JP2001160402A - 固体高分子型燃料電池の電極とその製造方法 - Google Patents

固体高分子型燃料電池の電極とその製造方法

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JP2001160402A
JP2001160402A JP34546099A JP34546099A JP2001160402A JP 2001160402 A JP2001160402 A JP 2001160402A JP 34546099 A JP34546099 A JP 34546099A JP 34546099 A JP34546099 A JP 34546099A JP 2001160402 A JP2001160402 A JP 2001160402A
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powder
polymer electrolyte
catalyst
fuel cell
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Yasushi Koyashiki
泰 古屋敷
Toru Taguchi
徹 田口
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Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電極の機械的な強度を確保しながら、反応に
必要な気体の拡散を良好に行うことを可能にし、特に、
電極基材の凹凸に関わらず平滑な表面を持つ、均一で撥
水性に優れた触媒層を形成し、安定な電池性能を確保す
る。 【解決手段】 電解質を含浸させた触媒粉末とフッ素樹
脂粉末(状態B)を、粉砕工程120においてホモジナ
イザーまたはケミカルカッターにより粉砕し、それぞれ
0.1μm以下の粒径とする(状態C)。散布工程13
0において、粉砕した触媒粉末とフッ素樹脂粉末を、散
布機により、エアスプレー方式で電極基材上に交互に散
布することにより、積層状の材料堆積層を形成する(状
態D)。放置・乾燥工程140において、材料堆積層
を、フッ素樹脂の溶融温度より低い温度で乾燥し、安定
化する(状態E)。圧縮工程150において、材料堆積
層の表面をローラにより圧縮し、表面の平滑な触媒層を
形成する(状態F)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体高分子型燃料
電池に関し、特に、燃料電池の電極に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】燃料電池は、燃料の有している化学的エ
ネルギーを直接電気的エネルギーに変換する装置であ
る。この燃料電池は通常、電解質を挟んで一対の多孔質
電極を配すると共に、一方の電極の背面に水素などの気
体燃料を接触させ、また、他方の電極の背面に酸素など
の酸化剤を接触させ、この時に起こる電気化学反応によ
り発生する電気エネルギーを一対の電極から取り出すよ
うに構成されている。
【0003】燃料電池のうち、固体高分子型燃料電池
(以下、PEFCと称する)は、電解質として固体高分
子電解質膜を使用するものである。この固体高分子電解
質膜は、一般にパーフルオロスルホン酸からなり、イオ
ン導電性を有する。この固体高分子電解質膜が低温で導
電性を有するため、PEFCはその他の形式の燃料電池
に比較して低温(60℃〜120℃)で動作する。その
ため、電池を構成する材料に対する制約が少なく、短時
間に起動可能という特徴を持つ。
【0004】従来の固体高分子型燃料電池における単電
池の構成を、図5を用いて説明する。この図5に示すよ
うに、単電池1は、固体高分子電解質膜2の両面に燃料
電極3と酸化剤電極4とを配置し、各電極3,4の背面
に、気体不透過性のセパレータ5を配置して構成されて
いる。この単電池1において、燃料電極3と酸化剤電極
4の各々は、いずれも、電極基材11とその表面に形成
されるカーボン層12および触媒層13から構成され
る。また、燃料電極3背面のセパレータ5には、燃料の
流路となる燃料溝6が設けられており、酸化剤電極4背
面のセパレータ5には、空気の流路となる空気溝7が設
けられている。
【0005】このような構成を有する単電池1におい
て、各電極3,4を構成するカーボン層12は、ガス拡
散層として機能するが、このように、電極基材11と触
媒層13の間の中間層として、カーボン層12などのガ
ス拡散層を形成する構成は、例えば、米国特許第5,6
20,807号公報中に記載されている。このようなガ
ス拡散層は、電極での生成水が拡散・除去される速度の
制御や、供給される気体中に含まれる水分の拡散速度の
制御を行うものである。これらの作用により、燃料電池
の運転に当たっては、外部からの水分供給量に電池の特
性が過敏に反応することなく、安定した運転が可能であ
る。
【0006】一方、従来、電極の製造方法において、特
に、触媒層を形成する方法としては、貴金属触媒を表面
に担持した炭素粉末、電解質となるイオン交換樹脂の溶
媒溶液および希釈用の溶媒を混合してスラリーを形成
し、このスラリーを電極基材上に塗布した後、溶媒を蒸
発・除去して触媒層を電極基材上に形成する方法が存在
している。このような触媒層の形成方法は、例えば、特
開平6−203848号公報に記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
な従来の電極の製造方法によって触媒層を形成する場合
には、触媒と電解液を混合したスラリーを用いて触媒層
を形成する。このスラリーは一般的に、水をベースにし
てカーボン粉末、触媒粉末、電解液、およびその希釈液
で構成され、さらに、撥水剤としてフッ素樹脂液が加え
られる。しかしながら、このスラリーの生成工程におい
ては、混合時の撹拌する過程でカーボン粉末の凝集塊が
生じやすいという問題がある。また、スラリーを電極基
材に塗布する時に粘度や固形分が推定より多くなり、粘
度上昇のため塗布できないことがある。
【0008】ここで、カーボン粉末の凝集塊を生じる問
題について説明する。まず、水系にフッ素系樹脂をアル
コール分散させる場合には、本質的に、カーボン粉末が
分散しにくく、凝集塊が生じやすい。このような凝集塊
を生じることなくカーボン粉末を完全に分散させるため
の定型的な手法は確立されていないため、この目的を達
するためには、実験的にスラリーの製造条件を決定する
必要があった。
【0009】これに対して、フッ素樹脂を混合しなけれ
ば、凝集塊は生じにくくなるが、この場合には、形成さ
れる触媒層に撥水性を付与することができなくなる。触
媒層に撥水性がないと、特に、燃料電池が高電流密度で
運転されている際に、凝縮した水が触媒層の気孔を埋め
てしまい、反応に必要な気体の拡散が阻害され、電池性
能を低下させる恐れがある。
【0010】このような問題点を解決するために、電極
基材に予め撥水処理を施し、この電極基材の気孔中に材
料を埋め込んで埋設層を形成することにより、反応に必
要な気体の拡散経路を確保する方法も存在している。例
えば、特開平8−106915号公報においては、電極
基材となるカーボンペーパー繊維表面にポリテトラオル
オロエチレンにて撥水性を具備させた後、電解液を含浸
させ、その中に触媒層を埋め込む構成が記載されてい
る。
【0011】この方法で触媒層を形成する場合には、カ
ーボンペーパーなどの電極基材に予め撥水処理を施し、
その電極基材の気孔中に炭素粉末を担体とする貴金属触
媒を埋め込み、触媒層を形成する。すなわち、電極基材
にフッ素樹脂を含浸して、これをフッ素樹脂の融点を越
える温度で焼成した後、触媒を電極基材の気孔中に埋め
込むことにより、触媒層を形成するものである。このよ
うに電極基材の気孔中に触媒層を埋め込むことにより、
触媒表面の過剰な水分は、撥水性のある電極基材から容
易に排出可能となり、水分によって気体の拡散が阻害さ
れることを防止できる。
【0012】しかしながら、以上のように、電極基材に
撥水処理を施した後、埋設層を形成する方法によって触
媒層を形成する場合には、電極基材の強度と気体の拡散
経路の確保とを両立させることが難しいという問題があ
る。すなわち、触媒層の厚みは通常10〜50μmであ
るため、電極基材に求められている機械的なサポート機
能は、このような触媒層と同等の厚みの電極基材では確
保できない。その一方で、機械的な強度を確保するため
に、厚手の電極基材を使用した場合には、この電極基材
の厚みに応じて触媒層の厚みも厚くなり、気体の拡散不
良を生じやすくなる。
【0013】また、前記公報のように、固体高分子電解
質膜形成用の電解質を電極基材であるカーボンペーパー
全体に含浸した場合には、発電に寄与しない電解質が、
電極基材の内部に分散し、この電解質が水分を吸収して
膨潤することにより、電極基材の気孔を塞ぎ、気体の拡
散不良を生じやすくなる。このような電極基材における
気体の拡散不良は、電圧低下などの電池特性の低下につ
ながる。一方、電極基材の表面に凹凸がある場合には、
この電極基材に形成される触媒層も凹凸表面を有するこ
とになり、このことも、電池特性の低下の一因となる。
【0014】本発明は、上記のような従来技術の課題を
解決するために提案されたものであり、その目的は、電
極の機械的な強度を確保しながら、反応に必要な気体の
拡散を良好に行うことができ、特に、電極基材の凹凸に
関わらず平滑な表面を持つ、均一で撥水性に優れた触媒
層を有し、安定な電池性能を有する固体高分子型燃料電
池の電極を提供することである。また、別の目的は、そ
のような電極の製造に好適な優れた製造方法を提供する
ことである。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は、固体高分子電解質膜を挟んで、燃料電
極および酸化剤電極を配置し、各電極の電極基材に触媒
層を形成してなる固体高分子型燃料電池の電極の製造方
法において、以下のような技術的特徴を有するものであ
る。
【0016】請求項1に記載の方法は、触媒層を形成す
る工程が、触媒粉末とフッ素樹脂粉末を粉砕機で粉砕す
る粉砕工程と、この粉砕工程によって粉砕された触媒粉
末とフッ素樹脂粉末を含む材料を、散布機を用いて電極
基材上に散布することにより、材料堆積層を形成する散
布工程とを有することを特徴とするものである。この方
法によれば、粉砕機で粉砕された微細粉末を、散布機を
用いて散布することにより、電極基材上に触媒粉末とフ
ッ素樹脂粉末を均一に分散させることができるため、優
れた撥水性を有する触媒層を形成できる。
【0017】請求項2に記載の方法は、請求項1の方法
において、散布工程における材料の散布方法を特定した
ものである。すなわち、請求項2では、散布工程におい
て、触媒粉末とフッ素樹脂粉末とを散布機を用いて電極
基材上に交互に散布し、触媒粉末層とフッ素樹脂堆積層
を交互に有する積層状の材料堆積層を形成する。この方
法によれば、電極基材上に触媒粉末とフッ素樹脂粉末を
別々に散布することにより、フッ素樹脂粉末をより均一
に分散させることができるため、形成される触媒層の撥
水性をより向上できる。
【0018】請求項3、4に記載の方法は、請求項1ま
たは2の方法において、散布工程における電荷条件を特
定したものである。すなわち、請求項3に記載の方法
は、散布工程において、散布機にアースを施すと共に、
ステンレス線のメッシュでアースを取ることを特徴とす
るものである。この方法によれば、帯電による材料の反
発を防止することができ、電極基材上に材料を良好に付
着させることができる。また、請求項4に記載の方法
は、散布工程において、散布機にイオン発生器を設置
し、電極基材にプラス電荷を帯電させ、材料にマイナス
電荷を帯電させることを特徴とするものである。この方
法によれば、電極基材と材料との間の電気力を利用し
て、電極基材上に材料を付着させやすくすることができ
る。
【0019】請求項5に記載の方法は、請求項1〜4の
いずれかの方法において、散布工程における具体的な条
件を特定するとともに、触媒層を形成する工程が、さら
に加熱工程を有することを特徴とするものである。すな
わち、請求項5では、散布工程において、材料を散布機
を用いて電極基材上に散布する際に、この電極基材背面
より吸引を行い、加熱工程においては、散布工程によっ
て形成された材料堆積層を、300℃以上の温度で加熱
処理する。この方法によれば、電極基材背面からの吸引
によって電極基材上に材料を均一に堆積できるため、電
極基材の凹凸に関わらず平滑な表面を持つ、均一な触媒
層を形成することができる。また、材料堆積層内部のフ
ッ素樹脂を良好に分散させることができる。したがっ
て、形成される触媒層の撥水性をより向上できる。
【0020】請求項6に記載の方法は、請求項1〜5の
いずれかの方法において、散布工程における材料の散布
方法を特定したものである。すなわち、請求項6では、
散布工程において、散布機に、触媒粉末用とフッ素樹脂
粉末用の個別のノズルを設け、個々のノズルから触媒粉
末とフッ素樹脂粉末を噴霧させてこれらの粉末を混合し
ながら電極基材上に同時に散布することにより、材料堆
積層を形成する。この方法によれば、触媒粉末とフッ素
樹脂粉末の分散性を向上できるため、形成される触媒層
の撥水性をより向上できる。また、噴霧中に触媒粉末と
フッ素樹脂粉末を混合できることから、製造が容易にな
るとともに、安定した製造が可能となる。
【0021】請求項7に記載の方法は、請求項6の方法
において、フッ素樹脂粉末用のノズルを、フッ素樹脂粉
末の噴霧時にこのフッ素樹脂をせん断できる構造とする
ことを特徴とするものである。この方法によれば、散布
時にフッ素樹脂をせん断して、繊維化し、また微細化す
ることができる。そして、このようなフッ素樹脂の微細
化によって触媒粉末とフッ素樹脂粉末の分散性をより向
上できるため、この分散性の向上と繊維化との相乗効果
によって、形成される触媒層の撥水性をさらに向上でき
る。
【0022】請求項8に記載の方法は、請求項1の方法
において、散布工程における材料の散布方法を特定した
ものである。すなわち、請求項8では、散布工程におい
て、エアレススプレー方式によって材料を電極基材上に
噴霧することにより、材料堆積層を形成する。この方法
によれば、触媒粉末とフッ素樹脂粉末の分散性を向上で
きるため、形成される触媒層の撥水性をより向上でき
る。触媒粉末とフッ素樹脂粉末を希釈せずに高粘度のま
ま散布することができるため、材料の使用量を削減する
ことができる。
【0023】請求項9に記載の方法は、請求項1〜8の
いずれかの方法において、触媒層を形成する工程が、散
布工程によって形成された材料堆積層の表面を、ローラ
によって圧縮する圧縮工程をさらに有することを特徴と
するものである。この方法によれば、ローラの圧縮力に
よって材料堆積層の表面を平滑化できるため、電極基材
の凹凸に関わらず平滑な表面を持つ、均一な触媒層を形
成することができる。
【0024】請求項10に記載の方法は、請求項1〜9
のいずれかの方法において、触媒層を形成する工程が、
散布工程によって形成された材料堆積層を、フッ素樹脂
の溶融温度より低い温度で乾燥する乾燥工程をさらに有
することを特徴とするものである。この方法によれば、
フッ素樹脂を溶融させずに、材料堆積層を溶融温度より
低い温度で乾燥することによって、優れた撥水性を有す
る触媒層を短時間で容易に形成することができる。
【0025】請求項11に記載の方法は、請求項1〜1
0のいずれかの方法において、粉砕工程における具体的
な条件を特定したものである。すなわち、請求項12で
は、粉砕工程において、触媒粉末とフッ素樹脂粉末をそ
の粒径がいずれも0.1μm以下となるように粉砕する
ことを特徴とするものである。この方法によれば、触媒
粉末とフッ素樹脂粉末の分散性を向上できるため、形成
される触媒層の撥水性をより向上できる。
【0026】請求項12に記載の方法は、請求項1〜1
1のいずれかの方法において、電極基材として、カーボ
ンペーパーを用いることを特徴とするものである。この
方法によれば、多孔性のカーボンペーパーを使用するこ
とにより、良好な触媒層を形成することができる。すな
わち、カーボンペーパーは、導電性で耐食性の炭素繊維
から構成されており、なおかつ、多孔性で気体の透過性
もよいため、電極基材として一般に用いられている。こ
のカーボンペーパーは、多孔性であることから、本発明
のように電極基材の気孔にカーボンを埋め込む構造には
適している。
【0027】請求項13に記載の発明は、固体高分子電
解質膜を挟んで、燃料電極および酸化剤電極を配置し、
各電極の電極基材に触媒層を形成してなる固体高分子型
燃料電池の電極であり、請求項1〜12に記載の製造方
法の中から選択された方法によって製造されたことを特
徴とするものである。このような構成を有する電極によ
れば、その製造方法に応じて、前述の請求項1〜12に
記載の製造方法の各々について述べたような作用効果が
得られるものである。
【0028】
【発明の実施の形態】以下には、本発明に係る実施の形
態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0029】(1)第1の実施の形態 (構成)本発明に係る第1の実施の形態として、請求項
1〜4、9〜13に記載の発明を適用した実施の形態
を、図1、図2、図5を参照して説明する。本実施の形
態においては、固体高分子型燃料電池の電極は、図5に
示すように、電極基材11とその表面に形成されるカー
ボン層12および触媒層13から構成される。このう
ち、電極基材11には、あらかじめ撥水処理を施されて
おり、触媒層13は、カーボン粉末を単体とする貴金属
触媒に電解質溶液を含浸させ乾燥したものを電極基材に
散布機により散布して形成されており、電極基材よりも
薄く形成されている。この触媒層13の形成方法の詳細
については後述する。
【0030】電極基材11としては、一般的にはカーボ
ンペーパーを使用する。例えば、東レ株式会社の「TG
P−H−090」などのカーボンペーパーが使用でき
る。ここで、電極基材11の有する気孔は、反応に必要
な気体が拡散する経路であるため、電極基材11は気孔
を多く有するものが望ましい。例えば、前述のカーボン
ペーパーは、平均のかさ密度が0.40〜0.58g/
cm3 であるが、かさ密度が小さい方が気孔の割合が大
きく気体の拡散係数が大きいため、0.40g/cm3
以下のかさ密度である方が望ましい。また、電極基材1
1の厚みについては、機械的強度を保つために、望まし
くは100μm程度以上の厚みが必要である。
【0031】また、電極基材11を撥水処理する方法と
しては、電極基材11の気孔中にフッ素系樹脂のディス
パージョン溶液を含浸し、電極基材11を乾燥した後に
300℃以上の温度で加熱処理し、電極基材11を構成
する材料の表面をフッ素系樹脂で被覆する。
【0032】(触媒層形成方法)図1は、実際の触媒層
形成方法の手順を示す作業工程図であり、図2は、その
散布工程を示す模式図である。まず、図1に示すよう
に、触媒粉末(状態A)に、高分子電解液を含浸した
後、乾燥させる(電解液含浸・乾燥工程110)。この
場合、触媒粉末に対して電解液を容易かつ均一に含浸さ
せるために、電解液の濃度を薄くして含浸する。具体的
には、触媒粉末の重量が5%程度増加するようにする。
そして、このように電解質を含浸させた触媒粉末とフッ
素樹脂粉末(状態B)を、粉砕工程120においてホモ
ジナイザーまたはケミカルカッターにより粉砕し、それ
ぞれ0.1μm以下の粒径とする(状態C)。
【0033】次に、散布工程130において、このよう
な0.1μm以下の粒径を持つ触媒粉末とフッ素樹脂粉
末を散布機により電極基材11上に散布する。具体的に
は、図2に示すような散布機20を使用して、触媒粉末
31とフッ素樹脂粉末32を電極基材11上に交互に散
布する。ここで、散布機20は、触媒粉末供給用とフッ
素樹脂粉末供給用の各バルブ21,22を有するととも
に、これらのバルブ21,22を介して供給された材料
を散布するノズル部23を有する。ここで、ノズル部2
3は、電極基材21の寸法に応じた大きな出口を有して
おり、電極基材21上に材料を均一に散布できるように
なっている。
【0034】そして、この散布機20を用いて、エアス
プレー方式により、バルブ21,22の開閉を切り替え
ながら、ノズル部23から触媒粉末31とフッ素樹脂粉
末32を電極基材11上に交互に散布することにより、
触媒粉末層33とフッ素樹脂粉末層34を交互に有する
積層状の材料堆積層35を形成する(状態D)。なお、
図中36は、散布機20のノズル部23からの材料の散
布状況を示している。
【0035】また、この散布工程130においては、帯
電による反発を避けるために散布機20にアースを施す
とともに、ステンレス線のメッシュを設けてアースをと
る。これにより、帯電による材料の反発を防止すること
ができ、電極基材11上に材料を良好に付着させること
ができる。あるいは逆に、散布機20にイオン発生器を
設置し、電極基材11にプラス電荷を帯電させ、触媒粉
末31とフッ素樹脂粉末32にマイナス電荷を帯電させ
てもよい。この場合には、電極基材11と各粉末31,
32との間の電気力を利用して、電極基材上に材料を付
着させやすくすることができる。
【0036】以上のような散布工程130に続いて、放
置・乾燥工程140において、材料堆積層35を、フッ
素樹脂の溶融温度より低い温度で放置し、十分に乾燥さ
せる(状態E)。材料堆積層35を乾燥するために、積
極的に加熱することも可能であるが、時間がある場合に
は、材料堆積層35をそのまま放置すれば、加熱用の装
置や電力が不要となる。いずれの場合にも、続く圧縮工
程150において、乾燥した材料堆積層35の表面をロ
ーラにより圧縮することにより、表面の平滑な触媒層1
3を形成することができる(状態F)。
【0037】なお、触媒層13は、電極基材11の厚み
よりも薄く形成され、電極基材11の表面付近に存在さ
せるようにする。具体的には、触媒層13は、電極基材
11の表面に1μm以上の厚みを有するように形成され
るが、より望ましくは、表面から10μm程度の厚みで
形成される。このような触媒層13の厚みの調整は、散
布工程130時における材料の使用量の調整等により容
易に行うことができる。
【0038】(作用)以上のように形成された触媒層1
3は、これに含まれるフッ素樹脂により、固体高分子電
解質膜2と電極基材11との接着剤として機能するた
め、これにより、電気的な接触抵抗を低くすることがで
きる。また、この触媒層13の背面に形成されたカーボ
ン層12は、ガス拡散層を形成する。このガス拡散層
は、前述した従来技術によるガス拡散層と同様に、電極
での生成水が拡散・除去される速度を制御する作用や、
供給される気体中に含まれる水分の拡散速度を制御する
作用を有する。そして、これらの作用により、固体高分
子電解質膜2に供給される水分量の急激な変化を緩衝で
きるため、外部からの水分供給量に電池の特性が過敏に
反応することなく、安定した運転が可能である。
【0039】特に、本実施の形態においては、電極基材
11上に触媒粉末31とフッ素樹脂粉末32を別々に散
布することにより、フッ素樹脂粉末を均一に分散させる
ことができるため、優れた撥水性を有する触媒層13を
形成できる。そして、このような優れた撥水性を有する
触媒層13を、フッ素樹脂の均一的分散撥水性を有する
電極基材11の気孔中に埋め込むことができるので、触
媒層13の表面と撥水性のある電極基材11とが接する
形となる。そのため、過剰な生成水は電極基材11の構
成繊維表面から容易に揮発・除去される。
【0040】(効果)以上のように、本実施の形態にお
いては、電極基材11の厚みを100μm以上と十分に
確保しながらも、優れた撥水性を有する触媒層13を、
電極基材11上に形成できることから、触媒表面が過剰
な水分で覆われることがないため、気体の拡散が阻害さ
れることはない。また、電極基材11全体が電解質で覆
われることもないため、電解質が吸湿して膨潤し、気孔
を塞いで気体の拡散を阻害することも防止できる。した
がって、電極基材11の強度と気体の拡散経路の確保と
を両立することができ、安定な電池性能を得ることがで
きる。
【0041】さらに、安定化した材料堆積層35の表面
をローラにより圧縮することにより、電極基材11の凹
凸に関わらず平滑な表面を持つ、均一な触媒層13を形
成できる。そのため、前述した気体の拡散経路の確保と
併せて、より安定な電池性能を得ることができる。
【0042】(変形例)なお、第1の実施の形態の変形
例として、請求項5に記載の発明を適用することも考え
られる。この場合には、散布工程において、散布機20
を用いて触媒粉末31とフッ素樹脂粉末32を電極基材
11上に散布する際に、この電極基材11の背面より吸
引を行い、形成された材料堆積層35を、300℃以上
の温度で加熱する。
【0043】この場合にも、電極基材背面からの吸引に
よって電極基材11上に材料を均一に堆積できるため、
電極基材の凹凸に関わらず平滑な表面を持つ、均一な触
媒層を形成することができる。また、材料堆積層内部の
フッ素樹脂を良好に分散させることができる。したがっ
て、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができ
る。
【0044】(2)第2の実施の形態 本発明に係る第2の実施の形態として、請求項1、6、
7、13に記載の発明を適用した実施の形態を、図3を
参照して説明する。本実施の形態においては、散布工程
における材料の散布方法が前述した第1の実施の形態と
異なる。すなわち、本実施の形態において、散布機20
のノズル部23には、触媒粉末用のノズル24とフッ素
樹脂粉末用のノズル25という2個のノズルが設けられ
ている。
【0045】ここで、両方のノズル24,25は密接し
て配置され、その寸法形状および方向は、各ノズル2
4,25から噴霧された触媒粉末31とフッ素樹脂粉末
32がそのノズル24,25の出口近傍で良好に混合さ
れるように決定されている。特に、ノズル24,25の
出口の寸法は、噴霧された粉末31,32を均一に混合
できるように小さくされており、ノズル部23の出口の
寸法は、電極基材21の寸法より小さくなっている。そ
のため、散布機20の下方には、電極基材移動台26が
配置され、電極基材11を移動できるようになってい
る。なお、フッ素樹脂粉末用のノズル25は、その出口
でフッ素樹脂粉末32をせん断できる構造とされてい
る。
【0046】そして、散布工程においては、散布機20
を用いて、エアスプレー方式により、それぞれのノズル
24,25から、触媒粉末31とフッ素樹脂粉末32の
各流量を制御しながら同時に散布し、噴霧時に両者を混
合させながら材料堆積層35を形成する。この場合、触
媒粉末31とフッ素樹脂粉末32は、ノズル24,25
の出口近傍で良好に混合されるが、特に、フッ素樹脂粉
末32が、ノズル25の出口でせん断され、繊維化さ
れ、微細化されるため、触媒粉末31とフッ素樹脂粉末
32との分散性をより向上できる。また、散布しながら
電極基材移動台26を少しずつ移動させることにより、
電極基材11上に均一な材料堆積層35を形成する。な
お、このような散布工程の詳細を除けば、前述した第1
の実施の形態と同様の手順により、触媒層13が形成さ
れる。
【0047】したがって、本実施の形態においても、前
述した第1の実施の形態と同様に、優れた撥水性を有す
る触媒層13を形成することができるため、電極基材1
1の強度と気体の拡散経路の確保とを両立することがで
き、安定な電池性能を得ることができる。特に、散布工
程において、フッ素樹脂の分散性を向上できるため、触
媒層13の撥水性をさらに向上できる。また、触媒粉末
31とフッ素樹脂粉末32の各流量を制御しながら同時
に散布し、噴霧中にこれらの粉末31,32を良好に混
合できることから、製造が容易になるとともに、安定し
た製造が可能となり、電池性能をさらに向上できる。
【0048】(3)第3の実施の形態 本発明に係る第3の実施の形態として、請求項1、8、
13に記載の発明を適用した実施の形態を、図3を参照
して説明する。本実施の形態においては、散布工程にお
ける材料の散布方法が前述した第1の実施の形態と異な
る。すなわち、本実施の形態においては、前述した第2
の実施の形態と同様の2個のノズル24,25を有する
散布機20と電極基材移動台26を用いて、前述したエ
アスプレー方式ではなく、エアレススプレー方式によっ
て、高粘度のスラリーを加圧噴霧することにより、触媒
層13を形成する。この場合、散布機20には、図3に
示すように、フッ素樹脂粉末32を供給する代わりに、
エアレス加圧フッ素樹脂液41が供給される。なお、こ
のような散布工程の詳細を除けば、前述した第1の実施
の形態と同様の手順により、触媒層13が形成される。
【0049】したがって、本実施の形態においても、前
述した第1の実施の形態と同様に、優れた撥水性を有す
る触媒層13を形成することができるため、電極基材1
1の強度と気体の拡散経路の確保とを両立することがで
き、安定な電池性能を得ることができる。特に、散布工
程において、フッ素樹脂の分散性を向上できるため、触
媒層13の撥水性をさらに向上できる。また、触媒粉末
31とエアレス加圧フッ素樹脂液41の各流量を制御し
ながら同時に散布し、噴霧中にこれらの材料31,41
を良好に混合できることから、製造が容易になるととも
に、安定した製造が可能となり、電池性能をさらに向上
できる。
【0050】(4)他の実施の形態 なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるもの
ではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な変形例が
実施可能である。例えば、本発明の重要な構成要素であ
る粉砕工程や散布工程に使用する具体的な装置構成や手
順等は、上述したような優れた撥水性を有するカーボン
層を形成できる限り、自由に選択可能である。
【0051】
【発明の効果】以上の通り、本発明の製造方法によれ
ば、触媒粉末とフッ素樹脂粉末を粉砕して、これらの粉
末を電極基材上に散布することにより、触媒層中にフッ
素樹脂を均一に分散させることができる。したがって、
電極の機械的な強度を確保しながら、反応に必要な気体
の拡散を良好に行うことができ、特に、電極基材の凹凸
に関わらず平滑な表面を持つ、均一で撥水性に優れた触
媒層を有し、安定な電池性能を有する固体高分子型燃料
電池の電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態における触媒層
形成方法の手順を示す作業工程図である。
【図2】図1の散布工程を示す模式図である。
【図3】本発明に係る第2の実施の形態における散布工
程を示す模式図である。
【図4】本発明に係る第3の実施の形態における散布工
程を示す模式図である。
【図5】一般的な固体高分子型燃料電池の単電池を模式
的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…単電池 2…固体高分子電解質膜 3…燃料電極 4…酸化剤電極 5…セパレータ 6…燃料溝 7…空気溝 11…電極基材 12…カーボン層 13…触媒層 20…散布機 21,22…バルブ 23…ノズル部 24,25…ノズル 26…電極基材移動台 31…触媒粉末 32…フッ素樹脂粉末 33…触媒粉末層 34…フッ素樹脂粉末層 35…材料堆積層 36…散布状況 41…エアレス加圧フッ素樹脂液 110…電解液含浸・乾燥工程 120…粉砕工程 130…散布工程 140…放置・乾燥工程 150…圧縮工程
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5H018 AA06 AS02 AS03 BB00 BB01 BB03 BB08 BB11 BB12 DD06 EE05 EE18 HH01 HH08 5H026 AA06 BB00 BB01 BB02 BB03 BB04 BB06 BB08 CX03 EE05 EE19 HH01 HH08

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固体高分子電解質膜を挟んで、燃料電極
    および酸化剤電極を配置し、各電極の電極基材に触媒層
    を形成してなる固体高分子型燃料電池の電極の製造方法
    において、 前記触媒層を形成する工程が、 触媒粉末とフッ素樹脂粉末を粉砕機で粉砕する粉砕工程
    と、 前記粉砕工程によって粉砕された触媒粉末とフッ素樹脂
    粉末を含む材料を、散布機を用いて電極基材上に散布す
    ることにより、材料堆積層を形成する散布工程とを有す
    ることを特徴とする固体高分子型燃料電池の電極の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 前記散布工程において、触媒粉末とフッ
    素樹脂粉末とを前記散布機を用いて前記電極基材上に交
    互に散布し、触媒粉末層とフッ素樹脂粉末層を交互に有
    する積層状の材料堆積層を形成することを特徴とする請
    求項1記載の固体高分子型燃料電池の電極の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記散布工程において、前記散布機にア
    ースを施すと共に、ステンレス線のメッシュでアースを
    取ることを特徴とする請求項1または2記載の固体高分
    子型燃料電池の電極の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記散布工程において、前記散布機にイ
    オン発生器を設置し、前記電極基材にプラス電荷を帯電
    させ、前記材料にマイナス電荷を帯電させることを特徴
    とする請求項1または2記載の固体高分子型燃料電池の
    電極の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記散布工程において、前記材料を前記
    散布機を用いて電極基材上に散布する際に、この電極基
    材背面より吸引を行い、 前記触媒層を形成する前記工程が、 前記散布工程によって形成された材料堆積層を、300
    ℃以上の温度で加熱処理する加熱工程をさらに有するこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の固
    体高分子型燃料電池の電極の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記散布工程において、前記散布機に、
    触媒粉末用とフッ素樹脂粉末用の個別のノズルを設け、
    個々のノズルから触媒粉末とフッ素樹脂粉末を噴霧させ
    てこれらの粉末を混合しながら前記電極基材上に同時に
    散布することにより、材料堆積層を形成することを特徴
    とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体高分子
    型燃料電池の電極の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記フッ素樹脂粉末用のノズルを、フッ
    素樹脂粉末の噴霧時にこのフッ素樹脂をせん断できる構
    造とすることを特徴とする請求項6記載の固体高分子型
    燃料電池の電極の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記散布工程において、エアレススプレ
    ー方式によって前記材料を前記電極基材上に噴霧するこ
    とにより、材料堆積層を形成することを特徴とする請求
    項1記載の固体高分子型燃料電池の電極の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記触媒層を形成する前記工程が、 前記散布工程によって形成された材料堆積層の表面を、
    ローラによって圧縮する圧縮工程をさらに有することを
    特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体高
    分子型燃料電池の電極の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記触媒層を形成する前記工程が、 前記散布工程によって形成された材料堆積層を、フッ素
    樹脂の溶融温度より低い温度で乾燥する乾燥工程をさら
    に有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項
    に記載の固体高分子型燃料電池の電極の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記粉砕工程において、触媒粉末とフ
    ッ素樹脂粉末をその粒径がいずれも0.1μm以下とな
    るように粉砕することを特徴とする請求項1〜10のい
    ずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池の電極の製造
    方法。
  12. 【請求項12】 前記電極基材として、カーボンペーパ
    ーを用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれか
    1項に記載の固体高分子型燃料電池の電極の製造方法。
  13. 【請求項13】 固体高分子電解質膜を挟んで、燃料電
    極および酸化剤電極を配置し、各電極の電極基材に触媒
    層を形成してなる固体高分子型燃料電池の電極におい
    て、 前記請求項1〜12に記載の製造方法の中から選択され
    た方法によって製造されたことを特徴とする固体高分子
    型燃料電池の電極。
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