JP2001090639A - 内燃機関及びそれを用いた自動車 - Google Patents

内燃機関及びそれを用いた自動車

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JP2001090639A JP2000245839A JP2000245839A JP2001090639A JP 2001090639 A JP2001090639 A JP 2001090639A JP 2000245839 A JP2000245839 A JP 2000245839A JP 2000245839 A JP2000245839 A JP 2000245839A JP 2001090639 A JP2001090639 A JP 2001090639A
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充夫 近崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガソリン・アルコール混合燃料に適用しても
弁体と弁座の腐食損傷を抑制できる燃料噴射弁を備えた
内燃機関およびそれを用いた自動車を提供する。 【解決手段】 内燃機関の燃料噴射弁の弁座12と弁体
14の少なくとも表面を形成する金属よりもイオン化傾
向の高い犠牲腐食部材23,24を、弁座12と弁体1
4に電気的に接続して燃料に接する位置に設けることに
より、吹き返しガス中のSO2 −−等のイオンがガソリ
ン・アルコール混合燃料等の燃料に溶解して酸が生成さ
れても、弁体と弁座よりもイオン化傾向の高い金属の犠
牲腐食部材23,24が先に溶解されるから、その犠牲
腐食部材が存在するかぎり弁体と弁座の腐食損傷を防止
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関およびそ
れを用いた自動車に係り、特にアルコール混合燃料を用
いる内燃機関の燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料噴射弁は内燃機関の気筒に吸入され
る空気中に燃料を噴射して混入するためのものであり、
一般に、機関サイクルに同期させて電磁コイルにより弁
を開閉駆動し、その開時間を調整することにより燃料噴
射量の調整をするようにしている。また、噴射量の調整
精度の向上、噴霧粒径の微細化、空気との混合をよくす
る等の要求から、燃料噴射弁の弁体、弁座および噴射ノ
ズル等の形状や構造は高い精度で形成される。特に、燃
料等によりそれらの構成部品が腐食されると、上記要求
を満たすことが難しいことから、耐食性があり、かつ硬
度の高い材料を用いて形成することが重要である。
【0003】一般に、自動車用内燃機関(以下、エンジ
ンともいう)の燃料には、化石燃料、特にガソリンが主
に用いられている。ガソリンの主成分は、オレフィン系
やパラフィン系の鎖状炭化水素および芳香族炭化水素で
あり、これに硫黄等の不純物が若干含まれている。従
来、ガソリン用の燃料噴射弁の弁体、弁座および噴射ノ
ズル等の材料には鉄系材料が用いられており、特にガソ
リンの活性化によるそれら弁部品の腐食を防止するため
に、JISで規定されているSUS440C,SUS4
20J2等のマルテンサイト系ステンレス鋼が使用され
ている。これらの材料によれば、ガソリンによる弁体、
弁座等の腐食を防止でき、燃料漏れなどの不具合を発生
することはなかった。
【0004】一方、地球環境の汚染防止の点から、自動
車の排気ガス規制が強化されつつある。特に、米国のカ
ルフォルニア州で、排気ガス中の炭化水素(以下、ハイ
ドロカーボン又は単にHCと称する)の排出量を、19
94年から10年間で、0.25g/mileから0.
062g/mileに削減するという規制が決定され
た。
【0005】このような規制を満足するためには、新た
な触媒方式の開発、噴霧燃料の超微粒化、混合気の最適
化等、大幅な技術革新が必要である。これとともに、従
来のガソリン単独の燃料から、アルコールを混合したガ
ソリン・アルコール混合燃料に変更して、ハイドロカー
ボンの排出量を減少することが検討されている。
【0006】このガソリン・アルコール混合燃料とし
て、現在ガソリン15%、メタノールアルコール85%
の組成率の燃料(以下、M85と称する)が有望視され
ており、これによればHCはもとより、NOx,SOx
等の物質の排出量をも従来の1/2以下に低減できる見
込である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、弁体と弁座部
がマルテンサイト系ステンレス鋼で形成された燃料噴射
弁を用い、ガソリン・アルコール混合燃料に対する燃料
噴射弁の耐久試験および実車走行試験を実施した結果、
弁体および弁座が著しく腐食により損傷されるという問
題が発生した。このような、弁体および弁座が損傷する
と締切り不良による燃料漏れを起こし、燃焼悪化、燃費
悪化、エンジンの正常運転を阻害する等の不具合を生じ
させることになる。
【0008】上記のガソリン・アルコール混合燃料によ
る弁座等の腐食損傷の発生メカニズムについて検討した
ところ、次のようなメカニズムによるものと考えられ
る。すなわち、エンジンシリンダの頂部に設けられてい
る吸気弁の隙間から、シリンダ内の燃焼ガスの吹き返し
ガスやEGRガス(以下、吹き返しガスと総称する)が
漏れ、この漏れた吹き返しガスが吸気管に設けられた燃
料噴射弁の噴射ノズル部に達し、吹き返しガス中に含ま
れるSO4 −− 、NO3 、Cl、HCOO等のイ
オンが弁座部近傍で燃料に溶解し、この溶解により生じ
た酸により弁体や弁座が腐食されるものと考えられる。
また、弁体、弁座の表面のクロム酸化膜は、弁の開閉動
作によるたたき摩耗やすべり摩耗により破れ、新生面が
露出しているものと考えられる。
【0009】このような腐食を防止するには、弁体、弁
座等の材料を現在のマルテンサイト系ステンレス鋼より
も耐食性の大きなオーステナイト系又はフエライト系ス
テンレス鋼の材料を採用すればよい。しかし、弁体と弁
座の表面硬度としては、HRC54〜60程度の高い硬
度が要求されるから、硬度が低いそれらオーステナイト
系又はフエライト系ステンレス鋼は採用できない。ま
た、SUS630等の析出硬化型ステンレス鋼は、マル
テンサイト系ステンレス鋼よりも耐食性は大きいが、熱
処理による硬度上昇はせいぜいHRC40が限度である
から、硬度の点で問題がある。このように、現在知られ
ている材料では耐食性と硬度の双方を満たすことができ
ない。
【0010】本発明の課題は、ガソリン・アルコール混
合燃料に適用しても弁体と弁座の腐食損傷を抑制できる
燃料噴射弁を備えた内燃機関およびそれを用いた自動車
を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するた
め、本発明の燃料噴射弁は、弁座と弁体の少なくとも表
面を形成する金属よりもイオン化傾向の高い犠牲腐食部
材を、弁座と弁体に電気的に接続して燃料に接する位置
に設けたことを特徴とする。
【0012】この場合において、前記犠牲腐食部材は、
前記燃料噴射ノズルのボディの内表面の少なくとも一部
に層状に、又はリング状に設けてもよく、また弁体を接
離駆動するロッドに装着してリング状に設けてもよい。
【0013】また、記弁座と弁体をマルテンサイト系ス
テンレス鋼で形成し、前記犠牲腐食部材として、マルテ
ンサイト系ステンレス鋼よりもイオン化傾向が高い金属
材料を用いることを特徴とする。
【0014】
【作用】このように構成されることから、本発明によれ
ば、次の作用により上記課題を解決できる。すなわち、
吹き返しガス中のSO2 −−等のイオンがガソリン・ア
ルコール混合燃料等の燃料に溶解して酸が生成されて
も、弁体と弁座よりもイオン化傾向の高い金属の犠牲腐
食部材が先に溶解されるから、その犠牲腐食部材が存在
するかぎり弁体と弁座の腐食損傷を防止できる。その結
果、燃料漏れなどの弁の締切り不良を防止でき、燃料噴
射量の調整精度を高く維持でき、ガソリン・アルコール
混合燃料等の腐食性を有する燃料を使用しても、エンジ
ンの正常運転を確保することができる。
【0015】また、弁体と弁座をマルテンサイト系ステ
ンレス鋼により形成したものによれば、弁の開閉動作に
より弁体と弁座のクロム酸化膜が破れても、弁体と弁座
の腐食損傷を防止でき、しかも所望の高硬度を確保でき
るから、一層、弁の締切り不良を防止して燃料噴射量の
調整精度を高く維持できる。
【0016】この場合の犠牲腐食部材の具体例として
は、弁体と弁座の材料が、SUS440C,SUS42
0J2等のマルテンサイト系ステンレス鋼の場合、亜
鉛、アルミニウム、亜鉛とアルミニウムの合金、アルミ
ニウムを主体とする合金のいずれか1つが好ましい。こ
れに限らず、要は第9図に示す周知のイオン化傾向の関
係に従って選択すればよい。
【0017】
【実施の形態】以下、本発明を図示実施例に基づいて説
明する。図1に本発明の一実施例の燃料噴射弁の断面図
を示す。同図は燃料噴射弁1を図2に示すエンジンの吸
気管に設けられたギャラリに取り付けた状態を示してい
る。エンジン1の吸気工程において、エアフローメータ
3、スロットルバルブ4、吸気管5、吸気弁6を介して
シリンダ2に空気が吸入され、排気工程において、排気
弁7と排気管8を介して燃焼排ガスが排気される。ガソ
リン・アルコール混合燃料(以下、単に混合燃料とい
う)は、燃料噴射弁10から吸気管5内の空気中に噴射
することにより供給される。また、エンジンの排ガスの
一部およびオイルパン内などに漏れた排ガスを吸気管5
に戻す排ガス循環(EGR)系が設けられている。
【0018】図1に示すように、燃料噴射弁10の燃料
噴射ノズルは円筒形のノズルボディ11を有してなり、
このノズルボディ11の内部を仕切って弁座12が形成
され、この弁座の開口13に接離可能にボール状の弁体
14が設けられている。ノズルボディ11と弁座12は
一体に形成され、これと弁体14は、それぞれマルテン
サイト系ステンレス鋼(SUS440C又はSUS42
0J2)により形成されている。弁体14はプランジャ
ーロッド15により接離方向に摺動可能に支持されてい
る。プランジャーロッド15の他端は磁気コア16の空
芯部に設けられたロッドガイド17に挿入されている。
また、プランジャーロッド15は磁気コア16の空芯部
に挿入されたアジャスタ18にスプリング19を介して
連結され、これらによって弁体14の押圧力が調整され
るようになっている。ノズルボディ11の上端にストッ
パ20が設けられており、プランジャーロッド15に設
けられた突起と協動して弁体14の上限位置を規制して
いる。また、弁座12の上部に図3に示す形状のスワラ
29が取り付けられ、これによって噴出流に旋回力を与
えて空気との混合を促進するようにしている。
【0019】磁気コア16の外周に電磁コイル21が巻
回され、これを包囲してヨーク22が設けられている。
このヨーク22はバルブボディを兼ねており、ノズルボ
ディ11と磁気コア16が固定されている。
【0020】本発明の特徴部にかかる犠牲腐食部材とし
て、本実施例では、図1及び図4の斜視図に示すよう
に、ノズルボディ11の内壁上端を切り欠いてなる凹部
に亜鉛の第1のリング23を装着している。また、図1
及び図5の斜視図に示すように、プランジャーロッド1
5のストッパ20の上に位置する個所に亜鉛の第2のリ
ング24を嵌め込んでいる。それらリング23,24は
塑性結合あるいは溶接によりプランジャーロッド15、
ノズルボディ11に電気的に接続されている。
【0021】このように構成される燃料噴射弁10は、
ギャラリ25に設けられた取付け穴にシール用のオーリ
ング28を介して取り付けられる。混合燃料はギャラリ
25に設けられた燃料通路26に連通可能にヨーク22
の側壁に穿設された導入穴27から供給される。導入穴
27からヨーク22の内部に導入された混合燃料は、図
示矢印で示した燃料通路を通ってノズルボディ11内部
に導かれる。
【0022】弁体14は、通常は、スプリング19の付
勢力により弁座12の開口13の周辺に形成された弁座
面(シート面)に押接されており、その状態では燃料の
噴射が停止されている。電磁コイル21に通電すると、
磁力によりスプリング19に坑してプランジャーロッド
15が引き上げられ、弁体14が弁座面から離れ混合燃
料が開口13から噴射される。例えば、エンジン回転数
が2000rpmの場合1000回/分の開閉動作が行
われる。
【0023】このような頻繁な開閉動作により、弁座1
2と弁体14の接離する面のクロム酸化膜が破れ、混合
燃料に吹き返しガスなどが溶解して生ずる酸により腐食
される環境になる。しかし、本実施例によれば、第9図
に示すように、マルテンサイト系ステンレス鋼よりもイ
オン化傾向の高い亜鉛で形成された第1と第2のリング
23,24が燃料が充満されている燃料通路に、弁座1
2と弁体14に電気的に接続して設けられていることか
ら、いわゆる局所電池作用により弁座12と弁体14が
陰極となり、亜鉛のリング23,24が陽極となる(リ
ング24の場合の関係図を図6に示す。)。その結果、
リング23,24が先に腐食されるから、リング23,
24が存在する限りにおいて弁座12と弁体14の腐食
を防止できる。
【0024】ここで、前述したガソリン・アルコール混
合燃料による弁座12と弁体14の腐食メカニズムを試
験により確認したデータを表1、図7、8に示すととも
に、上記実施例の犠牲腐食部材による防食効果の実証デ
ータを示す。
【0025】試験に使用した混合燃料は、実用の可能性
が高いM85(ガソリン15%・メタノールアルコール
85%)を用いた。これを図2に示した位置に取り付け
られた従来の燃料噴射弁に供給し、通常の条件でエンジ
ンを運転し、吸気弁6から漏れて燃料噴射弁の噴射ノズ
ル部に吹き返されるガスおよびEGRガスに含まれる酸
成分がどの程度あるかを測定した。その結果、2種類の
エンジンA,Bについていずれも表1に示すように、少
なからぬ量のSO4 −−、NO3 、Cl等の酸成分が
検出された。
【0026】
【表1】 しかし、これらSO4 −−等の成分はガソリン単独の場
合にも多かれ少なかれ検出される。したがって、M85
を使用すると何故腐食が生ずるのか確認するため、ガソ
リンとM85とにそれぞれ塩酸、硫酸、硝酸を各100
ppmとなるように加え、それらの液中にSUS440
CとSUS420J2を常温で浸漬した。その結果、図
7に示すように、同じ酸濃度であってもガソリンに比
べ、M85の場合は材料の腐食が非常に強まることが判
明した。
【0027】このことを溶媒の自己解離指数(解離定数
の逆数の常用対数値、25℃)の観点から考察してみ
る。一般に同種の酸をある溶媒に同濃度に溶解した場
合、自己解離指数が小さいほど金属材料に対する腐食性
が強くなることが知られている。これは酸の解離を促進
させることによる。表2に水、メタノール、エタノール
の自己解離指数を示す。
【0028】
【表2】 表2から、水の自己解離指数が最も小さく、次いでメタ
ノール、エタノールの順になっている。したがって、水
を溶媒としたときに酸は最も腐食性の強い溶液となるこ
とが判り、メタノールは水に近い自己解離指数であるこ
とから、比較的腐食性の強い溶液となることが判る。こ
れに対して、ガソリンの自己解離指数は測定されていな
いが、ガソリンはアロマ、パラフィン、オレフィン等の
芳香族又は鎖状炭化水素の混合物であるから、エタノー
ルよりも自己解離指数が大きいと推察する。この自己解
離指数の差により、ガソリン単独の場合に比べて混合燃
料の場合の腐食が大きいものと考える。
【0029】次に、弁座と弁体の接離する面だけが腐食
される理由について、前述したようにたたき摩耗やすべ
り摩耗により表面のクロム酸化膜が破れその部分の耐食
性が低下すると予想した。これについて確認するため、
SUS440CとSUS420J2の試験片を、ぎ酸1
500ppmの溶液に常温下で浸漬する試験を行った。
試験片は浸漬直前に研摩したものと、そうでないものと
をそれぞれの材料について用意した。その結果は、図8
に示すように、各材料とも研摩していないもの、すなわ
ち表面に酸化膜を有する試験片は腐食が著しく少なく、
直前に研摩した試験片は著しく腐食され易いことが確認
できた。
【0030】次に、犠牲腐食部材を用いて弁座と弁体の
腐食を防止できる効果を確認する試験を行った。犠牲腐
食部材として亜鉛Znを用いた。SUS440CとSU
S420J2の試験片を表面研摩後、亜鉛板を鋼線で接
続し、常温でぎ酸1500ppmの溶液中に48時間浸
漬した。その結果、表3に示すごとく、Znだけが腐食
し、SUS440CとSUS420J2の試験片の減量
は零であった。
【0031】
【表3】 また、各試験片の表面を観察したところ、若干粒界を確
認できる部分があったことから、ごく微量の腐食が起こ
っていたものとみられる。しかし、図8の試験による試
験片の表面にみられたようなマトリクスが腐食し、クロ
ム酸化膜がいたるところで脱落しているという損傷状態
から比べると、腐食損傷は皆無に等しいから、実用上何
ら支障が無いものと考える。
【0032】以上の実験結果から、防食対象の金属より
もイオン化傾向の高い犠牲腐食部材(犠牲陽極)の採用
により、弁体と弁座の材料に従来のマルテンサイト系ス
テンレス鋼を用いても、混合燃料に対する腐食損傷を防
止できることが明らかである。 また、図1実施例で
は、犠牲腐食部材としてのリングを2か所に設けたが、
いずれか一方でもよい。要は、できるだけ防食対象の弁
体と弁座の近くに設けることが望ましい。特に、加工性
と、組立て性を考慮すると、プランジャーロッドに嵌め
込むリング24よりも、ノズルボディ11の内面に固着
するリング23が好ましい。
【0033】また、図1、図4、図5のような形状のリ
ングに限られるものではなく、弁座12及び弁体14と
電気的に接続され、かつ燃料に接する位置であれば、形
状は任意に設計できる。
【0034】また、犠牲腐食部材としては、亜鉛Znに
限らず、弁体と弁座の材料が、SUS440C,SUS
420J2等のマルテンサイト系ステンレス鋼の場合、
亜鉛、アルミニウム、亜鉛とアルミニウムの合金、アル
ミニウムを主体とする合金のいずれか1つを用いればよ
い。要は、弁体と弁座の材料よりもイオン化傾向の高い
金属を犠牲腐食部材に用いればよい。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
吹き返しガス中のSO2 −−等のイオンがガソリン・ア
ルコール混合燃料等の燃料に溶解して酸が生成されて
も、犠牲腐食部材が先に溶解されるから、その犠牲腐食
部材が存在するかぎり弁体と弁座の腐食損傷を防止でき
る。その結果、燃料漏れなどの弁の締切り不良を防止で
き、燃料噴射量の調整精度を高く維持でき、ガソリン・
アルコール混合燃料等の腐食性を有する燃料を使用して
も、エンジンの正常運転を確保することができる。
【0036】また、弁体と弁座をマルテンサイト系ステ
ンレス鋼により形成したものによれば、弁の開閉動作に
より弁体と弁座のクロム酸化膜が破れても、弁体と弁座
の腐食損傷を防止でき、しかも所望の高硬度を確保でき
るから、一層、弁の締切り不良を防止して燃料噴射量の
調整精度を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の燃料噴射弁の断面図であ
る。
【図2】本発明の燃料噴射弁が適用されるエンジン回り
の系統構成図である。
【図3】図1実施例のスワラの外観斜視図である。
【図4】図1実施例のノズルボディの外観斜視図であ
る。
【図5】図1実施例の犠牲腐食部材のリングをプランジ
ャーロッドに嵌め込んだ状態を示す斜視図である。
【図6】犠牲腐食部材のリングが犠牲陽極として腐食す
ることを説明する図である。
【図7】ガソリンとガソリン・アルコール混合燃料の酸
に対する腐食性を比較する浸漬試験の結果を示す図であ
る。
【図8】クロム酸化膜の有無による腐食減量の比較をす
るために行った浸漬試験の結果を示す図である。
【図9】イオン化傾向の順列を示す図である。
【符号の説明】
10 燃料噴射弁、 11 ノズルボディ、 12 弁座、 13 開口、 14 弁体、 15 プランジャーロッド、 16 磁気コア、 17 プランジャーガイド、 20 ストッパ、 21 電磁コイル、 22 ヨーク、 23,24 リング(犠牲腐食部材) 25 ギャラリー 26 燃料通路、 27 導入穴。
【手続補正書】
【提出日】平成12年8月15日(2000.8.1
5)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【請求項】 エアフローメータ、スロットルバルブ、
吸気管および吸気弁を介してシリンダに空気が吸入さ
れ、前記吸気管に設けられた燃料噴射弁から燃料が前記
吸気管内の空気中に噴射により供給される内燃機関にお
いて、前記燃料噴射弁は、燃料噴射ノズルの燃料の通路
を遮って設けられた弁座と、該弁座の開口に接離可能に
設けられた弁体とを有し、前記弁座と弁体の少なくとも
表面を形成する金属よりもイオン化傾向の高い金属の犠
牲腐食部材を、燃料が通流される部位に設け、かつ前記
弁座と前記弁体の少なくとも一方に電気的に接続したも
のであることを特徴とする内燃機関。
【請求項】 エアフローメータ、スロットルバルブ、
吸気管および吸気弁を介してシリンダに空気が吸入さ
れ、前記吸気管に設けられた燃料噴射弁から燃料が前記
吸気管内の空気中に噴射により供給される内燃機関にお
いて、前記燃料噴射弁は、中空筒形のノズルボディを仕
切って形成された弁座と、該弁座の開口に対向させて設
けられた弁体と、該弁体を前記開口に接離可能に摺動支
持するロッドと、該ロッドを介して前記弁体を前記開口
に接離駆動する弁駆動手段と、前記ノズルボディに連通
された燃料通路とを具備し、前記ノズルボディと前記弁
座と前記弁体がマルテンサイト系ステンレス鋼により形
成され、前記ノズルボディの内壁面の一部と前記ロッド
の少なくとも一方に、マルテンサイト系ステンレス鋼よ
りもイオン化傾向の高い金属を用いてなるリングを電気
的に接続して設けてなるものであることを特徴とする内
燃機関。
【請求項】 請求項又は請求項に記載の内燃機関
を用いてなる自動車。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するた
め、本発明は、エアフローメータ、スロットルバルブ、
吸気管および吸気弁を介してシリンダに空気が吸入さ
れ、吸気管に設けられた燃料噴射弁から燃料が吸気管内
の空気中に噴射により供給される内燃機関において、燃
料噴射弁は、燃料噴射ノズルの燃料の通路を遮って設け
られた弁座と、該弁座の開口に接離可能に設けられた弁
体とを有し、弁座と弁体の少なくとも表面を形成する金
属よりもイオン化傾向の高い金属の犠牲腐食部材を、燃
料が通流される部位に設け、かつ弁座と弁体の少なくと
も一方に電気的に接続したものであることを特徴とす
る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】また、燃料噴射弁は、中空筒形のノズルボ
ディを仕切って形成された弁座と、該弁座の開口に対向
させて設けられた弁体と、該弁体を前記開口に接離可能
に摺動支持するロッドと、該ロッドを介して前記弁体を
前記開口に接離駆動する弁駆動手段と、前記ノズルボデ
ィに連通された燃料通路とを具備し、前記ノズルボディ
と前記弁座と前記弁体がマルテンサイト系ステンレス鋼
により形成され、前記ノズルボディの内壁面の一部と前
記ロッドの少なくとも一方に、マルテンサイト系ステン
レス鋼よりもイオン化傾向の高い金属を用いてなるリン
グを電気的に接続して設けてなるものとすることができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 近崎 充夫 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 寺門 一佳 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器事業部内 (72)発明者 相馬 正浩 茨城県ひたちなか市高場2477番地 株式会 社日立カーエンジニアリング内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃料噴射ノズルの燃料の通路を遮って設
    けられた弁座と、該弁座の開口に接離可能に設けられた
    弁体とを有してなる燃料噴射弁を備えた内燃機関におい
    て、前記弁座と弁体の少なくとも表面を形成する金属よ
    りもイオン化傾向の高い金属の犠牲腐食部材を、前記弁
    座と弁体に電気的に接続して燃料が通流される部位に設
    けたことを特徴とする内燃機関。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記犠牲腐食部材
    が、前記燃料噴射ノズルのボディの内表面の少なくとも
    一部に層状に設けられたことを特徴とする内燃機関。
  3. 【請求項3】 請求項1において、前記犠牲腐食部材
    が、前記燃料噴射ノズルの円筒形ボディの内面に接して
    設けられたリング状部材であることを特徴とする内燃機
    関。
  4. 【請求項4】 請求項1において、前記犠牲腐食部材
    が、前記弁体を接離駆動するロッドに装着されたリング
    状部材であることを特徴とする内燃機関。
  5. 【請求項5】 請求項1,2,3,4のいずれかにおい
    て、前記弁座と弁体を形成する金属がマルテンサイト系
    ステンレス鋼であり、前記犠牲腐食部材が亜鉛、アルミ
    ニウム、亜鉛とアルミニウムの合金、アルミニウムを主
    体とする合金のいずれか1つであることを特徴とする内
    燃機関。
  6. 【請求項6】 中空筒形のノズルボディを仕切って形成
    された弁座と、該弁座の開口に対向させて設けられた弁
    体と、該弁体を前記開口に接離可能に摺動支持するロッ
    ドと、該ロッドを介して前記弁体を前記開口に接離駆動
    する弁駆動手段と、前記ノズルボディに連通された燃料
    通路とを具備してなり、前記ノズルボディと前記弁座と
    前記弁体がマルテンサイト系ステンレス鋼により形成さ
    れてなる燃料噴射弁を備えた内燃機関において、前記ノ
    ズルボディの内壁面の一部と前記ロッドの少なくとも一
    方に、マルテンサイト系ステンレス鋼よりもイオン化傾
    向の高い金属を用いてなるリングを電気的に接続して設
    けたことを特徴とする内燃機関。
  7. 【請求項7】 エアフローメータ、スロットルバルブ、
    吸気管および吸気弁を介してシリンダに空気が吸入さ
    れ、前記吸気管に設けられた燃料噴射弁から燃料が前記
    吸気管内の空気中に噴射により供給される内燃機関にお
    いて、前記燃料噴射弁は、燃料噴射ノズルの燃料の通路
    を遮って設けられた弁座と、該弁座の開口に接離可能に
    設けられた弁体とを有し、前記弁座と弁体の少なくとも
    表面を形成する金属よりもイオン化傾向の高い金属の犠
    牲腐食部材を、燃料が通流される部位に設け、かつ前記
    弁座と前記弁体の少なくとも一方に電気的に接続したも
    のであることを特徴とする内燃機関。
  8. 【請求項8】 エアフローメータ、スロットルバルブ、
    吸気管および吸気弁を介してシリンダに空気が吸入さ
    れ、前記吸気管に設けられた燃料噴射弁から燃料が前記
    吸気管内の空気中に噴射により供給される内燃機関にお
    いて、前記燃料噴射弁は、中空筒形のノズルボディを仕
    切って形成された弁座と、該弁座の開口に対向させて設
    けられた弁体と、該弁体を前記開口に接離可能に摺動支
    持するロッドと、該ロッドを介して前記弁体を前記開口
    に接離駆動する弁駆動手段と、前記ノズルボディに連通
    された燃料通路とを具備し、前記ノズルボディと前記弁
    座と前記弁体がマルテンサイト系ステンレス鋼により形
    成され、前記ノズルボディの内壁面の一部と前記ロッド
    の少なくとも一方に、マルテンサイト系ステンレス鋼よ
    りもイオン化傾向の高い金属を用いてなるリングを電気
    的に接続して設けてなるものであることを特徴とする内
    燃機関。
  9. 【請求項9】 請求項7又は請求項8に記載の内燃機関
    を用いてなる自動車。
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JP2017150045A (ja) * 2016-02-26 2017-08-31 山陽特殊製鋼株式会社 マルテンサイト系ステンレス鋼

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