JP2001047354A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 ウェーハの研磨装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】 上面にウェーハを研磨する研磨面が形成された定盤と、
下面にウェーハが貼付されて該ウェーハの被研磨面を前記定盤の研磨面に当接させるキャリヤプレートに、上方から載置されて荷重を負荷し、前記ウェーハを前記定盤の研磨面に圧接させるトップリングと、
前記定盤と前記トップリングとを相対的に移動させ、前記定盤の研磨面に対して前記ウェーハの被研磨面を摺り合わせる相対運動機構とを備えるウェーハの研磨装置において、
前記キャリヤプレートの上面に載置される前記トップリングの下面に、リング状に形成されると共に同心状に設けられた複数のリング溝部と、
該複数のリング溝部のそれぞれに対応して弾性部材によって設けられ、各リング溝部を覆ってシールすると共に前記キャリヤプレートの上面に当接するように形成された各弾性リング部材と、
前記複数のリング溝部のそれぞれに対応して設けられ、該各リング溝部と前記各弾性リング部材によって形成される各リング状の圧力室に連通する各連通路と、
該各連通路のそれぞれに接続して設けられ、前記各リング状の圧力室に圧力を個々に調整して圧力流体を供給する各流体圧供給手段とを具備し、
外周側の前記弾性リング部材が、前記キャリヤプレートに複数のウェーハが円周に沿って保持された該ウェーハ列の外周部に沿う直径に相当する大きさに設けられ、内周側の前記弾性リング部材が、前記ウェーハ列の内周部に沿う直径に相当する大きさに設けられていることを特徴とするウェーハの研磨装置。
【請求項2】 前記弾性リング部材が、螺子等の止め付け部材によって前記トップリングの下面に固定されていることを特徴とする請求項1記載のウェーハの研磨装置。
【請求項3】 前記弾性リング部材が、該弾性リング部材の内外周に設けられた嵌め合い部によって、前記トップリングの下面に形成された被嵌め合い部に嵌ることで固定されていることを特徴とする請求項1記載のウェーハの研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウェーハの研磨装置に関し、さらに詳細には上面にウェーハを研磨する研磨面が形成された定盤と、下面にウェーハが貼付されて該ウェーハの被研磨面を前記定盤の研磨面に当接させるキャリヤプレートに、上方から当接して荷重を負荷し、前記ウェーハを前記定盤の研磨面に圧接させるトップリングと、前記定盤と前記トップリングとを相対的に移動させ、前記定盤の研磨面に対して前記ウェーハの被研磨面を摺り合わせる相対運動機構とを備えるウェーハの研磨装置に関する。
【0002】
近年、半導体装置の高集積化が進むことに伴い、その基材であるシリコンウェーハの平坦度や表面品質のさらなる向上が求められている。また、そのウェーハ表面にデバイスを形成した際の堆積形成された層間絶縁膜や金属配線の研磨においても、一層高精度に平坦化することが求められている。このため、ウェーハの研磨装置については、ウェーハの被研磨面(以下、「ウェーハ表面」ともいう)を一層高精度に鏡面研磨できること、又は、ウェーハ表面を基準とする高精度な研磨が可能であることが要求されている。また、半導体装置の分野に限定されることなく、他の技術分野においても高精密化に伴い、ウェーハ状ワークの表面加工精度の向上が求められている。
【0003】
【従来の技術】
従来、ウェーハ表面の全面を定盤の研磨面へ均等な圧力で押圧できるように、トップリングの下面にO−リングを装着し、そのO−リングを介してトップリングからキャリアプレートへ荷重が与えられるウェーハの研磨装置があった。
そして、トップリングによる加圧をより均一にする手段として、実公平4−40848号に、本願出願人によって開発されたポリシングマシンが開示されている。すなわち、図4に示すように、下面にウェーハ20を貼り付けたプレート(キャリヤプレート24)を、トップリング30によりターンテーブル(定盤10)の研磨面へ押圧しつつ研磨するポリシングマシンについて、トップリング30の下面にキャリヤプレート24の周縁部分を押圧するための筒状の当接部を形成し、トップリングの内側中央部に、キャリヤプレート24中央部を押圧するための押圧体80を、トップリング30と押圧体80との間に形成したシリンダ室82を介してトップリング30に対して相対的に接離可能、且つ離脱不能に設け、トップリング30にウエイト(重り40)を配置し、シリンダ室に流体を供給して押圧体80をキャリヤプレート24方向に押圧するための流体供給部84を備える。
【0004】
このポリシングマシンによれば、キャリヤプレート24の周縁部と中央部とのバランスを調整しつつ研磨することができる。従って、キャリヤプレート24の周縁部にかかる圧力を大きくしたり、或いは中央部にかかる圧力を大きくすることが可能であり、内摺り、外摺り等の片減りが生じても圧力バランスを調整してウェーハの研磨量を補正しつつ研磨することができ、より精度の良い研磨が可能となる。
なお、このウェーハの研磨装置によれば、トップリング30下面に形成された筒状の当接部にはリング状に溝86が形成され、その溝86内にO−リング88が嵌め込まれている。そして、そのO−リング88が直接的にキャリヤプレート24の上面に当接し、トップリング30から荷重がかけられる。また、前記押圧体80の下面においても溝87が形成され、その溝87内にO−リング89が嵌め込まれ、そのO−リング89が直接的にキャリヤプレート24の上面に当接し、押圧体80から荷重がかけられる。弾性体であるO−リング88、89によれば、荷重を好適に分散してキャリヤプレート24にかけることができ、キャリヤプレート24を均一に押圧してウェーハを精度よく研磨することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のウェーハの研磨装置では、偏荷重(圧力)が作用した場合、その圧力をO−リング88、89の全周で分散して受けることは難しい。すなわち、O−リング88、89は局所的に強く押圧されて変形しても、その部分から離れた他の部分は影響が及ばず、変形しない場合がある。このため、ウェーハの全面を均一に押圧できず、ウェーハの研磨精度を向上できないという課題がある。
また、トップリング30の下面に設けられた溝86、及び押圧体の下面に形成された溝87に、O−リング88、89を均一な伸び状態で装着することが極めて難しく、それが原因してウェーハの研磨精度を向上できないという課題もあった。
すなわち、O−リング88、89を均一な伸び状態で装着できないと、O−リング88、89の弾性性能が不均一になり、O−リング88、89を介してキャリヤプレート24の全周について均一に押圧できないことになり、ウェーハをより高精度に研磨できない。
【0006】
また、上記のウェーハの研磨装置では、押圧体80にかかる下方への移動長さは非常に小さいにもかかわらず、トップリング30内にシリンダ室82を設け、押圧体80が摺動できるように構成するなど、複雑な構造になるという課題もあった。また、押圧体80はシリンダ室82内で摺動するピストンの摺動を介して作動するが、その摺動抵抗によって応答性を向上させることが難しいという課題もあった。
また、トップリング30下面の外周に設けられた筒状の当接部(リング状の溝86内)にはO−リング88が嵌め込まれているが、トップリング30へ負荷する圧力を積極的に調整できるものではない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡単な構成からなり、トップリングからキャリヤプレートに与えられる荷重をキャリヤプレートの全面について均一に分散させ、ウェーハの全面を極めて均一に研磨面に押圧し、ウェーハの研磨精度のさらなる向上ができるウェーハの研磨装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、上面にウェーハを研磨する研磨面が形成された定盤と、下面にウェーハが貼付されて該ウェーハの被研磨面を前記定盤の研磨面に当接させるキャリヤプレートに、上方から載置されて荷重を負荷し、前記ウェーハを前記定盤の研磨面に圧接させるトップリングと、前記定盤と前記トップリングとを相対的に移動させ、前記定盤の研磨面に対して前記ウェーハの被研磨面を摺り合わせる相対運動機構とを備えるウェーハの研磨装置において、前記キャリヤプレートの上面に載置される前記トップリングの下面に、リング状に形成されると共に同心状に設けられた複数のリング溝部と、該複数のリング溝部のそれぞれに対応して弾性部材によって設けられ、各リング溝部を覆ってシールすると共に前記キャリヤプレートの上面に当接するように形成された各弾性リング部材と、前記複数のリング溝部のそれぞれに対応して設けられ、該各リング溝部と前記各弾性リング部材によって形成される各リング状の圧力室に連通する各連通路と、該各連通路のそれぞれに接続して設けられ、前記各リング状の圧力室に圧力を個々に調整して圧力流体を供給する各流体圧供給手段とを具備し、外周側の前記弾性リング部材が、前記キャリヤプレートに複数のウェーハが円周に沿って保持された該ウェーハ列の外周部に沿う直径に相当する大きさに設けられ、内周側の前記弾性リング部材が、前記ウェーハ列の内周部に沿う直径に相当する大きさに設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、前記弾性リング部材が、螺子等の止め付け部材によって前記トップリングの下面に固定されていることで、弾性リング部材を特殊な形状に成形することを要せず、確実にシールして装着できる。
【0010】
また、前記弾性リング部材が、該弾性リング部材の内外周に設けられた嵌め合い部によって、前記トップリングの下面に形成された被嵌め合い部に嵌ることで固定されていることで、容易に装着することが可能となり、製造効率及び保守効率を向上できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるウェーハの研磨装置の好適な実施の形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明にかかるウェーハの研磨装置の一実施例を説明する断面図であり、図2は図1の実施例の作動状態を模式的に説明する断面図である。なお、図2では弾性リング部材52、54のトップリング30に対する固定方法を省略して図示してある。また、図1の実施例は、ウェーハの研磨装置の代表例である、いわゆるバッチ式のウェーハのポリシングマシン(ポリシング装置)であり、半導体装置の材料として用いられる複数のシリコンウェーハを同時に研磨する装置の一部を示している。
【0012】
10は定盤であり、上面にウェーハ20を研磨する研磨面12が形成されている。ポリシング装置の場合は、平坦に形成された定盤10の表面に研磨布が貼付されて、研磨面が形成される。
24はキャリヤプレートであり、下面26にウェーハ20が貼付され、そのウェーハ20の被研磨面22を定盤10の研磨面12に当接させる。本実施例では、接着剤によって、ウェーハ20がキャリヤプレート24の下面26に接着されて貼付されている。なお、このキャリヤプレート24は、平坦精度が高く、変形しにくい材質であることが要求され、一般に、ガラス或いはセラミックス材によって形成されている。
【0013】
30はトップリングであり、キャリヤプレート24に上方から載置されて荷重を負荷し、そのキャリヤプレートの下面26に貼付されたウェーハ20を定盤の研磨面12に圧接させる。
40は重りであり、トップリング30に荷重を与えるように、トップリング30上に段積み状態に載置されている。
【0014】
なお、図示していないが、相対運動機構によって、定盤10とトップリング30とを相対的に移動させ、定盤の研磨面12に対してウェーハ20の被研磨面22が摺り合わせられる。
相対運動機構としては、例えば、定盤10を自転させる回転駆動機構と、その定盤の運動に伴って自転可能に保持されたトップリング30の保持機構との組み合わせ、或いは、その組み合わせに加えて揺動運動(往復運動)又は自転しない旋回運動との組み合わせによって、両者を相対的に移動させることが可能な機構を構成することができる。
【0015】
32、34はリング溝部であり、複数が、キャリヤプレート24の上面25に載置されるトップリング30の下面31に、リング状に形成されると共に同心状に設けられている。本実施例では、同心円状に、内周のリング溝部32と外周のリング溝部34との2重に設けられているが、3重以上に設けてもよいのは勿論である。
また、リング溝部が1重の場合も、詳細については後述するが、一定の効果を奏することができる。
【0016】
52、54は弾性リング部材であり、複数が、複数のリング溝部32、34のそれぞれに対応して弾性部材によって設けられ、各リング溝部32、34を覆ってシールすると共にキャリヤプレート24の上面25に当接するように形成されている。
本実施例では2重に設けられた内周のリング溝部32と外周のリング溝部34に対応し、内周の弾性リング部材52と外周の弾性リング部材54の2重に設けられている。
本実施例の弾性リング部材52、54は、リング溝部32、34を好適に覆うと共に下方(キャリヤプレート24の上面側)へ膨出変形可能に膜板状に形成され、キャリヤプレート24の上面に当接する膜板状部55を備える。
弾性部材としては、通常、合成ゴムを用いることができるが、他の材質で形成されたものを用いることができる。例えば、合成樹脂は勿論のこと、金属材であっても、蛇腹状に成形することなどによって膨出変形可能になったものを用いることもできる。
【0017】
また、本実施例では、弾性リング部材52、54が、止め付け部材である螺子によってトップリングの下面31に固定されている。これによれば、弾性リング部材52、54を特殊な形状に成形することを要せず、確実にシールして装着できる。
なお、弾性リング部材52、54のシール形態は、これに限定されるものではなく、下方へ向けて膨出変形可能に、シール(気密又は液密)が確実にとれて、脱落しないように固定される形態であればよい。
【0018】
例えば、図3に示すように、各弾性リング部材52、54の内外周に設けられた嵌め合い部56、57によって、トップリングの下面31に形成された被嵌め合い部36、37に嵌ることで固定されても良い。さらに詳細には、本実施例のように、嵌め合い部56、57と被嵌め合い部36、37とによる内外周両側の嵌め込み形状が、断面アリ溝構造になっている。これによれば、脱落を防止できると共に容易に装着することが可能となり、製造効率及び保守効率を向上できる。
また、弾性リング部材52、54としては、本実施例のようにリング溝部32、34を覆う膜板状部55を備える形状に限定されるものではない。例えば、中空なチューブ状の弾性リング部材でもよく、リング状に圧力室が形成され、キャリヤプレートの上面25に当接する当接部があればよい。このリング状の圧力室は、リング状のエアーバックと表現することができる。
【0019】
66、68は連通路であり、複数が、複数のリング溝部32、34のそれぞれに対応して設けられ、各リング溝部32、34と各弾性リング部材52、54によって形成される各リング状の圧力室62、64に連通する。
【0020】
72、74は流体圧供給手段であり、複数が、各連通路66、68のそれぞれに接続して設けられ、各リング状の圧力室62、64に圧力を個々に調整して圧力流体を供給する。
また、70はディストリビュータであり、トップリング30が自転しても圧力流体の圧力室62、64への供給が継続的になされるように、連通路66、68の中途部に設けられている。
なお、流体圧供給手段72、74の圧力流体の圧力を調整する圧力調整手段は、流体圧供給手段72、74を構成するコンプレッサ装置等に内臓されて設けられるものでも良いし、各連通路66、68中に圧力調整用のレギュレータが設けられることで構成されても良い。
圧力流体としては、通常は空気圧(気体圧)を用いるが、これに限定されるものではなく、水圧又は油圧等の液体圧を用いても良いのは勿論である。
【0021】
また、本実施例では、キャリヤプレート24の下面26の円周等分位置に複数のウェーハ20が貼付されている。そして、図示していないが、そのキャリヤプレート24が複数、定盤10上の円周等分位置に配されるウェーハの研磨装置に構成されている。すなわち、いわゆるバッチ式のウェーハの研磨装置として構成されている。
【0022】
また、本実施例では、弾性リング部材52、54が内外2重に設けられ、外周の弾性リング部材54が、キャリヤプレート24の複数のウェーハ20が円周に沿って保持されたウェーハ列の外周部に沿う直径に相当する大きさに設けられ、内周の弾性リング部材52が、キャリヤプレート24の複数のウェーハ20が円周に沿って保持されたウェーハ列の内周部に沿う直径に相当する大きさに設けられている。
これにより、ウェーハ20の全面について均等に荷重(押圧力)をかけることが、より好適にできるようになり、ウェーハ20の研磨精度をより向上させることができる。
【0023】
また、ウェーハの研磨装置の構成としては、下面26にウェーハ20が貼付されたキャリヤプレート24の給排のため、トップリング30を吊り上げることが可能な昇降装置、トップリング30に荷重を負荷する重り40、スラリーと呼ばれる液状研磨剤の供給装置等が存在するが、公知の技術であるため説明を省略する。
なお、トップリング30に荷重をかける加圧手段としては、重り40に限定されるものではなく、シリンダ装置による流体圧力を利用したものなどであっても良い。
また、本発明は、以上に説明したような、いわゆるバッチ式のウェーハの研磨装置に限らず、ウェーハを一枚ずつ加工する、いわゆる枚葉式のウェーハの研磨装置にも好適に適用できるのは勿論であり、ウェーハの研磨装置の構成についても、以上に説明したような構成を適宜選択的に組み合わせて採用すれば良い。
【0024】
次に、本発明にかかるウェーハの研磨装置の作動状況について図2に基づいて説明する。
先ず、図2(a)に示すように、キャリヤプレート24を移動して、ウェーハ20を定盤の研磨面12上に位置させ、そのキャリヤプレート24上に重り40が重ねられて載置されたトップリング30を載置する。
そして、図2(b)に示すように、圧力室62、64へ流体圧供給手段72、74によって所定圧力の流体を供給する。このときの流体の圧力は、重り40が載せられたトップリング30の重量(荷重)に対応するもので、弾性リング部材52、54が若干膨張し、キャリヤプレート24を押圧し、トップリング30の母材の下面31が、定盤の研磨面12から若干浮き上がる程度であれば効果的である。すなわち、重り40を若干浮かす程度に圧力室62、64に圧力流体が供給されればよい。
【0025】
各圧力室62、64に供給される圧力流体は流体であるためパスカルの原理で圧力が均一に作用し、弾性リング部材52、54の全周について均一にキャリヤプレート24を押圧することができる。
また、弾性リング部材52、54は、通常、合成ゴムのような弾性部材によって形成され、摩擦抵抗が大きいので、トップリング30とキャリヤプレート24との相互間で滑ることはなく、両者は一体化して回転(自転)する。これに対し、ウェーハの被研磨面である表面22と定盤の研磨面12との摩擦抵抗は小さいので、相互間で滑ることになり、磨り合わせ状態になって、ウェーハの表面22が好適に研磨される。
なお、トップリング30は、上方で保持された状態にはなく、単純にキャリヤプレート24上に載っている状態であり、そのキャリヤプレート24と共に定盤10の研磨面12上に移動可能に載置された状態になる。
【0026】
以上のような構成を備えるウェーハの研磨装置によれば、トップリング30によって弾性リング部材52、54を介し、圧力流体の作用でキャリヤプレート24の全周を均一に押圧できるため、ウェーハの表面22を定盤の研磨面12へ均一の押圧力で好適に押圧できる。従って、簡単な構成によって、ウェーハ20が片減りすることを防止でき、極めて高い精度の研磨加工をすることができる。
そして、従来のようにリング溝部にO−リングを押し込んで装着する場合と異なり、弾性リング部材52、54でリング溝部32、34を覆うように取り付ければよいから、弾性リング部材52、54を不均一に伸ばしてしまうことがなく、容易且つ適切に装着できる。
【0027】
また、トップリングの下面31全面を弾性部材で覆い、その弾性部材でキャリヤプレート24の全面を押圧する全面エアーバック方式の場合に比べ、弾性リング部材52、54がそのドーナツ状の内外周側縁の両方でトップリングの下面31に装着されているため、横揺れを好適に防止できる。従って、ウェーハの表面22をより安定的に研磨できる。
また、各圧力室62、64の容積を小さくすることができるため、少量の圧力流体を供給することで所望の圧力を得ることができ、応答性を向上できる。従って、圧力の変動を随時吸収して均一にキャリヤプレート24を押圧することができる。
以上の効果は、リング溝部32、34と弾性リング部材52、54とによって設けられるリング状の圧力室62、64の数に関係なく、リング状の圧力室62、64が一つの場合も含めて共通して得られ、これによって研磨精度を向上させることができる。
【0028】
また、各圧力室62、64に連通する連通路66、68がそれぞれ設けられ、圧力調整手段によって、それぞれの圧力室62、64へ供給する流体の圧力を調整することができる。これによって、本実施例のように、2重に圧力室62、64が形成された場合には、ウェーハ20へ負荷される圧力をキャリヤプレート24の内周部と外周部のそれぞれについて部分的に変更して研磨条件を調整でき、より高精度の研磨加工を行うことができる。すなわち、キャリヤプレート24の内周部側と外周部側で押圧力を可変できるので、ウェーハ20の内摺り、外摺りの度合いを調整するための制御が好適にでき、温度変化等による種々の研磨条件の変化に対応し、ウェーハ20を平坦且つ好適に研磨加工できる。
【0029】
なお、ウェーハ20をキャリヤプレート24に貼付するには、本実施例の場合のように通常は接着剤(ワックス)によって貼着することが多いが、水貼り、真空(減圧)吸引による方法も公知であり、適宜選択的に採用すればよい。
また、以上に説明したウェーハの研磨装置によれば、シリコンウェーハの他にウェーハ状のワーク(例えばガラス薄板材、水晶等の硬脆性薄板材の表面)も好適に研磨することができる。
以上、本発明の好適な実施例について種々述べてきたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内でさらに多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、リング溝部と弾性リング部材とによって設けられる圧力室に圧力流体を供給することで、トップリングによって弾性リング部材を介し、圧力流体の作用でキャリヤプレートの全周を均一に押圧できる。
このため、キャリヤプレートの下面に貼付されたウェーハの被研磨面を、定盤の研磨面へ、均一の押圧力で好適に押圧できる。従って、簡単な構成によって、ウェーハが片減りすることを防止でき、極めて高い精度の研磨加工を行うことができるという著効を奏する。
また、圧力室が複数設けられ、各圧力室に連通する連通路がそれぞれ設けられた場合は、圧力調整手段によって、それぞれの圧力室へ供給する流体の圧力を調整することができる。これによれば、ウェーハへ負荷される圧力をキャリヤプレートの内周部側と外周部側のそれぞれについて部分的に変更して研磨条件を調整でき、より高精度の研磨加工を行うことができるという著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明にかかるウェーハの研磨装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】
図1の実施例の作動状態を模式的に説明する断面図である。
【図3】
本発明にかかるウェーハの研磨装置の他の実施例を示す断面図である。
【図4】
従来の技術を示す断面図である。
【符号の説明】
10 定盤
12 研磨面
20 ウェーハ
22 被研磨面
24 キャリヤプレート
30 トップリング
32、34 リング溝部
40 重り
52、54 弾性リング部材
62、64 圧力室
66、68 連通路
72、74 流体圧供給手段
【発明の名称】 ウェーハの研磨装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】 上面にウェーハを研磨する研磨面が形成された定盤と、
下面にウェーハが貼付されて該ウェーハの被研磨面を前記定盤の研磨面に当接させるキャリヤプレートに、上方から載置されて荷重を負荷し、前記ウェーハを前記定盤の研磨面に圧接させるトップリングと、
前記定盤と前記トップリングとを相対的に移動させ、前記定盤の研磨面に対して前記ウェーハの被研磨面を摺り合わせる相対運動機構とを備えるウェーハの研磨装置において、
前記キャリヤプレートの上面に載置される前記トップリングの下面に、リング状に形成されると共に同心状に設けられた複数のリング溝部と、
該複数のリング溝部のそれぞれに対応して弾性部材によって設けられ、各リング溝部を覆ってシールすると共に前記キャリヤプレートの上面に当接するように形成された各弾性リング部材と、
前記複数のリング溝部のそれぞれに対応して設けられ、該各リング溝部と前記各弾性リング部材によって形成される各リング状の圧力室に連通する各連通路と、
該各連通路のそれぞれに接続して設けられ、前記各リング状の圧力室に圧力を個々に調整して圧力流体を供給する各流体圧供給手段とを具備し、
外周側の前記弾性リング部材が、前記キャリヤプレートに複数のウェーハが円周に沿って保持された該ウェーハ列の外周部に沿う直径に相当する大きさに設けられ、内周側の前記弾性リング部材が、前記ウェーハ列の内周部に沿う直径に相当する大きさに設けられていることを特徴とするウェーハの研磨装置。
【請求項2】 前記弾性リング部材が、螺子等の止め付け部材によって前記トップリングの下面に固定されていることを特徴とする請求項1記載のウェーハの研磨装置。
【請求項3】 前記弾性リング部材が、該弾性リング部材の内外周に設けられた嵌め合い部によって、前記トップリングの下面に形成された被嵌め合い部に嵌ることで固定されていることを特徴とする請求項1記載のウェーハの研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウェーハの研磨装置に関し、さらに詳細には上面にウェーハを研磨する研磨面が形成された定盤と、下面にウェーハが貼付されて該ウェーハの被研磨面を前記定盤の研磨面に当接させるキャリヤプレートに、上方から当接して荷重を負荷し、前記ウェーハを前記定盤の研磨面に圧接させるトップリングと、前記定盤と前記トップリングとを相対的に移動させ、前記定盤の研磨面に対して前記ウェーハの被研磨面を摺り合わせる相対運動機構とを備えるウェーハの研磨装置に関する。
【0002】
近年、半導体装置の高集積化が進むことに伴い、その基材であるシリコンウェーハの平坦度や表面品質のさらなる向上が求められている。また、そのウェーハ表面にデバイスを形成した際の堆積形成された層間絶縁膜や金属配線の研磨においても、一層高精度に平坦化することが求められている。このため、ウェーハの研磨装置については、ウェーハの被研磨面(以下、「ウェーハ表面」ともいう)を一層高精度に鏡面研磨できること、又は、ウェーハ表面を基準とする高精度な研磨が可能であることが要求されている。また、半導体装置の分野に限定されることなく、他の技術分野においても高精密化に伴い、ウェーハ状ワークの表面加工精度の向上が求められている。
【0003】
【従来の技術】
従来、ウェーハ表面の全面を定盤の研磨面へ均等な圧力で押圧できるように、トップリングの下面にO−リングを装着し、そのO−リングを介してトップリングからキャリアプレートへ荷重が与えられるウェーハの研磨装置があった。
そして、トップリングによる加圧をより均一にする手段として、実公平4−40848号に、本願出願人によって開発されたポリシングマシンが開示されている。すなわち、図4に示すように、下面にウェーハ20を貼り付けたプレート(キャリヤプレート24)を、トップリング30によりターンテーブル(定盤10)の研磨面へ押圧しつつ研磨するポリシングマシンについて、トップリング30の下面にキャリヤプレート24の周縁部分を押圧するための筒状の当接部を形成し、トップリングの内側中央部に、キャリヤプレート24中央部を押圧するための押圧体80を、トップリング30と押圧体80との間に形成したシリンダ室82を介してトップリング30に対して相対的に接離可能、且つ離脱不能に設け、トップリング30にウエイト(重り40)を配置し、シリンダ室に流体を供給して押圧体80をキャリヤプレート24方向に押圧するための流体供給部84を備える。
【0004】
このポリシングマシンによれば、キャリヤプレート24の周縁部と中央部とのバランスを調整しつつ研磨することができる。従って、キャリヤプレート24の周縁部にかかる圧力を大きくしたり、或いは中央部にかかる圧力を大きくすることが可能であり、内摺り、外摺り等の片減りが生じても圧力バランスを調整してウェーハの研磨量を補正しつつ研磨することができ、より精度の良い研磨が可能となる。
なお、このウェーハの研磨装置によれば、トップリング30下面に形成された筒状の当接部にはリング状に溝86が形成され、その溝86内にO−リング88が嵌め込まれている。そして、そのO−リング88が直接的にキャリヤプレート24の上面に当接し、トップリング30から荷重がかけられる。また、前記押圧体80の下面においても溝87が形成され、その溝87内にO−リング89が嵌め込まれ、そのO−リング89が直接的にキャリヤプレート24の上面に当接し、押圧体80から荷重がかけられる。弾性体であるO−リング88、89によれば、荷重を好適に分散してキャリヤプレート24にかけることができ、キャリヤプレート24を均一に押圧してウェーハを精度よく研磨することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のウェーハの研磨装置では、偏荷重(圧力)が作用した場合、その圧力をO−リング88、89の全周で分散して受けることは難しい。すなわち、O−リング88、89は局所的に強く押圧されて変形しても、その部分から離れた他の部分は影響が及ばず、変形しない場合がある。このため、ウェーハの全面を均一に押圧できず、ウェーハの研磨精度を向上できないという課題がある。
また、トップリング30の下面に設けられた溝86、及び押圧体の下面に形成された溝87に、O−リング88、89を均一な伸び状態で装着することが極めて難しく、それが原因してウェーハの研磨精度を向上できないという課題もあった。
すなわち、O−リング88、89を均一な伸び状態で装着できないと、O−リング88、89の弾性性能が不均一になり、O−リング88、89を介してキャリヤプレート24の全周について均一に押圧できないことになり、ウェーハをより高精度に研磨できない。
【0006】
また、上記のウェーハの研磨装置では、押圧体80にかかる下方への移動長さは非常に小さいにもかかわらず、トップリング30内にシリンダ室82を設け、押圧体80が摺動できるように構成するなど、複雑な構造になるという課題もあった。また、押圧体80はシリンダ室82内で摺動するピストンの摺動を介して作動するが、その摺動抵抗によって応答性を向上させることが難しいという課題もあった。
また、トップリング30下面の外周に設けられた筒状の当接部(リング状の溝86内)にはO−リング88が嵌め込まれているが、トップリング30へ負荷する圧力を積極的に調整できるものではない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡単な構成からなり、トップリングからキャリヤプレートに与えられる荷重をキャリヤプレートの全面について均一に分散させ、ウェーハの全面を極めて均一に研磨面に押圧し、ウェーハの研磨精度のさらなる向上ができるウェーハの研磨装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、上面にウェーハを研磨する研磨面が形成された定盤と、下面にウェーハが貼付されて該ウェーハの被研磨面を前記定盤の研磨面に当接させるキャリヤプレートに、上方から載置されて荷重を負荷し、前記ウェーハを前記定盤の研磨面に圧接させるトップリングと、前記定盤と前記トップリングとを相対的に移動させ、前記定盤の研磨面に対して前記ウェーハの被研磨面を摺り合わせる相対運動機構とを備えるウェーハの研磨装置において、前記キャリヤプレートの上面に載置される前記トップリングの下面に、リング状に形成されると共に同心状に設けられた複数のリング溝部と、該複数のリング溝部のそれぞれに対応して弾性部材によって設けられ、各リング溝部を覆ってシールすると共に前記キャリヤプレートの上面に当接するように形成された各弾性リング部材と、前記複数のリング溝部のそれぞれに対応して設けられ、該各リング溝部と前記各弾性リング部材によって形成される各リング状の圧力室に連通する各連通路と、該各連通路のそれぞれに接続して設けられ、前記各リング状の圧力室に圧力を個々に調整して圧力流体を供給する各流体圧供給手段とを具備し、外周側の前記弾性リング部材が、前記キャリヤプレートに複数のウェーハが円周に沿って保持された該ウェーハ列の外周部に沿う直径に相当する大きさに設けられ、内周側の前記弾性リング部材が、前記ウェーハ列の内周部に沿う直径に相当する大きさに設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、前記弾性リング部材が、螺子等の止め付け部材によって前記トップリングの下面に固定されていることで、弾性リング部材を特殊な形状に成形することを要せず、確実にシールして装着できる。
【0010】
また、前記弾性リング部材が、該弾性リング部材の内外周に設けられた嵌め合い部によって、前記トップリングの下面に形成された被嵌め合い部に嵌ることで固定されていることで、容易に装着することが可能となり、製造効率及び保守効率を向上できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるウェーハの研磨装置の好適な実施の形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明にかかるウェーハの研磨装置の一実施例を説明する断面図であり、図2は図1の実施例の作動状態を模式的に説明する断面図である。なお、図2では弾性リング部材52、54のトップリング30に対する固定方法を省略して図示してある。また、図1の実施例は、ウェーハの研磨装置の代表例である、いわゆるバッチ式のウェーハのポリシングマシン(ポリシング装置)であり、半導体装置の材料として用いられる複数のシリコンウェーハを同時に研磨する装置の一部を示している。
【0012】
10は定盤であり、上面にウェーハ20を研磨する研磨面12が形成されている。ポリシング装置の場合は、平坦に形成された定盤10の表面に研磨布が貼付されて、研磨面が形成される。
24はキャリヤプレートであり、下面26にウェーハ20が貼付され、そのウェーハ20の被研磨面22を定盤10の研磨面12に当接させる。本実施例では、接着剤によって、ウェーハ20がキャリヤプレート24の下面26に接着されて貼付されている。なお、このキャリヤプレート24は、平坦精度が高く、変形しにくい材質であることが要求され、一般に、ガラス或いはセラミックス材によって形成されている。
【0013】
30はトップリングであり、キャリヤプレート24に上方から載置されて荷重を負荷し、そのキャリヤプレートの下面26に貼付されたウェーハ20を定盤の研磨面12に圧接させる。
40は重りであり、トップリング30に荷重を与えるように、トップリング30上に段積み状態に載置されている。
【0014】
なお、図示していないが、相対運動機構によって、定盤10とトップリング30とを相対的に移動させ、定盤の研磨面12に対してウェーハ20の被研磨面22が摺り合わせられる。
相対運動機構としては、例えば、定盤10を自転させる回転駆動機構と、その定盤の運動に伴って自転可能に保持されたトップリング30の保持機構との組み合わせ、或いは、その組み合わせに加えて揺動運動(往復運動)又は自転しない旋回運動との組み合わせによって、両者を相対的に移動させることが可能な機構を構成することができる。
【0015】
32、34はリング溝部であり、複数が、キャリヤプレート24の上面25に載置されるトップリング30の下面31に、リング状に形成されると共に同心状に設けられている。本実施例では、同心円状に、内周のリング溝部32と外周のリング溝部34との2重に設けられているが、3重以上に設けてもよいのは勿論である。
また、リング溝部が1重の場合も、詳細については後述するが、一定の効果を奏することができる。
【0016】
52、54は弾性リング部材であり、複数が、複数のリング溝部32、34のそれぞれに対応して弾性部材によって設けられ、各リング溝部32、34を覆ってシールすると共にキャリヤプレート24の上面25に当接するように形成されている。
本実施例では2重に設けられた内周のリング溝部32と外周のリング溝部34に対応し、内周の弾性リング部材52と外周の弾性リング部材54の2重に設けられている。
本実施例の弾性リング部材52、54は、リング溝部32、34を好適に覆うと共に下方(キャリヤプレート24の上面側)へ膨出変形可能に膜板状に形成され、キャリヤプレート24の上面に当接する膜板状部55を備える。
弾性部材としては、通常、合成ゴムを用いることができるが、他の材質で形成されたものを用いることができる。例えば、合成樹脂は勿論のこと、金属材であっても、蛇腹状に成形することなどによって膨出変形可能になったものを用いることもできる。
【0017】
また、本実施例では、弾性リング部材52、54が、止め付け部材である螺子によってトップリングの下面31に固定されている。これによれば、弾性リング部材52、54を特殊な形状に成形することを要せず、確実にシールして装着できる。
なお、弾性リング部材52、54のシール形態は、これに限定されるものではなく、下方へ向けて膨出変形可能に、シール(気密又は液密)が確実にとれて、脱落しないように固定される形態であればよい。
【0018】
例えば、図3に示すように、各弾性リング部材52、54の内外周に設けられた嵌め合い部56、57によって、トップリングの下面31に形成された被嵌め合い部36、37に嵌ることで固定されても良い。さらに詳細には、本実施例のように、嵌め合い部56、57と被嵌め合い部36、37とによる内外周両側の嵌め込み形状が、断面アリ溝構造になっている。これによれば、脱落を防止できると共に容易に装着することが可能となり、製造効率及び保守効率を向上できる。
また、弾性リング部材52、54としては、本実施例のようにリング溝部32、34を覆う膜板状部55を備える形状に限定されるものではない。例えば、中空なチューブ状の弾性リング部材でもよく、リング状に圧力室が形成され、キャリヤプレートの上面25に当接する当接部があればよい。このリング状の圧力室は、リング状のエアーバックと表現することができる。
【0019】
66、68は連通路であり、複数が、複数のリング溝部32、34のそれぞれに対応して設けられ、各リング溝部32、34と各弾性リング部材52、54によって形成される各リング状の圧力室62、64に連通する。
【0020】
72、74は流体圧供給手段であり、複数が、各連通路66、68のそれぞれに接続して設けられ、各リング状の圧力室62、64に圧力を個々に調整して圧力流体を供給する。
また、70はディストリビュータであり、トップリング30が自転しても圧力流体の圧力室62、64への供給が継続的になされるように、連通路66、68の中途部に設けられている。
なお、流体圧供給手段72、74の圧力流体の圧力を調整する圧力調整手段は、流体圧供給手段72、74を構成するコンプレッサ装置等に内臓されて設けられるものでも良いし、各連通路66、68中に圧力調整用のレギュレータが設けられることで構成されても良い。
圧力流体としては、通常は空気圧(気体圧)を用いるが、これに限定されるものではなく、水圧又は油圧等の液体圧を用いても良いのは勿論である。
【0021】
また、本実施例では、キャリヤプレート24の下面26の円周等分位置に複数のウェーハ20が貼付されている。そして、図示していないが、そのキャリヤプレート24が複数、定盤10上の円周等分位置に配されるウェーハの研磨装置に構成されている。すなわち、いわゆるバッチ式のウェーハの研磨装置として構成されている。
【0022】
また、本実施例では、弾性リング部材52、54が内外2重に設けられ、外周の弾性リング部材54が、キャリヤプレート24の複数のウェーハ20が円周に沿って保持されたウェーハ列の外周部に沿う直径に相当する大きさに設けられ、内周の弾性リング部材52が、キャリヤプレート24の複数のウェーハ20が円周に沿って保持されたウェーハ列の内周部に沿う直径に相当する大きさに設けられている。
これにより、ウェーハ20の全面について均等に荷重(押圧力)をかけることが、より好適にできるようになり、ウェーハ20の研磨精度をより向上させることができる。
【0023】
また、ウェーハの研磨装置の構成としては、下面26にウェーハ20が貼付されたキャリヤプレート24の給排のため、トップリング30を吊り上げることが可能な昇降装置、トップリング30に荷重を負荷する重り40、スラリーと呼ばれる液状研磨剤の供給装置等が存在するが、公知の技術であるため説明を省略する。
なお、トップリング30に荷重をかける加圧手段としては、重り40に限定されるものではなく、シリンダ装置による流体圧力を利用したものなどであっても良い。
また、本発明は、以上に説明したような、いわゆるバッチ式のウェーハの研磨装置に限らず、ウェーハを一枚ずつ加工する、いわゆる枚葉式のウェーハの研磨装置にも好適に適用できるのは勿論であり、ウェーハの研磨装置の構成についても、以上に説明したような構成を適宜選択的に組み合わせて採用すれば良い。
【0024】
次に、本発明にかかるウェーハの研磨装置の作動状況について図2に基づいて説明する。
先ず、図2(a)に示すように、キャリヤプレート24を移動して、ウェーハ20を定盤の研磨面12上に位置させ、そのキャリヤプレート24上に重り40が重ねられて載置されたトップリング30を載置する。
そして、図2(b)に示すように、圧力室62、64へ流体圧供給手段72、74によって所定圧力の流体を供給する。このときの流体の圧力は、重り40が載せられたトップリング30の重量(荷重)に対応するもので、弾性リング部材52、54が若干膨張し、キャリヤプレート24を押圧し、トップリング30の母材の下面31が、定盤の研磨面12から若干浮き上がる程度であれば効果的である。すなわち、重り40を若干浮かす程度に圧力室62、64に圧力流体が供給されればよい。
【0025】
各圧力室62、64に供給される圧力流体は流体であるためパスカルの原理で圧力が均一に作用し、弾性リング部材52、54の全周について均一にキャリヤプレート24を押圧することができる。
また、弾性リング部材52、54は、通常、合成ゴムのような弾性部材によって形成され、摩擦抵抗が大きいので、トップリング30とキャリヤプレート24との相互間で滑ることはなく、両者は一体化して回転(自転)する。これに対し、ウェーハの被研磨面である表面22と定盤の研磨面12との摩擦抵抗は小さいので、相互間で滑ることになり、磨り合わせ状態になって、ウェーハの表面22が好適に研磨される。
なお、トップリング30は、上方で保持された状態にはなく、単純にキャリヤプレート24上に載っている状態であり、そのキャリヤプレート24と共に定盤10の研磨面12上に移動可能に載置された状態になる。
【0026】
以上のような構成を備えるウェーハの研磨装置によれば、トップリング30によって弾性リング部材52、54を介し、圧力流体の作用でキャリヤプレート24の全周を均一に押圧できるため、ウェーハの表面22を定盤の研磨面12へ均一の押圧力で好適に押圧できる。従って、簡単な構成によって、ウェーハ20が片減りすることを防止でき、極めて高い精度の研磨加工をすることができる。
そして、従来のようにリング溝部にO−リングを押し込んで装着する場合と異なり、弾性リング部材52、54でリング溝部32、34を覆うように取り付ければよいから、弾性リング部材52、54を不均一に伸ばしてしまうことがなく、容易且つ適切に装着できる。
【0027】
また、トップリングの下面31全面を弾性部材で覆い、その弾性部材でキャリヤプレート24の全面を押圧する全面エアーバック方式の場合に比べ、弾性リング部材52、54がそのドーナツ状の内外周側縁の両方でトップリングの下面31に装着されているため、横揺れを好適に防止できる。従って、ウェーハの表面22をより安定的に研磨できる。
また、各圧力室62、64の容積を小さくすることができるため、少量の圧力流体を供給することで所望の圧力を得ることができ、応答性を向上できる。従って、圧力の変動を随時吸収して均一にキャリヤプレート24を押圧することができる。
以上の効果は、リング溝部32、34と弾性リング部材52、54とによって設けられるリング状の圧力室62、64の数に関係なく、リング状の圧力室62、64が一つの場合も含めて共通して得られ、これによって研磨精度を向上させることができる。
【0028】
また、各圧力室62、64に連通する連通路66、68がそれぞれ設けられ、圧力調整手段によって、それぞれの圧力室62、64へ供給する流体の圧力を調整することができる。これによって、本実施例のように、2重に圧力室62、64が形成された場合には、ウェーハ20へ負荷される圧力をキャリヤプレート24の内周部と外周部のそれぞれについて部分的に変更して研磨条件を調整でき、より高精度の研磨加工を行うことができる。すなわち、キャリヤプレート24の内周部側と外周部側で押圧力を可変できるので、ウェーハ20の内摺り、外摺りの度合いを調整するための制御が好適にでき、温度変化等による種々の研磨条件の変化に対応し、ウェーハ20を平坦且つ好適に研磨加工できる。
【0029】
なお、ウェーハ20をキャリヤプレート24に貼付するには、本実施例の場合のように通常は接着剤(ワックス)によって貼着することが多いが、水貼り、真空(減圧)吸引による方法も公知であり、適宜選択的に採用すればよい。
また、以上に説明したウェーハの研磨装置によれば、シリコンウェーハの他にウェーハ状のワーク(例えばガラス薄板材、水晶等の硬脆性薄板材の表面)も好適に研磨することができる。
以上、本発明の好適な実施例について種々述べてきたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内でさらに多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、リング溝部と弾性リング部材とによって設けられる圧力室に圧力流体を供給することで、トップリングによって弾性リング部材を介し、圧力流体の作用でキャリヤプレートの全周を均一に押圧できる。
このため、キャリヤプレートの下面に貼付されたウェーハの被研磨面を、定盤の研磨面へ、均一の押圧力で好適に押圧できる。従って、簡単な構成によって、ウェーハが片減りすることを防止でき、極めて高い精度の研磨加工を行うことができるという著効を奏する。
また、圧力室が複数設けられ、各圧力室に連通する連通路がそれぞれ設けられた場合は、圧力調整手段によって、それぞれの圧力室へ供給する流体の圧力を調整することができる。これによれば、ウェーハへ負荷される圧力をキャリヤプレートの内周部側と外周部側のそれぞれについて部分的に変更して研磨条件を調整でき、より高精度の研磨加工を行うことができるという著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明にかかるウェーハの研磨装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】
図1の実施例の作動状態を模式的に説明する断面図である。
【図3】
本発明にかかるウェーハの研磨装置の他の実施例を示す断面図である。
【図4】
従来の技術を示す断面図である。
【符号の説明】
10 定盤
12 研磨面
20 ウェーハ
22 被研磨面
24 キャリヤプレート
30 トップリング
32、34 リング溝部
40 重り
52、54 弾性リング部材
62、64 圧力室
66、68 連通路
72、74 流体圧供給手段
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