JP2001220244A - セラミックス粉体の膜状形成体、その形成方法、及びセラミックス膜 - Google Patents

セラミックス粉体の膜状形成体、その形成方法、及びセラミックス膜

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JP2001220244A JP2000023060A JP2000023060A JP2001220244A JP 2001220244 A JP2001220244 A JP 2001220244A JP 2000023060 A JP2000023060 A JP 2000023060A JP 2000023060 A JP2000023060 A JP 2000023060A JP 2001220244 A JP2001220244 A JP 2001220244A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のセラミックス膜形成法では実現不可能
であった2μm以上の膜を、環境に多大な負荷をかける
ことなく容易に形成し、かつ、低温で形成可能にする。 【解決手段】 容器2の底部側に水等の極性溶媒4を配
置させ、その上に無極性溶媒にセラミックス仮焼粉を懸
濁させた溶液1を滴下すると、界面6上部の無極性溶媒
層で仮焼粉沈降が生じる。また、無極性溶媒に低沸点溶
媒を用いることにより、室温状態にて、溶媒の蒸発が進
行する。無極性溶媒層は極性溶媒4からの反発力によ
り、その2次元的な表面積が最低になるように斥力を受
け、懸濁液から沈降して来る仮焼粉も、結果として充填
化するように力を受ける。この膜7を、あらかじめ容器
底部に配置してある基板3に移す(転写させる)ことに
より、基板3上にセラミックス粉体膜状成形物8を積層
することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板上に形成され
る機能性セラミックス厚膜、より詳細には、基板上に積
層されたセラミックス粉体の膜状形成体、その成形方
法、及び、該膜状形成体を熱処理して得たセラミックス
膜に関し、例えば、アクチュエータ、センサ、太陽光発
電素子などに応用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】電子製品の小型化・高機能化・高集積化
の要請により、各種電子セラミックス材料の膜状形成の
実用化がなされている。これら電子セラミックス材料と
しては圧電性、強誘電性や誘電性機能を有するもの、半
導性機能や触媒機能を有するセラミックス材料があり、
具体的には、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材
料、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電性、強誘
電性材料、チタニア、チタン酸ストロンチウム等の触媒
機能性材料、酸化錫、チタン酸バリウム(半導性)等の材
料が挙げられる。
【0003】これら材料の高機能化はその機能出現が種
々の界面等の限定された領域で発現するため、膜状形態
での利用が好ましい。また、このことは大面積化にも有
利である。また、他の機能との融合、即ち、Si半導体
装置との融合や、異種機能との融合:誘電性と磁性との
融合、磁性と半導性との融合、誘電、強誘電性と他の機
能との融合の面からも多くの可能性をもたらすものとし
て期待されている。例えば、色素増感型チタニア太陽光
発電素子、焦電センサー、ガスセンサー、電子写真感光
体やアクチュエータ素子などが該当する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これら材料の膜形成技
術として真空成膜法である真空蒸着、スパッタリング、
MOCVD法、レーザーアブレーション法、また、EC
Rプラズマにて各種成膜をアシストする複合法などが提
案され、主に、2μm以下の膜厚の形成に効果をなして
いる。しかし、それ以上の膜厚の成膜を実行するには、
成膜速度の向上、または、長時間にわたる成膜における
安定性の確保等の問題を有し、実用に供さないのが現状
である。また、真空を用いない方法ではゾルゲル法や塗
布熱分解法などがあり、高価な真空装置を用いず、安価
にかつ大面積の成膜に効果であるものの、多数の成膜工
程を繰り返す必要があり、これも同様に2μm以上の成
膜には不向きである。従って、上述の膜形成技術にて2
μm以上のセラミックス膜を得ることは困難である。
【0005】膜形成技術の改善により、将来において
は、2μm以上の厚さを有する膜形成が可能になったと
しても、これら成膜方法には以下の問題点を有する。即
ち、投入原料に対するセラミックス膜の生産収率がきわ
めて低いことである。スパッタリング法は膜として得ら
れる量は投入量の30%、MOCVDでは5%、ゾルゲ
ル法では1%しかなく、概ね大半を膜以外の廃棄物とし
て生産している。しかも、この廃棄物が全て回収不可能
な状態に形成されるため、きわめて効率が悪い。さら
に、機能性セラミックス材料の構成元素として鉛等の環
境面からの規制物質が含まれている場合、その例とし
て、ジルコン酸チタン酸鉛系圧電セラミックスをこれら
の作製法において形成する場合、環境に与える負荷が増
大することは言うまでもない。従って、容易に2μm以
上の膜厚が得られ、かつ、投入原料に対する収率の高い
作製法が望まれる。
【0006】特開平5−29675号公報に記載の発明
では、部分安定化ジルコニアセラミックス基板を用い、
機能性セラミックスとして圧電セラミックスであるジル
コン酸チタン酸鉛系材料をスクリーン印刷法にて厚さ2
0μm程の膜形成に成功し、具体的には、インクジェッ
トプリンターヘッドを実現している。この手法はセラミ
ックスの仮焼粉を用い、有機バインダーと混練すること
により印刷可能なペーストを作製し、印刷法により所望
する部位のみに転写させ、焼成によりセラミックス膜を
得るので投入原料のロスを招くことはない。さらに、不
要物ペーストは洗浄、乾燥を行うことで初期の仮焼粉に
回収できるので、この点からも好ましい作製法といえ
る。
【0007】しかし、印刷法によるセラミックス厚膜の
作製には焼成工程での高温処理が必要であり、結果とし
て使用できる基板種類に制約を与える。直接的な転写に
より印刷物を得る方法であるため、基板には平板が要求
される。また、熱的平衡状態を経て形成されるため、異
なる結晶相、異なる組成からなる複合厚膜が得にくい等
の問題点を有する。
【0008】具体的には、色素増感湿式太陽光発電素子
や電子写真感光体材料においては、金属錯体への電荷注
入効率向上のため、チタニア粒子のルチル、アナター
ゼ、アモルファス各相の複合化厚膜の形成や円筒状基板
への形成が困難である。また、広範囲な温度係数を有す
る焦電素子の実現にあたり、チタン酸ジルコン酸鉛セラ
ミックスの低温相菱面体晶から高温相菱面体晶への逐次
相転移を利用し、異なる組成のチタン酸ジルコン酸鉛セ
ラミックス複合化膜を得ることが困難である。
【0009】本発明の目的は従来のセラミックス膜形成
法では実現不可能であった2μm以上の膜を、環境に多
大な負荷をかけることなく容易に形成し、かつ、印刷法
にて得られている従来法より低温で形成可能にし、製造
エネルギーの面からも利点を発現させるものである。ま
た、低温合成によりジルコニアセラミックス基板以外の
各種基板上への膜形成を可能にし、かつ曲面を有する基
材への製膜を可能にさせたものである。
【0010】請求項1の発明の目的は、セラミックス膜
の低温焼成であり、具体的には、基板上に形成される厚
さ2μm以上200μm以下のセラミックス膜におい
て、機能性セラミックス材料の仮焼粉を用い、この仮焼
粉よりなる膜状形成体の粉体充填割合を63%以上まで
高めることにより、焼成温度の低温化を可能とすること
にある。
【0011】請求項2の発明の目的は、請求項1記載の
基板上に積層されるセラミックス粉体の膜状形成体の形
成方法において、具体的には、無極性溶媒にセラミック
ス粉体を分散させた第1の液体を、第2の液体である極
性溶媒上に配置させ、これら第1/第2液体間で生じる
界面上に前記セラミックス粉体を沈降・充填せしめ、基
板上に転写することにより、基板上にセラミックス膜を
得る方法を提供することにある。
【0012】請求項3の発明の目的は、請求項2記載の
方法で基板上に積層形成されたセラミックス粉体の膜状
形成体を、従来より低い温度範囲で、具体的には、30
0℃以上1200℃以下の温度範囲内にて熱処理を施し
て基板上にセラミックス膜を得るようにすることによ
り、基板の選択性を高め、かつ、環境に対する負荷を軽
減させることにある。
【0013】請求項4の発明の目的は、請求項1記載の
セラミックス粉体の膜状形成体の充填率を更に高めるこ
とであり、具体的には、セラミックス粉末が異なる粒度
分布および/または異なる比表面積を有する複数の粉体
を混合してなる粉末を用いることにより、セラミックス
粉体の膜状形成体の充填率を更に高めるようにしたもの
である。
【0014】請求項5の発明の目的は、請求項1記載の
膜状形成体にハンドリング性を高めさせ、プロセス中の
膜亀裂事故を低減させ、作製プロセスの安定性を高めた
ことにあり、具体的には、セラミックス粉末と高分子化
前駆体物質からなるセラミックス粉末の膜状形成体を提
供することにある。
【0015】請求項6の発明の目的は、請求項5の発明
と同様に、請求項1記載の膜状形成体にハンドリング性
を高めさせ、プロセス中の膜亀裂事故を低減させ、作製
プロセスの安定性を高めたことにあり、具体的には、セ
ラミックス粉末とゾルゲル法によるセラミックス前駆体
物質からなるセラミックス粉末の膜状形成体を提供する
ことにある。
【0016】請求項7の発明の目的は、焼成温度の低温
化をはかることにあり、具体的には、焼結助材を担持さ
せたセラミックス粉末を用いることにより焼成温度の低
温化を図り、これにより基板の選択性を高め、かつ、環
境に対する負荷を軽減させることにある。
【0017】請求項8の発明の目的は、焼成温度の低温
化をはかることにあり、具体的には、請求項7記載の焼
結助材の担持方法に、アルコキシド化合物を主として実
施される所謂ゾルゲル法により担持処理することにより
適正化処理された仮焼粉およびこの仮焼粉を用いてなる
膜を提供することにある。
【0018】請求項9の発明の目的は、機能出現のため
の複合セラミックス膜構造体を得ること、換言すれば、
従来作製が困難であった複合セラミックス膜構造体を得
ることにあり、具体的には、同一組成にて、かつ、異な
る結晶構造物から構成される膜を、安定性、再現性にお
いて優れて提供することにある。
【0019】請求項10の発明の目的は、機能性出現の
ための複合セラミックス膜構造体得ること、換言すれ
ば、従来作製が困難であった構造体を得ることにあり、
具体的には、強誘電的キュリー点の異なる複数成分から
なることを特徴とする複合セラミックス膜を、安定性、
再現性において優れて提供することにある。
【0020】請求項11の発明の目的は、曲面を有する
基板上への膜形成およびその積層体を実現させることに
ある。
【0021】請求項12の発明の目的は、基板上に形成
されるパターン化セラミックス膜の形成にあり、具体的
には、基板上に形成されるパターン化セラミックス膜の
形成を、基板上にパターン化された所謂犠牲膜を形成す
る工程、膜状形成体を転写する工程、前記犠牲膜を除去
する工程、その熱処理を施す工程により提供するもので
ある。
【0022】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、基板
上に形成される厚さ2μm以上200μm以下のセラミ
ックス膜において、焼成前のセラミックス粉末からなる
膜状形成体の粉体充填割合が63%以上であることを特
徴とする、基板上に積層されるセラミックス粉体の膜状
形成体にある。
【0023】請求項2の発明は、無極性溶媒にセラミッ
クス粉体を分散させた第1の液体を、第2の液体である
極性溶媒上に配置させ、第1/第2液体間で生じる界面
上に前記セラミックス粉体を沈降・充填せしめ、基板上
に転写することにより得ることを特徴とする、請求項1
記載の基板上に積層されるセラミックス粉体の膜状形成
体形成方法にある。
【0024】請求項3の発明は、請求項1又は2記載の
基板上に積層されるセラミックス粉体の膜状形成体を、
300℃以上1200℃以下の温度範囲内にて熱処理を
施して得たセラミックス膜にある。
【0025】請求項4の発明は、請求項1記載のセラミ
ックス粉末として、異なる粒度分布および/または異な
る比表面積を有する複数の粉体を混合してなる粉末を用
いたことを特徴とするものである。
【0026】請求項5の発明は、請求項1記載の膜状形
成体は、セラミックス粉末と高分子化前駆体物質からな
ることを特徴とするものである。
【0027】請求項6の発明は、請求項1記載の膜状形
成体は、セラミックス粉末とゾルゲル前駆体物質からな
ることを特徴とするものである。
【0028】請求項7の発明は、請求項1記載のセラミ
ックス粉末として、焼結助材を担持させたセラミックス
粉末を用いること、および、該セラミックス粉末を焼成
により形成したセラミックス膜を特徴とするものであ
る。
【0029】請求項8の発明は、請求項7記載の焼結助
材は、アルコキシド化合物を主として実施される、所謂
ゾルゲル法により担持処理したことを特徴とするもので
ある。
【0030】請求項9の発明は、請求項3記載のセラミ
ックスが主たる成分組成において同一で、かつ、異なる
結晶構造を有するセラミックス材料からなることを特徴
とするものである。
【0031】請求項10の発明は、請求項3記載のセラ
ミックスが所謂強誘電体材料からなり、かつ、異なるキ
ュリー点を有する複数成分からなることを特徴とするも
のである。
【0032】請求項11の発明は、請求項1記載の基板
が曲面を有する所謂非平板状の基板であることを特徴と
するものである。
【0033】請求項12の発明は、基板上にパターン化
された所謂犠牲膜を形成する工程、膜状形成体を転写す
る工程、前記犠牲膜を除去する工程、その後、請求項3
記載の熱処理を施す工程により、基板上に形成されたパ
ターン化セラミックス膜を特徴とするものである。
【0034】
【発明の実施の形態】セラミックスはその前駆体である
仮焼粉をもとに、種々の成形を施し、熱(場合によって
は圧力)処理工程を経て形成されるもので、一般には、
熱処理が施さる。この熱処理の過程において仮焼粉間で
の物質移動が生じ焼結が実行される。熱処理温度はセラ
ミックス組成に最も依存し、アルミナや部分安定化ジル
コニアの焼成温度(熱処理温度)は1600〜1800
℃、チタン酸バリウムでは1300〜1400℃、鉛系
圧電セラミックスでは1200〜1300℃が典型的な
バルク体焼成温度である。焼成温度の低温化は焼結工程
が仮焼粉粒子の表面で行われる物質の移動が支配的であ
るので、相対的に表面の割合を多くさせるための、仮焼
粉の微粉化、ならびに、物質の移動行程を少なくさせる
ための、成形体の高緻密充填化の2者が適正化される必
要がある。充填率を一定にした場合の仮焼粉粒径に対す
る焼結温度の変化は、部分安定化ジルコニアセラミック
スの場合、1600℃から1200℃まで変化し、40
0℃程の低温化がなされている。このことは低温化の程
度は異なるものの、全てのセラミックス材料に共通して
確認されている現象である。
【0035】一方、仮焼粉寸法を一定にし、充填率を変
化させた場合の焼結温度の変化は、不連続領域はあるも
のの、ほぼ同様の傾向を示す。したがって、バルクセラ
ミックスの低温化は、この両者の最適化によりなされる
と思われてきた。しかし、仮焼粉の微粒子化と高密度充
填化は両立しない。
【0036】図1は、充填率について粒子の配位数と充
填密度の理論計算結果を示す図で、単一粒径を持つ球状
粒子は12配位を取る場合(図(D)、(E))、充填
密度は74.05%になるものの、実際の仮焼粉は粒径
分布を持ち、12配位を取るようには積層しない。仮焼
粉の微粒子化においては、粒子表面エネルギーの増加に
伴い、1次粒子の凝集体である2次粒子も形成され、結
果として広範な粒度分布を持つ。このことにより、粒径
の減少に伴い充填率の低下を招く。結果として焼結温度
は低下せず、さらに収縮率の増大とばらつきを与えてし
まう。平均粒径0.8μm、比表面積1.7m/gのジ
ルコン酸チタン酸鉛仮焼粉を800kg/cmにて一
軸成形した時の粉体充填割合(単に充填率)は約55%で
あり、この充填率は大抵のセラミックス材料に当てはま
り、これ以上の充填率を得るのは困難なのが現状であ
る。
【0037】グリーンシートから作製されるアルミナ回
路基板等の作製例においては、平均粒径(または比表面
積)の異なる大中小の3水準の粒子を用い、充填率を向
上させる工夫が知られている。これは図1に示された粒
子積層(粒子径の大きい粒からなる)により形成される空
隙に細かい粒径を持つ粒子を内包させるものである。こ
の結果、充填率約60%まで向上する。
【0038】充填率60%以上を稼げない場合、他の方
法による焼結温度の低温化は、一般に液相焼結を実行さ
せるべく、焼結助材を添加する方法が知られている。熱
処理行程中、これら助材は融けて液相を形成する。この
液相は、粒子間の接触面積を稼ぐこと、さらに移動すべ
き物質の搬送を容易にさせる効果がある。米国特許第4
213723号で示されているチタン酸バリウムセラミ
ックスに焼結助材としてゲルマン酸鉛を添加したものが
知られている。助材に要求される特性は、焼結温度より
低い融点を持つこと、母相の有する機能を阻害しないこ
と等が要求され、各材料に対し適切な材料が存在しう
る。助材濃度は概ね2wt%以下が好ましい結果を与え
る。助材は仮焼粉に対し均一に混合分散させる必要があ
る。セラミックス仮焼粉の粒径に対し十分小さいことが
要求される。
【0039】しかし、低温化のために仮焼粉は1μm以
下の微粉が使用されるため、助材の粒径としてはその1
/10μm以下が必要であることが類推されるものの、
この様な超微粉は作製自体が困難である。助材の均一分
散は溶液からの析出現象を用いることで均一に担持する
ことが可能になる。金属アルコキシド化合物を用いたゾ
ルゲル法は工業的にも確立された技術であり、セラミッ
クス仮焼粉の表面のみにコーティングすることが可能で
ある。
【0040】上述の様な種々の低温化を施したセラミッ
クスバルク体の焼成は、ジルコン酸チタン酸鉛を仮焼粉
にし実施すると、従来1250℃であった焼成温度が8
50℃まで低温化される。しかし、前記特開平5−29
675号公報に記されているスクリーン印刷、焼成によ
るセラミックス膜を、この低温焼成化処理を施した仮焼
粉を使って作製した場合、焼成温度の低温化は実行され
ない。これはバルク焼結体が等方的に焼成収縮が許され
るのに対し、膜状の形態では基板に拘束されているた
め、平面方向(x、y方向)には収縮せず、この平面方
向の収縮を補うために膜厚方向(z方向)が余計に収縮し
なければいけないためである。
【0041】図2は、平均粒径0.5μm、比表面積2.
9m/gのPNN−PZ−PTセラミックスに焼結助
材1wt%(LiBi−Oxide)を担持した仮焼粉を
用いて実施した時の、焼成温度と膜厚変化の関係を示
す。膜作製は前述の公開特許公報に準じた。膜厚の単位
はμmである。図2中、Aの膜厚減少はz軸方向の収縮
であり、処理温度850℃で第1段階の収縮が飽和して
いる。さらに処理温度の上昇に伴い、基板拘束面である
x、y方向に相当する収縮量をz方向が補う量だけ収縮
し、緻密な焼結膜が得られる(図2中、B相当)。この状
態を形成するのに1250℃の処理温度が要求された。
アルミナ、部分安定化ジルコニア、マグネシア等のセラ
ミックス基板では膜形成可能であるものの、他の基板上
には作製できない。従って、バルクセラミックスでは低
温化がなされたものの、膜状に作製する場合には、更な
る改良が必要である。
【0042】後述の粉体充填割合とは、バルク焼結体密
度に対する膜の密度比である。膜密度は印刷・脱脂によ
り増加した質量を膜体積で除した値と定義される。膜堆
積は膜面積と膜厚の積から求められ、膜厚は接触式段差
計による測長や、膜断面の走査型電子顕微鏡観察より求
める。図2に示した試料の体積充填割合は63%であ
る。
【0043】スクリーン印刷法によるセラミックス厚膜
の形成は、セラミックス仮焼粉に有機ビヒクルを混練さ
せ、スクリーン印刷可能なペースト状に加工し、平板に
印刷転写するものである。比表面積の異なる仮焼粉を用
いたり、セラミックス仮焼粉量に対するビヒクル割合を
界面活性剤の適正化により極力低下させても、前述の6
3%以上には至らなかった。これは基板上に転写される
印刷物の中には焼成により空隙を有する有機物が含まれ
るため粉体充填割合は向上しない、という原理上の制約
によるものである。従って、他の手法により充填率を向
上させることが要求される。
【0044】後述の方法によりこの粉体充填割合を63
%以上に高めることが可能になり、結果として焼成温度
の低温化がなされ、用いる基板の制約が軽減された。こ
の様にして低温化ができることにより、以下の従来では
困難であった複合化セラミックスの厚膜形成が可能にな
る。酸化チタン(TiO)は結晶相として高温相のブル
カイト、低温相のアナターゼ、その中間にルチル、の各
相を有している。励起エネルギーによるキャリア発生と
そのキャリアの注入効率はアナターゼ単相よりはルチ
ル、さらにアモルファス相の複合化材料の方が好ましい
ことが知られている。非常に高温焼成から作製されるセ
ラミックス膜では熱平衡状態を経て形成されるため、混
合相膜を得ることはできない。しかし、本発明による低
温作製においては、これら複合膜作製が可能になる。
【0045】また、強誘電体の有する焦電効果、およ
び、これを用いた焦電センサーにもこの複合化膜は有効
である。焦電センサーとは熱エネルギーにより強誘電体
の有する自発分極の変化に対応した焦電電流を検知する
素子である。これは赤外線等の熱エネルギーを受け、材
料自身が温度上昇する必要があり、従って、素子熱容量
の低減がセンサー感度の向上をもたらす。また、温度変
化に対する焦電効果は強誘電相−常誘電相相転移温度、
所謂キュリー点近傍でその効果が高い。ジルコン酸チタ
ン酸鉛強誘電体ではジルコン酸鉛、チタン酸鉛の各固溶
組成に対応しキュリー点が変化している。この材料系を
用いた焦電センサー用素子には、PZT(95/5)から
PZT(90/10)の組成を用いることが提案されてい
る。この組成における温度に対する結晶系変化は、室温
では菱面体晶(低温相)100℃までに菱面体晶(高温相)
の第2の相転移があり、キュリー点(第1の相転移)は2
30℃から260℃に存在している。
【0046】先に、キュリー点近傍で高い焦電効果が得
られると述べたが、低温相−高温相相転移でも、同様に
高い効果が得られる。さらに脱分極による効果消失が心
配ないので、この組成範囲内で使用される。PZT(9
5/50)は30℃に、またPZT(90/10)は10
0℃にこの相点移転を持つ。従って、室温から100℃
の温度範囲内にて、安定した焦電係数を得るには、各材
料を複合化することによりなされるものと容易に類推さ
れる。この概念を図3に示す。膜状に作製されることに
より熱容量の低減が図られ、感度は向上し、また、各組
成を調合することで平坦化が期待できる。
【0047】従来の作製では仮焼粉の段階で各組成を制
御しても、1300℃の焼成により、各組成粒子は均一
に固溶焼結し、焦電係数の平坦化は実現されなかった。
本発明では、この様な材料系でも850℃の焼成が可能
であり、従って、焼結後の膜は組成の単一化は生じず、
飛躍的な特性の向上ができるものである。上述の厚膜を
作製するに当たり、本発明では従来にない新規な方法に
より、高い充填率を持つセラミックス粉体の膜状形成体
を得る。その方法は、極性溶媒、無極性溶媒により形成
される界面を利用したものである。
【0048】図4は、本発明によって、基板上にセラミ
ックス粉体膜状成形を積層する場合の一例を説明するた
めの工程図で、図中、1はセラミックス粉+無極性溶
媒、2は容器、3は基板、4は水、5はドレンで、容器
2の底部側に水等の極性溶媒4を配置させ、その上に無
極性溶媒を滴下し、前述の界面を形成する。この無極性
溶媒にセラミックス仮焼粉を懸濁させ、極性溶媒上に滴
下すると、界面6の上部の無極性溶媒層1(図4
(B))で仮焼粉沈降が生じる(図4(C))。また、
無極性溶媒に低沸点溶媒を用いることにより、室温状態
にて、溶媒の蒸発が進行する(図4(D))。無極性溶
媒層は極性溶媒からの反発力により、その2次元的な表
面積が最低になるように斥力を受け、懸濁液から沈降し
て来る仮焼粉も、結果として充填化するように力を受け
る(図4(E))。この充填力は沈降して来る状態が比
較的自由度が高い、また、準平衡状態にて進行する、等
の好条件が満たされるため、従来の1軸成形の強制加圧
とは異なり、容易に高い充填割合のセラミックス粉体の
膜状形成体7が得られる。この膜7を、あらかじめ容器
底部に配置してある基板3に移す(転写させる)ことによ
り、基板3上にセラミックス粉体膜状成形物8を積層す
ることができる(図4(F))。また配置させておく基
板3は、間接転写(スクリーン印刷の直接転写と区別し
て)という間接的な積層法を取るので、曲面を有した基
板でも積層が可能になる。
【0049】界面を用いた無機材料膜形成法はM. Yaman
e 等の文献 Journal of Sol-Gel Science and Technolo
gy, 2(1994)457でシリカガラス膜の作製が報告されてい
る。これは水/トルエンの界面を形成させ、トルエン中
にシリコンアルコキシド化合物を含ませている。アルコ
キシド化合物は、水と水に含まれている酸またはアルカ
リを触媒として、加水分解・重縮合反応をし、シリカガ
ラスの湿潤ゲル膜が形成され、その後、乾燥・熱処理に
より膜を形成する方法であった。本発明者等もこの手法
を追試したが、湿潤ゲルの膨大な体積変化に起因した膜
の欠陥事故が、さらに膜面積の増大に伴い発生し、これ
を防止することは不可能であった(後述)。また湿潤ゲル
の焼成によるセラミックス膜の合成では、異なる結晶相
の複合化膜や異なる組成の複合化膜の作製はできない。
湿潤ゲル膜の焼成収縮率を低減させるために仮焼粉を添
加することにより、ゾルゲル界面重合法の改善にも至っ
ている。
【0050】この様な方法によるセラミックス粉体の膜
状形成体は、セラミックス材料をPZT系圧電材料にし
た場合、充填割合が63%以上になり、焼結温度は充填
割合の増加に伴い低温化がなされ、850℃までの低温
化が可能になる。また前述のアルミナセラミックス多層
配線基板技術で行われている、セラミックス粉体の異な
る平均粒径、または、比表面積粉体を適量混合し、この
界面沈降を行った場合、更に粉体充填割合の増加をもた
らす。
【0051】界面に凝集して来る膜は振動などの外乱に
対し、影響を受けやすい。また、膜面積の増加に伴い、
膜状凝集物に亀裂が生じる場合がある。この改善とし
て、極性溶媒中の懸濁状セラミックス粉体に高分子モノ
マーを微量加え、処理することで、高密度充填化膜の構
造体強度が確保され、亀裂発生の防止が可能になる。
【0052】図5は後述の実施例であり、図5(A)は前
述の山根(M.Yamane)等の報告した、セラミックス粉を
用いない界面重合ゾルゲル法の例であり、図5(B)、
(C)は意図的に外乱を与えた試料で、(B)には亀裂防止
の対策を施した例である。
【0053】また、ゾルゲル法として知られている金属
アルコキシド化合物などによる、セラミックス形成前駆
体は、加水分解・重縮合反応により、前述の高分子化に
よる亀裂発生の防止能があり、またこのアルコキシドの
ネットワークによる前駆体は焼成によりセラミックス粉
体、ならびにセラミックス膜の緻密化に寄与するので、
この様なゾルゲル溶液をセラミックス懸濁無極性溶媒に
添加することは好ましい。
【0054】一方、先に、スクリーン印刷法にて記述し
た、焼結助材担持仮焼粉は、本発明においても有効であ
り、焼成温度の低温化に寄与する。特に、ゾルゲル法に
よる助材担持は担持量の制御性、均一性の面において優
れている。また、図4中に示す基板3として、図6に示
すように、アルミナ製チューブ3aを用い、その上にセ
ラミックス膜を転写・焼成することで、曲面上へのセラ
ミックス膜の形成が可能になる。
【0055】この様な転写・膜形成において、パターン
化された膜形成は行程の簡略化上、重要である。特に、
セラミックス膜の膜厚が厚くなるほど、このパターン形
成は困難になる。転写基板上にステンレス箔に開孔パタ
ーンを設けた、所謂メタルマスクを配置させ、転写・剥
離する方法は、パターン形成として容易に連想できる。
しかし、この場合の加工寸法は250μmが限界であっ
た。
【0056】本発明では、転写する基板上にあらかじめ
所望するパターンを反転した有機物からなる層(犠牲層)
を形成し、この犠牲層に、界面形成したセラミックス粉
体の膜状形成体を転写させ、その後の熱処理により、こ
の犠牲層を燃焼除去し、その際、犠牲層上のセラミック
ス膜を除去する所謂リフトオフ法によりパターン化した
セラミックス膜が形成できる。犠牲層はリソグラフィ技
術を用いれば、容易に数μmの微細化が可能である。従
って、メタルマスクによる加工寸法の更なる微細化が実
行できる。
【0057】(実施例1):請求項1、3に対応 次の実施例2で説明する方法で、粉体充填割合が50か
ら71%のセラミックス粉体の膜状形成体を得る。用い
た材料は堺化学社製PZT_LQ材であり、バルク体の
焼結温度、密度は1250℃、7.90g/cmであ
る。膜状形成体はアルミナ基板に転写し、乾燥した後、
600℃、30分の熱処理を施し粉体充填割合(相対密
度に相当)を求める。表1に示す各温度で熱処理を施
し、93%以上に達した時の処理温度が、バルク体焼成
温度の1250℃以下である場合、判定を可とする。
【0058】
【表1】
【0059】(実施例2):請求項2に対応 無極性溶媒にヘキサン10mlを用い、その中にPZT
仮焼粉0.1g(先述)を分散させる。解膠剤としてスパ
ン80等の界面活性剤1×10−4mol以下を用い、
超音波分散機にて懸濁状態を得る。この懸濁液を無極性
溶媒の水に滴下させ、静止・沈降させる。図4に示した
ガラス製容器2の直径は45mmである。アルミナシー
トに転写し、2段階の乾燥工程を経て、600℃熱処理
を行う。第1の乾燥は湿度70%の雰囲気中6時間の乾
燥を行い、第2の乾燥は湿度35%の雰囲気中6時間の
乾燥を行った。この方法により膜厚18μm以上の膜が
得られ、粉体充填割合は前記の表1記載の初期充填率各
数値を得た。膜厚制御は投入粉体の量、膜形成面積の2
者のみが制御因子であるため、非常に制御性が高く、安
定性、再現性の確保された粉体膜状形成体の作製方法で
あることは言うまでもない。
【0060】また、PZTセラミックスのような環境汚
染物質に該当する鉛元素を含む材料において、投入した
量の全てが膜として回収されるため、真空成膜やゾルゲ
ル法と比較し、環境負荷の低減がはかれ、この点でも好
ましい。尚、63%以下の充填率は意図的に空孔形成材
を懸濁液中に分散させて得ている。この処理を行わない
場合、容易に67%の充填率が得られる。
【0061】(実施例3):請求項4に対応 固相反応によりPZT仮焼粉を得る。ボールミル粉砕し
た第1のPZT粉の比表面積は3.3m/gであっ
た。この仮焼粉を900℃で熱処理し比表面積0.4m
/gを有する第2のPZT粉を作製する。各PZT粉
を50wt%ずつ秤量、混合し、実施例2と同様にセラ
ミックス粉体充填膜を得た。この時の充填率は71%に
至った。
【0062】(実施例4):請求項5に対応 高分子前駆体としてポリカーボネートをテロラヒドロフ
ラン(THF)に溶解させ、このTHF溶液をヘキサン
に混合させる。ポリカーボネイトの重量はセラミックス
仮焼粉に対し0.5wt%以下になるように処方する。
堺化学社製PZT_LQ材を用いたところ、同様に67
%充填の膜が得られた。図5(B)、図5(C)は比較例
であり、外乱を加えた時の膜強度の違いを示している。
高分子前駆体を0.1wt%加えた場合(図5(B)相
当)、亀裂などの事故発生が防止できた。また実施例2
では容器直径45mmで膜形成したが、本強化処方では
直径100mm容器を用い作製しても、亀裂は発生しな
かった。
【0063】(実施例5):請求項6に対応 実施例2に記したヘキサン懸濁液にPZTゾルゲル液を
加える。この液は高純度化学社製PZTゾルゲル塗布材
で、添加量は35μlとした。実施例4と同様に、亀裂
防止が可能になり、また同様に直径100mm容器を用
い作製しても、亀裂は発生しなかった。
【0064】(実施例6):請求項7、8に対応 セラミックス仮焼粉にPZTを、焼結助材にゲルマン酸
鉛(PGO)を用いた。PZT仮焼粉は境化学社製ジルコ
ニウムチタン複合酸化物(ZTO)、平均粒径0.1μm
の粒子に酸化鉛を固相反応にてPZT化せしめた仮焼粉
である。この平均粒径は0.15μmである。PGO微
粉を用い均一に混合させることは困難であり、さらに助
材の添加量として、PZT仮焼粉の2wt%相当の微量
を添加するので、通常の粉体混合では微視的に不均一な
領域ができてしまう。
【0065】従って、含浸法ならび後述(実施例7)の
ゾルゲル法によりPZT粒子のみにPGOを担持した。
含浸法は硝酸鉛と塩化ゲルマニウムを出発材料にし、鉛
とゲルマニウムの比率が5:3になるように秤量し、水
溶液を得る。次に、誘導生成物のPGO量が2wt%に
相当する量のPGO水溶液をPZT仮焼粉に添加し、室
温乾燥させる。次に400℃の熱処理により、水に不溶
のPGOが形成される。比較としてPGO粉末を適量添
加し、ボールミルにて粉砕混合した機械的混合粉を作製
し、実施例5の方法にて膜状形成体を作製し、焼成温度
に対する膜の相対密度の変化を求めた。粉体充填割合は
全試料とも66から67%であった。PGO添加により
焼結温度の低温化がなされる。機械的混合粉は局所的に
焼結が進行し、再現性、均一性に乏しい結果を与えた。
一方、液相からの助材担持は良好な結果を与える。その
結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】(実施例7):請求項8に対応 PZT仮焼粉にゾルゲル法にてPGOを担持させる。P
GOの出発材料としては酢酸鉛五水和物、ゲルマニウム
イソプロポキシドを用いた。始めに酢酸鉛五水和物の脱
水を行い、無水酢酸鉛を誘導し、メトキシエタノールに
溶解する。一方、ゲルマニウムイソプロポキシドは同様
にメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応を
終了させた後、両者のメトキシエタノール溶液を混合、
還流することで複合アルコキシド化合物を得る。またP
ZT仮焼粉は十分乾燥させた後、湿度80%に保持した
恒湿槽内にて吸水させ、この粉体をトルエン溶液に浸
し、複合アルコキシド溶液を添加させる。減圧蒸留また
は限外濾過により粉体を分離し、乾燥することで担持処
理を終了させる。
【0068】平均粒径0.15μmと平均粒径0.8μm
のPZT仮焼粉に、このゾルゲル担持処理を行い各々5
0%の配分でこの混合し、膜状成形を行う。この試料の
充填割合は72%であった。850℃の焼成で93%の
緻密膜を得た。850℃の熱処理で緻密な膜が形成でき
ると、今までは困難であったSi基板上への膜形成が可
能になる。Si基板に熱酸化膜を形成し、Ti密着膜、
Ir中間膜、Pt電極膜をスパッタリング法により成膜
した基板上にPZT膜形成を行い、Pt上部電極を配置
して、PZTキャパシタを形成した。図7はPZT膜の
電界強度に対する強誘電体の分極特性を示したものであ
り、十分な強誘電特性を示した。
【0069】(実施例8):請求項9、3に対応 同一組成で異なる結晶相からなる複合化膜の作製につい
て、二酸化チタン(チタニア)を例として説明する。前
述のように、チタニアにはブルカイト、ルチル、アナタ
ーゼの結晶相が存在する。その中からルチル(平均粒径
1.5μm)とアナターゼ(平均粒径0.4μm)の粒子
を用いた。これらの粉体をヘキサンに加え微量の手異分
子界面活性剤とチタンイソプロポキシドを加える。この
時チタンイソプロポキシドはアセチルアセトンを加えて
安定化処理を行っている。同様にして膜状形成体を作製
し、アルミナ基板に転写、乾燥処理を行い、各種温度に
て焼成処理を施した。基板上の膜として、十分な剥離強
度を得るためには300℃以上の熱処理が必要である。
また、300℃焼成の膜をX線回折により結晶相を調べ
てみたところ、仕込み粉と同様のルチル相、アナターゼ
相が同定された。また透過型電子顕微鏡によりこの膜に
はチタンイソプロポキシドから誘導されるアモルファス
相も存在していた。
【0070】(実施例9):請求項10に対応 焦電素子用膜の作製例として、PZT(90/10)、P
ZT(93/7)、PZT(95/5)の仮焼粉に実施例7
と同様にPGO担持処理を施し膜形成した。各粉体の比
率は1/3である。850℃焼成膜の相対密度は95%
に達した。また膜厚は20μmが得られた。比較例とし
てスクリーン印刷法にて焼成温度1000℃試料(膜厚
20μm、相対密度92%)を作製した。X線回折によ
り結晶構造に起因する回折ピークを評価する。2θ値が
50°近傍の回折ピークは菱面体晶(113)構造に起因
している。スクリーン印刷法試料のこの回折ピークは単
ピークであるものの、本発明による試料では(113)回
折ピークが広がっていることが、回折ピークの半値幅か
ら定量できた。即ち、1000℃焼成では異なる組成の
仮焼粉が熱処理により単一組成化をしたものの、850
℃では単一組成化を防ぐことができた。
【0071】(実施例10):請求項11に対応 転写基板としてアルミナチューブを用いて膜形成を行っ
た。その結果、図6に示したように、チューブ3aの外
径に沿って均一な膜の作製ができた。
【0072】(実施例11):請求項12に対応 ノボラック樹脂系感光性フォトレジストを用い、フォト
リソグラフィにより基板上に有機物からなる犠牲層パタ
ーンを配置させ、次に、膜状形成体を転写する。熱処理
により犠牲層ならびに、その上部のセラミックス膜を除
去し、第2の熱処理として、通常の焼結を行う。この方
法で100μmのパターン化セラミックス膜を基板上に
形成できた。比較として、転写基板にメタルマスクを配
置させ、セラミックス膜転写後にメタルマスクを剥した
場合の形成できうるパターンの寸法は、250μmであ
った。
【0073】
【発明の効果】請求項1に対する効果(実施例1対応) セラミックス粉体を63%以上の充填率で基板上に膜形
成することでスクリーン印刷法などの従来法と比較して
行程の低温化を図ることができる。これは使用できる基
板の自由度を高め、またエネルギー的にも寄与する。
【0074】請求項2に対する効果(実施例2対応) 高い充填割合のセラミックス粉体の膜状形成体が得られ
る。投入した材料が全て膜として回収され効率の向上が
できる。特に、鉛を含む材料の環境負荷の低減にも寄与
する。
【0075】請求項3に対する効果(実施例3対応) エネルギー消費の低減と使用基板の自由度が増す。
【0076】請求項4に対する効果(実施例4対応) 粉体充填割合の向上が実行でき、行程の低温化がはかれ
る。
【0077】請求項5に対する効果(実施例5対応) 膜状形成体の機械的強度が確保され行程の安定化、成膜
面積の大面積化がはかれる。
【0078】請求項6に対する効果(実施例6対応) 膜状形成体の機械的強度が確保され行程の安定化、成膜
面積の大面積化がはかれる。
【0079】請求項7に対する効果(実施例7対応) 行程の低温化が実現され、エネルギー消費の低減と使用
基板の自由度が増す。
【0080】請求項8に対する効果(実施例8対応) 行程の低温化が実現され、エネルギー消費の低減と使用
基板の自由度が増す。特に構造加工性に優れたSi基板
上への圧電セラミックス膜の形成ができ、微小機械素子
の新規製造に有効である。
【0081】請求項9に対する効果(実施例9対応) 電子セラミックスの各機能を複合化した膜形成が可能に
なる。
【0082】請求項10に対する効果(実施例10対
応) 強誘電体応用では焦電センサ膜としての複合膜の作製が
できる。
【0083】請求項11に対する効果(実施例11対
応) 従来法では作製が困難であった曲面上への均一成膜がで
き、PZT圧電膜を用いた場合、アクチュエータ効率の
高い素子の実現が可能になる。
【0084】請求項12に対する効果(実施例12対
応) 従来より微細なパターン化した厚膜形成が可能になるこ
とで、従来のエッチングや他の加工処理行程が省略で
き、行程の短縮化がはかれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 球体の積層形態と充填密度の関係を示す図で
ある。
【図2】 印刷膜の焼成温度と膜厚の関係を示す図であ
る。
【図3】 焦電係数を平均化する例を示す図である。
【図4】 本発明によるセラミックス膜の形成方法を説
明するための図である。
【図5】 膜状形成体として、セラミック粉末とゾルゲ
ル前駆体物質を用いた例とその比較例を示す図である。
【図6】 曲面へのセラミックス膜を形成する例を示す
図である。
【図7】 PZT膜の電界強度に対する強誘電体の分極
特性を示す図である。
【符号の説明】
1…セラミックス粉体+無極性溶媒、2…容器、3…基
板、4…極性溶媒、5…ドレン、6…無極性/極性溶媒
界面、7…セラミックス粉体の膜状形成体、8…セラミ
ックス膜。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鶴見 敬章 東京都目黒区大岡山2丁目12番1号 東京 工業大学内 (72)発明者 和田 智志 東京都目黒区大岡山2丁目12番1号 東京 工業大学内 (72)発明者 小澤 修一 東京都目黒区大岡山2丁目12番1号 東京 工業大学内 Fターム(参考) 4G030 AA13 AA16 AA17 AA40 BA10 CA08 GA10 GA11 GA14 GA27

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成される厚さ2μm以上20
    0μm以下のセラミックス膜において、焼成前のセラミ
    ックス粉末からなる膜状形成体の粉体充填割合が63%
    以上であることを特徴とする、基板上に積層されるセラ
    ミックス粉体の膜状形成体。
  2. 【請求項2】 無極性溶媒にセラミックス粉体を分散さ
    せた第1の液体を、第2の液体である極性溶媒上に配置
    させ、前記第1の液体と第2の液体との間で生じる界面
    上に前記セラミックス粉体を沈降・充填せしめ、基板上
    に転写することにより得ることを特徴とする基板上に積
    層されるセラミックス粉体の膜状形成体形成方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の基板上に積層され
    たセラミックス粉体の膜状形成体を、300℃以上12
    00℃以下の温度範囲内にて熱処理を施して得たことを
    特徴とするセラミックス膜。
  4. 【請求項4】 前記セラミックス粉末は異なる粒度分布
    および/または異なる比表面積を有する複数の粉体を混
    合してなる粉末であることを特徴とする請求項1記載の
    膜状形成体。
  5. 【請求項5】 前記膜状形成体はセラミックス粉末と高
    分子化前駆体物質からなることを特徴とする請求項1記
    載のセラミックス粉末の膜状形成体。
  6. 【請求項6】 前記膜状形成体はセラミックス粉末とゾ
    ルゲル前駆体物質からなることを特徴とする請求項1記
    載のセラミックス粉末の膜状形成体。
  7. 【請求項7】 焼結助材を担持させたセラミックス粉末
    を用いることを特徴とする請求項1記載のセラミックス
    粉末の膜状形成体、又は、該膜状形成体を焼成により形
    成したことを特徴とするセラミックス膜。
  8. 【請求項8】 前記焼結助材はアルコキシド化合物を主
    として実施される所謂ゾルゲル法により担持処理したこ
    とを特徴とする焼結助材担持セラミックス粉であること
    を特徴とする請求項7に記載の膜状形成体又はセラミッ
    クス膜。
  9. 【請求項9】 前記セラミックス膜が主たる成分組成に
    おいて同一で、かつ、異なる結晶構造を有するセラミッ
    クス材料からなる複合セラミックス膜であることを特徴
    とする請求項3に記載のセラミックス膜。
  10. 【請求項10】 前記セラミックス膜が強誘電体材料か
    らなり、かつ、異なるキュリー点を有する複数成分から
    なる複合セラミックス膜であることを特徴とする請求項
    3に記載のセラミックス膜。
  11. 【請求項11】 前記基板は曲面を有する非平板状の基
    板であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック
    ス粉体の膜状形成体、又は、請求項3に記載のセラミッ
    クス膜。
  12. 【請求項12】 基板上にパターン化された犠牲膜を形
    成する工程、膜状形成体を転写する工程、前記犠牲膜を
    除去する工程、その後、請求項3記載の熱処理を施す工
    程により形成されることを特徴とする基板上に形成され
    るパターン化セラミックス膜。
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