JP2001036189A - レーザー発振周波数安定化装置 - Google Patents

レーザー発振周波数安定化装置

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JP2001036189A
JP2001036189A JP11201861A JP20186199A JP2001036189A JP 2001036189 A JP2001036189 A JP 2001036189A JP 11201861 A JP11201861 A JP 11201861A JP 20186199 A JP20186199 A JP 20186199A JP 2001036189 A JP2001036189 A JP 2001036189A
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laser
light
laser light
light receiving
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Noriko Takeda
紀子 武田
Hiroyuki Kawashima
浩幸 川島
Susumu Saito
晋 齋藤
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Original Assignee
Topcon Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 波長安定性の精度を劣化させることなく装置
全体の小型化、省電力化を図ることのできるレーザー発
振周波数安定化装置を提供する。 【解決手段】 レーザー光を互いに直交する方向の直線
偏光成分を有する第1及び第2レーザー光に分離する偏
光ビームスプリッタ39、40と、二つのレーザー光を互い
に逆回り方向の円偏光に変換する1/4λ波長板41と、
特定の吸収スペクトルを有する原子又は分子の気体が封
入された一様に磁場が印加されている吸収セル42と、吸
収セル42を透過した第1及び第2レーザー光とを入射方
向と逆方向にそれぞれ一部反射するハーフミラー45と、
ハーフミラー45を透過した第1レーザー光及び第2レー
ザー光をそれぞれ受光する第1受光部46及び第2受光部
47と、ハーフミラー45により反射されて吸収セル42を透
過した第1レーザー光及び第2レーザー光をそれぞれ受
光する第3受光部51及び第4受光部52と、第1受光部46
から第4受光部52までの受光出力に基づいて、レーザー
光源31の発振周波数を吸収スペクトルに固定制御する制
御部48、49、53、54とからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体レーザー等
の波長可変なレーザー光源の発振波長を、原子の飽和吸
収スペクトルや分子の飽和吸収スペクトルを利用して固
定制御するレーザー発振周波数安定化装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】半導体レーザー装置等のレーザー光源部
の発振周波数は、レーザー光源部の温度、レーザー光源
部に流す電流の大きさに大きく依存し、発振周波数がレ
ーザー光源部の温度、レーザー光源部に流す電流の微小
変化によって変動して、レーザー装置では発振周波数が
安定しにくいという問題点がある。
【0003】そこで、レーザー装置では、レーザー光源
部の発振周波数を安定化させるために、各種のレーザー
発振周波数安定化装置が提案されている。このレーザー
発振周波数安定化装置の代表的な技術として、原子の吸
収スペクトルや分子の吸収スペクトルを利用するものが
知られている。この原子の吸収スペクトルや分子の吸収
スペクトルを利用するレーザー発振周波数安定化装置で
は、その原子や分子の吸収スペクトルを基準として用い
ている。
【0004】なかでも、原子や分子の飽和吸収スペクト
ルを基準として用いるレーザー発振周波数安定化装置
は、ドップラー効果で広がる線形吸収スペクトル線幅に
較べて狭いスペクトル線幅が得られ、高い感度でレーザ
ー光源部の発振周波数を安定化させることができる。
【0005】この飽和吸収スペクトルを基準としてレー
ザー光源部の発振周波数を安定化させるレーザー発振周
波数安定化装置では、光吸収が飽和するのに十分な光強
度のレーザー光(パンプ光という)を吸収セルに入射さ
せ、その透過光の光量を第1受光素子で検出すると共
に、この吸収セルを透過した透過光の一部を反射させて
その反射された微弱な強度のレーザー光(プローブ光と
いう)を逆方向から再度吸収セルに入射させ、この逆方
向から吸収セルに入射してこの吸収セルを透過した透過
光の光量を第2受光素子で検出し、この2つの受光素子
の受光出力に基づき、レーザー光源部の発振周波数を狭
い線幅の飽和吸収スペクトルに固定制御する方法が採用
されている。
【0006】図10はその従来のレーザー発振周波数安
定化装置の一例を示す説明図であって、その図10にお
いて、符号1はレーザー光源部である。このレーザー光
源部1は、レーザーダイオード2、サーミスタ3、ペル
チェ効果型素子4、放熱板5から概略構成されている。
そのレーザーダイオード2は温度制御回路6によって温
度制御される。
【0007】レーザーダイオード2から出射されたレー
ザー光は集光レンズ7に集光され、光アイソレータ7A
を透過して偏光ビームスプリッタ8に導かれる。そのレ
ーザー光は直線偏光を呈しており、この偏光ビームスプ
リッタ8は所定の方向の直線偏光成分のレーザー光を反
射しかつこの直線偏光成分と直交する方向の直線偏光成
分のレーザー光を透過する。
【0008】この偏光ビームスプリッタ8を透過した直
線偏光のレーザー光はλ/4波長板9に導かれて、円偏
光のレーザー光に変換され、この円偏光のレーザー光は
飽和吸収セル10にパンプ光として導かれる。この飽和
吸収セル10には特定波長の吸収スペクトルを有する原
子、分子の気体が封入されている。
【0009】その飽和吸収セル10には電磁石11が設
けられ、この電磁石11の磁場には発振器12によって
変調がかけられている。その飽和吸収セル10を透過し
た円偏光の透過レーザー光はNDフィルタ13を透過し
て、ハーフミラー14に導かれ、その一部はこのハーフ
ミラー14によって進行方向と逆方向に反射され、残余
のレーザー光はこのハーフミラー14を透過して第1受
光素子15に受光される。ハーフミラー14により反射
されて逆進するレーザー光はNDフィルタ13を再び透
過して飽和吸収セル10に微弱なプローブ光として入射
され、この飽和吸収セル10を透過してλ/4波長板9
に導かれ、元の直線偏光の方向と直交する方向の直線偏
光のレーザー光に変換される。この直線偏光のレーザー
光は、偏光ビームスプリッタ8に導かれて、その偏光分
離面8aにより反射されて第2受光素子16に受光され
る。
【0010】その第1受光素子15の受光出力と第2受
光素子16の受光出力とは除算器17に入力される。こ
の除算器17は第2受光素子16の受光出力を第1受光
素子15の受光出力で除算する。この除算器17の除算
出力はロックインアンプリファイア18に入力され、こ
のロックインアンプリファイア18は発振器12の発振
出力に同期して除算出力を検出し、ロックイン信号を電
流制御回路19に出力する。その電流制御回路19はこ
のロックイン信号に基づいてレーザーダイオード2の波
長を吸収スペクトルの波長に固定するためのLD注入電
流等の波長依存性を有するパラメータを制御する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従
来のレーザー発振周波数安定化装置では、飽和吸収スペ
クトルをゼーマン変調するために、これに専用の電磁
石、電源、発振器を設けなければならず、レーザー発振
周波数安定化装置が大型化するという問題があると共
に、電磁石が発熱源となってこれによってレーザーダイ
オード2の温度が上昇し、レーザーダイオード2の温度
制御により多くの電力を必要とし、省電力化が困難であ
るという問題がある。
【0012】本発明は、上記の事情に鑑みて為されたも
ので、その目的とするところは、波長安定性の精度を劣
化させることなく装置全体の小型化を図ると共に省電力
化を図ることのできるレーザー発振周波数安定化装置を
提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のレーザ
ー発振周波数安定化装置は、発振周波数が制御可能なレ
ーザー光源を有しかつレーザー光を出射するためのレー
ザー光源部と、前記レーザー光源部からのレーザー光を
互いに直交する方向の直線偏光成分を有する第1レーザ
ー光と第2レーザー光とに分離する偏光ビームスプリッ
タ部と、該偏光ビームスプリッタ部により分離された二
つのレーザー光を互いに逆回り方向の円偏光に変換する
1/4λ波長板と、前記両円偏光のレーザー光の光路内
に配置されて特定の吸収スペクトルを有する原子又は分
子の気体が封入されると共に一様に磁場が印加されてい
る吸収セルと、該吸収セルを透過した前記第1レーザー
光と前記第2レーザー光とを入射方向と逆方向にそれぞ
れ一部反射するハーフミラーと、前記ハーフミラーを透
過した第1レーザー光を受光する第1受光部と、前記ハ
ーフミラーを透過した第2レーザー光を受光する第2受
光部と、前記ハーフミラーにより反射されて前記吸収セ
ルを透過した第1レーザー光を受光する第3受光部と、
前記ハーフミラーにより反射されて前記吸収セルを透過
した第2レーザー光を受光する第4受光部と、前記第1
受光部の受光出力から前記第4受光部までの受光出力に
基づいて、前記レーザー光源の発振周波数を前記吸収ス
ペクトルに固定制御する制御部と、からなることを特徴
とする。
【0014】請求項2に記載のレーザー発振周波数安定
化装置は、請求項1において、前記制御部は、前記第1
受光部の受光出力と前記第3受光部の受光出力との比を
演算するための第1除算器と、前記第2受光部の受光出
力と前記第4受光部の受光出力との比を演算するための
第2除算器と、前記第1除算器の出力と前記第2除算器
の出力とが入力されてその差分を誤差信号として出力す
る引き算器と、該引き算器の誤差信号に基づいて前記レ
ーザー光源の発振周波数が前記吸収スペクトルに一致す
るように電流制御する電流制御回路とからなることを特
徴とする。
【0015】請求項3に記載のレーザー発振周波数安定
化装置は、請求項1において、前記偏光ビームスプリッ
タ部は、該偏光ビームスプリッタ部に入射するレーザー
光を第1直線偏光成分のレーザー光と第2直線偏光成分
のレーザー光とに分離して第1直線偏光成分のレーザー
光を透過させかつ第2直線偏光成分のレーザー光を反射
する第1偏光分離面と、該第1偏光分離面で反射された
第2直線偏光成分のレーザー光を反射しかつその第2直
線偏光成分と直交する方向の直線偏光成分のレーザー光
を透過させる第2偏光分離面とを有することを特徴とす
る。
【0016】請求項4に記載のレーザー発振周波数安定
化装置は、請求項1において、前記偏光ビームスプリッ
タ部は、前記レーザー光源部から出射されて該偏光ビー
ムスプリッタ部に入射したレーザー光を第1直線偏光成
分のレーザー光と第2直線偏光成分のレーザー光とに分
離して第1直線偏光成分のレーザー光を透過させかつ第
2直線偏光成分のレーザー光を反射する偏光分離面と、
該偏光分離面で反射されたレーザー光を反射させる全反
射面とを有することを特徴とする。
【0017】請求項5に記載のレーザー発振周波数安定
化装置は、請求項1において、前記偏光ビームスプリッ
タ部は、前記レーザー光源部から出射されて該偏光ビー
ムスプリッタ部に入射したレーザー光を正常光である第
1直線偏光成分のレーザー光と異常光である第2直線偏
光成分のレーザー光とに分離して、前記第1直線偏光成
分をそのまま透過させ、前記第2直線偏光成分を屈折さ
せて透過させる複屈折物質から構成されていることを特
徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】図1(a)において、符号30は
レーザー光源部である。このレーザー光源部30は、図
2に拡大して示すように、レーザー光源としてのレーザ
ーダイオード(半導体レーザー)31、サーミスタ3
2、ペルチェ効果型素子33、放熱板34、温度制御回
路35からなる本体部と、集光レンズ36と、光アイソ
レータ37と、ビームスプリッタ38とからなってい
る。そのレーザーダイオード31は熱伝導性の良好な本
体部ブロック(図示を略す)に固定されている。
【0019】温度制御回路35はサーミスタ32、放熱
板34と協働して本体部ブロックの温度が一定に保たれ
るようにペルチェ効果型素子33を作動させ、これによ
りレーザーダイオード31の温度が一定に保たれるよう
に制御される。レーザーダイオード31から出射された
レーザー光は直線偏光となっており、その直線偏光のレ
ーザー光は集光レンズ36によって集光され、平行ビー
ムとなって光アイソレータ37に導かれ、これを通過し
てビームスプリッタ38に導かれる。
【0020】光アイソレータ37は集光レンズ36から
この光アイソレータ37に向かって進行するレーザー光
を透過させかつビームスプリッタ38から光アイソレー
タ37に向かって逆方向に進行する光を遮断する。その
ビームスプリッタ38はレーザー光の一部を出力光とし
て反射し、残余のレーザー光を制御用のレーザー光とし
て透過させる。
【0021】その制御用の直線偏光のレーザー光の進行
方向先方には、偏光ビームスプリッタ部が設けられてい
る。この偏光ビームスプリッタ部は第1偏光ビームスプ
リッタ39と第2偏光ビームスプリッタ40とからなっ
ている。第1偏光ビームスプリッタ39、第2偏光ビー
ムスプリッタ40は入射面に対して平行に振動する直線
偏光(P偏光)を透過し、入射面に対して垂直に振動す
る直線偏光(S偏光)を反射する。
【0022】すなわち、図3(a)に示すように、第1
偏光ビームスプリッタ39に端面39aから入射したレ
ーザー光は、この第1偏光ビームスプリッタ39によっ
てP偏光成分とS偏光成分とに分離される。P偏光成分
のレーザー光は第1レーザー光としてこの第1偏光ビー
ムスプリッタ39を透過しかつその端面39cから出射
されてλ/4波長板41に導かれる。S偏光成分のレー
ザー光はこの第1偏光ビームスプリッタ39の偏光分離
面39bにより反射されて第2レーザー光として第2偏
光ビームスプリッタ40に導かれる。第2レーザー光は
この第2偏光ビームスプリッタ40の偏光分離面40b
によって反射されかつ端面40cから出射されて、λ/
4波長板41に導かれる。
【0023】このλ/4波長板41はP偏光、S偏光の
偏光方向に対して光学軸が45度傾けられており、P偏
光の第1レーザー光はλ/4波長板41によって左回り
の円偏光のレーザー光に変換され、S偏光の第2レーザ
ー光はλ/4波長板41によって右回りの円偏光のレー
ザー光に変換される。
【0024】その円偏光のレーザー光の進行方向先方に
は吸収セル42が設けられている。この吸収セル42に
はCs原子の気体がここでは封入されている。この吸収
セル42の両側には永久磁石43、43が図1(b)に
示すように配設され、この吸収セル42は永久磁石4
3、43によってほぼ一様に磁場が印加されている。そ
の磁場の方向は光軸方向と同方向である。円偏光の各レ
ーザー光はパンプ光として吸収セル42に入射される。
このパンプ光のパワー密度は吸収飽和が起きる程度のも
のとする。
【0025】この吸収セル42を透過した第1、第2レ
ーザー光は光路に垂直に配設されたハーフミラー45に
導かれ、このハーフミラー45はそのハーフミラー45
に向かって進行する第1、第2レーザー光の一部を逆方
向に反射し、残余の第1、第2レーザー光を透過させ
る。このハーフミラー45を透過した第1、第2レーザ
ー光は第1受光素子46、第2受光素子47にそれぞれ
受光される。
【0026】第1受光素子46、第2受光素子47はそ
の各レーザー光を光電変換し、その第1受光素子46の
受光出力は除算器48に入力され、その第2受光素子4
7の受光出力は除算器49に入力される。
【0027】ハーフミラー45によって反射された円偏
光の各レーザー光はプローブ光として再び吸収セル42
に導かれ、この吸収セル42を透過してλ/4波長板4
1に導かれ、図3(b)に示すように、第1レーザー光
はλ/4波長板41によってS偏光の直線偏光に変換さ
れ、第2レーザー光はλ/4波長板41によってP偏光
の直線偏光に変換され、P偏光の第2レーザー光は第2
偏光ビームスプリッタ40を透過して端面40aから出
射され、かつ、ビームスプリッタ50によって反射され
る。S偏光の第1レーザー光は第1偏光ビームスプリッ
タ39の偏光分離面39bにより反射されて、端面39
dから出射される。
【0028】その第1偏光ビームスプリッタ39により
反射された第1レーザー光は第3受光素子51に導か
れ、ビームスプリッタ50によって反射された第2レー
ザー光は第4受光素子52に導かれ、各受光素子51、
52によって光電変換される。
【0029】第3受光素子51の受光出力は除算器48
に入力され、第4受光素子52の受光出力は除算器49
に入力され、除算器48は第3受光素子51の受光出力
を第1受光素子46の受光出力で除算し、除算器49は
第4受光素子52の受光出力を第2受光素子47の受光
出力で除算する。
【0030】各除算器48、49の出力は引き算器53
に入力され、引き算器53は除算器48の出力と除算器
49の出力との差を演算し、その差分を誤差信号として
電流制御回路54に入力する。
【0031】この電流制御回路54はその誤差信号に基
づきレーザーダイオード31の波長を固定するためのL
D注入電流等の波長依存性を有するパラメータを制御す
る。
【0032】この発明の実施の形態によれば、飽和吸収
分光が以下に説明するようにして生じる。図4はその飽
和吸収分光を説明するための原理図である。
【0033】その図4において、黒丸印はCs原子気体
を示し、矢印はそのCs原子気体の運動方向を示してい
る。そのCs原子気体の運動方向はランダムであるが、
この図4には特徴的な方向に運動するCs原子気体のみ
が示されている。
【0034】その図4において、符号55は吸収セル4
2内でそのパンプ光、プローブ光の進行方向に対して直
交する方向に運動しているCs原子気体を示し、符号5
6はそのパンプ光の進行方向に対して対向する方向(反
対方向)に運動しているCs原子気体を示し、符号57
はそのパンプ光の進行方向と同方向に運動しているCs
原子気体を示している。
【0035】まず、レーザーダイオード31が基準発振
周波数(基準発振波長)で作動しているものとし、この
基準発振波長とCs原子気体の吸収スペクトル線とが一
致しているものとして説明する。
【0036】Cs原子気体55はパンプ光の進行方向と
直交する方向に運動しているので、ドップラー効果は生
じず、レーザーダイオード31の基準発振波長と原子の
吸収スペクトル線とが一致し、従って、Cs原子気体5
5はパンプ光を吸収する。
【0037】Cs原子気体56はパンプ光の進行方向に
対向して運動しているので、Cs原子気体56ではレー
ザーダイオード31から出射されたパンプ光の周波数が
高く(波長が短く)観測され、Cs原子気体56はパン
プ光の基準発振波長と吸収スペクトル線とがずれて感じ
られるので、Cs原子気体56はパンプ光を吸収しな
い。Cs原子気体57も同様の理由でパンプ光を吸収し
ない。従って、Cs原子気体55のみがパンプ光を吸収
することになり、吸収飽和が生じることになる。
【0038】吸収セル42には逆方向から微弱なプロー
ブ光が入射するが、吸収飽和が生じているので、プロー
ブ光は微弱光でありながら吸収されることなくこの吸収
セル42を通過することになる。
【0039】ここで、レーザーダイオード31の発振周
波数が基準発振周波数(基準発振波長)からわずかに波
長が長い方向にずれたとする。すなわち、Cs原子気体
の吸収スペクトル線からレーザーダイオード31の発振
波長が長い方向にずれたとする。この場合には、Cs原
子気体55は発振波長と吸収スペクトル線とが一致しな
いため、パンプ光を吸収することはできない。これに対
して、Cs原子気体56はパンプ光の進行方向に対向し
て運動し、Cs原子気体56ではレーザーダイオード3
1から出射されたパンプ光の発振周波数が高く観測され
るので、Cs原子気体56は発振波長と吸収スペクトル
線とが一致していると感じ、パンプ光を吸収する。
【0040】Cs原子気体57はパンプ光の進行方向と
同方向に運動し、Cs原子気体57ではレーザーダイオ
ード31から出射されたパンプ光の周波数がますます低
く観測されるので、Cs原子気体57は発振波長と吸収
スペクトル線とのずれがますます大きいと感じ、パンプ
光を吸収しない。
【0041】よって、Cs原子気体56のみが飽和され
るまでレーザーダイオード31によってパンプされる。
【0042】次に、吸収セル42に逆方向から微弱なプ
ローブ光が入射する。このときには、プローブ光の進行
方向に対向して運動するCs原子気体57のみがドップ
ラー効果によってプローブ光を吸収する。このCs原子
気体57はパンプ光の進行方向と同方向に運動してお
り、パンプ光を吸収していないからである。
【0043】レーザーダイオードの発振周波数が基準発
振周波数に対して高い方向にずれた場合には、Cs原子
気体56のみがドップラー効果によってプローブ光を吸
収する。このCs原子気体56はパンプ光の進行方向と
反対方向に運動しており、パンプ光を吸収していないか
らである。
【0044】このように、レーザーダイオードの発振周
波数が吸収スペクトル線に一致した場合にのみプローブ
光の吸収が飽和する現象を飽和吸収現象といい、そのス
ペクトルを飽和吸収スペクトルという。
【0045】図5はその飽和吸収スペクトルの説明図で
あり、図5(a)はレーザーダイオード31から出射さ
れたレーザー光の出力が低い場合の吸収スペクトル58
を示し、この吸収スペクトル58はドップラー効果によ
って広がっており、そのスペクトル幅はドップラー幅に
ほぼ等しい。ここで、横軸はレーザーダイオード31の
発振周波数であり、縦軸は吸収セル42の透過率であ
る。レーザーダイオード31の出力を上げると、飽和吸
収現象が生じて、吸収セルの透過率が上昇し、吸収スペ
クトル59の形状が図5(b)に示すように扁平に近づ
く。
【0046】飽和吸収が生じると、プローブ光は共鳴周
波数で急激に飽和し、図5(c)に示すように、ドップ
ラー幅の吸収スペクトルにくぼみ60(ラムディップ)
が生じる。このラムディップ60の線幅は原子の吸収線
の自然幅とレーザーダイオードの発振波長の線幅とのコ
ンボリューション程度である。
【0047】その吸収セル42に磁場を加えると、ゼー
マン効果によって飽和吸収スペクトルが分裂する。図6
はゼーマン効果によって飽和吸収スペクトルが分裂した
状態を示す説明図である。
【0048】磁場中での光の吸収は光の偏光状態によっ
て異なり、右回りの円偏光の光が印加磁場を通過する際
の吸収周波数は高くなり、左回りの円偏光の光が印加磁
場を通過する際の吸収周波数は低くなる。
【0049】パンプ光は吸収セル42に磁場と同方向に
入射する。パンプ光は磁場に対して右回りの円偏光とす
る。プローブ光は吸収セル42に逆向きに入射し、プロ
ーブ光は磁場に対して左回りの円偏光となる。そのパン
プ光の円偏光の向きとプローブ光の円偏光の向きとは逆
であるが、光の進行方向は逆向きになるので、電場ベク
トルの回転方向は同じである。
【0050】ここで、磁場が印加されていないときに観
測される飽和吸収スペクトルを符号61で示し、磁場を
印加したときに磁場に対して右回りに円偏光している光
の飽和吸収スペクトルを符号62で示し、磁場を印加し
たときに磁場に対して左回りに円偏光している光の飽和
吸収スペクトルを符号63で示す。この2つの飽和吸収
スペクトル62、63は磁場が印加されていないときの
飽和吸収スペクトルの中心周波数f0でクロスしてお
り、レーザーダイオード31の基準発振周波数(基準発
振波長)に対応しており、この中心周波数f0がレーザ
ーダイオード31の発振波長の固定制御ポイントであ
る。
【0051】吸収セル42に一様な磁場、Cs原子気体
の場合にはその磁束密度が約15ガウスの一様な磁場を
印加すると、符号64、65で示すように、飽和吸収ス
ペクトルが2つの円偏光のレーザー光に対して分裂す
る。レーザーダイオード31の発振周波数が基準発振周
波数f0から高い方にずれてf1になったとき、2つの
プローブ光の吸収セル42の透過率はそれぞれT
(+)、T(−)となり、2つのプローブ光の透過率に
差が生じる。
【0052】すなわち、第3受光素子51の受光出力と
第4受光素子52の受光出力とに差が生じ、除算器4
8、49の除算出力に差が生じるので、引き算器53が
この除算出力の差を演算して、これを誤差信号として電
流制御回路54に出力し、電流制御回路54はその発振
周波数が基準発振周波数f0に近づくように制御する。
ここで、レーザーダイオード32としてDBRレーザー
を選択した場合、LD注入電流、位相制御電流(PC電
流)、DBR電流、LDケース温度等を電流制御回路5
4によって制御する。
【0053】
【偏光ビームスプリッタの変形例1】図7は偏光ビーム
スプリッタ部の変形例1を示す。この偏光ビームスプリ
ッタ部では、図7(a)に示すように、光路中に偏光分
離プリズム66が設けられていると共に平行平面板67
が設けられている。
【0054】この偏光ビームスプリッタ部では、パンプ
光として平行平面板67の端面67aに入射するレーザ
ー光は偏光分離プリズム66の偏光分離面66aによっ
てP偏光とS偏光とに分離される。P偏光の第1レーザ
ー光はそのまま透過してその端面66bから出射されて
吸収セル42に導かれる。S偏光の第2レーザー光は平
行平面板67に設けられた全反射面67bにより反射さ
れて端面67cから出射されて吸収セル42に導かれ
る。プローブ光として平行平面板67の端面67cに入
射する第2レーザー光は図7(b)に示すように全反射
面67bにより反射されて偏光分離プリズム66を透過
して端面66cから出射され、プローブ光として端面6
6bに入射する第1レーザー光は偏光分離面66aによ
り反射されて端面66cから出射される。
【0055】このものも、図3に示す構成のものに較べ
て、全反射ミラー50を別途設ける必要がない分だけ、
光学系の構成が簡素化される。
【0056】
【偏光ビームスプリッタの変形例2】図8はその偏光ビ
ームスプリッタ部の変形例2を示し、正常光と異常光と
に分離する複屈折性を有する物質によって偏光分離プリ
ズム68を構成し、パンプ光として端面68aに入射し
たレーザー光をその偏光分離プリズム68の透過中に、
互いに直交する偏光面をもつ正常光としての第1レーザ
ー光と異常光としての第2レーザー光とに分離して、正
常光としての第1レーザー光はそのまま端面68bから
出射させて吸収セル42に導きかつ異常光としての第2
レーザー光は屈折させて端面68bから出射させる構成
とすると共に、プローブ光として入射する第1レーザー
光と第2レーザー光とを端面68bから入射させて、正
常光としての第2レーザー光はそのまま透過させ、異常
光としての第1レーザー光は屈折させて端面68aから
出射させる構成としたものである。
【0057】このものによれば、偏光ビームスプリッタ
の構造が簡素化される。
【0058】
【偏光ビームスプリッタの変形例3】図9はその偏光分
離ビームスプリッタ部の変形例3を示し、符号69は平
行平面板を示す。この偏光ビームスプリッタ部69で
は、図9(a)に示すように、平行平面板69の一端面
にレーザー光をS偏光とP偏光とに分離する光学分離膜
としての光学薄膜69aが形成されている。その平行平
面板69の他端面には全反射膜69bと透過面69cと
が部分的に形成されている。
【0059】パンプ光として光学薄膜69aの偏光分離
面に入射したレーザー光はP偏光とS偏光とに分離され
る。P偏光の第1レーザー光はそのまま透過されて全反
射膜69bの全反射面により反射されかつ一端面から出
射されてλ/4板41を介して吸収セル42に導かれ
る。S偏光の第2レーザー光は光学薄膜69aの偏光分
離面により反射されてλ/4板41を介して吸収セル4
2に導かれる。
【0060】プローブ光として光学薄膜69aの偏光分
離面に入射した第1レーザー光は図9(b)に示すよう
に反射される。プローブ光として光学薄膜69aの偏光
分離面に入射した第2レーザー光はそのまま透過され
て、透過面69cから出射される。
【0061】このものも、図3に示す構成のものに較べ
て、全反射ミラー50を別途設ける必要がない分だけ、
光学系の構成が簡素化される。
【0062】
【発明の効果】本発明によれば、波長安定性の精度を劣
化させることなく装置全体の小型化を図ると共に省電力
化を図ることのできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる発振周波数安定化装置の説明
図で、(a)はその全体構成を示す図であり、(b)は
その吸収セルの側面図である。
【図2】 図1に示すレーザー光源部の部分拡大図であ
る。
【図3】 図1に示す偏光ビームスプリッタ部の作用を
説明するための図であって、(a)はレーザー光源部か
ら出射されたパンプ光としてのレーザー光の透過・反射
を示す図であり、(b)はプローブ光としてのレーザー
光の透過反射を示す図である。
【図4】 吸収セルによる飽和吸収の原理を説明するた
めの図である。
【図5】 飽和吸収スペクトルの説明図であって、
(a)はパンプ光のレーザー光の強度が低い場合の吸収
スペクトルを示し、(b)はパンプ光のレーザー光の強
度を高めた場合の吸収スペクトルを示し、(c)はパン
プ光の飽和吸収が生じた場合のプローブ光の吸収スペク
トルを示す。
【図6】 ゼーマン効果による吸収スペクトルの分離を
説明するための図である。
【図7】 図1に示す偏光ビームスプリッタ部の変形例
1の説明図であって、(a)はレーザー光源部から出射
されたパンプ光としてのレーザー光の透過・反射を示す
図であり、(b)はプローブ光としてのレーザー光の透
過反射を示す図である。
【図8】 図1に示す偏光ビームスプリッタ部の変形例
2の説明図であって、(a)はレーザー光源部から出射
されたパンプ光としてのレーザー光の透過状態を示す図
であり、(b)はプローブ光としてのレーザー光の透過
状態を示す図である。
【図9】 図1に示す偏光ビームスプリッタ部の変形例
3の説明図であって、(a)はレーザー光源部から出射
されたパンプ光としてのレーザー光の透過・反射状態を
示す図であり、(b)はプローブ光としてのレーザー光
の反射・透過状態を示す図である。
【図10】 従来の発振周波数安定化装置の説明図であ
る。
【符号の説明】
30 レーザー光源部 31 レーザーダイオード(レーザー光源) 39、40 偏光ビームスプリッタ(偏光ビームスプリ
ッタ部) 41 1/4λ波長板 42 吸収セル 45 ハーフミラー 46 第1受光部 47 第2受光部 51 第3受光部 52 第4受光部 48 除算器(制御部) 49 除算器(制御部) 53 引き算器(制御部) 54 電流制御回路(制御部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 齋藤 晋 東京都板橋区蓮沼町75番1号株式会社トプ コン内 Fターム(参考) 5F072 AB13 HH02 HH04 HH05 JJ05 KK05 KK15 KK30 TT27 5F073 AB25 AB29 EA03 FA25

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 発振周波数が制御可能なレーザー光源を
    有しかつレーザー光を出射するためのレーザー光源部
    と、 前記レーザー光源部からのレーザー光を互いに直交する
    方向の直線偏光成分を有する第1レーザー光と第2レー
    ザー光とに分離する偏光ビームスプリッタ部と、 該偏光ビームスプリッタ部により分離された二つのレー
    ザー光を互いに逆回り方向の円偏光に変換する1/4λ
    波長板と、 前記両円偏光のレーザー光の光路内に配置されて特定の
    吸収スペクトルを有する原子又は分子の気体が封入され
    ると共に一様に磁場が印加されている吸収セルと、 該吸収セルを透過した前記第1レーザー光と前記第2レ
    ーザー光とを入射方向と逆方向にそれぞれ一部反射する
    ハーフミラーと、 前記ハーフミラーを透過した第1レーザー光を受光する
    第1受光部と、 前記ハーフミラーを透過した第2レーザー光を受光する
    第2受光部と、 前記ハーフミラーにより反射されて前記吸収セルを透過
    した第1レーザー光を受光する第3受光部と、 前記ハーフミラーにより反射されて前記吸収セルを透過
    した第2レーザー光を受光する第4受光部と、 前記第1受光部の受光出力から前記第4受光部までの受
    光出力に基づいて、前記レーザー光源の発振周波数を前
    記吸収スペクトルに固定制御する制御部と、 からなることを特徴とするレーザー発振周波数安定化装
    置。
  2. 【請求項2】 前記制御部は、前記第1受光部の受光出
    力と前記第3受光部の受光出力との比を演算するための
    第1除算器と、前記第2受光部の受光出力と前記第4受
    光部の受光出力との比を演算するための第2除算器と、
    前記第1除算器の出力と前記第2除算器の出力とが入力
    されてその差分を誤差信号として出力する引き算器と、
    該引き算器の誤差信号に基づいて前記レーザー光源の発
    振周波数が前記吸収スペクトルに一致するように電流制
    御する電流制御回路とからなることを特徴とする請求項
    1に記載のレーザー発振周波数安定化装置。
  3. 【請求項3】 前記偏光ビームスプリッタ部は、該偏光
    ビームスプリッタ部に入射するレーザー光を第1直線偏
    光成分のレーザー光と第2直線偏光成分のレーザー光と
    に分離して第1直線偏光成分のレーザー光を透過させか
    つ第2直線偏光成分のレーザー光を反射する第1偏光分
    離面と、該第1偏光分離面で反射された第2直線偏光成
    分のレーザー光を反射しかつその第2直線偏光成分と直
    交する方向の直線偏光成分のレーザー光を透過させる第
    2偏光分離面とを有する請求項1に記載のレーザー発振
    周波数安定化装置。
  4. 【請求項4】 前記偏光ビームスプリッタ部は、前記レ
    ーザー光源部から出射されて該偏光ビームスプリッタ部
    に入射したレーザー光を第1直線偏光成分のレーザー光
    と第2直線偏光成分のレーザー光とに分離して第1直線
    偏光成分のレーザー光を透過させかつ第2直線偏光成分
    のレーザー光を反射する偏光分離面と、該偏光分離面で
    反射されたレーザー光を反射させる全反射面とを有する
    請求項1に記載のレーザー発振周波数安定化装置。
  5. 【請求項5】 前記偏光ビームスプリッタ部は、前記レ
    ーザー光源部から出射されて該偏光ビームスプリッタ部
    に入射したレーザー光を正常光である第1直線偏光成分
    のレーザー光と異常光である第2直線偏光成分のレーザ
    ー光とに分離して、前記第1直線偏光成分をそのまま透
    過させ、前記第2直線偏光成分を屈折させて透過させる
    複屈折物質から構成されていることを特徴とする請求項
    1に記載のレーザー発振周波数安定化装置。
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