JP2001124714A - X線光電子分光分析方法 - Google Patents

X線光電子分光分析方法

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JP2001124714A
JP2001124714A JP30920199A JP30920199A JP2001124714A JP 2001124714 A JP2001124714 A JP 2001124714A JP 30920199 A JP30920199 A JP 30920199A JP 30920199 A JP30920199 A JP 30920199A JP 2001124714 A JP2001124714 A JP 2001124714A
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Hiromitsu Takase
博光 高瀬
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【解決手段】 本発明は、電子線と単色化X線とを同時
に照射する絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子分光分析
法において、電子線照射条件の変化に対する複数の任意
の光電子ピーク間のエネルギー差の変化率が0となる電
子線照射条件で光電子スペクトルの本測定を行なう絶縁
物又は高抵抗試料のX線光電子分光分析法を提供する。 【効果】 XPS測定時の絶縁物又は高抵抗試料の試料
表面の帯電状態を定量的に評価することが可能となる。
その結果に基づいて、電子線照射条件を系統的に決定す
るため、測定者の経験と勘に頼ることなく、常に最適な
電子線照射条件で、単色化X線による絶縁物又は高抵抗
試料の分析を行なうことが可能となった。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線光電子分光分
析法(以下XPSという。)に関するものであり、特
に、絶縁物又は高抵抗試料を分析する際に試料に照射す
る電子線の照射条件の最適化の方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】XPSは試料表面に既知エネルギーのX
線ビームを照射することで、試料表面元素から光電子を
放出させ、その光電子の運動エネルギーと強度(個数)
を測定する分析法である。光電子運動エネルギーより元
素の種類を特定し、光電子の強度より元素の濃度を知る
ことができる。XPSで情報が得られる深さは約10nm
程度である。さらに、2次電子の運動エネルギーの規定
値よりの微妙な変化(ケミカルシフト)より注目原子の
化学結合状態を推定することが可能である。
【0003】XPSは、プローブとして荷電粒子(電
子、イオン等)を用いていないために、種々の表面分析
装置の中では絶縁物又は高抵抗試料の測定に強い測定法
として知られている。
【0004】しかし、測定試料の絶縁性が高い場合に
は、XPS測定であっても帯電現象が発生する。これ
は、光電子が放出されるため、試料が電子不足となり正
に帯電するためである。そのため、光電子は試料表面か
ら放出されにくくなり、放出された光電子も試料表面の
正電位のために減速されてしまう。このように、試料が
絶縁性である場合には、正確な光電子の運動エネルギー
が測定できなくなり、正確に化学状態等の同定ができな
くなる場合があった。
【0005】試料表面で発生する帯電の程度は、照射す
るX線の種類によっても異なる。
【0006】非単色化X線を用いると、X線が試料ばかり
でなく装置部材にも照射され、試料以外から発生する多
量の光電子、オージェ電子、2次電子が試料表面に供給
されるため試料が帯電しにくいことが知られている。
【0007】ただ、非単色化X線を用いたXPS測定で
は、連続X線成分も照射されるため、光電子ピーク幅が
広くなり、微小なピークはノイズに隠れてしまい、元素
の化学結合状態、微量不純物の検出等の微妙な測定は困
難である。
【0008】一方、単色化X線は、X線のエネルギー幅
が狭いこと、照射されるX線に連続X線が含まれないこと
及び照射されるX線に長波長の固有X線を含まないことよ
り、光電子の運動エネルギーの微小な変化量(ケミカル
シフト)を検出することができ、そのため、試料の化学
状態を精密に測定することができる。
【0009】このように、精密な測定のためには絶縁物
又は高抵抗試料であっても単色化X線を用いることが必
要であるが、単色化X線は装置の構成上、照射部位が試
料表面に限定されているため、装置部材に由来する電子
の供給が不足し、激しい帯電を引き起こすことが知られ
ている。
【0010】単色化X線を用いた絶縁物又は高抵抗試料
の測定の際に帯電を解決する方法として従来、外部から
電子を供給し、X線照射により試料表面から放出される
光電子との間に電子収支の平衡状態を形成する方法が行
われている。
【0011】この方法には種々の応用例があり、例え
ば、分析室内の真空に微量の希ガスを導入してそれから
放出される電子を利用するもの(特開平03―2694
8号公報)や、試料に近接する金属部分にX線を照射し
てそこから発生する電子を利用するもの(特開平03―
113354号公報)が開示されているが、いずれも供
給する電子量、照射範囲の制御の点で十分とはいえな
い。
【0012】また、他の帯電補正方法として、間接的に
発生させた電子ではなく、電子銃により電子を試料表面
に直接照射する方法も従来から用いられている。
【0013】しかし、電子の照射領域がX線の照射領域
よりも大きくなる場合には試料面内で電位分布が発生
し、X線の照射領域が500μm以下では光電子ピーク
の半値幅が大きくなるという問題が起きる。この問題を
解決するために、試料上1mm〜2mm離れた位置に金属製
のグリッドを配置する方法が(米国特許公開第4680
467号)に開示されている。
【0014】また、電子の照射領域がX線の照射領域よ
りも大きくなるとX線照射領域の帯電が十分に補正され
なくなり、中和条件を制御するのが困難になるとの報告
がなされており(Paul E. Larson, J. Vac. Sci. Techn
ol. A16 (6), Nov/Dec, 1998)、この問題を解決する方
法として、正イオンの照射領域が電子の照射領域より大
きくなるような条件で正イオンと電子を同時に照射し
て、正イオンによるスパッタリングで2次電子を多量に
発生させ、このスパッタによる2次電子と電子銃により
供給される電子により測定面の帯電を回避する方法(特
開平10―246712号公報)が開示されている。ま
た、磁場内に電子源を設置して低エネルギーの電子を試
料の帯電している部分のみに選択的に供給する方法も報
告されている(J. E. Fulghum, J. S. A . Vol.6, No.
1, 1999)。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記のように絶縁物又
は高抵抗試料を測定する際の帯電を補正する方法は数々
あるが、いずれの方法であっても、試料表面の帯電状況
を正確に把握することが重要である。
【0016】従来は、光電子ピークの半値幅に注目しな
がら電子照射条件の調整を行なっていた。これは、帯電
が補正されると光電子ピークの半値幅が小さくなること
を利用したものである。
【0017】しかし、この方法は定性的であり、測定者
の技量に頼るところが大きく、熟練した測定者であって
も、電子線照射条件決定のために長時間を要することも
しばしばであった。その上、決定された電子線照射条件
が最適であるか、それとも調整の余地があるかを判断す
ることは熟練者であっても難しかった。
【0018】電子線照射条件がずれたまま単色化X線に
よる本測定を行なうと光電子ピーク間の結合エネルギー
差が変化するので(Hitoshi Tomizuka and Akimi Ayam
e, Analytical Science Vol 10, 1994)、内部標準ピー
ク(例えば吸着炭化水素に由来するClsピークなど)を
基準として光電子の正確な結合エネルギーを決定するこ
とが不可能な場合があった。例えば、XPSの検出限界
程度の微量元素の測定、又は、微妙なケミカルシフトの
測定を行なう場合、数時間〜一昼夜にわたってデータの
積算を行なうことも珍しくない。このような測定で、電
子線照射条件がずれていると、多大な労力と時間を費や
した分析結果を最悪の場合解釈することができなくな
る。
【0019】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもの
であり、単色化X線による絶縁物又は高抵抗試料のXP
S測定時の帯電補正をおこなうための電子の照射条件を
系統的に決定する方法を提供することを目的とする。
【0020】
【問題を解決するための手段】試料が導電体の場合には
帯電は発生しないため、光電子はそのエネルギー準位で
決定される値で真空中に放出される。その結果、複数の
光電子間のエネルギー差(例えば、C1sピークとO1sピー
クの間のエネルギー差等)はそれぞれ固有の値を示す。
【0021】しかし、絶縁物又は高抵抗試料の測定にお
いて、帯電補正が充分でない場合は複数のエネルギー準
位から励起される光電子間のエネルギー差は試料で発生
する複雑な帯電を反映し固有値とならない。この場合、
光電子間のエネルギー差は主に帯電の補正状況(電子線
の照射条件)により変化する。その変化とは、例えば、
同一試料を複数回測定する場合には測定のたびごとに異
なった値となったり、同一測定中においても電子線の照
射時間とともに変化したりする。
【0022】ここで、絶縁物又は高抵抗試料のXPS測
定を行なった場合の代表的な帯電のメカニズムをまとめ
る。 XPSで検出される光電子は試料表面数nm〜数10nm
の深さの領域から放出され、表面ほどその放出量が多く
なる。このため、測定試料が絶縁物又は高抵抗試料の場
合、試料の厚さ方向に電位勾配が形成される場合があ
る。 また、元素間のイオン化断面積の差によっても電位勾
配に差が生じる場合が考えられ、より深い領域で生成し
た光電子ほど、試料表面から放出されるまでにそのエネ
ルギーが変化する可能性がある。 試料表面に照射される電子線の照射領域とX線の照射
領域が一致しない場合には、試料面内での電位分布が発
生する可能性が考えられる。運動エネルギーの小さい光
電子(結合エネルギーの大きい光電子)は発生領域が浅
いため、表面の電位分布の影響を受けやすいと考えられ
る。
【0023】これらの種々の帯電現象により光電子は発
生箇所とその通過経路の電位により減速される。
【0024】例えば、運動エネルギーの大きい光電子
(結合エネルギーの小さい光電子)には深い位置で生成
される光電子も含まれるため、その光電子の試料の外に
到る通過経路において前記の厚さ方向で発生する電位勾
配の影響を受けている可能性が高い。
【0025】このように、帯電のメカニズムはある程度
解明されているが、帯電現象を完全に補正して、導電物
同様に測定を行なうことは現在もなお困難である。
【0026】そこで、絶縁物又は高抵抗試料の帯電補正
は、過剰量の電子を供給して測定領域から外部へ余分に
電子が流れる定常状態を作り出して測定領域の電位分布
を安定化させることを目標として行われる(田中彰博、
Journal of Surface Analysis Vol. 2, P. 194, 199
6)。すなわち、電子の供給が十分である場合には試料内
での電位分布は定常状態に達し、複数のエネルギー準位
から励起される光電子間のエネルギー差は固有の値(導
電体の固有値とは異なる。)になると考えられる。
【0027】本発明者らは、数々のXPSによる絶縁物
及び高抵抗試料の測定実験を通して、系統的に、電位分
布の定常状態を得るXPSによる絶縁物又は高抵抗試料
の分析法を発明するに到った。
【0028】すなわち、本発明は、電子線と単色化X線
とを同時に照射する絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子
分光分析法において、電子線照射条件の変化に対する複
数の任意の光電子ピーク間のエネルギー差の変化率が測
定誤差の範囲内で0となる電子線照射条件で光電子スペ
クトルの本測定を行なう絶縁物又は高抵抗試料のX線光
電子分光分析法を提供する。
【0029】前述のように光電子ピーク間のエネルギー
差は電子線の照射条件に依存して変化し、さらに電位分
布が定常状態となると、光電子ピーク間のエネルギー差
は電子線の照射条件が多少変化したとしても一定とな
る。よって、電子線の照射条件の変化量に対する光電子
ピーク間のエネルギー差の変化量の比率、すなわち光電
子ピーク間のエネルギー差の変化率が0となれば、絶縁
物又は高抵抗試料において電位分布の定常状態が達成さ
れたことになる。
【0030】試料の帯電が補正された条件を見つける手
段としては、例えば、電子線の照射条件と光電子ピーク
間のエネルギー差との関係を調査し、“電子線照射条件
vs光電子ピーク間エネルギー差”のグラフを作成し、そ
の傾き(光電子ピーク間のエネルギー差の変化率に対
応)が0となる電子線照射条件を見つける等が考えられ
る。
【0031】ただ、単色化X線により得られた光電子ピ
ークエネルギーには誤差が含まれる。
【0032】この誤差は、電子線照射条件が電位分布の
定常状態に近づいてきて、光電子ピーク間エネルギー差
の変化率が0に近くなってきた時(例えば、図4の0.06
mA付近)に光電子ピーク間エネルギー差の変化率に影響
を及ぼす。そのために、光電子ピーク間エネルギー差の
変化率が見かけ上0にならないことがある。
【0033】単色化X線による光電子スペクトル測定に
含まれる誤差の絶対値は最大で0.05eVであるので、ピー
ク間エネルギー差の変化率の計算の分子であるピーク間
エネルギー差の絶対値が0.05eV以下であれば、実質的に
光電子ピーク間エネルギー差の変化率が0と判断して良
い。
【0034】また、このような場合に、引き続き測定を
行ない、更に光電子ピーク間エネルギー差の変化率を算
出し、それらが0を中心とした狭い範囲で分布すること
を確認すればより確実な判断ができる。
【0035】また、ピーク間エネルギー差を求めるため
の2本の光電子ピークは、ピークエネルギーがある程度
離れたものを選択することが望ましい。後述するが、2
本のピークはエネルギー差が40eV以上離れていること
が望ましい。
【0036】より具体的に本発明の手順を示すと、本発
明は帯電補正のための電子線と単色化されたX線ビーム
とを同時に照射する絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子
分光分析法において、(1)測定試料の光電子ピークよ
り光電子ピークの組をn組選択する工程と、(ただしn
は2以上の整数である。)(2)電子銃を電子線照射条
件C1とする工程と(3)電子線を前記照射条件C1で照射
しながら、光電子スペクトル測定を行なう工程と(4)
工程(3)の結果より、n組の光電子ピーク間のエネル
ギー差Ai first(A1 first、A2 first、・・・、Ai fir
st、・・・、An first)を計算する工程と、(ただし、
iは1〜nの整数であり、光電子ピークの組を指定する
添字である。)(5)電子銃を照射条件C2に変更する工
程と(6)電子線を前記照射条件C2で照射しながら、光
電子スペクトル測定を行なう工程と、(7)工程(6)
の結果より、n組の光電子ピーク間のエネルギー差Ai s
econd(A1 second、A2 second、・・・、Ai second、・
・・、An second)を計算する工程と、(8)n組全て
について光電子ピーク間のエネルギー差の変化率Di=
(Ai first−Ai second)/(C1-C2)を求め、もしも、
n個のDiが全て測定誤差の範囲内で0ならば工程9に進
み、そうでないならば、Ai secondをAi firstとして、C
2をC1として、工程(5)に戻る工程と、(9)電子線
照射条件C2で本測定を行なう工程と、を有する電子線と
単色化されたX線ビームとを同時に照射する絶縁物又は
高抵抗試料のX線光電子分光分析法を提案する。
【0037】さらに本発明は、前記工程(5)におい
て、既に測定されたデータを参照しながら、前記Ai fir
stと前記Ai secondとの差が小さくなるように、電子線
照射条件C2を変更することを特徴とする請求項2記載の
絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子分光分析法を提供す
る。
【0038】ここで、既に測定されたデータを参照する
とは、例えば、手動で電子線照射条件の設定を行なう場
合には、図4のように「光電子ピーク間エネルギー差vs
電子線照射条件」のグラフを作成し、3点以上測定を行
ない、グラフの傾向が判読できるようになった後で、そ
のグラフの傾きが小さくなるような方向と大きさを予想
して電子線照射条件を変更する等が挙げられる。
【0039】本発明により、試料の帯電状況が光電子ピ
ーク間エネルギー差の変化率としてある程度定量的に把
握することが可能となり、熟練した測定者でなくとも、
手早く、確実に電子線照射条件を最適化することが可能
である。
【0040】また、本発明により、絶縁物又は高抵抗試
料の光電子スペクトル測定でも、電位分布の定常状態が
達成された条件下で測定を行なうことができるので、内
部標準ピークを基準として、光電子の結合エネルギーを
特定することが可能となる。さらに本発明は、電子線源
と単色化X線源と非単色化X線源とを少なくとも有する
X線光電子分光分析装置を用い、電子線と単色化X線と
を同時に照射する絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子分
光分析法において、非単色化X線による光電子スペクト
ル測定で得られた複数の任意の光電子ピーク間のエネル
ギー差(A’)と同一装置で行われる電子線と単色化X
線とを同時に照射する光電子スペクトル測定で得られた
前記複数の任意の光電子ピーク間のエネルギー差(A)
との差(A’−A)の絶対値が所定のエネルギー幅Eより
も小さくなる電子線照射条件で光電子スペクトルの本測
定を行なう絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子分光分析
法を提供する。
【0041】非単色化X線を試料に照射する場合、分光
用単結晶で収束されていないため、非単色化X線に含ま
れる連続X線成分が装置部材に照射され、その結果、部
材由来の光電子、オージェ電子、2次電子が試料上に供
給されるため、試料表面での帯電が起こり難いことが知
られている。
【0042】また、試料の絶縁性が厳しく、帯電現象が
完全に緩和されない場合でも、非単色化X線による測定
では、試料表面に吸着した炭化水素のClsピークや、ス
パッタにより試料中に導入されたArイオン由来の光電子
ピークなどの内部標準元素の光電子ピークと他の光電子
の光電子の結合エネルギー差により、元素の特定を行な
うことが可能である。[S. Hashimoto et al., Surf. I
nterface. Anal., 18, 801 (1992)]。
【0043】すなわち非単色化X線による測定では、電
子線照射を行なわなくとも試料の電位分布を定常状態と
することができる。
【0044】ただし、非単色化X線は、連続X線を含ん
でいること、照射部位を制限できないことよりケミカル
シフト及び微量元素分析又は微小部の分析には用いるこ
とができない。
【0045】そこで本発明者らは、非単色化X線で本測
定を行なうのではなく、非単色化X線測定結果を帯電補
正のための「基準」とすることに想到した。
【0046】つまり、本発明では、絶縁物又は高抵抗試
料の本測定においては電子線照射を伴った単色化X線を
用いるが、本測定時の電子線照射条件を決定する基準と
して非単色化X線による測定結果を用いるのである。
【0047】ここで、所定のエネルギー幅Eは、光電子
ピークのエネルギー値に含まれる測定誤差を勘案して決
定する。非単色化X線による測定では、ピークエネルギ
ーに含まれる誤差は最大で0.2eVである。よって、計算
に用いる2つの光電子ピークがそれぞれ逆向きの最大誤
差を有する場合、ピーク間エネルギー差には0.4eVの誤
差が含まれることになる。このことから、所定のエネル
ギー幅Eは0.4eVとなる。
【0048】より具体的には、電子線源と単色化X線源
と非単色化X線源とを少なくとも有するX線光電子分光
分析装置を用い、電子線と単色化されたX線ビームとを
同時に照射する絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子分光
分析法において、(1)測定試料の光電子ピークより光
電子ピークの組をn組選択する工程と、(ただしnは2
以上の整数である。)(2)非単色化X線により試料の
光電子スペクトル測定を行なう工程と(3)工程(2)
の測定結果より前記n組の光電子ピーク間のエネルギー
差A’i(A’1、A’2、・・・、A’i、・・・、A’n)を
求める工程と(ただし、iは1〜nの整数であり、光電
子ピークの組を指定する添字である。)(4)電子銃を
電子線照射条件C1とする工程と、(5)電子線を前記照
射条件C1で照射しながら、単色化X線により光電子スペ
クトル測定を行なう工程と(6)工程(5)の測定結果
よりn組の光電子ピーク間のエネルギー差Ai(A1、A2、
・・・、Ai、・・・、An)を求める工程と、(7)工程
(3)で得られたA’iと工程(6)で得られたAiの差
A’i−Aiを求める工程と、(8)もしもA’i−Aiの絶対
値が全てのiについて、所定のエネルギー幅E以下であ
るときは工程(9)に進み、そうでない時は、電子線照
射条件C1を、既に計算済みのA’i−Aiを参照して変更し
て工程(5)に進む工程と(9)電子線照射条件C1で試
料の光電子スペクトルの本測定を行なう工程とを有する
電子線と単色化されたX線ビームとを同時に照射する絶
縁物又は高抵抗試料のX線光電子分光分析法を提供す
る。
【0049】非単色化X線を用いるこの方法において
も、「電子線照射条件vs A’i−Ai」のグラフ等を作成
することが望ましい。これにより複数回の測定を行なっ
た後には、電子線照射条件の望ましい変更方向を推測す
ることが可能となる。
【0050】本発明により、絶縁物又は高抵抗試料の分
析の際に、試料表面の電位分布を一定とするための電子
線照射条件の系統的な決定法を提案する。本発明によれ
ば、もはや、測定者の経験と勘に頼らなくとも、絶縁物
又は高抵抗試料の測定の際の電子線照射条件を系統的に
決定することが可能となる。
【0051】これにより、電位分布の定常状態が達成さ
れた条件で絶縁物又は高抵抗試料の測定を行なうことが
簡単にできるようになる。
【0052】尚、本発明は、絶縁物又は高抵抗試料の試
料のみでなく、導電性試料の測定に用いることも可能で
ある。
【0053】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して説明する。
【0054】図1は本発明のXPS装置の概略図であ
る。分析室7は、試料6に単色化X線を照射するための
単色化X線源4と、非単色化X線を照射するための非単色
化X線源5と、照射されたX線により試料表面から放出さ
れた光電子を検出するためのアナライザー2と、試料表
面に電子線を照射するための電子銃1と、単色化X線源
4、非単色化X線源5、アナライザー2、電子銃1の操
作を制御するための主コントローラー3を有し、不図示
の真空排気系に接続されている。
【0055】非単色化X線源5は装置によっては、設置
されていない場合がある。
【0056】まず、非単色化X源5有しない、単色化X
線のみを用いて本発明を実施する場合について、図2を
参照して説明する。 =工程(1)= まず、測定試料の組成を勘案して、光電子ピークの組を
n組選択する。測定試料の組成が不明である時には、雰
囲気からの吸着成分(炭素、酸素等)、一般的な汚染元
素(Na、Ca等)よりピーク間のエネルギー差を勘案して
選択することが望ましい。
【0057】光電子ピークの組は、ピーク間のエネルギ
ー差があまり小さくならないように選択することが望ま
しく、40eV以上であれば、電子線照射条件の変更によ
り生じるピーク間エネルギー差の変化を充分に捉えるこ
とが可能である。また、光電子ピークの組を複数個選択
するに当たっては、用いるXPS装置の光電子エネルギ
ー測定可能範囲内で、広い範囲、中程度の範囲、狭い範
囲と3種類程度の範囲を選択することが望ましい。一例
を図6に示すが、Cr2p−Cr3p(広い範囲、Cr2p−C1s
(中程度の範囲)、Cr2p−O1s(狭い範囲)の如くであ
る。 =工程(2)= 続いて、電子銃を電子線照射条件C1とする。
【0058】ここでC1は初期値であるので厳密に決定す
る必要はなく、単色化X線による光電子スペクトル測定
の際に、目的の光電子が検出できる程度に帯電を補正で
きていれば良い。 =工程(3)= 続いて、C1で電子線を照射するとともに、単色化X線に
よる絶縁物又は高抵抗試料の光電子スペクトル測定を行
なう。 =工程(4)= 次に、工程(3)の測定結果より工程1で選択したn組
の光電子ピークの組についてエネルギー差Ai first(A1
first、A2 first、・・・、Ai first、・・・、An fir
st)を計算する。
【0059】iは前述のように、光電子ピークの組を示
す添字であり、1〜nの整数である。 =工程(5)= 続いて電子銃の照射条件を若干変更してC2とする。この
電子線照射条件はあまり大きく変更しないことが望まし
く選択した光電子ピークが工程(6)で行われる光電子
スペクトル測定で検出される範囲内であり、さらに、電
子線照射条件C1で得られた光電子ピーク間エネルギー差
と有為な差が見られる程度で変更することが望ましい。
このような電子線照射条件の変更方法としては、例え
ば、電子線照射条件をXPS装置の最小ステップ毎に変更
する等の方法が挙げられる。 =工程(6)= 電子線照射条件C2で絶縁物又は高抵抗試料の光電子スペ
クトル測定を行なう。 =工程(7)= 工程6の測定結果より、工程(1)で選択したn組の光
電子ピークのエネルギー差Ai second(A1 second、A2 s
econd、・・・、Ai second、・・・、An second)を求
める。 =工程(8)= 最後に、n組全てについて光電子ピーク間エネルギー差
の変化率Di=(Ai first−Ai second)/(C1-C2)を求
め、もしも、n個のDiがすべて0ならば工程(9)に進
み、そうでないならば、Ai secondをAi firstとして、C
2をC1として、工程(5)に戻る。
【0060】前述したが、光電子スペクトル測定に含ま
れる誤差のため、Diが完全に0とならない場合がある。
このような場合は、電子線照射条件を変更して更に光電
子ピーク間エネルギー差の変化率を算出し、それらが0
を中心とした狭い範囲で分布していれば、ピーク間エネ
ルギー差の変化率は実質的に0と考えても構わない。 =工程(9)= 電子線照射条件をC1又はC2で電子線を照射しながら、絶
縁物又は高抵抗試料の本測定を行なう。
【0061】電子線の照射条件として変更可能なものは
エミッション電流及びスポット径が挙げられる。
【0062】実際の測定に当たっては、これらの電子線
照射条件を全て最適化する必要はなく、他の条件は標準
値に設定しておき、どれか一つの条件を変更して、「電
位分布の定常状態」つまり複数の光電子ピーク間のエネ
ルギー差の変化率が0となれば、その条件だけを最適化
して測定を行なって構わない。
【0063】ただし、一つの条件を変更するだけでは
「電位分布の定常状態」が得られない場合は、他の条件
と組み合わせた調整が必要になるかもしれない。例え
ば、エミッション電流を変更しただけでは、光電子ピー
ク間のエネルギー差の変化量が0とならない場合には、
エミッション電流を光電子ピーク間のエネルギー差の変
化量が最も0に近くなる値に固定し、電子線スポット径
とを変更し光電子ピーク間のエネルギー差を調査すると
いったことが考えられる。
【0064】また、本発明の単色化X線のみを用いる帯
電補正法は、XPS装置が非単色化X線照射機構を有し
ていなくとも実行が可能である。
【0065】さらに、本発明は、分析室内に微量な希ガ
スを導入する方法又は試料上空に金網をかぶせる方法等
の既存の帯電補正方法と電子線照射を組み合わせた際の
帯電の評価法として使用することが可能である。
【0066】また、本発明の他の実施の形態として、非
単色化X線源5を有するXPS装置を用いる場合につい
て図3により説明する。 =工程(1)= まず、上述の例と同様に、試料の組成を勘案して、n組
の光電子ピークの組合せを選択する。
【0067】ただし、非単色化X線測定では、スペクト
ルにノイズが多く、微弱なピークは検出しにくいため
に、できるだけ試料中に多量に存在する元素のピークの
組合せを選択すると良い。 =工程(2)= 次に、非単色化X線のみを(電子線は照射しない。)試
料に照射して、光電子スペクトル測定を行なう。 =工程(3)= 工程2で得られた測定結果より、工程1で選択したn組
の光電子ピーク間のエネルギー差A’i(A’1、A’2、・
・・、A’i、・・・、A’n)を計算する。 =工程(4)= 非単色化X線による測定が終了した後に、電子銃を照射
条件C1とする。
【0068】ここでC1は、単色化X線による光電子スペ
クトル測定の際に、目的の光電子が検出できる程度に帯
電を補正できていれば良い。 =工程(5)= 電子線照射条件C1で電子線を照射しながら単色化X線に
より測定を行なう。 =工程(6)= 続いて、得られた光電子スペクトルより、工程(1)で
選択したn組の光電子ピーク間エネルギー差Ai(A1、A
2、・・・、Ai、・・・An)を求める。 =工程(7)= 続いて、非単色化X線による測定から得られたA’iとAi
との差A’i-Aiを計算する。 =工程8= 両者の差の絶対値が所定のエネルギー幅Eよりも大きい
時は、電子線の照射条件C1を僅かに変更して工程(5)
に戻る。この所定のエネルギー幅Eは非単色化X線によ
る光電子スペクトル測定の誤差を考慮すると0.4eV以内
であることが望ましい。また、両者の差の絶対値がE以
下であれば、工程(9)に進む。 =工程9= 電子線の照射条件を照射条件C1として試料の本測定を行
なう(9)。
【0069】
【実施例】以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳し
く説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもの
ではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素
の置換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0070】<実施例1>測定試料としてソーダガラス
のNa成分の一部をK成分で置換したガラス基板(旭ガラ
ス:PD200)を用いた。ガラス基板はイソプロピルアル
コール中で超音波を併用しながら15分間3回洗浄し、
その後150℃で5分間乾燥した。光電子ピークの組合
せとしては、Ba3d5−Ols、O1s−Si2p、O1s−C1s 、Nals
−O1s,の4組を選択した。
【0071】また、帯電補正をするために変更する電子
線照射条件としては試料への電子の供給量を表すエミッ
ション電流を採用した。
【0072】電子銃1は、加速電圧4eV、電子線直径2
000μmφに固定した。エミッション電流の初期値は
装置の最低値である0.01mAとした。
【0073】単色化X線は分光用単結晶で単色化したAl
―Kα線を、出力78W、スポット径1000μmφで
用いた。
【0074】電子線と単色化X線をそれぞれの条件で照
射して測定を開始した。測定時間は20分である。得ら
れた光電子スペクトルより上記の4組のピーク間エネル
ギー差を計算しグラフ上にプロットした(図4)。
【0075】続いて、エミッション電流を0.06mAと
して、光電子スペクトル測定を行なった。エミッション
電流を0.01mAから0.06mAとすることで、選択し
た4組の光電子ピーク間エネルギー差は以下のような傾
向を示した。
【0076】Ba3d5とOlsのピーク間は約0.3eV狭まっ
た。 変化率(Ba3d5−Ols)=−0.3/0.6=-0.5(eV/mA) O1sとSi2pのピーク間は約1.8eV広がった。 変化率(O1s−Si2p)=1.8/0.6=3(eV/mA) O1sとC1sのピークの間は約0.6eV広がった。 変化率(O1s−C1s)=0.6/0.6=1(eV/mA) NalsとO1sのピークの間は約0.7eV狭まった。 変化率(Nals−O1s)=0.7/0.6=-1.17(eV/mA) このように、エミッション電流が0.01mAと0.06mAでは、
光電子ピーク間のエネルギー差の変化率が0でないの
で、エミッション電流を0.09mAと変更して再度光電子ス
ペクトル測定を行なった。
【0077】エミッション電流を0.06mAから0.09mAへと
変化することで、選択した4組の光電子ピーク間のエネ
ルギー差は、 Ba3d5とOlsのピーク間は約0.1eV狭まった。 変化率(Ba3d5−Ols)=−0.1/0.3=-0.33(eV/mA) 同様にO1sとSi2pのピーク間は一定であった。 変化率(O1s−Si2p)=0/0.3=0(eV/mA) 同様にO1sとC1sのピークの間は約0.1eV広がった。 変化率(O1s−C1s)=0.1/0.3=0.33(eV/mA) 同様にNalsとO1sのピークの間は一定であった。 変化率(Nals−O1s)=0/0.3=0(eV/mA) このように、エミッション電流を0.06mAから0.09mAに増
加することで、O1s−Si2p間とNals−O1s間ではピークエ
ネルギー差の変化率が0となった。また、Ba3d5−Ols、O
1s−C1のピークエネルギー差の変化率は減少して0に近
くなった。
【0078】これらの3測定より、エミッション電流を
増加すれば、電位分布の定常状態に近づくことが予想さ
れたために、続いて、エミッション電流を0.11mAと
して再びピーク間のエネルギー差を求めていった。エミ
ッション電流を0.09mAから0.11mAへと変えることで4組
の光電子ピーク間エネルギー差の変化率は全て0となっ
た。
【0079】このことより、電子線をエミッション電流
0.11mAで照射することで、電位分布の定常状態が得られ
ることが明らかとなった。
【0080】なお、本実施例では、エミッション電流の
変更のみで所定の条件を達成したために、その他の電子
線照射条件は変更していない。
【0081】<実施例2>測定試料としてはガラス基板
上に形成した膜厚300nmの酸化クロム薄膜を用いた。
ガラス基板は洗浄液(商品名:カルトフィン77、ヘン
ケル社製)中で超音波を併用しながら15分間洗浄した
後、IPAで洗浄液の残留分を除去した後に150℃で5
分間乾燥して成膜に供した。成膜にはCrをターゲットと
してArとO2の混合ガスを用いてスパッタ法により形成し
た。薄膜の膜厚は320nmである。薄膜の抵抗値が1.
7×1010Ωとなった時点で、成膜を終了した。試料を
用いてX線光電子の測定を行った。
【0082】光電子ピーク間のエネルギー差としてCr2p
3―Ols、Cr2p3―Cls、Cr2p3―Cr3pを選択した。Cr、Oは
マトリックス成分であり、Cは大気から吸着するために
表面に多量に存在する成分である。
【0083】続いて、非単色化X線(Al―Kα線:パワー
450ワット)を試料に照射して測定された当該光電子
ピークのエネルギー値より各光電子間のエネルギー差
(Cr2p3―Ols、Cr2p3―Cls、Cr2p3―Cr3p)を算出しこの
値をA’とした。続いて、電子銃1のエミッション電流
を変えながら、電子線を単色化されたX線(Al―Kα線:
パワー85ワット)に重畳して照射し電子線照射条件設
定のための測定を行った。アナライザー2により測定さ
れた各光電子の結合エネルギー値より各光電子間のエネ
ルギー差(Cr2p3―Ols、Cr2p3―Cls、Cr2p3―Cr3p)を算
出しこの値をAとした。
【0084】図5にこの測定の結果を示す。図の横軸は
電子銃1のエミッション電流値を、縦軸にはA’−Aを示
した。この測定ではエミッション電流値を0.05mA、
0.07mA、0.11mAと変化してA’−Aを求めた。図5
によれば、電子銃のエミッション電流値が大きいほど、
A’−Aの絶対値は増大し、非単色化X測定で得られたエ
ネルギー差A’より遠ざかっていくことが明らかであっ
た。
【0085】そこで、本実施例ではA’−Aの絶対値が所
定のエネルギー幅E(±0.4eV)以内に収まっている0.0
5mAを本測定のエミッション電流とした。
【0086】A’−Aが最も0に近い条件(エミッション
電流値0.05mA)で測定されたスペクトル(スペクトル
A)と大きい差を示した(エミッション電流値0.11m
A)のスペクトル(スペクトルB)を図6に示した。ま
た、Clsの結合エネルギー値(284.8eV)で規格化し
たCr2pスペクトルを図7に示した。スペクトルAの半値
幅はスペクトルBの半値幅より小さくなり、本方法によ
り決定された電子の照射条件が妥当であることが明らか
である。
【0087】
【発明の効果】本発明によれば、XPS測定時の絶縁物又
は高抵抗試料の試料表面の帯電状態を従来法以上に定量
的に評価することが可能となる。その結果に基づいて、
電子線照射条件を系統的に決定するため、測定者の経験
と勘に頼ることなく、常に最適な電子線照射条件で、単
色化X線による絶縁物又は高抵抗試料の分析を行なうこ
とが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のX線光電子分光装置構成を示す概略図
である。
【図2】単色化X線のみを用いて電子線照射条件を決定
する方法のフロー図である。
【図3】非単色化Xを用いて電子線照射条件を決定する
方法を示すフロー図である。
【図4】電子の照射条件に対する光電子間のエネルギー
差の関係を示すグラフである。
【図5】電子の照射条件に対する光電子間のエネルギー
差の関係を示すグラフである。
【図6】電子の照射条件を変えた場合の光電子スペクト
ルを示す図である。
【図7】図6のCr2pピークを拡大した光電子スペクトル
である。
【符号の説明】
1 電子銃 2 光電子のエネルギーを測定するアナライザー 3 主コントローラ 4 単色化X線源(Al―Kα線) 5 非単色化X線源(Al―Kα線) 6 試料 7 X線光電子分光分析装置本体

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子線と単色化X線とを同時に照射する
    絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子分光分析法におい
    て、電子線照射条件の変化に対する複数の任意の光電子
    ピーク間のエネルギー差の変化率が測定誤差の範囲内で
    0となる電子線照射条件で光電子スペクトルの本測定を
    行なう絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子分光分析法。
  2. 【請求項2】 帯電補正のための電子線と単色化された
    X線ビームとを同時に照射する絶縁物又は高抵抗試料の
    X線光電子分光分析法において、(1)測定試料の光電
    子ピークより光電子ピークの組をn組選択する工程と、
    (ただしnは2以上の整数である。)(2)電子銃を電
    子線照射条件C1とする工程と(3)電子線を前記照射条
    件C1で照射しながら、光電子スペクトル測定を行なう工
    程と(4)工程(3)の結果より、n組の光電子ピーク
    間のエネルギー差Ai first(A1 first、A2 first、・・
    ・、Ai first、・・・、An first)を計算する工程と、
    (ただし、iは1〜nの整数であり、光電子ピークの組
    を指定する添字である。)(5)電子銃を照射条件C2に
    変更する工程と(6)電子線を前記照射条件C2で照射し
    ながら、光電子スペクトル測定を行なう工程と、(7)
    工程(6)の結果より、n組の光電子ピーク間のエネル
    ギー差Ai second(A1 second、A2 second、・・・、Ai
    second、・・・、An second)を計算する工程と、
    (8)n組全てについて光電子ピーク間のエネルギー差
    の変化率Di=(Ai first−Ai second)/(C1-C2)を求
    め、もしも、n個のDiが全てが測定誤差の範囲内で0な
    らば工程(9)に進み、そうでないならば、Ai second
    をAi firstとして、C2をC1として、工程(5)に戻る工
    程と、(9)電子線照射条件C2で本測定を行なう工程
    と、を有する電子線と単色化されたX線ビームとを同時
    に照射する絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子分光分析
    法。
  3. 【請求項3】 前記工程(5)において、既に測定され
    たデータを参照しながら、前記Ai firstと前記Ai secon
    dとの差が小さくなるように、電子線照射条件C2を変更
    することを特徴とする請求項2記載の絶縁物又は高抵抗
    試料のX線光電子分光分析法。
  4. 【請求項4】 電子線源と単色化X線源と非単色化X線
    源とを少なくとも有するX線光電子分光分析装置を用
    い、電子線と単色化X線とを同時に照射する絶縁物又は
    高抵抗試料のX線光電子分光分析法において、非単色化
    X線による光電子スペクトル測定で得られた複数の任意
    の光電子ピーク間のエネルギー差(A’)と同一装置で
    行われる電子線と単色化X線とを同時に照射する光電子
    スペクトル測定で得られた前記複数の任意の光電子ピー
    ク間のエネルギー差(A)との差(A’−A)の絶対値が
    所定のエネルギー幅Eよりも小さくなる電子線照射条件
    で光電子スペクトルの本測定を行なう絶縁物又は高抵抗
    試料のX線光電子分光分析法。
  5. 【請求項5】 電子線源と単色化X線源と非単色化X線
    源とを少なくとも有するX線光電子分光分析装置を用
    い、電子線と単色化されたX線ビームとを同時に照射す
    る絶縁物又は高抵抗試料のX線光電子分光分析法におい
    て、(1)測定試料の光電子ピークより光電子ピークの
    組をn組選択する工程と、(ただしnは2以上の整数で
    ある。)(2)非単色化X線により試料の光電子スペク
    トル測定を行なう工程と(3)工程(2)の測定結果よ
    り前記n組の光電子ピーク間のエネルギー差A’i(A’
    1、A’2、・・・、A’i、・・・、A’n)を求める工程
    と(ただし、iは1〜nの整数であり、光電子ピークの
    組を指定する添字である。)(4)電子銃を電子線照射
    条件C1とする工程と、(5)電子線を前記照射条件C1で
    照射しながら、単色化X線により光電子スペクトル測定
    を行なう工程と(6)工程(5)の測定結果よりn組の
    光電子ピーク間のエネルギー差Ai(A1、A2、・・・、A
    i、・・・、An)を求める工程と、(7)工程(3)で
    得られたA’iと工程(6)で得られたAiの差A’i−Aiを
    求める工程と、(8)もしもA’i−Aiの絶対値が全ての
    iについて、所定のエネルギー幅E以下であるときは工
    程(9)に進み、そうでない時は、電子線照射条件C1
    を、既に計算済みのA’i−Aiを参照して変更して工程
    (5)に進む工程と(9)電子線照射条件C1で試料の光
    電子スペクトルの本測定を行なう工程とを有する電子線
    と単色化されたX線ビームとを同時に照射する絶縁物又
    は高抵抗試料のX線光電子分光分析法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005020268A1 (ja) * 2003-08-26 2005-03-03 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. 絶縁膜測定装置、絶縁膜測定方法、絶縁膜評価装置、絶縁膜評価方法、放電表示素子用基板およびプラズマディスプレイパネル

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005020268A1 (ja) * 2003-08-26 2005-03-03 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. 絶縁膜測定装置、絶縁膜測定方法、絶縁膜評価装置、絶縁膜評価方法、放電表示素子用基板およびプラズマディスプレイパネル
JP2005071858A (ja) * 2003-08-26 2005-03-17 Matsushita Electric Ind Co Ltd 絶縁膜測定装置、絶縁膜測定方法及び絶縁膜評価装置

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