JP2001151795A - ペプチドのアミノ酸配列決定方法 - Google Patents

ペプチドのアミノ酸配列決定方法

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JP2001151795A JP33112499A JP33112499A JP2001151795A JP 2001151795 A JP2001151795 A JP 2001151795A JP 33112499 A JP33112499 A JP 33112499A JP 33112499 A JP33112499 A JP 33112499A JP 2001151795 A JP2001151795 A JP 2001151795A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ペプチドのアミノ酸配列を効率的に決定する
方法を提供する。 【解決手段】 (1) ペプチドに、pH5以下で一般式
〔1〕 (R1CO)2O 〔1〕 (式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカル
ボン酸無水物を作用させるか、pH6以下で一般式
〔2〕 R2NCO 〔2〕 (式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換
されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナ
フチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わ
す。)で示されるイソシアネート化合物を作用させる工
程、(2) (1)の工程の前及び後におけるペプチドについ
て、衝突活性化解離法により生じるフラグメントイオン
の質量スペクトルを取得する工程、及び(3) (2)の工程
で得られた2種の質量スペクトルを比較、解析すること
によりペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を含むこ
とを特徴とするペプチドのアミノ酸配列の決定方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ペプチドのアミノ
酸配列の決定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】タンパク質のアミノ酸配列の決定は、タ
ンパク質の構造を確認、同定する手段として重要であ
る。タンパク質やペプチドのアミノ酸配列決定を行う方
法として一般的にエドマン分解法が用いられているが、
最近では質量分析法を用いるアミノ酸配列の決定も行わ
れてきている。質量分析法を用いるアミノ酸配列決定法
は、混合物試料や微量試料にも適用可能であるという特
徴を有する。
【0003】質量分析法を用いたアミノ酸配列決定にお
いては、衝突活性化解離法(以下、CID法と記す)によ
り生じるフラグメントイオンの質量スペクトル(以下、
MS/MSスペクトルと記す)を取得し、このスペクトルを
解析してアミノ酸配列を決定することが行われている。
一般にこの方法によってMS/MSスペクトルが得られるの
は分子量が約3000程度以下であるため、それを越え
る高分子量物では通常、化学的または生化学的手段によ
って切断して分子量3000以下程度以下のペプチドに
した後、適用される。
【0004】CID法によってペプチドは主に主鎖部分で
解離が起こり、該ペプチドのN末端を含むフラグメント
イオンとC末端を含むフラグメントイオンが生成する
(Methods in Enzymology, 193 (1990))。得られるMS/
MSスペクトルには、N末端を含むフラグメントイオンの
ピークとC末端を含むフラグメントイオンのピークが混
在しており、解析に多大な労力を要するという問題があ
った。N末端を含むフラグメントイオンとC末端を含む
フラグメントイオンを区別する方法として、例えば、H
2 18Oを含む溶液中で酵素により加水分解を行うことに
よって、断片化された各ペプチドのC末端を18Oで標識
し、18O標識されたペプチドと18O標識していないペプ
チドのMS/MSスペクトルを比較する方法が報告されてい
る(RAPIDCOMMUNICATION IN MASS SPECTROMETRY, Vol.
5, pp312-315 (1991))。
【0005】一方、タンパク質あるいは切断ペプチドの
N末端α−アミノ基の選択的修飾方法としては、グルカ
ゴンにおいて無水酢酸を用いるアセチル化方法(Eur.
J. Biochem. 60, 335-347, (1975))や、切断ペプチド
に無水ヨード酢酸をカップリング試薬として使用する方
法(Anal. Chem., 65, 1703, (1993); Bioconjugate C
hem., 1, 114-122, (1990))が知られているものの、こ
れらの方法においてその選択性のためには、基質である
タンパク質あるいはペプチドと修飾試薬との使用比率を
厳密に制御する必要があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ペプ
チドのアミノ酸配列を効率的に決定する方法を提供する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような状況下、本発
明者らはペプチドのアミノ酸配列の決定方法につき検討
した結果、ペプチドに対する修飾剤の使用量を厳密に制
御しなくとも比較的広い範囲で、ε−アミノ基共存下に
おいてもN末端アミノ基を極めて選択性良く修飾できる
方法を見出すと共に、該選択的修飾方法とCID法による
質量分析法とを組み合わせることにより極めて効率的に
ペプチドのアミノ酸配列を決定できることを見出し、本
発明に至った。すなわち本発明は、(1) ペプチドに、p
H5以下で一般式〔1〕 (R1CO)2O 〔1〕 (式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカル
ボン酸無水物を作用させるか、pH6以下で一般式
〔2〕 R2NCO 〔2〕 (式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換
されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナ
フチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わ
す。)で示されるイソシアネート化合物を作用させる工
程、(2) (1)の工程の前及び後におけるペプチドについ
て、衝突活性化解離法により生じるフラグメントイオン
の質量スペクトルを取得する工程、及び(3) (2)の工程
で得られた2種の質量スペクトルを比較、解析すること
によりペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を含むこ
とを特徴とするペプチドのアミノ酸配列の決定方法に関
するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ペプチドとは、2個以上のα−アミノ
酸がペプチド結合により結合したものを言い、通常はア
ミノ酸数が約50以下である。また、タンパク質とは、
α−アミノ酸がペプチド結合により連結したポリペプチ
ド鎖からなる高分子化合物を言い、通常は分子量約40
00以上である。
【0009】本発明において、通常は分子量3000程
度以下のペプチドが用いられ、高分子のペプチドやタン
パク質を予め切断することにより分子量を3000程度
以下としたペプチドを用いることもできる。タンパク質
の切断方法は特に限定されず、例えば、A Practical Gu
ide to Protein and Peptide Purification for Micros
equencing, Second Edition, Academic Press, (1993)
やMethods in Enzymology, 193, 389-412, (1990)等に
記載の化学的切断方法、消化酵素を用いた生化学的切断
方法等をあげることができる。具体的に化学的切断方法
としては例えば、BrCNによる切断方法が挙げられ、消化
酵素による生化学的切断方法としては、トリプシン、キ
モトリプシンなどを用いた消化を挙げることができる。
【0010】また、ペプチドを例えばヨードアセトアミ
ドや4-ビニルピリジンなどにより予め還元Sアルキル化
処理を行っておくことが実用上好ましい。この処理によ
りペプチドを構成するアミノ酸としてシステインを含む
場合の副反応が抑えられる。この還元Sアルキル化処理
自体は公知であり、例えば、A Practical Guide to Pro
tein and Peptide Purification for Microsequencing,
Second Edition, Academic Press, (1993)等に記載の
方法に準じて行うことができる。また、ペプチドを前記
したタンパク質の切断により得る場合には、タンパク質
の切断の前に還元Sアルキル化処理を行ってもよい。
【0011】(1) ペプチドへのカルボン酸無水物または
イソシアネート化合物処理工程 i) カルボン酸無水物〔1〕処理 ペプチドにpH5以下でカルボン酸無水物〔1〕を作用
させることによりN末端が選択的にアシル化されたペプ
チドが得られる。カルボン酸無水物〔1〕におけるR1
は直鎖または分岐アルキル基であり、好ましくはメチル
基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘ
キシル基等のC1〜6の直鎖または分岐アルキル基を挙
げることができ、具体的には、無水酢酸、プロピオン酸
無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物等を挙げることがで
きる。
【0012】本工程の反応はpH5以下、好ましくはp
H2〜5の範囲、さらに好ましくはpH3〜5の範囲で
行われる。本工程において、通常は前記pHを保持する
ための緩衝液を溶媒として使用する。該溶媒としては、
酢酸水溶液、ぎ酸水溶液、ピリジン−酢酸緩衝液、トリ
フルオロ酢酸水溶液等の揮発性溶媒が、後処理の簡便さ
の点で好ましい。通常は、本工程の反応は、ペプチドお
よび該溶媒からなる溶解または懸濁液に、カルボン酸無
水物〔1〕またはそのテトラヒドロフラン等の溶液を添
加することにより行われる。反応は、選択性の点から約
10℃以下で、使用する溶媒が凍らない範囲の温度で行
うことが好ましい。反応時間は通常、1〜60分程度で
ある。
【0013】カルボン酸無水物〔1〕の反応系内の濃度
は反応系内の初期濃度として通常、pH5で反応を行う場
合には、約10〜30mM、pH3.3で反応を行う場合には、約6
0〜300mM程度である。本工程において反応後、反応液か
らN−アシル化されたペプチドを回収する。例えば、反
応液に揮発性の溶媒を用いた場合は、反応液を減圧下に
留去すればよい。不揮発性の塩を含む溶媒を用いた場合
には、脱塩処理を行った後溶媒を減圧留去すればよい。
本工程の処理を行うことにより、N末端のみが選択的に
使用するカルボン酸無水物〔1〕に対応してアシル化さ
れたペプチドを製造することができる。
【0014】ii) イソシアネート化合物〔2〕処理 ペプチドに、pH6以下でイソシアネート化合物〔2〕
を作用させることにより、N末端アミノ基が選択的にカ
ルバモイル化されたペプチドが得られる。イソシアネー
ト化合物〔2〕におけるR2は、置換されていてもよい
アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換さ
れていてもよいナフチル基または置換されていてもよい
ピリジル基である。置換されていてもよいアルキル基と
しては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、よう
素原子等のハロゲン原子で置換されていても良いアルキ
ル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基
等のC1〜6アルキル基、クロロメチル基、ヨードメチ
ル基、ジブロモメチル基、トリフルオロメチル基、ヨー
ドエチル基等のC1〜6ハロアルキル基を挙げることが
できる。置換されていてもよいフェニル基、置換されて
いてもよいナフチル基としては、例えばフェニル基、p
−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基、2,4−
ジクロロフェニル基等のハロゲン置換フェニル基、1−
ナフチル基、2−ナフチル基等のナフチル基、1−ヨー
ドナフチル基、2−クロロナフチル基等のハロゲン置換
ナフチル基等を挙げることができる。置換されていても
良いピリジル基としては、例えば2−ピリジル基、3−
ピリジル基、4−ピリジル基等のピリジル基や、2−ク
ロロ−4−ピリジル基、3,5−ジフルオロ−2−ピリ
ジル基等のハロゲン置換ピリジル基を挙げることができ
る。イソシアネート化合物〔2〕としては具体的には、
フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシア
ネート、1−ナフチルイソシアネート、2−ナフチルイ
ソシアネート、ブチルイソシアネート、エチルイソシア
ネート、4−ピリジルイソシアネート、3−ピリジルイ
ソシアネート等を挙げることができる。本工程の反応は
pH6以下で行われ、好ましくはpH約3〜6の範囲、
さらに好ましくはpH約5〜6で行われる。
【0015】本工程において、通常は前記pHを保持す
るための緩衝液を溶媒として使用する。該溶媒として
は、酢酸水溶液、ぎ酸水溶液、ピリジン−酢酸緩衝液、
トリフルオロ酢酸水溶液等の揮発性溶媒が、後処理の簡
便さの点で好ましい。通常は、本工程の反応は、ペプチ
ドおよび該溶媒からなる溶解または懸濁液に、イソシア
ネート化合物〔2〕またはそのテトラヒドロフラン等の
溶液を添加することにより行われる。反応は、例えば使
用する溶媒が凍らない程度の低温から50℃程度の範囲
を挙げることができる。反応時間は通常、1〜60分程
度である。イソシアネート化合物〔2〕の反応系内の濃
度は反応系内の初期濃度として通常、pH6で反応を行う
場合には、約2〜300mM程度である。
【0016】本工程の反応後、反応液からN−カルバモ
イル化されたペプチドを回収する。例えば、反応液に揮
発性の溶媒を用いた場合は、反応液を減圧下に留去すれ
ばよい。不揮発性の塩を含む溶媒を用いた場合には、脱
塩処理を行った後、溶媒を減圧留去すればよい。本工程
の処理を行うことにより、N末端のみが選択的に、使用
するイソシアネート化合物〔2〕に対応してカルバモイ
ル化されたペプチドを製造することができる。
【0017】(2) (1)の工程の前及び後におけるペプチ
ドについて、衝突活性化解離法により生じるフラグメン
トイオンの質量スペクトルを取得する工程 (1)の工程の前及び後のそれぞれのペプチドのMS/MSスペ
クトルを取得する。MS/MSスペクトルの取得の方法とし
ては、ペプチドを主鎖部分で開裂させた質量スペクトル
を分析できる方法であればよく、質量分析装置の種類や
イオン化法は特に限定されない。例えば、イオントラッ
プ型の質量分析装置を用いてESIイオン化法にて分析す
ることができる。
【0018】(3) (2)の工程で得られる2種のスペクト
ルを比較、解析することによりペプチドのアミノ酸配列
を決定する工程 (1)の工程の後のペプチドのMS/MSスペクトルと、(1)の
工程の前のペプチドのMS/MSスペクトルとを比較し、質
量変化していないフラグメントイオンのピークを特定す
ることにより、これをC末端由来のフラグメントイオン
と判定できる。同様にして、(1)の工程で使用したカル
ボン酸無水物〔1〕またはイソシアネート化合物〔2〕
に対応するアシル基またはカルバモイル基に相当する質
量変化があったフラグメントイオンのピークを特定する
ことにより、これをN末端由来のフラグメントイオンと
判定できる。例えば、ペプチドを無水酢酸により処理し
た場合には、MS/MSスペクトルにおいてC末端を含むフ
ラグメントイオンは該処理により質量変化はしないの
で、(2)の工程の前後で同じ質量のフラグメントイオン
が検出されるのに対し、N末端を含むフラグメントイオ
ンにおいては、該ペプチドのN末端のα−アミノ基がア
セチル化されることにより42の質量増加が検出される。
また、例えば、イソシアン酸フェニルで処理した場合に
おいては、N末端を含むフラグメントイオンは119の質
量増加が検出される。
【0019】このようにして特定されたペプチドのC末
端由来のフラグメントイオンとN末端由来のフラグメン
トイオンを、例えばMethods in Enzymology, 193 (199
0)に記載の方法によりMS/MSスペクトル上で質量の順に
たどり、その質量差からアミノ酸の特定及びその配列順
序を解析することができ、アミノ酸配列を決定すること
ができる。
【0020】
【実施例】以下、本発明を参考例および実施例により更
に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。 実施例1 (1)ヒト成長ホルモンのトリプシン消化物の調製 組換えヒト成長ホルモン(hGH)200mgを1%炭酸水素アン
モニウム緩衝液(pH 7.9)200mLに溶解し、トリプシン
を4mg添加して、37℃、24時間反応させた。
【0021】(2)N末端選択的アセチル化 前記hGHトリプシン消化物1mg相当量を減圧濃縮し、残渣
に0.1%酢酸水溶液(pH3.3)を12mL加えて溶解し、氷上
で1分間インキュベートした後、1M無水酢酸/無水テト
ラヒドロフランを5mL添加して5分間インキュベートし
た。該反応液からの溶媒を減圧下に溜去し、残渣を質量
分析用試料とした。また、アセチル化処理しないhGHト
リプシン消化物1mg相当量も併せて調製した。
【0022】(3)MS/MSスペクトルの取得 MS/MSスペクトルの取得は、ThermoQuest社のイオントラ
ップ型質量分析計LCQで行った。2種のhGHトリプシン消
化物試料(アセチル化処理試料および未処理試料)それ
ぞれを10mLの溶媒(酢酸/水/メタノール=0.1/50/50)
に溶解し、1mLをNanospray用チップに入れ、Nanospray
イオン源(Protana社製)に装着した。エレクトロスプ
レー電圧を0.7kV、キャピラリー温度を120℃に設定して
エレクトロスプレーマススペクトルおよびMS/MSスペク
トルをそれぞれ取得した。
【0023】(4)アミノ酸配列解析 hGHトリプシン消化物のうちのペプチドTGQIFK(MW692.
4)の解析を例にする。アセチル化未処理試料のマスス
ペクトルにより、m/z693.4に[M+H]+が検出された。この
m/z693.6のMS/MSスペクトルでは、N末端由来のフラグ
メントイオンとC末端由来のフラグメントイオンが混在
している(図1)。アセチル化処理試料では42の質量増
加があり、マススペクトルピークはm/z735.5に検出され
た。このm/z735.5とm/z693.6のMS/MSスペクトルとを比
較すると(図1, 2)、*を付けた質量変化がないピー
クを見出すことができ、これらはC末端由来のフラグメ
ントイオンであることがわかった。これらのフラグメン
トイオン(*)の質量差を読み取ることにより、T→G→
Q→I/Lという配列が確認できた(ここで、IとLとは分
子量が同じであるためいずれかを特定できないので、I/
Lと記載する。以下同様。)。一方、●を付けたピーク
は42の質量増加しており、これらはN末端由来のフラグ
メントイオンであることがわかり、質量差を読み取るこ
とによりI/L→F→Kという配列を確認できた。以上か
ら、hGHトリプシン消化物に含まれるペプチドをアミノ
酸配列TGQ(I/L)FKと決定できた。
【0024】実施例2 (1)N末端選択的イソシアン酸フェニル処理 実施例1と同様に調製したhGHトリプシン消化物1mg相当
量を減圧濃縮し、残渣に0.1Mピリジン-酢酸(pH 6.0)
を12mL加えて溶解し、0.1Mイソシアン酸フェニル/無水
テトラヒドロフランを5mL添加して5分間インキュベート
する。該反応液からの溶媒を減圧下に溜去し、残渣を質
量分析用試料とする。また、カルバモイル化処理しない
hGHトリプシン消化物1mg相当量も併せて調製する。
【0025】(2)MS/MSスペクトルの取得 hGHトリプシン消化物試料(カルバモイル化処理および
未処理)を10mLの溶媒(酢酸/水/メタノール=0.1/50/
50)に溶解し、実施例1と同様にMS/MSスペクトルを取
得する。
【0026】(3)アミノ酸配列決定 hGHトリプシン消化物のうちのペプチドTGQIFK(MW692.
4)の解析を例にする。カルバモイル化処理をしていな
い試料のマススペクトルによりm/z693.4に[M+H]+が検出
される。m/z693.6のMS/MSスペクトルでは、N末端由来
のフラグメントイオンとC末端由来のフラグメントイオ
ンが混在している。N末端選択的イソシアン酸フェニル
処理をしたhGHトリプシン消化物試料では119の質量増加
があり、マススペクトルピークはm/z812.6に検出され
る。実施例1と同様にm/z735.5とm/z812.6のMS/MSスペ
クトルとを比較すると、質量変化がないピークを見出す
ことができ、これらはC末端由来のフラグメントイオン
であることがわかる。これらのフラグメントイオンの質
量差を読み取ることにより、T→G→Q→I/Lという配列が
確認できる。一方、119の質量増加したピークはN末端
由来のフラグメントイオンであることがわかり、質量差
を読み取ることによりI/L→F→Kという配列を読み取る
ことができる。以上から、hGHトリプシン消化物に含ま
れるペプチドをアミノ酸配列TGQ(I/L)FKと決定できる。
【0027】参考例1 ペプチドとしてダイノルフィンA(アミノ酸配列;YGGF
LRRIRPKLKWDNQ、ペプチド研究所製)100pmolを0.1Mピリ
ジン-酢酸(pH6.0)、0.1Mピリジン-酢酸(pH5.0)、0.
1%酢酸水溶液(pH3.3)および1%酢酸水溶液(pH2.7)各
12μLにそれぞれ溶解し、氷上で1分間インキュベート
した後、0.005M〜5Mの無水酢酸/無水テトラヒドロフラ
ンを5μL添加し、氷上で5分間インキュベートした。該
反応液から溶媒を減圧下に留去し、残渣を質量分析用試
料とした。質量分析は二重収束型質量分析計(日本電
子、型式JMS-HX/HX110A)を用い、FABイオン化法を使用
した。上記試料を水・メタノール・酢酸(50・50・
1)2μLに溶解し、該試料溶液1μLをグリセロール・チ
オグリセロール(1・1)1μLと混合して上記分析計に
供し、FAB-MSおよびFAB-MS/MS測定を行った。無水酢酸
処理後に原料のダイノルフィンAに比し質量が42増加し
たピークについてMS/MS分析を行ったところ、N末端α-
アミノ基のみがアセチル化されたダイノルフィンAであ
ることが確認できた。各pHおよび無水酢酸量条件にお
けるN末端のみアセチル化されたダイノルフィンAの選
択率を表1に示す。
【0028】表1中の記号の説明 N末端のみアセチル化されたダイノルフィンAの選択率 ◎:75%超 ○:70%超75%以下 △:60%超70%以下 ×:60%以下
【0029】
【表1】
【0030】参考例2 参考例1において無水酢酸に代えて表2に記載のイソシ
アネート化合物〔2〕を用い、表2に記載した条件とし
た以外は参考例1と同様に実験を行った。結果を表2に
示す。
【0031】
【表2】 *1:シアネート化合物の添加量を添加したシアネート
化合物/THF5μL中のシアネート化合物のモル濃度
(mM)として表示する。 *2:N末端のみカルバモイル化されたダイノルフィン
Aの選択率
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、ペプチドのアミノ酸配
列を極めて効率的に決定することが可能な方法を提供で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるhGHトリプシン消化物のアセ
チル化未処理試料のマススペクトルにより得られた[M+
H]+(m/z693.6)のMS/MSスペクトルを示す。●印は、ア
セチル化処理により質量が42増加したフラグメントピ
ークを示す。*印は、アセチル化処理により質量が変化
しなかったフラグメントピークを示す。T、G、Q、I/
L、F、Kはそれぞれフラグメントイオンピークの質量
差から求められるアミノ酸残基を示し、Tはスレオニン
残基を、Sはセリン残基を、Qはグルタミン残基を、I/
Lはイソロイシン残基またはロイシン残基を、Fはフェ
ニルアラニン残基を、Kはリシン残基を表わす。
【図2】実施例1におけるhGHトリプシン消化物のアセ
チル化処理試料のマススペクトルにより得られた[M+42+
H]+(m/z735.5)のMS/MSスペクトルを示す。●印は、ア
セチル化処理により質量が42増加したフラグメントピ
ークを示す。*印は、アセチル化処理により質量が変化
しなかったフラグメントピークを示す。Ac-T、I/L、
F、Kはそれぞれフラグメントイオンピークの質量差か
ら求められるアミノ酸残基を示し、Ac-Tはアセチル化
スレオニン残基を、I/Lはイソロイシン残基またはロイ
シン残基を、Fはフェニルアラニン残基を、Kはリシン
残基を表わす。
フロントページの続き Fターム(参考) 2G045 AA34 DA36 FA40 GC30 4B024 AA20 BA03 BA80 HA11 HA19 HA20 4H045 AA20 AA30 BA10 BA50 DA31 EA50 FA16 FA51

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(1) ペプチドに、pH5以下で一般式
    〔1〕 (R1CO)2O 〔1〕 (式中、R1はアルキル基を表わす。)で示されるカル
    ボン酸無水物を作用させるか、pH6以下で一般式
    〔2〕 R2NCO 〔2〕 (式中、R2は置換されていてもよいアルキル基、置換
    されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナ
    フチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わ
    す。)で示されるイソシアネート化合物を作用させる工
    程、(2) (1)の工程の前及び後におけるペプチドについ
    て、衝突活性化解離法により生じるフラグメントイオン
    の質量スペクトルを取得する工程、及び(3) (2)の工程
    で得られた2種の質量スペクトルを比較、解析すること
    によりペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を含むこ
    とを特徴とするペプチドのアミノ酸配列の決定方法。
  2. 【請求項2】ペプチドとして、(1)の工程に先立ちSア
    ルキル化処理されたものを用いる請求項1に記載の方
    法。
  3. 【請求項3】ペプチドとして、タンパク質の切断により
    得られたものを用いる請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】カルボン酸無水物〔1〕のR1がC1−6
    アルキル基である請求項1〜3のいずれかに記載の方
    法。
  5. 【請求項5】イソシアネート化合物〔2〕のR2がフェ
    ニル基またはC1−6アルキル基である請求項1〜3の
    いずれかに記載の方法。
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