JP2001045897A - ササ培養方法及び緑地形成方法 - Google Patents

ササ培養方法及び緑地形成方法

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JP2001045897A
JP2001045897A JP11218461A JP21846199A JP2001045897A JP 2001045897 A JP2001045897 A JP 2001045897A JP 11218461 A JP11218461 A JP 11218461A JP 21846199 A JP21846199 A JP 21846199A JP 2001045897 A JP2001045897 A JP 2001045897A
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sasa
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Yumiko Watanabe
弓子 渡辺
Toyoki Kozai
豊樹 古在
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Free Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のササ培養方法は、順化期の移植後に光
合成を十分行えず成長が抑制されてしまうという問題点
があり、ササ培養体の光合成能力を活性化し、根の発達
を促進させて移植後の成長抑制を防ぎ、活着率を向上さ
せ、植栽作業を効率的に行うことができるササ培養方法
及び緑地形成方法を提供する。 【解決手段】 ササ培養体の成長期に無糖培地を用い、
成長期及び順化期にCO 濃度1500μmol mol-1
上、PPF180μmolm-2 s-1以上の環境条件とし、成
長期に支持材としてバーミキュライトを用いてササを培
養するササ培養方法としており、また、順化期に、複数
のポット部が2次元的に配列されたコンテナに培養体を
移植して栽培し、コンテナ毎植栽する緑地形成方法とし
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ササ苗を大量に生
産する植物組織培養を用いたササ培養方法及び緑地形成
方法に係り、特に順化期における移植後の成長抑制を防
いで活着率を向上させることができ、大面積の場所に迅
速に苗を植栽できるササ培養方法及び緑地形成方法を提
供する。
【0002】
【従来の技術】従来、ササ苗生産は、自然環境下で、1
本の地下茎を数本に切り分けてその各々から苗を増殖さ
せる栄養増殖が行われている。切り分けに適した時期
は、気温が高くなり、地下茎が成長して定芽をつける頃
から定芽が地上に出るまでの間に行う必要があり、関東
地方では11月から4月までが切り分けの時期となる。
【0003】この方法では、増殖を年に1度しか行えな
いために苗の増殖速度が小さく(生産速度:年間約10
0苗/m2)、広大な面積に植栽するのに十分な数の苗
を供給することは困難である。
【0004】そこで、ササ苗生産の別の方法として、植
物組織培養が提案されている。従来の植物組織培養(組
織培養)を用いたササ培養方法について図6を用いて説
明する。図6は、従来のササ培養方法を示す説明図であ
る。図6に示すように、ササの組織培養は、ササ組織片
からシュート塊を増殖させる増殖期、増殖したシュート
塊を分割して外植体として培養器内で成長させる成長
期、培養体を培養器外の環境に慣らしていく順化期の3
つの期間に分けられる。
【0005】まず、増殖期には、環境条件をコントロー
ルできる培養室(人工気象器)1内にて、光源(白色蛍
光灯)2からの光量や温度、湿度等を適切に設定し、培
養室1内に設置した培養器3′内にて、糖と植物成長調
整物質である6-benzylaminopurine(BA)を添加した
液体培地を用いてササの地下茎を培養し、シュートを増
殖させてシュートの集合体(シュート塊)を生成する。
次に、植物成長調整物質であるindol-3-butyric acid
(IBA)を添加した培地を用いてシュート塊を発根さ
せる。
【0006】そして、発根したシュートの基部を分割し
て培養器3′に1つずつ植え付け、培養室1内に設置し
て成長させる。増殖期及び成長期に用いる培養器3′
は、換気用穴(換気穴)が1つ開けられたものを用いて
いる。培養室1内の環境条件は、大気中と同様のCO
濃度(400μmol mol-1)で、光量は、光合成有効光
量子束(PPF)100μmol m-2 s-1の低光量として
いる。湿度(相対湿度)は70〜80パーセント程度で
ある。
【0007】次に、培養器3′から取りだして培養土を
入れたポット(またはトレー)4に植え付け(移植)、
培養室1内にて更に成長させると共に培養器3′外の環
境に慣れさせる(順化期)。
【0008】その後、培養体を培養室1の外にて栽培を
続け、外部環境に適応可能な大きさに成長した培養体を
所望の場所に植え付けて(定植)、緑地の形成を行う。
従来の緑地の形成方法は、培養した苗を1苗ずつポット
から手作業にて取りだして植え付けを行うようになって
いる。
【0009】尚、植物組織培養の従来技術としては、平
成6年9月20日公開の特開平6−261645号「培
養由来幼植物体の育成方法」(出願人:株式会社ナーサ
リーテクノロジー、発明者:瀬古往子他)がある。この
従来技術は、幼植物体の育苗の初期段階の終了時におけ
る二酸化炭素濃度が特定濃度以上となるように二酸化炭
素を育苗開始時に封入した閉鎖的気相空間内において幼
植物体を培養する培養由来幼植物体の育成方法であり、
これにより、特別な無菌空間や二酸化炭素を気相内に通
気する大がかりな装置を必要とせず、経済性、簡便性、
及び作業安全性に優れる植物苗を作出できるものであ
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のササ培養方法によれば、培養体が、成長に必要な炭
素源を培地中に添加した糖に依存してしまうため、光合
成能力が発達せず、移植後に十分な光合成を行うことが
できずに、成長が抑制され、活着率が低下してしまうと
いう問題点があった。
【0011】また、上記従来のササ培養方法によれば、
培養器に換気用穴が1つしか設けられていないために、
換気が不十分で培養器内の湿度が高く、培養体の葉のク
チクラワックス層が発達せず表皮が薄くなり、培養器外
に移植した後、低湿度環境に適応できずに培養体の成長
が抑制され、活着率が低下するという問題点があった。
【0012】更に、従来のササ培養方法によれば、発根
を促進する植物成長物質を添加した液体培地を用いてい
るため、根の根毛が発達せず、順化期に培養土へ移植す
ると培養土中の水分を吸収することができず、成長が抑
制されたり枯死してしまい、活着率が低下するという問
題点があった。
【0013】更にまた、従来の緑地形成方法では、培養
した苗を1つずつポットから取りだして手作業で植え付
けを行わなければならず、広範囲にわたって植栽を行う
場合には、膨大な労力と時間がかかるという問題点があ
った。
【0014】本発明は上記実情に鑑みて為されたもの
で、移植後の枯死や成長抑制を防ぎ、活着率を向上させ
ることができるササ培養方法及び苗の植え付け作業の能
率を大幅に向上させることができる緑地形成方法を提供
することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記従来例の問題点を解
決するための本発明は、成長期に培地として糖無添加の
培地を用い、成長期及び順化期に、培養室内の二酸化炭
素濃度を1500μmol mol-1以上、光合成有効光量子
束(PPF)を180μmol m-2 s-1以上の環境条件下
で培養体を培養するササ培養方法としており、培養体が
成長に必要な糖を培地に依存できないため必然的に光合
成能力が活性化し、また、二酸化炭素濃度及び光量をサ
サの光合成に適した環境条件として更に光合成を促進す
ることにより、培養土への移植後も、培養体が順調に光
合成を行って成長を続けることができ、移植後の成長抑
制を防ぎ、活着率を向上させることができる。
【0016】本発明は、成長期に、培地と、培養体を支
持する支持材としてのバーミキュライトとの混合物を入
れた培養器中にてササを培養するササ培養方法としてい
るので、バーミキュライトの粒子間に適度な大きさの空
隙ができ、植物成長調整物質を添加しなくても、ササ培
養体の根及び根毛が発達して、培養土に移植した後も十
分吸水することができ、移植後の成長抑制や枯死を防
ぎ、活着率を向上させることができる。
【0017】また、本発明は、培養器内の湿度が培養室
内の湿度に近くなるように換気される培養器にて培養体
を培養するササ培養方法としているので、培養器内の湿
度を低く抑えることにより葉の表皮層を発達させ、気孔
の開閉能力及び蒸散作用を活性化することができる。
【0018】更に、本発明は、順化期に、培養体を培養
可能な凹部を2次元的に複数配列したコンテナに培養体
を移植して栽培し、培養体の成長後、培養体をコンテナ
ごと所望の場所に植栽する緑地形成方法としているの
で、苗を一つずつ栽培ポットから取り出して植え付ける
作業が不要となり、一度に広い面積にササを植栽するこ
とができ、植栽作業の効率を大幅に向上させることがで
きる。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について図面
を参照しながら説明する。本発明に係るササ培養方法
は、培養体の成長期に無糖培地を用い、成長期及び順化
期に、ササの光合成に適した環境条件にて培養すること
により、培養体自身の光合成能力を活性化し、また、支
持材としてバーミキュライトを用いて発根を促進し、更
に培養器の換気口を増やすことにより培養器内の換気を
促進して低湿度環境とし、順化期における成長抑制を防
ぎ、活着率を向上させることができるものである。
【0020】また、本発明に係る緑地形成方法は、順化
期のササ培養体を栽培する際に、育苗用のポットを2次
元的に複数つなげてマット状または多段式に形成した大
型のコンテナにて栽培しておき、苗が十分成長したらコ
ンテナごと所望の場所に植え付けるようにしており、植
え付けに要する労力と時間を大幅に低減することができ
るものである。
【0021】本発明の実施の形態に係るササ培養方法
(本培養方法)について図1を用いて具体的に説明す
る。図1は、本発明の実施の形態に係るササ培養方法
(本培養方法)を示す説明図である。図1に示すよう
に、本培養方法の基本的な流れは従来のササ培養方法と
同様であり、光源(白色蛍光灯)2により人工光を照射
可能な培養室1内に設置した培養器3内にて増殖させた
ササのシュート塊を分割し、培養器3内で成長させ、そ
の後培養器3外の環境に順化させるものである。そし
て、本方法は、増殖期の培養方法は従来と同様である
が、成長期と順化期の培養方法を従来と異なるものとし
ている。
【0022】本培養方法では、成長期において、培養体
が成長に必要な炭素を培養体自身の光合成にて取得する
独立栄養となるように、培地として無糖培地を用いるも
のとした点が特徴となっている。それと共に、ササの光
合成能力を最大限に引き出して成長を促進させるため
に、ササ培養体の純光合成速度が最大となる環境条件を
求め、成長期及び順化期には求められた環境条件にて培
養を行うようにした点が特徴となっている。環境条件に
ついては後で詳細に説明する。
【0023】これにより、炭素源は空気中のCOとな
り、ササは、COから光合成により同化を行うことに
なるため光合成能力が活性化され、また、環境条件を純
光合成速度が最大となるように整えることにより、糖が
添加されていなくても植物体の成長に必要な炭素は十分
まかなえるものである。そして、培養器3内にある時期
から十分な光合成を行うことにより、順化期において培
養器3外に移植した場合でも、それまでと同様に光合成
を行って成長を続けることができるものである。
【0024】更に、本培養方法では、成長期において、
成長や発根を促進するための植物成長調整物質は添加せ
ず、その代わりに支持材としてバーミキュライトを用い
る点が特徴となっている。バーミキュライトは、ヒル石
を焼成して薄板状に剥離したもので、培養土の肥持ちや
水はけをよくするために用いられる調整用土であり、珪
酸含有量が多く、珪酸植物であるササの支持材として適
当であると考えられる。
【0025】本培養方法では、バーミキュライト中に液
体培地を注入したものを培養器3内に入れ、これに培養
体を植え付けて培養する。バーミキュライトを支持体に
用いた培地は通気性がよく、根の発達に必要な空気を十
分含むことができるため、根の成長が促進され、根毛も
発達することができるものである。そのため、順化期に
おいて培養土に移植しても発達した根毛から十分な吸水
を行うことができ、成長抑制や枯死は発生しないもので
ある。
【0026】更にまた、本培養方法では、成長期におい
て用いる培養器3の換気用穴を増やして培養器3内の換
気を促進し、培養器3内の湿度を培養室1内と同程度に
低く保つ点が特徴となっており、葉の表皮組織を低湿度
に耐え得るよう十分発達させると共に、蒸散作用を活性
化させることができるものである。
【0027】ここで、ササ植物体の純光合成速度が最大
となる環境条件を求める方法について具体的に説明す
る。純光合成速度に影響を与える因子であるCO濃度
と光合成有効光量子束(PPF)を変えて、ササ植物体
の純光合成速度を算出し、最適なCO濃度及びPPF
を求めた。ササとしてはオロシマチク(Pleioblastus p
ygmaea Miff.,cv.Orosimatiku)を用いた。
【0028】まず、培養器内外のCO濃度をガスクロ
マトグラフを用いて測定し、純光合成速度を[数1]
(富士原ら,1987)で算定した。測定は、無糖培
地、気温25℃、湿度80%の条件で行った。
【0029】
【数1】
【0030】[数1]において、Pnは純光合成速度、
Kは換算係数(μmol cm-3)、Nは培養器の換気回数
(h-1)、Vは培養器の空気容積(cm3)、Coutは培養
器外のCO濃度(μmol mol-1)、Cinは培養器内の
CO濃度(μmol mol-1)である。
【0031】更に、さまざまなPPFにおける純光合成
速度(Pn)と培養器内のCO濃度(Cin)との関係
を[数2]のパラメータを最小二乗法で算定することに
より求める。
【0032】
【数2】
【0033】[数2]において、PmはCO飽和点に
おけるPn、fcはCO補償点におけるCin−Pn曲線
の傾き、CcはCO補償点を示している。
【0034】解析結果を図2〜図5に示す。図2は、光
合成有効光量子束(PPF)32(μmol m-2 s-1)に
おける培養器内のCO濃度と純光合成速度との関係を
示すグラフ図であり、図3は、PPF102(μmol m
-2 s-1)における培養器内のCO濃度と純光合成速度
との関係を示すグラフ図であり、図4は、PPF180
(μmol m-2 s-1)における培養器内のCO濃度と純
光合成速度との関係を示すグラフ図であり、図5は、P
PF320(μmol m-2 s-1)における培養器内のCO
濃度と純光合成速度との関係を示すグラフ図である。
【0035】図2〜図5に示すように、いずれのPPF
においても、CO濃度500μmol mol-1以下におい
ては呼吸によるCO放出が光合成によるCO同化を
上回っているため、見かけ上の光合成速度はほとんど0
であり、500μmol mol-1を過ぎるとCO濃度に応
じて光合成速度も増加していく。そして、CO濃度が
2000μmol mol-1以上になると、純光合成速度の増
加率が減少し、次第に頭打ちになる可能性が大きいこと
がわかる。従って、CO濃度は2000μmol mol-1
以上とすれば、どのようなPPF条件であっても、当該
PPF条件においてほぼ最大の光合成速度が得られると
考えられる。
【0036】ちなみに、従来の環境条件である大気中の
CO濃度は約400μmol mol-1であり、成長期のサ
サ培養体の場合、この濃度では、PPFの値に関わら
ず、呼吸によるCO放出が光合成によるCO同化を
上回っている。
【0037】また、PPFを大きくした場合も純光合成
速度は大きくなるが、PPF180μmol m-2 s-1とP
PF320μmol m-2 s-1でのCO濃度2000μmol
mol- 1における純光合成速度を比較すると、あまり大き
な差がないことがわかる。高いPPFを得るためには照
明コストがかかることを考慮すると、PPFが180μ
mol m-2 s-1以上でも光合成能力は十分活性化できると
考えられる。
【0038】そこで、本方法では、成長期におけるササ
の光合成を促進するためには、CO 濃度1500μmo
l mol- 以上、PPF180μmol m-2 s-1以上を適切
な環境条件とし、CO濃度2000μmol mol- ±1
0%、PPF200μmol m- 2 s-1±10%を最適な環
境条件とした。以下に示す本方法の実験例では、CO
濃度2000μmol mol- 、PPF200μmol m-2 s
-1の条件を用いている。
【0039】次に、本発明のササ培養方法を用いた実験
例について説明する。まず、従来と同様の方法によりサ
サシュート塊を生成し、基部を分割して複数のシュート
小塊(生体重:0.9-1.0g)を得る。得られたシュート小
塊を培地を入れた培養器に植え付け、人工気象器内で成
長期の培養を行う。比較のために半数は本発明の方法で
培養し、残りの半数は従来の培養方法にて培養した。
【0040】ここで、表1を用いて本発明のササ培養方
法の環境条件を従来の培養方法と比較しながら説明す
る。表1は、従来のササ培養方法と本方法の成長期にお
ける環境条件を示した説明図である。
【0041】
【表1】
【0042】表1に示すように、本発明の培養方法で
は、培地としては糖を添加しないMS(Murashige and
Skoog 1962)培地を用い、成長及び発根を促進する植物
成長調整物質を無添加とし、支持材としてバーミキュラ
イトを用いる。支持材のバーミキュライトは、5mm四方
の目のふるいでふるった後、60℃の恒温乾燥機内に2
4時間置いたものを1培養器あたり10gずつ入れる。
バーミキュライトを入れた培養器にMS培地を40mlず
つ分注した後、培養器ごと121℃で20分間の蒸気加
圧滅菌する。
【0043】本培養方法に用いられる培養器3は、ポリ
カーボネート製容器であり、培養器3の側面上部には直
径10mmの穴が3つ開けられ、通気性フィルタが貼られ
ている。通気性フィルタは微生物を通さず通気のみを行
って、培養器3内の無菌状態を保持できるものである。
【0044】換気用穴を多くすることにより、換気量を
増やして培養器内の湿度を低下させ、また、光合成によ
って消費されたCOを培養器3外(培養室1内)から
供給することができるものである。換気を良好にするに
は、換気用穴を複数にするほか、換気用穴を大きくす
る、ファンを回す等が考えられる。
【0045】そして、クリーンベンチ内でシュート小塊
を各培養器に1つずつ植え付け(培養開始0日目)、培
養室内で40日間培養する。培養室1内の環境条件はC
濃度2000μmol mol-1、PPFは200μmol m
-2 s-1とする。但し、急激な環境の変化を避けるため
に、培養開始0日目から3日目までは培養器の換気用穴
は1つ、PPFは100μmol m-2 s-1とし、4日目以
降上記の条件とする。4日目以降の環境条件は、ササの
特性によって決まる最適条件であり、純光合成速度を最
大にするものである。
【0046】そして、本培養方法と従来の方法とを比較
するために、成長期40日目における成長の具合と光合
成能力とを調べた。結果は後で説明する。
【0047】次に、順化期に移行して、培養開始40日
目にササ培養体を培養器から取りだして、根を水で洗っ
た後、市販の培養土(ヤンマー農機(株)、ナプラ用
土)を充填したトレー(190×145×25mm)に移
植する(移植後0日目)。移植後ササ培養体を表1に示
した環境条件下で25日間成長させる。毎日トレー当た
り40mlの灌水をする。但し、順化期においてはバーミ
キュライトは用いないものとする。このようにして、本
発明の実施の形態に係るササ培養方法が行われるもので
ある。
【0048】一方、従来のササ培養方法では、成長期に
おいては、有糖MS培地を用い、培養器の換気用穴1
つ、PPF100μmol m-2 s-1、CO無施用、支持
材無しの環境条件としており、順化期においては、培養
土を用い、PPF100μmolm-2 s-1、CO無施用
(400μmol mol-1)の環境条件で培養している。
【0049】また、本培養方法において、培養苗が緑地
形成に用いられることを考慮して、培養体を移植する際
に、トレーではなくより大型のコンテナに移植すること
も可能である。コンテナは、例えば、培養体を移植可能
なポット状の凹部(ポット部)が2次元的に複数配列さ
れており、順化期の培養体を各ポット部に移植して成長
させるものが考えられる。
【0050】ここで、コンテナは紙又は木又は布又は金
網若しくはこれらの組み合わせから成るもので、なるべ
く土壌内で分解される材料及び構造とすることが好まし
い。また、ササは根が横に張るので、横方向に隙間の多
い構造とすれば根の成長を阻害することが少なくより好
ましいと考えられる。
【0051】そして、本発明の実施の形態に係る緑地形
成方法は、このコンテナを用いたものであり、コンテナ
内で培養した苗が十分成長した場合には、植栽しようと
する場所にコンテナ毎取り付ければよい。このようにす
れば、ポットから1つずつ苗を取り出す必要が無く、能
率的に植栽作業を行うことができるものである。また、
コンテナの材質や形状を機械化に対応できるものにすれ
ば、植栽作業を機械化することができ、植栽作業を大幅
に効率化することができるものである。
【0052】また、植栽場所が斜面等の場合には、コン
テナにおけるポット部を多段式に配列して、段の角度を
斜面の角度に合わせて自由に変えられるようにしておく
ことも可能である。
【0053】次に、上述した成長期の実験結果について
表2を用いて説明する。表2は、成長期40日目におけ
るササ培養体のシュートと根の乾物重及び純光合成速度
を表したものである。試験区A区は本培養方法により培
養された培養体、試験区C区は従来の方法により培養さ
れた培養体の結果である。シュート乾物重及び根乾物重
はシュート及び根の成長量を示すものであり、純光合成
速度は光合成能力を示すものである。
【0054】
【表2】
【0055】表2に示すように、本培養方法を施したA
区の培養体の純光合成速度は、従来の方法であるC区の
培養体の約10倍と有意に大となった。また、根乾物重
はA区の培養体がC区の培養体の15倍と、有意に大と
なった。このことから、光合成能力を活性化し、植物成
長調整物質を添加せず、バーミキュライトを支持材とし
て用いた本培養方法は、十分根の発達を促進することが
明らかとなった。但し、シュート乾物重は従来の方法に
よるC区の方が大であり、成長期におけるシュート成長
量は従来の培養方法のほうが大きい傾向がある。
【0056】次に、順化期の実験結果について表3を用
いて説明する。表3は、移植後25日目における増加総
生体重を示すものである。ここで、増加総生体重は、移
植後25日目における培養体あたりの総生体重から移植
後0日目における培養体あたりの総生体重を差し引いた
ものである。
【0057】
【表3】
【0058】従来の方法によるC区の培養体の増加総生
体重は−90mgであり、移植直後に比べて総生体重が減
少しており、移植後に成長が著しく阻害されていること
がわかる。これに対して、本培養方法を施したA区では
5080mg増加しており、移植によって成長が阻害され
ることなく順調に生育を続けたことが認められる。ま
た、シュートの成長も、成長期(移植直後)にはC区の
方が良好であったが、移植後25日目にはA区がC区を
上回っていることが認められた。
【0059】すなわち、本培養方法では、成長期から光
合成能力が活性化しており、それに加えて根の根毛や葉
のクチクラワックス層が十分発達したために、移植後も
根からの水分吸収や葉からの蒸散作用が阻害されること
なく活発に作用して、十分に光合成を行うことができ、
これにより移植後も順調に成長を続けたと考えられるも
のである。
【0060】本発明の実施の形態に係るササ培養方法
(本培養方法)によれば、ササ培養体の成長期に無糖培
地を用い、成長期及び順化期に、CO濃度2000μ
mol mol-1以上、PPF180μmol m-2 s-1以上の環境
条件にて培養するようにしているので、光合成に適した
環境条件を与えることによりササ培養体の光合成能力を
活性化して、培地からの糖に依存しない独立栄養の確立
を促進することができ、順化期における移植後の成長抑
制を防ぐことができ、活着率を向上させることができる
効果がある。
【0061】また、本培養方法によれば、支持材として
バーミキュライト用いているので、液体培地のみの場合
と比較して、培地中に空気を含む空隙が多いため、根の
成長が促進されると共に、根毛が十分発達し、順化期に
土壌へ移植した後も十分水分吸収を行うことができ、活
着率を向上させることができる効果がある。
【0062】更に、本培養方法によれば、成長期におけ
る培養器の換気用穴を3個に増やしたので、培養器内の
換気が促進され、湿度が高くなりすぎないため、葉のク
チクラワックス層を発達させ、蒸散作用を促進させ、気
孔開閉能力を向上させることができる効果がある。
【0063】従って本培養方法によれば、植物体自身の
水分吸収/蒸散能力、気体の吸収/排出能力を活性化す
ることにより、光合成機能を向上させることができ、順
化期に培養器外に移植した後も成長が抑制されず、順調
に成長することができる効果がある。
【0064】また、本培養方法によれば、培養体の順化
期の活着率を向上させることができるので、ササ苗の生
産速度を向上させることができ(432苗/m2
年)、ササ苗を大量に生産して大面積に植栽できる効果
がある。
【0065】また、本発明の実施の形態に係る緑地形成
方法によれば、順化期の培養体を、苗を2次元的に複数
植え付け可能なコンテナに移植して、コンテナ内にて複
数の苗を育苗し、苗が成長した場合には、コンテナ毎所
望の場所に取り付けて緑地を形成するようにしており、
苗の植え付け作業の能率を大幅に向上させることがで
き、緑地形成を容易に行うことができる効果がある。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、成長期及び順化期に、
培地として糖無添加の培地を用い、培養室内の二酸化炭
素濃度を1500μmol mol-1以上、光合成有効光量子
束(PPF)を180μmol m-2 s-1以上の環境条件下
で培養するササ培養方法としているので、培養体が成長
に必要な糖を培地に依存できないため必然的に光合成能
力が活性化し、また、二酸化炭素濃度及び光量をササの
光合成に適した環境条件として更に光合成を促進するこ
とにより、培養土への移植後も、培養体が順調に光合成
を行って成長を続けることができ、移植後の成長抑制を
防ぎ、活着率を向上させることができる効果がある。
【0067】本発明によれば、成長期に、培地と、培養
体を支持する支持材としてのバーミキュライトとの混合
物を入れた培養器中にてササを培養するササ培養方法と
しているので、バーミキュライトの粒子間に適度な大き
さの空隙ができ、植物成長調整物質を添加しなくても、
ササ培養体の根及び根毛が発達して、培養土に移植した
後も十分吸水することができ、移植後の成長抑制や枯死
を防ぎ、活着率を向上させることができる効果がある。
【0068】本発明によれば、培養器内の湿度が培養室
内の湿度に近くなるように換気される培養器にて培養体
を培養するササ培養方法としているので、培養器内の湿
度を低く抑えることにより葉の表皮層を発達させ、気孔
の開閉能力及び蒸散作用を活性化することができる効果
がある。
【0069】本発明によれば、順化期に、培養体を培養
可能な凹部を2次元的に複数配列したコンテナに培養体
を移植して栽培し、培養体の成長後、培養体をコンテナ
ごと所望の場所に植栽する緑地形成方法としているの
で、苗を一つずつ栽培ポットから取り出して植え付ける
作業が不要となり、一度に広い面積にササを植栽するこ
とができ、植栽作業の効率を大幅に向上させることがで
きる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るササ培養方法(本方
法)を示す説明図である。
【図2】光合成有効光量子束(PPF)32(μmol m
-2 s-1)における培養器内のCO濃度と純光合成速度
との関係を示すグラフ図である。
【図3】PPF102(μmol m-2 s-1)における培養
器内のCO濃度と純光合成速度との関係を示すグラフ
図である。
【図4】PPF180(μmol m-2 s-1)における培養
器内のCO濃度と純光合成速度との関係を示すグラフ
図である。
【図5】PPF320(μmol m-2s-1)における培養器
内のCO濃度と純光合成速度との関係を示すグラフ図
である。
【図6】従来のササ培養方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1…培養室、 2…光源、 3…培養器、 4…ポット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2B022 AB20 BA01 BA04 BA13 BA21 BA23 DA01 DA15 DA19 EA01 2B030 AA02 AB03 AD06 CD14 CD28 4B065 AA89X BB31 BC34 BC36 BC39 BC48 CA53

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ササを植物組織培養にて増殖させる増殖
    期と、培養室に設置され、栄養成分を含む培地が注入さ
    れた培養器中にて前記増殖で得られた培養体を成長させ
    る成長期と、前記成長した培養体を培養土に移植して前
    記培養器外の環境に順応させる順化期とにわたってササ
    を培養するササ培養方法において、 前記成長期に前記培地として糖無添加の培地を用い、前
    記成長期及び前記順化期に、前記培養室内の環境条件
    を、二酸化炭素濃度を1500μmol mol-1以上、光合
    成有効光量子束(PPF)を180μmol m-2 s-1以上
    として、前記環境条件下で前記培養体を培養することを
    特徴とするササ培養方法。
  2. 【請求項2】 成長期及び順化期に、培養室内の環境条
    件を二酸化炭素濃度を2000μmol mol-1以上、光合
    成有効光量子束(PPF)を200μmol m-2s-1以上と
    して、前記環境条件下で前記培養体を培養することを特
    徴とする請求項1記載のササ培養方法。
  3. 【請求項3】 成長期に、培地と、培養体を支持する支
    持材としてのバーミキュライトとの混合物を入れた培養
    器中にてササを培養することを特徴とする請求項1又は
    請求項2記載のササ培養方法。
  4. 【請求項4】 成長期に、培養器内の湿度が培養室内の
    湿度に近くなるように換気される培養器にて培養体を培
    養することを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のサ
    サ培養方法。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至請求項4記載のササ培養方
    法により培養されたササを植栽する緑地形成方法であっ
    て、 順化期に、培養体を培養可能な凹部を2次元的に複数配
    列したコンテナに培養体を移植して栽培し、前記培養体
    の成長後、前記培養体を前記コンテナごと所望の場所に
    植栽することを特徴とする緑地形成方法。
  6. 【請求項6】 前記コンテナを紙又は木又は布又は金網
    若しくはこれらの組み合わせを用いて形成したことを特
    徴とする請求項5記載の緑地形成方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103314848A (zh) * 2013-05-29 2013-09-25 南京林业大学 一种小蓬竹快速繁殖方法
CN107466636A (zh) * 2017-08-18 2017-12-15 安吉六合工艺品有限公司 一种竹丰产栽培方法
CN109601376A (zh) * 2018-10-24 2019-04-12 杭州师范大学 克隆植物功能性状观察装置及操作方法

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