JP2001112120A - 磁気浮上列車用荷重支持体の損傷評価方法 - Google Patents

磁気浮上列車用荷重支持体の損傷評価方法

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博 青山
Toshio Hattori
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 超電導磁石の荷重支持体にはFRPと金具
(金属板)との接着構造が用いられる。この接着部は様
々な負荷を受けるため走行中にはく離することが予想さ
れる。しかし、荷重支持体は真空容器に収納されている
ため取り出して超音波探傷器にかけることはできない。
荷重支持体が真空容器に収納状態でFRPと金具の接着
界面のはく離状態を定量的に評価する方法が必要であ
る。 【解決手段】 荷重支持体7は超電導コイルが収納され
ている内槽と外槽をつなぐ役目をしている。荷重支持体
7は鼓状に成形されたFRP1を金属板金具2に埋込接
着した構造になっている。FRP1と金具2の接着部3
の近傍のFRPにひずみゲージ4、5を貼り付けてお
く。磁気浮上列車浮上時、推進時、励磁時の直流力によ
り荷重支持体に発生するひずみを測定し、接着部のはく
離発生およびはく離長さを評価する。同様な方法でFR
P部の損傷も評価する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気浮上列車用荷重
支持体の損傷評価方法に係り、特に、超電導コイルを支
持している荷重支持体のFRPと金具接着面のはく離お
よびFRP部の損傷などの検査に好適な損傷評価方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】接着界面のはく離評価技術の従来の例と
しては超音波探傷がある。その一例として、溶接構造シ
ンポジウム95の講演論文集の195〜198頁に「高
速超音波検査装置の開発と接合部への適用」がある。こ
れは接着界面のはく離に関して、超音波探傷により短時
間にはく離部分を検出できるというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】超電導磁石の荷重支持
体にはFRPと金具の接着構造が用いられている。この
接着部は、様々な負荷を受けるため、走行中に接着部が
はく離することが予想される。そこで、接着部のはく離
発生およびはく離長さを定量的に評価する必要がある。
また、FRP部の損傷を評価する必要がある。
【0004】しかし、荷重支持体は真空容器に収納され
ているため、取り出して超音波探傷器にかけることはで
きない。荷重支持体が真空容器に収納されている状態
で、FRPと金具の接着界面のはく離状態を、定量的に
評価する方法が必要である。そこで、荷重やひずみなど
をモニターし、その値をもとに損傷を評価する必要があ
る。
【0005】また、磁気浮上列車用荷重支持体は強磁場
中で使用されるため、ひずみゲージなどの電気信号には
高調波のノイズが発生してしまう。そのため、直流力な
どの高調波の影響を受けない力をもとに、接着部のはく
離を評価する必要がある。
【0006】そこで、本発明の目的は、浮上力、推進
力、励磁力等の直流力をもとにして、ひずみゲージを用
いることにより、荷重支持体接着部のはく離発生および
はく離長さを定量的に評価しようとするものである。ま
た、同様な方法を用いてFRP部の損傷を評価しようと
するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、磁気浮上列車用荷重支持体において、荷
重支持体のFRP部にひずみゲージを配置することによ
り、FRP部自体の損傷を評価しようとするものであ
る。また、FRP製筒状体を金属板状金具に接着する接
着部近傍にひずみゲージを設置することにより、接着部
のはく離発生およびはく離長さを定量的に評価しようと
するものである。
【0008】すなわち、FRP製筒状体の接着部近傍の
所定位置にひずみゲージを適宜貼り付け、検出したひず
みに基づいて、磁気浮上列車の浮上時、推進時、励磁時
等の直流力をもとに、接着部のはく離発生およびはく離
長さを評価する。また、同様の方法を用いてFRP部自
体の損傷も評価される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面を参照して説明する。図1および図2は、本発明の一
実施形態を示し、図1は荷重支持体にひずみゲージを貼
り付けた図、図2は磁気浮上列車の超電導磁石の構造を
示す図である。
【0010】これらの図に示すように、荷重支持体7
は、超電導コイル9が収納される極低温の内槽6と、そ
の周りを真空状態に保つ外槽8とをつなぐ役目をしてい
る。この荷重支持体7の構造は、両端の直径よりも中央
部の直径が小さいFRP製円筒(以下FRP1ともい
う)の端部を、金属板金具2に埋め込んで接着結合する
構造となっている。
【0011】このような磁気浮上列車用の超電導磁石に
おいて、FRP1の両端の金属板2との接着部3の近傍
に、ひずみゲージ4、5を貼り付ける。荷重支持体の接
着部3は様々な負荷を受けるため、接着部がはく離する
ことが予想される。接着部の応力集中は極めて小さい領
域であるので、できるだけ接着部に近い位置にひずみゲ
ージを貼った方がよい。荷重支持体の接着部は、室温側
(外槽)と低温側(内槽)があるため、両方にひずみゲ
ージを貼っておく。このひずみゲージ4、5は、なるべ
くゲージ長さの短いものを用いた方がよい。
【0012】超電導磁石の構造を図2に示す。荷重支持
体7は極低温の内槽6と室温の外槽8をつなぐものであ
る。外槽8が台車10に結合されている。荷重支持体7
は内槽左右中央部の上下に2個取り付けられている。こ
こで、ひずみゲージは、室温側と低温側にそれぞれに配
置し、それぞれ鉛直方向の上下部、すなわち、12時の
位置と6時の位置に合計4枚貼っておく。
【0013】次に、室温側のひずみゲージについて、接
着部のはく離評価方法を説明する。磁気浮上列車が車輪
走行から浮上走行に移ったとき、浮上力は、図示したよ
うに、上下方向に働く。荷重支持体7は内槽6を外槽8
から片持ち梁の形で支えているため、12時の位置のひ
ずみゲージ4は圧縮、6時の位置のひずみゲージ5には
引張りのひずみが発生する。
【0014】図3および図4は、ひずみの時間変化を示
した図である。12時の位置のひずみゲージは図3、6
時の位置のひじみゲージには、図4のようなひずみ変化
が生じる。このひずみを測定する場合は、高調波成分を
カットするために、5Hz程度のローパスフィルターを
通したほうがよい。この図3および図4の浮上時のひず
みは、車体重量に比例して発生する。そのため、乗客数
等が変化した場合でも重量により換算可能である。
【0015】次に、図5を用いて接着部のはく離発生評
価方法を説明する。まず、図3、図4の初期浮上時のひ
ずみεLを測定しておく。その後、走行時の浮上時毎に
ひずみεNを測定する。車体重量が異なる場合には、同
じ車体重量になるようにする。そして、εNとεLの値
を比較する。εNとεLの値が同じであれば、はく離発
生なし。εNとεLの値が異なればはく離発生である。
【0016】次いで、図6を用いてはく離長さの測定方
法を説明する。ひずみゲージ4、5は接着部3の極近傍
に貼ってあるため、応力集中をおこす。この接着部がは
く離を受けると、ひずみゲージが応力集中部より離れる
ため、図6に示すように、はく離長さとともにひずみは
小さくなる。
【0017】この関係は、あらかじめ解析および実験に
より求めておく。はく離発生のときと同様に、浮上時の
ひずみを図3、図4のように測定する。このひずみを図
6の値と比較することにより、はく離長さを求めること
ができる。
【0018】図7を用いて他の実施形態について説明す
る。本実施形態は、磁気浮上列車浮上時のひずみをもと
に、FRP部の損傷を評価する方法である。図7に示す
ように、ひずみゲージをFRP部の鉛直方向の12時と
6時の位置に貼っておく。このときは、12時と6時の
線上であれば、ひずみゲージを貼る枚数は何枚でもよ
い。また、室温側、低温側の両方に貼ってよい。
【0019】この場合、接着部の応力集中がないだけ
で、図1の例と同様に、室温側12時の位置では圧縮、
6時の位置では引張り力が作用する。FRP部の損傷は
図1の例と同様に、以下の手順で評価する。
【0020】初期浮上時のひずみεLを測定しておく。
その後、走行時の浮上時毎にひずみεNを測定する。車
体重量が異なる場合には同じ車体重量になるようにす
る。そして、εNとεLの値を比較する。εNとεLの
値が同じであればFRP部の損傷なし。εNとεLの値
が異なればFRP部に損傷ありである。
【0021】図8および図9を用いて他の実施形態を説
明する。本例は、推進力をもとに接着部のはく離を評価
する方法である。図8は超電導磁石の水平断面図であ
る。荷重支持体7の接着部近傍の応力集中を受ける箇所
で、列車進行方向前後部である3時と9時の位置に、ひ
ずみゲージを貼付しておく。ひずみゲージは室温側と低
温側の両方に貼っておく。
【0022】図8のように推進力が働いたとすると、ひ
ずみゲージ4は圧縮、ひずみゲージ5は引張り力を受け
る。このうち、引張り力を受けるひずみゲージ5の時間
変化は図9のようになる。
【0023】磁気浮上列車が加速時に引張りひずみをう
けた後、等速運転している間はひずみは零になる。その
後、減速時には逆方向に力が働くため、圧縮ひずみを受
ける。このひずみは加速度に比例する値である。このひ
ずみεNを測定し、図5の手順で接着部のはく離を評価
することができる。同様に、FRP部の損傷についても
評価することができる。
【0024】図10および図11を用いて、さらに他の
実施形態を説明する。本例は励磁力をもとに接着部のは
く離を評価する方法である。超電導磁石外槽内には、4
個の超電導コイルが列車進行方向に並置して収納されて
いる。この4個のコイルがS極、N極、S極、N極の順
番になるように励磁される。このとき、S極とN極間に
は吸引力が働くので、室温側ひずみゲージ4には圧縮、
ひずみゲージ5は引張り力になる。
【0025】ひずみゲージ5の時間変化は図11のよう
になる。励磁状態の間は引張りひずみが作用し、消磁す
るとひずみは零になる。このひずみεNを測定し、図5
と同様の手順で接着部のはく離を評価することができ
る。同様に、FRP部の損傷についても評価することが
できる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
磁気浮上列車において、荷重支持体のFRPと金具の接
着面のはく離発生、およびはく離長さを求めることがで
きる。また、FRP部の損傷を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示し、荷重支持体接着部
近傍にひずみゲージを貼付した図である。
【図2】磁気浮上列車における超電導磁石の構造を示し
た図である。
【図3】12時の位置のひずみの時間変化を示した図で
ある。
【図4】6時の位置のひずみの時間変化を示した図であ
る。
【図5】はく離の評価方法を示した図である。
【図6】解析と実験により求めたひずみεとはく離長さ
aの関係を示した図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示し、FRP部にひず
みゲージを貼付した図である。
【図8】推進力によりはく離を評価するときの水平断面
図である。
【図9】推進力が室温側9時の位置のひずみゲージに作
用したときの時間変化を示した図である。
【図10】励磁力によりはく離を評価するときの水平断
面図である。
【図11】励磁力が室温側引張り力のときのひずみの時
間変化を示した図である。
【符号の説明】
1 FRP 2 金具(金属板) 3 接着部 4、5 ひずみゲージ 6 内槽 7 荷重支持体 8 外槽 9 超電導コイル 10 台車
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅原 哲郎 愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号 東海旅客鉄道株式会社内 (72)発明者 岩佐 正明 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内 (72)発明者 青山 博 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内 (72)発明者 服部 敏雄 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内 Fターム(参考) 2F069 AA06 AA68 BB40 CC02 GG58 GG65 GG72 GG74 HH30 KK07 KK10 MM04 NN00 2G024 AD01 BA21 BA27 CA04 5H113 AA09 CC04 CC08 DB14 DB20 DC14 DC20 GG30 JJ10 KK02 KK10

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気浮上列車の超電導コイルを格納する
    内槽と、前記内槽の外側を真空状態に保つ外槽との間を
    締結し、FRP製筒状体の両端に金属板を接着した構造
    を有する荷重支持体の損傷を評価する方法であって、前
    記FRP製筒状体に配置したひずみゲージにより、前記
    磁気浮上列車の浮上時に前記FRP製筒状体に発生する
    ひずみを検出して、前記FRP製筒状体の損傷を評価す
    ることを特徴とする磁気浮上列車用荷重支持体の損傷評
    価方法。
  2. 【請求項2】 磁気浮上列車の超電導コイルを格納する
    内槽と、前記内槽の外側を真空状態に保つ外槽との間を
    締結し、FRP製筒状体の両端に金属板を接着した構造
    を有する荷重支持体の損傷を評価する方法であって、前
    記FRP製筒状体に配置したひずみゲージにより、前記
    磁気浮上列車の推進時に前記FRP製筒状体に発生する
    ひずみを検出して、前記FRP製筒状体の損傷を評価す
    ることを特徴とする磁気浮上列車用荷重支持体の損傷評
    価方法。
  3. 【請求項3】 磁気浮上列車の超電導コイルを格納する
    内槽と、前記内槽の外側を真空状態に保つ外槽との間を
    締結し、FRP製筒状体の両端に金属板を接着した構造
    を有する荷重支持体の損傷を評価する方法であって、前
    記FRP製筒状体に配置したひずみゲージにより、前記
    磁気浮上列車の励磁時に前記FRP製筒状体に発生する
    ひずみを検出して、前記FRP製筒状体の損傷を評価す
    ることを特徴とする磁気浮上列車用荷重支持体の損傷評
    価方法。
  4. 【請求項4】 磁気浮上列車の超電導コイルを格納する
    内槽と、前記内槽の外側を真空状態に保つ外槽との間を
    締結し、FRP製筒状体の両端に金属板を接着した構造
    を有する荷重支持体の損傷を評価する方法であって、前
    記FRP製筒状体の前記金属板接着部近傍で、かつ鉛直
    方向の上部および下部に配置したひずみゲージにより、
    前記磁気浮上列車の浮上時に前記FRP製筒状体に発生
    するひずみを検出して、前記接着部のはく離発生および
    はく離長さを評価することを特徴とする磁気浮上列車用
    荷重支持体の損傷評価方法。
  5. 【請求項5】 磁気浮上列車の超電導コイルを格納する
    内槽と、前記内槽の外側を真空状態に保つ外槽との間を
    締結し、FRP製筒状体の両端に金属板を接着した構造
    を有する荷重支持体の損傷を評価する方法であって、前
    記FRP製筒状体の前記金属板接着部近傍で、かつ進行
    方向の前部および後部に配置したひずみゲージにより、
    前記磁気浮上列車の推進時に前記FRP製筒状体に発生
    するひずみを検出して、前記接着部のはく離発生および
    はく離長さを評価することを特徴とする磁気浮上列車用
    荷重支持体の損傷評価方法。
  6. 【請求項6】 磁気浮上列車の超電導コイルを格納する
    内槽と、前記内槽の外側を真空状態に保つ外槽との間を
    締結し、FRP製筒状体の両端に金属板を接着した構造
    を有する荷重支持体の損傷を評価する方法であって、前
    記FRP製筒状体の前記金属板接着部近傍で、かつ、少
    なくとも進行方向の前後部に配置したひずみゲージによ
    り、前記磁気浮上列車の励磁時に前記FRP製筒状体に
    発生するひずみを検出して、前記接着部のはく離発生お
    よびはく離長さを評価することを特徴とする磁気浮上列
    車用荷重支持体の損傷評価方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014133393A (ja) * 2013-01-11 2014-07-24 Dainippon Printing Co Ltd タッチパネル用前面基板
CN109523197A (zh) * 2018-12-26 2019-03-26 安和美(天津)科技有限公司 一种纤维增强复合材料的失效评估方法
CN114823036A (zh) * 2021-01-21 2022-07-29 中国航天科工飞航技术研究院(中国航天海鹰机电技术研究院) 一种超导磁体绝热支撑装置

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