JP2001147694A - 代用原音発生装置とその制御方法 - Google Patents

代用原音発生装置とその制御方法

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JP2001147694A
JP2001147694A JP32779999A JP32779999A JP2001147694A JP 2001147694 A JP2001147694 A JP 2001147694A JP 32779999 A JP32779999 A JP 32779999A JP 32779999 A JP32779999 A JP 32779999A JP 2001147694 A JP2001147694 A JP 2001147694A
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Yotaro Hatamura
洋太郎 畑村
Hirotomo Takahashi
宏知 高橋
Masayuki Nakao
政之 中尾
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Todai TLO Ltd
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Center for Advanced Science and Technology Incubation Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 喉頭摘出者が本来有していた声質を再現する
ことができる代用原音発生装置を提供することにある。 【解決手段】 基本周波数に高周波成分を加味すること
によって、代用原音を喉頭原音により一層近づけること
ができることに着目し、基本周波数と任意の高周波成分
とを格納するメモリ13と、前記メモリ13から基本周
波数と高周波成分とを読み出してこれらを合成する合成
部14と、前記合成部14によって合成された結果に基
づいて振動体12を制御する制御部15と、を備える代
用原音発生装置10。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に喉頭摘出者用
に使用され、声帯の代用として原音を発生する代用原音
発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】人間が互いに意思や感情を伝達し合うコ
ミュニケーションの手段には、言語・文字その他の視覚
・聴覚に訴える身振り・表情・声などの手段があるが、
日常生活においては、音声による会話が果たす役割は非
常に大きい。音声は、コミュニケーションの手段として
言語情報を伝達するだけでなく、その音質によって、話
し手が誰であるかという情報や、音楽的情報をも表現す
ることができるからである。
【0003】人が声を出す際には、肺の呼吸運動によっ
て与えられる肺呼気(空気の流れ)を喉頭の中央にある
声帯において振動エネルギーに変換し、この振動によっ
て音声の基本となる音(声)を生成している(これを喉
頭原音と呼ぶ)。一方、人はこの原音(原音の最低周波
数は成人男性で約120Hz、女性で約240Hz程度
である)を、声道と呼ばれる咽頭、鼻腔、口腔等で共鳴
させることによって修飾し、さらに唇、舌、頬等の助力
によって所望の音声波形を生成している(これを構音と
呼ぶ)。
【0004】しかし、喉頭ガン等からの救命治療の手段
として喉頭の全部を摘出する手術(以下、喉頭全摘手術
と呼ぶ)が行われると、発声機能が失われてしまうこと
がある。つまり、喉頭全摘手術によって音声の生成に必
要不可欠な振動の発生源である声帯が摘出されてしまう
と、手術後の患者は喉頭原音を生成することができなく
なり発声が不可能になってしまうのである。しかし、喉
頭摘出者であっても、前述の共鳴、構音器官は残ってい
るので、喉頭原音の代わりとなる音(代用原音)を人工
的に供給することさえできれば、発声をすることが可能
となるのである。
【0005】そのような代用音声を発生させる手段の一
つに電気人工喉頭方式がある。図2は、電気人工喉頭の
使用態様を示した図である。電気人工喉頭方式は、電気
エネルギーを動力源とし、それによって発生するブザー
音(周波数45Hzから180Hz程度)を代用原音と
して用いる方式である。電気人工喉頭のスイッチを入れ
るとブザー音が発生する。喉摘出者は頸部に電気人工喉
頭を押し当て、その原音を頸部皮膚より舌根の方向に向
かって伝導させる。そして、この原音を鼻腔、口腔等で
共鳴させ、唇、舌、頬等を変形することによりある程度
の発声が可能となる。
【0006】一方、電気人工咽頭とは別のものとして、
人間の口腔内に取り付ける口腔内取り付け型代用音声装
置がある(平成10年特許願第68204号)が、これ
は、代用原音を発生する振動体と、この振動体を駆動す
る駆動装置と、からなる代用原音発生装置を口腔内に取
り付けるものである。
【0007】このような口腔内取り付け型代用原音発生
装置の利点は、両手を開放したことによって身振り・手
振りの自由が確保されるようにしたことである。即ち、
喉摘出者が代用原音による発声を行う場合には、その代
用原音装置を使用して発声することが可能となるが、通
常の健常者と同様に明瞭な発声を行うことは困難である
ので、コミュニケーションの手段として、音声による会
話だけでなく、手振りによるジェスチャーを付加するこ
とによって、自分の意思をより正確に伝えることが可能
となるのである。この点で、口腔内取り付け型代用原音
発生装置は、それまでの電気人工咽頭と比較した場合に
は、喉摘出者がよりコミュニケーションを図りやすい装
置であるといえるのである。
【0008】ここで、これらの代用原音発生装置は、代
用原音を提供することによって声帯を失った使用者の発
声を可能にするものであるが、従来の代用原音発生装置
では、代用原音を発生させる振動周波数が所定の値(例
えば、原音の最低周波数として、男性は約120Hz、
女性は約240Hz)に設定されていた。従って、代用
原音による音声は、振動周波数が同じであれば誰が発声
しても同じような音声になり、それは機械的で没個性的
な音声であった。
【0009】通常、複数人が「a」という同じ音を発声
した場合においては、それぞれの人によってその声質が
異なるため、「a」という音からだけでもその話し手が
誰であるかを判別することができる。しかし、従来の代
用原音装置では、誰が発声をしても、同じような音に聞
こえてしまい、発声者を認識することは難しかった。す
なわち、喉頭摘出者は、代用原音発生装置を利用するこ
とで、コミュニケーションのための言語情報を伝達する
ことはできるが、音声を通じて話し手が誰であるかとい
った情報を伝達することまではできなかったのである。
【0010】一方、喉頭摘出者が、手術前に本来自分が
持っていた声質とは全く異なる声質で会話をすること
は、喉頭摘出者自身や周囲の人間にも違和感をもたらす
がゆえに、積極的に代用原音による発声を行おうとする
インセンティブが働きにくいという問題もある。
【0011】従って、代用原音発生装置でも、手術前の
各個人の声質の特徴を考慮した原音を代用原音として再
現することができるようになれば、声がもつ人格の一部
分が手術前後でも変わらず、利用者は手術後の生活を自
分の人生の一部として違和感なく受け入れることができ
るようになるであろう。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような
課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、喉頭摘
出者が本来有していた声質を再現することができる代用
原音発生装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めの本発明者らの鋭意研究の結果、従来の代用原音発生
装置は、喉頭原音のうちの基本周波数のみを代用原音の
対象としており、これを基本とする多数の高周波成分
(倍音)を考慮したものではなかった点に着目し、基本
周波数に高周波成分を加味することによって、代用原音
を喉頭原音により一層近づけることができることを見出
し、本発明を完成するに至った。
【0014】通常、喉頭原音には、声帯の振動によって
200HZから3,000HZの基本振動数とこの整数
倍の周波数をもった多数の高周波成分(倍音)が含まれ
ている。図3は、基本周波数と高周波成分(倍音)の関
係を表した図である。この図から、振動数が同じ基本周
波数とその高周波成分(倍音)の合成音でも、高周波成
分の強さが異なると、異なる波形になる(声質が異なる
ようになる)ことがわかる。しかし、従来の代用原音発
生装置では、音の高低を決める基本振動数のみを発生さ
せており、各個人の声質を決める高周波成分を含ませて
いなかったため、個人が手術前に有していた声質とは異
なる声質の声になっていたのである。
【0015】即ち、本発明においては、以上のような目
的を達成するために、予め記録しておいた各自の音声に
基づいて代用原音を発生させることにより、手術前の声
質を再現できるようにしたことを特徴とする。
【0016】(1) 音声の原音を発生させるための振
動源となる振動体と、この振動体を駆動する駆動装置
と、を備える代用原音発生装置であって、前記振動体
は、人間音声の高周波成分が加味された代用原音を発生
することを特徴とする代用原音発生装置。
【0017】(2) 音声の原音を発生させるための
振動源となる振動体と、この振動体を駆動する駆動装置
と、を備える代用原音発生装置であって、基本周波数と
任意の高周波成分とを格納するメモリと、前記メモリか
ら基本周波数と高周波成分とを読み出してこれらを合成
する合成部と、前記合成部によって合成された結果に基
づいて前記振動体を制御する制御部と、を備え、喉頭音
声の再現性を向上させることを特徴とする代用原音発生
装置。
【0018】(3) 前記任意の高周波成分は、代用原
音と当該代用原音を使用して発せられた声との関係を表
す関数であって、代用原音を当該代用原音を使用して発
せられた声に変換する関数である声道伝達関数を使用
し、実際の音声を前記声道伝達関数によって逆変換する
ことによって得られる原音データ、に基づいて算出され
ることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の代用原
音発生装置。
【0019】(4) 前記任意の高周波成分は、前記発
声者自身の音声に応じて個別に予め設定されていること
を特徴とする上記(1)から(3)いずれか記載の代用
原音発生装置。
【0020】(5) 音声の原音を発生させるための振
動源となる振動体と、この振動体を駆動する駆動装置
と、を備える代用原音発生装置であって、基本周波数と
任意の高周波成分とを格納するメモリと、利用者の選択
に応じて前記メモリから前記基本周波数と前記高周波成
分とを読み出して、これらを合成する合成部と、この合
成部によって合成された結果に基づいて前記振動体を制
御する制御部と、を備え、利用者の任意選択によって当
該利用者に任意の声を発声させることができる変声装置
としての代用原音発生装置。
【0021】(6) 代用原音に、予め寄託された喉頭
音声に基づく音声スペクトルを重畳させることにより、
喉頭音声の再現性を向上させる方法。
【0022】(7) 基本周波数と任意の高周波成分と
を合成することにより、代用原音を喉頭原音に近づける
方法。
【0023】[用語の定義等]
【0024】<発声器官>図4は、人間が音声を発声す
るための発声器官について説明するための図である。肺
から吐き出される息は呼気となって、音声の主なエネル
ギー源となるが、この呼気は、喉頭にある声門(左右の
声帯によって形作られる狭い間隙)を通り、呼気の通路
である声道を抜けて、口から体外に出る。
【0025】「喉頭原音」とは、声帯の振動により発生
する音源をいう。人が話しをするとき、声帯の振動によ
って200Hz〜3,000Hzの振動数の基本音と高
周波成分とがほとんど一様な強さで発生する。「基本振
動数」とは、声帯の張力の調節によって定まる振動数を
いい、音の高低を決定する。これに対し、「高周波成
分」とは、前記基本周波数の整数倍の周波数をもった多
数の高周波成分をいい、発声者の音質を決定するもので
ある。
【0026】次に、「声道」とは、下顎・舌・唇・口蓋
帆などを動かすことによって形状の変化する音響管であ
る。「声道伝達関数」とは、音声発生のための原音(喉
頭原音・代用原音)を声道で共鳴することにより音声
(喉頭音声・代用音声)に変換するものであり、音響管
としての声道のもつ共鳴に対応する。基本振動数と高周
波成分とから構成される喉頭原音が、咽頭、鼻腔、口腔
等の声道で共鳴することにより振動数が変化し、人は個
々に特有な声質を有することが可能となる。
【0027】図5は、喉頭原音の特性と声道の伝達特性
との関係について説明するための図である。この図よ
り、人間の発声器官は、「喉頭原音」を音源とし、「声
道」をフィルタとした音響管として説明することができ
る。従って、我々の耳に届く音声は、喉頭原音の特性と
声道の伝達特性とによって特徴づけられている。
【0028】「喉頭音声」とは、代用原音ではなく、声
帯の振動により発声する喉頭原音を音源として発声され
た音声をいい、喉頭摘出手術前に、発声者の音声を記録
しておく場合などがある。
【0029】<喉頭原音の推定の計算方法>喉頭原音を
推定するためには、声道の伝達特性を算出する必要があ
る。喉頭原音の特性(L(f))と、声道の伝達特性(G
(f))とから、音声(V(f))は次の式に表される。
【0030】V(f)=G(f)・L(f)
【0031】また、代用原音発生装置を利用した場合に
は、代用原音の特性(L’(f))と、声道の伝達特性
(G(f))とから、代用音声(V’(f))は次の式に表さ
れる。
【0032】V’(f)=G(f)・L’(f)
【0033】以上より、喉頭原音の特性(L(f))は、
次の式により算出することができる。
【0034】V(f)=(V’(f)/L’(f))・L(f)
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の代用原音発生装置
の一実施形態について図を参照しながら説明する。
【0036】図1は、本発明に係る代用原音発生装置の
機能構成を示すブロック図である。代用原音発生装置1
0は、振動体12、振動体12を駆動する駆動装置1
1、及び振動体12と駆動装置11の間でデータを送受
信する回線17を備えている。また、駆動装置11は、
基本振動数と高周波成分に関するデータを予め格納した
メモリ13、メモリ13から読み出した基本振動数と高
周波成分に関するデータを合成する合成部14、合成部
14の合成結果に基づいて振動体12を制御する制御部
15、及び電源16を備えている。
【0037】振動体12は、代用原音を発生させる振動
部品であり、可聴音域(20Hzから20,000H
z)の振動を発生させることが可能な振動部品であれば
どのようなものであってもよい(例えば、スピーカーユ
ニットやピエゾ素子)。
【0038】また、正常者の喉頭原音はやや歪んだ三角
波であるので、駆動装置11の制御部15は、好適には
三角波に類似した駆動信号を振動体12に供給できるも
のが望ましい。このような制御部15は従来からよく知
られているためここでは説明を省略する。
【0039】メモリ12には、基本振動数と高周波成分
に関するデータが予め格納されており、本実施の形態に
おいては、声道伝達関数のデータや、手術前に記憶して
おいた発声者の喉頭音声のデータ等が格納されている。
さらに具体的には、声道伝達関数に関するデータとして
は、発声者の代用原音のデータや、代用音声のデータが
格納されている。
【0040】代用原音のデータは、代用原音発生装置1
0を使用して、ある周波数Xの代用原音を発生させ、代
用原音発生装置10にマイクをつけて代用原音の振動を
測定することができる。また、代用音声のデータは、使
用者が代用原音発生装置10を使用して実際に発声した
「あ」の振動数を、使用者の口の前にマイクを置くこと
によって、測定することができる。従って、これらのデ
ータを予め測定しておき、メモリに格納しておくことが
できる。
【0041】[動作]次に、本発明の代用原音発生装置の
動作について、図6のフローチャートを参照しつつ説明
する。
【0042】<声道伝達関数Xの算出>利用者によっ
て、代用原音発生装置10の電源16がオンになる。
【0043】合成部14は、予めメモリに記憶された代
用原音のデータと、代用音声のデータとを、それぞれ読
み出す(ステップA101)。次に、これらのデータに
基づいて、声道伝達関数を算出する(ステップA10
2)。代用原音V’(f)と、これを原音として口から発
声する代用音声L’(f)と、声道伝達関数G(f)との関
係は、次の式で表すことができる。
【0044】代用音声V’(f)=声道伝達関数G(f)・
代用原音の特性L’(f)
【0045】合成部14は、上記式から声道伝達関数G
(f)を求める(ステップA102)ことができるが、そ
の場合の式は、[G(f)=V’(f)/L’(f)]によっ
て求められる。
【0046】<喉頭原音の推定>次に、合成部14は、
予めメモリに記憶された喉頭摘出者の手術前の喉頭音声
V(f)を読み出す(ステップA103)。
【0047】次に、合成部14は、メモリから読み出さ
れた喉頭音声V(f)と、ステップA103で算出した声
道伝達関数G(f)とから、喉頭原音L(f)を推定する
(ステップA104)。その場合の式は、[L(f)=
(V(f)/V’(f))・L’(f)]によって求められ
る。
【0048】合成部14は、ステップA104で推定し
た喉頭原音の振動数データを制御部15に送信する。制
御部15は、このデータに基づいて振動体12を制御す
る。これにより、振動体12は、推定された喉頭原音を
発生させる(ステップA105)ことができるため、発
声者固有の音声を代用音声として発声することが可能と
なる。
【0049】以上より、喉頭摘出者は、手術前に自分が
有していた喉頭原音に近い代用原音を利用して、発声を
することが可能となる。すなわち、個人差のない画一的
な声質ではなく、本来自分が有していた声質を再現しな
がら発声することが可能となるのである。
【0050】また、上記実施の形態では、発声者自身の
声道伝達関数や手術前の喉頭音声をメモリに記憶してお
きこれを利用することとしたが、他人の声道伝達関数や
喉頭音声を選択して任意に代用音声を発声することも可
能である。すなわち、発声者は、代用原音の振動数を選
択することによって、声の高低を選ぶことができるだけ
でなく、高周波成分を選択することによって、任意に声
の声質を変えることができるので、変声器としての使用
が可能になる。このようなものは、他人の声を発声する
ものとして、アミューズメント施設等に設置することが
できる。
【0051】
【実施例】[実施例1]まず、代用原音発生装置を使用し
て、発声者の声道伝達関数G(f)を算出し、この声道伝
達関数G(f)と、予め記憶しておいた発声者の喉頭音声
V(f)とに基づいて、喉頭原音L(f)を推定するテスト
を行った。実施例1では、母音「あ」についてテストを
行った。以下にその結果を示す。
【0052】図7は、発声者が代用原音発生装置を利用
して「あ」を発声した場合の、代用音声「あ」のスペク
トルを表した図である。一方、図8は、代用音声「あ」
を発声した場合の、代用原音のスペクトルを表した図で
ある。この2つの図から、代用原音が声道を通過する際
に共鳴を受け、代用原音のスペクトルが代用音声のスペ
クトルへと変化していることがわかる。
【0053】図9は、上記2つのスペクトルから、
「あ」の声道伝達関数G(f)を求め、この結果を表した
ものである。なお、「あ」の声道伝達関数G(f)は、
[G(f)=代用音声V’(f)/代用原音L’(f)]の式
によって求めた。
【0054】次に、手術前に予め記憶しておいた喉頭音
声「あ」のスペクトルを図10に示す。図9で示した声
道伝達関数G(f)と、図10の喉頭音声「あ」のスペク
トルから、喉頭原音「あ」のスペクトルを推定すること
ができる。喉頭原音「あ」は、[喉頭原音L(f)=(喉
頭音声V(f)/代用音声V’(f))・代用原音L’
(f)]の式によって求めた。その結果を、図11に示
す。また、図12は、「あ」から推定した喉頭原音の波
形である。細線は計算したそのままの波形、また太線は
200Hzでカットオフしたローパスフィルタをかけた
波形である。後者から、基本となる波形が健常者のデー
タとして一般的に知られているように、単純な三角波で
なく、のこぎり波のようになっていることがわかる。
【0055】[結果の評価]図8の代用原音のスペクトル
と、図11の「あ」から推定した喉頭原音のスペクトル
とを比較すると、「あ」から推定した喉頭原音のスペク
トルには、高周波成分が重畳されていることがわかる。
すなわち、この推定された喉頭原音に基づいて代用原音
を発生させることとすれば、手術前の声質に近い音声の
発生を可能にすることができるので、本発明は、代用原
音発生装置及びその方法として有用であることがわか
る。
【0056】[実施例2]実施例2では、実施例1と同様
の方法で、各母音(「あ」「い」「う」「え」「お」)
についても喉頭原音の推定を行った。以下にその結果を
示す。
【0057】図13は、推定した喉頭原音の波形を各母
音毎に表した図である。この図から、「あ」「い」
「う」「え」「お」の各母音のうち、「う」以外の波形
は近似していることがわかる。そのため、「あ」の高周
波成分を重畳させれば、「い」「え」「お」については
個々人の喉頭原音に近付けることができることがわか
る。即ち、「あ」「い」「え」「お」については、それ
ぞれに対して個別に取り扱うことなく、同一の高周波成
分を使用することによって、発声者の生声により近い音
声を再現することができるのである。
【0058】さらに、発声者が「う」を発声する場合の
み、この発声意思を検知し、「う」の高周波成分を選択
して基本振動数に重畳させることとすれば、各母音に適
切な代用原音を発生させることが可能となる。
【0059】
【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発
明では、発声者の声道伝達特性と予め記憶しておいた自
己の音声に基づいて、基本周波数に高周波成分を加味す
ることができるため、代用原音発生装置において、喉頭
摘出者が有する手術前の声質を従来よりも忠実に再現す
ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る代用原音発生装置に好適な一実施
形態を示す概略図である。
【図2】電気人工喉頭の使用態様を示した図である。
【図3】基本周波数と高周波成分の関係を表した図であ
る。
【図4】人間の発声器官について説明するための図であ
る。
【図5】喉頭原音の特性と声道の伝達特性との関係につ
いて説明するための図である。
【図6】本発明に好適な実施形態に係る代用原音発生装
置の動作の流れを示すフローチャート図である。
【図7】代用音声「あ」のスペクトルを表す図である。
【図8】代用原音のスペクトルを表す図である。
【図9】「あ」の声道伝達関数を表す図である。
【図10】正常音声「あ」のスペクトルを表す図であ
る。
【図11】「あ」から推定した喉頭原音のスペクトルを
表す図である。
【図12】「あ」から推定した喉頭原音の波形を表す図
である。
【図13】「あ」から推定した喉頭原音の波形を母音毎
に表す図である。
【符号の説明】
10 代用原音発生装置 11 駆動装置 12 振動体 13 メモリ 14 合成部 15 制御部 16 電源 17 回線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C097 AA18 BB06 BB10 MM06 9A001 BB03 DD11 EE02 HH18 JJ09 KK25 KK60

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 音声の原音を発生させるための振動源と
    なる振動体と、この振動体を駆動する駆動装置と、を備
    える代用原音発生装置であって、 前記振動体は、人間音声の高周波成分が加味された代用
    原音を発生することを特徴とする代用原音発生装置。
  2. 【請求項2】 音声の原音を発生させるための振動源と
    なる振動体と、この振動体を駆動する駆動装置と、を備
    える代用原音発生装置であって、 基本周波数と任意の高周波成分とを格納するメモリと、 前記メモリから基本周波数と高周波成分とを読み出して
    これらを合成する合成部と、 前記合成部によって合成された結果に基づいて前記振動
    体を制御する制御部と、を備え、 喉頭音声の再現性を向上させることを特徴とする代用原
    音発生装置。
  3. 【請求項3】 前記任意の高周波成分は、代用原音と当
    該代用原音を使用して発せられた声との関係を表す関数
    であって、代用原音を当該代用原音を使用して発せられ
    た声に変換する関数である声道伝達関数を使用し、実際
    の音声を前記声道伝達関数によって逆変換することによ
    って得られる原音データ、に基づいて算出されることを
    特徴とする請求項1又は2記載の代用原音発生装置。
  4. 【請求項4】 前記任意の高周波成分は、前記発声者自
    身の音声に応じて個別に予め設定されていることを特徴
    とする請求項1から3いずれか記載の代用原音発生装
    置。
  5. 【請求項5】 音声の原音を発生させるための振動源と
    なる振動体と、この振動体を駆動する駆動装置と、を備
    える代用原音発生装置であって、 基本周波数と任意の高周波成分とを格納するメモリと、 利用者の選択に応じて前記メモリから前記基本周波数と
    前記高周波成分とを読み出して、これらを合成する合成
    部と、 この合成部によって合成された結果に基づいて前記振動
    体を制御する制御部と、を備え、 利用者の任意選択によって当該利用者に任意の声を発声
    させることができる変声装置としての代用原音発生装
    置。
  6. 【請求項6】 代用原音に、予め寄託された喉頭音声に
    基づく音声スペクトルを重畳させることにより、喉頭音
    声の再現性を向上させる方法。
  7. 【請求項7】 基本周波数と任意の高周波成分とを合成
    することにより、代用原音を喉頭原音に近づける方法。
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