JP2001104978A - 膜分離活性汚泥処理槽の運転立上方法 - Google Patents

膜分離活性汚泥処理槽の運転立上方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 種汚泥中に微生物が高濃度に存在し、かつ微
生物の代謝物質等のように膜分離に有害な物質が含まれ
ず、種汚泥の微生物が固化しないで容易に水に分散する
膜分離活性汚泥処理槽の運転立上方法を提供する。 【解決手段】 既存排水処理系10から引き抜いた活性
汚泥を膜分離馴養槽14へ投入し、膜分離馴養槽14に
既存排水処理系へ流入する廃水の一部を導くとともに、
空気を散気して活性汚泥を馴養し、膜分離馴養槽14に
浸漬した浸漬型膜分離装置15で固液分離して分離液を
槽外へ取り出すことにより槽内の活性汚泥濃度を高め、
膜分離馴養槽14から引き抜いた高濃度活性汚泥よりな
る湿状種汚泥を新設の膜分離活性汚泥処理槽23へ投入
して初期運転を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、膜分離活性汚泥処
理槽の運転立上方法に関し、し尿処理、下水処理、浄化
槽等において膜分離活性汚泥法を用いる曝気槽の運転を
立ち上げる技術に係るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、有機性廃水を処理する方法とし
て、古くから活性汚泥法が用いられてきた。この活性汚
泥は微生物群の総称であり、排水中に含まれる汚濁成分
とその量によって生育する微生物の種類とその数が限定
される。このため、図3に示すように、処理対象のある
特定の地域において発生したし尿や下水、またはある特
定の施設で発生する廃水を活性汚泥槽(曝気槽)1へ導
き、槽内の活性汚泥に汚水中の汚濁物質を捕食させるこ
とで、特定の廃水の下で特定の活性汚泥が馴養される。
活性汚泥槽1の汚泥混合液は沈殿槽2において活性汚泥
と処理水とに分離し、活性汚泥は再び活性汚泥槽1へ返
送して汚水処理に供し、処理水を系外へ取り出してい
る。
【0003】系内において増殖する活性汚泥は、定期的
に余剰汚泥として沈殿槽2から汚泥貯留槽3へ引き抜い
て貯留し、汚泥が発生した施設内において脱水、乾燥、
焼却処分したり、バキューム車4で場外へ搬出して処分
している。ところで、活性汚泥法には、図3に示すよう
に、活性汚泥槽5の内部に浸漬型膜分離装置6を浸漬
し、槽内の汚泥混合液を浸漬型膜分離装置6で固液分離
し、濾過膜を透過した濾過水を処理水として取り出すこ
とにより、槽内の活性汚泥が系外へ流出することを防止
し、槽内に活性汚泥を高濃度に維持する膜分離活性汚泥
法がある。
【0004】この膜分離活性汚泥法においては、新たな
施設の初期運転時に、種汚泥を膜分離活性汚泥法を行な
う曝気槽に投入して運転の立ち上げを行なっている。こ
の種汚泥は、その施設に流入する被処理水と同等の水質
の廃水を処理している既存の水処理施設の曝気槽から採
取するもので、活性汚泥を含む曝気槽混合液、もしくは
余剰汚泥である。この既存の水処理施設の曝気槽は、膜
分離活性汚泥法の他、標準活性汚泥法、長時間曝気法を
用いるものや接触曝気槽である場合が多い。
【0005】ところで、投入する種汚泥の量が運転立上
に必要な十分な量よりも少ない場合、あるいは当該施設
と同等の水質の廃水を処理している既存の水処理施設の
曝気槽混合液、もしくは余剰汚泥を入手できない場合に
は、便宜的な手法として、異なった水質の廃水を処理し
ている既存の水処理施設の曝気槽混合液、もしくは余剰
汚泥を種汚泥として投入し、投入した種汚泥中にわずか
に含まれる適性な微生物種を自然増殖させ、槽内の活性
汚泥を当該施設に流入する被処理水に適した微生物群に
馴養する初期運転を行なっている。
【0006】また、他の手法として、特公平6−734
51号に開示するように、種汚泥を乾燥、固化して保存
性を高めるとともに、高濃度化したものを作成し、これ
を膜分離活性汚泥法のみならず、一般的な活性汚泥法に
適用するものがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、種汚泥はそ
の変質を防ぐために、他の施設からの運搬に際しては短
時間の内に迅速に行なう必要ある。しかし、新設した膜
分離活性汚泥法の施設が既存の水処理施設から地理的に
離れている場合には、種汚泥を短時間の内に搬送するこ
とは困難であり、その運搬に掛かる費用も高くなるため
に、種汚泥を多量に採取することをあきらめる場合が多
かった。
【0008】標準活性汚泥法や長時間曝気法を用いる曝
気槽、あるいは接触曝気槽から採取する種汚泥は、通常
において汚泥中に含まれる微生物濃度が薄く、濃縮操作
を行なわない限り、必要量の活性汚泥を確保するために
多量に採取して運搬する必要がある。このため、意味の
ない無駄な水を多量に運搬するために多くの費用が掛か
っていた。さらに、これらの種汚泥は、微生物とともに
微生物の代謝物も含んでおり、それらの粒径や親水性の
関係で、膜分離活性汚泥法に使用する膜が目詰まりし易
い傾向があった。
【0009】特公平6−73451号に開示するよう
に、種汚泥を作成保存する場合には、十分な時間を掛け
て乾燥させれば、量を増やすことが可能であるが、上記
した質の問題は同様にある。この方法では微生物ととも
に微生物の代謝物質が多く含まれて固形化しており、被
処理水の対象有機物が固形物内部で拡散し難いために生
物活性が低い問題があった。また、作成汚泥は固形物質
であり、生物膜法、ろ床法のような方法で微生物を固定
状態で利用する方法では問題はないが、膜分離活性汚泥
法のように、曝気することにより微生物を浮遊状態で利
用する方法では、固化した微生物が沈んでしまい、固形
物中の微生物が水と接触しにくい。また、仮に曝気強度
を強くして浮遊させた場合であっても、固形物質が膜表
面を傷つけてしまうことが考えられる。
【0010】本発明は上記した課題を解決するものであ
り、種汚泥中に微生物が高濃度に存在し、かつ微生物の
代謝物質等のように膜分離に有害な物質が含まれず、種
汚泥の微生物が固化しないで容易に水に分散する膜分離
活性汚泥処理槽の運転立上方法を提供することを目的と
する。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1に係る本発明の膜分離活性汚泥処理槽の運
転立上方法は、既存排水処理系から引き抜いた活性汚泥
を膜分離馴養槽へ投入し、膜分離馴養槽に既存排水処理
系へ流入する廃水の一部を導くとともに、空気を散気し
て活性汚泥を馴養し、膜分離馴養槽内に浸漬した浸漬型
膜分離装置で固液分離して分離液を槽外へ取り出すこと
により槽内の活性汚泥濃度を高め、膜分離馴養槽から引
き抜いた高濃度活性汚泥よりなる湿状種汚泥を新設の膜
分離活性汚泥処理槽へ投入して初期運転を行なう構成と
したものである。
【0012】上記した構成により、膜分離馴養槽におい
て、槽内に散気する空気によって酸素を供給し、僅かな
栄養源が流入する状態で活性汚泥を馴養すると、活性汚
泥の微生物群は、不足する栄養源として汚泥中に含まれ
た糖分や蛋白質等の有機質からなる粘着性物質を微生物
分解して増殖する。この活性汚泥を浸漬型膜分離装置で
固液分離して、槽内の活性汚泥の固形物濃度を例えばS
S20000mg/L以上に保持することにより、種汚
泥中に微生物が高濃度に存在し、新設の膜分離活性汚泥
処理槽へ搬送する種汚泥の運搬量を軽減できる。また、
微生物の代謝物である多糖類、細胞壁の残骸などの粘着
性物質を微生物分解によって除去することにより、膜分
離馴養槽から引き抜いた活性汚泥は、新設の膜分離活性
汚泥処理槽における膜を目詰まりさせることなく、容易
に水に分散して短日時に微生物群が増殖するので、速や
かな運転の立ち上げを行なえる。
【0013】請求項2に係る本発明の膜分離活性汚泥処
理槽の運転立上方法は、既存排水処理系から引き抜いた
活性汚泥を膜分離馴養槽へ投入し、膜分離馴養槽に既存
排水処理系へ流入する廃水の一部を導くとともに、空気
を散気して活性汚泥を馴養し、膜分離馴養槽内に浸漬し
た浸漬型膜分離装置で固液分離して分離液を槽外へ取り
出すことにより槽内の活性汚泥濃度を高め、膜分離馴養
槽から引き抜いた高濃度活性汚泥からなる原料汚泥を脱
水・乾燥して乾燥種汚泥を形成し、この乾燥種汚泥を新
設の膜分離活性汚泥処理槽へ投入して初期運転を行なう
構成としたものである。
【0014】この構成により、乾燥汚泥は微生物の代謝
物である多糖類、細胞壁の残骸などの粘着性物質を微生
物分解によって除去してあるので、種汚泥の微生物が固
化しないで容易に水に分散し、新設の膜分離活性汚泥処
理槽における膜を目詰まりさせることなく、短日時に微
生物群が増殖して速やかな運転の立ち上げを行なえる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1において、既存排水処理系1
0は標準活性汚泥法を行なう施設であり、処理対象のあ
る特定の地域において発生したし尿や下水、またはある
特定の施設で発生する廃水を活性汚泥槽(曝気槽)11
へ導き、廃水を活性汚泥処理する。この既存排水処理系
10は、その廃水の水質が新設の処理施設における被処
理水の水質に似たものであることが望ましい。
【0016】活性汚泥槽11の汚泥混合液は沈殿槽12
において活性汚泥と処理水とに分離し、活性汚泥は再び
活性汚泥槽11へ返送して汚水処理に供し、処理水を系
外へ取り出す。沈殿槽12の活性汚泥は汚泥貯留槽13
へ引き抜いて貯留し、種汚泥原料として膜分離馴養槽1
4へ投入する。この標準活性汚泥法の種汚泥はSS50
00mg/Lである。膜分離馴養槽14に既存排水処理
系10へ流入する廃水の一部を導くとともに、空気を散
気して活性汚泥を馴養する。
【0017】膜分離馴養槽14は内部に浸漬型膜分離装
置15を浸漬しており、浸漬型膜分離装置15は膜モジ
ュール16と膜モジュール16の下方に配置した散気装
置17を有し、散気装置17に接続してブロア(図示省
略)を設けている。膜モジュール16は、鉛直方向に沿
って配置する複数枚の平板状膜カートリッジを平行に配
列したものであり、膜カートリッジはABS樹脂等の剛
体からなる濾板の両表面に有機膜からなる濾過膜を配置
したものである。膜モジュール16は駆動方式として槽
内の水頭を利用する重力濾過方式を採用している。膜モ
ジュール13の駆動方式は強制吸引方式でも良い。
【0018】膜分離馴養槽14において、散気装置17
から槽内に散気する空気によって酸素を供給し、僅かな
栄養源が流入する状態で活性汚泥を馴養すると、活性汚
泥の微生物群は、不足する栄養源として汚泥中に含まれ
た糖分や蛋白質等の有機質からなる粘着性物質を微生物
分解して増殖する。この膜分離馴養槽14の活性汚泥混
合液を浸漬型膜分離装置15により固液分離し、分離液
を透過液管18を通して処理水槽19に取り出す。この
とき、散気装置17から散気する空気のエアリフト作用
によって生起する上向流が膜モジュール16の膜面に掃
流として作用し、ケーキ層の付着を抑制する。
【0019】この操作によって、槽内の活性汚泥濃度
(固形物濃度)を例えばSS20000mg/L以上に
保持し、膜分離馴養槽14の高濃度活性汚泥を汚泥引抜
管20を通して汚泥貯留槽21に取り出して貯留する。
この汚泥貯留槽21の高濃度活性汚泥を湿状種汚泥とし
てバキューム車22で、新設の膜分離活性汚泥処理槽2
3へ投入する。この湿状種汚泥中には微生物が高濃度に
存在するので、新設の膜分離活性汚泥処理槽23へ搬送
する種汚泥の運搬量を軽減できる。
【0020】膜分離活性汚泥処理槽23は内部に浸漬型
膜分離装置24を浸漬しており、浸漬型膜分離装置24
は先に説明したものと同様であるので説明を省略する。
新設の膜分離活性汚泥処理槽23では、処理対象となる
新たな地域において発生したし尿や下水、または施設で
発生する廃水を槽へ導いて活性汚泥処理の初期運転を行
ない、微生物を馴養する。
【0021】このとき、種汚泥は粘着性物質を微生物分
解によって除去しているので、新設の膜分離活性汚泥処
理槽23における浸漬型膜分離装置24の膜を目詰まり
させることなく、容易に水に分散して膜分離活性汚泥法
に適した浮遊性微生物が短日時に増殖するので、速やか
な運転の立ち上げを行なえる。また、種汚泥は湿状であ
るために、浸漬型膜分離装置24の膜面を傷つけること
がない。
【0022】図2は本発明の他の実施の形態を示すもの
である。図2においては、汚泥貯留槽21の高濃度活性
汚泥を原料汚泥として取り出し、脱水機25および乾燥
機26において脱水・乾燥・粉末化して乾燥種汚泥を形
成し、新設の膜分離活性汚泥処理槽23へ投入して初期
運転を行なう。このことにより、種汚泥の減量化、高濃
度化を図ることができ、乾燥種汚泥を搬送車両27で運
搬することが容易に行なえる。乾燥汚泥は粘着性物質を
微生物分解によって除去してあるので、種汚泥の浮遊性
微生物が固化しないで容易に水に分散し、新設の膜分離
活性汚泥処理槽23における膜を目詰まりさせることな
く、短日時に微生物群が増殖して速やかな運転の立ち上
げを行なえる。また、保存性の高まりによって、種汚泥
を貯留して一度に多くの微生物を投入することが可能と
なる。
【0023】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、膜分離
馴養槽において活性汚泥を馴養することにより、活性汚
泥の微生物群が不足する栄養源として汚泥中に含まれた
糖分や蛋白質等の有機質からなる粘着性物質を微生物分
解して増殖するので、種汚泥中に微生物が高濃度に存在
し、かつ膜を目詰まりさせる微生物の代謝物である多糖
類、細胞壁の残骸などの粘着性物質を除去することがで
き、新設の膜分離活性汚泥処理槽において、種汚泥が容
易に水に分散して短日時に微生物群が増殖するので、速
やかな運転の立ち上げを行なえる。乾燥種汚泥において
は、保存性の高まりによって一度に多くの微生物を投入
することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における運転立上方法を示
すフローシートである。
【図2】本発明の他の実施の形態における運転立上方法
を示すフローシートである。
【図3】従来の活性汚泥法による排水処理を示すフロー
シートである。
【符号の説明】
10 既存排水処理系 11 活性汚泥槽 14 膜分離馴養槽 15 浸漬型膜分離装置 16 膜モジュール 17 散気装置 21 汚泥貯留槽 23 膜分離活性汚泥処理槽
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 和泉 清司 大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号 株式会社クボタ内 (72)発明者 川上 進 大阪府大阪市中央区南船場4丁目11−20心 斎橋ダイメンビル クボタ環境サービス株 式会社内 Fターム(参考) 4D006 GA06 HA41 HA42 JA31Z KA44 KB22 MA03 MA06 MB02 PB08 PC62 4D028 AA02 BC17 BC22 BC28 BD02 BD17 BD21 BE08

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 既存排水処理系から引き抜いた活性汚泥
    を膜分離馴養槽へ投入し、膜分離馴養槽に既存排水処理
    系へ流入する廃水の一部を導くとともに、空気を散気し
    て活性汚泥を馴養し、膜分離馴養槽内に浸漬した浸漬型
    膜分離装置で固液分離して分離液を槽外へ取り出すこと
    により槽内の活性汚泥濃度を高め、膜分離馴養槽から引
    き抜いた高濃度活性汚泥よりなる湿状種汚泥を新設の膜
    分離活性汚泥処理槽へ投入して初期運転を行なうことを
    特徴とする膜分離活性汚泥処理槽の運転立上方法。
  2. 【請求項2】 既存排水処理系から引き抜いた活性汚泥
    を膜分離馴養槽へ投入し、膜分離馴養槽に既存排水処理
    系へ流入する廃水の一部を導くとともに、空気を散気し
    て活性汚泥を馴養し、膜分離馴養槽内に浸漬した浸漬型
    膜分離装置で固液分離して分離液を槽外へ取り出すこと
    により槽内の活性汚泥濃度を高め、膜分離馴養槽から引
    き抜いた高濃度活性汚泥からなる原料汚泥を脱水・乾燥
    して乾燥種汚泥を形成し、この乾燥種汚泥を新設の膜分
    離活性汚泥処理槽へ投入して初期運転を行なうことを特
    徴とする膜分離活性汚泥処理槽の運転立上方法。
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