JP2001029501A - 金属火災用混合ガス消火薬剤 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属類の火災に対する消火性能に優れ、且つ
人体や環境に優しく、取扱も平易であり、経時的な安定
性にも優れている金属火災用混合ガス消火薬剤を得る。 【解決手段】 アルゴンと窒素を限られた範囲のモル比
率で混合した混合ガスからなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ナトリウム・リチ
ウム・アルミニウム・マグネシウム・チタニウム・ジル
コニウム及びこれらの合金の火災（消防法に基づく危険
物では第二類・第三類に指定されている金属類の火災）
に対して高い消火能力を有する消火剤に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】近年、金属材料としてアルミニウム・マ
グネシウム・チタニウム・ジルコニウム・ネオジウム・
ナトリウム・リチウム及びこれらの合金が広く使用さ
れ、それらの種類も増加してきている。又、その用途の
増大・多岐化により、火災事故も増加している現状があ
る。

【０００３】かかる金属類は、消防法に基づく危険物で
は第二類・第三類に指定されている非常に危険な物質で
ある。これらの金属類の火災は、一旦事故が発生すると
火勢の拡大も早く、燃焼温度も高く、通常の消火剤では
消火困難となり、消火が遅延されれば莫大な損害を蒙る
こととなり、初期段階での確実な消火を特に必要とされ
ている。

【０００４】このような金属火災に対して、水を含有す
る泡消火薬剤や強化液消火薬剤や第三種浸潤剤消火薬剤
のような水系消火薬剤を使用すると、消火効果がないば
かりか、金属火災と接触するとその高い燃焼温度により
水等が分解し、火勢を煽ったり分解ガスを発生し、爆発
する恐れがあるので絶対に使用できない。

【０００５】また、従来より知られているハロン１３０
１（ＣＦ３Ｂｒ）やハロン１２１１（ＣＦ３Ｃ１Ｂｒ）
やＦＥ−１３（ＣＨＦ３）やＦＭ−２００（Ｃ３ＨＦ
７）のようなハロゲン化物消火薬剤や炭酸ガス消火薬剤
は、金属火災に使用すると分解し、炎を煽るのみで消火
の用途としては使用することが出来ない。

【０００６】かかる金属火災に対して有効な消火薬剤と
して、金属火災用粉末消火薬剤や乾燥砂を挙げることが
出来る。金属火災用粉末消火薬剤は、消火器等に充填し
金属火災の表面に粉末を放出し３〜５ｃｍの厚さに覆い
窒息と冷却により消火効果を発揮する。また、乾燥砂は
スコップ等で金属火災の表面に乾燥砂を放出し３〜５ｃ
ｍの厚さに覆うことにより消火効果を発揮する。

【０００７】しかしながら、粉末消火薬剤や乾燥砂は、
環境汚染や使用上の制約等があり、金属火災に対して有
効で環境に優しい消火薬剤が出現することを期待されて
いる現状がある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】金属火災用粉末消火薬
剤は、二類・三類の金属類危険物に対して消火効果があ
り、古くから広く使用されている。その消火効果は、実
績からも消防法からも認知されている所である。しか
し、使用する上で「塩化ナトリウム・塩化カリウム・塩
化カルシウム等の塩化物や炭酸ナトリウム・炭酸カリウ
ム等の炭酸塩やほう酸等の粉体」を主成分とした微粉末
であるため、消火時に燃焼物全体に放出被覆することが
困難で消火がし辛いとか、放出した消火薬剤が微粉末で
あり腐食性を有するため消火後の周辺環境に甚大な被害
を蒙ったり、長期の貯蔵により固化し使用に絶え難いと
いう不都合が指摘されている。また、乾燥砂等は消火効
果が小さいとか、消火方法に制約がある（スコップ等の
人手による方法となる）という不都合があった。

【０００９】

【課題を解決するための手段】しかるべき現状を踏まえ
て、消火性能に優れ、腐食・汚染等の恐れが少なく取扱
も平易な消火薬剤を種々検討した結果、アルゴンと窒素
を限られた範囲のモル比率で混合したガスが金属類の火
災に対して消火性能に優れ、且つ人体や環境に優しく、
取扱も平易であり、経時的な安定性にも優れていること
を見いだし本発明を完成するに至ったのである。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を詳
細に説明する。本発明の混合ガス消火薬剤は、アルゴン
と窒素を限られた範囲のモル比率で混合して得られたも
のである。アルゴンのモル比率は１０％から９０％であ
り、窒素のモル比率も１０％から９０％である。

【００１１】アルゴンが１０％未満のモル比率では、二
類・三類の金属類危険物に対して初期の目的どおり消火
効果を発揮することが出来ない。同様に窒素も１０％未
満のモル比率では、二類・三類の金属類危険物に対して
初期の目的どおり消火効果を発揮することが出来ない。

【００１２】アルゴンと窒素を限られた範囲のモル比率
で混合したとき、金属類の火災に対して消火効果を発揮
するが、その理由は次のようであると考えられる。通
常、金属類の火災は高温度で酸化燃焼している為、炭酸
ガスやハロゲン化物消火薬剤は分解し、炎を煽り消火す
ることが出来ない。

【００１３】しかしながらアルゴン・窒素は安定した化
合物で不活性なガスである。アルゴンは金属火災の高温
に接したときも、分解しないと考えられる。窒素はある
温度までは安定であるが、約８００℃以上の金属と接す
ると部分的に分解し窒化金属を生成すると考えられる。

【００１４】本発明に基づく混合ガス消火薬剤の金属類
の火災に対する消火効果は、上記したアルゴンと窒素が
金属火災に接したときの性質によってもたらされている
と考えられる。即ち、混合ガス消火薬剤は、金属類の火
災に対して、酸素濃度を低下させて消火を促す希釈効果
（主にアルゴンによる作用）と、窒化金属が部分的に形
成されたことによる燃焼特性の変化に基づき消火を促す
熱化学的効果（主に窒素による作用）とが相乗的に発揮
され、優れた消火効果を有すると考えられる。以下の実
施例・比較例からも明らかなようにアルゴンと窒素を限
られた範囲のモル比率で混合したとき、初めて初期の目
的の消火効果を発揮する。

【００１５】本発明の混合ガス消火薬剤は、従来のガス
系消火薬剤と同様に高圧ガス容器や消火器に充填して使
用される。消火器として、固定配管消火設備として、目
的に応じて使用でき、所定の消火効果を提供するもので
ある。

【００１６】

【実施例】次に、実施例・比較例を挙げて本発明の混合
ガス消火薬剤について説明する。尚、本発明の効果は、
実施例のみの混合比率に限定されるものでない。金属類
も実施例のみに限定されるものでなく、広く知られてい
る二類・三類の金属類危険物に対しても同様の効果が得
られるものである。実施例の組成を表１に記載する。

【００１７】

【表１】 （注）数字の単位はモル％で、混合比率を示している。

【００１８】比較例の組成を表２に記載する。

【００１９】

【表２】 （注）市販品１は、日本国内で市販されている炭酸ガス消火薬剤（ＣＯ２：１０ ０Ｍ％）である。 （注）市販品２は、日本国内で市販されているＩＧ−５４１（Ｎ２：５０モル％ ，Ａｒ：４０モル％，ＣＯ２：１０モル％）である。 （注）市販品３は、ハロン１３０１（ＣＦ３Ｂｒ）である。

【００２０】実験例１．上記実施例及び比較例に基づく
ガス消火薬剤を用いて、高圧ガスボンベに８００ｇずつ
充填し、マグネシウム切削粉に対する消火試験を行っ
た。試験はほぼ密閉された３６８リットル（７００ｍｍ
×７００ｍｍ×７５０ｍｍ）容器のほぼ中央に２００ｇ
のマグネシウム切削粉を３３０ｍｍ×３３０ｍｍのＳＵ
Ｓ容器に均一に敷き詰めてセットし、トーチ棒で着火し
た。燃焼面積が半分になった時点で扉を閉め、ガス放出
を開始した。炎が納まり内部の赤熱が黒くなった時点で
完全消火と判断した。併せて、熱電対を金属粉の温度を
測定しながら、消火の判断を行った。

【００２１】消火の有無と消火ガス濃度の算出と酸素濃
度測定を行なった。消火ガス濃度は放出したガス重量か
らガス容積を求め算出した。酸素濃度は磁気式酸素濃度
計（ＭＡＧ−１６７：島津 製作所製）を用いて測定し
た。その結果を表３に記載する。

【００２２】

【表３】

【００２３】実験例２．上記実施例及び比較例に基づく
ガス消火薬剤を用いて、高圧ガスボンベに８００ｇずつ
充填し、ジルコニウム切削粉に対する消火試験を行っ
た。試験はほぼ密閉された３６８リットル（７００ｍｍ
×７００ｍｍ×７５０ｍｍ）容器のほぼ中央に１００ｇ
のジルコニウム切削粉を３３０ｍｍ×３３０ｍｍのＳＵ
Ｓ容器に均一に敷き詰めてセットし、トーチ棒で着火し
た。燃焼面積が半分になった時点で扉を閉め、ガス放出
を開始した。炎が納まり内部の赤熱が黒くなった時点で
完全消火と判断した。併せて、熱電対を金属粉の温度を
測定しながら、消火の判断を行った。

【００２４】消火の有無と消火ガス濃度の算出と酸素濃
度測定を行なった。消火ガス濃度は放出したガス重量か
らガス容積を求め算出した。酸素濃度は磁気式酸素濃度
計（ＭＡＧ−１６７：島津 製作所製）を用いて測定し
た。その結果を表４に記載する。

【００２５】

【表４】

【００２６】

【発明の効果】以上のように、本発明によれば金属火災
に対して低いガス濃度で消火でき、消火後の酸素濃度の
低下も少なく、優れた消火効果が得られる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アルゴンを１０〜９０モル％、窒素を９
   ０〜１０モル％の範囲で含有し、全体を１００モル％と
   したことを特徴とする金属火災用混合ガス消火薬剤。