JP2001064416A - ポリイミド膜及びその製造方法 - Google Patents

ポリイミド膜及びその製造方法

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JP2001064416A
JP2001064416A JP24665899A JP24665899A JP2001064416A JP 2001064416 A JP2001064416 A JP 2001064416A JP 24665899 A JP24665899 A JP 24665899A JP 24665899 A JP24665899 A JP 24665899A JP 2001064416 A JP2001064416 A JP 2001064416A
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film
polyimide
polyimide film
heat treatment
acid
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JP24665899A
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English (en)
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Akira Tanaka
明 田中
Kei Sakamoto
圭 坂本
Kishio Yokouchi
貴志男 横内
Yasuo Naganuma
靖雄 長沼
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Zeon Corp
Fujitsu Ltd
Original Assignee
Fujitsu Ltd
Nippon Zeon Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリイミド膜と金属層との密着性に優れ、高
温での熱履歴を受けても密着性の低下がなく、かつ、ポ
リイミド膜自体の機械的特性が改善されたポリイミド
膜、及びその製造方法を提供すること。 【解決手段】 ポリイミド前駆体膜を加熱処理してポリ
イミド膜を製造する方法において、(1) 第一段目の加熱
処理により、ポリイミド前駆体のイミド化率を85〜9
9.9%の範囲に制御し、(2) イミド化率がこの範囲に
あるときに、ポリイミド前駆体膜を塩基性化合物と接触
させ、しかる後、(3) 第二段目の加熱処理により、イミ
ド化率を実質的に100%にまで上昇させることを特徴
とするポリイミド膜の製造方法。ポリイミド膜の形成
後、その上に形成した金属層のクロスカット試験による
剥離率(a)が20%以下で、かつ、350℃で2時間
の熱ショック試験後の金属層の剥離率(b)が前記剥離
率(a)よりも小さいポリイミド膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリイミド前駆体
膜を加熱処理してイミド化反応させるポリイミド膜の製
造方法に関し、さらに詳しくは、ポリイミド膜上に形成
した金属配線などの金属層との界面での密着性に優れ、
高温での熱履歴を受けても金属層との密着性の低下がな
く、かつ、ポリイミド膜自体の機械的特性が改善された
なポリイミド膜の製造方法に関する。本発明のポリイミ
ド膜は、半導体素子における表面保護膜、層間絶縁膜等
として特に好適である。
【0002】
【従来の技術】従来より、ポリイミド膜(塗膜、フィル
ム)は、エレクトロニクス実装技術分野において、半導
体素子の絶縁膜(表面保護膜、層間絶縁膜等)、フレキ
シブル配線板のベースフィルム等として使用されてい
る。これらの用途では、ポリイミド膜上に金属配線を設
けることが多い。金属配線の材質としては、通常、銅が
使用されているが、ポリイミド膜は、銅層との密着性が
十分ではない。そのため、例えば、半導体素子では、ポ
リイミド膜上にスパッタリングによりクロム層を設け、
その上に銅層を設けることにより、銅層との密着性を改
善している。しかしながら、この方法では、ポリイミド
膜と金属配線との間に、高度の密着性、密着性の耐久
力、密着性の熱安定力を与えることができなかった。
【0003】ポリイミド膜と他材との間の界面での密着
性を高める技術に関し、従来より様々な方法が提案され
ている。例えば、ポリイミドフィルム表面にカップリン
グ剤溶液を付着させた後、該溶液を乾燥させ、乾燥させ
たフィルムにコロナ放電処理を行うポリイミドフィルム
の接着性改善方法(特開平8−34870号公報)、ポ
リイミドフィルム表面に、不活性ガス雰囲気中でプラズ
マ処理を行った後、活性ガス雰囲気中でプラズマ処理を
施すポリイミドフィルムの表面処理方法(特開平8−3
338号公報)、基材上に第一のポリイミド絶縁膜を形
成し、その表面に酸素とCF4 との混合ガスによるプラ
ズマ処理を施し、その上に第二のポリイミド絶縁膜を形
成する表面処理方法(特開平7−249867号公
報)、2種類の芳香族ポリアミック酸の混合溶液を流延
・薄膜状にしてイミド化したフィルムをアルカリ溶液で
処理する粗面化ポリイミドフィルムの製造方法(特開平
6−313055号公報)、ポリイミドフィルム表面を
硝酸、硫酸、及び水溶性過マンガン酸塩のアルカリ水溶
液と順次接触させることにより、非電解的に析着させた
金属層との密着性を改善する方法(特開平6−2989
75号公報)、多層配線構造体の製造方法において、ポ
リイミド層を酸素プラズマ放電処理して導体金属との密
着性を改善する方法(特公昭62−43544号公報)
などが提案されている。
【0004】しかしながら、コロナ放電処理やプラズマ
処理では、ポリイミド膜の表面を均一に処理することが
困難であり、ポリイミド膜と金属配線との間の密着性に
バラツキが生じる。ポリイミドフィルムの表面を粗面化
すると、易滑性となり、アンカー効果により他材との密
着性が改善されるものの、物理的な処理であるため、金
属配線との密着性の改善効果は十分ではない。ポリイミ
ドフィルムの表面を化学的に改質する方法は、表面への
添加剤のブリード等により密着性の改善効果が損なわれ
やすい。また、従来のポリイミド膜の表面改質法は、コ
スト高であったり、ポリイミド膜自体の物性を損なうこ
とがあった。アルゴンガス逆スパッタ法などのドライエ
ッチング法も知られているが、コスト高のため量産性に
問題がある。
【0005】さらに、従来の方法では、ポリイミド層と
金属層との間の密着性が改善されたとしても、熱ショッ
ク(高温での熱履歴)を受けると、密着性が低下すると
いう問題があった。近年、半導体の高集積化に伴い、多
層基板の開発が進められている。多層基板では、基板上
に、金属配線と絶縁膜とを交互に積み重ねる必要があ
る。この場合、ポリイミド絶縁膜上に金属配線を形成
し、さらにその上にポリイミド絶縁膜を形成することに
なる。新たなポリイミド絶縁膜を形成するには、ポリイ
ミド前駆体を含有する溶液を塗布し、乾燥して、皮膜を
形成し、該皮膜を高温で加熱処理してイミド化させる必
要がある。ところが、イミド化に必要な高温に曝される
と、下層のポリイミド絶縁膜と金属配線との間の密着性
が損なわれて剥離しやすくなる。従来のポリイミド膜の
表面処理方法では、ポリイミド膜と金属層との密着性の
熱安定性まで改善することが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
イミド膜と金属層との密着性に優れ、高温での熱履歴を
受けても密着性の低下がなく、かつ、ポリイミド膜自体
の機械的特性が改善されたポリイミド膜の製造方法を提
供することにある。本発明の他の目的は、金属層との密
着性に優れ、高温での熱履歴を受けても密着性の低下が
なく、かつ、それ自体の機械的特性が改善されたポリイ
ミド膜を提供することにある。
【0007】本発明者らは、前記目的を達成するために
鋭意研究した結果、従来のポリイミド膜の表面改質法の
ように、既に完全にイミド化したポリイミド膜の表面を
改質するのではなく、ポリイミド膜のイミド化率が特定
の範囲にある時に塩基性化合物で処理した後、完全イミ
ド化することにより、金属層との密着性に優れ、該密着
性の熱安定性に優れ、しかも機械的特性が改善されたポ
リイミド膜の得られることを見いだした。ポリイミド膜
のイミド化率は、加熱処理の温度と時間を調整すること
により、簡単に制御することができる。
【0008】本発明の製造方法によれば、感光助剤や光
重合開始剤などを含有するポリイミド系感光性樹脂組成
物のように、各種添加剤成分を含有するポリイミド前駆
体膜に適用した場合でも、高度の密着性を達成すること
ができる。本発明の製造方法により得られたポリイミド
膜は、高い破断強度と破断伸びを有している。また、本
発明の製造方法は、量産する場合の設備投資が安価であ
り、比較的低コストでポリイミド膜を形成することがで
きる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至
ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれ
ば、ポリイミド前駆体膜を加熱処理してポリイミド膜を
製造する方法において、(1) 第一段目の加熱処理によ
り、ポリイミド前駆体のイミド化率を85〜99.9%
の範囲に制御し、(2) イミド化率がこの範囲にあるとき
に、ポリイミド前駆体膜を塩基性化合物と接触させ、し
かる後、(3) 第二段目の加熱処理により、イミド化率を
実質的に100%にまで上昇させることを特徴とするポ
リイミド膜の製造方法が提供される。また、本発明によ
れば、ポリイミド膜の形成後、その上に形成した金属層
のクロスカット試験による剥離率(a)が20%以下
で、かつ、350℃で2時間の熱ショック試験後の金属
層の剥離率(b)が前記剥離率(a)よりも小さいポリ
イミド膜が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】1.ポリイミド膜の製造方法 (1)ポリイミド前駆体 本発明で使用するポリイミド前駆体としては、テトラカ
ルボン酸二無水物とジアミンとの重縮合反応により形成
されたポリアミック酸構造を有するものが典型的なもの
である。ポリアミック酸は、両末端に化学線官能基を導
入したものであってもよく、また、感光助剤や光重合開
始剤を含有する感光性樹脂組成物であってもよい。ポリ
アミック酸構造を有するポリイミド前駆体は、加熱処理
すると脱水閉環(イミド化)してポリイミドとなる。ポ
リイミド前駆体には、加熱処理によりイミド化すること
ができる各種ポリアミック酸、ポリイミド系感光性樹脂
組成物、感光性ポリアミック酸、感光性ポリアミック酸
エステル、その他の広範なポリイミド系樹脂(前駆体)
が包含される。好ましいポリイミド前駆体や添加剤につ
いては、後述する。
【0011】(2)ポリイミド前駆体膜 ポリイミド前駆体は、一般に、その溶液を支持体上に塗
布または流延し、乾燥することによりポリイミド前駆体
膜とする。支持体としては、ベルト、ドラム、基板など
が挙げられる。ポリイミドフィルムを製造する場合に
は、ポリイミド前駆体溶液をスリットダイを通して薄膜
状に連続的に押し出しして、回動しているベルトやドラ
ムの表面上に流延させて均一な厚みの薄膜を形成し、こ
れを乾燥して自己支持性のフィルムとする。このフィル
ムは、300〜500℃の温度で加熱処理してイミド化
するとポリイミドフィルムとなる。円筒状金型の外面に
ポリイミド前駆体溶液を塗布し、乾燥して、チューブ状
またはエンドレスベルト状の膜を形成してもよい。半導
体素子などの分野では、シリコンウエハなどの基板上に
ポリイミド前駆体溶液を塗布し、乾燥してポリイミド前
駆体の皮膜を形成し、これを加熱処理してイミド化する
ことにより、ポリイミド膜からなる絶縁膜を形成する。
【0012】(3)部分イミド化 本発明では、ポリイミド前駆体膜を完全にイミド化する
前に、塩基性化合物と接触させる。従来の方法では、ポ
リイミド前駆体膜を、例えば、400℃程度の高温で加
熱処理することにより、完全にイミド化して、ポリイミ
ド膜を形成していた。これに対して、本発明では、ポリ
イミド膜を加熱処理してイミド化するに際し、イミド化
率が85〜99.9%、好ましくは90〜99.9%、
より好ましくは93〜99.8%、特に好ましくは95
〜99.7%の範囲となるように制御する。すなわち、
ポリイミド前駆体膜の部分イミド化を行う。ポリイミド
前駆体膜のイミド化率が低すぎると、塩基性化合物と接
触処理した場合に、膜が溶解して膜減りが起きやすくな
る。膜減りが起きると、所望の膜厚のポリイミドフィル
ムを得ることができなくなり、また、膜厚にバラツキが
生じる。ポリイミド前駆体膜のイミド化率が高すぎる
と、塩基性化合物による処理効果が低下する。イミド化
率が100%の時点で塩基性化合物で処理しても、金属
層との密着性が十分に改善されたポリイミド膜を得るこ
とができない。
【0013】ポリイミド前駆体膜のイミド化率は、加熱
処理の温度と時間を調整することにより容易に所望の範
囲に制御することができる。第一段目の加熱処理によ
り、ポリイミド前駆体のイミド化率を85〜99.9%
の範囲に制御するには、通常、100〜300℃、好ま
しくは150℃〜280℃、より好ましくは170℃〜
250℃、特に好ましくは180〜230℃の熱処理温
度で、通常、1〜100分間、好ましくは5〜60分
間、より好ましくは10〜30分間の熱処理時間で加熱
処理を行う。熱処理温度が高い場合には、熱処理時間を
短くする。特定の熱処理温度でイミド化率を高めるに
は、熱処理時間を長くする。ポリイミド前駆体膜を加熱
処理して所望のイミド化率に制御するには、予め加熱処
理条件とイミド化率との関係を調べておくことが望まし
い。イミド化率は、膜の赤外線分析により決定すること
ができる。
【0014】(4)塩基性化合物 本発明では、ポリイミド前駆体膜のイミド化率が85〜
99.9%の範囲にあるときに、該ポリイミド前駆体膜
を塩基性化合物と接触させる。塩基性化合物としては、
有機化合物及び無機化合物のいずれでも使用することが
できるが、有機化合物(有機塩基)の方が、第二段目の
加熱処理で完全イミド化する際に揮散して、ポリイミド
膜中に残留しないため好ましい。このような有機塩基と
しては、常温で固体であるか、沸点が常温を越えるもの
が特に好ましい。
【0015】有機塩基としては、例えば、モノエタノー
ルアミン(沸点=170.8℃、pKa=9.54)、
2−アミノ−ブタノール(沸点=178℃)、2−アミ
ノ−2−メチル−プロパノール(沸点=165.5
℃)、2−〔(2−アミノエチル)アミノ〕−エタノー
ル(沸点=238〜240℃、pKa=8.90)、ジ
エタノールアミン(沸点=271℃)、トリエタノール
アミン(沸点201℃/5mmHg)などのアミノアル
コール類;ブチルアミン(沸点=77.8〜78.2
℃、pKa=10.777)、ヘキシルアミン(沸点=
130℃/762mmHg)、オクチルアミン(沸点=
188℃)、2−エチルヘキシルアミン(沸点=98〜
99℃/90mmHg、pKa=9.86)、ベンジル
アミン(沸点=184.5℃、pKa=9.35)など
のモノアミン類;エチレンジアミン(沸点=117.2
℃)、1,2−プロパンジアミン(沸点=119.3
℃)などのジアミン類;ジエチレントリアミン(沸点=
206.7℃)、トリエチレンテトラミン(沸点=26
6〜267℃、pKa=9.74)、テトラエチレンペ
ンタミン(沸点=333℃)、ペンタエチレンヘキサミ
ン(沸点=340℃)などのポリアミン類;テトラメチ
ルアンモニウムヒドロキシド(五水和物の融点=62〜
63℃)などの第四級アンモニウム化合物;などを挙げ
ることができる。これらの有機塩基の中でも、沸点が1
60℃以上の化合物が好ましい。ポリアミン類は、沸点
が高く、かつ、複数の活性部位を持つのでより好まし
く、膜減りがない点でトリエチレンテトラミンが特に好
ましい。
【0016】(5)塩基性化合物との接触処理 イミド化率が85.0〜99.9%の部分イミド化ポリ
イミド前駆体膜を塩基性化合物と接触させるには、通
常、該膜を塩基性化合物の溶液と接触させる。塩基性化
合物の溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−
ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶
剤;イソプロピルアルコールなどのアルコール;水など
を挙げることができる。溶液中の塩基性化合物の濃度
は、通常1〜40重量%、好ましくは5〜20重量%で
ある。溶液中の塩基性化合物の濃度が低すぎると、密着
性改善効果が小さく、高すぎると、膜表面で過剰な加水
分解が起き、膜減りや、膜表面強度の低下による密着性
低下を招くので、いずれも好ましくない。
【0017】部分イミド化ポリイミド前駆体膜を塩基性
化合物と接触させるには、該膜の表面に塩基性化合物の
溶液を塗布したり、噴霧してもよいが、所定の濃度に調
整した塩基性化合物の溶液中に該膜を浸漬する方法が、
均一な処理を行う上で好ましい。塩基性化合物による接
触条件は、処理温度が通常0〜120℃、好ましくは2
0〜100℃、より好ましくは40〜70℃程度であ
り、処理時間が通常10秒間〜180分間、好ましくは
1〜120分間、より好ましくは3〜30分間程度であ
る。処理温度が低すぎると、塩基性化合物の膜表面での
反応(塩形成及び部分加水分解反応)が抑制され、密着
性の改善効果が不十分となる。処理温度が高すぎると、
膜表面の膨潤、塩基性化合物の膜内部への侵入、過剰な
加水分解反応などを招き、膜減りや膜表面強度の低下を
招くおそれがある。処理時間は、短すぎると膜表面と塩
基性化合物との間で十分な反応が進行せず、長すぎると
過剰反応を招き、いずれも好ましくない。一般的に、処
理温度が高いほど、処理時間は短くてよい。処理温度が
低い場合には、処理時間が長くなる。塩基性化合物との
接触処理後に、通常、膜表面を水でリンスする。
【0018】部分イミド化ポリイミド前駆体膜には、脱
水閉環(イミド化)されていない酸性基(例えば、カル
ボキシル基)が残存している。このような部分イミド化
ポリイミド前駆体膜に塩基性化合物を接触させると、膜
表面の酸性基と塩基性化合物とが反応して塩を形成す
る。次に、完全イミド化のための第二段目の加熱処理を
行うと、この塩の塩基成分の作用により、膜表面で加水
分解反応が起こり、膜表面での極性基の比率が高まる。
これによって、生成したポリイミド膜と金属層との密着
性が高まるものと推定される。塩基成分が加水分解反応
に十分に寄与するには、使用する塩基性化合物の沸点が
高い方が好ましい。
【0019】イミド化率が低すぎるポリイミド前駆体膜
に塩基性化合物を接触させると、膜の内部にまで塩基性
化合物が侵入し、その結果、膜内部の加水分解反応と溶
解を招き、膜減り現象が生じる。一方、完全イミド化し
た後の膜に塩基性化合物を接触させても、残存する酸性
基が極めて少ないため、酸性基と塩基性化合物との間で
塩を殆ど形成せず、第二段目の加熱処理時に塩基成分に
よる加水分解反応が起きにくくり、密着性の改善効果が
現れにくくなる。
【0020】塩基性化合物の分子の大きさが小さすぎる
と、膜中への侵入が起きやすくなるので好ましくない。
塩基性化合物の沸点が低すぎると、第二段目の加熱処理
の際に、塩中の塩基成分の脱離が早く起きて、膜表面で
の極性基生成への寄与が小さくなり、十分な密着性の改
善効果が得られない場合がある。これに対して、沸点が
160℃と高く、かつ、複数の活性部位を持つトリエチ
レンテトラミンのようなポリアミン類は、膜内部への侵
入が起こりにくく、塩基成分が膜表面に選択的に残留し
やすい。ポリアミン類は、沸点がある程度高く、第二段
目の加熱処理の工程で膜表面への加水分解が終了後、熱
脱離するのに適している。このため、膜減りが起き難い
と推定される。塩基性化合物の沸点の上限は、通常40
0℃、好ましくは350℃程度である。塩基性化合物
は、常温で固体であって、350〜500℃の高温で分
解するものであってもよい。
【0021】(6)完全イミド化 本発明では、部分イミド化ポリイミド前駆体膜を塩基性
化合物と接触させ、しかる後、第二段目の加熱処理によ
り、イミド化率を実質的に100%にまで上昇させる。
第二段目の加熱処理条件は、熱処理温度が通常300〜
500℃、好ましくは350〜450℃で、熱処理時間
が通常1〜120分間、好ましくは5〜100分間程度
である。熱処理温度を段階的に高めてもよい。
【0022】本発明の製造方法により得られたポリイミ
ド膜は、その表面にスパッタリングによりクロム膜を形
成し、その上に銅層を形成すると、密着性が十分に高い
銅層を形成することができる。また、このポリイミド膜
の上に、さらにポリイミド前駆体溶液を塗布し、乾燥
し、加熱処理してイミド化しても、該ポリイミド膜と金
属配線との密着性は低下することがなく、むしろ向上す
ることが判明した。したがって、本発明の製造方法は、
多層基板の形成に好適である。本発明の製造方法で得ら
れたポリイミド膜に対して、アルゴン逆スパッタリング
処理した後、クロムスパッタリングを行うと、金属配線
層の初期密着力を更に向上させることが可能である。た
だし、このような処理は、工程増加を招き、コスト的に
は問題があるので、必ずしも必要ではない。
【0023】ポリイミド系感光性樹脂組成物を用いてポ
リイミド前駆体膜を作成し、該ポリイミド前駆体膜に本
発明の方法を適用すると、感光性を付与するために添加
した感光助剤(例えば、アクリレート類、メタクリレー
ト類)が塩基性化合物による接触処理、その後の完全イ
ミド化の際の加熱処理の工程で除去されるため、膜のイ
ミド化が均一に進み、ポリイミド膜の機械的特性(破断
強度、破断伸び)が向上する。
【0024】2.ポリイミド前駆体膜の構成成分 (1)ポリアミック酸など 本発明で使用するポリイミド前駆体膜は、通常、ポリイ
ミド前駆体溶液を支持体上に塗布または流延し、乾燥し
て形成した膜である。ポリイミド前駆体膜またはポリイ
ミド膜を支持体から剥離すれば、ポリイミドフィルムを
得ることができる。支持体がシリコンウエハなどの半導
体基板の場合には、第二段目の加熱処理により、半導体
基板上に形成されたポリイミド膜が得られる。すなわ
ち、ポリイミド絶縁膜を有する半導体素子が得られる。
【0025】ポリイミド前駆体溶液は、通常、テトラカ
ルボン酸二無水物とジアミンとの重縮合反応により形成
されたポリアミック酸構造のポリイミド前駆体を含有す
る溶液である。ポリイミド前駆体は、両末端に化学線官
能基を導入したポリアミック酸であってもよい。ポリイ
ミド前駆体溶液は、ポリアミック酸と感光助剤などを含
有するポリイミド系感光性樹脂組成物であってもよい。
本発明の製造方法は、特に両末端に化学線官能基を導入
したポリアミック酸、該ポリアミック酸と感光助剤や光
重合開始剤などを含有するポリイミド系感光性樹脂組成
物などに適用した場合に、特に顕著な作用効果を得るこ
とができる。
【0026】ポリアミック酸は、一般に、テトラカルボ
ン酸二無水物とジアミンとの縮合反応により得ることが
できる。縮合反応は、ポリアミック酸合成の常法に従っ
て、各成分をジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒
中で反応させればよい。反応条件としては、例えば、氷
冷下で0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間、次い
で、室温下で1〜50時間、好ましくは5〜30時間反
応させる方法を挙げることができる。
【0027】(2)テトラカルボン酸二無水物 テトラカルボン酸二酸無水物としては、例えば、ピロメ
リット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノ
ンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,
4−テトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,
3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水
物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二
無水物、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン
酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカル
ボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,5,8−テトラ
カルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,6,7−テ
トラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,
3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,
5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル
−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−
2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,6−
ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン
酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,
5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−
テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカル
ボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタ
レン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、
3,3′,4,4′−ジフェニルテトラカルボン酸二無
水物、2,2′,3,3′−ジフェニルテトラカルボン
酸二無水物、2,3,3′,4′−ジフェニルテトラカ
ルボン酸二無水物、2,3″,4,4″−p−テルフェ
ニルテトラカルボン酸二無水物、2,2″,3,3″−
p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,
3″,4″−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水
物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−
プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキ
シフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカ
ルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−
ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,
3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス
(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビ
ス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水
物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二
無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニ
ル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボ
キシフェニル)エタン二無水物、ペリレン−2,3,
8,9−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,
4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−
4,5,10,11−テトラカルボン酸二無水物、ペリ
レン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水
物、フェナンスレン−1,2,7,8−テトラカルボン
酸二無水物、フェナンスレン−1,2,6,7−テトラ
カルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,2,9,1
0−テトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカル
ボン酸二無水物及びその水添加物;シクロペンタン−
1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロブ
タンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,
2]オクタ−7−エン−2−エキソ,3−エキソ,5−
エキソ,6−エキソテトラカルボン酸2,3:5,6−
二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−エキ
ソ,3−エキソ,5−エキソ,6−エキソテトラカルボ
ン酸2,3:5,6−二無水物などの脂環式酸二無水
物;ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無
水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸
二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボ
ン酸二無水物などの複素環誘導体酸二無水物などが挙げ
られる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、それぞ
れ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用するこ
とができる。また、必要に応じて、テトラカルボン酸二
無水物に対応するテトラカルボン酸を使用してもよい。
【0028】(3)ジアミン ジアミン化合物としては、例えば、2,2′−ジ(p−
アミノフェニル)−6,6′−ビベンゾオキサゾール、
2,2′−ジ(p−アミノフェニル)−5,5′−ビベ
ンゾオキサゾール、m−フェニレンジアミン、1−イソ
プロピル−2,4−フェニレンジアミン、p−フェニレ
ンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、
3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジ
アミノジフェニルエタン、3,3′−ジアミノジフェニ
ルエタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,
3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ
ジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニル
スルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、
3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジ
アミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェ
ニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)
ベンゼン、ベンジジン、4,4″−ジアミノ−p−テル
フェニル、3,3″−ジアミノ−p−テルフェニル、ビ
ス(p−アミノシクロヘキシル)メテン、ビス(p−β
−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−
β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス
(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビ
ス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼ
ン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナ
フタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)ト
ルエン、2,4−ジアミノトルエン、m−キシレン−
2,5−ジアミン、p−キシレン−2,5−ジアミン、
m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなど
の芳香族ジアミン類;2,6−ジアミノピリジン、2,
5−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノ−1,3,4
−オキサジアゾールなどの複素環ジアミン類;1,4−
ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ジアミン類;ピペ
ラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピ
レンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、
テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘ
キサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレ
ンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、ヘ
プタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレ
ンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,
4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、オクタメチレン
ジアミン、ノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチ
レンジアミン、2,5−ジメチルノナメチレンジアミ
ン、デカメチレンジアミン、1,10−ジアミノ−1,
10−ジメチルデカン、2,11−ジアミノドデカン、
1,12−ジアミノオクタデカン、2,12−ジアミノ
オクタデカン、2,17−ジアミノアイコサンなどの脂
肪族ジアミン類;4,4′−ジアミノベンズアニリド、
4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメトキシベンズアニ
リドなどのジアミノベンズアニリド類;ジアミノシロキ
サン、2,6−ジアミノ−4−カルボキシリックベンゼ
ン、3,3′−ジアミノ−4,4′−ジカルボキシリッ
クベンジジンなどが挙げられる。これらのジアミン化合
物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせ
て使用することができる。
【0029】(4)両末端に化学線官能基を有するポリ
アミック酸 本発明では、ポリイミド前駆体として、両末端に化学酸
官能基(光重合可能な官能基)を有するポリアミック酸
(例えば、特開平8−82931号公報、特開平8−9
5247号公報、特開平4−77741号公報、特開平
5−86154号公報)を使用することができる。両末
端に化学酸官能基を有するポリアミック酸の中でも、特
開平8−82931号公報及び特開平8−95247号
公報に記載されているポリアミック酸が、主鎖の分子構
造を調整することができ、かつ、ポリイミド系感光性樹
脂組成物とした場合に、アルカリ水溶液による現像を容
易にすることができるため、特に好ましい。このような
両末端に化学線官能基が導入されたポリアミック酸とし
ては、主鎖中に式(1)
【0030】
【化1】
【0031】(式中、R1 は、4価の有機基であり、R
2 は、2価の有機基である。)で表される繰り返し単位
を有し、かつ、式(2)
【0032】
【化2】
【0033】(式中、Xは、単結合、−O−、−CO
−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−COC
2 O−、−S−、−SO−、−SO2 −、または−S
2 O−であり、R3 、R4 、R5 、R6 、及びR7
は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基で
あり、mは、0または1であり、nは、1〜3の範囲内
の整数である。)で表される基Z1 、並びに、式(3)
【0034】
【化3】
【0035】(式中、R3 、R4 、R5 、R6 、及びR
7 は、光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する置換基
であり、mは、0または1である。)で表される基Z2
からなる群より選ばれる少なくとも一種の化学線官能基
を両末端に有するポリアミック酸(A)を挙げることが
できる。
【0036】式(1)中のR1 は、芳香族テトラカルボ
ン酸二無水物及びその水添加物、脂環式酸無水物、複素
環誘導体酸無水物などのテトラカルボン酸またはその酸
無水物から誘導される4価の有機基である。式(1)中
のR2 は、芳香族ジアミン、複素環ジアミン、脂環式ジ
アミン、脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物から誘導
される2価の有機基である。式(1)で表される繰り返
し単位を単位分子量と定義した場合、カルボキシル基一
個当りの単位分子量の値(単位分子量/−COOH)が
200〜300の範囲内になるように、モノマー成分
(ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物)を選択
することが好ましい。このようなポリアミド酸として
は、式(2)で表される化学線官能基Z1 を両末端に有
する式(4)
【0037】
【化4】
【0038】〔式中、R1 は、4価の有機基であり、R
2 は、2価の有機基であり、kは、5〜10000の範
囲内の整数であり、Z1 は、式(2)で表される化学線
官能基である。〕で表されるポリアミック酸(A1)、
及び式(3)で表される化学線官能基Z2を両末端に有
する式(5)
【0039】
【化5】
【0040】〔式中、R1 は、4価の有機基であり、R
2 は、2価の有機基であり、kは、5〜10000の範
囲内の整数であり、Z2 は、式(3)で表される化学線
官能基である。〕で表されるポリアミック酸(A2)を
挙げることができる。ポリアミック酸(A1)は、通
常、ジアミン化合物とp−アミノ安息香酸〔トリス(メ
タクロイル)ペンタエリスリトール〕エステルなどのア
ミノベンゼン類との混合物に、テトラカルボン酸または
その酸無水物を加え、常法により縮合反応させることに
より得られる。ポリアミド酸(A2)は、ジアミン化合
物に、トリメリット酸アンハイドライド〔トリス(メタ
クロイル)ペンタエリスリトール〕エステルなどのトリ
メリット酸誘導体とテトラカルボン酸またはその無水物
を加え、常法により縮合反応させることにより得られ
る。
【0041】テトラカルボン酸またはその酸無水物のカ
ルボキシル基と反応して、前記の置換基Z1 を与える化
合物として、アミノベンゼン類、好ましくはアミノベン
ゼンカルボン酸エステルを使用する。アミノベンゼンカ
ルボン酸エステルの具体例としては、o−アミノ安息香
酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]
エステル、o−アミノ安息香酸[トリス(アクリロイ
ル)ペンタエリスリトール]エステル、m−アミノ安息
香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトー
ル]エステル、m−アミノ安息香酸[トリス(アクリロ
イル)ペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安
息香酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトー
ル]エステル、p−アミノ安息香酸[トリス(アクリロ
イル)ペンタエリスリトール]エステル、5−アミノ−
イソフタル酸[トリス(メタクリロイル)ペンタエリス
リトール]ジエステル、5−アミノ−イソフタル酸[ト
リス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]ジエステ
ル、o−アミノ安息香酸[ペンタキス(メタクリロイ
ル)ジペンタエリスリトール]エステル、o−アミノ安
息香酸[ペンタキス(アクリロイル)ジペンタエリスリ
トール]エステル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス
(メタクリロイル)ジペンタエリスリトール]エステ
ル、m−アミノ安息香酸[ペンタキス(アクリロイル)
ジペンタエリスリトール]エステル、p−アミノ安息香
酸[ペンタキス(メタクリロイル)ジペンタエリスリト
ール]エステル、p−アミノ安息香酸[ペンタキス(ア
クリロイル)ジペンタエリスリトール]エステルなどを
挙げることができる。これらの中でも、p−アミノ安息
香酸〔トリス(メタクリロイル)ペンタエリスリトー
ル〕エステルが、合成コスト、操作性、高感度、高解像
度などの点で優れており、特に好ましい。
【0042】両末端に式(2)で表される化学線官能基
1 を導入したポリアミック酸(A1)を合成するに
は、ジアミン化合物とアミノベンゼン類との混合物に、
テトラカルボン酸またはその無水物を加え、常法により
縮合反応させる。より具体的には、両末端に化学線官能
基を導入したポリアミド酸を合成するには、テトラカ
ルボン酸またはその無水物1モルに対して、ジアミン化
合物を通常0.850〜0.990モル、好ましくは
0.900〜0.970モルの割合で使用し、ジアミ
ン化合物1モルに対して、アミノベンゼン類を通常0.
400〜0.020モル、好ましくは0.110〜0.
040モル、より好ましくは0.100〜0.050モ
ルの割合で使用し、さらに、テトラカルボン酸または
その無水物1モルに対して、ジアミン化合物とアミノベ
ンゼン類とを合計量で、通常1.100〜0.900モ
ル、好ましくは1.100〜0.950モル、より好ま
しくは1.060〜0.990モルの割合で使用する。
縮合反応は、ポリアミック酸を合成する常法に従って、
各成分をジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒中で
反応させればよい。反応条件としては、例えば、氷冷下
で0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間、次いで、
室温下で1〜50時間、好ましくは5〜30時間反応さ
せる方法を挙げることができる。
【0043】ポリアミック酸の両末端に式(3)で表さ
れる置換基Z2 を与える化合物として、特定の構造を有
するトリメリット酸誘導体を使用する。トリメリット酸
誘導体としては、例えば、トリメリット酸アンハイドラ
イド[トリス(アクリロイル)ペンタエリスリトール]
エステル、トリメリット酸アンハイドライド[トリス
(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステルな
どが合成経費、操作性、高感度、高解像度などの点で優
れており、特に好ましい。
【0044】両末端に式(3)で表される化学線官能基
2 を導入したポリアミック酸(A2)を合成するに
は、ジアミン化合物に、トリメリット酸誘導体とテトラ
カルボン酸またはその無水物を加え、常法により縮合反
応させる。あるいは、ジアミン化合物とトリメリット酸
誘導体との混合物に、テトラカルボン酸またはその無水
物を加え、常法により縮合反応させてもよい。より具体
的に、両末端に化学線官能基を導入したポリアミック酸
を合成するには、ジアミン化合物1モルに対して、テ
トラカルボン酸またはその無水物を通常0.850〜
0.990モル、好ましくは0.900〜0.970モ
ルの割合で使用し、テトラカルボン酸またはその無水
物1モルに対して、トリメリット酸誘導体を通常0.4
00〜0.020モル、好ましくは0.110〜0.0
40モル、より好ましくは0.100〜0.050モル
の割合で使用し、さらに、ジアミン化合物1モルに対
して、テトラカルボン酸またはその無水物とトリメリッ
ト酸誘導体とを合計量で、通常1.100〜0.900
モル、好ましくは1.100〜0.990モル、より好
ましくは1.060〜1.020モルの割合で使用す
る。縮合反応は、ポリアミド酸を合成する常法に従っ
て、各成分をジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒
中で反応させればよい。反応条件としては、例えば、氷
冷下で0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間、次い
で、室温下で1〜50時間、好ましくは5〜30時間反
応させる方法を挙げることができる。
【0045】(5)ポリイミド系感光性樹脂組成物 本発明で使用するポリイミド系感光性樹脂組成物として
は、例えば、両末端に化学線官能基を有するポリアミッ
ク酸を含有する感光性樹脂組成物(前記の特開平8−8
2931号公報、特開平8−95247号公報、特開平
4−77741号公報、特開平5−86154号公
報)、ジアミン構造中に光重合可能な官能基をもったポ
リアミック酸を含有する感光性樹脂組成物(例えば、特
開平9−90629号公報)、ポリアミック酸に光重合
可能なモノマーを配合した感光性樹脂組成物(例えば、
特開平9−90630号公報)などを挙げることができ
る。これらの中でも、両末端に化学線官能基を有するポ
リアミック酸、好ましくは前記の特定の化学線官能基を
両末端に有するポリアミック酸(A)と、光重合性官能
基を有する感光助剤(B)と、光重合開始剤(C)と、
溶剤(D)との均一な混合物であるポリイミド系感光性
樹脂組成物が好ましい。
【0046】感光助剤(B)は、一般に光硬化モノマー
として公知のものであれば特に制限されない。この感光
助剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート
などの(メタ)アクリル酸系化合物が代表的なものであ
る。感光助剤は、ポリアミック酸100重量部に対し
て、通常10〜40重量部、好ましくは15〜35重量
部、より好ましくは20〜30重量部の割合で使用す
る。
【0047】光重合開始剤(C)としては、例えば、ミ
ヒラーズケトン、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテ
ル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチ
ルエーテル、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−
ベンゾ−9,10−アントラキノン、アントラキノン、
メチルアントラキノン、4,4′−ビス−(ジエチルア
ミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノ
ン、チオキサントン、1,5−アセナフテン、2,2−
ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロ
キシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4
−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−
プロパノン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケ
タール、ベンジルジエチルケタール、ジフェニルジスル
フィド、アントラセン、フェナンスレンキノン、リボフ
ラビンテトラブチレート、アクリルオレンジ、エリスロ
シン、フェナンスレンキノン、2−イソプロピルチオキ
サントン、2,6−ビス(p−ジエチルアミノベンジリ
デン)−4−メチル−4−アザシクロヘキサノン、6−
ビス(p−ジメチルアミノベンジリデン)−シクロペン
タノン、2,6−ビス(p−ジエチルアミノベンジリデ
ン)−4−フェニルシクロヘキサノン、アミノスチリル
ケトン、3−ケトクマリン化合物、ビスクマリン化合
物、N−フェニルグリシン、N−フェニルジエタノール
アミン、3,3′,4,4′テトラ(t−ブチルパーオ
キシカルボニル)ベンゾフェノンなどを挙げることがで
きる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で、ある
いは2種以上を組み合わせて使用することができる。光
重合開始剤の使用量は、ポリアミック酸100重量部に
対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1
〜5重量部、より好ましくは1〜5重量部である。
【0048】溶剤としては、例えば、N−メチル−2−
ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−
ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラ
メチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチ
ロラクロンなどの極性溶剤が挙げられる。溶剤の使用量
は、各成分を均一に溶解するのに充分な量とする。特
に、ポリアミック酸を溶解するに足る量比で使用する。
溶剤の使用割合は、溶剤の種類やポリアミック酸によっ
て異なるが、ポリアミック酸に対して、通常3〜25倍
量(重量比)、好ましくは5〜20倍量、より好ましく
は6〜10倍量の範囲内である。
【0049】ポリイミド系感光性樹脂組成物には、必要
に応じて接着助剤、レベリング剤、重合禁止剤等の各種
添加剤を使用することができる。各種添加剤の中でも、
1H−テトラゾール、5,5′−ビス−1H−テトラゾ
ール、これらの誘導体などの1H−テトラゾール類を添
加することにより、銅及び銅合金に対する腐食性を防止
し、ひいては、ポリイミド膜の基板に対する密着性の向
上、感光性皮膜の残膜防止などを図ることができる。1
H−テトラゾール類は、ポリアミック酸100重量部に
対して、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.1
〜5重量部の割合で添加される。
【0050】ポリイミド系感光性樹脂組成物を用いて、
基板上にパターンを形成することができる。パターン形
成法としては、ポリイミド系感光性樹脂組成物(ワニ
ス)をシリコンウエハなどの基板上にスピンコートなど
の手法で塗布し、ホットプレートやオーブンで乾燥し
て皮膜を形成し、次いで、フォトマスクを介して所定
量の露光を行った後、現像を行う方法がある。本発明
のポリイミド膜は、このようなパターン状に形成された
ものを包含する。
【0051】3.ポリイミド膜 本発明の製造方法により得られたポリイミド膜は、その
上に形成した金属配線などの金属層との密着性に優れて
いる。より具体的に、本発明の製造方法により得られた
ポリイミド膜は、その上に形成した金属層(代表的に
は、銅層)のクロスカット試験(後述)による剥離率が
通常20%以下、好ましくは18%以下、より好ましく
は15%以下である。しかも、ポリイミド膜上に金属層
を形成した試料は、350℃で2時間加熱する熱ショッ
ク試験後の金属層の剥離率が前記剥離率よりも小さくな
る。したがって、本発明の製造方法により得られたポリ
イミド膜は、再加熱処理を受けた場合に、金属配線に対
する密着性改善効果が認められる。また、製膜後、ポリ
イミド膜上に形成された金属層のピール強度(後述)
は、通常100g/cm以上、好ましくは130g/c
m以上、より好ましくは150g/cm以上である。本
発明のポリイミド膜は、破断強度、破断伸びなどの機械
的特性にも優れている。
【0052】
【実施例】以下に、合成例、実施例、及び比較例を挙げ
て、本発明についてより具体的に説明するが、本発明
は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0053】[合成例1] 1.ポリアミック酸の合成 攪拌機と乾燥ガス導入管とを装備した反応器に、4,
4′−ジアミノベンズアニリド45.9g(0.202
mol)及びジメチルアセトアミド811gを投入し、
50℃で攪拌・混合して溶液を調製した。この溶液に、
ピロメリット酸二無水物22.9g(0.105mo
l)及び3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカ
ルボン酸二無水物33.8g(0.105mol)を加
え、反応温度50℃で3時間反応させた。次いで、反応
混合物を10℃以下に冷却後、ピロメリット酸二無水物
9.8g(0.045mol)、3,3′,4,4′−
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物14.5g
(0.045mol)、1,4−ビス(4−アミノフェ
ノキシ)ベンゼン25.1g(0.086mol)、及
び末端変性アミンとしてp−アミノ安息香酸[トリス
(メタクリロイル)ペンタエリスリトール]エステル1
1.02g(0.024mol)を粉体で加え、氷冷攪
拌3時間と室温攪拌24時間を行い、両末端に化学線官
能基を有するポリアミック酸を合成した。2.ポリイミ
ド系感光性樹脂組成物の調製上記で得られたポリアミッ
ク酸溶液597重量部(固形分100重量部)に、3,
3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボ
ニル)ベンゾフェノン(λmax=340nm、日本油
脂社製)2重量部、N−フェニルグリシン2重量部、及
び感光助剤としてトリエチレングリコールジアクリレー
ト(共栄社化学社製、3EG−A)32重量部を添加
し、室温で溶解して、ポリイミド系感光性樹脂組成物
(ワニス)を得た。
【0054】[実験例1] 1.第一段目の加熱処理 合成例1で得られたポリイミド系感光性樹脂組成物をシ
リコンウエハ上にスピナーを用いて塗布し、乾燥して皮
膜を形成した。この皮膜を85℃で25分間プリベーク
した。プリベーク後の皮膜の膜厚は、18.5μmであ
った。プリベーク皮膜をシリコンウエハから剥離した
後、窒素オーブン炉中、180℃で10分間加熱処理し
た。 2.イミド化率の測定 上記で第一段目の加熱処理をした皮膜について、赤外線
分析計(日本分光株式会社製、JascoTM FT/I
R−5300)を用いて赤外線分析を行った。得られた
赤外線スペクトルのチャートに基づいて、アミド基由来
の波数1670cm-1での吸収強度(Ia )とイミド基
由来の波数1770cm-1での吸収強度(Ib )を求め
た。一方、シリコンウエハから剥離したプリベーク皮膜
を窒素オーブン炉中、400℃で1時間加熱処理して完
全イミド化した皮膜を作成し、次いで、この完全イミド
化皮膜の赤外線分析を行い、アミド基由来の波数167
0cm-1での吸収強度(IA )とイミド基由来の波数1
770cm-1での吸収強度(IB )を求めた。第一段目
の加熱処理皮膜のイミド化率は、式(1)により求め
た。 イミド化率=〔(Ib /Ia )/(IB /IA )〕×100 ・・・・(1) その結果、第一段目の加熱処理皮膜のイミド化率は、9
7.4%であった。 3.第一段目の加熱処理とイミド化率との関係 シリコンウエハから剥離したプリベーク皮膜を窒素オー
ブン炉中、加熱処理の温度と時間を種々に変更して加熱
処理を行い、加熱処理した皮膜のイミド化率を測定し
た。結果を表1にまとめた。
【0055】
【表1】
【0056】[実施例1] 1.ポリイミド膜の製造例 合成例1で得られたポリイミド系感光性樹脂組成物をシ
リコンウエハ上にスピナーを用いて塗布し、乾燥した
後、85℃で25分間プリベークした。プリベーク後の
皮膜の膜厚は、18.5μmであった。次いで、露光機
(キャノン社製PLA−501F)を用いて、皮膜全面
に対し、1500mJ/cm2 の露光エネルギーで露光
した後、0.15%テトラメチルアンモニウムヒドロキ
シド(TMAH)水溶液で超音波浸漬現像(23℃、6
分間)を行った。現像後の膜を純水及び0.5%乳酸水
溶液でリンスした後、窒素オーブン中、180℃で10
分間の条件で第一段目の加熱処理を行った(イミド化率
97.4%に対応)。この加熱処理膜を、塩基性化合物
としてモノエタノールアミン(MEA)を含有するN−
メチルピロリドン(NMP)溶液〔NMP:MEA=9
0:10(重量比)〕に50℃で5分間浸漬処理した
後、水でリンスした。次いで、400℃で1時間の条件
で第二段目の加熱処理をして、完全イミド化したポリイ
ミド膜を製造した。
【0057】2.金属層の形成 上記で得たポリイミド膜上に、スパッタ装置(ULVA
C社製SH−550)を用いてクロム及び銅をスパッタ
リングして、クロム層(500オングストローム)及び
銅層(300〜500オングストローム)の金属下地層
を形成した。この金属下地層に対し銅メッキを行って、
金属層(6μm)を形成した。 3.ピール強度試験 この金属層上にレジストを塗布して、レジスト膜を形成
した。常法により、該レジスト膜にパターンを形成後、
金属層をエッチングして、5mm幅の金属層を形成し
た。金属層とポリイミド膜との密着強度を評価するため
に、90°剥離試験機(日新科学社製)を用いて、ピー
ル強度を測定した。その結果、ピール強度は、282g
/cmであった。
【0058】4.クロスカット試験 前記の金属下地層を形成したポリイミド膜の該金属下地
層の上に配線形成用レジストを塗布して、レジスト膜を
形成した。常法により、レジスト膜をパターン状に露光
し、現像して、25μm幅パターンをエッチングして、
金属下地層を露出させた。この露出した金属下地層部位
全面に銅メッキを行い、6μm厚の銅配線層を形成し
た。常法によりレジストを剥離後、銅メッキ層と金属下
地層を含む金属層の全面をエッチングし、銅メッキ層と
金属下地層の金属膜の厚みの差を利用し、銅メッキ層部
位を残して、配線層25μm幅の金属配線を形成した。
この25μm幅の金属配線をカッターにより1mm間隔
でカットした後、市販セロハンテープによる剥離試験を
行った。カット部位は、全体的に均一に分散させた。剥
離率は、次式により算出した。その結果、剥離率は、1
2.0%であった。 剥離率=(剥離数/カット部位数)×100 5.熱ショック試験 前記で作成した25μm幅の金属配線を形成した試料に
対して、熱ショック試験を行った。具体的には、試料を
窒素中、350℃で2時間再加熱した後、室温まで冷却
した。この試料に対して、前記と同様のクロスカット試
験を行った。その結果、剥離率は、4.5%にまで低下
した。したがって、塩基性化合物による処理を施して得
たポリイミド膜は、再加熱処理を受けた場合に、金属配
線に対する密着性改善効果が認められる。
【0059】[実施例2]実施例1の「1.ポリイミド
膜の製造例」において、塩基性化合物をモノエタノール
アミン(MEA)からトリエチレンテトラミン(TET
A)に変更した以外は、同一条件でポリイミド膜を製造
した。得られたポリイミド膜を用いて、実施例1と同様
にして諸物性を測定した。その結果は、次の通りであっ
た。 ・ピール強度=412g/cm ・クロスカット試験での剥離率=1.2% ・熱ショック試験後の剥離率=0.0%
【0060】[実施例3〜13]表2に示すように、塩
基化合物と溶剤の種類、塩基化合物の濃度、処理温度と
処理時間を種々に変更したこと以外は、実施例1と同様
にしてポリイミド膜を作成し、ピール強度を測定した。
結果を表2に示す。
【0061】[比較例1]実施例の「1.ポリイミド膜
の製造例」において、第一段目の加熱処理後、塩基性化
合物による処理を行うことなく、第二段目の加熱処理を
行ってポリイミド膜を作成した。得られたポリイミド膜
を用いて、実施例1と同様にして諸物性を測定した。そ
の結果は、次の通りであった。 ・ピール強度=85g/cm ・クロスカット試験での剥離率=74.0
【0062】
【表2】
【0063】(脚注) (1) イミド化率:第一段目の熱処理条件から表1に基づ
いて決定 (2) 塩基性化合物 MEA :モノエタノールアミン(沸点=170.8
℃) TETA:トリエチレンテトラミン(沸点=266〜
267℃) TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
(融点=63℃) AEAE:2−〔(2−アミノエチル)アミノ〕−エ
タノール(沸点=238℃) PEHA:ペンタエチレンヘキサミン(沸点=340
℃) (3) 溶剤 NMP:N−メチルピロリドン DMAc:ジメチルアセトアミド IPA:イソプロピルアルコール
【0064】[実施例14]実施例1の「1.ポリイミ
ド膜の製造例」において、第一段目の加熱処理条件を
「180℃で10分間」から「200℃で30分間」
(イミド化率99.4%に対応)に変更し、かつ、塩基
性化合物をモノエタノールアミン(MEA)からトリエ
チレンテトラミン(TETA)に変更した以外は、同一
条件でポリイミド膜を製造した。得られたポリイミド膜
を用いて、実施例1と同様にして諸物性を測定した。そ
の結果は、次の通りであった。 ・ピール強度=550g/cm ・クロスカット試験での剥離率=0.0% ・熱ショック試験後の剥離率=0.0%
【0065】[実施例15〜20]実施例1の「1.ポ
リイミド膜の製造例」において、第一段目の加熱処理条
件(イミド化率で表示)及び塩基性化合物による処理条
件を表3に示すものに変更したこと以外は、同一条件で
ポリイミド膜を製造した。得られたポリイミド膜を用い
て、実施例1と同様にして諸物性を測定した。結果を表
3に示す。
【0066】[比較例2]実施例14において、第一段
目の加熱処理条件を「200℃で30分間」から「28
0℃で30分間」(イミド化率100.0%に対応)に
変更した以外は、同一条件でポリイミド膜を製造した。
実施例1と同様にしてポリイミド膜の物性を測定したと
ころ、ピール強度が165g/cmと低く、クロスカッ
ト試験での剥離率も35.0%と悪かった。したがっ
て、ポリイミド前駆体膜を第一段目の加熱処理によって
完全イミド化した後、塩基性化合物で処理しても、密着
性改善効果が得られないことが分かる。
【0067】[比較例3]実施例1の「1.ポリイミド
膜の製造例」において、現像後の膜をリンスした後、第
一段目の加熱処理並びに塩基化合物による処理を行うこ
となく、直ちに、400℃で1時間の条件で加熱処理し
て完全イミド化したポリイミド膜を製造した。得られた
ポリイミド膜を、塩基性化合物としてトリエチレンテト
ラミン(TETA)を含有するN−メチルピロリドン
(NMP)溶液〔NMP:TETA=90:10(重量
比)〕に50℃で5分間浸漬処理した後、水でリンスし
乾燥した。実施例1と同様にしてポリイミド膜の物性を
測定したところ、ピール強度は155g/cmと低く、
クロスカット試験での剥離率も46.0%と悪かった。
したがって、常法に従ってポリイミド前駆体膜を完全イ
ミド化した後、塩基性化合物で処理しても、密着性改善
効果が得られないことが分かる。
【0068】[比較例4]実施例1の「1.ポリイミド
膜の製造例」において、第一段目の加熱処理条件を「1
80℃で10分間」から「150℃で10分間」(イミ
ド化率81.4%に対応)に変更しした以外は、同一条
件でポリイミド膜を製造した。実施例1と同様にしてポ
リイミド膜のピール強度を測定したところ300g/c
mと高かったが、塩基性化合物による処理の際にポリイ
ミド前駆体膜の表面が溶解し、膜減りが生じていた。し
たがって、剥離率の測定は行わなかった。
【0069】[比較例5]実施例1の「1.ポリイミド
膜の製造例」において、現像後の膜をリンスした後、第
一段目の加熱処理並びに塩基化合物による処理を行うこ
となく、直ちに、400℃で1時間の条件で加熱処理し
て完全イミド化したポリイミド膜を製造した。実施例1
と同様にしてポリイミド膜の物性を測定したところ、ピ
ール強度は65g/cmと低く、クロスカット試験での
剥離率も89.0%と悪かった。以上の実施例14〜2
0及び比較例2〜5の結果を表3に示す。なお、表3に
は、参考のために前述の実施例1〜2及び比較例1の結
果も併せて示す。
【0070】
【表3】
【0071】(脚注) (1) イミド化率:第一段目の熱処理条件から表1に基づ
いて決定 (2) NMP:N−メチルピロリドン (3) MEA :モノエタノールアミン (4) TETA:トリエチレンテトラミン
【0072】[実施例21]合成例1の「1.ポリアミ
ック酸の合成」で得られた両末端に化学線官能基を有す
るポリアミック酸の溶液を、シリコンウエハ上にスピナ
ーを用いて塗布し、乾燥した後、85℃で25分間プリ
ベークした。プリベーク後の皮膜の膜厚は、18.5μ
mであった。次いで、露光機(キャノン社製PLA−5
01F)を用いて、皮膜全面に対し、1500mJ/c
2 の露光エネルギーで露光した後、0.15%テトラ
メチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で
超音波浸漬現像(23℃、6分間)を行った。現像後の
膜を純水及び0.5%乳酸水溶液でリンスした後、窒素
オーブン中、180℃で10分間の条件で第一段目の加
熱処理を行った(イミド化率97.4%に対応)。この
加熱処理膜を、塩基性化合物としてモノエタノールアミ
ン(MEA)を含有するN−メチルピロリドン(NM
P)溶液〔NMP:MEA=90:10(重量比)〕に
50℃で5分間浸漬処理した後、水でリンスした。次い
で、400℃で1時間の条件で第二段目の加熱処理をし
て、完全イミド化したポリイミド膜を製造した。このポ
リイミド膜上に、実施例1の「2.金属層の形成」と同
様にしてクロム及び銅をスパッタリングして金属下地層
を形成し、次いで、この金属下地層に対し銅メッキを行
って、金属層を形成した。実施例1の「3.ピール強度
試験」と同様にして、金属層とポリイミド膜との密着強
度を評価するために、ピール強度を測定したところ、5
12g/cmであった。
【0073】[比較例6]実施例21において、現像後
の膜をリンスした後、第一段目の加熱処理並びに塩基化
合物による処理を行うことなく、直ちに、400℃で1
時間の条件で加熱処理して完全イミド化したポリイミド
膜を製造した。実施例1と同様にしてポリイミド膜のピ
ール強度を測定したところ、285g/cmであった。
【0074】[実施例22] 1.ポリイミド膜の製造 実施例1の「1.ポリイミド膜の製造例」と同じ方法
で、現像後の膜をリンスした後、窒素オーブン中、18
0℃で10分間の条件で第一段目の加熱処理を行い(イ
ミド化率97.4%に対応)、次いで、モノエタノール
アミン(MEA)を含有するN−メチルピロリドン(N
MP)溶液〔NMP:MEA=90:10(重量比)〕
に50℃で5分間浸漬処理した後、400℃で1時間の
条件で第二段目の加熱処理をして、完全イミド化したポ
リイミド膜を製造した。 2.破断強度と破断のみの測定 このポリイミド膜を常法に従ってフッ酸処理してシリコ
ンウエハより剥がし、水洗後130℃、2時間乾燥し
た。次いで、以下の測定条件で、このポリイミド膜の破
断強度及び破断伸びを測定したところ、破断強度が17
2.1MPaで、破断伸びが15.1%であった。 <測定条件> 装 置:島津製作所製AGS−5KNG引張り試験機 チャック間距離:50mm、引張り速度:5mm/分 サンプル試験幅:5mm
【0075】[比較例7]一方、比較例5と同じ方法
で、実施例1の「1.ポリイミド膜の製造例」におい
て、現像後の膜をリンスした後、第一段目の加熱処理並
びに塩基化合物による処理を行うことなく、直ちに、4
00℃で1時間の条件で加熱処理して完全イミド化した
ポリイミド膜を製造した。このポリイミド膜を常法に従
ってフッ酸処理してシリコンウエハより剥がし、水洗後
130℃、2時間乾燥した。次いで、実施例22と同様
にして、このポリイミド膜の破断強度及び破断伸びを測
定したところ、破断強度が167.3MPaで、破断伸
びが11.0%であった。
【0076】
【表4】
【0077】
【発明の効果】本発明によれば、ポリイミド膜上に形成
した金属配線などの金属層との界面での密着性に優れ、
高温での熱履歴を受けても金属層との密着性の低下がな
く、かつ、ポリイミド膜自体の機械的特性が改善された
なポリイミド膜、及びその製造方法が提供される。本発
明のポリイミド膜の製造方法は、半導体素子の表面保護
膜、層間絶縁膜等の絶縁膜を形成するのに特に好適であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C08L 79:08 (72)発明者 坂本 圭 神奈川県川崎市川崎区夜光一丁目2番1号 日本ゼオン株式会社総合開発センター内 (72)発明者 横内 貴志男 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 (72)発明者 長沼 靖雄 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 Fターム(参考) 4F071 AA60 AC12 AH13 BA02 BB02 BC01 BC02 4F073 AA01 AA32 BA31 BB01 GA01 HA15 5F058 AA08 AC02 AF04 AG01 AH02 AH03

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリイミド前駆体膜を加熱処理してポリ
    イミド膜を製造する方法において、(1) 第一段目の加熱
    処理により、ポリイミド前駆体のイミド化率を85〜9
    9.9%の範囲に制御し、(2) イミド化率がこの範囲に
    あるときに、ポリイミド前駆体膜を塩基性化合物と接触
    させ、しかる後、(3) 第二段目の加熱処理により、イミ
    ド化率を実質的に100%にまで上昇させることを特徴
    とするポリイミド膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 塩基性化合物が、有機アミン化合物であ
    る請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 ポリイミド前駆体膜が、ポリイミド前駆
    体溶液を支持体上に塗布または流延し、乾燥して形成し
    た膜である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 支持体が半導体基板であり、第二段目の
    加熱処理により、半導体基板上に形成されたポリイミド
    膜を得る請求項3記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリイミド膜の形成後、その上に形成し
    た金属層のクロスカット試験による剥離率(a)が20
    %以下で、かつ、350℃で2時間の熱ショック試験後
    の金属層の剥離率(b)が前記剥離率(a)よりも小さ
    いポリイミド膜。
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