JP2001129508A - 有機廃棄物の処理方法 - Google Patents

有機廃棄物の処理方法

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JP2001129508A
JP2001129508A JP31028299A JP31028299A JP2001129508A JP 2001129508 A JP2001129508 A JP 2001129508A JP 31028299 A JP31028299 A JP 31028299A JP 31028299 A JP31028299 A JP 31028299A JP 2001129508 A JP2001129508 A JP 2001129508A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】中間生成物の酢酸を有効に利用して有価資源を
得ると共に,生ごみを短時間でほぼ完全に分解する有機
廃棄物の処理方法を提供する。 【解決手段】超臨界水湿式酸化反応の前または後に有機
廃棄物またはその分解物に炭酸カルシウムまたは水酸化
カルシウムを添加し,有機廃棄物を超臨界水湿式酸化反
応により酸化分解する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,厨芥類廃棄物など
の有機廃棄物の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】家庭から排出される一般廃棄物は全国で
年間約4.8千万tで,主なものは紙類,プラスチック類,
厨芥(生ごみ)類である。そのうち厨芥類の占める割合は
地域によってかなりの相違があるものの約30〜40%とい
われ,一般廃棄物として処理される生ごみは,年間1,50
0〜2,000万トンに達している。また,これを1人1日あた
りでみると600〜1,500g(全国平均1,000g)であり,毎年3
〜5%の伸び率で増加しているといわれている。家庭か
ら排出される生ごみをデイスポーザー処理で下水に流す
欧米諸国と異なって,厨芥の多いことが日本の特徴とも
いわれる。厨芥類の発生量は1人1日当たり約200〜300g
である。
【0003】このため,焼却によって有機物を二酸化炭
素と水に変換処理する方法が導入され,それ以降現在ま
での約30年の間に,一般廃棄物の処理は,焼却処分が主
流となってきた。しかし,厨芥として排出される生ごみ
は発熱量が低く,しかも水分を大量(約80%)に含むた
め,燃焼効率が悪く,熱の利用効率も低い。また,焼却
によって排出される排ガスには,NOx,SOxなどの無機性
有害ガスの他に,微量ではあるが,多種類の有機物が含
まれていることが知られている。
【0004】〔湿式酸化〕水中に溶解しているか懸濁し
ている有機物を高温高圧(水の臨界温度以下)下において
酸化処理する方法を一般に湿式酸化法(WO)と呼ぶ。水中
にある有機物を焼却処理するためには,水分のろ過,蒸
発,乾燥の工程を経て固化し焼却炉で燃焼させる方法,
またはある程度まで蒸発濃縮をし,噴霧して炉内で燃焼
させる方法がある。湿式酸化はこれとは異なり水を多量
に含む原料をそのままの状態で,余熱酸化反応熱により
加熱し,その中に空気を吹き込んでやれば,空気中の酸
素によって有機物の酸化反応すなわち酸化分解処理が行
われるということが基本原理である。
【0005】湿式酸化の特徴として以下のことをあげる
ことができる。 (1)水分を大量に含む生ごみであっても乾燥させる必要
がなく,かつ発生した熱は直接水相に伝わるため,熱水
あるいは蒸気として利用する場合には高エネルギー利用
効率が期待できる。
【0006】(2)硫黄,窒素,ハロゲンなどはイオンと
して水相に捕捉されるので後段の処理が容易である。ま
た,ダイオキシン,NOx, SOx等の有害物質が発生しな
い。
【0007】〔湿式酸化に関する従来の技術〕湿式酸化
に関する研究は,1944年アメリカにおいてZimmermannが
パルプ廃黒液の処理に適用したことに端を発している。
日本では,1968年に横浜市に下水汚泥処理を対象とした
500m3/d規模の実プラントが建設された。また,産業廃
棄物処理への適応の試みは,1969年通産省工業技術院に
おけるシアン系廃液,硫化ソーダ系廃液処理を対象とし
たパイロットプラント実験において成果を得たのを皮切
りとし,その後,約30プラント,し尿・下水処理を含め
ると約60プラントが国内で稼働している。また,国内外
で汚泥,産業排水,有害物質および生し尿等の湿式酸化
分解処理に関する開発が行われている。
【0008】湿式酸化処理法は水を大量に含む汚泥,下
水,産業排水およびし尿などの処理に対して有効であ
る。しかし,既存の湿式酸化では温度が低いため有機物
の分解が十分でなく,低級カルボン酸の蓄積やアンモニ
アの残存が起こるために,後段に生物処理等の2次,3
次の処理設備を必要とする。これに対して,分解率の向
上を目的として,温度,圧力はそのままで触媒を用いる
酸化処理に関する研究が行われるようになった。しか
し,触媒を用いる湿式酸化法では,有機物の酸化分解が
なお完全ではなく,後処理工程を必要とする。また,触
媒として使用される銅イオン等の重金属類が人体や他の
生物に悪影響を及ぼすことから,使用済触媒を分離する
ことが必要となり,完成された方法としては未だ十分と
は言えない。
【0009】〔超臨界水湿式酸化(Supercritical Water
Oxidation)〕超臨界水湿式酸化(SCWO)法は,基本的に
は湿式酸化であり,水の臨界点以上で有機物を分解する
方法である。つまり,超臨界水を溶媒とし,酸素によっ
て有機物を酸化分解して炭酸ガスと水に変換するという
有機物の処理方法である。超臨界水は,非極性有機物と
も均一に溶け合うなど多くの有機物を溶解し,さらには
酸素などの気体と任意の割合で単一相で混合するという
特異性質があるため,有機物の酸化分解における反応場
として非常に優れた特徴をもつ。
【0010】ここで,超臨界水湿式酸化反応と(亜臨界
水)湿式酸化反応とを比較することにより,超臨界水湿
式酸化反応についての特徴を述べる。 (亜臨界水)湿式酸化では,(1)有機物を酸化する空気
あるいは酸素の水への溶解度が不十分であるため有機物
を完全酸化できない場合が多い,(2)水相と気相の2
相間の物質移動を考慮しなければならないために反応容
器を機械的に攪拌する必要がある,(3)有機物の分解
に限界があるために2次処理設備が必要になる,(4)
回収できる蒸気温度が低く(代表的な温度は250℃以
下),蒸気タービン発電での利用価値が低い,などの欠
点がある。一方,超臨界水湿式酸化では,(1)超臨界
水中への酸素,有機物の溶解力が高く,超臨界水が単一
相であるために,多くの場合攪拌が不必要となる。
(2)原料中の有機物濃度が2%以上あれば,必要な反
応温度を保ちつつ連続運転が可能とされ,有機物濃度が
5%以上あれば,熱エネルギーの回収が可能であるなど
特徴を有する。
【0011】〔SCWOに関する従来の技術〕SCWOは,最近
10〜15年間に開発された技術であるが,これに関しては
数多くの研究があり,その中でも,難分解有機物や有害
有機物の完全分解処理のための研究が多くみられる。Mo
dellらは塩素系有機廃棄物や,下水汚泥の処理を行い,
99.99%のオーダーで出発物質を分解できること,さら
にパルプ排液にも応用できることを実証しいているが,
SCWOに関するほとんどの研究は有機物の完全酸化解処理
のみを目的としたものであり,有機廃棄物の超臨界水湿
式酸化処理によって生成する中間生成物の利用に関する
研究も見当らない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,水の超臨界
領域において,生ごみなどの有機廃棄物を酸化分解する
処理方法に関するものである。有機廃棄物の超臨界水湿
式酸化処理の過程においては中間生成物として酢酸が生
成するが,酢酸は難分解であるという問題点がある。
【0013】本発明は,このような従来の問題点に着目
してなされたもので,中間生成物の酢酸を有効に利用し
て有価資源を得ると共に,生ごみを短時間でほぼ完全に
分解する有機廃棄物の処理方法を提供することを目的と
している。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め,生ゴミを超臨界条件下での酸化分解により処理を行
い,その際に生成する酢酸の有効利用を目的として選択
的に酢酸を生成する処理条件を検討し,次に酢酸にカル
シウム剤を添加して処理水中から酢酸を酢酸カルシウム
として除去する排水浄化法,およびその逆に積極的に酢
酸を生成させて酢酸カルシウムとして利用する方法につ
いて発明を行った。
【0015】すなわち,請求項1の本発明に係る有機廃
棄物の処理方法は,有機廃棄物を超臨界水または亜臨界
水湿式酸化反応により酸化分解する有機廃棄物の処理方
法であって,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の前
または後に有機廃棄物またはその分解物とともにカルシ
ウム化合物および/またはマグネシウム化合物を存在さ
せることを,特徴とする。
【0016】本発明に係る有機廃棄物の処理方法におい
て,処理する有機廃棄物としては,生活廃棄物である厨
芥類廃棄物などの生ごみが適しており,生ごみは牛脂そ
の他の動物性生ごみであっても,人参その他の植物性生
ごみであってもよい。カルシウム化合物としては,炭酸
カルシウムまたは水酸化カルシウムが適している。カル
シウム化合物としては廃棄物である蠣殻やホタテ等の貝
殻が利用可能であり,貝殻廃棄物の有効利用を達成する
一石二鳥の廃棄物処理が可能である。カルシウム化合物
および/またはマグネシウム化合物は,イオン化した状
態のものであってもよい。マグネシウム化合物として
は,炭酸マグネシウムまたは酸化マグネシウムが適して
いる。
【0017】請求項1の本発明に係る有機廃棄物の処理
方法により,有機廃棄物を短時間でほぼ完全に分解する
とともに,酢酸カルシウムを得ることができる。生成す
る酢酸カルシウムは,高性能融雪剤として利用できる有
価資源である。このように単なる酸化分解処理でなく部
分酸化により生成する物質の有効利用をも対象とした例
は見られない。
【0018】請求項2の本発明に係る有機廃棄物の処理
方法は,有機廃棄物を超臨界水または亜臨界水湿式酸化
反応により酸化分解する有機廃棄物の処理方法であっ
て,超臨界水湿式酸化反応の前に有機廃棄物とともに,
処理する有機廃棄物から生成が予想される酢酸モル数に
対して2分の1モル数の炭酸カルシウムを存在させるこ
とを,特徴とする。
【0019】請求項2の本発明に係る有機廃棄物の処理
方法では,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の前に
有機廃棄物とともに炭酸カルシウムを存在させることに
より,有機廃棄物を短時間でほぼ完全に分解するととも
に,有機廃棄物の分解で生成した酢酸を酢酸カルシウム
に変えることができる。但し,生成が予想される酢酸モ
ル数に対して2分の1モル数を超える量の炭酸カルシウ
ムを存在させた場合には,酸化カルシウムの生成量が減
少するため,好ましくない。
【0020】請求項3の本発明に係る有機廃棄物の処理
方法は,有機廃棄物を超臨界水または亜臨界水湿式酸化
反応により酸化分解する有機廃棄物の処理方法であっ
て,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の前に有機廃
棄物とともに,処理する有機廃棄物から生成が予想され
る酢酸モル数に対して2分の1モル数以上1モル数以下
の水酸化カルシウムを存在させることを,特徴とする。
【0021】請求項3の本発明に係る有機廃棄物の処理
方法では,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の前に
有機廃棄物とともに水酸化カルシウムを存在させること
により,有機廃棄物を短時間でほぼ完全に分解するとと
もに,有機廃棄物の分解で生成した酢酸を酢酸カルシウ
ムに変えることができる。但し,生成が予想される酢酸
モル数に対して1/2モル数を超える量の水酸化カルシ
ウムを存在させた場合には,酸化カルシウムの生成量が
減少するため,好ましくない。
【0022】請求項4の本発明に係る有機廃棄物の処理
方法では,有機廃棄物を超臨界水または亜臨界水湿式酸
化反応により酸化分解する有機廃棄物の処理方法であっ
て,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の後に有機廃
棄物の分解物とともに,反応により生成した酢酸モル数
に対して2分の1モル数以上のカルシウム化合物および
/またはマグネシウム化合物を存在させることを,特徴
とする。
【0023】請求項4の本発明に係る有機廃棄物の処理
方法では,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の後に
有機廃棄物とともにカルシウム化合物,マグネシウム化
合物またはその両方を存在させることにより,有機廃棄
物を短時間でほぼ完全に分解するとともに,有機廃棄物
の分解で生成した酢酸を酢酸カルシウム,酢酸マグネシ
ウムまたはその両方に変えることができる。
【0024】請求項1,2,3または4の本発明に係る
有機廃棄物の処理方法で,前記超臨界水湿式酸化反応
は,処理する有機廃棄物の全有機炭素を完全に二酸化炭
素に酸化するのに理論上必要な酸素供給率を100%と
するとき,30%以上200%以下の酸素供給率のも
と,400℃以上470℃以下の温度で行うことが好ま
しい。この場合,反応時間は,10秒以上3分以下が好
ましい。
【0025】本発明に係る有機廃棄物の処理方法で,有
機廃棄物が牛脂その他の動物性有機物の場合,酢酸カル
シウムの生成量を増やすためには,酢酸の生成量が最大
となる反応条件,すなわち,酸素供給率100乃至15
0%,反応温度400℃,反応時間30秒で超臨界水湿
式酸化反応を行うことが好ましい。有機廃棄物が人参そ
の他の植物性有機物の場合,酢酸カルシウムの生成量を
増やすためには,酢酸の生成量が最大となる反応条件,
すなわち,酸素供給率50%,反応温度400℃,反応
時間30秒で超臨界水湿式酸化反応を行うことが好まし
い。
【0026】本発明に係る有機廃棄物の処理方法で,酢
酸の完全酸化分解のためには、過剰な酸素供給,高温度
の過酷な反応条件、反応時間の延長が必要となり,酸素
供給率150%,反応温度450℃,反応時間3分で超
臨界水湿式酸化反応を行うことが好ましい。
【0027】
【実施例】以下に言うTOCとは,total organic carbon
(全有機炭素)の略称であり,排水中に含有される有機物
の濃度を示すものである。各自治体により基準値は異な
るが,TOCを基準値以下にしなければ排水はできない。
従って,TOCを低くすることが出来なければ,更なる排
水処理設備が必要となるために,コストが高くなる。ま
た,水充填率は反応容器内容積に対する水の体積割合で
ある。
【0028】酸化剤には30%の過酸化水素を用いた。酸
化剤の供給量については,炭素量を基準として定義し
た。即ち,H2O21モルから1/2モルのO2が供給されると
し,試料中の全有機炭素(TOC)を完全にCO2に酸化する
のに必要とする理論量を酸素供給率100%とした。した
がって,試料の元素組成(C:H:Oなど)によって,完全に
酸化分解するに必要な酸素量は異なり,必ずしも酸素供
給率100%で十分とは限らない。
【0029】生ごみの主成分は炭水化物,脂肪,蛋白質
であり、植物類,肉類,魚類の食料品である。それぞれ
の組成はCNS分析装置により測定し,また,含水率は赤
外線水分計により測定した。代表的な食料品の元素組成
(C,N,S)を表1に示す。その他の元素としては水
素,酸素などである。
【0030】
【表1】
【0031】例えば,植物性物質の主成分は一般式とし
て(CH2mOm)Nで表わされる多糖類であり,酸化反応
は,(CH2mOm)+nO2→nCO2+mH2Oのように進行し,
完全酸化に必要な酸素分子は炭素のモル数と1:1に近い
比になると推測される。すなわち,酸素供給率100%の
時に酸素は十分と予測される。
【0032】〔実験装置および実験手順〕実験に用いた
小型反応容器と加熱炉の概要を図1および図2にそれぞれ
示す。小型反応容器1の内容積は47mlであり,反応室2
の内張り3の材質はハステロイC-276である。加熱炉4
は,毎分100℃の高速昇温が可能な商用電源を利用した
誘導加熱方式のものである。
【0033】実験手順について図3に示す。実験試料に
は未乾燥のものを用いたが 試料量は乾燥重量で0.5gと
した。まずこれを反応容器1に過酸化水素水と共に入れ
素早く高圧バルブ5を取り付け密閉した。次に反応容器
1を誘導加熱炉4に設置し,振とうさせながら昇温速度
40℃/minで加熱した。所定の時間経過後,反応容器1
を誘導加熱炉4からすばやく取り出し,ファンで冷却し
た。100℃程度にまで冷却するに要した時間は加熱に要
した時間と同程度である。冷却後,まず発生ガスを採取
した。ガス採取は,高圧バルブ5のガス取出し口6にチ
ュ−ブを取り付け,水上置換により行った。炭酸ガスの
水への溶解を極力避けるため,置換水に飽和食塩水を用
いた。発生ガス量は1000mlメスシリンダで測定した。続
いて反応容器を開けてビ−カに反応後の液を移し,この
溶液の分析を行った。TOCを測定した後,その成分をGC-
MSにより分析した。
【0034】〔実験条件〕実験条件を表2 にまとめて示
す。生ごみの種類による反応性の相違を調べるために,
基準反応条件下で実験を行った。また,野菜類の人参,
肉類の牛脂および魚類のトロを取り上げ,反応温度,反
応時間,酸素供給率および水充填率の影響を調べるため
に,それぞれ表2に示すような範囲で実験を行った。
【0035】
【表2】
【0036】基準条件については,酸化発熱により反応
温度が変化しないようにするため試料量は乾燥重量で0.
5g一定とし(実験に用いた試料は乾燥させていないもの
である),反応時間(所定温度到達後の保持時間)は10分
とした。反応温度は植物性生ごみと動物性生ごみにおい
てそれぞれ400℃と420℃とした。酸素供給率は植物性生
ごみの場合100%,動物性生ごみの場合150%とした。水
の充填率 (反応容器の全容積に対する蒸留水と過酸化水
素との混合物(過酸化水素水)の割合) は30%とした。
【0037】〔実験結果(植物性生ゴミ)〕表3に,酸
素供給率を100%とした場合,反応温度400℃,反応時間
10分の条件下で得られた結果を示す。液相の残存TOC測
定値から求めたTOC分解率が99.5%になりほぼ完全分解
が得られた。その時のガス組成もほとんどが二酸化炭素
で,不完全酸化による一酸化炭素は僅か存在しているが
炭化水素は検出されなかった。これらの結果から,多糖
類を主成分とする植物性生ごみについては 酸素供給率
が100%で酸素量は十分であると考えられる。
【0038】
【表3】
【0039】〔植物性生ごみの種類による反応性の相
違〕基準反応条件下で,植物性生ごみの種類による反応
性の相違を調べた結果を表4に示す。どの植物性生ごみ
の場合も99.6%程度のTOC分解率が得られた。また,発
生ガス組成もほとんどが二酸化炭素であった。このこと
から,これらの植物性生ごみは酸化されやすく,10分以
内にどの試料もほぼ完全酸化分解することが分かった。
また,この条件では植物性生ごみの種類による酸化分解
率の相違はほとんど見られなかった。
【0040】各試料とも反応後の液相のpHは5.5−6.1で
弱酸性を示した。GC-MSにより液相の生成物を分析した
結果,どの試料においても,酢酸のピークのみが検出さ
れた。したがって,液相の酸性は残存している酢酸のた
めと考えられた。
【0041】以上の結果から,植物性生ごみは酸化され
易く,種類による酸化分解のしやすさの相違はほとんど
みられず,400℃では反応時間10分で99.6%程度の高TOC
分解率が得られることがわかった。
【0042】〔反応パラメーターの影響(植物性生ゴ
ミ)〕表4に示したように,植物性生ごみの種類により
分解率や未分解残存有機物に相違が認められなかった。
そこで人参を代表として取り上げ,反応パラメーターの
影響について検討した。酸素供給率が100%で酸素量は
ほぼ十分であることが分かったので,以下の反応温度と
反応時間の検討は酸素供給率100%の条件下で行った。
【0043】
【表4】
【0044】〔反応温度の影響〕反応時間を10分とし,
反応温度を380−450℃で変化させた場合の酸化分解率に
及ぼす反応温度の影響を図4に示す。380℃では,TOC分
解率は94.7%と比較的低いが,400℃になると急激に99
%以上に上昇し,さらに温度が450℃まで上がるとこの
分解率はほとんど100%になった。このことから,温度の
上昇によって酸化反応が強く促進されるものの反応時間
を10分とした場合に分解率が99%以上となる温度は400
℃以上であることが分かった。
【0045】〔反応時間の影響〕反応温度400℃におい
て,反応時間を0−20分の範囲で変化させ,TOC分解率に
及ぼす影響を調べた結果を図5に示す。 誘導加熱炉を用
いて所定の温度に達するまでの昇温過程および冷却過程
にそれぞれ10分程度を要するため短い反応時間での結果
には誤差が大きいと考えられるが,図4に示すように,
反応時間0すなわち昇温して所定の温度に到達後直ちに
冷却した場合においてもTOC分解率は92−93%になっ
た。このことから,所定の温度に達する前の昇温過程に
おいて反応はすでに開始し,かなりの程度進行している
と考えられる。また,所定の温度に達した後,TOC分解
率は反応時間の増加とともに増加し,10分で99.5%とな
るが,その後の変化は遅くなる。これらの結果から,99
%以上のTOC分解率を得るためには,400℃の条件下で,
約10分の反応時間が必要であるが,反応時間をさらに長
くしても,分解率を上昇させる効果は小さいことが分か
った。これは残存する酢酸が難分解であることによると
考えられる。
【0046】〔酸素供給率の影響〕図6(a)に,反応温度
420℃,反応時間10分で, TOC分解率に及ぼす酸素供給
率の影響を調べた結果を示す。酸素供給率が50%の時
は, TOC分解率は76.3%で低い。その時のガス組成を図
6(b)に示す。 酸素は残っておらずしかも不完全酸化分
解で生成する一酸化炭素と炭化水素(メタン)が多量検出
されている。 酸素供給率を100%にまで増加させると9
9.86%の分解率が得られ,さらに200%にまで増加させ
るとTOC分解率は99.99%になり,酸素供給率の増加によ
って酢酸の分解がさらに進行したことが分かる。
【0047】酸素供給率50%の場合に,TOC分解率は50
%以上の76.3%になった。これは,図6(b)に示すよう
に,一酸化炭素とメタンの生成によって液相中の有機炭
素が減少したことによる。この場合について反応後の炭
素の分布をみると,液相中に全体の約1/4が存在し,気
体として約3/4が存在している。さらに,発生したガス
組成をみると,CO2:CO:CH4≒74:22:4であった。
【0048】〔肉類生ごみの湿式酸化〕 〔完全分解に必要な酸素供給率〕完全分解に要する酸素
供給率を検討するために,牛脂を試料とし,反応温度を
450℃と高くして,反応時間10分で,酸素供給率を100乃
至150%の範囲で変化させて実験を行った。この結果を
図7に示す。図7(a)に示すように,酸素供給率を100%か
ら150%まで増加させるとTOC分解率は84.5%から99.0%
に増加した。すなわち,酸素供給率が100%と120%では
牛脂を完全酸化するに必要な酸素量を満たしていない。
このことは,図7(b)に示すように発生ガス中に不完全酸
化分解による一酸化炭素と炭化水素(メタン)が検出され
たことからも確かめられた。酸素供給率が150%になる
と,一酸化炭素ならびに炭化水素はほとんど検出され
ず,酸素量はほぼ十分になることを示している。
【0049】これは,酸素供給率が炭素を基準として決
めたものであるためで,実際には,水素とその他の元素
も酸素を消費することによる。前述したように植物性の
ものは主成分が多糖類であるので,元素組成として酸素
と水素はH2Oとしてほぼバランスしているから,酸素供
給率が100%で十分である。しかし,牛脂の主成分であ
る脂肪はグリセリンと高級脂肪酸が脱水して結合した化
合物グリセリドであり,その炭素と水素の比はほぼ1:2
であるので, (CH2)n+1.5O2=nH2O+nCO2のように酸化さ
れるに必要な酸素分子は炭素のモル数の約1.5倍にな
る。したがって,牛脂の場合,酸素供給率150%で酸素
がほぼ十分になるものと考えられる。
【0050】また,蛋白質はポリアミドで,この単量体
はα−アミノカルボン酸であるから,蛋白質を主成分と
する肉類についても炭素と水素の比はほぼ1:2である。
そこで, 酸素供給率を150%に設定し,反応時間10分,
温度420℃の条件下で,豚もも肉について実験を行っ
た。得られたTOC分解率は99.25%であり,蛋白質の場合
も, 酸素供給率150%で酸素が十分であることが分かっ
た。
【0051】酸素供給率150%の状態で酸素が十分であ
ることが明らかとなったことから,以下の検討は酸素供
給率150%の条件下で行った。 〔肉類生ごみの種類による反応性の相違〕肉類生ごみの
種類による反応性の相違を調べた結果を表5に示す。ま
ず,TOC分解率についてみると,豚肉類と牛肉類は99%
以上,鳥肉類は98%台,脂肪を主成分とするものは96.5
−97.5%である。これらは,反応温度が420℃であるに
もかかわらず400℃の食物性生ごみの分解率に比べて少
し低い。反応後のガス組成については,酸素のほかは二
酸化炭素がほとんどであった。これらの結果から,肉類
生ごみも酸化されるが,植物性生ごみに比べると難分解
であること,また,肉類生ごみの中で蛋白質を主成分と
する蛋白質類と脂肪を主成分とする油脂類とを比較する
と,後者の方がTOC分解率が低く,そのなかでも牛脂のT
OC分解率が最も低いことが分かった。
【0052】
【表5】
【0053】次に,反応後の液相のpHについてみると,
油脂類の反応後の溶液のpHが最も低く,3台の酸性であ
る。また蛋白質類の反応後の溶液のpHは6前後で中性付
近である。これについて,GC-MSにより液相の生成物を
分析した。その結果,どの試料においても酢酸のみのピ
ークが見られた。したがって,酸性になった理由は酢酸
の残存によることがわかった。
【0054】〔牛脂の酸化分解性〕上述のように,肉類
生ごみ中では油脂,特に牛脂が酸化分解を受けにくいこ
とが分かった。そこで,牛脂を対象として,反応温度,
反応時間,酸素供給率および水充填率の影響を調べた。
【0055】〔反応温度の影響〕図8(a)に TOC分解率に
及ぼす反応温度の影響を示す。420℃以下ではTOC分解率
は97%以下と比較的低いが,450℃になると99%以上に
上昇し,さらに温度が470℃まで上がるとこの分解率は
ほとんど100%になった。このことから,牛脂の場合,
温度上昇により酸化反応が強く促進されるものの,反応
時間10分で分解率が99%以上となる温度は450℃以上で
あることが分かった。これは動物性有機物を酸化する場
合大量の酢酸を生成し,酢酸は酸化を受けにくいためよ
り高い温度が必要であることによると考えられる。
【0056】〔反応時間の影響〕図9に,反応温度を450
℃とした場合のTOC分解率に及ぼす反応時間の影響を示
す。反応時間0分においてTOC分解率は約95%であり,5
分で分解率は99%になるが,その後の変化は遅くなる。
この結果を図5に示す人参の場合と比較すると,反応時
間5分まではTOC分解率は牛脂の方が高く,これは,反応
温度の相違によるものと考えられる。しかしそれ以降で
は牛脂の分解率が低くなっており,これは,TOCのほと
んどを占める酢酸の生成が牛脂の場合に多く,この分解
が困難であることによると考えられる。
【0057】〔残存TOC(酢酸)の分解〕温度の上昇によ
り残存TOC即ち酢酸の酸化分解が促進されることが分か
ったが,供給酸素量を増加させることによっても酢酸の
分解を促進させることが可能と考えられる。そこで残存
酢酸をさらに分解させる条件について検討を行った。
【0058】図10は酸素供給率が150%と200%の場合に
ついて,TOC分解率の温度依存性を調べた結果である。
この結果から,温度の増加により残存TOCは減少する
が,酸素供給率の増加によっても残存TOCを大幅に減少
させることができることがわかる。例えば,420℃で酸
素供給率が150%の場合,TOCは約1000ppm即ちTOC分解率
は96%と低い。しかし,酸素供給率を200%に増加させ
ると,約250ppm(TOC分解率99%以上)になった。さら
に,温度450℃で,酸素供給率を150%から200%に増加
させるとTOCは250から20ppmまで減少し,TOC分解率は9
9.1%から99.9%まで増加した。このように,油脂の酸
化分解では多量の酢酸が生成するが,分解率をさらに上
げる必要がある場合は反応温度の上昇あるいは過剰酸素
の供給によって可能であることが分かった。
【0059】〔魚類生ごみの湿式酸化〕 〔魚の種類による反応性の相違〕酸化分解率に及ぼす魚
の種類の影響,および酸素供給率の影響を図11に示す。
まず,魚の種類によるTOC分解率への影響についてみる
と,酸素供給率が150%以上の場合,大きな違いが見ら
れなかった。 酸素供給率100%の場合にマグロ赤身の分
解率が高いのは,難分解の脂肪分が少ないためと考えら
れる。
【0060】次に,酸素供給率によるTOC分解率への影
響について見ると, 酸素供給率100%の場合はどの試料
のTOC分解率も低いが,酸素供給率が150%になると約99
%になる。これは魚身も蛋白質と脂肪を主体としている
ので肉類と同様に酸素供給率150%で酸素が十分になるこ
とを示している。このことは図12に示すガスの組成から
もわかる。すなわち,酸素供給率100%の状態では一酸
化炭素およびメタンガスが存在し,酸素供給率150%にな
るとこれらの不完全酸化分解によるガスはほとんどなく
なった。酸素供給率が200%に増加すると,TOC分解率は
99.6%に上昇した。この結果は,過剰の酸素の供給によ
り残存TOCの酸化分解が促進したことを示す。
【0061】図13に,トロについて反応温度の影響を示
す。TOC分解率は420℃では97%で比較的低く,450℃以上
になると99%以上の高い分解率となる。この傾向は牛脂
の場合と類似しており,これは,前述したように油脂を
多量に含む動物性のものを酸化する場合難分解な酢酸を
多量に生成するため,分解にはより高い温度が必要であ
ることによると考えられる。
【0062】〔魚類の小骨,背骨および身と骨の混合物
の酸化〕反応時間10分,反応温度420℃,酸素供給率150
%および200%で, 魚の小骨と背骨を比較したTOC分解率
の結果を図14に示す。身の場合との比較を行うためトロ
についての結果も同時に示した。酸素供給率が150%の
場合の身(トロ)のTOC分解率が多少低い傾向が認めら
れる。脊推動物の骨は,動物の種類,年齢などで多少異
なるところがあるが,大体65%の無機物(主に水酸アパ
タイトを主体とするリン酸カルシウム)と35%の有機物
(主にコラ−ゲン蛋白)から成っている。この有機物の
成分は身と同じ主に蛋白質であるため小骨と背骨ではTO
C分解率の違いがみられず,トロの場合に多少分解率が
低くなったものと考えられる。しかし,図15に示すよう
に小骨と背骨の場合に発生したガス量と身の場合に発生
した量を比較すると,骨の方が少ない。これは,試料量
を同じにしているため,骨の場合は有機物量が少ないこ
とによる。さらに,身と骨のそれぞれの場合の発生ガス
の割合についてみると約3:1になっている。これは骨を
構成する有機物の割合と一致している。
【0063】以上,生ごみを構成する食物の種類(植物
性の野菜類,動物性の肉類と魚類)による超臨界水湿式
酸化分解の難易,反応の相違(あるいは類似)および反応
の特徴を明らかにするため,まず,試料として22種類の
生ごみについて実験を行った。次に,野菜類の人参,肉
類の牛脂および魚類のトロを取り上げ,反応パラメータ
ーが酸化反応に及ぼす影響について検討した。その結
果,
【0064】(1) 生ごみの完全酸化分解に必要な酸素供
給率は,食物性生ごみの場合100%,動物性生ごみの場
合150%であった。
【0065】(2) 植物性生ごみは酸化されやすく,種類
による酸化分解のしやすさの相違はほとんどみられな
い。動物性生ごみ(魚を含む)も酸化されるが,植物性生
ごみに比べると難分解である。種類による酸化分解のし
やすいさに大きな相違はないが,脂肪は肉類(魚を含
む)よりTOC分解率が低く,なかでも牛脂は最も酸化さ
れにくい。
【0066】(3) すべての試料について,最後まで残存
する中間有機生成物は酢酸であった。などが明らかとな
った。そこで,次に植物性生ゴミの代表として人参を,
そして動物性生ゴミとしては最も分解し難かった牛脂を
選択し,酢酸の利用法について検討を行った。
【0067】〔実験装置および実験手順〕実験装置に
は,ステンレス製のバッチ式小型反応容器(内容積6cm
3)を用いた。反応器の加熱は溶融塩恒温槽を用いた。
【0068】カルシウム剤を添加するにあたっては,反
応前に添加する場合と反応後に添加する場合の2通りに
ついて実験を行った。反応前に添加する場合には,試料
と過酸化水素水ならびにカルシウム剤を一緒に反応容器
に入れて反応させた。一方,反応後に添加する場合は反
応後の液相中にカルシウム剤を添加・反応させた。
【0069】〔実験条件〕実験条件を表6に示す。試料
重量は,乾燥重量が0.067gとなるようにした。実験は
温度400℃,反応時間10秒〜90秒,酸素供給率10〜150%
の条件で行った。また,酢酸カルシウムを生成させる実
験は,酢酸が多量に得られる反応条件下で行った。
【0070】
【表6】
【0071】一方,酢酸除去のための反応条件について
は,反応温度は人参および牛脂と人参の混合系の場合40
0℃,420℃とし,牛脂の場合400℃〜450℃とした。反応
時間は,牛脂と人参の場合30秒〜10分とし,混合系の場
合30秒〜3分とした。酸素供給率は,人参の場合100%と
し,牛脂の場合100〜150%とした。また,混合系の場合
はその混合比により100%,あるいは110%とした。
【0072】〔酢酸を大量に生成させる反応条件〕 〔牛脂の酸化による酢酸の生成〕反応温度400℃で,酸
素供給率を100〜150%の範囲で変化させて酢酸濃度の経
時変化を調べた。結果を図16に示す。酢酸濃度が最大に
なる条件は,反応温度400℃では反応時間30秒,酸素供
給率100〜150%であることが分かる。また,酢酸以外の
物質については,図17に示すように,酸素供給率が100%
においてはC3-C5などの低級脂肪酸やアセトール,ケト
ン類などの不純物が残存しているが,酸素供給率が150%
になるとこれらの不純物はほとんどなくなる。さらに,
図18(a)に示したように, TOC分解率は酸素供給率が
100%のとき低く,150%になると高くなる。
【0073】したがって,酢酸濃度が最大になる反応条
件は反応温度400℃,反応時間30秒酸素供給率100〜150
%であり,高濃度かつ高純度酢酸を得る反応条件は反応
温度400℃,反応時間30秒,酸素供給率150%であること
が分かった。
【0074】〔人参の酸化による酢酸の生成〕反応温度
は400℃,酸素供給率を30〜100%の範囲で変化させ,反
応時間を10秒〜90秒の範囲で変化させた。結果を図19に
示す。酸素供給率を低下させることにより,多量の酢酸
が得られることが分かった。その中でも,反応時間30
秒,酸素供給率50%の条件において最も高い酢酸濃度を
得ることができた。その他で比較的高い酢酸濃度が得ら
れる条件としては,酸素供給率30〜50%で反応時間30〜
90秒の場合,ならびに酸素供給率70%で反応時間30秒の
場合であった。
【0075】以上の結果から,牛脂と人参のいずれにお
いても湿式酸化により比較的高い分解率を得ると同時に
酢酸収率も高いことが示された。これは,生ごみからの
酢酸の回収・利用法として本方法が高い可能性を有する
ことを示唆する結果である。
【0076】〔酢酸カルシウムの生成〕 (1)牛脂の酸化により生成する酢酸を原料とした場合 〔カルシウム源として水酸化カルシウムを用いた場合〕
酢酸と水酸化カルシウムは以下のような反応により酢酸
カルシウムを容易に生成することから,まず,カルシウ
ム剤として水酸化カルシウムを用いた。
【0077】2CH3COOH+Ca(OH)2→(CH3COO)2Ca+2H2O
【0078】この水酸化カルシウムの添加方法について
は,反応前ならびに反応後の二通りの実験を行った。酢
酸の生成反応条件については,前述したように酢酸が比
較的高純度かつ高濃度で生成した条件(反応時間30秒,
反応温度400℃,酸素供給率150%)とした。図20に,同
条件で生成した酢酸に水酸化カルシウムを添加して得ら
れた物質の1H-NMRスペクトルを示す。比較として,酢酸
標準試料と酢酸カルシウム標準試料の1H-NMRスペクトル
も同図中に示す。水酸化カルシウムを添加しない場合は
2.07ppmの位置に酢酸のメチル基のプロトンのシグナル
が検出された。一方,水酸化カルシウムを添加した場
合,反応前添加および反応後添加の両場合ともに,酢酸
のメチル基のプロトンのシグナルは見られず,1.91ppm
の位置に酢酸カルシウムのメチル基のプロトンのシグナ
ルが検出された。また,図21に,水酸化カルシウムの添
加前後の生成物のGC-MSクロマトグラムを示す。水酸化
カルシウムを添加した場合には,添加方法に係わらず,
酢酸のピークは大幅に減少している。さらに,図22に,
反応後の溶液の水を蒸発させて得られた固形分をXRDに
より分析した結果を示す。これにも,水酸化カルシウム
の添加方法に係わらず,酢酸カルシウムの1水塩と0.5水
塩のピ−クが検出された。
【0079】以上の分析結果から,水酸化カルシウムの
添加により,反応前に添加する場合および反応後に添加
する場合のいずれにおいても,酢酸カルシウムの生成を
確認することが明らかとなった。
【0080】〔カルシウム剤添加量の影響〕図23に,酢
酸カルシウム濃度とカルシウム添加量との関係を示す。
図23(a)に炭酸カルシウムを添加した場合について示
す。炭酸カルシウムの添加により,「(1)炭酸カルシウ
ムを酸化分解反応開始前に添加した場合」と,「(2)酸
化分解反応終了後室温で添加した場合」とで,酢酸カル
シウムの生成に大きな相違がみられる。すなわち,(1)
の場合は0.05 Mの添加で最大となりそれ以上添加すると
大きく減少するのに対し,(2)の場合は0.05 M以上添加
してもほとんど変化がみられない。また,(1)の場合の
最大生成量が(2)の場合よりも少ない。
【0081】酢酸カルシウムは2CH3COOH+CaCO3→(CH3CO
O)2Ca+CO2+H2Oのように生成するので,酢酸と炭酸カル
シウムの当量比は2:1である。前述のように,反応時間3
0秒で,酢酸の最大生成量は0.10M(6000ppm)であるの
で,炭酸カルシウムの当量は0.05Mであり,この添加量
で酢酸カルシウムの生成量が最大となっている。 (2)の
場合にこの0.05M以上炭酸カルシウムを添加しても酢酸
カルシウム濃度がほぼ一定であることは炭酸カルシウム
の当量が0.05Mであることの実験による証明であり,残
存した酢酸はほぼ全てが酢酸カルシウムになったことを
示している。それに対し(1)の場合に0.05 M以上の添加
で収率が低下したことは,炭酸カルシウムが酢酸の生成
反応に何らかの影響を及ぼしたことを示唆する。従っ
て,反応前に炭酸カルシウムを添加する場合には,予想
される酢酸生成モル数に対してその1/2モル数の炭酸カ
ルシウムを添加すること,一方,反応後に炭酸カルシウ
ムを添加する場合には,生成した酢酸モル数の1/2モル
数以上の炭酸カルシウムを添加することでで最大収率の
酢酸カルシウムが得られることが明らかとなった。
【0082】図23(b)に,水酸化カルシウムを添加した
場合の結果を示す。酢酸カルシウムが最大生成量を示す
時の添加量及びさらに添加量を増加させたときの酢酸カ
ルシウム生成量の減少挙動において相違がみられてい
る。
【0083】以上の結果から,酸化分解反応の前あるい
は反応後に水酸化カルシウムあるいは炭酸カルシウムを
添加することにより,生成した酢酸はほぼ全てが酢酸カ
ルシウムになるが,反応前に添加する場合には最適添加
量が存在することが分かった。具体的には反応前に水酸
化カルシウムを添加する場合には予想される酢酸生成モ
ル数に対してその1/2〜1モルの範囲内で水酸化カルシウ
ムを添加すること,一方,反応後に水酸化カルシウムを
添加する場合には,生成した酢酸モル数の1/2モル数以
上の水酸化カルシウムを添加することでで最大収率の酢
酸カルシウムが得られることが明らかとなった。
【0084】上述のように,反応前にカルシウムを添加
する場合にある一定量以上のカルシウムを添加すると,
酢酸カルシウムの生成量が急激に減少した。この理由を
調べるために,GC-MSによってその生成物を分析した。
図24に,炭酸カルシウムの添加量による生成物のGC-MS
クロマトグラムの変化を示す。この結果から,炭酸カル
シウムの添加量が0.05M(酢酸カルシウム生成量が最大に
なる添加量)の時,中間生成物は炭酸カルシウムを添加
しない場合とほぼ同様であったが,0.07M以上になる
と,グリセリンやフェノ-ルなどの,炭酸カルシウムが
存在しない場合にはみられなかった化合物が生成してい
ることがわかる。さらに,0.07Mの添加量で,反応時間
を10秒に短縮した実験における生成物をみると,油相
(ヘキサン相)中に,ナフタレンなどの各種芳香族化合物
が検出された。水酸化カルシウムを添加した場合におい
ても図25に示すように同様の結果が得られた。
【0085】以上の結果から,ある量以上のカルシウム
剤の添加により牛脂の酸化分解反応が抑制され,加水分
解反応などの酸化反応以外の反応が顕著になることが分
かった。
【0086】(2)人参の酸化による酢酸カルシウムの
生成 牛脂の場合において,反応前にカルシウム剤を過剰に添
加すると,酸化反応以外の反応が顕著になり,酢酸カル
シウムの生成量が減少するという結果を得た。そこで本
実験ではカルシウム剤を反応後に添加した。
【0087】まず,酢酸が最も高い濃度で得られる条件
(反応温度400℃,反応時間30秒,酸素供給率50%)下
で,カルシウム剤の添加による酢酸カルシウムの生成実
験を行った。カルシウム剤の添加前後の生成物の1H−NM
Rスぺクトルを図26に示す。この結果から,添加するカ
ルシウム剤に関しては水酸化カルシウムおよび炭酸カル
シウムともに,1.91ppmの位置に酢酸カルシウムのメチ
ル基のプロトンシグナルが検出された。また,GC-MSに
より分析した反応生成物を図27に示す。カルシウム剤を
添加した場合においては,添加しない場合において見ら
れる酢酸のピークが検出されないことから,反応により
生成した酢酸は全て酢酸カルシウムに転換したものと考
えられる。
【0088】〔カルシウムの添加による酢酸の除去〕こ
れまでの検討は酢酸を多量に生成させて酢酸カルシウム
として回収することに関してであったが,生ごみを燃料
として熱エネルギ−に変換・利用することを目的とする
場合には完全酸化分解が望ましい。しかし,中間生成物
である酢酸は難分解であり,完全酸化分解には過剰の酸
素を必要とするため,工業的にはある程度の有機物が残
存することになる。そこで,酢酸濃度と回収率(あるい
は除去率)の関係,酢酸の完全除去条件および酢酸以外
の残存有機物と排水基準等について検討した。
【0089】〔残存酢酸濃度とカルシウム添加濃度が酢
酸除去率に及ぼす影響〕 〔牛脂を用いた実験〕最大酢酸濃度が得られる反応条件
である反応温度400℃,反応時間30秒,酸素供給率150%
の場合において酢酸の除去状况について調べた。この結
果を表6(b)に示す。これから,水酸化カルシウムな
らびに炭酸カルシウムの添加のいずれの場合において
も,生成する酢酸に対して当量のカルシウム剤を添加す
ることにより,残存酢酸濃度は6000ppmから150ppmまで
大幅に減少し,この結果98%の酢酸除去率が得られるこ
とが分かった。さらに,カルシウム剤を過剰に添加する
と酢酸を完全に検出限界以下に除去できることが分かっ
た。
【0090】〔人参を用いた実験〕牛脂を用いた場合の
実験結果を踏まえ,残存酢酸濃度ならびにカルシウム剤
の添加濃度(当量および過剰)を変化させた。その結果
を表7に示す。まず,酢酸に対して当量のカルシウム剤
を添加した場合についてみると,3900ppm以上と比較的
高い酢酸濃度の場合には150ppmまで大幅に減少し,約97
%の酢酸除去率が得られた。一方3000ppm以下の低い酢
酸濃度の場合においては酢酸の除去率は残存酢酸濃度の
減少とともに低下し,酢酸濃度が600ppmまで減少する
と,残存酢酸の除去は20%にまで減少してしまった。し
かし,カルシウム剤を過剰に添加することにより酢酸濃
度に関係なくほぼ完全に除去された。
【0091】
【表7】
【0092】〔牛脂と人参の混合系を用いた実験〕表8
に,反応温度420℃の場合,各条件下でカルシウム剤の
添加による酢酸の変化を示す。牛脂と人参の場合と同様
に,酢酸濃度が高い場合はカルシウム剤を当量添加する
ことにより97−98%と高い除去率が得られた。酢酸濃度
が低い場合は当量の添加濃度では酢酸の除去率は低い。
しかし,残存酢酸濃度に関係なく,カルシウム剤を過剰
に添加することにより,残存した酢酸はほぼ完全に除去
されることが分かった。
【0093】
【表8】
【0094】以上の結果から,牛脂,人参および牛脂と
人参の混合系のいずれにおいてもカルシウム剤の添加に
より酢酸を完全に除去できることが分かった。図28に,
牛脂の場合について,反応温度450℃,酸素供給率120%
および150%における反応後の液相中に残存する酢酸以
外のTOC濃度の経時変化を示す。酸素供給率150%の場合
では3分以後,酢酸以外の残存TOC濃度がほぼ0になっ
た。この結果から,生ごみの中でも最も難分解な牛脂に
おいても,450℃,酸素供給率150%の条件下で約3分反
応させれば排水中の残存TOCをほぼ0にすることが可能で
あることが分かった。以上の結果から,牛脂の場合に
は,排水中のTOC濃度をほぼ0にすることが可能となるこ
とが分かった。
【0095】人参の場合について,酸素供給率100%,4
20℃の条件下で,酢酸を除いた残存TOC濃度の経時変化
を図29に示す。この結果から,反応時間の増加ととも
に,残存TOC濃度は急速に減少し,反応時間が3分では,
約100ppmであり,これは排水基準以下の数値である。
【0096】牛脂と人参混合系の場合については,混合
系における酸化分解反応性はそれぞれを単独に処理した
ときと大きな相違はないことから,排水中のTOC濃度は
排水基準以下になる。
【0097】本発明は厨芥類以外にも,籾殻の処理にも
適応可能である。実験結果を図30に示す。反応温度400
℃,酸素供給率100%の条件では,酸素供給率50%と比較
して酢酸が選択的に生成可能であることがわかる。更に
は,例えば道路脇の雑草などを原料としても酢酸を生成
可能であり,その酢酸を原料として酢酸カルシウムを製
造し,道路の融雪剤として利用することも可能である。
さらには様々な有機物が処理可能と考えられる。
【0098】これまでは,主に超臨界水湿式酸化法によ
る厨芥類の処理について記載したが,(亜臨界水)湿式
酸化法によっても,酢酸が生成可能であることを以下に
示す。試料には前記記載と同様の籾殻を使用した。実験
条件は反応温度350℃,酸素供給率110%とした。結果を
図31に示す。超臨界水湿式酸化法と同様に酢酸が最も多
く生成していることがわかる。但し,その他の成分は超
臨界水湿式酸化条件よりも多く生成しており,更なる処
理が必要な場合も考えられる。しかし,酢酸以外の生成
物であるシュウ酸やギ酸などもカルシウムの添加により
カルシウム化合物となって排水中から除去できるため
に,排水中の残存TOC濃度を低下させることが可能であ
る。
【0099】また,生成した酢酸から酢酸カルシウムな
どの酢酸化合物を生成する方法としては,カルシウム化
合物以外にも,酸化マグネシウムなどのマグネシウム化
合物の利用も可能である。結果を図32に示す。マグネシ
ウム化合物の添加量と共に酢酸が酢酸マグネシウム化合
物として回収されていることを示しており,マグネシウ
ム化合物であってもカルシウム化合物と同様に酢酸を酢
酸化合物として回収可能であることがわかる。酢酸マグ
ネシウムは,酢酸カルシウムと同様に,道路などの融雪
剤として利用することができる。
【0100】
【発明の効果】本発明に係る有機廃棄物の処理方法で
は,過剰な酸素供給,高温度の過酷な反応条件,反応時
間の延長が必要となり,生ごみなどをはじめとする有機
廃棄物を短時間でほぼ完全に分解するともに,中間生成
物の酢酸から有価資源の酢酸カルシウムを得ることがで
きる。処理の際,カルシウム塩として蠣殻やホタテ等の
貝殻廃棄物を使用した場合には,有機廃棄物の処理と同
時に貝殻廃棄物の処理も可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において実験に用いた小型反応
容器の縦断面図である。
【図2】本発明の実施例において実験に用いた加熱炉の
正面図である。
【図3】図1の小型反応容器および図2の加熱炉を用い
た実験手順を示すフローチャートである。
【図4】TOC分解率に及ぼす反応温度の影響(人参の
場合)を示すグラフである。
【図5】TOC分解率に及ぼす反応時間の影響(人参の
場合)を示すグラフである。
【図6】(a)TOC分解率に及ぼす酸素供給率の影響
(人参の場合)を示すグラフ,(b)ガス組成に及ぼす
酸素供給率の影響(人参の場合)を示すグラフである。
【図7】(a)TOC分解率に及ぼす酸素供給率の影響
(牛脂の場合)を示すグラフ,(b)ガス組成に及ぼす
酸素供給率の影響(牛脂の場合)を示すグラフである。
【図8】(a)TOC分解率に及ぼす反応温度の影響
(牛脂の場合)を示すグラフ,(b)ガス組成に及ぼす
反応温度の影響(牛脂の場合)を示すグラフである。
【図9】TOC分解率に及ぼす反応時間の影響(牛脂の
場合)を示すグラフである。
【図10】TOC分解率に及ぼす反応温度と酸素供給率
の影響を示すグラフである。
【図11】魚類生ごみのTOC分解率に及ぼす酸素供給
率の影響を示すグラフである。
【図12】ガス組成に及ぼす魚の種類および酸素供給率
の影響を示すグラフである。
【図13】TOC分解率に及ぼす反応温度の影響(トロ
の場合)を示すグラフである。
【図14】魚骨のTOC分解率に及ぼす酸素供給率の影
響を示すグラフである。
【図15】魚身,骨および背骨の酸化分解反応後のガス
組成を示すグラフである。
【図16】酸素供給率を変化させた場合の酢酸濃度に及
ぼす反応時間の影響(牛脂の場合)を示すグラフであ
る。
【図17】酸素供給率100%と150%の場合におけ
る牛脂の酸化中間生成物のGC−MSクロマトグラムで
ある。
【図18】牛脂のTOC分解率に及ぼす酸素供給率の影
響を示すグラフである。
【図19】酢酸濃度に及ぼす反応時間と酸素供給率の影
響(人参の場合)を示すグラフである。
【図20】生成物の 1H−NMRスペクトル(牛脂の場
合)を示すグラフである。
【図21】水酸化カルシウムを添加した場合と添加しな
い場合における生成物のGC−MSクロマトグラムの比
較(牛脂の場合)のグラフである。
【図22】Ca(OH)2 を添加した場合,水を蒸発し
て得られた固体のX線回折線図(牛脂の場合)である。
【図23】(a)酢酸カルシウムの生成量に及ぼす炭酸
カルシウム添加濃度の影響(牛脂の場合)を示すグラ
フ,(b)酢酸カルシウムの生成量に及ぼす水酸化カル
シウム添加濃度の影響(牛脂の場合)を示すグラフであ
る。
【図24】酸化分解反応前に炭酸カルシウムを添加した
場合における生成物のGC−MSクロマトグラム(牛脂
の場合)を示すグラフである。
【図25】酸化分解反応前に水酸化カルシウムを添加し
た場合における生成物のGC−MSクロマトグラム(牛
脂の場合)を示すグラフである。
【図26】カルシウム剤の添加前後における水相中の生
成物の 1H−NMRスペクトル(人参の場合)を示すグ
ラフである。
【図27】水酸化カルシウムの添加前後でのGC−MS
クロマトグラム(人参の場合)を示すグラフである。
【図28】反応時間による酢酸以外の残存TOC濃度の
変化(牛脂の場合)を示すグラフである。
【図29】酢酸以外の残存TOCと反応時間との関係
(人参の場合)を示すグラフである。
【図30】酢酸濃度および酢酸純度に及ぼす反応時間と
酸素供給率の影響を示すグラフである。
【図31】各種有機酸濃度に及ぼす反応時間の影響を示
すグラフである。
【図32】酢酸から酢酸カルシウム/マグネシウムへの
転化率に及ぼすCaCO3 ,MgCO3 /MgO添加の
影響を示すグラフである。
【符号の説明】
1 小型反応容器 2 反応室 3 内張り 4 加熱炉 5 高圧バルブ 6 ガス取出し口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 守谷 武彦 宮城県仙台市青葉区中山七丁目2番1号 東北電力株式会社研究開発センター内 (72)発明者 榎本 兵治 宮城県仙台市太白区鈎取4−5−16 (72)発明者 佐藤 尚洋 宮城県亘理郡亘理町逢隈田沢字鈴木掘59番 地の4 (72)発明者 金 放鳴 宮城県仙台市青葉区三条町19番1号 東北 大学国際交流館F905 Fターム(参考) 4D004 AA03 AA04 AC04 BA10 CA39 CB04 CB33 CC02 CC11 DA01 DA02 DA03 DA06 DA20

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有機廃棄物を超臨界水または亜臨界水湿式
    酸化反応により酸化分解する有機廃棄物の処理方法であ
    って,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の前または
    後に有機廃棄物またはその分解物とともにカルシウム化
    合物および/またはマグネシウム化合物を存在させるこ
    とを,特徴とする有機廃棄物の処理方法。
  2. 【請求項2】有機廃棄物を超臨界水または亜臨界水湿式
    酸化反応により酸化分解する有機廃棄物の処理方法であ
    って,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の前に有機
    廃棄物とともに,処理する有機廃棄物から生成が予想さ
    れる酢酸モル数に対して2分の1モル数の炭酸カルシウ
    ムを存在させることを,特徴とする有機廃棄物の処理方
    法。
  3. 【請求項3】有機廃棄物を超臨界水または亜臨界水湿式
    酸化反応により酸化分解する有機廃棄物の処理方法であ
    って,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の前に有機
    廃棄物とともに,処理する有機廃棄物から生成が予想さ
    れる酢酸モル数に対して2分の1モル数以上1モル数以
    下の水酸化カルシウムを存在させることを,特徴とする
    有機廃棄物の処理方法。
  4. 【請求項4】有機廃棄物を超臨界水または亜臨界水湿式
    酸化反応により酸化分解する有機廃棄物の処理方法であ
    って,超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応の後に有機
    廃棄物の分解物とともに,反応により生成した酢酸モル
    数に対して2分の1モル数以上のカルシウム化合物およ
    び/またはマグネシウム化合物を存在させることを,特
    徴とする有機廃棄物の処理方法。
  5. 【請求項5】前記超臨界水または亜臨界水湿式酸化反応
    は,処理する有機廃棄物の全有機炭素を完全に二酸化炭
    素に酸化するのに理論上必要な酸素供給率を100%と
    するとき,30%以上200%以下の酸素供給率のも
    と,400℃以上470℃以下の温度で行うことを特徴
    とする請求項1,2,3または4記載の有機廃棄物の処
    理方法。
  6. 【請求項6】前記超臨界水湿式酸化反応は,酸素供給率
    100乃至150%,反応温度400℃,反応時間30
    秒で行うことを特徴とする請求項5記載の有機廃棄物の
    処理方法。
  7. 【請求項7】前記超臨界水湿式酸化反応は,酸素供給率
    50%,反応温度400℃,反応時間30秒で行うこと
    を特徴とする請求項5記載の有機廃棄物の処理方法。
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