JP2001080970A - 繊維強化複合不定形耐熱組成物並びに繊維強化複合耐熱成形体 - Google Patents

繊維強化複合不定形耐熱組成物並びに繊維強化複合耐熱成形体

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JP2001080970A JP25350999A JP25350999A JP2001080970A JP 2001080970 A JP2001080970 A JP 2001080970A JP 25350999 A JP25350999 A JP 25350999A JP 25350999 A JP25350999 A JP 25350999A JP 2001080970 A JP2001080970 A JP 2001080970A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 弾塑性破壊靭性値、破壊エネルギー、熱衝撃
抵抗性が著しく向上された繊維強化複合不定形耐熱組成
物及び、高強度で熱衝撃抵抗性に優れた繊維強化複合耐
熱成形体を提供する。 【解決手段】 骨材部と結合部とからでなり、骨材部に
少なくともSiCを含むと共に、アスペクト比(長さ/
直径)が1000乃至100の範囲のSiC長繊維のチ
ョップで結合部が強化されている繊維強化複合不定形耐
熱組成物及び、前記組成物を成形、乾燥してなる繊維強
化複合不定形耐熱成形体とによって、前記課題を解決し
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱組成物に関
し、特に、成形、乾燥した際に、弾塑性破壊靭性、破壊
エネルギー、熱衝撃抵抗性が著しく向上された繊維強化
複合耐熱成形体となる繊維強化複合不定形耐熱組成物及
び当該組成物を成形、乾燥して得た繊維強化複合耐熱成
形体に関する。
【0002】
【従来の技術】オールドセラミックスの範疇に属する耐
火物は大分類として定形耐火物、不定形耐火物に分けら
れ、不定形耐火物はキャスタブル、プラスチック、ラミ
ング材、吹き付け材等に更に分類される。
【0003】この中で、キャスタブルには通常のキャス
タブルの他、高強度キャスタブルとして低セメントキャ
スタブル、超低セメントキャスタブル、セルフフローキ
ャスタブル、セメントレスキャスタブル等、各種のキャ
スタブルが使用目的に応じ、使用されている。
【0004】高強度キャスタブルの結合部(マトリック
ス部)にはアルミナセメントの他、減水効果が高く、チ
クソトロピック性能を付与し、球形状によるベアリング
効果の高い微細な1ミクロン以下の超微粉末、例えば、
マイクロシリカ(ヒュームドシリカ)、クロミア、チタ
ン、ジルコニア、アルミナが使用される。アルミナセメ
ントと超微粉末の合量は1〜15重量%程度である。耐
火物の結合部を構成するこれらの微粉は、相互に関係し
合い、充填度の高い(空隙の少ない)マトリックスを構
成する。この際調合物の流動性はチクソトロピック効果
を含め添加水分量は最小となる。
【0005】最も一般的な、マイクロシリカを配合した
キャスタブルでは、水分量は少なくても、極めて充填度
が高いために、乾燥工程で添加水分が拡散できず昇温に
よる急激な内在圧力により爆裂(水蒸気爆発)すること
がある。
【0006】爆裂防止のために、直径十数ミクロンの有
機繊維(ポリプロピレン、パルプ等)を配合し、低温下
では、繊維とマトリックスの間隙の毛管現象を利用して
水分を出易くする方策がとられている。昇温により有機
繊維が熱により収縮し、セラミックスマトリックスとの
間隙が広がり、更に水分子が蒸発し易くなるが、最終的
には有機繊維は焼失し、後に微細な空孔が存在するよう
になる。この微細な空孔の存在によって、内在する高圧
水蒸気は更に出易くなるが、連続した空孔の存在は、ス
ラグやメタル等の浸入を受け入れ易くするため、耐食性
の面からは好ましく無い。
【0007】また、別途、水分子を排出する策として、
活性金属微粉(アルミニウム、その合金等)をキャスタ
ブル調合に少量配合し、pH、温度をコントロールし、
発生した水素ガス等の流路を利用することも採用されて
いる。
【0008】いずれの方式も、組織中に連続した微細な
開気孔を形成しており、応力緩和による熱衝撃抵抗に
は、多少のメリットが認められるものの、気相反応、高
温の溶湯による液相反応にはあきらかにデメリットとな
る。
【0009】一方、ニューセラミックスにおいて高温の
エネルギー分野、すなわちガスタービン、航空機用部材
等への適用例として、セラミックス系長繊維の三次元繊
維強化材料がある。これは繊維を立体的に配し、三次元
的にいずれからの応力に対しても同一となるよう配慮さ
れている。
【0010】これらの三次元繊維プリフォームは成形さ
れた繊維束間に空隙部が存在し、当該空隙部がマトリッ
クスによって充填されねばならない。充填方法として
は、スラリー含浸法、気相含浸法(CVI法)、ポリマ
ー含浸法(PIP法)などがある。
【0011】セラミックス系長繊維強化セラミックス基
複合材料CFCC(Continuous Fiber
Ceramics Composites)、また
は、CMC(Ceramics Matrix Com
posite)と称されるものである。
【0012】CFCC、CMC等における組織の破壊に
至る亀裂の出発点は、繊維自体からではなく、マトリッ
クスから生成するものと考えられている。
【0013】CFCC部材が損傷許容性(曲げ強度〜歪
み曲線)を有するには、マトリックス中を亀裂が伝播し
ても繊維が同時には破壊することなく、繊維表面層が滑
り層として亀裂の伝播を抑制したり緩和したりして、ブ
リッジングする機構をともなうことで、ブリッジング過
程でマトリックスから繊維が引き抜けることが重要であ
る。このためには繊維とマトリックスが固着しないよう
な材料設計が必要となる。
【0014】キャスタブルのマトリックスを構成する結
合機構は、基本的にはアルミナセメントボンド(水和反
応)である。マトリックスにおけるアルミナセメントボ
ンドがセラミックスボンド(焼結反応)に発達する温度
域は、約1200℃前後と推定されており、それ以下の
温度では、繊維と反応し固着焼結することはない。
【0015】キャスタブルに無機質系長繊維を配合した
系、例えばキャスタブルにSiC長繊維を配合した系で
は、セラミックスボンド(焼結反応)に発達する温度域
までの間では、繊維は繊維のままで存在しており、高温
下において有効な繊維の特性を保持していると推測され
る。
【0016】従来より、耐熱衝撃性に優れた素材とし
て、一般的な低膨張性素材即ち、べタースポジュメンL
AS(Li0−Al−SiO)、コージェラ
イトMAS(MgO−Al−SiO)、チタン
酸アルミAT(Al−TiO)、並びに溶融石
英ガラス(SiO)、カーボン材料、BN(窒化ホウ
素)などが目的に応じ、使用されてきた。
【0017】しかし、べタースポジュメンLAS(Li
0−Al−SiO)では耐熱性、耐食性が不
足し、コージェライトMAS(MgO−Al−S
iO )では、熱膨張特性値が高く耐熱衝撃性に難があ
り、チタン酸アルミAT(Al−TiO)では
衝撃に対して脆いなど物理的強度不足が問題とされてき
た。溶融石英ガラスは耐熱衝撃性には優れるが、化学反
応面で問題となることがあり、カーボン材料、ならびに
窒化ホウ素においては、大気雰囲気下で酸化による損
耗、ホウ素の酸化等による耐熱性の低下など、使い難い
面も指摘されている。いずれの材質もほぼ弾性体に近
く、カーボン材料を除き塑性変型をすることはない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】一般に高温耐熱部材
は、該部材の使用温度に達するまで、部材に破壊をもた
らす急激な熱歪みを与えないよう、常温から使用温度ま
で数時間、時には数十時間をかけ、徐々に予熱を行なう
ことが一般的である。かかる工程は、省エネルギーの面
からも、また高温下での現場作業量の削減の面からも、
更には高温下に曝される耐火部材そのものの寿命の面か
らも根本的な改良が望まれている。
【0019】また、耐火物は定形、不定形にかかわらず
一般には弾性体であり、熱膨張率が著しく異なる金属部
材との機械的接合は殆ど不可能であり、高温下での弾塑
性破壊靭性値の高い材質が望まれている。
【0020】そこで、本発明は、繊維で強化されてお
り、成形、乾燥された際に、弾塑性破壊靭性が大幅に改
良され、耐熱衝撃性に優れた繊維強化複合耐熱成形体と
なる繊維強化複合不定形耐熱組成物及び当該組成物を成
形、乾燥してなる繊維強化複合耐熱成形体を提案するこ
とを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明は、骨材部と結合
部とからでなり、骨材部に少なくともSiCを含む不定
形耐火調合物の結合部(マトリックス部)に、無機質系
長繊維(アスペクト比の極めて高い無機質ファイバーと
してのSiC繊維)を配合強化すると共に、水和反応
(焼結ではない)によって結合部(マトリックス部)を
構成することにより、前記無機質系長繊維を長繊維のま
ま、結合部(マトリックス部)の構成要素とし、前記課
題を解決したものである。このように無機質系長繊維で
強化された素材は弾塑性破壊靭性が大幅に改良されてお
り、耐熱衝撃性に優れた繊維強化複合不定形耐熱組成物
となる。
【0022】セラミックス耐火物など、キャスタブル耐
火物の分野で従来公知の骨材部と結合部との配合に加え
て、当該結合部に有機系接合材で結束した無機質系長繊
維を配合し、このようにして得られる不定形耐火組成物
を乾燥し、昇温させる過程で、系に含まれている水分の
脱水を容易ならしめるとともに、有機系接合材が燃焼焼
失した後、前記無機質系長繊維をそのまま繊維状態で存
在させ、弾塑性破壊靭性に優れた結合部(マトリックス
部)を構成し、耐熱衝撃抵抗性に優れた繊維強化複合耐
熱成形体、すなわち、前記繊維強化複合不定形耐熱組成
物を乾燥して完全な脱水を行った成形体では、予熱を必
要とせずに、直接、高温の金属溶湯に浸漬することので
きる繊維強化複合耐熱成形体を提供することができる。
【0023】すなわち、本発明は、骨材部と結合部とか
らでなり、骨材部に少なくともSiCを含むと共に、結
合部が無機質系長繊維のチョップで強化されていること
を特徴とする繊維強化複合不定形耐熱組成物である。
【0024】また、本発明が提案する他の繊維強化複合
不定形耐熱組成物は、骨材部と結合部とからでなり、骨
材部に少なくともSiCを含むと共に、結合部がSi
C、アルミナ、マイクロシリカ、アルミナセメントの中
の少なくとも一種以上から構成され、当該結合部が更に
無機質系長繊維のチョップで強化されていることを特徴
とする繊維強化複合不定形耐熱組成物である。
【0025】ここで、骨材部及び結合部としては、キャ
スタブル耐火物の分野に於いて、従来、公知のものを使
用することができる。例えば、骨材部としては、アルミ
ナ、ムライト、などを用いることができる。また、結合
部としては、SiC、アルミナ、マイクロシリカ、アル
ミナセメントを用いることができるが、これらの中の少
なくとも一種以上を結合部に含んでいる構成とすること
が好ましい。
【0026】前記において、少なくとも骨材部にSiC
を含むこととしたのは、熱伝導率が高く、耐熱性に優れ
ているという理由からであり、骨材部全体に対して、S
iCが15重量%〜85重量%となるようにすることが
好ましい。
【0027】前記のように結合部(マトリックス部)を
無機質系長繊維のチョップで強化(CFRMC)するこ
とにより、弾塑性破壊靭性値、破壊エネルギー、熱衝撃
抵抗性が著しく向上された繊維強化複合不定形耐熱組成
物を得ることができる。
【0028】この本発明の繊維強化複合不定形耐熱組成
物を成形、乾燥させて得た本発明の繊維強化複合耐熱成
形体は、予熱過程を必要とせず、直接、高温雰囲気下に
置くことができ、高温の溶湯金属、例えば、亜鉛、アル
ミニウム、マグネシウム、銅等の溶湯に、予熱過程を要
せず、直接、浸漬使用できる熱衝撃抵抗性に優れた繊維
強化複合耐熱成形体となる。
【0029】前記いずれの繊維強化複合不定形耐熱組成
物においても、無機質系長繊維のチョップは、直径5μ
(マイクロメートル)〜25μ(マイクロメートル)、
長さ0.5mm〜25mm、アスペクト比(長さ/直
径)が1000乃至100の無機質系モノフィラメント
の複数本を1ヤーンとし、有機系結合材を用いて、当該
ヤーンを束ねて構成するようにすることができる。
【0030】あるいは、無機質系長繊維のチョップは、
直径5μ(マイクロメートル)〜25μ(マイクロメー
トル)、長さが骨材部における最大骨材粒の粒径に対し
て1〜20倍の範囲、アスペクト比(長さ/直径)が1
000乃至100の無機質系モノフィラメントの複数本
を1ヤーンとし、有機系結合材を用いて、当該ヤーンを
束ねて構成するようにすることができる。
【0031】ここで、無機質系モノフィラメントの直径
として5μ(マイクロメートル)〜25μ(マイクロメ
ートル)が好ましい理由は、高弾性、高耐酸化性能を保
ちつつ高度な紡織性を発揮させるためである。
【0032】また、無機質系長繊維のチョップを構成す
る無機質系モノフィラメントの長さとして0.5mm〜
25mmが好ましい理由は、長繊維によるからみの効果
を高め、補強効果を得るるためであり、無機質系長繊維
のチョップを構成する無機質系モノフィラメントの長さ
が、骨材部における最大骨材粒の粒径に対して1〜20
倍の範囲になるようにすることが好ましい理由も、長繊
維によるからみの効果を高め、補強効果を得るるためで
ある。
【0033】また、無機質系モノフィラメントのアスペ
クト比(長さ/直径)が1000乃至100であること
が好ましい理由は、結合部における補強効果を高めるた
めである。
【0034】更に、1ヤーンとする無機質系モノフィラ
メントの本数は、300本〜700本が好ましいが、そ
の理由は、良好な紡織性を得るためである。
【0035】前記における有機系結合材は、サイジング
材としての役割を果たすものであり、例えば、PVA、
CMCなどを用いることができる。
【0036】前記いずれの繊維強化複合不定形耐熱組成
物においても、結合部を強化する無機質系長繊維のチョ
ップは、結合部に無機質系長繊維のチョップが0.05
〜10重量%配合されているようにすることができる。
【0037】ここで、無機質系長繊維のチョップの結合
部に対する配合割合が、結合部に対して0.05〜10
重量%であることが好ましいとする理由は、0.05重
量%より少なくては、補強効果が少なく、一方、10重
量%より多くては、良好な結合部を構成する上で好まし
くないからである。
【0038】以上説明した本発明においては、無機質系
長繊維としてSiC長繊維、無機質系モノフィラメント
としてSiC系モノフィラメントを用いることができ
る。SiC長繊維は、高温まで室温での強度や弾性率を
保持でき、優れた高温強度を示すものである。ただし、
本発明において用いる無機質系長繊維は、SiC長繊維
に限られるものではなく、SiC長繊維と同じように、
高温まで室温での強度や弾性率を保持でき、優れた高温
強度を示す無機質系長繊維はいずれも採用可能である。
【0039】次に、本発明が提案する繊維強化複合耐熱
成形体は、前記の繊維強化複合不定形耐熱組成物を成
形、乾燥してなるものである。この、乾燥は、水和反応
(焼結ではない)によって結合部(マトリックス部)を
構成することにより、無機質系長繊維を長繊維のまま、
結合部(マトリックス部)の構成要素として存在させる
ものであるので、無機質系長繊維のチョップを構成する
無機質系モノフィラメントが、セラミックスボンド(焼
結反応)に発達する温度域以下の温度域、例えば、無機
質系長繊維のチョップとしてSiC長繊維のチョップを
採用する場合には、1200℃に到達しない温度域にて
乾燥することが好ましい。
【0040】前記の本発明の繊維強化複合不定形耐熱組
成物によれば、無機質系長繊維のチョップが、系に配合
された水分(自由水)を、無機質系長繊維のチョップを
構成するヤーンとマトリックスとの僅かな間隙に生じる
毛管現象を利用し、系外に抽出、蒸発させる。また、繊
維強化複合耐熱成形体を得るための昇温・乾燥工程にお
いて、有機系結合材が熱により収縮、焼失し、系内に生
じた結晶水の脱水を容易に可能ならしめ、爆裂防止に寄
与することができる。
【0041】更に、無機質系モノフィラメントの複数本
を1ヤーンとし、サイジング材としての有機系結合材を
用いて、当該ヤーンを束ねて構成された無機質系長繊維
のチョップ、例えば、無機質系モノフィラメントの複数
本を1ヤーンとし、サイジング材として有機系結合材を
用いて、当該ヤーンを被覆して構成された無機質系長繊
維のチョップは、乾燥工程を経て繊維強化複合耐熱成形
体とされた後、大部分が繊維強化材として結合部(マト
リックス)に留まり、急激な熱衝撃に対し熱的緩衝体を
形成し得る。
【0042】弾塑性破壊靭性特性が高度に改良された本
発明の繊維強化複合不定形耐熱組成物及び、繊維強化複
合耐熱成形体のメカニズムの詳細は、今後解明されるこ
とであろうが、密充填組織を構成する粗粒、中粒、微
粒、の粒度分布において、焼結にまで至らない、マトリ
ックスの主要構成要素である微粒子の滑り現象が重要な
役割を担っていると考えられる。
【0043】本発明の繊維強化複合不定形耐熱組成物及
び当該組成物を成形、乾燥してなる繊維強化複合耐熱成
形体は、オールドセラミックス(不定形耐火物)の結合
部(マトリックス部)に最新のニューセラミックスのコ
ンセプト、すなわち、セラミックス系長繊維強化セラミ
ックス基複合材料(CFRMC:Continuous
Fiber Reinforced Matrix
Composite)コンセプトを取り入れたもので、
耐火物領域で、従来の一元的な弾性体素材の概念から、
塑性変型までを含めた熱的弾塑性破壊領域まで概念を拡
大することができるようになった。当然、用途も今日ま
で考えられなかった領域で展開することが可能である。
【0044】すなわち、本発明の繊維強化複合不定形耐
熱組成物及び当該組成物を成形、乾燥してなる繊維強化
複合耐熱成形体は、以下に述べる種々の有用性を発揮し
得る。
【0045】1.本発明の繊維強化複合耐熱成形体は予
熱する必要がない。
【0046】キャスタブルが水和反応にもとずくアルミ
ナセメントによる結合力である場合には、自由水、結晶
水が、系内に存在する。このように系内に自由水、結晶
水が存在している場合、爆裂(水蒸気爆発)を防止しつ
つ、また部材に破壊をもたらす急激な熱歪みを与えない
ように、使用温度に到達するまで、数時間をかけて余熱
する必要がある。
【0047】しかし、本発明の繊維強化複合耐熱成形体
は、本発明の繊維強化複合不定形耐熱組成物を成形、乾
燥する際に、無機質系長繊維のチョップが、系に配合さ
れた水分(自由水)を、無機質系長繊維のチョップを構
成するヤーンとマトリックスとの僅かな間隙に生じる毛
管現象を利用し、系外に抽出、蒸発させ、また、繊維強
化複合耐熱成形体を得るための昇温・乾燥工程におい
て、有機系結合材が熱により収縮、焼失し、系内に生じ
た結晶水の脱水を容易に可能ならしめ、系内に存在する
水分子を完全に系外に排出することができる。そこで、
水蒸気による爆裂がないので、本発明の繊維強化複合耐
熱成形体は、使用に当たり、予熱する必要がなく、予熱
せず、いきなり操業温度近くにまで急熱したり、溶湯金
属と直接接触させたりすることができる。
【0048】2.繊維強化複合耐熱成形体を得る際の成
形、乾燥工程における爆裂防止機能、と予熱時間の短縮 本発明の繊維強化複合不定形耐熱組成物を成形、乾燥す
る際に、無機質系長繊維のチョップが、系に配合された
水分(自由水)を、無機質系長繊維のチョップを構成す
るヤーンとマトリックスとの僅かな間隙に生じる毛管現
象を利用し、系外に抽出、蒸発させるので、爆裂の防止
と乾燥時間の短縮をもたらすことができる。
【0049】3.本発明の繊維強化複合耐熱成形体は、
予熱なしで、高温の溶湯金属に直接浸潰することができ
る。
【0050】本発明の繊維強化複合耐熱成形体は、溶融
金属即ち、アルミニウム、亜鈴、マグネシウム、銅等の
金属溶湯に直接浸漬しても破壊に至ることはない。
【0051】すなわち、本発明の繊維強化複合耐熱成形
体は、急激な熱衝撃に対して、十分耐えられるだけの熱
歪みを吸収する能力がある。
【0052】なお、本発明の繊維強化複合耐熱成形体の
耐食性は、ベースとなる繊維強化複合不定形耐熱組成物
の組成による。
【0053】4.本発明の繊維強化複合耐熱成形体は、
耐熱被覆水冷ジャケットとして使用できる。
【0054】本発明の繊維強化複合不定形耐熱組成物を
成形、乾燥してなる繊維強化複合耐熱成形体を耐熱被覆
水冷ジャケットとした場合、加熱面側から水冷ジャケッ
ト面に至る素材の厚さ方向において、素材内部に急激な
温度勾配を生じても割れることはない。そこで、単なる
熱歪みで割れるピーリング(剥離)現象には有効な対策
となる。
【0055】5.異なる熱膨張係数を有する材料との機
械的接合に使用できる。
【0056】本発明の繊維強化複合不定形耐熱組成物を
成形、乾燥してなる繊維強化複合耐熱成形体をフランジ
付きスリーブとし、当該フランジ付きスリーブを鉄板に
ボルト止めし、700℃の溶融アルミに当該スリーブを
浸漬しても、当該スリーブのボルト固定部に亀裂は認め
られない。すなわち、本発明の繊維強化複合不定形耐熱
組成物及び当該組成物を成形、乾燥してなる繊維強化複
合耐熱成形体は、異なる熱膨張係数を有する材料との機
械的接合に使用できる。
【0057】一方、本発明のように無機質系長繊維のチ
ョップで強化されていないキャスタブル耐火物にてフラ
ンジ付きスリーブを形成し、鉄板にボルト止めして70
0℃の溶融アルミに当該スリーブを浸漬すれば、熱膨張
係数の相違によって、ボルト固定部に亀裂が生じてしま
う。
【0058】
【実施例1】基本調合の旭硝子(株)製DRYSIC−
85を、添加水量5%でミキサーにて注意深く撹拌し、
厚み及び深さ200mm、長さ1mのU字型湯道ブロッ
クに成形、700℃にて4時間、乾燥炉で乾燥し、プレ
キャスト品のU字型湯道ブロックを製作した。
【0059】次に、基本調合のDRYSIC−85に対
し、SiC長繊維{500本のモノフィラメントをPV
Aで束ねたSiC長繊維(日本カーボン社製 商品名
「ニカロン」)20mm長さのチョップ}を外掛けで
0.1%、0.3%、3%各重量%配合し、添加水量5
%でミキサーにて注意深く撹拌し、厚み及び深さ200
mm、長さ1mのU字型湯道ブロックに成形、700℃
にて6時間乾燥した。
【0060】前記基本調合のDRYSIC−85のみで
成形したU字型湯道ブロックと、SiC長繊維チョップ
で複合強化したU字型湯道ブロックとに、それぞれ、直
接、700℃の溶湯アルミニウムを通した。
【0061】基本調合のDRYSIC−85のみで成形
したU字型湯道ブロックと、0.1重量%SiC長繊維
配合品の2種類は目視により亀裂発生が認められた。一
方、0.3%、3%重量%SiC長繊維配合品は亀裂を
認めなかった。
【0062】なお、この実施例における基本調合の旭硝
子(株)製DRYSIC−85の化学成分、物理性質は
以下の通りである。
【0063】 化学成分 SiC 83(%) SiO 6(%) Al 9(%) Fe 0.5(%) 物理性質 嵩比重 110℃ 2.65 900℃ 2.64 1200℃ 2.63 気孔率 110℃ 7.5% 900℃ 13.0% 1200℃ 13.5% 圧縮強さ 110℃ 650Kg/cm 900℃ 850Kg/cm 1200℃ l150Kg/cm 曲げ強さ 110℃ 140Kg/cm 900℃ 150Kg/cm 1200℃ 170Kg/cm 熱間曲げ強さ(@1260℃) 1200℃ 120Kg/cm
【0064】
【実施例2】長さ1〜3mmが30%、3〜5mmが7
0%からなる市販のポリプロピレンファイバーを重量比
で1%配合した系と、SiC長繊維{500本のモノフ
ィラメントをPVAで束ねたSiC長繊維(日本カーボ
ン社製 商品名「ニカロン」)20mm長さのチョッ
プ}を重量比で1%配合した系とを比較したところ、市
販ファイバーは均一分散が難しかった。
【0065】
【実施例3】前記実施例1で説明した基本調合の旭硝子
(株)製DRYSIC−85にて、外径480mm、内
径400mm、高さ500mmのスリーブを、プレキャ
スト製品として製造した。
【0066】次に、前記実施例1で説明した基本調合の
旭硝子(株)製DRYSIC−85に、外掛けで0.1
重量%、0.3重量%、3重量%のSiC長繊維{50
0本のモノフィラメントをPVAで束ねたSiC長繊維
(日本カーボン社製 商品名「ニカロン」)20mm長
さのチョップ}を配合し、これで、外径480mm、内
径400mm、高さ500mmのスリーブを成形し、5
00℃にて4時間乾燥して、プレキャスト製品を作成し
た。
【0067】前記4種類のプレキャスト製品を、700
℃のアルミニウム溶湯に、直接、浸漬し、亀裂発生の有
無を目視、打音で判定した。
【0068】基本調合の旭硝子(株)製DRYSIC−
85のみからなるスリーブと、SiC長繊維0.1重量
%配合のスリーブは割れてしまった。また、SiC長繊
維0.3重量%配合のスリーブには、僅かに亀裂が入っ
た。
【0069】しかしSiC長繊維3重量%配合のスリー
ブには、亀裂が生じなかった。
【0070】
【実施例4】前記実施例1で説明した基本調合の旭硝子
(株)製DRYSIC−85にて、片面に厚み40m
m、外径600mmのフランジが取り付けられたスリー
ブ(外径480mm、内径400mm、高さ500m
m)を、プレキャスト製品として製造した。
【0071】次に、前記実施例1で説明した基本調合の
旭硝子(株)製DRYSIC−85に、外掛けで1重量
%、5重量%、10重量%のSiC長繊維{500本の
モノフィラメントをPVAで束ねたSiC長繊維(日本
カーボン社製 商品名「ニカロン」)20mm長さのチ
ョップ}を配合し、これで、片面に厚み40mm、外径
600mmのフランジが取り付けられたスリーブ(外径
480mm、内径400mm、高さ500mm)を成形
し、500℃にて4時間乾燥して、プレキャスト製品を
作成した。
【0072】前記4種類のプレキャスト製品の各フラン
ジを、それぞれ、20mmの鉄板に6ケ所ボルト、ナッ
トで取り付け、700℃のアルミニウム溶湯に浸漬した
(湯面より鉄板までの距離100mm)。
【0073】基本調合の旭硝子(株)製DRYSIC−
85のみからなるスリーブと、SiC長繊維1重量%配
合のスリーブは、鉄板の膨脹により、フランジがボルト
部分より割れてしまった。
【0074】一方、SiC長繊維5重量%、10重量%
配合のスリーブには、亀裂が生じなかった。
【0075】
【発明の効果】本発明の繊維強化複合不定形耐熱組成物
によれば、結合部(マトリックス部)を無機質系長繊維
のチョップで強化(CFRMC)することにより、弾塑
性破壊靭性値、破壊エネルギー、熱衝撃抵抗性を著しく
向上させることができる。この本発明の繊維強化複合不
定形耐熱組成物を成形、乾燥させて得た繊維強化複合耐
熱成形体は、高温雰囲気下に、予熱過程を必要とせず、
直接、置くことができ、高温の溶湯金属、例えば、亜
鉛、アルミニウム、マグネシウム、銅等の溶湯に予熱過
程を必要とせず、直接、浸漬使用できる熱衝撃抵抗性に
優れた繊維強化複合耐熱成形体となる。
【0076】また、本発明の繊維強化複合不定形耐熱組
成物によれば、無機質系長繊維のチョップが、系に配合
された水分(自由水)を、無機質系長繊維のチョップを
構成するヤーンとマトリックスとの僅かな間隙に生じる
毛管現象を利用し、系外に抽出、蒸発させる。また、繊
維強化複合耐熱成形体を得るための昇温・乾燥工程にお
いて、有機系結合材が熱により収縮、焼失し、系内に生
じた結晶水の脱水を容易に可能ならしめ、有効に爆裂を
防止することができる。
【0077】更に、繊維強化複合不定形耐熱組成物中に
配合されている無機質系長繊維のチョップは、乾燥工程
を経て繊維強化複合耐熱成形体とされた後、大部分が繊
維強化材として結合部(マトリックス)に留まり、急激
な熱衝撃に対し熱的緩衝体を形成し得る。
【0078】本発明の繊維強化複合耐熱成形体は、予熱
不要のため、省エネルギーに大きく貢献するともに、熱
的破壊抵抗性が高度に改良されているので、亀裂、剥
離、時には浸食に伴う損傷を軽減し、部材の寿命を大幅
に伸張させることに役立つものである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年9月10日(1999.9.1
0)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 繊維強化複合不定形耐熱組成物並びに
繊維強化複合耐熱成形体
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
フロントページの続き (72)発明者 山本 徹 神奈川県厚木市妻田西三丁目11番2号 有 明セラコ株式会社内 (72)発明者 市川 宏 神奈川県横浜市栄区庄戸2−5−16 Fターム(参考) 4G033 AA02 AA17 AA24 AB02 AB12

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 骨材部と結合部とからでなり、骨材部に
    少なくともSiCを含むと共に、結合部が無機質系長繊
    維のチョップで強化されていることを特徴とする繊維強
    化複合不定形耐熱組成物。
  2. 【請求項2】 骨材部と結合部とからでなり、骨材部に
    少なくともSiCを含むと共に、結合部がSiC、アル
    ミナ、マイクロシリカ、アルミナセメントの中の少なく
    とも一種以上から構成され、当該結合部が更に無機質系
    長繊維のチョップで強化されていることを特徴とする繊
    維強化複合不定形耐熱組成物。
  3. 【請求項3】 無機質系長繊維のチョップは、直径5μ
    〜25μ、長さ0.5mm〜25mm、アスペクト比が
    1000乃至100の無機質系モノフィラメントの複数
    本を1ヤーンとし、有機系結合材を用いて、当該ヤーン
    を束ねて構成したものであることを特徴とする請求項1
    又は2記載の繊維強化複合不定形耐熱組成物。
  4. 【請求項4】 無機質系長繊維のチョップは、直径5μ
    〜25μ、長さが骨材部における最大骨材粒の粒径に対
    して1〜20倍の範囲、アスペクト比が1000乃至1
    00の無機質系モノフィラメントの複数本を1ヤーンと
    し、有機系結合材を用いて、当該ヤーンを束ねて構成し
    たものであることを特徴とする請求項1又は2記載の繊
    維強化複合不定形耐熱組成物。
  5. 【請求項5】 無機質系長繊維のチョップは、結合部に
    対して0.05〜10重量%配合されていることを特徴
    とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の繊維強化複
    合不定形耐熱組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか1項記載の繊
    維強化複合不定形耐熱組成物を成形、乾燥してなる繊維
    強化複合耐熱成形体。
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JP2012137272A (ja) * 2010-12-28 2012-07-19 Ariake Serako Kk アルミニウム溶解炉

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