JP2001062289A - ヒ素除去用吸着剤およびこれを用いたヒ素イオンを含有する被処理水の処理方法 - Google Patents

ヒ素除去用吸着剤およびこれを用いたヒ素イオンを含有する被処理水の処理方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】ヒ素イオンの選択的吸着性に優れると共に吸着
容量が高くまたpH依存性が小さく、少量の添加量で広
いpH領域に亘って水中のヒ素(V)イオンを吸着除去
することができ、また中性付近のpH領域において特に
効果的な吸着特性が発現し、ヒ素イオン除去後の処理水
の再利用あるいは処理水の直接の放流化が可能となり、
更には水中のヒ素(III)イオンも酸化処理することな
く、直接その排水基準値あるいは水道水質基準値以下に
することができ、かつ低廉なコストのヒ素除去用吸着剤
を提供する。 【課題手段】SA:疑似グライ化黄褐色森林土(秋田県
田沢湖町)、SB:黄褐色森林土(1)(茨城県つくば
市)、SC:硫酸酸性質グライ土(茨城県美浦村)、S
D:鹿沼土(栃木県鹿沼市)、SE:黒ボク土(1)
(茨城県美浦村)、SF:黒ボク土(2)(茨城県つく
ば市)から選ばれる少なくとも一種の土壌からなるヒ素
除去用吸着剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、産業排水、水道用
水、温泉排水、及び地熱水中等に溶存するヒ素(V)及
びヒ素(III)イオンを効率よく水中から吸着除去し得
るヒ素除去用吸着剤およびこれを用いたヒ素イオンを含
有する被処理水の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、木材防腐処理、ガラス製造、金属
製錬、電子部品製造工程等からの産業排水、水道用水、
温泉排水、地熱水等のヒ素イオンを含有する被処理水か
らのヒ素イオンの除去方法としては、凝集沈殿法及び吸
着法等が知られている。
【0003】前者の凝集沈殿法は鉄塩、アルミニウム
塩、またはカルシウム塩等の凝集沈殿剤を添加して、ヒ
素(V)イオンを難溶性フロック中に捕捉して除去する
ものである。だが、上記の凝集沈殿剤のうち最も効果的
な鉄塩を用いる方法でも、有効pH領域が5〜6と狭
い、処理後の残留ヒ素(V)イオン濃度を排水基準値
である0.1mg/L以下にするためには、ヒ素(V)
イオン初濃度の3倍モル以上の鉄塩を添加する必要があ
り、その結果、処理水中の電解質濃度が増加する、更
に鉄塩の添加量を増加しても、残留ヒ素(V)イオン濃
度を水道水質基準値である0.01mg/L以下にする
のは困難である、生成したヒ素(V)イオン含有スラ
ッジのろ過が困難である、該スラッジからヒ素(V)
イオンが溶解する危険性がある、などといった様々な難
点が指摘されている。
【0004】一方、後者の、ヒ素(V)イオンを不溶性
の固体粒子(吸着剤)の表面に捕捉して除去する吸着法
は、上記の凝集沈殿法と比較して処理水の電解質濃度が
増加せず、またスラッジの発生量が少ない等の利点があ
り、特に活性アルミナを吸着剤とする方法が盛んに利用
されている。しかしながら、この活性アルミナ吸着法
は、コストが高い、ヒ素(V)イオンに対する選択
性が低く、ヒ素(V)イオンの他に、カリウム、ナトリ
ウム、鉄(III)等の陽イオン及び塩化物イオン、リン
酸イオン等の陰イオン等も吸着するため、その吸着容量
が飽和しやすく、このためその添加量を増大しないと効
果的にヒ素(V)イオンを除去することができない、
機械的強度が低く、使用時間の経過と共に細粒化する、
等の新たな問題を包含する。
【0005】また、上記被処理水とりわけ嫌気性条件下
にある地下水や地熱水中には、ヒ素(III)イオンが多
量に含まれているが、このヒ素(III)イオンは上記の
凝集沈殿法及び吸着法のいずれの方法でも除去し難い。
このため、従来は、予めヒ素(III)イオンを含む被処
理水を過酸化水素またはオゾンで処理し、ヒ素(III)
をヒ素(V)に酸化した後、上記の除去処理を行ってお
り、このため、処理工程、処理時間及び処理コストの増
加をもたらしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来
法の欠点を克服し、ヒ素イオンの選択的吸着性に優れる
と共に吸着容量が高くまたpH依存性が小さく、少量の
添加量で広いpH領域に亘って水中のヒ素(V)イオン
を吸着除去することができ、また中性付近のpH領域に
おいて特に効果的な吸着特性が発現し、ヒ素イオン除去
後の処理水の再利用あるいは処理水の直接の放流化が可
能となり、更には水中のヒ素(III)イオンも酸化処理
することなく、直接その排水基準値あるいは水道水質基
準値以下にすることができ、かつ低廉なコストのヒ素除
去用吸着剤並びにこのものを利用した工業的に有利なヒ
素イオンを含有する被処理水の処理方法を提供すること
を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
達成するために、日本各地から収集した性状の異なる種
々の土壌に関して、そのヒ素(V)イオン及びヒ素(II
I)イオンの吸着特性について鋭意研究を進めた結果、
ある種の特定の土壌のみが上記特性を有することを見い
出し本発明をなすに至った。即ち、本発明によれば、第
一に、下記SA乃至SFから選ばれる少なくとも一種の
土壌からなるヒ素除去用吸着剤が提供される。 SA:疑似グライ化黄褐色森林土(秋田県田沢湖町) SB:黄褐色森林土(1)(茨城県つくば市) SC:硫酸酸性質グライ土(茨城県美浦村) SD:鹿沼土(栃木県鹿沼市) SE:黒ボク土(1)(茨城県美浦村) SF:黒ボク土(2)(茨城県つくば市) 第二に、ヒ素イオンを含有する被処理水に、上記第一記
載の吸着剤を添加してヒ素イオンを吸着除去し、被処理
水中のヒ素イオンの残留濃度を排水基準値または水道水
質基準値以下とすることを特徴とするヒ素イオンを含有
する被処理水の処理方法が提供される。
【0008】本発明者は、表1〜2に示されるような、
日本各地から収集した性状の異なる数多くの土壌SA〜
SY及び粘土CA〜CPについて、そのヒ素イオン吸着
性能を鋭意研究した結果、意外にも下記SA乃至SFが
他の土壌及び粘土に比べ極めて優れた吸着性能を有する
ことを見い出した。 SA:疑似グライ化黄褐色森林土(秋田県田沢湖町) SB:黄褐色森林土(1)(茨城県つくば市) SC:硫酸酸性質グライ土(茨城県美浦村) SD:鹿沼土(栃木県鹿沼市) SE:黒ボク土(1)(茨城県美浦村) SF:黒ボク土(2)(茨城県つくば市)
【0009】このような事実は本発明者が数多くの試行
錯誤の実験を通して、また緻密な実験結果を積み重ねる
ことによって初めて知り得たことであって、従来全く未
知の事柄である。
【0010】なお、それぞれの土壌の基本組成は表1に
示す通りであり、その分類は土壌SDを除いて、永塚鎮
男著「原色日本土壌生態図鑑」(フジ・テクノシステム
社刊)に従った。表2の粘土CA〜CHは日本粘土学会
が頒布する参考粘土試料であり、粘土CI〜CPは市販
品である。
【0011】本願発明に係る土壌SA〜SFについて更
に詳しく説明する。土壌SA(疑似グライ化黄褐色森林
土)は全炭素含量がわずか0.3%と少なく、鉄分はお
もに硫化鉄の形態のものを67.91%も含有してお
り、明黄褐色を呈している。硫化鉄の酸化により、硫酸
が生成し、そのためpHは2.84と強酸性を示す。土
壌SB(黄褐色森林土(1))は、関東平野の照葉樹林
のAh層から採集したものであり、褐色を呈し、発達弱
度の中亜角塊状構造を有する。pHは5.73であり、
試験した土壌のうち最も高いpHを示す。また、アルミ
ニウム含有量は21.04%と高い。土壌SC(硫酸酸
性質グライ土)は地下水位が高い丘陵地内の凹地で採集
した低地土壌であり、暗灰色を呈し、発達弱度の塊状構
造を有し、膜状斑鉄を含有している。硫化鉄の酸化によ
り、硫酸が生成し、そのためpHは3.24と低い。土
壌SD(鹿沼土)は栃木県鹿沼市の赤城火山中部ローム
層の軽石を起源とするものであり、粘土成分としてアロ
フェン・イモゴライトを含有する。土壌SE(黒ボク土
(1))は関東平野の洪積台地に分布する黒色土壌であ
り、農耕地より採集したものである。全炭素含有量は
4.11%と高く、またアルミニウム含有量も20.4
3%と高い。土壌SF(黒ボク土(2))も前記土壌S
Eと同じく、関東平野の洪積台地に分布する黒色土壌で
あるが、針葉樹林の表層から採集したものである。全炭
素含有量は7.33と高く、アルミニウム含有量も1
9.45%と高い。
【0012】本発明に係る上記SA乃至SFから選ばれ
る少なくとも一種の土壌からなるヒ素除去用吸着剤はつ
ぎのような従来の吸着剤にはみられない特性を有するも
のである。 (1)ヒ素イオンの選択的吸着性に優れると共に吸着容
量が高くまたpH依存性が小さいため、少量の添加量で
その吸着能が発現し、また広いpH領域に亘って水中の
ヒ素(V)イオンを吸着除去することができる。 (2)中性付近のpH領域において特に効果的な吸着特
性が発現するため、ヒ素イオン除去後の処理水のpHを
調整することなくそのまま再利用することが可能とな
り、また処理水を直接、川などに放流することができ
る。 (3)ヒ素(III)をヒ素(V)に酸化処理することな
く、水中のヒ素(III)イオン濃度を直接その排水基準
値以下または水道水質基準値以下まで低下させることが
できる。 (4)吸着剤自体のコストが安価である。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明のヒ素除去用吸着剤
について具体的に説明する。
【0014】表1及び表2は、土壌SA〜SY及び粘土
CA〜CPについて、そのヒ素(V)イオン吸着能を調
べたものである。この結果から、土壌SAからSYのう
ち、土壌SA乃至SFから選ばれた少なくとも一種の土
壌は、ヒ素(V)イオンを初濃度0.25mMから0.
1mM以下(除去率60%以上)まで低下させることの
できる優れたヒ素イオン吸着剤であることが判る。この
場合、他の土壌たとえば、土壌SG(黒ボク質グライ
土、茨城県阿見町)では残留ヒ素(V)イオン濃度は
0.193mMであって、せいぜいその除去率は23%
程度に過ぎない。一方、表2に示した粘土では、粘土C
A(カオリナイト1101)が最も高いヒ素(V)除去
率を示すにしても、残留ヒ素(V)イオン濃度は0.2
mM以上であり、そのヒ素除去率はわずか20%以下で
ある。このことから、表2に示した全ての粘土は、ヒ素
(V)除去用吸着剤としての実用性に乏しいことが判
る。
【0015】また、水道用水、温泉排水、または地熱水
等の原水に含まれるヒ素の濃度は、小さくほとんどの場
合2mg/L以下であるから、除去率60%以上の高い
ヒ素(V)イオン除去能を示す上記6種類の土壌SA〜
SFのヒ素(V)吸着剤としての実用性を評価するた
め、0.025mM(≒1.9mg/L)のヒ素(V)
イオン溶液を用いてその吸着能を調べたところ、図1の
ような結果が得られている。図1の最終pHと残留ヒ素
(V)濃度との関係から、土壌SA〜SFは、原水レベ
ルと同等の濃度のヒ素(V)イオンを含有する被処理水
をも排水基準値(0.1mg/L)以下までに低下する
ことができ、実使用に適合した有用なヒ素(V)吸着剤
であることが判る。
【0016】更に図1から、土壌SA〜SFの中でも特
に土壌SA、SB、SC及びSDは、残留ヒ素(V)イ
オン濃度を、広いpH領域で水道水質基準値(0.01
mg/L)以下までに低下させる機能を具有しているこ
とが判る。すなわち、土壌SAはpH約10以下及びp
H約9.5以下の広いpH領域で、土壌SBはpH約7
以下及びpH約6.5以下の広いpH領域で、土壌SC
ではpH約7.5以下及びpH約6.5〜4のpH領域
で、土壌SDではpH約6以下及びpH約4以下のpH
領域で、それぞれ排水基準値及び水道水質基準値以下ま
でヒ素(V)イオンを除去することができるのである。
【0017】また、本発明に係る上記SA〜SFの土壌
は、単位質量当たりのヒ素(V)イオン吸着容量が極め
て高く、しかも塩化物イオン、硝酸イオン、または硫酸
イオンが共存する溶液中でも、これらのヒ素(V)イオ
ン吸着容量は変化せず、ヒ素(V)に対して高い選択的
除去性を有するものである。この土壌SA〜SFの高い
吸着容量及びヒ素(V)に対する高い選択的除去性は図
2に示される。 図2は、残留ヒ素(V)イオン平衡濃
度と吸着容量との関係を示したものであるが、SA〜S
Fのいずれの土壌についても、両者の対数値の間に高い
相関関係があることから、これらの土壌によるヒ素
(V)イオン吸着反応はフロイントリッヒの吸着等温式
に従うと考えて良い。図2から、土壌SAは、広いヒ素
(V)濃度範囲において0.25〜0.32mmol/
gの高い吸着容量を示し、また、土壌SB及び土壌SC
もそれぞれ0.08〜0.16及び0.04〜0.12
mmol/gの高い吸着容量を示し、また、土壌SD、
SE、SFも平衡濃度が0.5〜0.7mMにおいて吸
着容量が0.04mmol/g以上あることから、高濃
度ヒ素(V)溶液の吸着剤として有用であることが判
る。また、塩化物イオン、硝酸イオン、または硫酸イオ
ンが共存する溶液中でも、これらのヒ素(V)イオン吸
着容量が変化しなかったことから、土壌SA〜SFはヒ
素(V)に対して高い選択性を有していることが判る。
【0018】また、本発明に係る上記SA〜SFの土壌
は、ヒ素(III)をヒ素(V)に酸化処理することな
く、水中のヒ素(III)イオン濃度を直接その排水基準
値以下または水道水質基準値以下まで低下させることが
できる。このことは図3に示される。図3は、土壌S
A、SB及びSCの添加量を変化させて添加したときの
ヒ素(III)イオン残留濃度を示したものである。図3
から、土壌SAでは、添加量0.05g、pH約6〜1
1の範囲でヒ素(III)イオン残留濃度を水道水質基準
値以下にすることができ、更に添加量を0.15gに増
加することにより、その有効pH領域が拡大している。
土壌SB及びSCは、ほぼ同様の傾向を示し、添加量
0.05gでは、ヒ素(III)イオン濃度を約0.01
mM(≒0.75mg/L)までしか低下することがで
きないものの、添加量を0.6gに増加することによ
り、ヒ素(III)イオン残留濃度を排水基準値以下に低
下させることができる。このように、本発明に係る土壌
SA〜SFは、ヒ素(III)をヒ素(V)に酸化処理す
ることなく、水中のヒ素(III)イオンを直接除去する
ことができるものであるから、従来のようなヒ素(II
I)のヒ素(V)へ酸化処理工程を不要とする等といっ
た多くの利点を有するものである。
【0019】本発明に係る上記SA乃至SFから選ばれ
る少なくとも一種の土壌のみが上記のような特異的なヒ
素イオン除去特性を示す理由は現時点では定かでない
が、表2の結晶性の高い粘土のヒ素(V)除去能が低い
こと、及び土壌の主要成分であるシリカはヒ素(V)イ
オンを吸着しないこと等を考慮すると土壌中のアルミニ
ウムまたは鉄成分のうち非晶質性成分によるヒ素(V)
吸着除去特性によるものと考えることもできる。 な
お、本発明に係る上記SA乃至SFから選ばれる土壌の
みが高いヒ素(V)除去能を示す理由として、これらの
土壌がすべてアルミニウムまたは鉄の含有量が高いこと
を挙げ、成分中に含まれるこれらのアルミニウムまたは
鉄成分に帰因しているとする見方もあるが、これは正し
くない。というのはアルミニウムまたは鉄の含有量が高
い他の土壌または粘土でも、明確なヒ素(V)除去能を
示さないものがあるからである。
【0020】本発明のヒ素除去用吸着剤は上記SA乃至
SFから選ばれた少なくとも一種の土壌を主体とするも
のであるが、そのヒ素吸着特性を阻害しない範囲であれ
ば、従来公知の吸着剤たとえばアルミナ、酸化鉄などを
併用することもできる。
【0021】本発明において、上記吸着剤を使用してヒ
素イオンを含有する被処理水からヒ素イオンの残留濃度
を排水基準値または水道水質基準値以下とするには、例
えば該吸着剤をカラムなどに充填し、充填したカラム内
に木材防腐処理、ガラス製造、金属製錬、電子部品製造
工程等からの産業排水、水道用水、温泉排水、地熱水等
のヒ素イオンを含有する被処理水を通水すればよい。
【0022】ヒ素イオンを吸着した本発明の吸着剤は、
従来公知の再生手段例えばアルカリ水溶液等と接触させ
ることにより再生回収することができる。
【0023】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。
【0024】実施例1 初期pHを2〜12に調節した、初濃度0.25mM
(≒19mg/L)のヒ素(V)イオン溶液25mLを
35mL容ポリカーボネート製遠沈管にとり、表1に示
す組成の土壌SA〜SYまたは表2に示す組成の粘土C
A〜CP0.05gを添加し、20℃に保持した恒温槽
中でしんとう器にて横方向(振幅10cm)に24時間
しんとうした。ついで、試料溶液を孔径0.45μmの
メンブレンフィルタでろ過した。得られたろ液につい
て、pHを測定すると共に、残留ヒ素イオン濃度を水素
化物発生原子吸光光度法を用いて定量した。なお、土壌
は日本各地から収集したものであり、風乾した後、0.
149mmのふるいを通過した粒子を実験に供した。
また土壌の分類は、永塚鎮男著「原色日本土壌生態図
鑑」(フジ・テクノシステム社刊)に従ったものであ
り、表2の粘土CA〜CHは日本粘土学会が頒布する参
考粘土試料であり、また粘土CI〜CPは市販品である
が、いずれもそのまま実験に供した。なお、上記の実験
で使用した土壌は、いずれも反応中に細粒化することな
く、孔径0.45μmのメンブレンフィルタで容易にろ
過できたが、粘土の多くはろ過が困難であるため、冷凍
機付き高速遠心分離器で9,000rpmで20分間処
理した後、得られた上澄液を上記メンブレンフィルタで
ろ過した。それぞれの試料について、最低残留ヒ素
(V)イオン濃度の値と、そのときのpH値を表1及び
表2の末欄に示す。この結果から、土壌SAからSYの
うち、土壌SA乃至SFの土壌を用いることにより、ヒ
素(V)イオンを初濃度0.25mMから0.1mM以
下(除去率60%以上)までに、低下させることがで
き、優れたヒ素イオン吸着能を有することが判る。この
場合、他の土壌たとえば、土壌SG(黒ボク質グライ
土、茨城県阿見町)では残留ヒ素(V)イオン濃度は
0.193mMであって、せいぜいその除去率は23%
程度に過ぎない。一方、表2に示した粘土では、粘土C
A(カオリナイト1101)が最も高いヒ素(V)除去
率を示すにしても、残留ヒ素(V)イオン濃度は0.2
mM以上であり、そのヒ素除去率はわずか20%以下で
ある。このことから、表2に示した全ての粘土は、ヒ素
(V)除去用吸着剤としての実用性に乏しいことが判
る。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】実施例2 実施例1で除去率60%以上の高いヒ素(V)イオン除
去能を示した6種類の土壌SA〜SFのヒ素(V)吸着
剤としての実用性を評価するため、実施例1のときの1
/10の濃度である0.025mM(≒1.9mg/
L;水道用水、温泉排水、または地熱水などの原水に含
まれるヒ素の濃度と同程度の濃度)のヒ素(V)イオン
溶液を用いて検討した。初期pHを2〜12に調節した
ヒ素(V)イオン溶液25mLを35mL容ポリカーボ
ネート製遠沈管にとり、土壌SA〜SF0.05gを添
加し、実施例1と同様に操作した。最終pHと残留ヒ素
(V)濃度との関係を図1に示す。図1の最終pHと残
留ヒ素(V)濃度との関係から、土壌SA〜SFは、原
水レベルの濃度のヒ素(V)イオンを含有する被処理水
をも排水基準値(0.1mg/L)以下までに低下する
ことができ、実使用に適合した有用なヒ素(V)吸着剤
であることが判る。更に図1から、土壌SA〜SFの中
でも特に土壌SA、SB、SC及びSDは、残留ヒ素
(V)イオン濃度を、広いpH領域で水道水質基準値
(0.01mg/L)以下までに低下させる機能を具有
していることが判る。すなわち、土壌SAはpH約10
以下及びpH約9.5以下の広いpH領域で、土壌SB
はpH約7以下及びpH約6.5以下の広いpH領域
で、土壌SCではpH約7.5以下及びpH約6.5〜
4のpH領域で、土壌SDではpH約6以下及びpH約
4以下のpH領域で、それぞれ排水基準値及び水道水質
基準値以下までヒ素(V)イオンを除去することができ
る。
【0028】実施例3 実施例1で除去率60%以上の高いヒ素(V)イオン除
去能を示した6種類の土壌SA〜SFのヒ素(V)吸着
剤としての実用性を評価するため、単位質量当たりの土
壌によるヒ素(V)イオン吸着容量を測定した。実際の
水処理においては、中性pH領域で処理を行うことが望
ましいため、初期pH約6〜7における吸着容量を求め
た。初濃度を段階的に0.06〜1.87mMの間で変
化させたヒ素(V)イオン溶液25mLに、表1に示す
土壌SA〜SF0.05gを添加し、実施例1と同様に
操作した。図2に、残留ヒ素(V)イオン平衡濃度と吸
着容量との関係を示した。 図2から、いずれの土壌に
ついても、両者の対数値の間に高い相関関係があること
から、土壌によるヒ素(V)イオン吸着反応はフロイン
トリッヒの吸着等温式に従うことが認められた。そし
て、土壌SAは、広いヒ素(V)濃度範囲において0.
25〜0.32mmol/gの高い吸着容量を示し、土
壌SB及び土壌SCもそれぞれ0.08〜0.16及び
0.04〜0.12mmol/gの高い吸着容量を示し
た。このことは、土壌SA、SB及びSCは実用性のあ
る優れたヒ素(V)吸着剤であることをことを示してい
る。また、土壌SD、SE、SFも平衡濃度が0.5〜
0.7mMにおいて吸着容量が0.04mmol/g以
上もあることから、高濃度ヒ素(V)溶液の処理剤とし
て利用可能なものである。また、塩化物イオン、硝酸イ
オン、または硫酸イオンが共存する溶液中でも、これら
のヒ素(V)イオン吸着容量が変化しなかったことか
ら、土壌SA〜SFはヒ素(V)に対して高い選択性を
有することが確認された。
【0029】実施例4 実施例3で高いヒ素(V)吸着容量を示した土壌SA、
SB、及びSCのヒ素(III)イオンの吸着除去に対す
る有効性を評価した。図3に、初濃度0.025mM
(≒1.9mg/L)のヒ素(III)イオン溶液25m
Lに土壌SA、SB、またはSCを添加量を変化させて
添加したときのヒ素(III)イオン残留濃度を示す。図
3から、土壌SAでは、添加量0.05g、pH約6〜
11の範囲でヒ素(III)イオン残留濃度を水道水質基
準値以下にすることができ、更に添加量を0.15gに
増加することにより、その有効pH領域が拡大してい
る。土壌SB及びSCは、ほぼ同様の傾向を示し、添加
量0.05gでは、ヒ素(III)イオン濃度を約0.0
1mM(≒0.75mg/L)までしか低下することが
できないものの、添加量を0.6gに増加することによ
り、ヒ素(III)イオン残留濃度を排水基準以下にでき
る。従って、これらの土壌は、ヒ素(III)をヒ素
(V)に酸化処理することなく、水中のヒ素(III)イ
オンを直接除去できる有用な吸着剤であることが判っ
た。
【0030】
【発明の効果】本発明のヒ素除去用吸着剤は、次のよう
な従来の吸着剤にはみられない顕著な作用効果を奏し得
たものである。 (1)ヒ素イオンの選択的吸着性に優れると共に吸着容
量が高くまたpH依存性が小さいため、少量の添加量で
その吸着能が発現し、また広いpH領域に亘って水中の
ヒ素(V)イオンを吸着除去することができる。 (2)中性付近のpH領域において特に効果的な吸着特
性が発現するため、ヒ素イオン除去後の処理水のpHを
調整することなくそのまま再利用することが可能とな
り、また処理水を直接、川などに放流することができ
る。 (3)ヒ素(III)をヒ素(V)に酸化処理することな
く、水中のヒ素(III)イオン濃度を直接その排水基準
以下または水道水質基準以下まで低下させることができ
る。 (4)吸着剤自体のコストが安価である。 また、本発明の、上記ヒ素除去用吸着剤を用いるヒ素イ
オンを含有する被処理水の処理方法は、吸着剤の使用量
が少なくて済み、また広いpH領域でおこなうことがで
きるので、その自由度が大きく、またヒ素(III)のヒ
素(V)へ酸化処理工程を不要とし、更には中性付近の
pH領域においての対応が可能であることから、ヒ素イ
オン除去後の処理水の再利用あるいは処理水の直接の放
流化が可能である上、極めて低廉なコストで行える、等
といった多くの利点を有し、工業的に極めて魅力的な方
法ということができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】土壌SA〜SFのヒ素(V)イオン除去特性を
示すグラフ。
【図2】土壌SA〜SFのヒ素(V)イオンの吸着容量
(フロイントリッヒモデル)を示すグラフ。
【図3】土壌SA、SB、及びSCのヒ素(III)イオ
ン除去特性を示すグラフ。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記SA乃至SFから選ばれる少なくとも
    一種の土壌からなるヒ素除去用吸着剤。 SA:疑似グライ化黄褐色森林土(秋田県田沢湖町) SB:黄褐色森林土(1)(茨城県つくば市) SC:硫酸酸性質グライ土(茨城県美浦村) SD:鹿沼土(栃木県鹿沼市) SE:黒ボク土(1)(茨城県美浦村) SF:黒ボク土(2)(茨城県つくば市)
  2. 【請求項2】 ヒ素イオンを含有する被処理水に、請求
    項1記載の吸着剤を添加してヒ素イオンを吸着除去し、
    被処理水中のヒ素イオンの残留濃度を排水基準値または
    水道水質基準値以下とすることを特徴とするヒ素イオン
    を含有する被処理水の処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020185533A (ja) * 2019-05-14 2020-11-19 株式会社ジャパンブルーエナジー 塩化水素除去剤

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