JP2001152885A - スライディングモード制御装置 - Google Patents

スライディングモード制御装置

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JP2001152885A
JP2001152885A JP33931799A JP33931799A JP2001152885A JP 2001152885 A JP2001152885 A JP 2001152885A JP 33931799 A JP33931799 A JP 33931799A JP 33931799 A JP33931799 A JP 33931799A JP 2001152885 A JP2001152885 A JP 2001152885A
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perr
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紀男 茂木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】内燃機関のバルブタイミング制御装置等の制御
性能を向上する。 【解決手段】バルブタイミング制御装置において、スラ
イディングモード制御により、前記回転位相の目標開度
と実角度との偏差であるエラー量と、該エラー量の微分
値とを用いた切換関数Sに基づいて算出した制御量UD
TYを、所定の条件で付加されるディザー分D0によっ
て補正してフィードバック補正量を算出し、フィードバ
ック制御する構成とした。これにより、不感帯等に対し
て可及的に応答性のよい高精度な制御を行なうことがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スライディングモ
ード制御に関し、例えば内燃機関のクランクシャフトに
対するカムシャフトの回転位相を目標値にフィードバッ
ク制御するのに用いられるスライディングモード制御装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、クランクシャフトに対するカムシ
ャフトの回転位相を変化させることで、吸・排気バルブ
の開閉時期を連続的に可変制御する係る構成のバルブタ
イミング制御装置として、特開平10−141022号
公報に開示されるようなベーン式バルブタイミング制御
装置がある。
【0003】このものは、カムスプロケットに固定され
る筒状のハウジングの内周面に凹部を形成する一方、カ
ムシャフトに固定される羽車の羽部(ベーン)が前記凹
部に収容させ、前記凹部内で前記羽部が移動できる範囲
内でカムシャフトがカムスプロケットに対して相対的に
回転できるよう構成する。
【0004】そして、前記羽部が前記凹部を回転方向の
前後に区画して形成される一対の油圧室に対して相対的
に油を給排することで、前記羽部を前記凹部の中間位置
に保持させ、回転位相の連続的な可変制御を行わせる構
成となっており、前記一対の油圧室の油圧が目標の回転
位相が得られる油圧に調整されると、油圧通路を制御バ
ルブで閉じて油の給排を停止させるよう構成されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記カムシ
ャフト回転位相の制御方式としては、PID制御などが
一般的に採用されるが、この場合、制御量は、制御対象
であるカムシャフトの実際の角度と目標角度との偏差
(エラー量)のみを、ただ1つの変数として算出され
る。
【0006】しかしながら、前記PID制御を応答性よ
く実行するためには、油温や油圧に応じて油の粘性が変
化するため、フィードバックゲインを可変に設定するこ
とが望ましいが、該設定のマッチングが容易でない。
【0007】また、油圧制御では、油の給排を切り換え
る切換弁(スプール弁)の大きな動作不感帯が存在し、
該不感帯を乗り越えるために、PIDとは別にディザー
分を付加してディザー制御を行なうようにしているが、
ディザー分の付加判定を細かく設定する必要があって複
雑な制御となり、ROMやRAMの容量をとってしま
い、また、部品毎の不感帯幅のバラツキを小さくして制
御精度を確保するためには、部品の加工精度を上げなけ
ればならず、加工コストが増大していた。
【0008】このため、一般的なPID制御から外乱の
影響が小さいスライディングモード制御への移行が検討
されている。本発明は、このような実情に鑑みてなされ
たもので、スライディングモード制御によりフィードバ
ック制御を行なう装置において、より高精度な制御を行
うことができる装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1に係
る発明は、スライディングモード制御により制御量を算
出して制御対象を目標値にフィードバック制御するスラ
イディングモード制御装置において、前記スライディン
グモード制御により算出される制御量を、ディザー制御
により補正して制御することを特徴とする。
【0010】請求項1に係る発明によると、スライディ
ングモード制御により、通常のPID制御によるフィー
ドバック制御等と比較して外乱による影響の小さなロバ
スト性の高い制御を行うことができると同時に、ディザ
ー制御による補正を行なうことにより、より高精度な制
御を行なうことができる。
【0011】また、請求項2に係る発明は、前記スライ
ディングモード制御における切換関数は、制御対象の目
標値と実際の値との偏差の関数として算出されることを
特徴とする。
【0012】請求項2に係る発明によると、スライディ
ングモード制御において、切換関数を制御対象の目標値
と実際の値との偏差の関数とすることで該偏差に応じた
制御量(非線形項)を与えることができ、これにより、
不感帯等に対してもこれを乗り越えるための制御量が自
動的に算出されて応答性の良いフィードバック制御を行
なえる。
【0013】さらに、ディザー制御による補正を行なう
ことで、前記スライディングモード制御における非線形
項が微調整されて、最適な応答性を確保した高精度な制
御を行なうことができる。換言すれば、ディザー制御は
スライディングモード制御を補足する調整機能のみ持た
せればよいから、従来のPID制御で付加されるディザ
ー制御に比較して付加判定条件等を含めて制御が簡易と
なり、ROMやRAMの容量も節約できる。
【0014】また、請求項3に係る発明は、前記ディザ
ー制御による補正量が付加される条件を、前記切換関数
に基づいて設定したことを特徴とする。
【0015】請求項3に係る発明によると、前記切換関
数が前記偏差の関数として算出されているため、ディザ
ー制御による補正量も、該偏差に応じて必要時のみ付加
させることができる。また、スライディングモード制御
用に算出される切換関数を流用すればよく、判定用の演
算負荷も軽減される。
【0016】また、請求項4に係る発明は、前記切換関
数Sが、次式により算出されることを特徴とする。 S=γ×PERR+d(PERR)/dt γ:傾き PERR:制御対象の目標値と実際の値との偏差 d(PERR)/dt:上記偏差の微分値 請求項4に係る発明によると、切換係数Sとして、制御
対象の目標値と実際の値との偏差PERRに加えて、該
偏差の微分値d(PERR)/dtを与えることによ
り、切換線上に沿ったスライディングモードをより滑ら
かなものとすることができる。
【0017】また、請求項5に係る発明は、前記切換関
数Sが、次式により算出されることを特徴とする。 S=γ×PERR+d(NOW)/dt γ:傾き PERR:制御対象の目標値と実際の値との偏差 d(NOW)/dt:制御対象の実速度 前記請求項5における偏差PERR量の微分値d(PE
RR)/dtの代わりに、制御対象の位置の微分値であ
る実速度を与えるようにしても、同様に切換線上に沿っ
たスライディングモードを滑らかなものとすることがで
きる。
【0018】また、請求項6に係る発明は、前記スライ
ディングモード制御における制御量Uが、次式により算
出されることを特徴とする。
【0019】U=c×PERR+d×{d(NOW)/
dt]−K[S/(|S|+δ)] d(NOW)/dt:制御対象の変化速度 c,d:定数 δ:チャタリング防止係数 請求項6に係る発明によると、前記c×PERR+d×
{d(NOW)/dt]で表わされる線形項制御量U
Lは、制御系の状態を切換線(S=0)に近づける速さ
を調整する役割を有し、−K[(S/(|S|+δ)]で
表わされる非線形項制御量UNLは、切換線上に沿ったス
ライディングモードを生じさせる役割を有する。
【0020】また、請求項7に係る発明は、前記ディザ
ー制御による補正量が付加される条件を、次式により設
定したことを特徴とする。
【0021】S・ΔS≧0又は|S|≧S0 但し、ΔSはSの変化量、S0は正の所定値 請求項7に係る発明によると、例えば、切換弁等が不感
帯にある定常状態から制御対象の目標位置(目標値)が
変化する場合、不感帯から外れるまでの間は、制御対象
の実際の位置は変化しないので、偏差と共に切換関数S
(共に絶対値、以下同様)は増大しつづける。即ち、S
・ΔS≧0となる。この間は、速やかに不感帯から外れ
て制御対象が迅速に動作を開始するように、無条件でデ
ィザー分を付加する。
【0022】また、不感帯から外れて、制御対象が動作
を開始すると、偏差と共に切換関数Sは減少し始める
が、目標位置にある程度近づくまで、即ち、|S|≧S
0を満たしているときは、ディザー分を付加することに
より、速やかに目標位置に接近させて高応答性を確保す
る。
【0023】制御対象が目標位置に接近して|S|<S
0となったときは、ディザー分の付加を停止することに
より、過度な制御量によるオーバーシュートを抑制し、
速やかに目標位置に収束させることができる。
【0024】また、上記のようなディザー分の付加条件
の設定は、スライディングモード制御における線形項
(例えば偏差に比例的に設定)と共に、制御状態を切換
線(S=0)にオーバーシュートを抑制しつつ速やかに
近づけて、切換線上でのスライディングモードを開始さ
せる機能も有する。
【0025】また、請求項8に係る発明は、前記制御対
象が、内燃機関のクランクシャフトに対するカムシャフ
トの回転位相であり、前記回転位相を目標値にフィード
バック制御することで、吸・排気バルブの開閉時期を連
続的に可変制御することを特徴とする。
【0026】請求項8に係る発明によると、クランクシ
ャフトに対するカムシャフトの回転位相を変化させるこ
とで、バルブタイミングを連続的に変化させる構成にお
いて、スライディングモード制御にディザー制御を併用
して、前記バルブタイミング(実質的な制御対象)を目
標に高精度にフィードバック制御することができる。
【0027】また、請求項9に係る発明は、前記カムシ
ャフトの回転位相は、油圧制御される油圧アクチュエー
タに対する油の給排を、切換弁によって選択的に制御す
ることにより制御されることを特徴とする。
【0028】請求項9に係る発明によると、油圧アクチ
ュエータに対する油の給排を、切換弁によって選択的に
制御することにより、油圧アクチュエータの駆動方向が
切り換えられると共に、油圧室への油量を調整すること
により、カムシャフトの回転位相が、連続的に可変制御
される。
【0029】そして、該油圧制御機構にスライディング
制御を適用することにより、前記切換弁の不感帯のバラ
ツキ、油温や油圧などの外乱による影響を受けにくく、
ロバスト性の高い制御を行うことができ、部品の加工精
度を下げられ、加工コストを低減でき、さらにディザー
制御を併用することにより、不感帯に対して木目細かな
微調整を行なうことができ、制御精度を可及的に高める
ことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明
する。図1〜図6は、本実施形態において、スライディ
ングモード制御にディザー制御を併用してフィードバッ
ク制御を行なう内燃機関のバルブタイミング制御装置の
機構部分を示すものであり、吸気バルブ側に適用したも
のを示す。
【0031】図に示すバルブタイミング制御装置は、機
関のクランクシャフト(図示省略)によりタイミングチ
ェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット1(タ
イミングスプロケット)と、該カムスプロケット1に対
して相対回転可能に設けられたカムシャフト2と、該カ
ムシャフト2の端部に固定されてカムスプロケット1内
に回転自在に収容された回転部材3と、該回転部材3を
カムスプロケット1に対して相対的に回転させる油圧回
路4と、カムスプロケット1と回転部材3との相対回転
位置を所定位置で選択的にロックするロック機構10と
を備えている。
【0032】前記カムスプロケット1は、外周にタイミ
ングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部
5aを有する回転部5と、該回転部5の前方に配置され
て回転部材3を回転自在に収容したハウジング6と、該
ハウジング6の前端開口を閉塞する蓋体たる円板状のフ
ロントカバー7と、ハウジング6と回転部5との間に配
置されてハウジング6の後端部を閉塞する略円板状のリ
アカバー8とから構成され、これら回転部5とハウジン
グ6及びフロントカバー7,リアカバー8は、4本の小
径ボルト9によって軸方向から一体的に結合されてい
る。
【0033】前記回転部5は、略円環状を呈し、周方向
の約90°の等間隔位置に各小径ボルト9が螺着する4
つの雌ねじ孔5bが前後方向へ貫通形成されていると共
に、内部中央位置に後述する通路構成用のスリーブ25
が嵌合する段差径状の嵌合孔11が貫通形成されてい
る。更に、前端面には、前記リアカバー8が嵌合する円
板状の嵌合溝12が形成されている。
【0034】また、前記ハウジング6は、前後両端が開
口形成された円筒状を呈し、内周面の周方向の90°位
置には、4つの隔壁部13が突設されている。この隔壁
部13は、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング6
の軸方向に沿って設けられて、各両端縁がハウジング6
の両端縁と同一面になっていると共に、基端側には、小
径ボルト9が挿通する4つのボルト挿通孔14が軸方向
へ貫通形成されている。更に、各隔壁部13の内端面中
央位置に軸方向に沿って切欠形成された保持溝13a内
に、コ字形のシール部材15と該シール部材15を内方
へ押圧する板ばね16が嵌合保持されている。
【0035】更に、前記フロントカバー7は、中央の比
較的大径なボルト挿通孔17が穿設されていると共に、
前記ハウジング6の各ボルト挿通孔14と対応する位置
に4つのボルト孔18が穿設されている。
【0036】また、リアカバー8は、後端面に前記回転
部材5の嵌合溝12内に嵌合保持される円板部8aを有
していると共に、中央にスリーブ25の小径な円環部2
5aが嵌入する嵌入孔8cが穿設され、更に、前記ボル
ト挿通孔14に対応する位置に4つのボルト孔19が同
じく形成されている。
【0037】前記カムシャフト2は、シリンダヘッド2
2の上端部にカム軸受23を介して回転自在に支持さ
れ、外周面の所定位置に、バルブリフターを介して吸気
バルブを開動作させるカム(図示省略)が一体に設けら
れていると共に、前端部にはフランジ部24が一体に設
けられている。
【0038】前記回転部材3は、フランジ部24と嵌合
穴11にそれぞれ前後部が嵌合した前記スリーブ25を
介して軸方向から挿通した固定ボルト26によってカム
シャフト2の前端部に固定されており、中央に前記固定
ボルト26が挿通するボルト挿通孔27aを有する円環
状の基部27と、該基部27の外周面周方向の90°位
置に一体に設けられた4つのベーン28a,28b,2
8c,28dとを備えている。
【0039】前記第1〜第4ベーン28a〜28dは、
それぞれ断面が略逆台形状を呈し、各隔壁部13間の凹
部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベ
ーン28a〜28dの両側と各隔壁部13の両側面との
間に、進角側油圧室32と遅角側油圧室33を構成す
る。また、各ベーン28a〜28dの外周面の中央に軸
方向に切欠された保持溝29にハウジング6の内周面6
aに摺接するコ字形のシール部材30と該シール部材3
0を外方に押圧する板ばね31がそれぞれ嵌着保持され
ている。
【0040】前記ロック機構10は、前記回転部5の嵌
合溝12の外周側所定位置に形成された係合溝20と、
前記係合溝20に対応した前記リアカバー8の所定位置
に貫通形成されて、内周面がテーパ状の係合孔21と、
該係合孔21に対応した前記1つのベーン28の略中央
位置に内部軸方向に沿って貫通形成された摺動用孔35
と、該1つのベーン28の前記摺動用孔35内に摺動自
在に設けられたロックピン34と、該ロックピン34の
後端側に弾装されたばね部材であるコイルスプリング3
9と、ロックピン34と摺動用孔35との間に形成され
た受圧室40とから構成されている。
【0041】前記ロックピン34は、中央側の中径状の
本体34aと、該本体34aの先端側に略先細り円錐状
に形成された係合部34bと、本体34aの後端側に形
成された段差大径状のストッパ部34cとから構成され
ており、ストッパ部34cの内部凹溝34dの底面とフ
ロントカバー7の内端面との間に弾装された前記コイル
スプリング39のばね力によって係合孔21方向へ付勢
されるようになっていると共に、前記本体34aとスト
ッパ部34cとの間の外周面及び摺動用孔35の内周面
との間に形成された受圧室40内の油圧によって、係合
孔21から抜け出る方向に摺動するようになっている。
また、この受圧室40は、前記ベーン28の側部に形成
された通孔36によって前記遅角側油圧室33に連通し
ている。また、ロックピン34の係合部34bは、回転
部材3の最大遅角側の回動位置において係合部34bが
係合孔21内に係入するようになっている。
【0042】前記油圧回路4は、進角側油圧室32に対
して油圧を給排する第1油圧通路41と、遅角側油圧室
33に対して油圧を給排する第2油圧通路42との2系
統の油圧通路を有し、この両油圧通路41,42には、
供給通路43とドレン通路44とがそれぞれ通路切り換
え用の電磁切換弁45を介して接続されている。前記供
給通路43には、オイルパン46内の油を圧送するオイ
ルポンプ47が設けられている一方、ドレン通路44の
下流端がオイルパン46に連通している。
【0043】前記第1油圧通路41は、シリンダヘッド
22内からカムシャフト2の軸心内部に形成された第1
通路部41aと、固定ボルト26内部の軸線方向を通っ
て頭部26a内で分岐形成されて第1通路部41aと連
通する第1油路41bと、頭部26aの小径な外周面と
回転部材3の基部27内に有するボルト挿通孔27aの
内周面との間に形成されて第1油路41bに連通する油
室41cと、回転部材3の基部27内に略放射状に形成
されて油室41cと各進角側油圧室32に連通する4本
の分岐路41dとから構成されている。
【0044】一方、第2油圧通路42は、シリンダヘッ
ド22内及びカムシャフト2の内部一側に形成された第
2通路部42aと、前記スリーブ25の内部に略L字形
状に折曲形成されて第2通路部42aと連通する第2油
路42bと、回転部材5の嵌合孔11の外周側孔縁に形
成されて第2油路42bと連通する4つの油通路溝42
cと、リアカバー8の周方向の約90°の位置に形成さ
れて、各油通路溝42cと遅角側油圧室33とを連通す
る4つの油孔42dとから構成されている。
【0045】前記電磁切換弁45は、内部のスプール弁
体が各油圧通路41,42と供給通路43及びドレン通
路44a,44bとを相対的に切り換え制御するように
なっていると共に、コントローラ48からの制御信号に
よって切り換え作動されるようになっている。
【0046】具体的には、図4〜図6に示すように、シ
リンダブロック49の保持孔50内に挿通固定された筒
状のバルブボディ51と、該バルブボディ51内の弁孔
52に摺動自在に設けられて流路を切り換えるスプール
弁体53と、該スプール弁体53を作動させる比例ソレ
ノイド型の電磁アクチュエータ54とから構成されてい
る。
【0047】前記バルブボディ51は、周壁の略中央位
置に前記供給通路43の下流側端と弁孔52とを連通す
る供給ポート55が貫通形成されていると共に、該供給
ポート55の両側に前記第1,第2油圧通路41,42
の他端部と弁孔52とを連通する第1ポート56及び第
2ポート57がそれぞれ貫通形成されている。また、周
壁の両端部には、両ドレン通路44a,44bと弁孔5
2とを連通する第3,第4ポート58,59が貫通形成
されている。
【0048】前記スプール弁体53は、小径軸部の中央
に供給ポート55を開閉する略円柱状の第1弁部60を
有していると共に、両端部に第3,第4ポート58,5
9を開閉する略円柱状の第2,第3弁部61,62を有
している。また、スプール弁体53は、前端側の支軸5
3aの一端縁に有する傘部53bと弁孔52の前端側内
周壁に有するスプリングシート51aとの間に弾装され
た円錐状の弁ばね63によって、図中右方向、つまり第
1弁部60で供給ポート55と第2油圧通路42とを連
通する方向に付勢されている。
【0049】前記電磁アクチュエータ54は、コア6
4,移動プランジャ65,コイル66,コネクタ67な
どを備え、移動プランジャ65の先端に前記スプール弁
体53の傘部53bを押圧する駆動ロッド65aが固定
されている。
【0050】前記コントローラ48は、機関回転速度を
検出する回転センサ101や吸入空気量を検出するエア
フローメータ102からの信号によって現在の運転状態
(負荷、回転)を検出すると共に、クランク角センサ1
03及びカムセンサ104からの信号によってカムスプ
ロケット1とカムシャフト2との相対回動位置、即ち、
クランクシャフトに対するカムシャフト2の回転位相を
検出する。
【0051】前記コントローラ48は、前記電磁アクチ
ュエータ54に対する通電量をデューティ制御信号に基
づいて制御する。例えば、コントローラ48から電磁ア
クチュエータ54にデューティ比0%の制御信号(OF
F信号)を出力すると、スプール弁体53が弁ばね63
のばね力で図4に示す位置、つまり、最大右方向に移動
する。これによって、第1弁部60が供給ポート55の
開口端55aを開成して第2ポート57と連通させると
同時に、第2弁部61が第3ポート58の開口端を開成
すると共に、第4弁部62が第4ポート59を閉止す
る。このため、オイルポンプ47から圧送された作動油
は、供給ポート55,弁孔52,第2ポート57,第2
油圧通路42を通って遅角側油圧室33に供給されると
共に、進角側油圧室32内の作動油が、第1油圧通路4
1,第1ポート56,弁孔52,第3ポート58を通っ
て第1ドレン通路44aからオイルパン46内に排出さ
れる。
【0052】従って、遅角側油圧室33の内圧が高、進
角側油圧室32の内圧が低となって、回転部材3は、ベ
ーン28a〜28bを介して最大一方向に回転する。こ
れによって、カムスプロケット1とカムシャフト2とは
一方側へ相対回動して位相が変化し、この結果、吸気バ
ルブの開時期が遅くなり、排気バルブとのオーバーラッ
プが小さくなる。
【0053】一方、コントローラ48から電磁アクチュ
エータ54にデューティ比100%の制御信号(ON信
号)を出力すると、スプール弁体53が弁ばね63のば
ね力に抗して図6に示すように左方向へ最大に摺動し
て、第3弁部61が第3ポート58を閉止すると同時
に、第4弁部62が第4ポート59を開成すると共に、
第1弁部60が、供給ポート55と第1ポート56とを
連通させる。このため、作動油は、供給ポート55、第
1ポート56、第1油圧通路41を通って進角側油圧室
32内に供給されると共に、遅角側油圧室33内の作動
油が第2油圧通路42、第2ポート57、第4ポート5
9、第2ドレン通路44bを通ってオイルパン46に排
出され、遅角側油圧室33が低圧になる。
【0054】このため、回転部材3は、ベーン28a〜
28dを介して他方向へ最大に回転し、これによって、
カムスプロケット1とカムシャフト2とは他方側へ相対
回動して位相が変化し、この結果、吸気バルブの開時期
が早くなり(進角され)、排気バルブとのオーバーラッ
プが大きくなる。
【0055】前記コントローラ48は、第1弁部60が
供給ポート55を閉止し、かつ、第3弁部61が第3ポ
ート58を閉止し、かつ、第4弁部62が第4ポート5
9を閉止する位置となるデューティ比をベースデューテ
ィ比BASEDTYとする一方、クランク角センサ10
3及びカムセンサ104からの信号に基づいて検出され
るカムスプロケット1とカムシャフト2との相対回動位
置(回転位相)と、運転状態に応じて設定した前記相対
回動位置(回転位相)の目標値(目標進角値)とを一致
させるためのフィードバック補正分UFBDTYを設定
し、前記ベースデューティ比BASEDTYとフィード
バック補正分UFBDTYとの加算結果を最終的なデュ
ーティ比VTCDTYとし、該デューティ比VTCDT
Yの制御信号を電磁アクチュエータ54に出力するよう
にしてある。なお、前記ベースデューティ比BASED
TYは、供給ポート55,第3ポート58,第4ポート
59が共に閉止され、いずれの油圧室32,33でも油
の給排が行われないデューティ比範囲の略中央値(例え
ば50%)に設定されている。
【0056】つまり、前記相対回動位置(回転位相)を
遅角方向へ変化させる必要がある場合には、前記フィー
ドバック補正分UFBDTYによりデューティ比が減少
され、オイルポンプ47から圧送された作動油が遅角側
油圧室33に供給されると共に、進角側油圧室32内の
作動油がオイルパン46内に排出されるようになり、逆
に、前記相対回動位置(回転位相)を進角方向へ変化さ
せる必要がある場合には、前記フィードバック補正分U
FBDTYによりデューティ比が増大され、作動油が進
角側油圧室32内に供給されると共に、遅角側油圧室3
3内の作動油がオイルパン46に排出されるようにな
る。そして、前記相対回動位置(回転位相)を現状の状
態に保持する場合には、前記フィードバック補正分UF
BDTYの絶対値が減ることで、ベースデューティ比付
近のデューティ比に戻るよう制御され、供給ポート5
5,第3ポート58,第4ポート59の閉止(油圧の給
排の停止)により各油圧室32,33の内圧を保持する
ように制御される。
【0057】ここで、前記フィードバック補正分UFB
DTYが、スライディングモード制御とディザー制御と
の併用により、以下のように算出される。なお、以下で
は、前記検出されるカムスプロケット1とカムシャフト
2との相対回動位置(回転位相)をバルブタイミング制
御装置(VTC)の実角度、その目標値をVTCの目標
角度として説明する。
【0058】図7は、上記のように設計されたスライデ
ィングモード制御及びディザー制御を適用した前記コン
トローラ48による電磁アクチュエータ54のデューテ
ィ制御の様子を示すブロック図である。
【0059】まず、スライディングモード制御部におい
て、線形項算出部では、VTCの目標角度VTCTRG
と実角度VTCNOWとの偏差PERRを算出し、該偏
差PERRにP分ゲインcを乗じた比例分制御量U
Pと、実角度VTCNOWの微分値(d(VTCNO
W)/dt)に速度ゲインdを乗じた速度制御量U
N(=d×d(VTCNOW)/dt)を加算して線形
項制御量ULを算出する。
【0060】また、非線形項算出部では、前記偏差PE
RRに傾きγを乗じた値と、偏差PERRの微分値d
(PERR)/dtとを加算して、切換関数Sを算出
し、該切換関数Sを用いた平滑関数−kS/(|S|+
δ)として非線形項制御量UNLを算出する。
【0061】なお、前記平滑関数において、kは非線形
項ゲイン、δはチャタリング防止係数である。前記線形
項制御量ULは、制御系(VTC)の状態を切換線(S
=0)に近づける速さを調整する役割を有し、非線形項
制御量UNLは、切換線上に沿ったスライディングモード
を生じさせる役割を有する。これにより、初期状態から
位相平面上の切換線(S=0)上にシステム状態を向か
わせ、切換線(S=0)上に状態が乗ったら、切換線
(S=0)上に拘束され滑りながら原点(目標値)に到
達する(図8参照)。
【0062】そして、前記線形項制御量ULと、非線形
項制御量UNLとを加算して、スライディングモード制御
におけるトータルの制御量UDTYを算出する。一方、
ディザー制御部において、付加判定部では、前記切換関
数Sに基づいて、ディザー分(補正量)を付加するかを
判定する。具体的には、S×ΔS≧0又は|S|≧S0
(>0)のときにディザー分D0を付加し、それ以外の
時つまり|S|<S0のときはディザー分D0の付加を
停止する。つまり、D0=0とする。このようにして付
加判定が行なわれた後、出力部からディザー分D0が出
力される。
【0063】即ち、切換弁が不感帯にある状態からVT
Cの目標角度が変化すると、図9に示すように、切換弁
が不感帯から外れるまでの間は、実角度は変化しないの
で、偏差と共に切換関数S(共に絶対値、以下同様)は
増大しつづけ、S・ΔS≧0となる。したがって、この
間は、切換弁が速やかに不感帯から外れてVTCが速や
かに動作を開始するように、無条件でディザー分を付加
する。
【0064】また、切換弁が不感帯から外れて、VTC
が動作を開始すると、偏差と共に切換関数Sは減少し始
めるが、目標角度にある程度近づくまで、即ち、|S|
≧S0を満たしているときは、ディザー分を付加するこ
とにより、速やかに目標角度に接近させて高応答性を確
保する。
【0065】VTCが目標角度に接近して|S|<S0
となったときは、ディザー分の付加を停止することによ
り、過度な制御量によるオーバーシュートを抑制し、速
やかに目標角度に収束させることができる。
【0066】なお、偏差PERR(目標角度−実角度)
が正の値のときは、ディザー分D0は実角度を増大させ
る方向の値(例えば正の値)に設定され、偏差が負の値
のときは、ディザー分D0は実角度を増大させる方向の
値(例えば負の値)に設定される。
【0067】また、ディザー分D0の値は、PID制御
の場合は不感帯から抜け出すのに十分な大きさに設定さ
れるが、本発明では、スライディングモード制御におけ
る前記非線形項がディザー制御の機能を大方果たすこと
になるので、ディザー分D0は微調整機能を持たせる程
度の値に設定すればよい。但し、ディザー分D0を十分
大きく設定し、油温,油圧による要求変化分をスライデ
ィングモード制御の非線形項で調整するように設計する
こともできる。
【0068】そして、前記スライディングモード制御に
おけるトータルの制御量UDTYに、前記ディザー制御
におけるディザー分D0(付加停止時はD0=0)を加
算して、フィードバック補正分UFBDTYを算出し、
該フィードバック補正分UFBDTYを前記不感帯中立
位置相当のベースデューティ比BASEDTYと加算し
て該加算結果を最終的なデューティ比VTCDTYとし
て出力する。
【0069】このように、基本的にはスライディングモ
ード制御によって、前記切換弁の不感帯のバラツキ、油
温や油圧などの外乱による影響を受けにくく、ロバスト
性の高い制御を行うことができ、部品の加工精度を下げ
られ、加工コストを低減でき、かつ、ディザー制御によ
る補正を行なうことにより、調整機能が作用して、最適
な応答性が得られるなど制御性能が向上する。
【0070】また、ディザー制御の負担が従来のPID
制御で併用される場合に比較して軽減され、ディザー分
の付加判定条件も従来の油温、油圧その他を含めた複雑
な付加判定に比較して簡易な判定条件ですむ。特に、本
実施の形態のように前記偏差PERRの関数として算出
されている切換関数Sに基づくディザー分の付加判定で
は、ディザー分を該偏差に応じて必要時のみ付加させる
ことができ、切換関数Sの流用により判定用の演算負荷
も軽減される。また、上記のような切換関数Sに基づく
ディザー分の付加条件の設定は、スライディングモード
制御における線形項(例えば偏差に比例的に設定)と共
に、制御状態を切換線(S=0)にオーバーシュートを
抑制しつつ速やかに近づけて、切換線上でのスライディ
ングモードを開始させる機能も有する。ディザー分の付
加判定としては、この他、偏差PERRに基づいて、例
えば、PERR・ΔPERR≧0又は|PERR|>P
ERR0(>0)のときにディザー分を付加するような
判定とすることもできる。
【0071】このようにスライディングモード制御を含
めた制御全体が簡易化され、ROMやRAMの容量も節
約できる。なお、上記の実施の形態では、前記油圧ベー
ン式VTCに適用したものを示したが、油圧制御式のV
TCに限らず、電磁式のVTC等にも適用でき、かつ、
本発明は、VTCに限定されることなく、基本的にスラ
イディングモード制御により制御量を算出して制御対象
を目標値にフィードバック制御する装置に広く適用でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態におけるバルブタイミング制御機構
を示す断面図。
【図2】図1のB−B断面図。
【図3】上記バルブタイミング制御機構の分解斜視図。
【図4】上記バルブタイミング制御機構における電磁切
換弁を示す縦断面図。
【図5】上記バルブタイミング制御機構における電磁切
換弁を示す縦断面図。
【図6】上記バルブタイミング制御機構における電磁切
換弁を示す縦断面図。
【図7】上記バルブタイミング制御機構の制御ブロック
図。
【図8】上記バルブタイミング制御機構のスライディン
グモード制御時の目標角度への収束の様子を示すタイム
チャート。
【図9】上記バルブタイミング制御機構の制御時の切換
関数Sの変化と、それによるディザー分付加の有無を示
す図。
【符号の説明】
2…カムシャフト 4…油圧回路 32…進角側油圧室 33…遅角側油圧室 45…電磁切換弁 47…オイルポンプ 53…スプール弁体 101…回転センサ 102…エアフローメータ 103…クランク角センサ 104…カムセンサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02D 45/00 370 F02D 45/00 370B G05B 13/00 G05B 13/00 A Fターム(参考) 3G016 AA19 BA40 DA06 DA22 3G084 BA23 DA04 DA08 DA21 DA22 EB02 EB15 EC06 FA07 FA33 FA38 3G092 AA11 DA01 DA02 DA09 DF04 DF09 DG05 DG09 EA11 EA19 EA22 EA25 EA28 EA29 EB02 EB03 EC00 EC01 EC08 FA06 FA48 FA50 HA01Z HA13X HA13Z HE01Z HE03Z 3G301 HA19 JA07 JA15 JA17 JA19 LA07 LC08 NA03 NA05 NA09 NC07 ND00 ND01 ND41 PA01Z PE01Z PE03Z PE10A PE10Z 5H004 GA03 GA05 GA14 GA17 GB12 HA07 HB07 KA22 KA44 KA74 KB02 KB04 KB06 KC39 KC53 LA06 LB05 LB10

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スライディングモード制御により制御量を
    算出して制御対象を目標値にフィードバック制御するス
    ライディングモード制御装置において、 前記スライディングモード制御により算出される制御量
    を、ディザー制御により補正して制御することを特徴と
    するスライディングモード制御装置。
  2. 【請求項2】前記スライディングモード制御における切
    換関数は、制御対象の目標値と実際の値との偏差の関数
    として算出されることを特徴とする請求項1に記載のス
    ライディングモード制御装置。
  3. 【請求項3】前記ディザー制御による補正量が付加され
    る条件を、前記切換関数に基づいて設定したことを特徴
    とする請求項2に記載のスライディングモード制御装
    置。
  4. 【請求項4】前記切換関数Sは、次式により算出される
    ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のスライ
    ディングモード制御装置。 S=γ×PERR+d(PERR)/dt γ:傾き PERR:制御対象の目標値と実際の値との偏差 d(PERR)/dt:上記偏差の微分値
  5. 【請求項5】前記切換関数Sは、次式により算出される
    ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のスライ
    ディングモード制御装置。 S=γ×PERR+d(NOW)/dt γ:傾き PERR:制御対象の目標値と実際の値との偏差 d(NOW)/dt:制御対象の変化速度
  6. 【請求項6】前記スライディングモード制御における制
    御量Uは、次式により算出されることを特徴とする請求
    項4又は請求項5に記載のスライディングモード制御装
    置。 U=c×PERR+d×{d(NOW)/dt]−K[S
    /(|S|+δ)] d(NOW)/dt:制御対象の変化速度 c,d:定数 δ:チャタリング防止係数
  7. 【請求項7】前記ディザー制御による補正量が付加され
    る条件を、次式により設定したことを特徴とする請求項
    4〜請求項6のいずれか1つに記載のスライディングモ
    ード制御装置。 S・ΔS≧0又は|S|≧S0 但し、ΔSはSの変化量、S0は正の所定値
  8. 【請求項8】前記制御対象が、内燃機関のクランクシャ
    フトに対するカムシャフトの回転位相であり、前記回転
    位相を目標値にフィードバック制御することで、吸・排
    気バルブの開閉時期を連続的に可変制御することを特徴
    とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のスラ
    イディングモード制御装置。
  9. 【請求項9】前記カムシャフトの回転位相は、油圧制御
    される油圧アクチュエータに対する油の給排を、切換弁
    によって選択的に制御することにより制御されることを
    特徴とする請求項8に記載のスライディングモード制御
    装置。
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US7527029B2 (en) 2005-09-13 2009-05-05 Honda Motor Co., Ltd. Controller for plant using PWM algorithm

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