    ステインの測定方法。
  3. 【請求項3】 ペプチド結合でホモシステインが結合し
    たタンパク質、遊離したホモシステイン及び/又は低分
    子量ホモシステイン誘導体、並びにジスルフィド結合で
    ホモシステインが結合したタンパク質を含む原被検体中
    のジスルフィド結合でホモシステインが結合したタンパ
    ク質から当該ホモシステインを不可逆的に遊離させて得
    た被検体を用いる請求項1記載のペプチド結合でタンパ
    ク質に結合したホモシステインの測定方法。
  4. 【請求項4】 ペプチド結合でホモシステインが結合し
    たタンパク質を分解する前に、当該ホモシステインのメ
    ルカプト基を保護することを特徴とする請求項1乃至請
    求項3の何れか一つに記載のペプチド結合でタンパク質
    に結合したホモシステインの測定方法。
  5. 【請求項5】 ペプチド結合でタンパク質に結合したホ
    モシステインの動脈硬化症危険因子、又は腎症マーカー
    としての使用。
  6. 【請求項6】 ペプチド結合でホモシステインが結合し
    たタンパク質の動脈硬化症危険因子、又は腎症マーカー
    としての使用。
JP2000059056A 2000-03-03 2000-03-03 ペプチド結合でタンパク質に結合したホモシステインの測定方法 Pending JP2001249135A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000059056A JP2001249135A (ja) 2000-03-03 2000-03-03 ペプチド結合でタンパク質に結合したホモシステインの測定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000059056A JP2001249135A (ja) 2000-03-03 2000-03-03 ペプチド結合でタンパク質に結合したホモシステインの測定方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001249135A true JP2001249135A (ja) 2001-09-14

Family

ID=18579559

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000059056A Pending JP2001249135A (ja) 2000-03-03 2000-03-03 ペプチド結合でタンパク質に結合したホモシステインの測定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001249135A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006517286A (ja) * 2002-10-09 2006-07-20 ディーエムアイ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド 炎症、虚血、および虫垂炎の診断およびモニタリング
JP2014508297A (ja) * 2011-03-04 2014-04-03 バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド ポリソルベートの測定方法
WO2021039941A1 (ja) * 2019-08-30 2021-03-04 ニプロ株式会社 アルツハイマー型認知症又は軽度認知症を判別する方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006517286A (ja) * 2002-10-09 2006-07-20 ディーエムアイ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド 炎症、虚血、および虫垂炎の診断およびモニタリング
JP2014508297A (ja) * 2011-03-04 2014-04-03 バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド ポリソルベートの測定方法
KR101910217B1 (ko) * 2011-03-04 2018-10-19 박스알타 인코퍼레이티드 폴리소르베이트의 측정 방법
WO2021039941A1 (ja) * 2019-08-30 2021-03-04 ニプロ株式会社 アルツハイマー型認知症又は軽度認知症を判別する方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Lenton et al. Analysis of glutathione and glutathione disulfide in whole cells and mitochondria by postcolumn derivatization high-performance liquid chromatography with ortho-phthalaldehyde
JP2574339B2 (ja) スルフヒドリルアミノ酸類の定量方法
Jakubowski et al. Chemical biology of homocysteine thiolactone and related metabolites
Zhang et al. Fishing the PTM proteome with chemical approaches using functional solid phases
Cotgreave et al. Methodologies for the application of monobromobimane to the simultaneous analysis of soluble and protein thiol components of biological systems
Kubáň et al. Capillary electrophoresis of small ions and molecules in less conventional human body fluid samples: A review
Palmer et al. Dissociation of rabbit γ-globulin into half-molecules after reduction of one labile disulfide bond
Cohen Analytical techniques for the detection of α-amino-β-methylaminopropionic acid
Zhang et al. Simultaneous determination of arginine and seven metabolites in plasma by reversed-phase liquid chromatography with a time-controlled ortho-phthaldialdehyde precolumn derivatization
Pieroni et al. Enrichments of post‐translational modifications in proteomic studies
US5438017A (en) Assays for sulfhydryl amino acids and methylmalonic acid and their application to diagnosis of cobalamin deficiency
CA2554899C (en) Method and kit for the measurement of neutrophil cell activation
Tsikas et al. Determination of S-nitrosoglutathione in human and rat plasma by high-performance liquid chromatography with fluorescence and ultraviolet absorbance detection after precolumn derivatization with o-phthalaldehyde
Gunnison et al. Persistence of plasma S-sulfonates following exposure of rabbits to sulfite and sulfur dioxide
JP2005510234A (ja) ポリペプチドの定量
WO1991018282A1 (en) Measuring connective tissue breakdown products in body fluids
WO2005086827A2 (en) Methods of assessing the need for and the effectiveness of therapy with antioxidants
US6607919B1 (en) Method and assay kit for evaluation of the oxidative modification of protein-containing substances
CA1319593C (en) Method of assaying high molecular hyaluronic acid and kit of reagents for such assay
Chou et al. High performance liquid chromatography with fluorimetric detection for the determination of total homocysteine in human plasma: method and clinical applications
Kera et al. Conjugation of acetaldehyde with cysteinylglycine, the first metabolite in glutathione breakdown by γ-glutamyltranspeptidase
US6020206A (en) Homocysteine assay
Muijsers et al. Determination of D-penicillamine in serum and urine of patients with rheumatoid arthritis
CN102336828B (zh) 一种多发性骨髓瘤特异性蛋白及其专用检测试剂盒
JP2001249135A (ja) ペプチド結合でタンパク質に結合したホモシステインの測定方法