JP2001081237A - 水膨潤性医療用高分子ゲルの製造法及び水膨潤性医療用高分子ゲル - Google Patents

水膨潤性医療用高分子ゲルの製造法及び水膨潤性医療用高分子ゲル

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JP2001081237A
JP2001081237A JP25880899A JP25880899A JP2001081237A JP 2001081237 A JP2001081237 A JP 2001081237A JP 25880899 A JP25880899 A JP 25880899A JP 25880899 A JP25880899 A JP 25880899A JP 2001081237 A JP2001081237 A JP 2001081237A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 PECゲルの組成を精密に制御することがで
き、目的に応じて成形・加工して精密な形状にすること
のできるPECゲルの製造法及び組成が均一な水膨潤性
PECゲルの成形・加工品を提供する。 【解決手段】 刺激によりイオン性基を生成することの
できる機能団を二つ以上有する水溶性ポリマーおよびそ
れらの対イオン基を二つ以上有する水溶性ポリマーを混
合して目的の形状に成形もしくは加工した後、刺激によ
りイオン性基の生成を誘起してポリイオンコンプレック
スを形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水膨潤性医療用高
分子ゲルの製造法及び該製造法により製造される水膨潤
性医療用高分子ゲルに関する。本発明の製造法によれ
ば、これまで困難であったポリイオンコンプレックスゲ
ルの組成を精密に制御できるため、生成したポリイオン
コンプレックスゲルの膨潤度、生分解性、抗血栓性など
の性能を自由自在に設計することができ、型中で硬化さ
せることによって容易にポリイオンコンプレックスゲル
の成型品を得ることが可能である。このように、本発明
は水膨潤性がある医療用高分子ゲルの製造法として好適
であり、さらに成形、加工が可能であるため、得られた
高分子ゲルはとくに医療用として好適であることは勿
論、従来適用が難しかった用途への応用も可能である。
【0002】
【従来の技術】アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマ
ーの混合により形成されるポリイオンコンプレックス
(以下、PECと略称する)ゲルは、化学的共有結合を
利用した高分子架橋とは異なり、イオン性基を有する高
分子間のクーロン力による架橋であるため毒性の高い架
橋剤を必要としない。この特徴は医療用高分子ゲルの製
造手段としては理想的である。また、PEC架橋体は、
透水性、イオン選択透過性、抗血液凝固性などの特性を
有し、医療分野において、透析膜、コンタクトレンズ、
止血剤・接着剤・シーラント、薬剤放出デバイスを構成
する材料、細胞および酵素を固定化する担体マトリクス
などに使用され、その重要性はますます高まっている。
【0003】そのため、各用途に最適な性状、組成を実
現できるPECゲルの製造法が望まれているが、通常の
条件ではアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーを混
合すると瞬時にPECが生成し、生成したPECは一般
的な溶媒には不溶となるため、目的とする性状への成形
・加工が困難であることがPECゲルを各種用途へ展開
するにあたって最大の問題点となっている。
【0004】この難点を克服するため、これまで多くの
PECゲル製造法が提案されている。例えば、特開昭5
0−123179号公報及び特開昭50−8879号公
報に、高分子電解質の希薄溶液中に対して、それとは反
対電荷を有する高分子電解質の溶液を滴下して生成した
不定形のPECゲルの沈殿を利用する方法が開示されて
いる。しかしながら、PECは一般的な溶媒に不溶であ
るため、こうして調製された不定形のPECゲルを例え
ば膜などの形態に成形するには、特殊な三成分系溶媒に
溶解させる必要がある(例えば、高分子学会高分子実験
学編集委員会編、機能性高分子、共立出版、556〜5
57頁、菊池ら、日本化学会誌、1985年、1465
頁)。そのため、それぞれ個別のPECについて最適な
三成分系溶媒の組成を検討しなくてはならず、これが必
ずしも発見できるとは限らない。また、三成分系溶媒は
毒性の強い物質を含むこともあり、生成した膜の洗浄工
程に多大な労力を必要とするという問題も指摘されてい
る。
【0005】また、PECを製造する別の方法として、
特開平3−234770公報に、界面に生成するポリイ
オンコンプレックス架橋体を利用する界面形成法が開示
されている。しかしながら、この方法ではきわめて薄い
膜状のPECゲルしか製造することができず、PECゲ
ルの組成を制御することも非常に難しい。したがって、
上述したような方法では医療用途に適したPECゲルの
成型品を製造することは困難である。
【0006】一方、このような三成分系溶媒を用いない
PECの可溶化溶媒も提案されている。例えば、特開昭
55−161802号公報、特開昭55−161803
号公報、特開昭55−161804号公報、特開昭55
−161805号公報などには、アンモニア水溶液など
が特定のアニオン性ポリマーとカルボキシメチル化キト
サンから生成するPECゲルの可溶化溶媒として有効で
あることが記載されている。しかしながら、この方法
は、アニオン性ポリマーとカルボキシメチル化キトサン
を混合し、不定形のPECゲルを沈殿させる方法である
ので、PECゲルの組成を自由に設計することは難し
い。また、成形する際に溶解したPECゲルの溶液をあ
る程度乾燥する必要があるため、形状はフィルム状、繊
維状のものに限定されてしまう。
【0007】さらに、特開平1−156341号公報
に、ギ酸水溶液に直接カルボキシメチル化セルロースと
キトサンを混合溶解して、その後溶媒を除去することに
よってPECゲルを製造する方法も提案されている。し
かし、この方法はカルボキシメチル化セルロースとキト
サンの組み合わせに限定されること、ギ酸水溶液を使用
することによる毒性の問題が不可避であること、溶媒除
去を前提としているため得られるPECゲルは従来の界
面形成法と同様、乾燥された膜、又はフィルム状のもの
に限定されるという問題点がある。
【0008】このようにPECゲルは非常に幅広い利用
分野を潜在的に有しているにも関わらず、ゲル組成の制
御、製膜や精密な形状を有するものへの成形などの操作
が難しく、分子構造や組成など自由な設計は困難であ
る。とくに精密な形状を有するPECを従来法により製
造することは不可能であり、PECゲルの医療用途への
適用が制限されていた。
【0009】以上のような難点を克服するため、近年に
おいても任意に成形・加工が可能なPECゲルを製造す
る方法が検討され続けている。その例として、特開平8
−104720号公報に、マトリックス重合法と呼ばれ
る制御可能なPECゲルの製造法が開示されている。こ
の方法によれば、型により成形されたPECゲルを得る
ことは可能であるが、生成したPECゲルにはしばしば
毒性の高いモノマーが残留していることがあり、このよ
うな残留モノマーを除去するための煩雑な工程が必要と
される。したがって、この方法でもPECを用いる架橋
方法の利点を十分に生かし切れた方法であるとは言い難
い。
【0010】一方、ジャーナル オブ アプライド ポ
リマー サイエンス、第50巻、2021頁、1993
年(J.Appl.Polym.Sci.,50,20
21(1993))に、型による成形が可能なPECゲ
ルの製造法が開示されている。これは、アニオン性ポリ
マーとカチオン性ポリマーを高い塩濃度の溶媒中で加熱
して均一に溶解し、冷却、洗浄することにより、均一な
組成のPECゲルを得る方法である。しかしながら、こ
の方法は、ごく一部のアニオン性多糖類とキトサン(カ
チオン性ポリマー)の組み合わせにのみ有効であるこ
と、熱により分解が促進されるポリマーへの適用は困難
であること、さらに生成したPECゲルに含まれる多量
の塩の除去が必要であることなどが問題であり、用途に
応じたアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの組み
合わせを選択することが難しく、後処理工程も煩雑とな
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、これ
までに提案されている従来技術では、PECゲルの組成
を精密に制御してPECゲルの特性を設計すること、並
びに目的に応じて成形・加工して精密な形状(例えば、
繊維状、フィルム状、シート状、塊状など)にすること
は困難であり、これらを可能とするPECゲルの製造法
が待望されていた。したがって本発明の目的は、PEC
ゲルの組成を精密に制御することができ、目的に応じて
成形・加工して精密な形状にすることのできるPECゲ
ルの製造法及び組成が均一な水膨潤性PECゲルの成形
・加工品を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意検討
し、刺激によりイオン性基を生成することのできる機能
団を二つ以上有する水溶性ポリマーとそれらの対イオン
基を二つ以上有する水溶性ポリマーを混合して混合液を
調製し、この混合液を直接基材へコーティングしたり、
精密な鋳型への導入、繊維化、フィルム・シート化、マ
イクロビーズ化、塊状化など適当な形状へ成形・加工し
た後、刺激によりイオン性基の生成を誘起してPECゲ
ルを形成させることにより上記目的が達成できることを
見出し、本発明に到達した。
【0013】すなわち、本発明は、刺激によりイオン性
基を生成することのできる機能団を二つ以上有する水溶
性ポリマーおよびそれらの対イオン基を二つ以上有する
水溶性ポリマーを混合して目的の形状に成形もしくは加
工した後、刺激によりイオン性基の生成を誘起してポリ
イオンコンプレックスを形成させることを特徴とする水
膨潤性医療用高分子ゲルの製造法である。本発明のもう
一つの発明は、この製造法により得られる水膨潤性医療
用高分子ゲルである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明において、刺激により生成
するイオン性基とは、刺激により生成するアニオン性基
又はカチオン性基であり、本発明における水溶性ポリマ
ーは、このようなイオン性基を生成することのできる機
能団を少なくとも二つ以上有する必要がある。刺激によ
ってアニオン性基を生成することのできる機能団を有す
る水溶性ポリマー(以下、このような水溶性ポリマーを
アニオン性ポリマー前駆体と略称する)は、カチオン性
の水溶性ポリマーとクーロン力によるイオン結合を殆ど
形成しないため、均一な混合物(以下、未架橋PE混合
物と略称する)を容易に製造することができる。逆に刺
激によってカチオン性基を生成することのできる機能団
を少なくとも二つ以上有する水溶性ポリマー(以下、カ
チオン性ポリマー前駆体と略称する)もアニオン性の水
溶性ポリマーとクーロン力によるイオン結合を殆ど形成
しないため、未架橋PE混合物を容易に製造することが
できる。
【0015】未架橋PE混合物は、溶媒を含むか又は含
まない状態で目的の形状に成形・加工される。未架橋P
E混合物中のアニオン性ポリマー前駆体又はカチオン性
ポリマー前駆体は、刺激を与えることでイオン性基を生
成することができるため、未架橋PE混合物は容易にP
ECを形成して各種の溶媒に対して不溶性の成形された
高分子ゲルとすることができる。この成形されたPEC
ゲルを構成するアニオン性ポリマー及びカチオン性ポリ
マーは水溶性であるため、得られたPECゲルは水膨潤
性となる。
【0016】本発明における刺激とは、前述したアニオ
ン性ポリマー前駆体又はカチオン性ポリマー前駆体に対
してそれぞれアニオン性基、カチオン性基の生成を促す
物理的、化学的な刺激であり、化学物質、光、熱、超音
波などを例示することができる。なかでも、化学物質又
は光は本発明の効果の発現が著しく好ましい。化学物質
と光を組み合わせて使用してもよい。
【0017】刺激として化学物質を用いる場合は、未架
橋PE混合物に含まれる化学物質が機能団へ触媒的に作
用してイオン基を生成させることもできるし、機能団に
対して化学的に結合することによりイオン基を生成させ
ることもできる。また、そのままでは刺激として不活性
である化学物質を未架橋PE混合物に予め添加してお
き、光又は熱などを与えることで不活性な化学物質を刺
激として作用できる活性な状態へと変化させ、上記機能
団に作用させることによってイオン性基を生成させるこ
ともできる。さらに、刺激としては不活性な化学物質で
ある触媒およびその基質を未架橋PE混合物に予め添加
しておく方法も行い得る。このとき刺激として活性な化
学物質(触媒反応の生成物)へ基質が徐々に変化して上
記機能団に作用するが、必要に応じて光又は熱を与えて
触媒反応を加速してもよい。このような刺激を作用させ
るのと同時に、冷却又は加熱を行うことによってイオン
性基の生成を制御することができる。
【0018】このような刺激として用いられる化学物質
は、成形・加工された未架橋PE混合物に直接混合させ
るか、又は含浸させることで浸透させる。刺激として不
活性な状態の化学物質は、予め未架橋PE混合物に含有
させて成形・加工することができるし、成形・加工され
た未架橋PE混合物に含浸させることもできる。この場
合、光又は熱を第一の刺激として作用させることによ
り、刺激として不活性な化学物質を活性な状態へ変化さ
せてイオン性基を生成することができる。
【0019】刺激に使用される光とは紫外光および可視
光を指しており、これらが直接的にイオン性基を生成で
きる機能団に作用することによって機能団が変化し、イ
オン性基が生成してもよい。光を刺激として作用させる
のと同時に、冷却又は加熱を行うことによってイオン性
基の生成を制御することもできる。以上のような刺激の
態様が考えられ、目的に応じて適宜選択することができ
る。これらの刺激は、刺激によりイオン基を生成できる
機能団の特性に応じて最適なものが選ばれる。
【0020】アニオン性ポリマー前駆体に含有され、刺
激によりアニオン性基を生成する機能団とは、カルボキ
シル基、硫酸基、スルホン酸基、燐酸基、ホスホン酸基
などのアニオン性基がカチオン性基とクーロン的な結合
を行わないように改変されているものであって、このよ
うな機能団としては、刺激によってアニオン性基を生成
できるもの(以下、改変アニオン性基と略称することが
ある)であればとくに限定されるものではない。アニオ
ン性ポリマー前駆体に含有される二つ以上の改変アニオ
ン性基は必ずしも同じ種類である必要はない。カルボキ
シル基はアニオン性基として一般的であり、また比較的
容易にカチオン性基とイオン的な結合をしないように改
変できるので好ましいアニオン性基である。
【0021】カルボキシル基の改変は保護基によりノニ
オン性もしくはカチオン性に変換することによってなさ
れる。カルボキシル基を改変する具体的な方法として
は、例えばメチルエステル、エチルエステル、ベンジル
エステル、シリルエステル、チオエステル、オキサゾー
ル、オキサゾリン、オルソエステルなどのグリーンおよ
びウッツ著、プロテクティブ グループ イン オーガ
ニック シンセシス、第2版、ジョン ワイリー アン
ド サンズ、1991年(Theodra W.Gre
en,Peter G.M.Wuts,Protect
ive Groups in Organic Syn
thesis,Second Edition,Joh
n Wiley & Sons,1991)に記載され
ている置換エステル型などのカルボキシル基の保護基を
利用する方法があげられる。このとき同時に記載されて
いる酸、アルカリ触媒、水素添加触媒、水素などの脱保
護条件を刺激として用いることでカルボキシル基の生成
を実現することができる。
【0022】この中でとくに好ましい保護基はエステル
型保護基であり、上述した脱保護条件を刺激とし、さら
に場合に応じて熱を加えることでカルボキシル基を生成
することができる。また、バイオオーガニック アンド
メディカル ケミストリーレターズ、第7巻、124
3頁、1997年(Bioorg.Med.Chem.
Lett.,7,1243(1997))などに記載の
Caged Acidを改変アニオン性基として用い、
刺激として光を照射して直接カルボキシル基の生成を行
うことも可能である。さらに、カルボキシル基は特開平
4−218561号公報などに開示されているようなビ
ニルエーテル型保護基によっても容易にアニオン性を失
って改変され、改変されたアニオン性基は、酸触媒、熱
又はその両方を刺激として与えることでアニオン性基を
生成する。カルボキシル基を生成させることのできる機
能団としては以上のような例を示すことができるが、も
ちろんこれらに限定されるものではない。
【0023】アニオン性ポリマー前駆体は、上述の概念
によって規定されたような改変アニオン性基を含有する
水溶性のポリマーであればとくに限定されるものではな
い。このようなアニオン性基、とくにカルボキシル基の
改変は既に存在しているアニオン性ポリマーのアニオン
性基に対して上述した方法で行えばよいが、この場合、
アニオン性ポリマーの全アニオン性基のうち10mol
%以上が改変されているのが好ましい。さらに好ましく
は50mol%以上である。
【0024】アニオン性ポリマー前駆体として利用でき
るアニオン性ポリマーとしては、天然高分子系ポリマー
及び合成高分子系ポリマーをあげることができる。この
うち、天然高分子系ポリマーとしては、例えば、アルギ
ン酸ナトリウム、カゼイン、カラギーナン、キサンタン
ガム、ケラタン硫酸、ジェランガム、デルマタン硫酸、
ヒアルロン酸、フコイダン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、
ペクチン、ポルフィランなどの多糖類、核酸類およびこ
れらの生理学的に許容される人工的な誘導体などを例示
することができる。通常はノニオン性である多糖類をカ
ルボキシル化、硫酸化、燐酸化などを行った多糖類を使
用することもでき、このような例としては、カルボキシ
メチル化セルロース、カルボキシメチル化デキストラ
ン、デンプンリン酸エステル、デキストラン硫酸などを
あげることができる。
【0025】また、天然高分子系ポリマーとしてポリア
ミノ酸を使用することもできる。ポリアミノ酸(タンパ
ク質)としては、天然物由来の酸性タンパク質、例えば
ペプシン、リボヌクレアーゼT1や、コラーゲン、アテ
ロコラーゲン、ゼラチンなどをスクシニル化などの手法
を用いてカルボキシル化した修飾タンパク質などを利用
することができる。さらに、酸性アミノ酸であるグルタ
ミン酸、アスパラギン酸を単独で重合したもの、もしく
はこれらと他のアミノ酸との共重合体を公知の方法を用
いて人工的に合成したものも使用することができる。単
独重合体としてはα−ポリ−L−グルタミン酸、α−ポ
リ−L−アスパラギン酸、γ−ポリ−L−グルタミン酸
などが例示される。
【0026】合成高分子系ポリマーとしては、各種のモ
ノマーの組み合わせにより様々な機能を発現する高分子
素材を製造することができるので、実質的に重付加反応
又は重縮合反応により製造できる全ての合成高分子が含
まれる。重付加反応により製造できるアニオン性ポリマ
ーとしては、アニオン性モノマー単位として例えばアク
リル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイ
ン酸、イタコン酸などの不飽和酸類又はこれらの塩、2
−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又は
この塩、スチレンスルホン酸又はこの塩、ビニルホスホ
ン酸又はこの塩などを単独で重合したものがあげられ
る。これらのアニオン性モノマー単位と他のモノマー単
位とを任意の割合で共重合したものであってもよい。
【0027】重縮合反応により製造できるアニオン性ポ
リマーとしては、高分子学会高分子実験学編集委員会
編、機能性高分子、共立出版、413〜415頁に記載
されている高分子化合物を使用することができる。ま
た、アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エデ
ィション・イン・イングリッシュ、第29巻、138
頁、1990年(Angew.Chem.Int.E
d.Engl.,29,138(1990))などに記
載されている末端官能基がアニオン性基である樹状高分
子(デンドリマー)などもアニオン性ポリマーとして使
用することができるが、もちろんこれらに限定されるも
のではない。
【0028】アニオン性ポリマー前駆体を調製する別の
方法としては、改変アニオン性基を含有する変性剤を適
当な官能基を有するポリマーに作用させて合成すること
もできる。改変アニオン性基を有する変性剤とは、例え
ばカルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、アル
デヒド基、ヒドロキシル基、α,β−不飽和カルボニル
基などの特定のポリマーに共有結合させ得る官能基およ
び改変アニオン性基を同一分子内に有するものであれば
何でもよい。また、改変アニオン性基を含有するモノマ
ー単位を合成し、これを単独で、又は他の共重合成分と
付加重合又は縮重合してアニオン性ポリマー前駆体とす
ることもできる。
【0029】以上のような概念のもとで製造されたアニ
オン性ポリマー前駆体がカチオン性ポリマーと混合さ
れ、未架橋PE混合物が製造される。アニオン性ポリマ
ー前駆体と混合されるカチオン性ポリマーにおいて、カ
チオン性基とは、アンモニウム基、即ち第一級、第二
級、第三級アミノ基、グアニジノ基、アミジノ基などの
無機酸塩又は有機酸塩、第四級アンモニウム基、スルホ
ニウム基、オキソニウム基、およびホスホニウム基など
を指し、カチオン性ポリマーとしては、実質的にこれら
のカチオン基を少なくとも2つ以上含む高分子であれば
何でもよい。カチオン性ポリマーに含有される二つ以上
のカチオン性基は必ずしも同じ種類である必要はない。
カチオン性ポリマーとして利用できるポリマーは、大き
く分けて天然高分子系ポリマー、合成高分子系ポリマー
であり、目的とする性能を発現できるように両者を混合
して用いてもよい。
【0030】天然高分子系ポリマーとしては、カチオン
性基を有する多糖類、例えば、部分脱アセチル化キチ
ン、キトサン、部分マレイル化キトサン、部分スクシニ
ル化キトサン、カルボキシメチル化キトサンなどのキチ
ン、キトサン誘導体や、N,N−ジエチルアミノエチル
化などによりアミノ化された天然ではカチオン性ではな
い多糖類、例えばジエチルアミノエチル化デキストラ
ン、ジエチルアミノエチル化セルロースなどがあげられ
る。天然高分子系ポリマーとしてポリアミノ酸も使用可
能であり、ポリアミノ酸(タンパク質)としては天然物
由来の塩基性タンパク質、例えばリボヌクレアーゼ、リ
ゾチームや、コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン
などをジアミン化合物によってアミノ化した修飾タンパ
ク質などを利用することができる。また、塩基性アミノ
酸および複素環式アミノ酸であるリジン、オルニチン、
アルギニン、トリプトファン、ヒスチジンを単独で重合
したもの、もしくはこれらと他のアミノ酸との共重合体
を公知の方法を用いて人工的に合成したものを使用する
こともできる。単独重合体としてはα−ポリ−L−リジ
ン、ε−ポリ−L−リジン、ポリ−L−オルニチン、ポ
リ−L−アルギニンなどが例示される。
【0031】カチオン性ポリマーとして利用できる合成
高分子系ポリマーには、前述したような、実質的に重付
加反応又は重縮合反応により製造できる全ての合成高分
子が含まれる。重付加反応により製造できるカチオン性
ポリマーとしては、カチオン性モノマー単位として例え
ば、N,N−アクリル酸ジメチルアミノエチルエステ
ル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ビニルピ
リジン、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩、
N−アルキルビニルピリジニウム塩などのカチオン性モ
ノマーを単独で重合したものか、又はこれらのカチオン
性モノマー単位と他のモノマー単位とを任意の割合で共
重合したものを使用することができる。さらに、例えば
N−ビニルアセトアミドやN−ビニルホルムアミドを単
独で重合するか、他のモノマー単位と共重合して得られ
たポリマーを加水分解しても、カチオン性モノマー単位
としてビニルアミンを含有するカチオン性ポリマーを得
ることができる。
【0032】重縮合反応により製造できるカチオン性ポ
リマーとしては、高分子学会高分子実験学編集委員会
編、機能性高分子、共立出版、402〜413頁に記載
されている高分子化合物を例示することができる。さら
に、アジリジン誘導体の開環重合によって得られるポリ
エチレンイミン、アンゲバンテ・ヘミー・インターナシ
ョナル・エディション・イン・イングリッシュ、第29
巻、138頁、1990年(Angew.Chem.I
nt.Ed.Engl.,29,138(1990))
などに記載されている末端官能基がカチオン性基である
樹状高分子(デンドリマー)などもカチオン性ポリマー
として例示されるが、もちろんこれらに限定されるもの
ではない。
【0033】カチオン性ポリマー前駆体に含有され、刺
激によりカチオン性基を生成する機能団とは、アンモニ
ウム基(第一級、第二級、及び第三級アミノ基、グアニ
ジノ基、アミジノ基などの無機酸塩又は有機酸塩、又は
第四級アンモニウム基)、オキソニウム塩、スルホニウ
ム塩などのカチオン性基がアニオン性基とクーロン的な
結合を行わないように、ノニオン性又はアニオン性基へ
改変されているものであって、刺激によってカチオン基
を生成するものであればよく、とくに限定されるもので
はない(以下、刺激によってカチオン基を生成するもの
を改変カチオン性基と略称することがある)。カチオン
性ポリマー前駆体に含有される二つ以上の改変カチオン
性基は必ずしも同じ種類である必要はない。但し、アニ
オン性基とイオン結合を行わないように改変する容易さ
を考慮すると、カチオン性基としてアンモニウム基を利
用するのが好ましい。
【0034】アンモニウム基のうち、第一級、第二級ア
ミノ基の無機酸塩・有機酸塩を改変するには、例えば、
グリーンおよびウッツ著、プロテクティブ グループ
インオーガニック シンセシス、第2版、ジョン ワイ
リー アンド サンズ、1991年(Theodra
W.Green,Peter G.M.Wuts,Pr
otective Groups in Organi
c Synthesis,Second Editio
n,John Wiley & Sons,1991)
に記載されているアミノ保護基などを利用すればよい。
保護された第一級、第二級アミノ基の脱保護すなわちカ
チオン性基の生成も同時に記載されている脱保護方法を
実施することで達成される。また、マレイン酸無水物、
シトラコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水
物などの環状ジカルボン酸無水物を用いて第一級、第二
級アミノ基を一旦保護して、アニオン性ポリマーと混合
して未架橋PE混合物とすることも可能である。これら
は酸性溶液中で容易に脱保護され、これによってアニオ
ン性基とイオン的結合を形成し得るアンモニウム基(第
一級、第二級アミノ基の無機酸、有機酸塩)へと変換す
ることができる。
【0035】アンモニウム基(第一級、第二級、第三級
アミノ基、グアニジノ基、アミジノ基などの無機酸・有
機酸塩)をアニオン性基とイオン結合を行わないように
改変する方法として、中和したアンモニウム基を用いる
方法がある。これは、第一級、第二級、第三級アミノ
基、グアニジノ基、アミジノ基などの無機酸・有機酸塩
を適当なアルカリ性物質で一旦中和した状態でアニオン
性ポリマーと混合し、その後に無機酸、有機酸を混合溶
液中で発生又は添加してアンモニウム基とし、PECゲ
ルを形成させるものである。この場合、カチオン性基を
生成させる刺激は、pHの低下である。
【0036】pHを低下させる酸としては、例えば塩
酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、
塩素酸、次亜塩素酸、リン酸、リン酸水素二カリウム、
リン酸二水素カリウムなどの無機酸、例えばギ酸、酢
酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸などの飽和又は不
飽和脂肪族カルボン酸類、メタクリル酸、ケイヒ酸、グ
ルコン酸、ヒドロキシ酪酸、ピルビン酸、メトキシ酢酸
などの置換飽和又は不飽和カルボン酸類、リンゴ酸、イ
タコン酸、酒石酸、シトラコン酸、シュウ酸、コハク酸
などのジカルボン酸類などがあげられる。また、例えば
D.D.ペリン、B.デンプシー著、辻啓一訳、「緩衝
液の選択と応用−水素イオン・金属イオン」講談社サイ
エンティフィック、1981年、127〜155頁など
に記載されている好ましくはpHが9以下の緩衝液を用
いることもできる。これらの酸又は緩衝液を未架橋PE
混合物にそのまま添加したり、含浸したり、混合液中で
発生させるかなどの方法でpHを低下させる。
【0037】また、光を第一の刺激として酸を発生させ
ることも可能で、例えばジャーナルオブ フォトポリマ
ー サイエンス アンド テクノロジー、第2巻、27
9頁、1989年(J.Photopolym.Sc
i.Tech.,2,279(1989)などに記載さ
れているような光カチオン重合の開始剤や、前述したC
aged Acidなどをあげることができる。さら
に、例えば、丸尾文治、田宮信雄監修「酵素ハンドブッ
ク」朝倉書店、1982年などに記載されているエステ
ラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダ
ーゼなどの、生成物として酸を発生できる酵素を触媒と
して利用して、それぞれの酵素に最適な基質を添加する
ことで酸を発生させることができる。以上のような刺激
として用いる酸発生系が例示されるがこれに限定される
ものではない。
【0038】カチオン性ポリマー前駆体は、上述の概念
によって規定されるような改変カチオン性基を含有する
水溶性ポリマーであればとくに限定されるものではな
い。このようなカチオン性基の改変は既に存在している
カチオン性ポリマーのカチオン性基に対して行ってもよ
いが、カチオン性ポリマーの全カチオン性基のうち10
mol%以上が改変されているのが好ましく、50mo
l%以上がさらに好ましい。
【0039】カチオン性ポリマー前駆体として利用でき
るカチオン性ポリマーとしては、天然高分子系ポリマー
及び合成高分子系ポリマーをあげることができる。この
うち、天然高分子系ポリマーとしては、カチオン性基を
有する多糖類、例えば、部分脱アセチル化キチン、キト
サン、部分マレイル化キトサン、部分スクシニル化キト
サン、カルボキシメチル化キトサンなどのキチン、キト
サン誘導体や、N,N−ジエチルアミノエチル化などに
よりアミノ化された、天然ではカチオン性ではない多糖
類、例えばジエチルアミノエチル化デキストラン、ジエ
チルアミノエチル化セルロースなどがあげられる。ポリ
アミノ酸を使用することもでき、ポリアミノ酸(タンパ
ク質)としては天然物由来の塩基性タンパク質、例えば
リボヌクレアーゼ、リゾチームや、コラーゲン、アテロ
コラーゲン、ゼラチンなどをジアミン化合物によってア
ミノ化した修飾タンパク質などを利用することができ
る。また、塩基性アミノ酸および複素環式アミノ酸であ
るリジン、オルニチン、アルギニン、トリプトファン、
ヒスチジンを単独で重合したもの、もしくはこれらと他
のアミノ酸との共重合体を公知の方法を用いて人工的に
合成したものを使用することができる。単独重合体とし
てはα−ポリ−L−リジン、ε−ポリ−L−リジン、ポ
リ−L−オルニチン、ポリ−L−アルギニンなどが例示
される。
【0040】カチオン性ポリマー前駆体の原料として利
用できる合成高分子系ポリマーには、実質的に重付加反
応又は重縮合反応により製造できる全ての合成高分子が
含まれる。重付加反応により製造できるカチオン性ポリ
マーとしては、カチオン性モノマー単位として例えば、
N,N−アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、ジ
メチルアミノプロピルアクリルアミド、ビニルピリジ
ン、ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム塩、N−
アルキルビニルピリジニウム塩などのカチオン性モノマ
ーを単独で重合したものか、又はこれらのカチオン性モ
ノマー単位と他のモノマー単位と任意の割合で共重合し
たものを使用することができる。さらに、例えばN−ビ
ニルアセトアミドやN−ビニルホルムアミドを単独で重
合するか、他のモノマー単位と共重合して得られたポリ
マーを加水分解しても、カチオン性モノマー単位として
ビニルアミンを含有するカチオン性ポリマーを得ること
ができる。
【0041】重縮合反応により製造できる高分子化合物
としては、高分子学会高分子実験学編集委員会編、機能
性高分子、共立出版、402〜413頁に記載されてい
る構造のものが同時に記載されている方法により合成で
き、カチオン性ポリマーとして使用することができる。
さらに、アジリジン誘導体の開環重合によって得られる
ポリエチレンイミン、アンゲバンテ・ヘミー・インター
ナショナル・エディション・イン・イングリッシュ、第
29巻、138頁、1990年(Angew.Che
m.Int.Ed.Engl.,29,138(199
0))などに記載されている末端官能基がカチオン性基
である樹状高分子(デンドリマー)などもカチオン性ポ
リマーとして例示されるが、もちろんこれらに限定され
るものではない。
【0042】カチオン性ポリマー前駆体を調製する別の
方法としては、改変カチオン性基を含有する変性剤をポ
リマーの適当な官能基に作用させてカチオン性ポリマー
前駆体を合成することもできる。改変カチオン性基を有
する変性剤とは、例えばカルボキシル基、アミノ基、イ
ソシアネート基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、α,
β−不飽和カルボニル基などの特定のポリマーに共有結
合させ得る官能基と改変カチオン性基を同一分子内に有
するものであれば何でもよい。また、改変カチオン性基
を含有する重合性モノマー単位を用い、単独又は他の共
重合成分と付加重合又は縮重合してポリカチオン前駆体
とすることもできる。
【0043】以上のような概念のもとで製造されたカチ
オン性ポリマー前駆体がアニオン性ポリマーと混合さ
れ、未架橋PE混合物が製造される。カチオン性ポリマ
ー前駆体と混合されるアニオン性ポリマーにおいて、ア
ニオン性基はカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、
燐酸基、ホスホン酸基などを指し、アニオン性ポリマー
としては、実質的にこれらのアニオン性基を少なくとも
2つ以上含む高分子であれば何でもよい。アニオン性ポ
リマーに含有される二つ以上のアニオン性基は必ずしも
同じ種類である必要はない。アニオン性ポリマーとして
利用できるポリマーは大きく分けて天然高分子系ポリマ
ー又は合成高分子系ポリマーであり、目的とする性能を
発現できるように両者を混合して用いてもよい。
【0044】天然高分子系素材としては、例えば、アル
ギン酸ナトリウム、カゼイン、カラギーナン、キサンタ
ンガム、ケラタン硫酸、ジェランガム、デルマタン硫
酸、ヒアルロン酸、フコイダン、ヘパリン、ヘパラン硫
酸、ペクチン、ポルフィランなどの多糖類、核酸類およ
びこれらの生理学的に許容される人工的な誘導体などが
あげられる。また、通常はノニオン性である多糖類をカ
ルボキシル化、硫酸化、燐酸化などを行った多糖類を使
用することもでき、このような例としては、カルボキシ
メチル化セルロース、カルボキシメチル化デキストラ
ン、デンプンリン酸エステル、デキストラン硫酸などを
あげることができる。
【0045】また、天然高分子系ポリマーとしてポリア
ミノ酸を使用することもできる。ポリアミノ酸(タンパ
ク質)としては天然物由来の酸性タンパク質、例えばペ
プシン、リボヌクレアーゼT1や、コラーゲン、アテロ
コラーゲン、ゼラチンなどをスクシニル化などの手法を
用いてカルボキシル化した修飾タンパク質などが利用で
きる。また、酸性アミノ酸であるグルタミン酸、アスパ
ラギン酸を単独で重合したもの、もしくはこれらと他の
アミノ酸との共重合体を公知の方法を用いて人工的に合
成したものを使用することができる。単独重合体として
はα−ポリ−L−グルタミン酸、α−ポリ−L−アスパ
ラギン酸、γ−ポリ−L−グルタミン酸などが例示され
る。
【0046】合成高分子系ポリマーとしては、各種のモ
ノマーの組み合わせにより様々な機能を発現する高分子
素材を製造することができるので、実質的に重付加反応
又は重縮合反応により製造できる全ての合成高分子が含
まれる。重付加反応により製造できるアニオン性ポリマ
ーとしては、アニオン性モノマー単位として例えばアク
リル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイ
ン酸、イタコン酸などの不飽和酸類又はこれらの塩、2
−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又は
この塩、スチレンスルホン酸又はこの塩、ビニルホスホ
ン酸又はこの塩などを単独で重合したもの、又はこれら
のアニオン性モノマー単位と他のモノマー単位とを任意
の割合で共重合したものがあげられる。
【0047】重縮合系高分子としては、高分子学会高分
子実験学編集委員会編、機能性高分子、共立出版、41
3〜415頁に記載されている構造のものが同時に記載
されている方法により合成できる。また、アンゲバンテ
・ヘミー・インターナショナル・エディション・イン・
イングリッシュ、第29巻、138頁、1990年(A
ngew.Chem.Int.Ed.Engl.,2
9,138(1990))などに記載されている末端官
能基がアニオン性基である樹状高分子(デンドリマー)
などもアニオン性ポリマーとして使用することができる
が、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0048】改変アニオン性基、改変カチオン性基はそ
れぞれアニオン性ポリマー前駆体、カチオン性ポリマー
前駆体に二つ以上、アニオン性基、カチオン性基もそれ
ぞれアニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーに二つ以
上含まれている必要がある。これ以下の含有数であると
未架橋PE混合物を成形・加工した後に刺激を付与して
も成形されたPECゲルを製造することが困難となる。
【0049】以上に例示されたような態様のアニオン性
ポリマー(又はその前駆体)、カチオン性ポリマー(又
はその前駆体)の実質的に全てが本発明の水膨潤性のP
ECゲルの製造に使用できる。しかし、生体との親和性
や安全性を考慮し、さらには生体内埋め込み材料として
本発明の水膨潤性のPECゲルを用いる場合には、PE
Cゲルを構成する水溶性のアニオン性ポリマー(又はそ
の前駆体)、カチオン性ポリマー(又はその前駆体)の
うち少なくとも一方が多糖類、又はポリアミノ酸(タン
パク質)又はそれらの誘導体よりなるものであるのが好
ましい。
【0050】イオン性基を生成させる刺激のうち化学物
質は、前述したように改変アニオン性基、改変カチオン
性基の種類に応じて酸性物質、アルカリ性物質、水素添
加触媒、水素などが用いられるが、中でも酸性物質は未
架橋PE混合物に含まれるアニオン性ポリマー前駆体や
カチオン性ポリマー前駆体への作用を制御しやすい点で
特に好ましい。
【0051】カチオン性ポリマー前駆体とアニオン性ポ
リマー、又はアニオン性ポリマー前駆体とカチオン性ポ
リマーの混合は溶媒が存在していてもいなくてもよく目
的に応じて自由に選択できる。但し、適当な溶媒に溶か
した状態で混合するのが好ましい場合が多い。利用でき
る溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノール、
プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のア
ルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジ
エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系
溶媒、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、アセトン、トル
エン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドな
どであり、より好ましくは水、アルコール系溶媒、ジメ
チルスルホキシド、ジメチルホルムアミドである。これ
らは目的に応じて混合して用いてもよい。カチオン性ポ
リマー(又はその前駆体)、アニオン性ポリマー(又は
その前駆体)はこれらの溶媒に溶解されて混合されても
よいし、溶媒を添加せずに混合してその後に溶媒を添加
して未架橋PE混合物の状態にしてもよく、目的に応じ
て選択し得る。
【0052】カチオン性ポリマー前駆体とアニオン性ポ
リマー、又はアニオン性ポリマー前駆体とカチオン性ポ
リマーの混合比は目的に応じて任意に設定できる。刺激
を与えて形成したPECゲルは、力学的強度の観点か
ら、イオン性基のモル比(アニオン性基(mol)/カ
チオン性基(mol))が0.01〜100の範囲とな
るように混合するのが好ましい。
【0053】このとき最終的に得られるPECゲルが目
的の機能を発現するように複数以上のアニオン性ポリマ
ー前駆体及び複数以上のカチオン性ポリマー前駆体を使
用してもよいし、それぞれ複数以上のカチオン性ポリマ
ー及び複数以上のアニオン性ポリマーと混合してもよ
い。本発明における未架橋PE混合物においては、ポリ
マー ニュース、第16巻、106頁、1991年(P
olymer News,16,106(1991))
に記載されるようなラダー構造、スクランブル構造のP
ECをほとんど形成しない状態となっている。従って、
イオン結合が三次元化して架橋体を生成するようなこと
は少なくとも成形・加工の工程が終了するまではほとん
ど起こらない。その結果、不溶物などの生成を最低限度
に抑えてPECゲルの成型品とすることが可能である。
本発明によるアニオン性ポリマー前駆体、カチオン性ポ
リマー前駆体をそれぞれカチオン性ポリマー、アニオン
性ポリマーと混合した時に不定形のPECゲル沈殿が生
成する場合は、NaCl、KCl、酢酸ナトリウムなど
の無機、有機塩類を添加することにより容易にPECを
破壊して、未架橋PE混合物を作製することができる。
【0054】未架橋PE混合物の成形又は加工とは、P
ECを形成していない流動性のある状態の未架橋PE混
合物を医用材料として利用できる形、例えば糸状、膜
状、管状、粒状、不織布状、塊状などの特定の形を付与
する工程を指している。この工程の後に、未架橋PE混
合物に対して刺激を与えることによってその形状が保持
されたPECゲルが得られる。例えば、紡糸口金から未
架橋PE混合物を吐出して刺激を与えれば糸状のPEC
ゲルとなり、精密な鋳型へ導入して刺激を与えることに
よって精密な形状をしたPECゲルを製造することが可
能である。また、未架橋PE混合物を平板上に流延して
刺激を与えれば、任意の厚みを持つ膜状のPECゲルを
得ることができるし、適当な溶媒中でエマルジョン化し
た未架橋PE混合物に対して刺激を与えることで粒子状
のPECゲルを得ることも可能である。さらに未架橋P
E混合物を任意の容器中などに存在させて刺激を与える
ことで、塊状のPECゲルを製造できるし、発泡剤など
を用いてスポンジ状にすることもできる。このような成
形、加工の方法は目的に応じて任意に選択できこれらに
限定されるものではない。
【0055】未架橋PE混合物の成形又は加工のもう一
つの態様として、他の基材や部位に塗布、コーティン
グ、含浸、付着又は埋没するなどを例示することができ
る。他の基材や部位とは、例えばガーゼ、編織布、不織
布、綿状体、糸状体、フィルム、多孔性スポンジ、ゴ
ム、プラスチック、金属、人工臓器、生体組織の表面、
切断面、傷口などである。この場合、未架橋PE混合物
は他の基材や部位に塗布、コーティング、含浸、付着、
又は埋没した後、刺激により架橋を行い、硬化させてP
ECゲルを生成する。
【0056】溶媒に溶解して未架橋PE混合物を、前述
したような形状に成形、加工した後、未架橋のまま脱溶
媒を行って乾燥品とし、その後に刺激により架橋するこ
とも可能である。当然、溶媒を含んだまま架橋させるこ
とも可能であるし、これを乾燥させて脱溶媒することも
可能である。さらに必要に応じて溶媒、例えば水に溶解
されている未架橋PE混合物を成形・加工した後に刺激
によってゲル化させて、他の溶媒、例えばアルコール系
溶媒やアセトン中に浸漬して溶媒置換することもできる
し、溶媒置換されたPECゲルを乾燥することもでき
る。
【0057】製造されたPECゲルは水膨潤性であり、
次式で定義される膨潤度が0.1〜5000であるもの
を指している。 膨潤度=[Wg1(水膨潤ゲル)−Wg2(乾燥ゲ
ル)]/Wg2(乾燥ゲル) Wg2(乾燥ゲル)は乾燥したPECゲルの重量であ
り、Wg1(水膨潤ゲル)は乾燥PECゲル又は溶媒を
含むPECゲルを24時間以上イオン交換水に浸漬した
後の重量である。 膨潤度がこの範囲を超えて高くなる
と、水膨潤PECゲルの強度が低くなりすぎ目的を達せ
られないことがある。本発明の方法によって製造される
PECゲルは水膨潤性であるが、水を含む状態、水をほ
とんど含まない状態又は水を全く含まない状態で使用す
ることができ、目的に応じて適宜選択される。以下、本
発明を参考例、実施例によりさらに具体的に説明する
が、本発明はこれらの実施例により限定されるものでは
ない。
【0058】
【実施例】実施例1 アルギン酸ナトリウム−α−ポリ−L−リジンPECゲ
ルの製造 α−ポリ−L−リジン塩酸塩(ペプチド研究所製、分子
量約8000以上)62mgをイオン交換水2.6mL
に溶解し、1MのNaOH水溶液を0.4mL加えて中
和することによってα−ポリ−L−リジン溶液を調製し
た。1.2mLのα−ポリ−L−リジン水溶液を2.5
mLの2重量%アルギン酸ナトリウム(和光純薬製、3
00〜400cP)水溶液に加えて攪拌し、未架橋PE
混合物を作製した。該未架橋PE混合物には沈殿などは
認められなかった。この未架橋PE混合物を直径2.5
cmの円形ガラスビンに入れて脱泡し、上から0.5重
量%酢酸水溶液をスプレーしてカチオン性基を生成さ
せ、表面を硬化させた。その後ゆっくりと0.5重量%
酢酸水溶液を10mL加えて2時間静置して硬化させ
た。PECゲルをガラスビンから取り外してイオン交換
水100mLに24時間浸漬して円筒形の半透明なPE
Cゲルを得た。このPECゲルの膨潤度は92.4であ
った。
【0059】実施例2 実施例1と同様にして調製したα−ポリ−L−リジン水
溶液0.8および0.4mLをそれぞれ2.5mLの2
重量%アルギン酸ナトリウム水溶液に加え攪拌した。こ
の未架橋PE混合物を直径2.5cmの円形ガラスビン
に入れて脱泡し、上から0.5重量%酢酸水溶液をスプ
レーしてカチオン性基を生成させ、表面を硬化させた。
その後ゆっくりと0.5重量%酢酸水溶液を10mL加
えて2時間静置して硬化させた。PECゲルをガラスビ
ンから取り外してイオン交換水100mLに24時間浸
漬して円筒形の半透明なPECゲルを得た。表1に実施
例1の結果と合わせて組成と膨潤度について示した。こ
の結果から、カチオン性ポリマーであるα−ポリ−L−
リジンの混合量に応じて膨潤度を制御できることは明ら
かである。
【0060】
【表1】
【0061】比較例1 ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエン
ス、第50巻、2021頁、1993年に記載のPEC
ヒドロゲル製造法によるアルギン酸−α−ポリ−L−リ
ジンPECゲルの製造 α−ポリ−L−リジン塩酸塩25mgを1.2mLの1
0%NaCl水溶液に溶解することによってα−ポリ−
L−リジン溶液を調製した。また、50mgのアルギン
酸ナトリウムを2.5mLの10%NaCl水溶液に溶
解してアルギン酸ナトリウム溶液を調製した。両溶液を
70℃に加熱して混合したところ、混合直後に沈殿が生
成し、成形されたPECゲルを得ることができなかっ
た。
【0062】実施例3 アルギン酸ナトリウム−ポリアリルアミンPECゲルの
製造 2.5mLの2重量%アルギン酸ナトリウム水溶液に1
0重量%ポリアリルアミン水溶液(日東紡製PAA−1
0L−10C、分子量約10万)を150mg加えた。
この混合溶液を直径2.5cmの円形ガラスビンに入れ
て脱泡し、上から0.5重量%酢酸水溶液をスプレーし
て表面を硬化させた。その後ゆっくりと0.5重量%酢
酸水溶液を10mL加えて2時間静置して硬化させた。
PECゲルをガラスビンから取り外してイオン交換水1
00mLに24時間浸漬して円筒形の白化したPECゲ
ルを得た。このPECゲルの膨潤度は20.5であっ
た。
【0063】実施例4 2.5mLの1重量%ヒアルロン酸ナトリウム(キュー
ピー製HA−Q、分子量53万〜133万)水溶液に5
0重量%ポリエチレンイミン水溶液(アルドリッチ製、
分子量約75万)をイオン交換水で10倍に希釈したも
のを60mg加えた。この混合溶液を直径2.5cmの
円形ガラスビンに入れて脱泡し、上から0.5重量%酢
酸水溶液をスプレーして表面を硬化させた。その後ゆっ
くりと0.5重量%酢酸水溶液を10mL加えて2時間
静置して硬化させた。PECゲルをガラスビンから取り
外してイオン交換水100mLに24時間浸漬して円筒
形の半透明なPECゲルを得た。このPECゲルの膨潤
度は514.2であった。
【0064】実施例5 205mgのα-ポリ−L−リジン塩酸塩を16mLの
イオン交換水に溶解し、2MのNaOH水溶液を0.6
2mL加えてα-ポリ−L−リジン水溶液を調製した。
2mLの2重量%デキストラン硫酸ナトリウム(和光純
薬製、分子量約5000)水溶液に3mLのアルギン酸
ナトリウムを加えて混合し、さらにα-ポリ−L−リジ
ン水溶液を4mL加えて混合攪拌して未架橋PE混合物
を作製した。該混合物をテフロントレー上に流延し85
℃で2時間乾燥してフィルム化した。フィルムを50m
Lの2重量%酢酸水溶液に15時間浸漬して硬化させ
た。硬化したフィルムを100mLのイオン交換水で4
8時間洗浄して乾燥後、元素分析で組成評価を行った。
その結果、硬化前組成物の元素分析におけるN/S比が
1.34であったのに対し、硬化・洗浄後のN/S比は
1.54であった。また、このPECゲルの膨潤度は5
8.3であった。この結果は、本発明の方法により組成
設計を自由に行うことができることを示している。
【0065】参考例1 部分マレイル化キトサンの合成 0.64gのキトサン(君津化学工業製、Fグレード)
を20mLの2重量%酢酸水溶液に溶解し、120mL
のメタノールを加えて攪拌した。激しく攪拌しながら
0.4gの無水マレイン酸(和光純薬製)を10mLの
メタノールに溶解したものを加えてすぐに攪拌を止め
た。室温で一晩静置して、生成したゲル状物を減圧乾燥
した。乾燥後、0.3MのNaOH水溶液を60mL加
えて固体を溶解し、不要物を遠心分離により取り除い
た。溶液を大量のイオン交換水に対して透析することで
精製した。不純物を取り除いた部分マレイル化キトサン
水溶液を凍結乾燥して無色固体を得た。収量は0.58
gであった。
【0066】実施例6 アルギン酸ナトリウム−部分マレイル化キトサンPEC
ゲルの製造 2.5mLの2重量%アルギン酸ナトリウム水溶液に、
参考例1で合成した部分マレイル化キトサンの2重量%
水溶液を2.5mL加えた。この混合溶液を直径2.5
cmの円形ガラスビンに入れて脱泡し、上から4重量%
酢酸水溶液をスプレーして表面を硬化させた。その後ゆ
っくりと4重量%酢酸水溶液を200mL加えて22時
間静置して硬化させた。PECゲルをガラスビンから取
り外してイオン交換水200mLに24時間浸漬して円
形の白化したPECゲルを得た。このゲルの膨潤度は6
7.9であった。
【0067】実施例7 刺激として光を用いたアルギン酸−部分マレイル化キト
サンPECゲルの製造 2.5mLの2重量%アルギン酸ナトリウム水溶液に対
して参考例1で合成した部分マレイル化キトサンの2重
量%水溶液を2.5mL加え混合した。この溶液に、7
0mgのアデカオプトマーSP−150(旭電化製)と
150mgのβ−シクロデキストリン(和光純薬製)を
0.5gのジメチルスルホキシドに溶解したものを加
え、僅かに懸濁した混合溶液を得た。この混合溶液の一
部を0.5mmの厚さでガラス板に挟み、ベルト式UV
照射装置(Toscure1000、ベルト速度1m/
分)を3回通すことにより硬化させた。生成した厚さ
0.5mmのPECゲルをイオン交換水中に浸漬し洗浄
することによって、PECゲルシートを得た。このPE
Cゲルの膨潤度は88.5であった。
【0068】実施例8 酵素による酸発生を用いたアルギン酸−部分マレイル化
キトサンPECゲルの製造 1.5mLの2重量%アルギン酸ナトリウム水溶液に、
参考例1で合成した部分マレイル化キトサンの2重量%
水溶液を1.5mL加えて混合した。この溶液に、6.
8mgのグルコースオキシダーゼ(和光純薬製)を0.
1mLの20mMリン酸バッファー(pH=7.0)に
溶解して調製した酵素水溶液を全量加え、さらに0.3
gのD−(+)−グルコース(和光純薬製)を0.5m
Lのイオン交換水に溶解したものを加えて未架橋PE混
合物を得た。この混合物の一部を円錐形の型内に導入し
て37℃で1時間硬化させた。生成した円錐形のPEC
ゲルをイオン交換水中に浸漬し、洗浄することによっ
て、円錐形PECゲルを得た。このPECゲルの膨潤度
は145.2であった。
【0069】比較例2 ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエン
ス、第50巻、2021頁、1993年に記載のPEC
ヒドロゲル製造法によるアルギン酸−キトサンPECゲ
ルの製造 25mgのキトサンを2.5mLの6%NaCl水溶液
に溶解してキトサン溶液を調製した。また、25mgの
アルギン酸ナトリウムを2.5mLの6%NaCl水溶
液に溶解してアルギン酸溶液を調製した。両溶液を70
℃に加熱して混合したところ、混合直後に沈殿が生成し
て成形されたPECゲルを得ることができなかった。
【0070】参考例2 部分2,3−ジメチルマレイル化α−ポリ−L−リジン
の合成 0.1gのα−ポリ−L−リジン塩酸塩をpHが9.0
の0.1Mホウ酸バッファーに溶解した。これに169
mgの2,3−ジメチルマレイン酸無水物(アルドリッ
チ製)を1mLの乾燥ジメチルホルムアミドに溶解した
溶液を滴下した。滴下している間、2MのNaOH水溶
液を添加してpHを9付近に保った。滴下終了後さらに
30分間攪拌して、反応溶液をpHが9.0の20mM
ホウ酸バッファーに対して透析を行い精製した。部分
2,3−ジメチルマレイル化α−ポリ−L−リジン溶液
を凍結乾燥して無色粉末を得た。収量は98mgであっ
た。 1H−NMRにより分析した結果、α−ポリ−L−
リジンの全アミノ基に対して約70モル%が2,3−ジ
メチルマレイル化されていた。
【0071】実施例9 1.0gのアルギン酸ナトリウムを50mLの50mM
リン酸バッファー(pH=6.0)に攪拌しながら溶解
した。このアルギン酸ナトリウム溶液1mLに、参考例
2で合成した部分2,3−ジメチルマレイル化α−ポリ
−L−リジンの2重量%水溶液(5%酢酸でpHを6に
調整した)を1mL加えて混合した。この混合溶液の一
部を円錐形の型内に導入して37℃で1時間硬化させ
た。生成した円錐形のPECゲルをイオン交換水中に浸
漬し洗浄することによって、円錐形PECゲルを得た。
このゲルの膨潤度は101.7であった。
【0072】参考例3 N−トリメチルアンモニウム化α−ポリ−L−リジンの
合成 0.1gのα−ポリ−L−リジン塩酸塩をpHが9.0
の0.1Mホウ酸バッファーに溶解した。これに760
mgのジメチル硫酸(キシダ化学製)を1mLの乾燥ジ
メチルホルムアミドに熔解した溶液を氷冷下で徐々に滴
下した。滴下している間、2MのNaOH水溶液を添加
してpHを9付近に保った。一晩攪拌後、反応溶液をイ
オン交換水に対して透析を行い精製して凍結乾燥し、無
色粉末を得た。収量は86mgであった。1H−NMR
により分析した結果、α−ポリ−L−リジンの全アミノ
基のうち約60%がN−トリメチルアンモニウム化され
ていた。
【0073】実施例10 アルギン酸プロピレングリコールエステル(フナコシ
製、エステル化度75%以下)を5重量%NaCl水溶
液に溶解し、2重量%溶液を調整した。この溶液1mL
に、参考例3で合成したN−トリメチルアンモニウム化
α−ポリ−L−リジンを5重量%NaCl水溶液に溶解
して1重量%溶液としたもの1mLを加えて60℃で混
合した。この混合液を円形のガラスビンに移して冷却す
るときわめて脆弱なゲルが生成した。このゲルの表面
に、10mMのNaOH水溶液をゆっくりと加えて50
℃で4時間反応させアニオン基、即ちカルボキシル基を
発生させた。生成したゲルを取り出して50mMのリン
酸バッファー(pH=7.0)に48時間浸漬して洗浄
し、円筒形の強靱なPECゲルを得た。このゲルの膨潤
度は52.2であった。
【0074】
【発明の効果】本発明の水膨潤性医療用高分子ゲルの製
造法によれば、ポリアニオンとポリカチオンのポリイオ
ンコンプレックス形成を刺激によって形成させることが
できるので、ポリアニオン、ポリカチオンの種類に限定
されず水膨潤性ゲルを製造することが可能である。さら
にこの製造法では、これまで困難であったポリイオンコ
ンプレックスゲルの組成を精密に制御できるため、生成
したポリイオンコンプレックスゲルの膨潤度などの性能
を自由自在に設計できる。また、型中で硬化させること
も可能であるので容易にポリイオンコンプレックスゲル
の成型品を得ることができ、各種医療用途の成形ゲルを
製造することができる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 刺激によりイオン性基を生成することの
    できる機能団を二つ以上有する水溶性ポリマーおよびそ
    れらの対イオン基を二つ以上有する水溶性ポリマーを混
    合して目的の形状に成形もしくは加工した後、刺激によ
    りイオン性基の生成を誘起してポリイオンコンプレック
    スを形成させることを特徴とする水膨潤性医療用高分子
    ゲルの製造法。
  2. 【請求項2】 該水溶性ポリマーの少なくとも一方が、
    多糖類、ポリアミノ酸又はそれらの誘導体である請求項
    1に記載の水膨潤性医療用高分子ゲルの製造法。
  3. 【請求項3】 該刺激が化学物質又は光である請求項1
    又は2記載の水膨潤性医療用高分子ゲルの製造法。
  4. 【請求項4】 該化学物質が酸性物質である請求項3記
    載の水膨潤性医療用高分子ゲルの製造法。
  5. 【請求項5】 該刺激が酸性物質で、該イオン性基がカ
    チオン性基である請求項1〜4いずれかに記載の水膨潤
    性医療用高分子ゲルの製造法。
  6. 【請求項6】 該カチオン性基が、アンモニウム基であ
    る請求項5に記載の水膨潤性医療用高分子ゲルの製造
    法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6いずれかに記載の製造法に
    より得られる水膨潤性医療用高分子ゲル。
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