JP2001247593A - インフルエンザウイルス結合能を有するグリセロ糖脂質 - Google Patents

インフルエンザウイルス結合能を有するグリセロ糖脂質

Info

Publication number
JP2001247593A
JP2001247593A JP2000050440A JP2000050440A JP2001247593A JP 2001247593 A JP2001247593 A JP 2001247593A JP 2000050440 A JP2000050440 A JP 2000050440A JP 2000050440 A JP2000050440 A JP 2000050440A JP 2001247593 A JP2001247593 A JP 2001247593A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
glyceroglycolipid
influenza virus
methanol
chloroform
strain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000050440A
Other languages
English (en)
Inventor
Kunio Nakada
邦穂 仲田
Yasuo Suzuki
康夫 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mercian Corp
Original Assignee
Mercian Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mercian Corp filed Critical Mercian Corp
Priority to JP2000050440A priority Critical patent/JP2001247593A/ja
Publication of JP2001247593A publication Critical patent/JP2001247593A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Saccharide Compounds (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】インフルエンザウイルスと結合し、それを中和
させる能力を有する新規な化合物、それらの製造方法、
化合物を生産する能力を有する新規な微生物、それらを
有効成分とする医薬およびそれらの化合物を結合した担
体の提供。 【解決手段】 コリネバクテリウム(Coryneba
cterium)属に属する微生物H632株、S36
5株およびS361株が生産するグリセロ糖脂質H63
2A、S365AおよびS361A。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インフルエンザウ
イルスと結合し、中和する能力を有するグリセロ糖脂
質、それらの製造方法、生産菌株およびそれらの用途に
関する。
【0002】
【発明の背景】インフルエンザは、インフルエンザウイ
ルスに起因する感染症であり、世界的な流行を幾度とな
く繰り返してきた。被害の大きい年では、1000万人
以上の人々に死をもたらしたことがあり、そうでない場
合でも社会的損失は大きい。最近、ヒトのインフルエン
ザウイルスの感染機構が解明されてきた。それによると
インフルエンザウイルスは、その表層にある釘状糖蛋白
質ヘマグルチニンを介して宿主細胞上にあるウイルスレ
セプターを特異的に認識し結合する。
【0003】ウイルスレセプターはその末端にシアル酸
(N−アセチルノイラミン酸およびN−グリコリルノイ
ラミン酸)を含む特徴的な構造をもっており、さらに各
宿主により異なった糖鎖で修飾されている。ヒトのレセ
プターは末端のシアル酸にα2→6結合でガラクトース
が結合した糖鎖であるが、宿主依存性の変異によりα2
→3結合を認識するヒトのウイルスも分離されることが
ある。ウマやブタから分離されたウイルスはN−グリコ
リルノイラミン酸を末端に含む糖鎖も認識するが、ヒト
由来のウイルスは主にN−アセチルノイラミン酸のみを
認識すると言われている [Suzuki, Y., Prog. Lipid Re
s. 33, 429-457 (1994)]。
【0004】これらのレセプターを模倣した糖鎖や糖脂
質を用意すれば、ウイルスの宿主感染を阻害することが
期待される。最近シアル酸を含まない糖脂質スルファチ
ドにウイルス結合能が報告されてから、ヘマグルチニン
の結合能にかなりの許容範囲が推測された。シアル酸を
含まない糖脂質はウイルスのシアリダーゼに分解されず
安定であり、インフルエンザ治療剤として期待される。
【0005】また、インフルエンザウイルスの感染防止
には通常、ガーゼマスクを用いることが多い。ウイルス
の除去効果を向上させるために、最近セラミックフィル
ターを含むガーゼマスクが開発されてきた。しかし、除
去効率を高めるためにマスク層を厚くすると、息苦しく
なり、着用に不快感を感じる人も多い。また、これらの
ガーゼマスクでは、ガーゼに捕らえたウイルスが中和し
ないので、唾液等で湿った時に流出する危険性が伴う。
ウイルスを中和させるためにはカテキンなどを利用する
ことが知られているが、カテキンは水溶性が高く、ガー
ゼに吸着させて利用するには適当でない。これまでにイ
ンフルエンザウイルスに対する結合能と中和能に優れ、
安定性があり、安全で安価に供給できる物質は見出され
ていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、インフルエ
ンザウイルスと結合し、それを中和させる能力を有する
新規な化合物、それらの製造方法、化合物を生産する能
力を有する新規な微生物、それらを有効成分とする医薬
およびそれらの化合物を結合した担体を提供するもので
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため、各種の微生物を培養し、培養液中に生
産される代謝産物について研究を重ねた結果、コリネバ
クテリウム(Corynebacterium)属に属
する微生物が、インフルエンザウイルスに結合する能力
を持つ物質を培養液中に生産していることを見出した。
その培養液から有効物質を分離精製し、その物理化学的
性質を調べたところ、得られた有効物質は、いかなる既
知物質とも相違し、かつ優れたインフルエンザウイルス
結合能と中和能を有することを見出し、本発明を完成し
た。
【0008】本発明により提供されるインフルエンザウ
イルス結合能を示す新規物質は、グリセロ糖脂質に分類
される、下記一般式(I)で示される化合物である。
【化8】 (式中、Rは、
【化9】 で示される基、式、
【化10】 で示される基、または式、
【化11】 で示される基を示す)
【0009】本発明者らは、一般式(I)で示される化
合物のうち、下記の式(I−a)、式(I−b)および
式(I−c)で示される化合物を、それぞれH632
A、S365AおよびS361Aと命名した。以後、本
明細書においてこれらの化合物は上記名称を用いて説明
する。
【0010】
【化12】
【0011】
【化13】
【0012】
【化14】
【0013】本発明に使用される微生物は、コリネバク
テリウム(Corynebacterium)属に属
し、本発明のグリセロ糖脂質H632A、S365Aま
たはS361Aを生産する能力を有する菌株であれば、
どのようなものでも使用できる。
【0014】本発明のグリセロ糖脂質を生産する能力を
有する微生物として、例えば、本発明者らが土壌から分
離したコリネバクテリウム(Corynebacter
ium)属に属するH632株、S365株およびS3
61株を挙げることができるが、これらの菌株に限ら
ず、コリネバクテリウム(Corynebacteri
um)属に属し、グリセロ糖脂質H632A、S365
AおよびS361Aを生産する能力を有する菌株であれ
ば、それらの変異株、例えば、紫外線、エックス線、放
射線、薬品等の変異処理により取得できる人工変異株な
らびに自然変異株も含めてすべて本発明に使用すること
ができる。
【0015】以下、生産菌株の菌学的性状を説明する。 1.H632株 (1)形態 コロニーの形態は、偏平で丸く、バター質、半透明で黄
色である。細胞の形態は、長い桿菌で0.6〜0.8μ
mの幅を有し、運動性はない。グラム染色陽性で、胞子
形成能はない。 (2)生理学的性質 (a)炭素源の発酵性 グルコース、リボース、キシロース、マンニトール、マ
ルトース、ラクトース、スクロース、グリコーゲンのい
ずれについても陰性である。 (b)硝酸塩の還元能 陰性である。 (c)ゼラチンの分解 陰性である。 (d)エスクリンの分解 陽性である。
【0016】(e)酵素活性 ピラジンアミダーゼ(pyrazinamidas
e)、アルカリホスファターゼ(alkaline p
hosphatase)、カタラーゼ(catalas
e)、β−ガラクトシダーゼ(β−galactosi
dase)、β−グルコシダーゼ(β−glucosi
dase)およびN−アセチル−β−グルコサミニダー
ゼ(N−acetyl−β−glucosaminid
ase)の各酵素活性は、陽性である。ピロリドンアリ
ルアミダーゼ(pyrrolidonearylami
dase)、β−グルクロニダーゼ(glucuron
idase)およびウレアーゼ(urease)の各酵
素活性は、陰性である。
【0017】2.S365株 (1)形態 コロニーの形態は、偏平で丸く、バター質、不透明で黄
色であり、湿光がかった光沢を有する。細胞の形態は、
長い桿菌で0.6〜0.8μmの幅を有し、運動性はな
い。グラム染色陽性で、胞子形成能はない。嫌気状態で
若干生育する。 (2)生理学的性質 (a)炭素源の発酵性 グルコース、リボース、キシロース、マンニトール、マ
ルトース、ラクトース、スクロース、グリコーゲンのい
ずれについても陰性である。 (b)硝酸塩の還元能 陽性である。 (c)ゼラチンの分解 陽性である。 (d)エスクリンの分解 陽性である。
【0018】(e)酵素活性 ピラジンアミダーゼ(pyrazinamidas
e)、アルカリホスファターゼ(alkaline p
hosphatase)、カタラーゼ(catalas
e)、β−ガラクトシダーゼ(β−galactosi
dase)、β−グルコシダーゼ(β−glucosi
dase)およびN−アセチル−β−グルコサミニダー
ゼ(N−acetyl−β−glucosaminid
ase)の各酵素活性は、陽性である。ピロリドンアリ
ルアミダーゼ(pyrrolidonearylami
dase)、β−グルクロニダーゼ(glucuron
idase)およびウレアーゼ(urease)の各酵
素活性は、陰性である。
【0019】3.S361株 (1)形態 コロニーの形態は、偏平で丸く、バター質、不透明で黄
色であり、湿光がかった光沢を有する。細胞の形態は、
長い桿菌で0.6〜0.8μmの幅を有し、運動性はな
い。グラム染色陽性で、胞子形成能はない。 (2)生理学的性質 (a)炭素源の発酵性 グルコース、リボース、キシロース、マンニトール、マ
ルトース、ラクトース、スクロース、グリコーゲンのい
ずれについても陰性である。 (b)硝酸塩の還元能 陰性である。 (c)ゼラチンの分解 陽性である。 (d)エスクリンの分解 陽性である。
【0020】(e)酵素活性 ピラジンアミダーゼ(pyrazinamidas
e)、アルカリホスファターゼ(alkaline p
hosphatase)、カタラーゼ(catalas
e)、β−ガラクトシダーゼ(β−galactosi
dase)、β−グルコシダーゼ(β−glucosi
dase)およびN−アセチル−β−グルコサミニダー
ゼ(N−acetyl−β−glucosaminid
ase)の各酵素活性は、陽性である。ピロリドンアリ
ルアミダーゼ(pyrrolidonearylami
dase)、β−グルクロニダーゼ(glucuron
idase)およびウレアーゼ(urease)の各酵
素活性は、陰性である。
【0021】以上の菌学的性質からH632株、S36
5株およびS361株のいずれの菌株も、コリネバクテ
リウム(Corynebacterium)属の菌であ
り、バージェーズ・マニュアル・オブ・システマティッ
ク・バクテリオロジー,vol.1(1984)(Be
rgey’s Manual of Systemat
ic Bacteriology,vol.1,198
4)を参考に既知菌種を検索したところ、コリネバクテ
リウム・アクアティカム(Corynebacteri
um aquaticum)の性状と一致した。
【0022】本発明者らは、H632株をコリネバクテ
リウム・アクアティカム(Corynebacteri
um aquaticum)H632株として、平成1
1年8月2日付けで通産省工業技術院生命工学工業技術
研究所にFERM P−17498として寄託してい
る。また、S365株をコリネバクテリウム・アクアテ
ィカム(Corynebacterium aquat
icum)S365株として、平成11年1月25日付
けで通産省工業技術院生命工学工業技術研究所にFER
M P−17163として寄託している。さらにS36
1株をコリネバクテリウム・アクアティカム(Cory
nebacterium aquaticum)S36
1株として、平成12年2月17日付けで通産省工業技
術院生命工学工業技術研究所にFERM P−1773
6として寄託している。
【0023】本発明のグリセロ糖脂質のうち、H632
Aは上記のH632株を、S365AはS365株を、
S361AはS361株をそれぞれ栄養培地に接種し、
好気的に培養することにより製造される。これらの菌株
の培養方法は、原則的には一般微生物の培養方法に準ず
るが、通常は液体培養による振とう培養、通気撹拌培養
などの好気的条件下で行うのが好適である。
【0024】培養に用いることのできる培地としては、
コリネバクテリウム(Corynebacteriu
m)属に属する微生物が利用できる栄養源を含有する培
地であればよく、各種の合成培地、半合成培地、天然培
地などいずれも用いることができる。培地組成として
は、例えば、炭素源として、グルコース、シュークロー
ス、水あめ、糖みつ、デキストリン、澱粉、グリセロー
ル、動物油、植物油などを単独または組み合わせて使用
することができ、また窒素源としては、大豆粉、小麦胚
芽、コーンスティープリカー、綿実粕、肉エキス、ペプ
トン、酵母エキス、硫酸アンモニウムなどを単独または
組み合わせて使用することができる。また必要に応じ
て、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウ
ム、リン酸塩、金属塩などの無機塩を加えることができ
る。その他、これらの菌株の生育あるいはグリセロ糖脂
質の生産を促進する有機物、例えば、ビタミン類、アミ
ノ酸類を加えることができる。さらに必要に応じて、消
泡剤、例えば、アデカノール(商品名:旭電化工業
(株)製)、シリコンなどを添加することができる。
【0025】培養条件は、上記菌株が良好に生育して本
発明のグリセロ糖脂質を生産し得る範囲内で適宜選択す
ればよい。例えば、培地のpHは、6〜8程度、通常中
性付近とすることが好ましい。培養温度は、微生物が良
好に生育する温度、通常15〜30℃、好ましくは25
〜28℃に保つのがよい。培養時間は、2〜10日間程
度でよく、好ましくは3〜5日間である。もちろん上述
した各種の培養条件は、使用微生物の種類や特性、外部
条件などに応じて適宜変更でき、またそれに応じて上記
範囲から最適条件を選択、調整できる。その際、培養液
中のグリセロ糖脂質の蓄積量が最大になったときに培養
を停止して得た培養液を以下の精製工程に使用すればよ
い。
【0026】このようにして得た培養液中に蓄積された
グリセロ糖脂質は、培養後、濾過、遠心分離等の一般的
固液分離手段によって菌体を分離し、分離した菌体から
回収可能である。
【0027】グリセロ糖脂質の分離、精製は、公知の種
々の方法を選択、組み合わせて行うことができる。例え
ば、クロロホルム、酢酸エチル、メタノール、n−ブタ
ノール等を用いた溶媒抽出や、アンバーライトXAD
(ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオンHP−
20(三菱化学(株)製)等のポリスチレン系吸着樹
脂、シリカゲル、アルミナ、活性炭などの担体を用いる
カラムクロマトグラフィーによる方法を用いることがで
きる。これらの担体から目的物質を溶出させる方法は、
担体の種類、性質によって異なるが、一例として、ポリ
スチレン系吸着樹脂の場合には、溶出溶媒として、含水
アルコール、含水アセトン等を用いることができる。さ
らにセファデックス(Sephadex)LH−20
(ファルマシア社製)、バイオ・ゲルP−2(バイオ・
ラッド社製)等によるゲル濾過、シリカゲル、アルミナ
等による薄層クロマトグラフィー、順相あるいは逆相カ
ラムを用いた分取用高速液体クロマトグラフィー(分取
HPLC)等を用いることができ、これらの方法を単独
または適宜組み合せて、場合によっては反復使用するこ
とにより、分離、精製することができる。
【0028】以上のようにして得られるグリセロ糖脂質
は以下に示す物理化学的性質を有する。 1.H632Aの物理化学的性質 (1)分子量:892.61 (2)分子式:C478815 (3)マススペクトル(FABMS):図1に示すとお
りである。m/z 915[M+Na]+、計算値;9
15.6021(C478815Naとして) (4)比旋光度:〔α〕25 D−22.5°
【0029】(5)溶解性:メタノール、クロロホルム
に溶け、水にはほとんど溶けない(0.8g/l)。 (6)呈色反応:硫酸オルシノール試薬で呈色する。 (7)薄層クロマトグラフィーのRf値:メルク社製シ
リカゲルプレート5715にて0.45(クロロホル
ム:メタノール:水=80:15:1) (8)色および形状:白色粉末。 (9)13C−NMRスペクトル(100MHz,C55
N):図2に示すとおりである。
【0030】2.S365Aの物理化学的性質 (1)分子量:892.61 (2)分子式:C478815 (3)マススペクトル(FABMS):m/z 915
[M+Na]+、計算値;915.6021(C4788
15Naとして) (4)比旋光度:〔α〕25 D+28.2°(c 7.
3、クロロホルム)
【0031】(5)溶解性:メタノール、クロロホルム
に溶け、水にはほとんど溶けない(0.8g/l)。 (6)呈色反応:硫酸オルシノール試薬で呈色する。 (7)薄層クロマトグラフィーのRf値:メルク社製シ
リカゲルプレート5715にて0.45(クロロホル
ム:メタノール:水=80:15:1) (8)色および形状:白色粉末。
【0032】(9)13C−NMRスペクトル(125M
Hz,C55N):図3に示すとおりである。また主要
なシグナルの化学シフト、多重度は下記のとおりであ
る。δ(ppm,TMSを基準にして)69.8
(t),68.6(d),66.5(t),102.4
(d),70.8(d),81.0(d),67.0
(d),72.6(d),64.6(t),104.0
(d),72.3(d),73.1(d),69.5
(d),75.5(d),63.0(t),173.7
(s),34.4(t),25.3(t),27.4−
30.3(t),36.9(t),34.6(d),1
9.4(q),29.8(t),11.5(q)
【0033】(10)1H−NMRスペクトル(500
MHz,C55N):主要なシグナルの化学シフト、多
重度は下記のとおりである。δ(ppm,TMSを基準
にして)4.17(dd, J=10.4Hz&J=
5.0Hz),3.87(dd,J=10.4Hz&
6.7Hz),4.43(m),4.52(m,2
H),5.36(d,J=1.8Hz),4.90(b
r s),4.59(m),4.67(m),4.45
(m),4.78(m),4.98(dd,J=11.
6Hz&1.8Hz),5.94(d,J=1.2H
z),4.68(br s),4.58(m),4.5
5(m),4.80(m),4.29(dd,J=1
1.6Hz&6.7Hz),4.56(m),2.32
(t,J=7.3Hz),1.62(m),1.15−
1.35(m),1.07(m),1.23(m),
0.83(d,J=7.0Hz),1.11(m),
1.23(m),0.83(t,J=7.0Hz)
【0034】2.S361Aの物理化学的性質 (1)分子量:892.61 (2)分子式:C478815 (3)マススペクトル(FABMS):m/z 915
[M+Na]+、計算値;915.6021(C4788
15Naとして) (4)比旋光度:〔α〕25 D+4.4°(c 1.7、
クロロホルム)
【0035】(5)溶解性:メタノール、クロロホルム
に溶け、水にはほとんど溶けない(0.8g/l)。 (6)呈色反応:硫酸オルシノール試薬で呈色する。 (7)薄層クロマトグラフィーのRf値:和光純薬社製
シリカゲルプレート70F254にて0.25(クロロホ
ルム:メタノール:水=80:15:1) (8)色および形状:白色粉末。
【0036】(9)13C−NMRスペクトル(125M
Hz,C55N):図4に示すとおりである。また主要
なシグナルの化学シフト、多重度は下記のとおりであ
る。δ(ppm,TMSを基準にして)69.8
(t),68.6(d),66.4(t),102.4
(d),70.9(d),83.3(d),67.2
(d),72.3(d),64.4(t),102.9
(d),74.3(d),75.6(d),72.1
(d),74.6(d),62.7(t),173.6
(s),34.4(t),25.3(t),27.4−
30.3(t),36.9(t),34.6(d),1
9.4(q),29.7(t),104.3(q),1
1.6(q)
【0037】(10)1H−NMRスペクトル(500
MHz,C55N):主要なシグナルの化学シフト、多
重度は下記のとおりである。δ(ppm,TMSを基準
にして)4.19(dd,J=10.0Hz&J=5.
2Hz),3.88(dd,J=10.0Hz&6.4
Hz),4.44(m),4.54(m,2H),5.
36(br s),4.79(br s),4.48
(J=9.5Hz&J=3.1Hz),4.71(t,
J=9.5Hz),4.44(m),4.73(m),
4.96(br d,J=11.3Hz),5.69
(d,J=3.7Hz),4.14(dd,J=9.4
Hz&3.7Hz),4.60(t,J=9.4H
z),4.12(t,J=9.4Hz),4.75
(m),4.26(dd,J=11.3Hz&5.5H
z),4.44(m),2.35(t,J=7.6H
z),1.62(m),1.15−1.35(m),
1.08(m),1.23(m),0.84(d,J=
6.7Hz),1.13(m),1.23(m),0.
84(t,J=7.0Hz),0.83t,J=7.0
Hz)
【0038】本発明のグリセロ糖脂質は、インフルエン
ザウイルスと比較的強固に結合し、優れたインフルエン
ザウイルスの中和活性を有している。しかも、1)イン
フルエンザウイルスの種類(型)による結合性の差が小
さく、2)水溶性が室温において約0.8g/lと低
く、ウイルスの吸着、捕捉材料として利用しやすく、
3)インフルエンザウイルスの失活能力に優れ、4)構
造中にシアル酸を含まないのでインフルエンザウイルス
由来のシアリダーゼによる分解がなく安定であり、5)
微生物による生産と精製が簡単である、等の優れた性質
を有している。
【0039】特にインフルエンザウイルスとの結合能力
については、ウイルス本来のレセプターの部分構造をも
つ、5−アセチルノイラミン酸−α2,3−パラグロボ
シド(Neu5Acα2,3 paraglobosi
de)や5−アセチルノイラミン酸−α2,6−パラグ
ロボシド(Neu5Acα2,6 paraglobo
side)と比べ、約7〜22%の活性をもち、しかも
ウイルス由来のシアリダーゼに分解されないので、長時
間、作用が継続することが期待される。従って、グリセ
ロ糖脂質を含む医薬製剤は、インフルエンザウイルスが
原因となって引き起される疾患、すなわちインフルエン
ザに対する治療、予防に適用されることが期待される。
【0040】グリセロ糖脂質を含む医薬製剤は、公知の
充填剤、増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、崩壊抑制
剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤、あるいは賦形剤を
用いて調製することができ、各種の形態がその治療目的
に応じて選択できる。
【0041】本発明の医薬製剤に含有されるべきグリセ
ロ糖脂質の量は特に限定されず、広範囲に選択される。
その投与方法は、特に制限はなく、各種製剤形態、患者
の年齢、性別、その他の条件、疾患の程度に応じた方法
で投与される。またその投与量は、用法、患者の年齢、
性別、その他の条件、疾患の程度等により適宜増減する
ことができる。
【0042】グリセロ糖脂質が結合した担体は、インフ
ルエンザウイルスの除去フィルターあるいはマスクなど
のインフルエンザ予防用の資材に利用可能である。グリ
セロ糖脂質が結合した担体の最も簡単な製造方法は、各
種の繊維あるいは膜などの担体を、グリセロ糖脂質を含
む溶液に浸漬させ、これを乾燥させることにより、担体
表面へグリセロ糖脂質を吸着あるいは付着させて調製す
るものである。後述する実施例に示すようにこのような
簡単な方法により調製した担体であっても、かなりの量
のインフルエンザウイルスを除去することが可能であ
る。さらには、強固にグリセロ糖脂質を担体に結合させ
るためには、グリセロ糖脂質の構造中にあるフリーの水
酸基を利用して公知の方法で共有結合を形成すればよ
い。このようにして調製された担体は、比較的厳しい環
境でも機能しうることが期待される。
【0043】以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳細
に説明する。
【0044】
【実施例】実施例1 グルコース1.0%、酵母エキス(Difco社製)
0.3%、麦芽エキス(Difco社製)0.3%、ポ
リペプトン(日本製薬社製)0.5%(pH7.0)の
組成からなるYMPG培地30mlを250ml容三角
フラスコに入れ殺菌した。これにコリネバクテリウム・
アクアティカム(Corynebacterium a
quaticum)H632株(FERM P−174
98)を接種し、28℃で20時間、ロータリーシェー
カー(220rpm)上で培養して種母培養液を得た。
【0045】次に、500ml容三角フラスコ50本
に、グリセロール2%、グルコース1%、酵母エキス
0.4%、大豆粉0.1%、リン酸二カリウム0.1
%、硫酸マグネシウム・7水和物0.1%、塩化ナトリ
ウム0.2%、炭酸カルシウム0.2%の組成からなる
YMG培地を70mlずつ入れ殺菌した。これに種母培
養液を0.7mlずつ接種し、28℃で4日間、ロータ
リーシェーカー(220rpm)上で培養した。
【0046】培養終了後、培養液の一部を分取し、同量
のクロロホルム:メタノール混液(1:1)で抽出し
た。シリカゲル薄層クロマトグラフィー(Merck社
製:Art.5715)に抽出液を10μl乗せ、クロ
ロホルム:メタノール:水混液(80:15:1)で展
開した。これに硫酸オルシノール試薬(2%オルシノー
ル/11.4%硫酸)を噴霧し、100℃で10分熱し
て着色させ、薄層クロマトスキャナー(島津社製:CS
−9000)を用いて、600nm(反射モード)にて
定量した。実施例4に示す方法により得た精製品を基準
にして計算したところ、培養液中にH632Aが100
mg/l生産されていた。
【0047】実施例2 YMPG培地30mlを250ml容三角フラスコに入
れ殺菌した。これにコリネバクテリウム・アクアティカ
ム(Corynebacterium aquatic
um)S365株(FERM P−17163)を接種
し、28℃で20時間、ロータリーシェーカー(220
rpm)上で培養して種母培養液を得た。次に、500
ml容三角フラスコ50本にYMG培地を70mlずつ
入れ殺菌した。これに種母培養液を0.7mlずつ接種
し、28℃で4日間、ロータリーシェーカー(220r
pm)上で培養した。
【0048】培養終了後、培養液の一部を分取し、同量
のクロロホルム:メタノール混液(1:1)で抽出し
た。シリカゲル薄層クロマトグラフィー(Merck社
製:Art.5715)に抽出液を10μl乗せ、クロ
ロホルム:メタノール:水混液(80:15:1)で展
開した。これに硫酸オルシノール試薬(2%オルシノー
ル/11.4%硫酸)を噴霧し、100℃で10分熱し
て着色させ、薄層クロマトスキャナー(島津社製:CS
−9000)を用いて、600nm(反射モード)にて
定量した。実施例5に示す方法により得た精製品を基準
にして計算したところ、培養液中にS365Aが80m
g/l生産されていた。
【0049】実施例3 エタノール15%(v/v)、酵母エキス(Difco
社製)0.3%、ポリペプトン(日本製薬社製)0.3
%、リン酸二水素カリウム0.1%、塩化ナトリウム
0.1%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05%(p
H6.8)の組成からなる培地を500ml容坂口フラ
スコ30本に各100ml入れ殺菌した。ただしエタノ
ールは殺菌後に加えた。これにコリネバクテリウム・ア
クアティカム(Corynebacterium aq
uaticum)S361株(FERM P−1773
6)を接種し、28℃で3日間、レシプロカルシェーカ
ー(2000rpm)上で培養した。
【0050】培養終了後、培養液の一部を分取し、同量
のクロロホルム:メタノール混液(1:1)で抽出し
た。シリカゲル薄層クロマトグラフィー(Merck社
製:Art.5715)に抽出液を10μl乗せ、クロ
ロホルム:メタノール:水混液(80:15:1)で展
開した。これに硫酸オルシノール試薬(2%オルシノー
ル/11.4%硫酸)を噴霧し、100℃で10分熱し
て着色させ、薄層クロマトスキャナー(島津社製:CS
−9000)を用いて、600nm(反射モード)にて
定量した。実施例6に示す方法により得た精製品を基準
にして計算したところ、培養液中にS361Aが50m
g/l生産されていた。
【0051】実施例4 実施例1において得られたコリネバクテリウム・アクア
ティカム(Corynebacterium aqua
ticum)H632株の培養液3500mlを同量の
クロロホルム:メタノール混液(1:1)で2回抽出し
た。有機層を取得し、ロータリーエバポレーターを用い
て濃縮乾固した。これを少量のクロロホルム:メタノー
ル混液(1:1)に溶解し、シリカゲル薄層クロマトグ
ラフィー(Merck社製:Art.5715、20×
20cm)にチャージし、クロロホルム:メタノール:
水混液(80:15:1)にて展開し、活性画分(Rf
=0.35〜0.4)を分取した。
【0052】これを少量のクロロホルム:メタノール混
液(1:1)に溶解し、シリカゲル薄層クロマトグラフ
ィー(Merck社製:Art.5715、20×20
cm)にチャージし、クロロホルム:メタノール:酢
酸:水混液(80:15:1:1)にて展開し、活性画
分(Rf=0.4)を分取した。これを10mlのクロ
ロホルム:メタノール混液(1:1)で溶出し、逆相の
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(Whatman社
製:LKC18F、20×20cm)にチャージし、9
0%メタノールで展開し、活性画分(Rf=0.65〜
0.70)を分取した。10mlのメタノールで溶出
し、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固し、グ
リセロ糖脂質H632Aを220mg得た。
【0053】実施例5 実施例2おいて得られたコリネバクテリウム・アクアテ
ィカム(Corynebacterium aquat
icum)S365株の培養液3500mlを同量のク
ロロホルム:メタノール混液(1:1)で2回抽出し
た。有機層を取得し、ロータリーエバポレーターを用い
て濃縮乾固した。これを少量のクロロホルム:メタノー
ル混液(1:1)に溶解し、シリカゲル薄層クロマトグ
ラフィー(Merck社製:Art.5715、20×
20cm)にチャージし、クロロホルム:メタノール:
水混液(80:15:1)にて展開し、活性画分(Rf
=0.35〜0.4)を分取した。
【0054】これを少量のクロロホルム:メタノール混
液(1:1)に溶解し、シリカゲル薄層クロマトグラフ
ィー(Merck社製:Art.5715、20×20
cm)にチャージし、クロロホルム:メタノール:酢
酸:水混液(80:15:1:1)にて展開し、活性画
分(Rf=0.4)を分取した。これを10mlのクロ
ロホルム:メタノール混液(1:1)で溶出し、逆相の
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(Whatman社
製:LKC18F、20×20cm)にチャージし、9
0%メタノールで展開し、活性画分(Rf=0.65〜
0.70)を分取した。10mlのメタノールで溶出
し、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固し、グ
リセロ糖脂質S365Aを165mg得た。
【0055】実施例6 実施例3において得られたコリネバクテリウム・アクア
ティカム(Corynebacterium aqua
ticum)S361株の培養液3000mlを遠心し
て菌体を集め、アセトン:メタノール混液(1:1)2
00mlで抽出し、さらにクロロホルム:メタノール混
液(1:1)250mlで2回抽出した。有機層を取得
し、濃縮したのちクロロホルムでさらに抽出した。これ
をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム
−メタノール(30:1〜10:1)で活性画分を分取
し、さらにセファデックス(Sephadex)LH−
20によるゲル濾過によって精製し、S361Aを10
0mg得た。このとき、S361Aは、シリカゲル薄層
クロマトグラフィー(和光純薬社製:70F254)を用
い、クロロホルム:メタノール−水混液(80:15:
1)により展開することにより検出できる(p−アニス
アルデヒド試薬による呈色:緑色、Rf=0.25)。
【0056】実施例7 細胞工学別冊実験プロトコールシリーズ(秀潤社刊)
「グライコバイオロジー実験プロトコール:糖タンパク
質・糖脂質・プロテオグリカン」p225〜229に記
載された方法により、ヒトインフルエンザAウイルスへ
の結合能を測定した。すなわち、1ngのグリセロ糖脂
質を含むメタノール溶液10μlをシリカゲル薄層クロ
マトグラフィー(Macherey−Nagel社製:
Polygram Sil−G)に乗せ、クロロホル
ム:メタノール:12mM塩化マグネシウム混液(6
0:40:10)にて展開した。プレートを風乾した
後、非特異的な結合を防ぐためにブロッキング溶液(1
%卵白アルブミン、1%ポリビニルピロリドン、0.0
2%アジ化ナトリウム)に2時間浸漬した。
【0057】PBS緩衝液(0.8%塩化ナトリウム、
0.02%塩化カリウム、0.29%リン酸二ナトリウ
ム・12水和物、0.02%リン酸一カリウム、pH
7.2)で洗浄後、インフルエンザウイルスのPBS緩
衝液懸濁液(赤血球凝集活性価:26〜28HAU)に
浸すことによりウイルスを吸着させた。これを抗インフ
ルエンザウイルス抗体(抗ヘマグルチニンモノクローナ
ル抗体)にて処理し、PBS緩衝液で洗浄した後、再度
ブロッキング溶液に浸漬した。PBS緩衝液で洗浄後、
西洋ワサビペルオキシダーゼ結合2次抗体(抗マウスI
gG F(ab’)2ヤギ抗体)にて処理した。PBS
緩衝液で洗浄した後、発色用基質溶液[20mMトリス
塩酸緩衝液(pH7.2):0.3%4−クロロ−1−
ナフトール:31%H22(5:1:0.01)]を加
え、発色したバンドの濃度を2波長クロマトスキャナー
により578nm(対照波長:780nm)で測定し、
結合量を定量した。
【0058】グリセロ糖脂質H632A、S365Aお
よびS361Aの、各ヒトインフルエンザウイルスA/
PR/8/34(H1N1)、A/Aichi/2/6
8(H3N2)、A/Memphis/1/71(H3
N2)に対する結合能を図5に示す。なお、対照として
5−アセチルノイラミン酸−α2,3−パラグロボシド
(Neu5Acα2,3 paraglobosid
e)と5−アセチルノイラミン酸−α2,6−パラグロ
ボシド(Neu5Acα2,6 paraglobos
ide)を使用した。
【0059】図5に示したとおり、NeuAc(2→
3)Gal糖鎖をもつ5−アセチルノイラミン酸−α
2,3−パラグロボシド(図5中の1)は、インフルエ
ンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)に強く結
合したが、A/Aichi/2/68(H3N2)とA
/Memphis/1/71(H3N2)にはそれほど
ではなかった。
【0060】NeuAc(2→6)Gal糖鎖をもつ5
−アセチルノイラミン酸−α2,6−パラグロボシド
(図5中の2)は、A/PR/8/34(H1N1)に
は全く結合しなかったが、反対にA/Aichi/2/
68(H3N2)とA/Memphis/1/71(H
3N2)には強く結合した。
【0061】グリセロ糖脂質H632A(図5中の
3)、S365A(図5中の4)およびS361A(図
5中の5)はともに3種のウイルスに結合した。H63
2Aは対照物の7〜12%、S365Aは10〜22
%、S361Aは10〜17%である。特にS365A
は、どのウイルスに対してもH632Aに比べ約2倍強
い結合活性を示した。
【0062】実施例8 ウイルスに感染したMDCK(Madin−Darby
canine kidney)単層細胞から放出され
る乳酸脱水素酵素(LDH)の活性を測定することによ
り、ヒトインフルエンザウイルスの中和能を測定した。
すなわち、約100TCID50(50%組織培養感染
量:50% tissue−cultureinfec
tious dose)のインフルエンザウイルスA/
Memphis/1/71と0.05〜500μg/m
lのグリセロ糖脂質を含むEMEM培地(Eagle’
s minimum essential mediu
m:10%牛胎児血清、0.2%牛血清アルブミン)を
直径10cmのプラスチックシャーレに単層培養したM
DCK細胞(1×106個)へ接種し、34.5℃で5
時間培養した。
【0063】培養後、液を除去し、集めた細胞を3回E
MEM培地で洗浄し、100μlの同培地に懸濁した。
さらに34.5℃で20時間培養し、得られた培養液の
12.5μlを100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.
2)で4倍に希釈し、50μlの反応液[2mMNAD
+、200m−unit/mlのディアフォラーゼ、1
90mM乳酸リチウム、0.78mMニトロブルーテト
ラゾリウム、100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.
2)]を添加した。37℃で10分インキュベートした
後、100μlの0.5M塩酸を添加して反応を停止さ
せた。550nmの吸光度(対照は630nm)を測定
してLDH活性を求めた。結果を図6に示す。図6に示
すとおり、A/Aichi/2/68で対照としたフェ
チュイン(fetuin)と同程度の濃度(IC50:
約90μg/ml)で中和活性が認められた。
【0064】実施例9 インフルエンザウイルスを赤血球に作用させると赤血球
が凝集し、引き続いて溶血が起こる。インフルエンザウ
イルスによる赤血球の凝集活性を測定することにより、
ガーゼに固定化されたグリセロ糖脂質による、インフル
エンザウイルスの阻害活性を測定した。
【0065】グリセロ糖脂質H632AおよびS365
Aの10mg/mlメタノール溶液にガーゼ(2×2c
m)を浸した。余剰の溶液を別のガーゼに吸収させた
後、真空乾燥させ、グリセロ糖脂質が固定化されたガー
ゼを調製した。なお、このようにして調製したガーゼ
は、水または0.9%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、
洗浄液中のグリセロ糖脂質を薄層クロマトグラフィーに
より分析して、糖脂質がほとんど溶出していないこと
(吸着量の0.2%以下)を確かめ、グリセロ糖脂質が
ガーゼに固定化されことを確認した。また、対照として
グリセロ糖脂質を含まないメタノールを用いて同様の処
理を行った。
【0066】これらのガーゼにインフルエンザウイルス
A/Aichi/2/68(H3N2)の0.9%食塩
水溶液(HAU:26〜211)200μlをゆっくりと
万遍なく吸収させ、室温にて3分保持した。その後、
0.9%食塩水1.1mlにてガーゼを洗浄し、洗浄液
に0.1mlの200mM酢酸緩衝液(pH4.9)
と、25μlのヒト赤血球液(最終濃度2.5%)を添
加した。37℃で30分反応後、赤血球の凝集能を観察
した。その結果を表1に示す。対照のメタノール処理ガ
ーゼに比較し、グリセロ糖脂質H632AおよびS36
5Aにより処理したガーゼでは高濃度のウイルス液を作
用させた試験区でも赤血球凝集を阻害できた。
【0067】
【表1】 表1 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― ウイルスユニット数 211109 8 7 6 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 糖脂質なし + + + + − − H632A + + − − − − S365A + − − − − − ―――――――――――――――――――――――――――――――――― +:凝集あり −:凝集なし
【0068】実施例10 積み重ねたガーゼを透過したインフルエンザウイルスに
よる赤血球の溶血活性を測定することにより、ガーゼに
固定化されたグリセロ糖脂質による、グリセロ糖脂質H
632AおよびS365Aの10mg/mlメタノール
溶液に各5枚のガーゼ(2×2cm)を浸した。余剰の
溶液を別のガーゼに吸収させた後、真空乾燥させた。対
照としてグリセロ糖脂質を含まないメタノールを用いて
同様の処理を行った。
【0069】このように処理した5枚のガーゼを無処理
のガーゼ5枚の上に乗せ、インフルエンザウイルスA/
Aichi/2/68(H3N2)の0.9%食塩水溶
液(2 13HAU)400μlをゆっくりと万遍なく吸収
させ、3分保持した後、1枚ずつ剥がし、各々1mlの
0.9%食塩水に浸した。これに0.1mlの200m
M酢酸緩衝液(pH4.9)と、25 μlのヒト赤血
球液(最終濃度2.5%)を添加した。氷上で10分放
置し、37℃で30分保持した後、400×gで5分の
遠心を加え、得られた上清中のヘモグロビン量を540
nmの吸光度により測定し、赤血球の溶血量を定量し
た。その結果を図7に示す。
【0070】グリセロ糖脂質H632AやS365Aで
処理したガーゼでは、コートしたガーゼにウイルス粒子
が捕捉される割合が多く、下方においた無処理ガーゼま
でのウイルス透過が少ない。糖脂質をコートしたガーゼ
を用いた場合では、無処理ガーゼを10枚重ねた場合に
比べ溶血活性総量が約50%に減少した。
【0071】
【発明の効果】本発明のグリセロ糖脂質は、インフルエ
ンザウイルスへの結合活性および中和活性が高く、ウイ
ルスの活性を阻害する効果を有し、インフルエンザの治
療薬あるいは予防用の資材としての利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 グリセロ糖脂質H632Aのマススペクトル
(FABMS)である。
【図2】 グリセロ糖脂質H632Aの重ピリジン溶液
中での13C−NMRスペクトル(100MHz)であ
る。
【図3】 グリセロ糖脂質S365Aの重ピリジン溶液
中での13C−NMRスペクトル(125MHz)であ
る。
【図4】 グリセロ糖脂質S361Aの重ピリジン溶液
中での13C−NMRスペクトル(125MHz)であ
る。
【図5】 グリセロ糖脂質のヒトインフルエンザウイル
スに対する結合能を示す図である。
【図6】 グリセロ糖脂質のヒトインフルエンザウイル
スに対する中和能を示す図である。
【図7】 グリセロ糖脂質を結合させた担体を通過する
ことによるヒトインフルエンザウイルスの減少を示す図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) //(C12P 19/12 C12R 1:15) C12R 1:15) A61K 37/20 Fターム(参考) 4B064 AF41 BA09 BE07 BE09 BG01 BG09 BH01 BH04 BH05 BH07 BH08 BH10 CA02 DA02 4B065 AA24X AC14 BA22 CA34 CA44 4C057 AA05 BB02 BB03 DD03 HH03 JJ07 4C084 AA02 AA06 BA48 CA04 ZB332

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I)、 【化1】 (式中、Rは、式 【化2】 で示される基、式、 【化3】 で示される基または式、 【化4】 で示される基を示す)で表わされるグリセロ糖脂質。
  2. 【請求項2】 式(I−a)、 【化5】 で表わされるグリセロ糖脂質H632A。
  3. 【請求項3】 式(I−b)、 【化6】 で表わされるグリセロ糖脂質S365A。
  4. 【請求項4】 式(I−c)、 【化7】 で表わされるグリセロ糖脂質S361A。
  5. 【請求項5】 コリネバクテリウム(Coryneba
    cterium)に属し、請求項1〜4のいずれかに記
    載のグリセロ糖脂質を生産する能力を有する微生物を培
    養し、培養物から請求項1〜4のいずれかに記載のグリ
    セロ糖脂質を採取することを特徴とする、請求項1〜4
    のいずれかに記載のグリセロ糖脂質の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項2に記載のグリセロ糖脂質を生産
    する能力を有するコリネバクテリウム・アクアティカム
    (Corynebacterium aquaticu
    m)H632株(FERM P−17498)。
  7. 【請求項7】 請求項4に記載のグリセロ糖脂質を生産
    する能力を有するコリネバクテリウム・アクアティカム
    (Corynebacterium aquaticu
    m)S361株(FERM P−17736)。
  8. 【請求項8】 請求項1〜4のいずれかに記載のグリセ
    ロ糖脂質を含む医薬。
  9. 【請求項9】 請求項1〜4のいずれかに記載のグリセ
    ロ糖脂質を結合した担体。
JP2000050440A 1999-12-27 2000-02-22 インフルエンザウイルス結合能を有するグリセロ糖脂質 Pending JP2001247593A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000050440A JP2001247593A (ja) 1999-12-27 2000-02-22 インフルエンザウイルス結合能を有するグリセロ糖脂質

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP36958499 1999-12-27
JP11-369584 1999-12-27
JP2000050440A JP2001247593A (ja) 1999-12-27 2000-02-22 インフルエンザウイルス結合能を有するグリセロ糖脂質

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001247593A true JP2001247593A (ja) 2001-09-11

Family

ID=26582127

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000050440A Pending JP2001247593A (ja) 1999-12-27 2000-02-22 インフルエンザウイルス結合能を有するグリセロ糖脂質

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001247593A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009116538A1 (ja) 2008-03-17 2009-09-24 サントリーホールディングス株式会社 呈味改善剤及びこれを含む茶飲料

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009116538A1 (ja) 2008-03-17 2009-09-24 サントリーホールディングス株式会社 呈味改善剤及びこれを含む茶飲料
US8840949B2 (en) 2008-03-17 2014-09-23 Suntory Beverage & Food Limited Taste-improving agents and tea drinks containing thereof
US8846127B2 (en) 2008-03-17 2014-09-30 Suntory Beverage & Food Limited Taste-improving agents and tea drinks containing thereof

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA1218319A (en) Hypocholesterolemically and/or hypotriglyceridemically active products
JPS643877B2 (ja)
JPH08259450A (ja) インターフェロン産生増強剤
CN116200306B (zh) 一种鼠李糖乳酪杆菌LRa16及其在制备治疗生殖道感染的药物方面的用途和产品
US4163780A (en) Ks-2-a
CN115851500B (zh) 一株植物乳杆菌及其应用
US4019960A (en) Process for the production of a saccharase inhibitor
JP2001247593A (ja) インフルエンザウイルス結合能を有するグリセロ糖脂質
US3937817A (en) Pharmaceutical compositions containing a saccharase inhibitor
JP2947560B2 (ja) エイズ治療剤およびその製造方法
JP2001328992A (ja) インフルエンザウイルス結合能を有するリン脂質
CN111249444A (zh) 一种用于抑制白色念珠菌的制剂
DK173449B1 (da) Anvendelse af et benanomicinderivat til fremstilling af et antiviralt lægemiddel
CN113893267B (zh) 嗜酸乳杆菌La28在抗流感病毒中的新应用
CN105061331A (zh) 一种用于小儿祛痰的药物组合物
CN105348183A (zh) 一种治疗妇产科术后低热症的药物组合物
CN105622619A (zh) 一种治疗牙周炎的药物组合物
CN105294535A (zh) 一种治疗盆腔炎的药物组合物
CN113230289A (zh) 桑黄和百蕊草复方作为新型冠状病毒治疗药物或抗病毒制剂的用途
WO2013071723A1 (zh) 一种抗菌脂肽及其制备方法及在兽医药中的应用
CN116286528A (zh) 罗伊氏乳杆菌ckcc11157菌株及其在制备抗高尿酸血症和痛风的产品中的应用
CN116987617A (zh) 一种鼠李糖乳杆菌ua260菌株及其在调节血尿酸方面的应用
CN105111185A (zh) 一种治疗老年阴道炎的药物组合物
JP4203161B2 (ja) 抗ウイルス活性を有する糖脂質ah−2445及びその製法
CN112321603A (zh) 一种氮桥环内酯类化合物及其在制备治疗宫颈癌药物中的应用