JP2001055341A - 免疫応答を惹起するための、多数エピトープ含有抗原の再構成法および組成物 - Google Patents

免疫応答を惹起するための、多数エピトープ含有抗原の再構成法および組成物

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JP2001055341A
JP2001055341A JP2000200702A JP2000200702A JP2001055341A JP 2001055341 A JP2001055341 A JP 2001055341A JP 2000200702 A JP2000200702 A JP 2000200702A JP 2000200702 A JP2000200702 A JP 2000200702A JP 2001055341 A JP2001055341 A JP 2001055341A
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Ragupashii Madeiyarakan
ラグパシー マディヤラカン
Antoine A Noojeimu
アントワーヌ エイ ノージェイム
Richard P Baamu
リチャド ピー バーム
Barujitto Schulz
バルジット シュルツ
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ARUTAREKKUSU CORP
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 結合試薬を可溶性抗体と接触させて結合して
試薬−抗体の対によって抗体に対する免疫応答を引き起
こすことによって免疫反応を惹起及び/又は向上させ
る。 【解決手段】 ホスト血清中に存在する多数エピトープ
生体内抗原上の第1のエピトープに特異的な結合剤を含
む治療用組成物であって、該抗原は有効なホスト免疫応
答を惹起せず、該結合剤は抗原上の第1のエピトープに
特異的に結合して結合剤/抗原ペアを形成し、それによ
って有効なホストの免疫応答を抗原の第2のエピトープ
に対して惹起する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】技術分野 本発明は、生体内において免疫応答を惹起するための及
び/または向上するための方法および組成物に関わる。
【0002】背景技術 全ての脊椎動物は免疫系を持つ。脊椎動物が、感染性細
菌、毒素、ウィルス、その他の外来巨大分子にたいして
自己を防衛する能力を免疫と言う。免疫は、非常に特異
的である。この特異性は、免疫応答の基本的な特徴であ
る。免疫系の反応の多くの場合、侵入微生物、及び、そ
れらによって産生される毒素を破壊・除去する。これら
免疫応答の性質はもともとが破壊的なものであるから、
その反応は正に外来の分子に限定され、ホスト(宿主)
自体の分子には向けられないことが必須である。このよ
うに、外来の分子と、自己の分子とを区別することので
きる能力が、免疫系のもう一つの基本的特徴である。
【0003】本免疫系は、自然免疫と、獲得ないし特異
的免疫とを区別する。自然免疫は、微生物ないし外来巨
大分子に対して曝される以前に活発な防衛機構から成
り、微生物ないし外来巨大分子に曝されることによって
強化されず、また、生体に対して外来性の多くの物質を
区別できない。自然免疫のエフェクター(実行因子)
は、皮膚や粘膜のような物理的障壁、マクロファージや
好中球のような食細胞、ナチュラル・キラー細胞と呼ば
れるあるクラスのリンパ球、および、補体系である。補
体とは、血清蛋白複合体であって、特異的、補体固定的
抗体によって感作された、ある種の細菌細胞やその他の
細胞にたいして破壊的に働き、その活動は、一連の相互
反応によって実行され、蛋白溶解性の分裂を招く。その
相互反応は、少なくとも二つの経路の内の一方、ない
し、他方を取り得る。
【0004】脊椎動物においては、自然免疫機構と、特
異的免疫機構とは、ホスト防衛系、すなわち免疫系にお
いて協力し、外来の侵入者を除去する。微生物、癌細
胞、寄生生物およびウィルス感染細胞に加えてさらに、
免疫系は、同一種ではあるが遺伝的に異なる個体から
(同種移植体)、または、異なる種に属する遺伝的に異
なる固体から(異種移植体)、ある被験者に移植された
細胞や組織をも認識し、除去する。
【0005】後天的ないし特異的免疫は、外来物質にた
いする暴露によって惹起ないし刺激される防衛機構から
成る。特異的免疫機構が、外来物質にたいする防衛にお
いて従事する出来事を免疫応答と言う。脊椎動物は、二
つの広範な、免疫応答のクラスを持つ。すなわち、抗体
反応すなわち体液性免疫と、細胞介在性免疫応答すなわ
ち細胞性免疫とである。体液性免疫は、B型リンパ球に
よって与えられる。すなわち、B細胞は、増殖・分化
後、抗体(別名免疫グロブリンとも呼ばれる)を産生
し、これが、血液やリンパ液中を循環する。この抗体
は、それを誘発した抗原に特異的に結合する。抗体によ
る結合は、ウィルスのような外来物質を、その物質が、
標的細胞上の受容体に結合する能力を阻止することによ
って、不活性化する。体液性反応は、主に、細菌やウィ
ルス感染の内の細胞外相に対して防衛する。体液性免疫
においては、血清のみでも反応を伝播することができ、
かつ、反応の実行者は、抗体と呼ばれる可溶性蛋白分子
である。
【0006】免疫応答の第2のクラス、すなわち、細胞
性免疫は、特殊な細胞、例えば、T型リンパ球の産生を
含む。T細胞は、他のホスト細胞の表面における外来抗
原と反応する。細胞性免疫応答は、特に、糸状菌、寄生
生物、細胞内ウィルス感染、癌細胞、および、その他の
外来物質にたいして有効である。事実、T細胞の大部分
が、免疫において調節的な役割を演じている。すなわ
ち、その他の白血球細胞の反応を強化したり、抑制した
りしている。これらの細胞は、それぞれヘルパーT細胞
およびサプレッサーT細胞と呼ばれるものであるが、ま
とめて調節性細胞と呼ばれる。細胞傷害性T細胞と呼ば
れる他のTリンパ球は、ウィルス感染細胞を殺す。細胞
傷害性T細胞と、Bリンパ球とは共に、感染にたいする
防衛に直接関わり、まとめてエフェクター細胞と呼ばれ
る。
【0007】免疫応答の時間経過は、次のように細区分
される。すなわち、意識ないし認識相であって、この
時、特異的リンパ球が、外来の抗原を認識する。活性化
相であって、この時、特異的リンパ球が外来抗原に反応
する。エフェクター相であって、この時、抗原によって
活性化されたリンパ球が、その抗原を除去するのに必要
な過程を仲介する。リンパ球は、特異的免疫応答を仲介
し、指示することを専門とする免疫細胞である。T細胞
とB細胞は、それらがある抗原によって刺激された時に
のみ形態的に区別される。
【0008】免疫系は、ホストの正常な成分ではない巨
大分子の表面特徴を認識できるように進化を遂げてき
た。前述したように、免疫系によって認識された外来分
子(すなわち、抗体の結合した)は、それ自体が反応を
惹起すると否とを問わず、「抗原」と呼ばれ、抗体の結
合する、抗原部分を「抗原決定因子」、または、「エピ
トープ」と言う。いくつかの抗原、例えば、卵巣癌や乳
癌抗原のような、腫瘍関連性抗原は、多数の抗体結合部
位を持つ。これらの抗原を「多数エピトープ含有性」抗
原と呼ぶ。抗原がポリペプチドであると、エピトープを
直線性(すなわち、ポリペプチド鎖に沿って反復する一
連の連続的なアミノ酸から成る)と分類したり、非直線
性(すなわち、ポリペプチド鎖の折り畳みの結果、近く
に集合させられたアミノ酸から成る)と分類するのが慣
例である。非直線性エピトープはまた「構造的」とも呼
ばれる。なぜなら、これらのエピトープは、ポリペプチ
ド鎖が折り畳まれて、特定の構造、すなわち、特異的な
3次元形態を取ることによって生ずるからである。抗体
・抗原結合は高度に特異的な結合性を持つので、抗原
間、または、同一抗原における異なるエピトープ間を区
別するための主要手段としては、抗体結合特性を用い
る。
【0009】遭遇するエピトープの膨大な多様性に対応
するために、哺乳動物の免疫系は、約2×1012個の、極
端に多数のリンパ球レパートリーを含んでいる。このレ
パートリーの、各リンパ球クローンは、1エピトープに
たいして特異的な表面受容体を含む。哺乳類免疫系は、
少なくとも 108個の異なる抗原決定因子を区別すること
ができると推定されている。一般に、ただ一つの抗原決
定因子でも、たくさんのクローンを活性化し、しかも、
そのクローンの各々が、その決定因子にたいして独自の
特徴的親和性を持つ抗原結合部位を生成する。数百種の
抗体の産生、その各々が異なるB細胞クローンによって
生成されるものであるが、そのような抗体の産生を刺激
する抗原は、ポリクロナール反応を生成すると言われ
る。ほんの数クローンが反応する場合、その反応は、少
数クローン性(オリゴクロナール)と呼ばれる。全反応
が単一のBないしT細胞によって実行される場合、その
反応をモノクロナール性と言う。大抵の抗原にたいする
反応はポリクロナール性である。
【0010】ある外来抗原にたいする、初期ないし一次
免疫応答は、免疫系が、その抗原にたいして再び反応す
る能力を強化する。特異的免疫性のこの特質は、免疫記
憶、または、二次的免疫応答と呼ばれる。二次的免疫応
答は、しばしば、一次的反応よりも有効である。
【0011】抗原に関する従来の定義は、脊椎動物のホ
ストにおいて、特異的抗体の形成を惹起する物質、また
は、その物質と反応する特異的リンパ球集団の発生を惹
起する物質である。しかしながら、科学においてはしば
しば見られることであるが、現在では、この定義は、正
確ではあるけれども、完全ではないことが知られてい
る。例えば、現在では、いくつかの病態は、ホストの免
疫応答を抑制ないし不活性化することが知られている。
このような条件下では、腫瘍抗原は、抗体を惹起せず、
または、特異的リンパ球も生成しない。従って、必ずし
も全ての抗原が、ヒトの免疫応答を惹起することができ
るわけではない。
【0012】この定義の欠陥は、主に免疫応答の両面性
に集中する。免疫応答の第一ステップは、外来性実体の
存在の認識である。第二ステップは、複雑な連鎖的反応
系列、すなわち、反応である。前述した腫瘍抗原の場
合、免疫系は外来抗原の存在を認識はするが、反応はで
きない。また別の例では、自己と非自己を区別する免疫
系能力の欠陥が、多くの自己免疫疾患の原因であるよう
である。繰り返すが、これは、認識上の欠陥であって、
反応上の欠陥ではない。
【0013】従って、ここで用いているように、もしも
抗原が免疫系によって認識されるならば、それは、抗原
性を持つと言われる。さらにもしも免疫系が、その抗原
にたいして活性反応を喚起することが可能ならば、それ
は、免疫源性を持つと言われる。免疫源性を持つ抗原は
通常少なくとも5000ドールトンの分子量を持つ巨大分子
(例えば、蛋白、核酸、炭水化物、および、脂質)であ
る。これより小さい分子、例えば、ヘパリンや小型の抗
原性分子も、十分な大きさを持つ搬送体分子と結合すれ
ば免疫応答を刺激することができる。
【0014】体液性免疫のエフェクターである抗体は、
プラズマ細胞によって分泌され、血液の中でももっと多
量な成分の一つである。プラズマ細胞は、成熟した最終
段階細胞であって、比較的短い寿命を持つようである。
これらの細胞は、次のようにして生成される。すなわ
ち、抗原がヒトの免疫系に入り、一連の複雑な細胞相互
作用において、Bリンパ球を活性化し、次に、Bリンパ
球が増殖・分化してプラズマ細胞を形成する。各Bリン
パ球は、そのDNA によって、ある単一の特異性を持つ抗
体分子を生成するようにプログラムされている。Bリン
パ球は、この分子について、二つの特殊形を生成する。
すなわち、一つは、膜受容体として細胞膜の外表面に付
着したままのもので、通常、抗原を、そのB細胞に結合
させるためのものであり、もう一つは分泌されるもので
ある。
【0015】抗体は、別に免疫グロブリンとも呼ばれる
が、蛋白である。抗体は二つの主要機能を持つ。第一の
ものは、外来抗原を認識(と結合)することである。第
二のものは、免疫系の他の要素を動員して、その外来性
実体を破壊することである。
【0016】抗体の抗原認識構造は、可変ドメインであ
り、抗原結合を担当する。免疫系の動員構造は、これが
抗体の第二の機能であるが、これは定常ドメインであ
る。この領域は、各種のエフェクター機能を担当する。
すなわち、B細胞を刺激して、増殖・分化を遂げさせる
こと、補体細胞溶解系の活性化、オプソニゼーション、
マクロファージを誘引して侵入者の貪食を促すこと、な
どである。各種抗体異性体は、異なる定常ドメインを持
つ。従って、異なるエフェクター機能を持つ。もっとも
よく調べられた異性体は IgGとIgM である。
【0017】抗体そのものは、オリゴマー分子であり、
その構造から、クラス(例えば、IgG)とサブクラス
(例えば、IgG1)に分類される。IgG 分子は、体液性免
疫応答においてもっとも重要な成分であり、2本の重
(長)鎖と、2本の軽(短)鎖とが、ジスルフィド結合
によって合わされて「Y」型になったものから構成され
る。この分子は、(「Y」型の両腕に)2個の可変域を
持つ。この領域がそう名づけられたのは、各種の抗原に
たいして、ある特定の個人によって生成される、ある特
定のサブクラスの抗体は、この可変域において異なる
が、定常域においてはそうではないからである。この可
変域そのものが、比較的定常な枠組みと、超可変なルー
プとから成る。この超可変ループが、抗体にたいして、
ある特定のエピトープにたいする特異性を与える。抗体
は、分子的相補性の結果、抗原のエピトープに結合す
る。この相互作用に直接参加する抗体部分を、「抗原結
合部位」または「パラトープ」と呼ぶ。ある特定の抗体
によって結合される抗原類を「認識抗原」と呼ぶ。
【0018】ある一個の動物の抗体は、別の動物の免疫
系によって外来の抗原と見なされ、従って、免疫応答を
引き起こす。得られた抗体の内のいくつかは、免疫化抗
体の可変域のユニークなエピトープ(イディオタイプ)
にたいして特異的であるので、従って抗イディオタイプ
抗体と呼ばれる。これらはしばしば、免疫化抗体にたい
して認識性を持つ抗原のものと同じ免疫特徴を持つ。一
方、抗異性体抗体は、免疫化抗原の定常域のエピトープ
に結合する。
【0019】前述のように、細胞介在性免疫を調節する
細胞は、Tリンパ球と呼ばれるあるクラスのリンパ球で
ある。この細胞は、最終的には、B細胞と同じ幹細胞か
ら由来するのであるが、極めて異なった発達の経路を取
る。その経路においては胸腺が重要な役割を演ずる。さ
らにTリンパ球は、抗原特異的な表面受容体を発現す
る。もっとも、Tリンパ球が抗原を認識するやり方は、
B細胞におけるそれとはやや異なるのではあるが。T細
胞は、機能的には二つに分類される。すなわち、独自の
エフェクター機能を持つもの(細胞傷害性リンパ球、ま
たは、「CTL」)と、調節性機能を持つものである。
調節性T細胞は、B細胞からプラズマ細胞を発達させる
のに必要である。Tヘルパー細胞(TH)は、免疫応答
の抗原特異的な上向き方向の調節を行なう。免疫応答は
さらに、活性抗原特異的な下向き方向の調節を受けるこ
ともある。動物および組織培養による研究から得られた
膨大な証拠から、この抑制性調節を実行するサプレッサ
ーT細胞集団(TS)の存在が明らかにされている。
【0020】ある個体のリンパ球は、外来抗原にたいし
て特異的に反応するが、その個体に生得的に備わった、
潜在的には抗原となる可能性のある物質にたいして通常
は反応を示さない。免疫的無反応性を、寛容と言う。自
己寛容は、初期の発達段階で獲得されるもので、その時
期、自己を認識する可能性のあるリンパ球は、自己抗原
と接触するが、自己抗原にたいして積極的に反応する段
階にまで発達することを阻止されてしまう。
【0021】免疫系は、抗原チャレンジにたいする反応
を主に細胞性反応にするか(TH1 経路)、主に体液性反
応にするか (TH2 経路) 、を決定する二つのサイトカイ
ン介在性調節経路を持つ。細胞性経路は、Tヘルパー細
胞によるインターロイキン2(IL-2)ないしインターフ
ェロンγ産生によって特徴づけられる。この経路は、遅
延型過敏反応(DTH) 、細胞傷害性T細胞の生産、およ
び、マクロファージの活性化を仲介する。TH2 反応は、
T細胞による各種サイトカイン、例えば、インターロイ
キン4(IL-4)やインターロイキン10(IL-10) の産生を
促進する。この反応は、高い抗体価の特異的抗体の産生
によって特定される。
【0022】この細胞介在性免疫応答、または、体液性
免疫応答のいずれが優勢を占めるかは、交差調節の結果
によると考えられている。すなわち、TH1 細胞は、TH2
反応の誘発を、例えば、インターロイキンγの分泌によ
って抑制するが、逆に、TH2細胞は、IL-2やIL-10 のよ
うなサイトカインを生成して、TH1 反応の発生を抑制す
る。
【0023】TH2 反応は、実際には、ある種の疾患の経
過を悪化させることがある。当技術分野においては、少
量の免疫化抗原の注入によって、遅延型過敏反応がしば
しば惹起され、細胞介在性免疫の存在を示すが、一方、
さらに大量の抗原をワクチンとして用いると、高い抗体
価で示される、さらに著明な体液性免疫応答を引き起こ
すことが知られている。しかしながら、この方法では、
高いIgG 反応を回避し、かつ、高度の、長期の細胞性反
応を実現することは困難であり、しかも、抗原によって
は、小用量では、有効となるほど十分に強い細胞介在性
免疫を惹起できないことがある。
【0024】通常は、免疫応答は、Bリンパ球、Tリン
パ球のいずれにも特徴的なエフェクター機構に向けて進
行する。しかしながら、大抵の免疫応答においては、そ
の経過中に、BないしTリンパ球のいずれかが優勢な役
割を占め、その場合、もう一方のリンパ球の実質的参加
はより少なくなる。そのエフェクター機構が主にB細胞
と抗体によって仲介される免疫応答は、体液性免疫応答
である。T細胞が、より重要なエフェクター機能を仲介
する、そのような反応は、細胞介在性、すなわち、細胞
性免疫応答である。
【0025】前述のように、体液性免疫を調節する細胞
は、B細胞と呼ばれるある1クラスのリンパ球である。
Bリンパ球の各クローンは、膜免疫グロブリン(膜Ig
類、すなわち、表面結合抗体分子)を発現するが、これ
が、あるBリンパ球クローンにとってユニークなエピト
ープを持つ抗原受容体として機能する。これら膜Ig分子
は、B細胞特異性の唯一の起源である。膜Igにたいして
相補的なエピトープを含む抗原は、この抗原受容体に結
合する。このような抗原は別名、その抗体の認識抗原と
も呼ばれる。抗原受容体(膜Ig)にたいする結合は、そ
のBリンパ球の分化と、クローン性増殖を招く。その子
孫の内のいくつかは、成熟プラズマ細胞に分化し、これ
が、そのB細胞が最初に、それによって抗原に結合した
膜Igにたいして、エピトープ特異性において合致する抗
体の合成に専門的に従事する。
【0026】抗原の抗体にたいする結合は、可逆的であ
る。この結合は、たくさんの比較的弱い非共有結合力、
この中には、疎水性結合と水素結合、ファンデルワール
ス力、および、イオン相互作用が含まれるが、そのよう
な結合力の合計によって仲介される。これらの弱い結合
力は、抗原分子が、十分に接近し、その原子の内のいく
つかが、抗体表面の相補的腔所に適合するほど近づいた
時にのみ有効となる。4鎖性抗体単位の相補領域は、二
つの同一の抗原結合部位であり、この抗原に対応する領
域が抗原決定因子である。多くのの抗原性巨大分子は、
たくさんの異なる抗原決定因子を持つ。
【0027】長年に渡って、生きているが、減弱された
ワクチンが、インフルエンザやポリオのようなウィルス
感染にたいする免疫を惹起するために用いられてきた。
これらの製剤は、ワクチンを投与された個人にたいし
て、穏やかな、臨床水準以下の感染を引き起こす、生き
たビリオン(ウィルス粒子)を含む。このような感染の
経過時において、ウィルス・ベクターは、ある種のホス
ト細胞に侵入し、ウィルス特異的蛋白の合成をコードす
る。これら体内的に生成された抗原蛋白は処理されて、
さらに小さなペプチドとされ、MHC クラスIおよびII抗
原との関連して呈示される。これによってTH1 細胞が動
員され、細胞介在性免疫応答が惹起される。
【0028】腫瘍細胞は、ある種の細胞表面抗原(「腫
瘍関連性抗原」)を発現する。腫瘍関連性抗原は、癌患
者の血清や組織に存在する抗原である。このような抗原
の多くは、胎児性組織にも、さらには、低濃度ではある
が、健康な個人の組織や血清にも発現される。組織関連
性抗原の多くは、糖蛋白類、糖脂質類、または、ムコ多
糖類である。多くの腫瘍抗原は、分化を終わった細胞に
よって生成される。それら抗原は、分化した正常細胞よ
りは、腫瘍細胞によってはるかに大量に生成される。ヒ
ト免疫系は、この腫瘍抗原を生得の抗原と認識し、反応
しない(「自己寛容」)。自己寛容を招く機構は部分的
にしか理解されていないが、現在では、自己寛容は、大
部分免疫の発達中に確立されることが明らかになってい
る。もしも未熟なB細胞またはT細胞が、臨界段階(例
えば、細胞表面に受容体を発現した直後ではあるが、成
熟する前)において、抗原特異的受容体を通じて刺激さ
れた場合、これらの細胞は、活性化されず、死ぬように
導かれる。この段階は、B細胞にたいしては骨髄で起こ
り、T細胞にたいしては胸腺で起こる。従って、寛容
は、これらの環境下で発現された自己抗原にたいしては
誘発されるが、これらの環境では発現されない抗原にた
いしては誘発されない。正常な個人も、いくつかの自己
抗原を認識することのできる成熟B細胞を持つが、これ
らのB細胞は活性化されないことが明らかになってい
る。どうやら、適当なTヘルパー細胞TH) が欠けてい
るらしい。
【0029】抗原を持つ腫瘍について、免疫応答が何故
腫瘍を破壊できないのかという理由に関して、少なくと
も四つの理論がある。1)その腫瘍を認識できるB細
胞、または、細胞傷害性Tリンパ球(CTL) が存在しな
い、2)その腫瘍を認識できるTH細胞が存在しない、
3)TH細胞よりも前にTS細胞が活性化され、それが、B
細胞とCTLの活性化を阻止する、および、4)腫瘍増
殖を調節する遺伝子が、誕生時から存在し、そのため
に、ホストは、この遺伝子産物を「外来性」のものとし
て取扱わない。
【0030】既存の解決策 ある腫瘍において、腫瘍抗原が十分な選択性を持って出
現する場合(すなわち、腫瘍抗原が、正常細胞集団にお
いては存在しないか、ごく少量しか存在しない場合)そ
の腫瘍抗原は、免疫療法剤の標的の役を果たすだろうと
考えられる。このような選択的腫瘍抗原の多くは、天然
においては、炭水化物か糖蛋白(ムチン)である。例え
ば、多くの腺癌細胞は、大量にムチンを発現し、分泌す
る。これは、一部は、癌細胞における解糖反応の欠陥に
よる。癌細胞表面のムチンによって、免疫エフェクター
機構は、腫瘍細胞表面に達し、それによってその腫瘍抗
原に接しようとしても、その接触を物理的に阻止され
る。すなわち、ホストは、この腫瘍抗原を認識できな
い。
【0031】多くの疾患においては、病原体ないし毒素
(例えば、インフルエンザ・ポリオ・狂犬病ウィルス、
肺炎球菌細菌、ジフテリア・破傷風毒素)を有効に標的
とし、体液性免疫機構によって、細胞外液において、抗
体によって中和化することができる。すなわち、抗体
は、その病原体ないし毒素と結合し、それによってそれ
らを非活性化ないし破壊するからである。この場合、体
液性免疫応答、特にTH2 細胞を介する反応を惹起する製
剤によるワクチン処置が、一般に予防目的には十分であ
る。一方、多くの細胞内感染においては、また、ウィル
ス感染からの回復や、癌細胞のみにたいする選択的殺作
用においては、生体を、侵入者から保護するのは、細胞
介在性免疫である。
【0032】三種の免疫療法が現在研究中である。すな
わち、 1) 受動性免疫療法、 2)抗原による能動性免疫
療法、および、 3)抗体による能動性免疫療法である。
残念ながら、その各々が部分的な成果しか収めていな
い。しかしながら、免疫療法は、ある段階の癌にたいし
ては、ピリミジンやプリン類似体のような抗増殖性化学
療法剤よりも好まれる。これら類似体は、細胞成長サイ
クル時に使用される構成単位としてのピリミジン類、プ
リン類と競合する。この類似体は、成長が非周期的であ
ったり、休止している場合には無効である。微少転移性
細胞の大部分は、非周期性であるか、休止しているよう
である。免疫療法の細胞傷害作用は、細胞サイクルとは
無関係に作用する。
【0033】「受動性免疫療法」では、患者に抗体を投
与する。抗体療法は、従来から受動的と特徴づけられて
いる。なぜなら、患者が、その抗体の生産者ではないか
らである。しかしながら、受動性という用語は誤解を与
える。というのは、患者は、抗イディオタイプ二次抗体
を生成し、これが、もとの抗原と交差反応する免疫応答
チンの形で患者に投与し、それによって防衛的免疫応答
を惹起するものである。サイトカインや協働分子を発現
する遺伝子を組み込まれ、遺伝学的に修飾された腫瘍細
胞ワクチンも従来から、腫瘍特異的免疫応答の不十分を
補うために使用されている。
【0034】I.(抗体による)受動性免疫療法 腫瘍抗原は、それにたいして抗体が結合することのでき
る反応部位として働くことができる。腫瘍抗原にたいし
て、数多くの抗体が喚起・育成されている。従来のエフ
ェクター法としては、補体依存性細胞溶解法(CDC) 、抗
体依存性細胞傷害法(ADCC)、および、食作用法(標的細
胞を、免疫グロブリンでコートした後、網状内皮系によ
って除去)が挙げられる。
【0035】CDC 、ADCC、および、オプソニゼーション
を導入するには、比較的多量の抗体が必要とされる。さ
らに、ヒト抗体の供給源が、目的の腫瘍に既に罹患した
人々に限られる。収集すべき抗体の生産を惹起するとい
う目的のためだけに、ある病気を個人に導入するのは非
倫理的である。これらの困難のあるために、ヒト以外の
供給源由来の抗体、例えば、マウス抗体が従来から用い
られている。
【0036】マウス抗体のヒトにたいする投与は、「外
来性」のものと認識されるために、一次抗体分子の、マ
ウス特異的、および、マウス異性体特異的部分に向けら
れた、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を引き起こす。こ
の免疫応答は、マウスと、ヒトの免疫グロブリンの定常
域の一次アミノ酸配列に相違があることから生ずる。HA
MAのIgG・IgMサブクラスのいずれも検出されている。
IgG反応は、典型的IgM反応よりも、遅く現れ、かつ、
長く持続し、また、プラズマファレーゼによる除去にた
いする抵抗性も高い。
【0037】しかしながら、臨床的には、HAMAは、1)そ
の後のマウス抗体の投与にたいして、アナフィラキシー
反応、または、血清病様反応を招く危険率を増加させ
る、2)その後にマウス抗体を注入した場合、それらの抗
体と複合体を形成し、体外への排泄を促し、腫瘍局在性
を低下させ、肝臓・膵臓への取り込みを強化し、および
・または、腫瘍を治療薬剤の側から見えないようにし、
それによって、その後に注入されたマウス抗体の免疫療
法効果を妨げる可能性がある、かつ、3)免疫診断剤と
干渉し、それによって、問題の疾病の進行と治療経過の
監視を妨げる可能性がある。
【0038】各種臨床試験が、固体腫瘍にたいする治療
薬として抗体を用いている。しかしこれまでのところ一
貫した反応パターンや、改善生存率は報告されていな
い。これと対照的に、抗体療法は、B細胞ないしT細胞
リンパ腫や白血病において、完全で長期な寛解をより高
頻度にもたらしている。固体腫瘍において不成功である
理由の説明としては、抗原としての非均一性、また、注
入抗体にたいしてばかりでなく、補体やエフェクター細
胞のような二次的エフェクター分子にたいしても、上皮
細胞の接触性が十分でないこと、が挙げられる。
【0039】受動性免疫の一例として、マウス・モノク
ロナール抗体17-1A(異性体IgG2a)を、デュークのC段階
の結腸・直腸癌患者において、極小の残留疾患を標的す
るのに用いた。これらの患者は、治療手術を受け、明白
な残留腫瘍を持たなかった。この処置は生存率を改善
し、再発率を低下させはしたが、その成績は、化学療法
のみ、または、放射線と併用した化学療法による処置と
比べると好ましいものではなかった。
【0040】17-1A にたいする標的抗原は、膜から放出
されるのではなく、従って、血清の中には検出されない
というのは注意する必要がある。リーントミュラー等著
(Rienthmueller et al.)「デュークC段階結腸・直腸癌
手術除去における補助治療としてのモノクロナール抗体
投与に関するランダム化治験」(“Randomized trialof
monoclonal antibody for adjuvant therapy of resect
ed Dukes' C colorectal carcinoma," ランセット(Lanc
et), 343:1177-1143(1994) を参照されたい。
【0041】II. 腫瘍抗原による能動的・特異的免疫療
法 ("ASI") ASI は、適当なやり方で発現された、ある定義された抗
原による免疫化であって、それによって、その抗原にた
いして特異的な免疫応答を能動的に惹起する、そのよう
な免疫化と定義される。癌との関連で言えば、ASI は、
体液的にも、細胞介在的にも、ヒト免疫応答を模倣し、
そうすることによって、その腫瘍抗原を攻撃しようとす
る。体液性反応と、CDC 、ADCC、および、食作用による
従来のエフェクター法(標的細胞を免疫グロブリンでコ
ートした後に、網状内皮系によって除去する)は上に論
じた。
【0042】過去5年の間に、Tリンパ球の特異的抗原
受容体によって認識される分子複合体の特徴化について
はかなりの進歩が見られた。クラスI主要組織適合性因
子(“MHC") 分子の結晶構造は、結合に関わる可能性の
高いペプチド結合溝ばかりでなく、この溝の中に実際に
ペプチドの存在することをも明らかにした。食作用後、
細胞内で合成された蛋白は見かけ上細胞酵素によってペ
プチドに分解され、小胞体に輸送され、そこで、クラス
IMHC分子の重鎖と結合する。このようなペプチド-MHC複
合体はβ2-マイクログロブリンの付加によって安定化さ
れ、細胞表面に輸送され、そこで CTLの受容体によって
認識される。理論的には、抗原性ペプチドは、腫瘍細胞
によって特異的に発現されるいずれの細胞内蛋白由来の
ものであってもよい。例えば、ファン・デル・ブラッゲ
ン(Van Der Bruggen, Pierre) 著「腫瘍拒絶抗原を求め
る長き探求」(The long-standing quest for tumor rej
ection antigens)臨床免疫学・免疫病理学雑誌(Clinica
l Immunology and Immunepathology), 71(3):248-252(1
994)を参照されたい。
【0043】III.抗体による能動性特異的免疫療法 もしもある動物から得たある特異的抗体を、適当な第二
の動物に免疫源として注入したならば、この注入された
抗体は、免疫応答を惹起する(例えば、この注入された
抗体にたいして抗体、すなわち、「抗抗体」を産生させ
る)。このような抗抗体のいくつかは、この注入された
抗体の可変域のユニークなエピトープ(イディオトー
プ)にたいして特異的である。これらのエピトープはま
とめて第一次抗体のイディオトープと呼ばれ、これらの
エピトープと結合する二次(抗)抗体は、抗イディオタ
イプ抗体と呼ばれる。抗体の可変部分に発現するすべて
のイディオトープの総計を、その抗体のイディオタイプ
と言う。イディオタイプは、血清学的に定義される。な
ぜなら、抗原のエピトープに結合する一次抗体の注入
は、抗イディオタイプ抗体の産生を惹起する可能性があ
るからである。一次抗体と、抗イディオタイプ抗体の間
の結合が、一次抗体に向けられる抗原によって抑制され
る場合、このイディオタイプは、結合部位性、または、
エピトープ関連性である。他の二次抗体は、注入された
抗体の定常ドメインのエピトープにたいして特異的であ
り、従って、抗異性体抗体と呼ばれる。ここで用いた抗
イディオタイプ、抗イディオタイプ抗体、エピトープ、
または、エピトープ性は、当技術分野においてよく認め
られた意味合いにおいて使用されている。
【0044】「ネットワーク」説は、免疫応答において
最初に産生された抗体が、その個体が寛容を示さない、
新しいユニークなエピトープを持つとし、これが、この
一次抗体(Ab1) のイディオタイプにたいして向けられた
第二次抗体(Ab2) の産生を招くとする。この二次抗体が
同様にイディオタイプを持ち、それが、三次抗体(Ab3)
の産生を招き、等などと続く。 Ab1->Ab2->Ab3 ネットワーク説はさらにこのような二次抗体(Ab2) 内の
いくつかは、最初の抗原の相補体の相補体となる結合部
位を持ち、従って、最初の抗原の「内部像」を再現する
と言う。換言すれば、抗イディオタイプ抗体は、代理抗
原となる可能性がある。
【0045】癌免疫療法実現のための従来の方法は、抗
腫瘍抗体、すなわち、腫瘍細胞におけるエピトープを認
識する抗体を患者に投与することであった。しかしなが
ら、「ネットワーク」説を敷延すると、研究者は、外来
的に生成された抗イディオタイプ抗体、すなわち、抗腫
瘍抗体のイディオタイプにたいして喚起される抗体の直
接投与を示唆される。このような方法が、米国特許第5,
053,224 号(コプロウスキー等、Koprowski et al.)に
開示されている。コプロウスキーは、患者の体は、この
抗イディオタイプ抗体を認識するばかりでなく、最初の
腫瘍エピトープをも認識する抗抗体を産生すると予想し
ている。
【0046】抗イディオタイプ抗体には四つの大きな型
がある。アルファ型は、一次抗体のパラトープから離れ
たエピトープに結合する。ベータ型は、そのパラトープ
が常に最初の抗原のエピトープを模倣するものである。
ガンマ型は、一次抗体のパラトープの十分近くに結合
し、その抗原結合性を干渉するものである。イプシロン
型は、定常ドメイン抗原構造を模倣するイディオタイプ
決定因子を認識する。さらに、抗異性体抗体は、重鎖特
異的、または、軽鎖特異的である可能性がある。このネ
ットワーク説から、二つの治療応用が導かれる。すなわ
ち、1)ホストによるAb2 生成を惹起する抗原となるAb
1 の投与、および、2)機能的に腫瘍抗原を模倣するAb
2 の投与である。
【0047】モノクロナール抗体OC125 のF(Ab')2 の静
注反復投与による卵巣癌患者の能動的免疫化は、患者の
内の何人かに、著明な抗イディオタイプ抗体(Ab2) 反応
を惹起したことが報告されている。予備試験の成績か
ら、Ab2 の血清高濃度は、Ab2が低度ないしまったく血
清中に検出されなかったものに比べて、優れた生存率を
呈したことが明らかにされた。ワーグナー等(Wagner et
al.) 著、「腫瘍関連性抗原にたいする抗イディオタイ
プ抗体の惹起後における卵巣癌患者の臨床経過」(“Cli
nical course of patients with ovarian carcinoma af
ter induction ofanti-idotypic antibodies against a
tumor-associated antigen," 腫瘍の診断と治療誌(Tum
or Diagnostics & Therapie),11:1-4(1991) を参照され
たい。
【0048】ヒト抗イディオタイプ・モノクロナール抗
体(Ab2) は、動物において抗腫瘍細胞性反応を惹起する
ことが示され、また、転移性結腸・直腸癌患者の生存を
延引するようである。デュラン等(Durrant, L.G. et a
l.)著、「ヒト・モノクロナール抗イディオタイプ抗体1
05AD7によって免疫化された患者における、強化された
細胞介在性殺作用」("Enhanced cell-mediated tumor k
illing in patients with human monoclonal anti-idio
pathic antibody 105AD7")、癌研究(Cancer Research),
54:4837-4843(1994)を参照されたい。癌免疫療法のため
に抗イディオタイプ抗体(Ab2) を使用する方法は、バタ
チャリャ−チャッテリイェ等(Bhattacharya-Chatterje,
et al.)によって総覧されている(Immunol.Immunothe
r., 38:75-82(1994)) 。
【0049】本発明の開示 ワクチンとは、特異的免疫を惹起することによって、病
態の予防、治療、ないし、寛解を実現するために、動物
ないしヒトに投与される製剤である。予防性ワクチン
は、将来の感染にたいしてさらに有効な防衛ができるよ
うに、免疫系をあらかじめ準備させる、または、熟成さ
せる意図を持って、健康な個人に投与される。感染、ま
たは、感染機会の際に、ワクチン投与を受けた個人の免
疫系は、二次免疫応答を喚起でき、従って、その病原体
をより急速に認識・除去できる。治療ワクチンは、病気
にかかった個人にたいして、それまで自ら不十分な免疫
応答しか呈しなかった、または、まったく反応すること
のできなかった免疫系を刺激する、または、修飾する意
図をもって、投与される。予防または治療ワクチンを設
計する際には、第一線の防衛を与える、すなわち、急速
な回復を実現する、ことにおいて最も有効な免疫応答の
型を惹起することのできる製剤を選ぶことが重要であ
る。
【0050】免疫応答の起動における第一段階は、腫瘍
抗原を外来抗原とするホストの認識を生起することであ
る。例えば、CA125 の発現は、卵巣癌と関連しているけ
れども、患者の免疫系は、これを外来性のものと認識す
ることができない。本発明は、可溶性抗原を、本発明の
組成物と接触させ、その組成物中の結合剤と、その可溶
性抗原とを反応させることを含む。本発明によれば、抗
原を結合剤と結合させることによって、ホストのその抗
原にたいする認識が生成される。次に、ホストの認識が
生成されることによって、その抗原にたいする免疫応答
が惹起される。
【0051】本発明は、多数エピトープ含有性腫瘍関連
抗原の、ある特定のエピトープにたいして結合剤を結合
させることによって、その抗原を変化させ、それによっ
て、ホストの免疫系が、以前には認識しなかったこの抗
原を認識するようになり、その抗原にたいして免疫応答
を喚起できるようになる、という発見を含む。本発明の
一つの実施態様においては、結合剤は、ある可溶性腫瘍
関連抗原に結合し、それによってホストの免疫系に、そ
の抗原にたいする免疫応答を生起せしめる。例えば、本
発明を例示するものとしてB43.13がある。これは、卵巣
癌抗原CA125 にたいして、43.13 エピトープで特異的に
結合する、抗体結合剤である。B43.13が一旦CA125 抗原
に結合すると、抗原の構造が変化するか、または、抗原
が別様に処理、および・または、輸送されるか、そのい
ずれかの影響を受け、それによって、その抗原は、ホス
トの免疫系に認識されるようになる。他の実施例として
は、ただしそれらに限局されるものではないが、次のも
のが挙げられる.すなわち、消化管癌関連性の消化管抗
原であるCA19.9に特異的に結合する結合剤、および、乳
癌関連性抗原であるCA15.3に特異的に結合する結合剤で
ある。
【0052】本発明においては、結合剤(単数または複
数)と、そのような結合剤を含む組成物が与えられる
が、その組成物において、結合剤は、ある特定の可溶性
抗原に選択的に結合する、また、その結合剤は、その抗
原における別のエピトープの発現を招き、かつここに、
上記別のエピトープは、免疫応答を招来し、その反応
が、その抗原を生成する細胞を抑制ないし殺害する、こ
とを特徴とする。
【0053】本発明の、ある好ましい実施態様において
は、特定の腫瘍関連性抗原に特異的に結合する特定の抗
体を含む組成物が、腫瘍によって生成される可溶性抗原
に結合するのに用いられる。この可溶性抗原への結合が
一旦実現されたならば、免疫系は、この抗原を「外来
性」のものとして認識し、この抗原にたいして、また
は、この抗原に結合された結合剤にたいして、免疫応答
を喚起する。免疫源性のものに変えることのできる抗原
は、免疫応答を誘発ないし活性化し、それによって治療
効果、そしておそらく予防効果を上げることのできる潜
在的可能性を持つ。一部、多数エピトープ含有性腫瘍関
連抗原を持つことによって特徴づけられる疾患にたいし
ては、本発明は、可溶性抗原を、その多数エピトープ含
有性抗原における単一エピトープに特異的に結合する結
合剤に接触させることを含む。
【0054】この結合剤は、臨床的に重要ないずれの抗
原に向けられてもよいが、できれば、腫瘍関連性抗原(T
AA) にたいして向けられるのが好ましい。TAA の場合に
は、目的の癌としては、次のものが挙げられるが、ただ
し、それらに限定されるものではない。すなわち、肺、
結腸、直腸、乳房、卵巣、前立腺、頭部、頚部、骨、免
疫系、または、その他のいずれの解剖的所在。対象は、
ヒト、または、動物であってもよい。例示的腫瘍、およ
び、腫瘍マーカーが、米国特許第5,075,218 号に掲げら
れている。
【0055】本発明の方法は、可溶性、多数エピトープ
含有性TAA を生成するいずれの癌をも含む。ここで用い
る可溶性とは、体液、すなわち、血液、血清、腹水、唾
液などにおいて検出可能ないずれの抗原をも表わすのに
用いられる。本発明においては、好ましい対象癌は次の
ものである。すなわち、表面抗原や細胞内抗原ではな
く、放出される可溶性腫瘍抗原、例えば、血流中に放出
される腫瘍抗原で、多数エピトープ含有性腫瘍関連抗原
で、できれば、炭水化物ないし糖蛋白(例えば、ムチ
ン)性のものを呈示し、かつ、患者の体液において、健
康な対照において通常見られる濃度以上の濃度で見出さ
れ、そのような高濃度は、患者の予後が暗いことを示す
ものであるが、それでいてまだ、免疫応答を起動するに
至っていない、そのような癌である。当業者ならば周知
のように、TAA の濃度が、その病気の再発を予告する程
度のもの以上であるか否かを判断するための一つの方法
は、患者の濃度を、健康な対照のものと比較することで
ある。もしもTAA の濃度が健康な対照のものよりも高い
ならば、その患者の濃度は、その疾患における暗い予後
を予告することになる。
【0056】ここで用いる結合剤(BA)とは、免疫ペアの
片方、例えば、腫瘍抗原上に発現される単一エピトープ
に結合することのできる結合の片割れを指す。例示的結
合剤としては次のものが挙げられるが、ただし、これら
に限定されるものではない。すなわち、モノクロナール
抗体 (“MAb")、キメラ型モノクロナール抗体(“C-MA
b") 、遺伝子工学的に調製されたモノクロナール抗体
(“G-MAb")、モノクロナール抗体断片 (“F(Ab)2"、“F
(Ab)" および“Dab" を含むが、ただしそれらに限定さ
れない) 、モノクロナール抗体の反応部分を表わす単一
鎖(SC-MAb)、腫瘍結合性ペプチド、エフェクター機能を
仲介する分子に結合された上記の内のいずれのかのも
の、および、上記の内のいずれかのものの模倣物であ
る。抗体は、ポリクロナール抗体、または、モノクロナ
ール抗体であってもよい。対象がヒト対象である場合に
は、抗体は、抗原にたいして有効な免疫応答を喚起する
ことのできる動物、例えば、マウス、ラット、山羊、ウ
サギ、その他の適当な実験動物を免疫化することによっ
て獲得することができる。モノクロナール抗体の場合に
は、免疫化された動物の抗体産生細胞を、「不滅の」、
または、「不滅化された」ヒトまたは動物細胞と融合さ
せ、それによって、その抗体を生成するハイブリドーマ
を得ることができる。もしも望むならば、免疫グロブリ
ン鎖の1個以上をコードする遺伝子をクローンし、それ
によってその抗体を、様々なホスト細胞で生成させても
よいし、また、望むなら、その遺伝子に突然変異を起さ
せ、それによってその配列を変え、それによってその生
成される抗体の免疫特性を変えてもよい。断片、すなわ
ち、結合剤の断片であるが、これは、通常の方法、例え
ば、ペプシン、パパインなどによる結合剤の蛋白分解酵
素による消化によって、または、組み換えDNA 法によっ
て入手できる。DNA 法の場合、所望の断片をコードする
DNA をクローンし、各種のホストにおいて発現させる。
前述の実体に、例えば紫外線を放射することによって、
同様条件下における多数エピトープ含有抗原にたいする
免疫応答仲介するエフェクター機能は必要ではない。
【0057】本発明のある実施態様においては、卵巣腫
瘍関連抗原にたいする好適な組成物は、CA125 抗原に結
合する結合剤を含む。本発明のまた別の実施態様におい
ては、消化器癌にたいする好適な組成物は、CA19.9抗原
に結合する結合剤を含む。本発明のさらにまた別の実施
態様では、乳癌にたいする好適な組成物は、CA15.3抗原
に結合する結合剤を含む。各種結合剤、抗体、抗原、お
よび、抗体の調製、単離、使用の方法が米国特許第 4,4
71,057号(コプロウスキー(Koprowsky))および米国特許
第5,075,218 号(ジェット等(Jette, et al.) に記載さ
れている。このいずれも引用することによって本明細書
に含めることとする。さらに、これら抗体の多くのもの
が市販されており、Centocor, Abbot Laboratories, Co
mmissariata L'Energie Atomique, Hoffman-LaRoche,
Inc., Sorin Biomedica, および、FujiRebio から入手
可能である。
【0058】本発明による結合剤を含むいずれの組成物
も、体内性免疫応答惹起に使用することができる。その
組成物は、1個以上のアジュバント、1個以上の搬送
剤、1個以上の賦形剤、1個以上の安定化剤、1個以上
の撮像試薬及び/又は生理学的に受容可能な生食液を含
んでいてよい。一般に、アジュバントとは、さらに著明
な免疫応答を惹起するために免疫化剤と混合される物質
である。アジュバントを含まない対照ワクチン処置は、
体液性免疫応答を引き起こした。本組成物はさらに、製
薬学的に受容可能は搬送剤を含んでいてよい。製薬学的
に受容可能な搬送剤としては次のものが挙げられるが、
ただしこれらに限定されるものではない。すなわち、生
食液、無菌水、りん酸緩衝生食液など。その他のバッフ
ァー液、分散剤、および、患者への搬送に好適な非活性
の、無毒物質を、本発明の組成物に含めてもよい。その
組成物は、投与に好適な溶液であってもよく、その場合
通常無菌で、好ましくない粒状物質を含まない。組成物
は、通常の滅菌法によって滅菌してもよい。
【0059】本発明の方法においては、前記結合剤は、
腫瘍関連抗原と接触しなければならないが、その場合、
免疫学的に好適ないずれのルートから患者に投与しても
よい。例えば、本結合剤を、静脈内、皮下、腹腔内、皮
内、筋内、または、リンパ管内ルートを通じて、溶液、
錠剤、または、噴霧の形で、患者の体内に導入してよ
い。リポゾーム、生分解性微少球、ミセルなども、搬送
剤、ビーイクル、または、搬送系として使用してもよ
い。さらに、当業者には周知の体外調製法を用いて、患
者から患者の血液ないし血清を取り出し、要すれば、そ
の患者の血液中の抗原を精製するのが好ましく、次にそ
の血液ないし血清を、本発明による結合剤を含む組成物
と混合し、そして、このように処置された血液ないし血
清を患者に戻してもよい。臨床家は、前記様々のルート
と関連させて抗イディオタイプ反応と、抗異性体反応と
を比較して、もっとも有効な投与ルートを決定すること
ができる。本発明は、この結合剤を患者の体内に導入す
るにあたって、何の特定の方法に限定されるものではな
い。
【0060】本発明においては、BA−抗原相互作用によ
って、残余のエピトープは、患者の免疫系に有効に呈示
され、次のものを生起する、1)体液性反応であって、ヒ
ト抗腫瘍抗体の産生を招く、この抗体は、注入した抗体
によって抑制されるかもしれないし、されないかもしれ
ないが、注入BAにたいして反応性を持つエピトープとは
別のエピトープに結合する抗体によっては確実に抑制可
能である、および、2)細胞介在性反応であって、抗原特
異的細胞傷害性T細胞の産生を招く。
【0061】本発明の結合剤は、目的の多数エピトープ
含有性腫瘍抗原に結合するが、それによって得られた免
疫ペアを、その抗原上の別のエピトープにたいする免疫
応答を導くために、または、惹起するために用いること
ができる。本開示の別の箇所でさらに詳細に論じるよう
に、結合剤と多数エピトープ含有性抗原間の結合は、そ
の抗原の構造を変え、それによって、以前には認識され
なかった、その抗原上の別のエピトープを接近可能にす
ると信じられている。以前に認識されなかったエピトー
プも、一旦免疫系の因子によって認識されると、免疫系
の連鎖反応を引き起こし、それは、全抗原にたいする免
疫応答となる。
【0062】本発明のある実施態様においては、その体
液が、内因性の、可溶性多数エピトープ含有抗原を含む
癌患者を、その内因性可溶性抗原の単一エピトープに向
けられた体外性結合剤を注入することによって治療す
る。結合後、抗原は、別様に再構成ないし処理、および
・または、搬送され、それによって、その抗原上の別の
エピトープを、患者の免疫系に呈示するようにする。呈
示によって、患者の免疫系は、体液性、細胞性、また
は、体液性/細胞性併合反応を喚起・促進し、腫瘍殺作
用および・または静止作用をもたらす。本発明成功の証
拠は、実施例において、改善された生存倍率として示さ
れる。
【0063】以下に述べることによって限定をする意図
は毛頭ないが、しかし、本発明の方法における作用機構
は、本発明に基づく結合剤によって、結合される可溶性
抗原の一部にもたらされる構造的変化を含むと考えられ
る。さらに、抗原に、その抗原上の、ある最初のエピト
ープに向けた結合剤を結合させることは、その抗原の構
造を、第二のエピトープを呈示させる、または、活性化
させるほどに変化させると考えられる。患者の免疫系が
反応するのは、まさにこの第二のエピトープに対してで
ある。また別の考えとして、結合剤-抗原相互作用は、
免疫系にたいして、差別的代謝処理ないし輸送をもたら
し、それによって第二のエピトープを活性化させるのか
も知れない。
【0064】投与用量 本発明の方法においては、結合剤を含む組成物は、特定
の腫瘍関連抗原を認識し、結合するのに十分な量投与す
ればよい。本発明のある好ましい実施態様においては、
用量は、TAA にたいする免疫応答を生成ないし惹起する
のに十分な量である。結合剤の、免疫学的ないし治療的
に有効ないし受容可能な量は、特定の抗原にたいして体
内で、または、体外で結合するのに十分な量であって、
その抗原にたいして免疫応答を惹起することのできるも
のである。この反応は、新たに接触可能となったエピト
ープを持つ、および、呈示する腫瘍細胞を抑制、また
は、殺害し、それによってその抗原を産生する病気また
は状態を寛解ないし除去する。この免疫応答は、体液性
反応、細胞介在性反応、または、その両方の形を取るこ
とがある。本発明のある好ましい実施態様においては、
モノクロナール抗体の用量は、ADCCまたはCDC を惹起す
るのに必要とされる用量よりも低い。
【0065】本組成物における結合剤すなわち活性剤の
濃度ないし用量は、きわめて広範囲に広がる可能性があ
る。例えば、重量にして約0.01%未満から、約15から20
%まで広がる可能性がある。前述のように、本組成物
は、抗原にたいする免疫応答を刺激するのに十分な量と
して投与される。この使用に有効な量は、一部は、病気
の程度と、患者の免疫系の状態による。一般に、本組成
物は、体重1kg当たり、約 0.1μg から約2mg以上の結
合剤を、さらに一般的には体重1kg当たり約1μg から
約 200μg の結合剤を含む。この濃度は、通常少なくと
も 0.5%であるが、特定の投与様式に従って、主に、溶
液量、粘度、抗原性などに基づいていずれの量を選択し
てもよい。
【0066】投与は、1回を越える度数であってよい
が、できれば長期にわたって3回行なうことことが好ま
しい。本発明の組成物は、重篤な病状、生命を脅かす、
または、生命を脅かす可能性のある状態にある患者に使
用されるものであるから、できれば余分量の結合剤を投
与するのが好ましい。本組成物の注射のための希釈法を
含めた、製剤組成物を投与するための実際の方法・プロ
トコールは、当業者には熟知の通りであり、あるいは、
自ずから明白にされる通りである。これらの方法・プロ
トコールの内のいくつかは、レミントン(Remington)
の、製剤科学("Pharmaceutical Science"), Mack Publi
shing Co. (1982)に記載されている。結合剤は、その他
の結合剤と併用して投与してもよいし、その他の治療プ
ロトコールないし薬剤、例えば、化学療法剤と併用して
投与してもよい。
【0067】本発明の結合剤の有効性を、生体内におい
て、または、生体外において監視してもよい。体液性反
応は、インビトロ(試験管内)においては、通常の免疫
定量法(イムノアッセイ)によって監視することができ
る。この場合、反応の抗腫瘍活性は、補体仲介性細胞毒
性、および・または、抗体依存性細胞毒性(ADCC)定量法
によって定量できる。定量の方法論は、周知のところで
あり、かつ、実験免疫学教科書 (Handbook of Experime
ntal Immunology), 第2巻、Blackwell Scientific Pub
lication, Oxford (1986) に記載されている。その他の
定量法を、患者または組織中の抗原濃度の定量のために
用いてもよい。細胞介在性免疫は、生体内において、遅
延型過敏反応の進行をもって、または、その他の、当業
者には既知の、体内ないし試験管内手段を用いて監視す
ることができる。その中には、次のものが含まれるが、
ただしそれらに限定されるものではない。すなわち、皮
膚試験反応プロトコール、リンパ球刺激定量法、腫瘍細
胞にたいする患者リンパ球の毒性を測定するもので、こ
れには、標準的な放射能放出定量によるもの、限界希釈
法によるもの、あるいは、標準ELISA 定量法による、IL
-2血漿濃度測定によるものがある。
【0068】実施例 実施例1 ある単一エピトープにたいする抗体を注入す
ることによって、ある抗原中に存在する多数エピトープ
にたいする抗体反応を惹起することの実験的証明卵巣上
皮癌の80%以上に発現される癌抗原CA125を、本発明を
例証するための実施例として用いる。CA125 は、各種抗
体、その内から特に名を挙げると、例えば、OC125 、M1
1 、B43.13、B27.1 によって認識される。本発明におい
ては、MAb-B43.13を用いて、CA125 特異的免疫応答を生
成した。しかもこの反応は、B27.1 エピトープの認識を
含んでいた。方法−病勢の活発な86人の卵巣癌患者につ
いて、CA125 にたいする抗体の有無をテストした。患者
のいずれも、MAb-B43.13の注入以前にはCA125にたいし
て抗体を持たなかった。患者に、様々の時間間隔をおい
て、MAb-B43.13の2mgを注射した(例えば、患者の幾人
かについては第1表を参照されたい)。これらの患者か
ら得た血清について、ヒト抗CA125 抗体の有無を、その
CA125 結合能によって分析した(マヂヤラカン等(R. Ma
diyalakan et al.))、ハイブリドーマ誌 (“Hybridom
a")、14:199-203, 1995)。この抗CA125 抗体をさら
に、B43.13エピトープ、または、B27.1 エピトープにた
いして、それらに対応する抗体にたいする抑制能によっ
て分類した。この分類法の理論的根拠は、次の事実に基
づく。すなわち、これらの患者における抗CA125 抗体
は、下記の二つの経路の内のいずれかによって生成され
たものだからである。
【0069】1)もしもこの抗CA125 抗体が、前述のネッ
トワーク説によって示唆されたようなやり方で生成され
るとすると、その経路は、Ab1-Ab2-Ab3 となる。この筋
書きに従うと、MAb-B43.13(Ab1) は、MAb-B43.13にたい
する抗イディオタイプ(Ab2)を生成し、次に、この抗イ
ディオタイプ抗体が、MAb-B43.13にたいする抗抗イディ
オタイプを生成することになる(Ab3、または、抗CA125
抗体)。さらに、この経路において生成されたAb3 抗体
は、MAb-B43.13に結合し、それによってのみ抑制され
る。なぜなら、B43.13エピトープが、存在する唯一のエ
ピトープであるから。
【0070】2)もしもこの抗CA125 抗体が、本発明によ
って示唆されたやり方で生成されるとすると、その経路
は、Ab1-可溶性抗原-Ab3' となる。この筋書きに従う
と、MAb-B43.13(Ab1) は、CA125 血清抗原に結合し、次
にこれが抗CA125 抗体(Ab3')を生成することになる。さ
らに、この経路において生成されたAb3'抗体は、B27.1
抗体に結合するから、B27.1 抗体によって抑制される。
なぜなら前述のようにCA125 は多数エピトープ含有性で
あり、B43.13とB27.1 とは互いに別々のものであり、さ
らに、Ab3'は、抗MAb-B43.13抗体には結合しないからで
ある。従って、もしも患者が、MAb-B43.13のみによって
抑制可能な抗CA125 抗体を含むならば、それは、Ab3 を
含むと分類されるし、MAb-B27.1 によって抑制可能なも
のはAb3'と分類される。
【0071】結 果 14名の患者が、MAb-B43.13の注入に応答して、その血清
中に抗CA125 抗体を呈した(第1表)。これら14名の患
者の内10名はAb3'を持っていたが、その血清中にAb3 抗
体を持っていた患者は僅か2名であった。二人の患者は
さらにこれら抗体を両方とも持っていた。彼らの血清中
におけるAb3 の存在は、これらの抗体が、精製ウサギ抗
MAb-B43.13抗体に結合能を持つことからも確認された。
抗CA125 抗体を持つが、MAb-B43.13やMAbB27.1によって
抑制されず、従って、CA125 にたいする抗体を持つが、
その抗体は、B43.13やB27.1 以外のエピトープを認識し
ていることを示唆される、そのような患者が二人(#2と
#7)いた。
【0072】これらの結果は明らかに、ある単一のエピ
トープ(B43.13)にたいする抗体を患者に注入すると、
全抗原にたいする抗体反応が生成され、その反応におい
て、その抗原に存在する各種エピトープが認識されるこ
とを示す。幾人かの患者におけるAb3 の存在は、CA125
において、B43.13エピトープにたいする結合の不十分な
ために、過剰なB43.13エピトープが存在することを仮定
することによって、すなわち、経路Iによるイディオタ
イプ誘発によって説明されよう。にも拘わらず、反応の
主要機構は、経路IIを通じて行なわれるようである。換
言すれば、機能的免疫系を持つ患者において、可溶性多
数エピトープ含有抗原にたいしてモノクロナール抗体を
注入することは、その抗原にたいする抗体を生成する
が、その際、この生成された抗体は、異なるエピトープ
にたいする抗体によって抑制される。
【0073】
【表1】
【0074】実施例2 製剤研究においては、血液標本について、MAb-B43.13注
入前、および注入後の選ばれた間隔で、CA125 濃度を分
析した。注入前に高いCA125 濃度を呈した患者において
は、MAb-B43.13注入直後に、循環CA125 濃度に著明な低
下が認められた(第2表)。これは明らかに、結合剤
は、体内に導入されるや否や、循環CA125と相互作用を
持ち、これを除去することを実証するものである。
【0075】
【表2】 さらに、抗体を含む複合体となった抗原は、免疫系に効
率的に呈示されるから、さらに優れた抗原特異的体液
性、および、細胞性反応を生成する。このことは、実施
例3および4の下記の実験で明らかにされる。
【0076】実施例3 Balb/cマウスを、PBS に溶解した10μg のMAb-B43.13の
i.v.注入、PBS に溶解した10,000単位のCA125 のi.v.注
入、または、PBS に溶解した10μg のMAb-B43.13と10,0
00単位のCA125 のi.v.注入のいずれかを、3週間に1
回、合計3回の注入で免疫化した。B43.13/CA125 の注
入比率は、高いCA125 濃度を呈した患者で観察されたも
のと同様であった。後者は、第2表に示す薬理動態学的
データに基づいて求めた。マウス血清で、抗CA125 抗体
濃度について分析してみると、抗原・抗体複合体を注入
したマウスが最も高い抗体価を示した。これらbalb/cマ
ウスにおける抗イディオタイプ誘発を、第1図にグラフ
として示す。この図は、結合剤−抗原相互作用は、結合
剤のみ、または、抗原のみに比べて、抗原特異的体液性
免疫応答をさらに改善するという観察事実を裏付けるも
のである。
【0077】実施例4 同様に、結合剤を、抗原と関連させてT細胞にたいして
呈示した場合にも、さらによい細胞性免疫応答が観察さ
れた。すなわち、マウスの腹腔から単離されたマクロフ
ァージを、MAb-B43.13のみ、CA125 のみ、MAb-B43.13-C
A125複合体、または、対照のMAb-CA125 で刺激し、CA12
5 特異的マウスT細胞(CA125を注入したマウスから単離
したもの)に呈示した。[3H]−サイミジン取り込みによ
ってT細胞の増殖をモニターすると、最適刺激示数は、
抗体・抗原複合体で刺激されたマクロファージの場合に
観察された(第2図)。
【0078】実施例5 実施例1の結論は、MAb-B43.13を注入した患者における
血清CA125 濃度と、ヒト抗CA125 抗体産生の間の相関を
観察することによってさらに裏付けることができる。そ
の所見を第3表に示すが、これは、血清中に結合剤が相
互作用を持つ抗原が存在すること、そのような相互作用
は、抗原特異的体液性反応を導く、という結論を支持す
る。
【表3】
【0079】実施例6 抗体注入の結果として、多数エピトープ含有性抗体反応
を誘発するにあたって、血清抗原が関わったのである
が、この役割は、ウサギの実験でさらに確認された。全
く血清CA125 を含まないウサギでも、MAb-B43.13を注入
されると、B27.1で抑制されない抗CA125 抗体を生成し
た。これと対照的に、高い血清濃度の抗原CA125 を持つ
卵巣癌患者は、MAb-B43.13の注入に応答して、B27.1 に
よって抑制可能な抗CA125 抗体を産生する。
【0080】実施例7 抗体注入による抗原特異的抗腫
瘍反応誘発に関する実験的証明。 ヒト抗CA125 抗体は、抗体依存性細胞性細胞傷害性("AD
CC")によって、細胞溶解を引き起こす。注入されたMAb-
B43.13は、それ自体、卵巣腫瘍細胞の、ADCCおよび・ま
たは補体依存性細胞溶解(“CDC") を招くものではない
けれども、MAb-B43.13を注入された患者における抗CA12
5 抗体の産生が腫瘍細胞の溶解を招く(第3図参照)。
これは、31クロム放出定量法を用いて、標識した卵巣腫
瘍細胞を、エフェクター細胞と、MAb-B43.13を注入した
6人の患者の血清と一緒にインキュベートして調べたも
のである。これは、結合剤の注入は、抗原との相互作用
をもたらし、その際、特異的体液性反応が、抗CA125 抗
体を導き、これが、ADCCを通じて腫瘍細胞の分解を招来
するという結論を支持する。この結果は明らかに、抗体
注入後に抗原特異的抗腫瘍反応を生成することを立証す
るものである。
【0081】実施例8 MAb-B43.13を注入した患者にお
けるCA125 特異的細胞傷害性Tリンパ球の産生。 CA125 を含む癌患者にたいして同様に結合剤を注入する
と、抗原特異的 CTLの産生を導く。MAb-B43.13を注入し
た8名の患者から得た抹消血単核球(PBMC)について、ク
ロム放出定量法を用いて、CA125 陽性、または、CA125
陰性卵巣腫瘍細胞にたいする細胞毒性の有無を調べた。
結果を第4表に示す。細胞分解の特異性は、MAb-B43.13
の、そのような分解にたいする抑制能力から、また、CA
125 陰性腫瘍細胞にたいする殺作用の欠除から確認され
た。MAb-B43.13の投与を受けた8名の患者の内、4名の
患者が(#5から#8まで)、その血液中にCA125 特異
的細胞傷害性Tリンパ球(CTL) を持つと判断された。CA
125 特異的CTL の産生は、患者における卵巣腫瘍細胞を
殺すようである。
【0082】
【表4】
【0083】実施例9 抗CA125 抗体介在性ADCC機構、または、CA125 特異的CL
T による腫瘍殺作用は、MAb-B43.13を注入された患者の
生存率の増加に導く。従来から血清CA125 が高濃度であ
ることは、予後の暗さを示す表示とされているけれど
も、そのような患者において抗CA125 抗体の注入と結び
つけられれば、その高濃度も好結果をもたらすかも知れ
ない。例えば、CA125 濃度が 100単位/ml を越える場
合、CA125 にたいする免疫応答は20%を越えて増加し、
それが次にそれら患者の延命率中央値を、39.1ヶ月から
54.5ヶ月に増加させる(第5表)。従って、高濃度の多
数エピトープ含有可溶性抗原を持つ患者にたいして結合
剤を注入すると、抗原特異的体液性および細胞性反応を
招き、それが次に腫瘍殺作用を招き、その後に生存率の
改善を招くという結果になる。
【表5】
【0084】実施例10 転移性疾患を持つ、ある膵臓癌患者にたいして、抗CA1
9.9抗体を含む組成物を反復注入した。この患者は、他
の治療は受けなかったが、最初の診断後22ヶ月生存した
(外科手術と注入の後19ヶ月)。これは、最初の診断後
6ヶ月の生存とされる、現在の生存期間推定値と対照的
である。
【0085】実施例11 当業者ならば、投与用量は、様々な状況によって、大き
く変わることがあることを了解している。下記は、予備
的な用量指針である。2mg用量のMAb-B43.13を最高10回
まで注入された 100名を越える患者について、回顧的な
分析を行なったところ、これらの患者の内の幾人かにつ
いて、a)予想外に長い生存時間で特徴づけられる、意外
な病気経過が見られること、および、b)重大な傷害性反
応や毒性が全く見られないこと、が明らかになった。
【0086】MAb-B43.13の体内における作用機構を理解
し、評価するために免疫学的研究を行なった。これらの
研究から、2mg用量のMAb-B43.13を注入された患者にお
いて抗イディオタイプ誘発の起こる程度は、注入回数
や、病気の臨床段階とは無関係であることが明らかにな
った。しかしながら、抗イディオタイプ誘発は、患者の
血清中に存在する循環CA125 の濃度には依存する。さら
に実験を続けたところ、相当の血清CA125 を持つ患者に
MAb-B43.13を注入すると、抗原・抗体複合体の形成を招
き、さらに抗原エピトープの呈示と、その腫瘍にたいす
る、抗原特異的体液性・細胞性反応を生ずることが証明
された。
【0087】これらの研究から、有効用量としては、可
能な循環 CA125抗原すべてを、免疫系に好適に輸送・呈
示するのに十分な量の抗体しか必要でないことが明らか
になった。インビトロ(試験管内)実験によって、1ng
のMAb-B43.13は、10単位のCA125 に結合することが示さ
れた。体重1kg当たり40mlの血漿を仮定すると、60kgの
患者に2mgのMAb-B43.13を注入することによって、血清
中のCA125 の約8,333U/ml が結合され得る。今日までに
調べた卵巣癌患者の全てにおいて、その血清中のCA125
は、8,333U/ml よりもはるかに低かったことからする
と、2mgのMAb-B43.13の注入は、必要な免疫応答を誘発
するには十分以上ということになる。さらに、病気を免
疫シンチグラフィー的に確認するために、放射線標識し
たMAB-B43.13を与えた患者において、画像の結果は、血
清CA125 は高いにも拘わらず見事なものであり、腫瘍に
よる特異的取り込みにたいして過剰なMAB-B43.13の存在
することを示していた。
【0088】さらに、選ばれた間隔で多数回注入を行な
うことは、患者にたいして最適効果をもたらすようであ
る。それは、CA125 が、病気の全経過を通じて生産され
ているからである。
【0089】最後に、回顧的な分析から、2mg用量は、
治療効果を持つらしいこと、患者(>100)のいずれも何ら
重大な副作用や、傷害性反応を示さないこと、が明らか
になった。もしも全HAMA反応が抗イディオタイプ誘発を
示すものであるとすると、2mg用量は、所期の治療効果
をもたらすのに十分なほど有意に高濃度の抗イディオタ
イプ抗体を産生する。選ばれた間隔で2mgのMAb-B43.13
を多数回注入することは、異性体性HAMA誘発性毒性を招
くことなく、抗イディオタイプ抗体を、好ましい治療濃
度に維持するようである。従って、MAb-B43.13の有効用
量、すなわち、治療的に受容可能な量の範囲は、2mgを
含むが、ただしこれに限定されない。
【0090】産業上の利用の可能性 本発明による結合剤を含む組成物は、本発明の結合剤の
内の少なくとも一つを、その免疫源的ないし治療的量を
含む組成物において特に有効となる。免疫源的ないし治
療的量とは、ホストの体液性、細胞性、または、体液・
細胞併合性の免疫反応を刺激する量である。ホスト免疫
反応は、腫瘍関連性抗原上において、結合剤の結合する
エピトープとは別のエピトープにたいする増加活性を含
む。本発明の組成物は、悪性腫瘍の発達の危険性のある
対象者にたいして、または、悪性腫瘍の診断を与えた対
象者にたいして、抗腫瘍ワクチンとして投与される。こ
れらの組成物は、免疫反応を惹起する製剤組成物を調製
するのに使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の組成物によってマウスを免疫化した
後に得られる結果が、その他の組成物と比較したときに
優れることを示す。
【図2】 本発明の組成物によるマクロファージ刺激作
用が、その他の組成物と比較したときに優れることを示
す。
【図3】 本発明の組成物を投与することによって招来
した腫瘍細胞溶解を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/50 G01N 33/50 Z 33/53 33/53 K 33/577 33/577 B // C07K 16/30 C07K 16/30 C12N 15/02 C12P 21/08 C12P 21/08 C12N 15/00 C (C12N 15/02 C12R 1:91) (C12P 21/08 C12R 1:91) (72)発明者 ノージェイム アントワーヌ エイ カナダ国 アルバータ ティー6エム 2 ケイ4 エドモントン ウィルキン ロー ド 58 (72)発明者 バーム リチャド ピー ドイツ国 60590 フランクフルト セオ ドールスターン−カイ 7 ヌクレアーメ ディジン ウニヴェルズィテーツクリーニ クム (72)発明者 シュルツ バルジット カナダ国 アルバータ ティー6イー 2 エイチ7エドモントン 84 アヴェニュー 10611 アパートメント 102

Claims (31)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホスト血清中に存在する多数エピトープ
    生体内抗原上の第1のエピトープに特異的な結合剤を含
    む治療用組成物であって、該抗原は有効なホスト免疫応
    答を惹起せず、該結合剤は抗原上の第1のエピトープに
    特異的に結合して結合剤/抗原ペアを形成し、それによ
    って有効なホストの免疫応答を抗原の第2のエピトープ
    に対して惹起する治療用組成物。
  2. 【請求項2】 ホスト血清中に存在する多数エピトープ
    生体内抗原上の第1のエピトープに特異的な結合剤を含
    む治療用組成物であって、該抗原は有効なホスト免疫応
    答を惹起せず、組成物中に存在する該結合剤はB43.
    13を含まず、かつ結合剤は抗原上の第1のエピト−プ
    に結合し結合剤/抗体ペア−を形成し、それによって有
    効なホストの免疫応答を抗原の第2のエピトープに対し
    て惹起する治療用組成物。
  3. 【請求項3】 前記ホスト免疫応答が、細胞性免疫応答
    及び体液性免疫応答とからなることを特徴とする請求項
    1または2に記載の治療用組成物。
  4. 【請求項4】 前記ホスト免疫応答が、細胞性免疫応答
    からなることを特徴とする請求項1または2に記載の治
    療用組成物。
  5. 【請求項5】 前記ホスト免疫応答が、体液性免疫応答
    とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の
    治療用組成物。
  6. 【請求項6】 前記多数エピトープ含有抗原は、可溶性
    抗原であることを特徴とする請求項1または2に記載の
    治療用組成物。
  7. 【請求項7】 前記可溶性抗原が、ヒトの病気あるいは
    症状と関連していることを特徴とする請求項6に記載の
    治療用組成物。
  8. 【請求項8】 前記結合剤が、抗体であることを特徴と
    する請求項1〜7のいずれかに記載の治療用組成物。
  9. 【請求項9】 前記抗体が、マウスのモノクロナール抗
    体であることを特徴とする請求項8に記載の治療用組成
    物。
  10. 【請求項10】 前記抗体が、ホスト中に同位体HAM
    A誘発同毒性を誘起しないことを特徴とする請求項9に
    記載の治療用組成物。
  11. 【請求項11】 前記結合剤が、B43.13であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の治療用組成物。
  12. 【請求項12】 前記結合剤が予め放射線に曝されてい
    ることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載
    の治療用組成物。
  13. 【請求項13】 結合剤が、予め紫外放射線に曝されて
    いることを特徴とする請求項12に記載の治療用組成
    物。
  14. 【請求項14】 前記抗体が、天然の抗体であることを
    特徴とする請求項8に記載の治療用組成物。
  15. 【請求項15】 前記抗原が、CA125であることを
    特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の治療用
    組成物。
  16. 【請求項16】 前記CA125のホスト血清中のレベ
    ルが、100U/mLより高いことを特徴とする請求項
    15に記載の治療用組成物。
  17. 【請求項17】 前記抗原が可溶循環性抗原であり、該
    結合剤は、全ての循環性抗原を免疫系に提示するのに十
    分な量で組成物中に存在していることを特徴とする請求
    項6乃至9のいずれかに記載の治療用組成物。
  18. 【請求項18】 ホストの体重1kg当たり0.1μg
    〜2mgの量で前記組成物中に結合剤が存在することを
    特徴とする請求項1あるいは2に記載の治療用組成物。
  19. 【請求項19】 ホストの体重1kg当たり1μg〜2
    00μgの量で前記組成物中に結合剤が存在することを
    特徴とする請求項1あるいは2に記載の治療用組成物。
  20. 【請求項20】 ホストの血液中に存在する多数エピト
    ープ抗原上のエピト−プに対して特異的な結合剤を含有
    する治療用組成物であって、該抗原はホスト免疫応答を
    惹起せず、結合剤は放射線でラベルされておらず、かつ
    ホストの体重1kg当たり0.1μg〜2mgの量で存
    在し、かつ該結合剤は該抗原の第1のエピトープに対し
    て特異的に結合し、抗原対を形成し、それによって抗原
    に対して免疫応答を誘発することを特徴とする治療用組
    成物。
  21. 【請求項21】 ホストの血清中に存在する多数エピト
    ープ生体内腫瘍完成性抗原上のエピトープに対して特異
    的な結合剤を含有する治療用組成物であって、該抗原は
    有効なホスト免疫応答を惹起せず、該結合剤はB43.
    13を含まず、かつホストの体重1kg当たり0.1μ
    g〜2mgの量で該組成物中に存在し、かつ該結合剤は
    抗原の第1のエピトープに対して特異的に結合し、結合
    剤/抗原対を形成し、それによって抗原に対して免疫応
    答を誘発することを特徴とする治療用組成物。
  22. 【請求項22】 結合剤を含有する前記組成物が、さら
    に1種類以上のアジュバント、1種類以上の搬送剤、1
    種類以上の賦形剤、1種類以上の安定化剤、1種類以上
    の撮影試薬、1種類以上の医薬的に許容される搬送剤及
    び/または生理学的に受容される食塩液を含むことを特
    徴とする請求項20または乃至21に記載の治療用組成
    物。
  23. 【請求項23】 前記ホスト免疫応答が、細胞性免疫応
    答及び体液性免疫応答とからなることを特徴とする請求
    項21または22に記載の治療用組成物。
  24. 【請求項24】 前記ホスト免疫応答が、細胞性免疫応
    答からなることを特徴とする請求項20または21に記
    載の癌治療用組成物。
  25. 【請求項25】 前記ホスト免疫応答が、体液性免疫応
    答とからなることを特徴とする請求項20または21に
    記載の癌治療用組成物。
  26. 【請求項26】 前記多数エピトープ含有抗原は、可溶
    性抗原であることを特徴とする請求項20または21に
    記載の癌治療用組成物。
  27. 【請求項27】 前記結合剤が、抗体であることを特徴
    とする請求項20または18に記載の癌治療用組成物。
  28. 【請求項28】 前記結合剤が、B43.13であるこ
    とを特徴とする請求項20に記載の癌治療用組成物。
  29. 【請求項29】 前記結合剤が予め放射線に曝されてい
    ることを特徴とする請求項20または21に記載の癌治
    療用組成物。
  30. 【請求項30】 前記抗原が、CA125であることを
    特徴とする請求項20または21に記載の癌治療用組成
    物。
  31. 【請求項31】 ホストの体重1kg当たり1μg〜2
    00μgの量で前記組成物中に結合剤が存在することを
    特徴とする請求項20あるいは21に記載の癌治療用組
    成物。
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