JP2001121873A - インキ逆流防止体組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温時における筆記不能の問題を極力解消し
たインキ逆流防止体組成物を提供すること。 【解決手段】 難揮発性有機液体或いは不揮発性有機液
体よりなる基材と、ゲル化剤と、ドデシルベンゼンとを
少なくとも含有することを特徴とするインキ逆流防止体
組成物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ボールペンや万年
筆、マーキングペンといった筆記具や、インキジェット
プリンタなどの記録機器に用いるインキカートリッジの
インキ収容部内にインキと共に充填、収容されるインキ
逆流防止体組成物に関し、特に低温時における筆記又は
印字不能の問題を極力解消したインキ逆流防止体組成物
に関する。

【０００２】

【従来の技術】インキをインキ収容部内に直接充填する
型の筆記具や記録機器のインキカートリッジは従来多く
用いられている。特に、筆記具において、この種の構造
の筆記具は、所謂生インキ式筆記具と称され、インキの
吐出量が使用初めから終わりまで大きく変化しない点で
優れたものとして知られている。生インキ式筆記具とし
ては、ペン先にボールペンチップを用いたボールペン
や、繊維集束体を用いたマーキングペン等が知られてい
る。そして、これらのペン先を取り付けるインキ収容部
は、ポリプロピレンのような合成樹脂によって成形され
たパイプ状物や、ケース状物の内部に形成されている。
更に、このインキ収容部は、ペン先取付部の他端を開放
状態にしたり、空気孔を有する尾栓を配したりすること
がなされている。

【０００３】上記生インキ式筆記具においては、インキ
収容部に充填したインキのペン先取付部と反対側にイン
キ逆流防止体組成物を充填することが知られている。こ
れは、インキの乾燥や漏れ及びインキ収容部内壁への付
着を防止することを主な目的として用いられている。イ
ンキ逆流防止体組成物は、ワセリン、流動パラフィンと
ワセリンとの混合物、ポリブテン、α−オレフィンオリ
ゴマー、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、オリー
ブ油、又は、植物油などの難揮発性有機液体を基材に用
い、この基材を、微粒子シリカ、水添ひまし油系ゲル化
剤、セルロース系ゲル化剤、デキストリン系ゲル化剤、
金属セッケン類、又は、ベントナイトなどのゲル化剤を
用いてゲル化させたものが知られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のよ
うなインキ逆流防止体組成物は、低温時の環境下におい
てゲル化に基づく編目構造が強固となり、その流動性が
低下する結果、インキの消費による移動に対する追従性
が悪化して、遂には筆記不能に陥るといった問題が生じ
る。

【０００５】本発明の課題は、低温時における筆記不能
の問題を極力解消したインキ逆流防止体組成物を提供す
ることである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、難揮発性有機
液体或いは不揮発性有機液体よりなる基材と、ゲル化剤
と、ドデシルベンゼンとを少なくとも含有することを特
徴とするインキ逆流防止体組成物を要旨とするものであ
る。

【０００７】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
使用する基材は、難揮発性有機液体或いは不揮発性有機
液体よりなるものである。この難揮発性有機液体或いは
不揮発性有機液体としては、液状ポリブテン、流動パラ
フィン、スピンドル油、ワセリン、α−オレフィンオリ
ゴマー、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、塩素化
パラフィン等が挙げられ、これらは１種もしくは２種以
上混合して使用可能である。

【０００８】また本発明で使用されるゲル化剤は、上記
基材をゲル化して、インキ逆流防止体組成物として適度
な流動性を付与するために用いるものである。ゲル化剤
としては、アエロジル（日本アエロジル（株）製）など
の微粒子シリカ、ディスパロン３０５（水添ひまし油、
楠本化成（株）製）などの水添ひまし油系のもの、ソロ
イド（セルロース硫酸エステルの四級アンモニュウム
塩、三晶（株）製）などのセルロース系のもの、レオパ
ール（パルミチン酸デキストリンエステル、千葉製粉
（株）製）などのデキストリン系のもの、更に金属セッ
ケン類、ベントナイトなどが挙げられる。特に、ゲル化
剤として、例えば一次粒子径が数μｍ〜５０μｍである
微粒子シリカ粉末やパルミチン酸デキストリンエステル
を使用すると、インキ逆流防止体組成物に透明感を醸し
出せ、インキ収容部を形成した容器自体も透明のもので
あれば外観上見映えのよいものが得られる。これらゲル
化剤の配合割合は、インキ逆流防止体組成物全量に対し
て１〜１０重量％が好ましい。配合割合が１重量％未満
の場合、インキ逆流防止体組成物としてのゲル化強度が
弱くなってインキが逆流し易くなり、また１０重量％を
越えた場合、ゲル化強度が強すぎてインキに対する追従
性が悪くなる傾向にある。

【０００９】ドデシルベンゼンは低温時における筆記追
従性を向上させ、筆記不能に陥らないようにするために
添加するものであり、その使用量は、インキ逆流防止体
組成物全量に対して０．０５〜１０重量％の範囲が好ま
しい。その使用量が０．０５重量％未満の場合、その作
用効果が不充分であることがある。また１０重量％を越
えた場合、インキ逆流防止体組成物の粘度が高くなり、
インキに対する追従性が悪くなる場合がある。

【００１０】本発明のインキ逆流防止体組成物を製造す
るに際しては、従来知られている種々の方法が採用でき
る。例えば、上記成分を、９０〜１６０℃に加熱しなが
ら撹拌機により撹拌混合することにより容易に得られ
る。

【００１１】

【作用】本発明のインキ逆流防止体組成物にドデシルベ
ンゼンを用いると、低温時における筆記不能の問題を解
消される効果については、以下のように推察される。一
般に、基材に難揮発性有機液体或いは不揮発性有機液体
を使用し、ゲル化剤を含有したインキ逆流防止体組成物
は、低温環境下に置かれると、基材化合物中の難揮発性
有機液体あるいは不揮発性有機液体の流動性が低下し、
ゲル化剤の構造を強固なものにしてしまう。その為にあ
たかもゲル化剤自身の構造がより強固になったような挙
動を示し、インキ逆流防止体組成物の流動性が低下す
る。その結果、インキの消費による移動に対する追従性
が悪化して、遂には筆記不能に陥る。本発明のインキ逆
流防止体組成物に用いるドデシルベンゼンは、低温環境
下において、難揮発性有機溶剤或いは不揮発性有機溶剤
の分子間に入り込み潤滑剤の作用を示すことによって、
低温時に流動性が低下することを防ぐ。これにより、ゲ
ル化剤の編目構造が強固とならず、インキ逆流防止体組
成物の流動性が維持され、低温時でも常温時と同様の流
動特性を維持する。

【００１２】

【実施例】以下、実施例に基づき更に詳細に説明する。 実施例１ ポリブテンＨＶ−１５（基材、ポリブテン、日本石油（株）製） ２２．５重量部 エンパラＫ４３（基材、塩素化パラフィン、味の素（株）製）２２．５重量部 エンパラＫ４７（基材、塩素化パラフィン、味の素（株）製）４５．０重量部 アエロジルＲ９７２（ゲル化剤、シリカ、日本アエロジル（株）製） ２．５重量部 レオパールＴＬ（ゲル化剤、パルミチン酸デキストリンエステル、千葉製粉（ 株）製） ７．０重量部 ドデシルベンゼン ０．５重量部 上記各成分を容器に入れ、温度を１２０℃に加熱しなが
ら撹拌を２〜３時間行い、インキ逆流防止体組成物を得
た。

【００１３】 実施例２ ポリブテンＨＶ−１５（前述） ２１．５重量部 エンパラＫ４３（前述） ２１．５重量部 エンパラＫ４７（前述） ４３．０重量部 アエロジルＲ９７２（前述） ２．５重量部 レオパールＴＬ（前述） ６．５重量部 ドデシルベンゼン ５．０重量部 上記各成分を容器に入れ、温度を９０℃に加熱しながら
撹拌を２〜３時間行い、インキ逆流防止体組成物を得
た。

【００１４】 実施例３ ポリブテンＨＶ−１５（前述） ８６．０重量部 アエロジルＲ９７２（前述） ３．０重量部 レオパールＫＥ（ゲル化剤、パルミチン酸デキストリンエステル、千葉製粉（ 株）製） ５．０重量部 ＣＤＩＳ−４００（付着防止剤、ポリエチレングリコールジイソステアレート 、日光ケミカルズ（株）製） １．０重量部 ＤＧＯ−８０（付着防止剤、グリセリルジオエート、日光ケミカルズ（株）製 ） １．０重量部 ドデシルベンゼン ４．０重量部 上記各成分を容器に入れ、温度を１１０℃に加熱しなが
ら撹拌を２〜３時間行い、インキ逆流防止体組成物を得
た。

【００１５】 実施例４ ポリブテンＨＶ−１５（前述） ８８．０重量部 アエロジルＲ９７２（前述） ４．０重量部 レオパールＫＥ（前述） ４．０重量部 ＣＤＯ−６００（付着防止剤、ポリエチレングリコールジオレエート、日光ケ ミカルズ（株）製） １．０重量部 ＭＧＩＳ（付着防止剤、グリセリルモノイソステアレート、日光ケミカルズ（ 株）製） １．０重量部 ドデシルベンゼン ２．０重量部 上記各成分を容器に入れ、温度を１３０℃に加熱しなが
ら撹拌を２〜３時間行い、インキ逆流防止体組成物を得
た。

【００１６】比較例１ 実施例１において、ドデシルベンゼンの代わりにエンパ
ラＫ４５を用いた以外は、実施例１と同様にしてインキ
逆流防止体組成物を得た。

【００１７】比較例２ 実施例３において、ドデシルベンゼンの代わりにエチル
ベンゼンを用いた以外は、実施例３と同様にしてインキ
逆流防止体組成物を得た。

【００１８】一端に、径０．８ｍｍのボール（材質：セ
ラミック）とステンレス製のホルダーとよりなるボール
ペンチップを取り付けたインキ収容管（材質：ポリプロ
ピレン、内径３．２ｍｍ）内に、後記する水性インキ組
成１を充填した。更に、このインキの上部（ボールペン
チップの反対側）に実施例１、２及び比較例１で得たイ
ンキ逆流防止体組成物各々を０．１ｇ充填し、遠心脱泡
を行い、試験用ボールペン替芯を作製した。又、一端
に、径０．８ｍｍのボール（材質：超鋼）とステンレス
製のホルダーとよりなるボールペンチップを取り付けた
インキ収容管（材質：ポリプロピレン、内径３．２ｍ
ｍ）内に、後記する水性インキ組成２を０．８ｇ充填し
た。更に、このインキの上部（ボールペンチップの反対
側）に実施例３、４及び比較例２で得たインキ逆流防止
体組成物各々を０．１ｇ充填し、遠心脱泡を行い、試験
用ボールペン替芯を作製した。この試験用ボールペン替
芯を５℃の保冷庫に横向きにて１２時間放置した後、そ
の保冷庫の中で、１丸直径２ｃｍの丸を５丸螺旋状に連
続筆記する、いわゆる丸書きの方法で、Ｂ４版の大きさ
の筆記用紙に５丸１０段、合計５０丸筆記した。筆記時
の速度は２秒／５丸とした。この時、筆跡にかすれを生
じずに筆記可能な丸数を確認した。結果を表１に示す。

【００１９】

【表１】

【００２０】 ［水性インキの組成］ 水性インキ組成１（粘度２０，０００ｍＰａ・ｓ） ＪＲ８００（酸化チタン、テイカ（株）製） ２０．０重量部 ジョンクリルＪ６１Ｊ（スチレン−アクリル酸共重合物のナトリウム塩、ジョ ンソン（株）製） １７．０重量部 水 ２０．０重量部 ＫＥＬＺＡＮ ＡＲ（ザンサンガム、三晶（株）製） ０．５重量部 エチレングリコール ９．５重量部 グリセリン ８．０重量部 ＬＵＭＩＫＯＬ ＮＫＷ２１０８（青色に着色された樹脂粒子、固形分５３重 量％、日本蛍光化学（株）製） ２５．０重量部

【００２１】 水性インキ組成２（粘度２０，０００ｍＰａ・ｓ） ＷＸＭＵ７５（アルミニウム粉末、含有量６０重量％、東洋アルミ（株）製） ３．０重量部 サンダイスーパーブルーＧＬＬ（水分散顔料、顔料固形分２９重量％、山陽色 素（株）製） ３．０重量部 ジョンクリルＪ−４５０（スチレン−アクリル共重合物エマルジョン、ジョン ソンポリマー（株）製） １．０重量部 ＫＥＬＺＡＮ ＡＲ（前述） １．０重量部 エチレングリコール ４０．０重量部 グリセリン １０．０重量部 プロクセル ＧＸＬ（１，２−ベンゾイソチアゾリン−３−オン、ＩＣＩジャ パン（株）製） ０．２重量部 水 ４１．８重量部

【００２２】

【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
係るインキ逆流防止体組成物は、低温時の環境下におい
て筆記不能に陥るといった問題を極力解消した極めて有
用なものである。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 難揮発性有機液体或いは不揮発性有機液
   体よりなる基材と、ゲル化剤と、ドデシルベンゼンとを
   少なくとも含有することを特徴とするインキ逆流防止体
   組成物。
2. 【請求項２】 上記ドデシルベンゼンの添加量がインキ
   逆流防止体組成物全量に対して０．０５〜１０重量％で
   ある請求項１記載のインキ逆流防止体組成物。
3. 【請求項３】 上記ゲル化剤が、微粒子シリカ及び／又
   はパルミチン酸デキストリンエステルを併用したもので
   ある請求項１又は２記載のインキ逆流防止体組成物。