JP2001200470A - 電磁波シールド用布帛 - Google Patents

電磁波シールド用布帛

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JP2001200470A
JP2001200470A JP2000300692A JP2000300692A JP2001200470A JP 2001200470 A JP2001200470 A JP 2001200470A JP 2000300692 A JP2000300692 A JP 2000300692A JP 2000300692 A JP2000300692 A JP 2000300692A JP 2001200470 A JP2001200470 A JP 2001200470A
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Yasuhiko Yasumatsu
保彦 安松
Toshi Iizuka
登志 飯塚
Kenichi Tsukada
憲一 塚田
Hideo Kogashiwa
秀夫 小柏
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Gun Ei Chemical Industry Co Ltd
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HAMANO GUNMA KK
Gun Ei Chemical Industry Co Ltd
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    • D06MTREATMENT, NOT PROVIDED FOR ELSEWHERE IN CLASS D06, OF FIBRES, THREADS, YARNS, FABRICS, FEATHERS OR FIBROUS GOODS MADE FROM SUCH MATERIALS
    • D06M15/00Treating fibres, threads, yarns, fabrics, or fibrous goods made from such materials, with macromolecular compounds; Such treatment combined with mechanical treatment
    • D06M15/19Treating fibres, threads, yarns, fabrics, or fibrous goods made from such materials, with macromolecular compounds; Such treatment combined with mechanical treatment with synthetic macromolecular compounds
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来、電気、電子機器からの電磁波放射をシ
ールドするシールド部品には、難燃性を考慮したものは
殆ど無かったため、この開発が求められていた。 【解決手段】 フェノール樹脂繊維を少なくとも15重
量%以上含む繊維から形成され、前記繊維表面に設けら
れている導電体層によって電磁波シールド性能を有し、
フェノール樹脂繊維の優れた難燃性能により難燃性、耐
延焼性が向上されている電磁波シールド用布帛10を提
供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁波シールド用
布帛に係り、特に優れた難燃性が得られる電磁波シール
ド用布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、テレビ等の家庭電化製品、コン
ピュータ、ファックス機、コピー機等のオフィス用電子
機器等では、プラスチック等の樹脂製のものが多様され
ているが、このような樹脂製筐体では金属性筐体に比べ
て電磁波遮蔽性能が何も無いに等しい。ところで、近
年、電磁波の人体に対する影響が重要視されるようにな
ってきており、人体に照射される電磁界強度等を軽減す
るための様々な規制が強化されつつある。また、電子部
品も周囲からの電磁波の影響を受けやすいものが存在す
るため、電子部品の正常な作動を確保する上でも、電磁
波のシールドが有用になってきている。これに鑑みて、
従来、例えば、筐体内面に導電性塗料を塗付して形成し
た導電性塗膜により筐体外側への電磁波の放射を防止す
るシールド性能を付与したり、筐体内に引き込まれた電
源ケーブルや通信ケーブルの外被除去部分等を電磁波シ
ールド用布帛で覆ったり、筐体内に設けられる電気、電
子部品(特に、高周波の電磁波を放射するチューナー
や、電源トランス、コンピュータのハードディスク等)
を専用の金属製筐体により覆って筐体内に収納する等の
対策が採られている。
【0003】前記電磁波シールド用布帛としては、繊維
状にした鋼線や銅線を交編織したものが従来から提供さ
れているが、これでは柔軟性が不足で細かい成形に不向
きであったり切断に手間が掛かる等の問題があるため、
近年では、無電解めっきにより表面に導電体層が形成さ
れた繊維を織成したものや不織布として成形したもの、
各種繊維からなる織布あるいは不織布等である基布の表
面に、溶射、コーティング、無電解めっき等により導電
体層を形成したもの等が提供されている。この電磁波シ
ールド用布帛を形成する繊維は、特に種類を限定される
ものでは無く、メタ系アラミド繊維、アクリル繊維、ポ
リエステル繊維等の合成繊維、綿や羊毛等の天然繊維な
ど、各種繊維が採用可能である。この種の電磁波シール
ド用布帛は、各種形状に成形できるため、適切形状に成
形したものが電気、電子機器内の各所に用いられてお
り、その用途、需要が増大している。例えば、電気、電
子機器内に引き込まれて配線される電源用の電気ケーブ
ル等には高周波数の電磁波を放射するものがあり、特に
機器内で接続のためにケーブルのシールドが除去された
部分からの電磁波の放射を防止するために、テープ状あ
るいはシート状に成形した布帛で覆うようにする。チュ
ーナーや、電源トランス、コンピュータのハードディス
ク等を収納する筐体についても、複数部材から組み立て
た境界や、作業用開口部のための蓋等からの電磁波の放
射を防止するために、前記電磁波シールド用布帛や、こ
れをゴムやスポンジ等の弾性体の芯材に固定したシール
材等を適用することが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述したよ
うな各種電気、電子機器では、電子部品からの発熱や結
線不良箇所からの火花(アーク)等が生じても、発火、
延焼を生じさせないための規格、規定、規制が従来から
細かく決められており、機器の設計はこれに多大な影響
を受ける。これに加えて、前述の電磁波のシールド性能
についても規格、規定、規制が増加の傾向にあり、機器
の設計の大きな制約になってきている。しかしながら、
従来の一般的な前記電磁波シールド用布帛には、これま
で難燃性(耐火性等)を考慮したものは殆ど無く、これ
が機器の設計を複雑にする遠因になっているといった問
題があった。例えば、電磁波シールド用布帛の素材とし
て多用されているアクリル繊維やナイロン繊維等につい
ては、難燃処理の技術が提案されているものの、いずれ
も延焼を確実に免れるものでは無く、効果に不満があっ
た。また、電磁波シールド用布帛に導電体層を設ける方
法として多用される無電解めっきでは、難燃処理されて
いる合成繊維であっても、可燃になってしまうといった
問題が生じていた。
【0005】本発明者は、アクリル繊維やポリエステル
繊維等の熱溶融性を有する合成繊維では、無電解めっき
により表面に導電体層が形成された場合でも、火炎に晒
されれば、高温によって溶融した合成繊維が表面の導電
体層を芯材にして燃焼する現象を突き止めた。この現象
により、難燃処理された合成繊維から形成された布帛で
あっても、無電解めっきにより導電体層を形成した後に
火炎に晒すと、溶融した合成繊維の燃焼によって、布帛
は延焼してしまう。このため、電磁波シールド用布帛
は、単に難燃処理された合成繊維に無電解めっきを施し
たのでは、充分な難燃性が得られないのである。このこ
とは、無電解めっき以外の方法により導電体層が形成さ
れた布帛でも同様に生じるケースがある。前記問題の対
策としては、めっき後、塩素や臭素等のハロゲン系難燃
剤で後加工して難燃処理することが考えられる。しかし
ながら、ハロゲン系難燃剤が添加された合成樹脂繊維
は、例えば廃棄時の焼却処理にて燃焼温度が低温である
とダイオキシンを発生するなど、廃棄時の処理が難しい
といった問題がある。このため、廃棄時の取り扱いが特
別になったり、焼却処理施設も特別なものを使用するな
ど、廃棄コストの上昇を招く恐れがあるため、前記難燃
性の問題の根本的な解決に至らない。
【0006】これに鑑みて、ガラス繊維や炭素繊維等の
無機質繊維を用いて電磁波シールド用布帛を形成するこ
とが考えられ、これであれば充分な難燃性が得られるも
のの、細かい成形には不向きであり、用途が限定される
等の不満があった。また、コスト面で割高であるといっ
た問題がある。また、電磁波シールド用布帛の用途とし
ては、電気、電子機器の電磁波遮蔽用部品に限定され
ず、例えば衣服や電磁波シールド用エプロン、電磁波シ
ールドカーテンの生地等も存在するが、衣服の生地等で
は、ガラス繊維や炭素繊維等の無機質繊維を用いて形成
された電磁波シールド用布帛では、風合い、肌触り、保
温性等に問題があり、向いていない。
【0007】このように、電磁波シールド用布帛には、
電磁波シールド性や難燃性に加えて、柔軟性、成形性、
コスト面等の条件を満たすものが無く、この開発が求め
られていた。
【0008】本発明は、前述の課題に鑑みてなされたも
ので、電磁波シールド性や難燃性に加えて、柔軟性、成
形性に優れ、しかも低コスト化が可能な電磁波シールド
用布帛を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明で
は、フェノール樹脂繊維を少なくとも15重量%以上含
む繊維から形成され、前記繊維表面に設けられている導
電体層によって電磁波シールド性能を有することを特徴
とする電磁波シールド用布帛を前記課題の解決手段とし
た。請求項2記載の発明は、請求項1記載の電磁波シー
ルド用布帛において、前記導電体層が、前記繊維からな
る基布の形成後に設けられたものであることを特徴とす
る。請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の電
磁波シールド用布帛において、前記フェノール樹脂繊維
に加えてメタ系アラミド繊維が混用されていることを特
徴とする。
【0010】本発明の電磁波シールド用布帛では、フェ
ノール樹脂繊維を使用して形成することで、優れた難燃
性が得られる。フェノール樹脂繊維は、難燃性、耐熱性
が極めて高く、例えば、LOI(限界酸素指数)は30
〜35であり、優れた難燃性を有することが知られてお
り、この電磁波シールド用布帛を適用して電磁波放射を
防止した電気、電子機器では、布帛への着火、延焼の心
配が無いため、万一、電気系の故障による発熱等が生じ
ても、火災の原因になるような発火が防止される。例え
ば、高圧トランスの故障等により発生したアークに晒さ
れても焼損、延焼せず、電磁波シールド性能を維持でき
る。したがって、この電磁波シールド用布帛は、高電圧
機器近傍に配置しても、その難燃性により着火、延焼の
心配が無いため、従来、電磁波シールド用布帛の適用が
出来ない箇所にも適用でき、従来のシールド用布帛に比
べて用途の幅が広がる。
【0011】フェノール樹脂繊維は、加熱による溶融や
収縮が無く、燃焼による発煙も殆ど無く(低発煙性)、
火炎に晒されても炭化するのみで延焼せず(低延焼
性)、炭化時には有毒ガスの発生等は皆無に等しく毒性
が殆ど無い(低毒性)といった特性を有する。これら、
フェノール樹脂繊維の特性は、本発明に係る電磁波シー
ルド用布帛についても継承され、仮に、この布帛が強い
火炎に晒されたとしても、在来の難燃性繊維に比べて、
加熱による溶融や収縮が小さく、しかも、在来の難燃性
繊維からなる電磁波シールド用布帛に比べて、低発煙
性、低延焼性、低毒性を発揮する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明の電磁波シールド用布
帛の実施の形態を説明する。なお、繊維の混用率を説明
する文中にて使用している「%」は、特に断りの無い限
り「重量%」を示す。本発明に係る電磁波シールド用布
帛は、フェノール樹脂繊維を15%以上と別の繊維とか
ら基布(織布あるいは不織布)を形成し、この基布(具
体的には基布を形成する繊維)に導電体層を形成したも
のを基本とする。前記基布である織布や不織布には、構
成する各繊維を紡績糸として用いたもの、紡績糸とせず
にそのまま用いたものの両方が含まれる。また、紡績糸
を構成するフェノール樹脂繊維やそれ以外の繊維への導
電体層の形成は、紡績前、紡績後のいずれも含まれるも
のとする。
【0013】本発明に用いられるフェノール樹脂繊維と
しては、ノボラック型フェノール樹脂を原料とするも
の、レゾール型フェノール樹脂を原料とするもの、ある
いは、ノボラック型、レゾール型のフェノール樹脂の双
方が混合された原料からなるものの、いずれも採用可能
である。ノボラック型フェノール樹脂を原料とする繊維
としては、例えば、未硬化で熱可塑性のノボラック型フ
ェノール樹脂を溶融紡糸した後、硬化工程を経て製造さ
れるノボロイド繊維(特公昭48−11284号)があ
る。レゾール型フェノール樹脂を原料とする繊維として
は、例えば、液状レゾール型フェノール樹脂に酸触媒を
添加し、これを遠心紡糸して得られる繊維(特開昭59
−179811号)、あるいは、固形レゾール型フェノ
ール樹脂を溶融し、紡糸ノズルより加熱空気流により牽
引紡糸するいわゆるメルトブローン法により得られる繊
維(特開平9−132818)がある。レゾール型、ノ
ボラック型のフェノール樹脂の双方を原料とする繊維と
しては、例えば、両方の型のフェノール樹脂の混合物か
らメルトブローン法により得られる繊維(特開平9−1
76918号)がある。このようにして得られるフェノ
ール樹脂繊維は、三次元網目構造の巨大分子から構成さ
れている。前述のように、熱による軟化溶融、収縮、分
解等が起こりにくく、耐熱性、難燃性に優れており、耐
アーク性に優れるのも、この分子構造に由来するものと
考えられる。中でも、ノボロイド繊維は「カイノール」
の商品名(群栄化学工業株式会社の商品名)で広く利用
されており、本発明においても、好ましく使用できる繊
維である。
【0014】フェノール樹脂繊維に混用可能な繊維とし
ては、難燃繊維を採用することが難燃性の面で好まし
い。また、フェノール樹脂繊維以外の難燃繊維として
は、難燃アクリル繊維(いわゆるモダクリル繊維)、難
燃レーヨン繊維(FRレーヨン。FR:Fire Retardat
ion)、難燃ポリエステル繊維(FRポリエステル。F
R:Fire Retardation)、メタ系アラミド繊維等が採用
可能である。これらの合成繊維であれば、優れた柔軟性
とコスト低減の両方を満たすことができる。柔軟性を損
なわない範囲の混用率であれば、ガラス繊維や炭素繊維
も採用可能である。フェノール樹脂繊維以外の難燃繊維
としては、1種類に限定されず、複数種類が混用されて
いても良い。この布帛の基布を構成するフェノール樹脂
繊維等の繊維表面に導電体層を形成する方法としては、
蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、溶射、
電気めっき、無電解めっき、コーティング、スプレー等
がある。繊維表面への導電体層のムラの無い形成の点か
らは、無電解めっきを採用することが適しており、本発
明に係る布帛を構成するフェノール樹脂繊維等の難燃繊
維表面への導電体層の形成も無電解めっきを採用するこ
とを基本とする。無電解めっきにより形成される導電体
層としては、主として、銅、ニッケル等である。但し、
ニッケルは、無電解めっきによる繊維表面への導電体層
の安定形成が困難であるため、無電解めっきにより繊維
表面にニッケルからなる導電体層を形成するには、ま
ず、無電解めっきにより銅からなる導電体層を形成した
後、その上に無電解めっきによりニッケル層を形成する
ことが好ましい。
【0015】導電体層が形成された繊維の導電体層を含
むトータルデニールは、例えば、特開平11−5035
2号公報に示されるように、10〜150デニールが好
ましく、より好ましくは30〜75デニール、単糸デニ
ールは0.5〜5デニールであることが好ましい。10
デニール未満では電磁波シールド性や強度が不足であ
り、150デニールを超えると布帛の柔軟性が低下して
湾曲成形等が困難となる。また、単糸デニールが0.5
デニール未満ではめっき加工性が悪く、5デニールを超
えると柔軟性が低下する。
【0016】電磁波は電界と磁界とからなり、電界と磁
界とは互いに直交した状態で伝播する波であるから、織
布であるシールド用布帛では、通常、交錯された繊維表
面への導電体層の形成によって各繊維表面の導電体層同
士の交錯点が形成されることで、より効果的なシールド
性能が得られるようにしている。繊維同士の交錯により
形成される格子の経緯の長さの比は、シールド効率か
ら、0.5〜1.5であることが好ましく、本発明に係
る布帛でも繊維の格子の経緯比を0.5〜1.5の範囲
とすることが好ましい。格子は菱形等であっても良い
が、シールド性能の面からは正方形状であることが好ま
しい。布帛のシールドメカニズムは、電界の反射特性と
磁界の渦電流特性とに依存し、このうち、電界は、シー
ルド用布帛の繊維に形成された導電体の導電率に依存す
る。なお、導電体層が形成された繊維は、互いに接触し
ていなくても前記電界の特性により一定のシールド特性
を達成し得る。
【0017】前述のノボロイド繊維(商品名「カイノー
ル」:群栄化学工業株式会社製)の一般的物性は、比重
1.28、繊維径14〜20μm(または2〜4d。但
し、「d」はデニール。以下同)、引張強度1.3〜
1.8g/d、引張弾性率300〜400kg/m
2、伸び30〜50%、LOI(限界酸素指数)30
〜35、熱可塑性(熱溶融性・熱収縮性。以下同じ)は
無し、燃焼による毒性および発煙は殆ど無し、使用可能
最高温度が空気中で150℃、空気遮断下で250℃で
ある。また、有機溶剤や酸に対する耐薬品性に優れる。
難燃アクリル繊維(以下、「モダクリル繊維」という場
合がある)としては、例えば、アクリロニトリルと塩化
ビニルの共重合体から紡糸したものであり、熱分解しに
くい構造により難燃性が得られる。一例として、後述の
燃焼試験にて採用した、鐘淵化学工業株式会社製の「カ
ネカロン」のプロテックス−Mタイプ(2デニールタイ
プ)の難燃性、耐熱性等に係る物性としては、LOI
(限界酸素指数)33.5、熱収縮性は有り(180℃
で10%程度)、燃焼による発煙はやや有り、等であ
る。難燃レーヨン繊維としては、例えば、リン化合物
(例えば、リン−窒素化合物)等の難燃剤の練り込み紡
糸により得られるポリノジック繊維であり、脱水炭化促
進タイプの防炎機構により耐火性や難燃性を発揮するこ
とが知られている。すなわち、この繊維が接炎すると、
難燃剤中のリンがポリリン酸を形成し、このポリリン酸
の脱水作用によって、熱分解したポリノジックを可燃性
ガスの発生前に炭化する。後述の燃焼試験にて採用し
た、東洋紡績株式会社製の「タフバン」のLOI(限界
酸素指数)は30〜32である。難燃ポリエステル繊維
としては、例えば、難燃剤としてリン化合物を共重合し
たポリエステル繊維が採用される。後述の燃焼試験にて
採用した、東洋紡績株式会社製の「ハイム」は、寸法安
定性、耐薬品性等がポリエステルとほぼ同等であるとと
もに、難燃性や耐熱性等に係る物性として、熱収縮性は
やや有り、LOI(限界酸素指数)は28〜30、熱可
塑性および熱溶融性は有り、燃焼による発煙はやや有
り、等の物性を有する。メタ系アラミド繊維としては、
例えば、メタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロラ
イドとを反応させて生成したポリメタフェニレンイソフ
タルアミドを成分とするメタ系タイプの全芳香族ポリア
ミド系繊維であり、加熱による熱分解を生じにくい構造
により難燃性を発揮する。後述の燃焼試験にて採用し
た、帝人株式会社製の「コーネックス」は、LOI(限
界酸素指数)は26〜30、熱可塑性は無し(熱溶融性
は無し。乾熱収縮率は250℃まで1%以下)、引火点
は615℃、700℃以上の加熱でも発火は無し、自己
消火性は有り、等の物性を有する。
【0018】フェノール樹脂繊維は、燃焼試験から得ら
れている特性として、発火性(TG/DTA)、延焼性
(UL規格。JIS K 6911)、燃焼発生ガス
(エアバスインダストリー社規格のNBS試験等)、自
己消火性(JIS K 7201)、熱溶融性(JIS
K 7121)の点で、前述のアクリル繊維、レーヨ
ン繊維、ポリエステル繊維を凌ぐことが判明しており、
延焼し難く、仮に着火しても自己消火性を発揮する。ま
た、無電解めっきにより表面に導電体層が形成されたフ
ェノール樹脂繊維では、火炎に晒されても、導電体層内
側のフェノール樹脂繊維は炭化するのみで熱溶融しない
ため、表面の導電体層を芯材とした燃焼を生じない。と
ころで、フェノール樹脂繊維は、前述のアクリル繊維、
レーヨン繊維等の他の繊維に比べて引張強度等で劣るた
め、強度が要求される場合は他の繊維との混用を検討す
る必要があり、この場合、フェノール樹脂繊維の混用率
上限は80%程度が適当である。この場合、フェノール
樹脂繊維と混用する繊維としては各種採用可能である
が、引張強度や柔軟性等を求めるには前述のいずれも難
燃性のアクリル繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊
維、メタ系アラミド繊維等を採用することが好ましく、
特に優れた難燃性を得るには、火炎に晒しても熱溶融せ
ず分解炭化する特性を有する繊維、例えば、メタ系アラ
ミド繊維を採用することがより好ましい。電気機器筐体
内での設置等では、特に、強度が要求されない場合も多
く、このような用途では、フェノール樹脂繊維の混用率
を80%以上にして、その特性を充分に活かすことが適
切である。
【0019】(無電解めっき)次に、無電解めっきの工
程を示す。なお、「(水洗)」は、工程の間に行うもの
である。 (1)脱脂工程:基布に付着した表面の汚れを除去し、
素材の濡れ性を増大させる。 (2)コンディショナー工程:基布表面に極性を与え、
次工程での触媒の付着を増大させる。 (水洗) (3)触媒化工程:金属触媒を添加した溶液(例えば、
塩化第1スズ、塩化パラジウムのコロイド溶液)に基布
を浸漬し、基布表面に触媒を吸着させる。コロイドの安
定化を目的として、塩酸、塩化カリウム、塩化ナトリウ
ム等を微量加える。触媒に使用される金属としては、パ
ラジウムのほか、金、銀、銅等も採用可能である。ま
た、触媒化工程は、基布表面に触媒(金属)を吸着さ
せ、後工程での導電体層の形成を安定かつ確実にするも
のであれば良く、例えば、有機パラジウム等の有機金属
を用いたものも採用可能である。 (水洗) (4)促進化工程:硫酸、塩酸、硼ふっ化水素酸等の水
溶液に基布を浸漬し、酸化還元反応により、前述の触媒
化工程で触媒として用いた金属を基布表面に析出させ
る。 (水洗) (5)無電解めっき工程:硫酸銅、塩化銅等の金属塩
と、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、ロッセル塩
等のキレート剤と、ホルマリン等の還元剤とを混合して
なる建浴液に基布を浸漬し、基布表面に前記金属塩の金
属(硫酸銅、塩化銅の場合は銅)を析出させ、厚さ0.
5〜4μm程度の導電体層を形成する。これにより、基
布に導電性と電磁波シールド性とを与える。金属塩とし
ては、無電解ニッケル、無電解銀等も使用可能である
が、シールド効果、コストの点で銅が優れる。 (水洗) (6)防錆工程:必要に応じて行う。例えば、無電解銅
はシールド効果は優れるが、腐食しやすいため、無電解
めっきにより無電解ニッケルや無電解スズ等からなる厚
さ0.25μm程度の表面金属層を導電体層(金属銅)
の表面に形成して防錆することが適切である。また、導
電体層表面への有機系防錆剤の塗布も、防錆に有効であ
る。有機系防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、ベン
ゾイミダゾール等が採用可能である。但し、燃焼時の有
毒ガスの発生量を減少させる点では、前述の表面金属層
の形成が有利である。なお、無電解めっきを完了した基
布は、金属塩、塩素等の塩が残留しないよう、充分な水
洗、湯洗を行う。
【0020】表1、表2は、本発明に係る布帛の燃焼試
験結果を示す。表1、2中、実施例1、2、3、比較例
K、比較例Cは、それぞれ難燃繊維から形成した基布
(織布)に銅の無電解めっきを施して、この基布を形成
する繊維表面に導電体層を形成した布帛である。実施例
1、2、3、比較例K、比較例Cの違いは、基布を構成
する繊維の種類が異なることのみであり、無電解めっき
の条件等に違いは無い。比較例A、Bは難燃繊維そのも
のからなる試験片(織布)である。なお、フェノール樹
脂繊維としては前述のカイノール、難燃アクリル繊維と
しては前述の「カネカロン」のプロテックス−Mタイプ
(2デニールタイプ)、難燃レーヨン繊維としては前述
の「タフバン」、難燃ポリエステル繊維としては前述の
「ハイム」、メタ系アラミド繊維としては前述の「コー
ネックス」を採用した。
【0021】実施例1、2、3、比較例K、比較例Cの
無電解めっきは、前述の(無電解めっき)の工程に従っ
て行った。触媒化工程では、スズ、パラジウム混合触媒
(塩化第1スズ4〜12g/l、塩化パラジウム30〜
150mg/lのコロイド溶液)を採用した。促進化工
程では、10%硫酸を採用した。無電解めっき工程で
は、金属塩として硫酸銅、キレート剤としてEDTA、
還元剤としてホルマリンを採用し、基布表面に金属銅か
らなる導電体層を形成した。防錆工程は行っていない。
【0022】実施例1は、フェノール樹脂繊維(前述の
カイノール)70%、メタ系アラミド繊維30%の混紡
糸からなる織布に無電解めっきにより導電体層を形成し
たものである。実施例2は、フェノール樹脂繊維20
%、難燃アクリル繊維45%、難燃レーヨン繊維10
%、難燃ポリエステル繊維25%の混紡糸からなる織布
に無電解めっきにより導電体層を形成したものである。
実施例3は、フェノール樹脂繊維(前述のカイノール)
100%からなる織布に無電解めっきにより導電体層を
形成したものである。比較例Kは、フェノール樹脂繊維
10%、難燃アクリル繊維55%、難燃レーヨン繊維1
0%、難燃ポリエステル繊維25%の混紡糸からなる織
布に無電解めっきにより導電体層を形成したものであ
る。比較例A(表1、2中「A」)はポリエステル繊維
100%からなる織布である。比較例B(表1、2中
「B」)はモダクリル繊維100%からなる織布であ
る。比較例C(表1、2中「C」)はポリエステル繊維
100%からなる織布に無電解めっきにより導電体層を
形成したものである。
【0023】表1は、実施例1、2、3、比較例K、比
較例A、B、Cの布帛からなる試験片に、UL規格(V
−0級)に基く燃焼試験を行った結果を示す。図1は、
前記燃焼試験の試験装置を示すものであり、スタンド2
0上部のクランプ21に、所定寸法にて帯状に成形した
試験片22を着脱可能に固定して吊り下げるようにして
支持し、試験片22の下端22aを、その下方に設置し
たバーナー23(ガスバーナー)の火炎24に一定時間
晒す(接炎)ようにしたものである。試験片22は、実
施例1、2、3、比較例K、比較例A、B、Cについて
それぞれ5つずつ用意した。
【0024】
【表1】
【0025】表1において、1つの枠内に数値が5つ並
ぶ標記は、5つの各試験片の計測データ(秒。フレーミ
ング時間やグローイング時間)を示す。炎を取り去った
後のフレーミング時間は、5つの試験片の2回の計測の
合計が14秒となった実施例2、同じく合計が17秒と
なった比較例K、全部燃焼のため計測できなかった比較
例Aの他、実施例1、3および比較例Bではゼロであっ
た。また、2回目の炎を取り去った後のグローイング時
間は、実施例1(17秒)、実施例2(4秒)、実施例
3(3秒)は比較例Kの36秒や比較例Bの40秒より
も短かったが、比較例C(2秒)に対しては若干長くな
った。表1の最下段に示すように、この試験結果から、
実施例1、2、3のいずれもV−0級合格の評価が得ら
れることが判る。なお、比較例Kおよび比較例BにはV
−1級合格、比較例CにはV−0級合格の評価が得られ
ている。
【0026】表2もUL規格に基く燃焼試験の結果を示
すものであるが、ここでは、試験片の未炭化部分の長さ
と、試験片の収縮長(L0−L1:L0は試験片の元の長
さ。L1は試験片の試験後の長さ。)とを示す。
【0027】
【表2】
【0028】この表2において、実施例1、2、3はい
ずれも比較例Kおよび比較例A、B、Cに比べて収縮長
が短く、熱収縮しにくいことが判る。実施例2の収縮長
は、比較例Bの約4分の1、実施例1に至っては比較例
Bの約7分の1であり、特性が顕著に現れた。実施例3
は、実施例1よりもさらに収縮長が短く、優れた特性が
得られる。未炭化部分の長さは、実施例1は80mm、
実施例3は83mmであり、殆ど炭化がしなかったが、
実施例2では22mmであった。実施例2は、殆ど全長
にわたって炭化してしまい未炭化部分が殆ど残らない比
較例A、Bとの比較では充分な特性が認められたもの
の、比較例Cの24mmよりも短くなった。これは、実
施例2では、フェノール樹脂繊維以外に混用した繊維の
内、熱溶融性を有する難燃アクリル繊維、難燃ポリエス
テル繊維が熱溶融し、導電体層やフェノール樹脂繊維を
芯材として燃焼したものと考えられる。逆に、実施例
1、3の特性は、フェノール樹脂繊維の混用率が高いこ
とが寄与しているものと考えられる。実施例1について
は、炎に晒しても熱溶融せず分解炭化するメタ系アラミ
ド繊維の特性も寄与しているものと考えられる。この結
果、実施例1、2、3は、いずれも、各実施例A、B、
Cと比較して、耐火性、熱安定性(熱収縮が小さい)に
優れることが判る。また、実施例2よりも実施例1、実
施例1よりも実施例3の方が、耐火性、熱安定性(熱収
縮が小さい)に優れることが判明した。比較例Kの未炭
化部分の長さは、実施例1、2、3よりも短く、さら
に、比較例Cよりも短い。また、比較例Kの収縮長は、
比較例A、Bよりも短いものの、実施例1、2、3に比
べればかなり長く、比較例Cよりも長い。比較例Kの未
炭化部分の長さが実施例1、2、3よりも短いことは、
比較例Kのフェノール樹脂繊維の混用率が実施例2の半
分程度であり、フェルール樹脂繊維の混用率が低すぎた
ため、充分な耐火性が発揮されなかったものと考えられ
る。また、比較例Kの収縮長が実施例1、2、3よりも
長いことは、比較例Kのフェノール樹脂繊維の混用率が
低い反面、熱溶融性を有する難燃アクリル繊維の混用率
が高いことに起因するものと考えられる。
【0029】表1、表2の試験結果から、フェノール樹
脂繊維の混用率が20%以上であれば、UL規格V−0
級の難燃性能が充分に得られ、しかも、フェノール樹脂
繊維の混用率が低い比較例Kや、フェルール樹脂繊維を
含まない比較例A、B、Cに比べて、難燃性能を飛躍的
に向上できる。また、フェノール樹脂繊維の混用率が2
0%以上であれば、フェノール樹脂繊維以外に混用する
繊維が熱溶融性を有するものであっても、比較例Kや比
較例A、B、Cに比べて飛躍的に優れた難燃性能が得ら
れる。
【0030】本発明の布帛において、発明者の検証では
フェノール樹脂繊維の混用率が20%よりもやや低くて
も優れた難燃性能が得られ、15%近傍がUL規格V−
0級の難燃性能が得られる下限と見られることから、U
L規格V−0級の難燃性能を得るには、フェノール樹脂
繊維の混用率を15%以上とすることが好ましく、より
確実に難燃性能を得るには20%以上とすることが好ま
しい。また、フェノール樹脂繊維と混用する他の繊維と
しては、前述のメタ系アラミド繊維のように、熱溶融性
が無いものを採用することがより好ましい。しかも、フ
ェノール樹脂繊維と混用する他の繊維としては、引張強
度や柔軟性等の機械的性質に優れたものを採用すること
が好ましいが、この点でも前記メタ系アラミド繊維等を
採用することが適している。なお、この発明では、溶融
した繊維が導電体層を芯材として燃焼する現象を防ぐこ
とで優れた難燃性能を得るので、導電体層を形成する金
属の種類や導電体層の形成方法を問わず効果が得られ
る。さらに、本発明に係る布帛では、無電解めっき後に
ハロゲン系難燃剤による処理を行わなくても優れた難燃
性能が得られることから、廃棄処理時の環境汚染の問題
を回避できる。特に、フェノール樹脂繊維とともに混用
する繊維として、燃焼時に発生するガスの毒性が低いも
のを採用することで、通常の焼却処理等により簡単に処
理することができる。この点からも、燃焼時の毒性が極
めて低いメタ系アラミド繊維等を採用することが好まし
い。
【0031】表3は、実施例1、2、3と比較例A、
B、Cの燃焼による発生ガスの試験結果を示す。ここで
採用した試験方法は、エアバスインダストリー社規格の
NBS試験であり、ここでは特に、燃焼により発生する
有害ガスとして、HCN(シアンガス)、CO(一酸化
炭素)、NOおよびNO2(一酸化窒素および二酸化窒
素)、SO2(亜硫酸ガス)、HCl(塩化水素ガ
ス)、HF(ふっ化水素ガス)について、濃度(pp
m)を測定した。なお、表3中、「エアバス社規格」の
欄中、記号「>」は「未満」を示すものであり、本試験
により測定された発生ガス濃度(ppm)が記号「>」
の左側の数値(ppm)に満たない場合に、「合格」と
される。
【0032】
【表3】
【0033】表3において、実施例1、2、3を比較す
ると、実施例1、3は、SO2、HCl、HFが検出さ
れず、HCN、CO、NOおよびNO2の検出量(検出
濃度ppm)も、実施例2、比較例A、B、Cに比べて
非常に少なく(比較例AのCO値との比較のみを除い
て、他の数値では、概ね、実施例2、比較例A、B、C
の半分程度か半分よりも大幅に下回っている)、発生ガ
スが非常に少ないことが明らかである。実施例2は、比
較例A、B、Cに比べてCOの発生量が多い等、発生ガ
スがやや多い。しかしながら、実施例1、2、3のいず
れも、エアバスインダストリー社の規格にかなり余裕を
もって合格しており、有害ガスの発生が少なく、優れた
低毒性が得られている。実施例1、2、3は、優れた難
燃性能が得られるとともに、燃焼による有毒ガスの発生
も少なく、優れた電磁波シールド性と安全性(難燃性、
低毒性)とを備えた部品として使用できる。また、実施
例1、2、3の比較では、難燃アクリル繊維、難燃レー
ヨン繊維、難燃ポリエステル繊維を含まず、実施例2に
比べてフェノール樹脂繊維の混用率が高い実施例1、3
の方が、実施例2に比べて、有害ガスの発生が明らかに
少なく、低毒性に優れる。すなわち、有毒ガスの発生量
の抑制の点では、難燃アクリル繊維、難燃レーヨン繊
維、難燃ポリエステル繊維の混用率が低く、フェノール
樹脂繊維やメタ系アラミド繊維の混用率が高いものを採
用することがより好ましい。また、電気、電子機器内部
の電磁波シールド用部品等として用いる場合は、電気、
電子機器内部に発生する電気アークに対する耐アーク性
も要求されるが、この点で、フェノール樹脂繊維の混用
率が高いものを採用することがより好ましい。
【0034】前記の結果、本発明に係る電磁波シールド
用布帛は、電気、電子機器内部に電磁波シールド用部品
として使用しても、優れたシールド材かつ優れた難燃材
として機能する。また、優れた難燃性能により、発熱体
や、高電圧機器の近くに配設しても着火のおそれが無
く、電気、電子機器内部の設計の自由度を大幅に向上で
きる。さらに、電気、電子機器内部の電磁波シールド用
部品以外、電磁波遮蔽用のカーテン、壁紙、エプロン等
に使用しても優れた効果が得られる。しかも、この布帛
は、柔軟性にも優れることから、様々な製品に容易に応
用することができ、例えば、電気、電子機器内部の電磁
波シールド用部品等として使用する場合では、適宜湾
曲、屈曲させることで、適所への設置等に容易に対応で
きる。
【0035】図2から図6は、本発明に係る電磁波シー
ルド用布帛の適用例を具体的に示すものである。図2
は、本発明に係る電磁波シールド用布帛からなるテープ
1を示す。なお、このテープ1を構成する繊維2は、交
編によって基布を形成した後に無電解めっき等により導
電体層が形成されたものであることを基本とする。図3
の電磁波シールド用布帛3は、電気ケーブル4の外被5
内に収納したものである。前記電気ケーブル4は、導電
線6を収納する絶縁チューブ7外側に、電磁波シールド
用布帛3であるシールド層を配置し、その外側を外被5
で覆った構造になっている。図3では、電磁波シールド
用布帛3は、テープ状になっているが、これに限定され
ず、チューブ状であっても良い。なお、電気ケーブル4
端末に露出される導電線6は、図2のテープ1の巻き付
け等により、電磁波の放射を簡単にシールドできる。図
4は、本発明に係る電磁波シールド用布帛を成形したチ
ューブ8であり、電気ケーブル4や、その端末に露出さ
れた導電線6(図3参照)等の収納に適している。テー
プ1、電磁波シールド用布帛3、チューブ8は、いずれ
も柔軟性に優れ、湾曲や屈曲を要する用途にも容易に対
応できる点で優れている。また、例えば、テープ1やチ
ューブ8は、適宜、銅線等の導電性線材を編み込んで、
湾曲や屈曲の形状を維持できるようにすることも可能で
ある。
【0036】図5の電磁波シールド用部品9は、難燃性
を有する弾性材(例えば、難燃処理されたウレタン発泡
体等)からなる芯材11表面に電磁波シールド用布帛1
0を接着等により固定したものであり、電子機器の筐体
を構成する分割体12、13の合わせ目等に配置され
る。図5では、電磁波シールド用部品9は側面に固定さ
れた接着テープ14により、筐体等の目的位置に容易に
接着固定できる。また、電磁波シールド用部品9を目的
位置に設置する構造としては、接着テープ14に限定さ
れず、筐体等に形成された溝への挿入、嵌合等、各種構
造が採用可能であることは言うまでも無い。この電磁波
シールド用部品9は、柔軟性にも優れているため、湾曲
や屈曲も容易である。
【0037】図5中符号15の電磁波シールド用布帛
は、電子機器の筐体(図5では分割体13)に開口され
た通気口16を覆うようにして設けられるものである
(設置状態を符号15aの仮想線で示す)。通気口16
は、筐体内への空気取り込み用、または排気用の開口部
であり、図5では、ファン17の回転駆動により空気取
り込みまたは排気が強制的に行われるようになってい
る。前記布帛15としては、繊維の密度を低くして通気
性に優れるように形成したものが採用され、これによ
り、通気口16を布帛15で塞いだ状態でも通気口16
の通気性を確保することができる。電子機器の筐体で
は、筐体自体を導電体から形成したり、筐体内面にめっ
きや塗装等により導電体層を形成することで、外部への
電磁波の放射をシールドすることが一般的になっている
が、図5のように通気口16を開口した場合でも、布帛
15の取り付けによって通気口16からの電磁波の漏洩
を防止できるため、筐体全体の電磁波シールド性能を確
保できる。また、電子機器の筐体に形成される開口部と
しては、前記通気口16に限定されず、例えばスピーカ
設置場所等も存在する。スピーカ設置場所のように、通
気性が要求されない開口部では、繊維の密度が高い電磁
波シールド用布帛を採用することが可能である。なお、
図5では、筐体に形成した開口部である通気口16を筐
体内側から布帛15で覆う構成を例示したが、これに限
定されず、通気口16等の各種開口部を本発明に係る布
帛で外側から覆う構成も採用可能である。
【0038】図6は、本発明に係る電磁波シールド用布
帛を生地として用いた壁紙18、カーテン19を示す。
例えば、建物の部屋の全ての壁面、窓や出入り口等の全
ての開口部を、前記壁紙18や前記カーテン19を用い
て覆えば、部屋全体のシールドも容易に実現できる。こ
れにより、室内の電子機器から室外への電磁波の放射が
防止されるから、例えば、隣接する他の部屋の電子機器
に影響を与えたり、電磁波の傍受によるプライバシー侵
害等の不都合を防止できる。逆に、室内の電子機器が室
外から作用する電磁波の影響を受けるといった不都合も
防止できる。なお、これら壁紙18やカーテン19には
美観が要求されるため、電磁波シールド用布帛に形成さ
れる導電体層として美観が得られる素材を採用したり、
染色することも可能である。導電体層表面に染色を容易
とする処理を施すことも可能である。但し、染色の染料
や、染色を容易とする処理等は、いずれも、壁紙18や
カーテン19の生地である電磁波シールド用布帛の難燃
性能を損なわないものを適用することは言うまでも無
い。
【0039】図2から図6に示した電磁波シールド用布
帛やその成形品は、いずれも優れた柔軟性を有している
ため、湾曲や屈曲が自在である。また、これら電磁波シ
ールド用布帛等は、電磁波シールド性、難燃性に優れて
いるとともに、耐延焼性、自己消火性にも優れているた
め、電気、電子機器内にて、万一、電気、電子部品等の
発火や、結線不良等による電気火花(アーク)が発生し
ても、延焼を防止でき、被害を最小限に留めることがで
きる。さらに、フェノール樹脂繊維やメタ系アラミド繊
維等の、低発煙性および低毒性を有する繊維を用いて形
成された電磁波シールド用布帛やその成形品は、仮に一
部が燃焼しても、発煙性、有毒ガスの発生が殆ど無いた
め、狭隘な部屋内で使用されている電気、電子機器の内
部部品等に万一発火、焼損が生じても、発煙や有毒ガス
のために室外への人の避難に支障を生じるといった問題
が無く、安全性を向上できる。また、フェノール樹脂繊
維の耐薬品性に優れるため、電気、電子機器内の各種部
品に使用されている薬品等が接触してもフェノール樹脂
繊維の難燃性には影響しない。このため、例えば、バッ
テリーからの液漏れや、絶縁塗料等に晒されても変質せ
ず、長期にわたって優れた難燃性を維持できる。前記低
発煙性、低毒性、耐薬品性の点からも、前述のフェノー
ル樹脂繊維とメタ系アラミド繊維とが混用されてなる布
帛は優れている。
【0040】なお、本発明では、表面に導電体層が形成
されたフェノール樹脂繊維(以下「導電化フェノール樹
脂繊維」)を15%以上(導電体層を除いた繊維部分の
みの混用率)混用してなる織布または不織布も採用可能
である。この構成であれば、導電体層が形成された繊維
に、導電体層が形成されていない繊維を混用(但し、難
燃性能を損なわない程度の少量)して、織布や不織布を
形成することも容易である。例えば、前述のカーテン、
壁紙、エプロン等では、導電体層を形成していない繊維
を、染色性の確保や感電防止等に利用することができ
る。但し、導電体層が形成された繊維の紡績、織布への
織成等は、通常の繊維の紡績、織成とは異なる装置、あ
るいは既存の装置でも特別な設定を要すること、紡績や
織成等による布帛の形成時に導電体層が剥がれ落ちてシ
ールド性能が低下する可能性があることに鑑みて、基布
の形成後に繊維への導電体層の形成を行うことを基本と
する。この構成では、通常の装置を用いて紡績、織成等
を行うことができる点で有利であり、また、布帛の形成
時の導電体層の部分的な剥がれ落ち等の心配が無い点で
も有利である。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の電磁波シ
ールド用布帛によれば、フェノール樹脂繊維を少なくと
も15重量%以上含む複数種類の繊維から形成され、前
記繊維表面に設けられている導電体層によって電磁波シ
ールド性能を有する構成になっているため、優れた電磁
波シールド性に加えて、優れた難燃性をも得られる。特
に、フェノール樹脂繊維を15重量%以上含むことによ
り、耐延焼性、自己消火性が得られるため、仮に着火し
たとしても、延焼することは無く、火元近傍のみが焼損
するだけで、被害を最小限に留めることができる。さら
に、この布帛は、優れた柔軟性をも得られるため、多種
多様な形状に成形することが可能であり、各種製品に利
用できる汎用性に優れる。しかも、この布帛では、熱溶
融性を有する合成繊維を含んでも優れた難燃性能を確保
できるので、導電体層形成後のハロゲン系難燃剤による
難燃処理を省略できる。このため、焼却処分時のダイオ
キシンの発生等の環境汚染の問題を回避でき、通常の焼
却処分等により簡単に廃棄できる。フェノール樹脂繊維
とともに混用する繊維にも、フェノール樹脂繊維と同様
に、燃焼時の有毒ガスの発生の無いあるいは極めて少な
い繊維を採用することで、焼却処分時の安全性を確実に
確保できるため、簡単な処理により低コストで廃棄処理
することができるといった優れた効果を奏する。
【0042】請求項2記載の電磁波シールド用布帛によ
れば、基布の形成後に繊維に設けられた導電体層は、導
電体層が形成された繊維の織成等により形成される布帛
に比べて、局所的な剥げ落ち部分等が少ないから、優れ
た電磁波シールド性能、難燃性能が確実に得られるとい
った優れた効果を奏する。
【0043】請求項3記載の電磁波シールド用布帛によ
れば、フェノール樹脂繊維に加えてメタ系アラミド繊維
を混用した構成であるので、引張強度等の機械的特性を
向上できる。しかも、燃焼時の有毒ガスの発生の無いメ
タ系アラミド繊維の採用により、焼却処分等の廃棄処理
を安全に行うことができるといった優れた効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電磁波シールド用布帛の燃焼試験の
用いた試験装置を示す正面図である。
【図2】 本発明に係る電磁波シールド用布帛をテープ
状に成形した例を示す斜視図である。
【図3】 本発明の電磁波シールド用布帛を、電気ケー
ブルのシールド層として適用した例を示す斜視図であ
る。
【図4】 本発明の電磁波シールド用布帛をチューブ状
に成形した例を示す斜視図である。
【図5】 本発明に係る電磁波シールド用布帛を弾性材
芯材の周囲に固定した電磁波シールド用部品、並びに、
電子機器の筐体の通気口を塞ぐようにして設けられた布
帛を示す斜視図である。
【図6】 本発明に係る電磁波シールド用布帛を壁紙、
カーテンの生地として使用した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…テープ、2…繊維、3…電磁波シールド用布帛、8
…チューブ、10…電磁波シールド用布帛、15…電磁
波シールド用布帛。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年12月11日(2000.12.
11)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正内容】
【0028】この表2において、実施例1、2、3はい
ずれも比較例Kおよび比較例A、B、Cに比べて収縮長
が短く、熱収縮しにくいことが判る。実施例2の収縮長
は、比較例Bの約4分の1、実施例1に至っては比較例
Bの約7分の1であり、特性が顕著に現れた。実施例3
は、実施例1よりもさらに収縮長が短く、優れた特性が
得られる。未炭化部分の長さは、実施例1は80mm、
実施例3は83mmであり、殆ど炭化がしなかったが、
実施例2では22mmであった。実施例2は、殆ど全長
にわたって炭化してしまい未炭化部分が殆ど残らない比
較例A、Bとの比較では充分な特性が認められたもの
の、比較例Cの24mmよりも短くなった。これは、実
施例2では、フェノール樹脂繊維以外に混用した繊維の
内、熱溶融性を有する難燃アクリル繊維、難燃ポリエス
テル繊維が熱溶融し、導電体層やフェノール樹脂繊維を
芯材として燃焼したものと考えられる。逆に、実施例
1、3の特性は、フェノール樹脂繊維の混用率が高いこ
とが寄与しているものと考えられる。実施例1について
は、炎に晒しても熱溶融せず分解炭化するメタ系アラミ
ド繊維の特性も寄与しているものと考えられる。この結
果、実施例1、2、3は、いずれも、各比較例A、B、
Cと比較して、耐火性、熱安定性(熱収縮が小さい)に
優れることが判る。また、実施例2よりも実施例1、実
施例1よりも実施例3の方が、耐火性、熱安定性(熱収
縮が小さい)に優れることが判明した。比較例Kの未炭
化部分の長さは、実施例1、2、3よりも短く、さら
に、比較例Cよりも短い。また、比較例Kの収縮長は、
比較例A、Bよりも短いものの、実施例1、2、3に比
べればかなり長く、比較例Cよりも長い。比較例Kの未
炭化部分の長さが実施例1、2、3よりも短いことは、
比較例Kのフェノール樹脂繊維の混用率が実施例2の半
分程度であり、フェール樹脂繊維の混用率が低すぎた
ため、充分な耐火性が発揮されなかったものと考えられ
る。また、比較例Kの収縮長が実施例1、2、3よりも
長いことは、比較例Kのフェノール樹脂繊維の混用率が
低い反面、熱溶融性を有する難燃アクリル繊維の混用率
が高いことに起因するものと考えられる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正内容】
【0029】表1、表2の試験結果から、フェノール樹
脂繊維の混用率が20%以上であれば、UL規格V−0
級の難燃性能が充分に得られ、しかも、フェノール樹脂
繊維の混用率が低い比較例Kや、フェール樹脂繊維を
含まない比較例A、B、Cに比べて、難燃性能を飛躍的
に向上できる。また、フェノール樹脂繊維の混用率が2
0%以上であれば、フェノール樹脂繊維以外に混用する
繊維が熱溶融性を有するものであっても、比較例Kや比
較例A、B、Cに比べて飛躍的に優れた難燃性能が得ら
れる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // D06M 101:16 D06M 101:36 101:36 11/00 D (72)発明者 安松 保彦 群馬県高崎市宿大類町700番地 群栄化学 工業株式会社内 (72)発明者 飯塚 登志 群馬県高崎市宿大類町700番地 群栄化学 工業株式会社内 (72)発明者 塚田 憲一 神奈川県横浜市港北区綱島西6−4−22 (72)発明者 小柏 秀夫 群馬県高崎市緑町一丁目27番9 株式会社 ハマノ群馬内 Fターム(参考) 4L031 AA21 AA23 AB01 AB31 CB12 DA00 DA16 4L048 AA19 AA25 AA52 AA53 AA56 AB05 AB09 AC13 AC14 CA05 CA06 DA24 5E321 BB23 BB41 BB44 GG05 GH10

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェノール樹脂繊維を少なくとも15重
    量%以上含む繊維から形成され、前記繊維表面に設けら
    れている導電体層によって電磁波シールド性能を有する
    ことを特徴とする電磁波シールド用布帛。
  2. 【請求項2】 前記導電体層が、前記繊維からなる基布
    の形成後に設けられたものであることを特徴とする請求
    項1記載の電磁波シールド用布帛。
  3. 【請求項3】 前記フェノール樹脂繊維に加えてメタ系
    アラミド繊維が混用されていることを特徴とする請求項
    1または2記載の電磁波シールド用布帛。
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