JP2001027221A - 摩擦ヒンジ装置およびこれを利用した携帯用事務機器 - Google Patents

摩擦ヒンジ装置およびこれを利用した携帯用事務機器

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JP2001027221A
JP2001027221A JP2000131710A JP2000131710A JP2001027221A JP 2001027221 A JP2001027221 A JP 2001027221A JP 2000131710 A JP2000131710 A JP 2000131710A JP 2000131710 A JP2000131710 A JP 2000131710A JP 2001027221 A JP2001027221 A JP 2001027221A
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rotation
shaft member
hinge device
friction
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Masato Uneme
正人 釆女
Takaaki Hayashida
高章 林田
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Chuo Spring Co Ltd
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Chuo Hatsujo KK
Chuo Spring Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 例えば、ノ−ト型パソコンの蓋開閉用の摩擦
ヒンジにおいて、簡単な操作で楽に開閉でき、操作時の
安定性および安全性を確保する。 【解決手段】 軸部材10の径大部11の表面に硬化層
11aを施し、その表面硬さHvを800以上、その厚
みを少なくとも5.0μmは確保する。軸回動支持部材
20を使用温度(−20〜80℃)内での曲げ弾性率の
変化の割合が小さい樹脂原料(PC、PAR、PPS)
を用いて、軸部材10に対してモ−ルド成形により組み
付ける。軸部材10の表面硬さHv(ビッカース硬さ)
が大きいため、高いトルク保持率を確保でき、回動初期
にひっかかりが少なく、スティックスリップも生じな
い。曲げ弾性率が変化しないことから、必要な摩擦力を
設定でき、長期にわたって安定した摩擦力を維持でき
る。コスト的にも有利で磨耗粉や塗布剤による周辺部へ
汚染がない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、ラップト
ップ用のノート型パソコン等の携帯用事務機器の開閉蓋
やディスプレイ部を開閉するのは勿論、とりわけ任意の
開放角度に位置保持するための摩擦ヒンジ装置およびこ
れを利用した携帯用事務機器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の摩擦ヒンジ装置にあって
は、例えば、蓋部材に固定された金属性の回転軸を保持
金具で直接回動可能に支持している。そして、保持金具
で回転軸を締めつけることによって摩擦力を付与し、回
転軸を保持金具に摺動可能にし、もって蓋部材を任意の
回動角度で位置保持するものがあった。
【0003】ところが、このものでは構造が簡素化され
て価格的には有利になるものの、金属どうしの摩擦を利
用するため、摩擦面にグリス等の油類を塗布する必要が
あり、塗布物質により周辺部材が汚染されるなどの問題
があった。
【0004】これを避けるため、回転軸を保持する保持
部材を樹脂材料により形成することが考えられている。
この一例として、特開平7−26825号公報には軸ロ
ック装置が示されている。この軸ロック装置は、金属製
の内部軸と、この内部軸とモールディング一体成形され
た樹脂製の外部軸から構成されている。そして、モール
ディング一体成形後には、金属と樹脂材料との収縮率の
差により内部軸と外部軸との間に発生する面摩擦抵抗に
よりトルクを付与するものである。このトルクによりノ
ート型パソコンのディスプレイ盤を所望の回動角度で位
置保持できるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の特開
平7−26825号公報に示された軸ロック装置には、
内部軸と外部軸との間に発生させたトルクを所定に設定
する手段として、内部軸の表面粗さ、表面処理ならびに
摩擦係数の変更を始め、内部軸および外部軸の各外径寸
法を変更することが示唆されている。
【0006】しかしながら、これらは単なる定性的な示
唆に留まり、具現化に向けて必要な定量的な具体的数値
が全く記載されていない。とりわけ、内部軸と外部軸と
に適切な関係が定量的に特定されていないため、回転ト
ルクのばらつきが大きくなったり、回転に伴いスティッ
クスリップに起因する異音が発生したり、あるいは摩擦
による必要なトルクが保持できなくなり耐久性に劣ると
いった問題を抱えている。
【0007】本発明は、上記の背景を考慮してなされ、
その目的は低価格で、周辺への汚染等の虞れがないこと
は勿論、略一定した回転トルクが得られ、スティックス
リップが生じず、常に略一定した摩擦力により、蓋部材
の開閉時には任意の角度に容易に位置保持でき、安定し
た摩擦力を長期にわたって維持し得るといった耐久性に
優れた摩擦ヒンジ装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1では、摩擦ヒン
ジ装置において回動中心となる回転軸を有する軸部材
と、該軸部材を前記回転軸で回動自在に支持する軸回動
支持部材とからなり、前記軸回動支持部材が前記軸部材
の前記回転軸の周りで相対的に回動自在に設けられ、前
記回転軸を内包し、前記回転軸の外側に一体成形された
樹脂製部材によって前記軸回動支持部材を構成し、前記
樹脂製部材の成形収縮に伴う締め代により発生する内部
応力を利用して前記軸部材と前記軸回動支持部材との間
に面摩擦抵抗を発生するようにしたものにおいて、前記
軸部材の回転軸表面の表面硬さHv(ビッカース硬さ)
が800以上の範囲に存するようにしたことを特徴とす
る。
【0009】請求項2では、請求項1において、前記軸
部材の回転軸表面には、表面硬さHv(ビッカース硬
さ)が800以上の範囲に存する硬化層を形成し、その
硬化層の厚さを、少なくとも5.0μmになるようにし
たことを特徴とする。
【0010】請求項3では、請求項1および2におい
て、前記軸部材と前記軸回動支持部材との間で発生する
面摩擦抵抗値は、所望に応じ適宜に設定できるようにな
っていることを特徴とする。
【0011】請求項4では、請求項1ないし3におい
て、前記軸部材に外表面に単一または複数の周溝を形成
し、前記樹脂製部材の前記軸部材に対する密着性を補強
したことを特徴とする。
【0012】請求項5では、請求項1ないし4におい
て、摩擦ヒンジ装置を用いてディスプレイ部を所定の角
度で位置保持すべく揺動可能に支持した携帯用事務機器
を構成したことを特徴とする。
【0013】
【発明の作用・効果】請求項1では、軸部材を内包する
軸回動支持部材は、樹脂製部材によって軸部材の外側に
一体成形されて構成される。この樹脂製部材による一体
成形処理(モールド成形)は、予め配置された軸部材が
高温の金型内に樹脂性部材を押し込むなどして行われ
る。
【0014】成形後、軸部材と樹脂製部材の温度が低下
すると、樹脂製部材は収縮して軸部材に対して密着す
る。軸部材の材質の選択あるいは表面処理により、軸部
材には表面硬さHvが800以上の範囲に存するように
なっている。このため、軸部材に密着した軸回動支持部
材は、軸部材の回転力に対して密着面で摩擦力を発生す
る。これにより、軸部材が軸回動支持部材との摩擦力に
対して大きな力で外部より回転トルクを受けた場合に
は、軸部材が軸回動支持部材に対して、相対的に回転
し、摩擦力より小さな回転トルクに対しては回転せず、
もって軸部材を任意の回動角度に位置保持する。
【0015】このように、本発明では軸部材と樹脂製部
材とをモールド成形により組み付けているので、製造上
安価になる。
【0016】また、軸部材の選択や表面処理により、軸
部材の表面硬さHvが800以上の範囲に存するように
したので、例えば3万回程度の開閉操作においても軸部
材と軸回動支持部材との間の磨耗量を最小限に抑えられ
ることが判明している。これにより、(初期トルク)に
対する(劣化試験および耐久試験後のトルク)の比率を
示すトルク保持率が向上し、長寿命化が図られる。
【0017】このため、略一定した回転トルクが得ら
れ、スティックスリップが生じず、これに基づく異音の
発生もなくなる。
【0018】また、常に略一定した面摩擦抵抗力が保持
されることにより、蓋部材の開閉時には任意の角度に容
易に位置保持でき、安定した面摩擦力を長期にわたって
維持し得、耐久性に優れたものとなる。また、金属製の
軸部材と樹脂製部材による軸回動支持部材との摩擦によ
って摩擦ヒンジを構成するため、油等を塗布する必要が
なく、周辺部材への塗布物質の汚染の心配がないことは
勿論である。
【0019】請求項2では、請求項1において、軸部材
の回転軸表面の硬化層の厚さは、少なくとも5.0μm
あれば良く、この程度の厚さの硬化層でトルク保持率が
向上し、長期間に亘って軸部材と軸回動支持部材との間
に安定した面摩擦抵抗を維持することができる。
【0020】請求項3では、請求項1および2におい
て、軸部材と軸回動支持部材との間で発生する面摩擦抵
抗値の大きさは、必要に応じて表面硬さHvを変更する
ことにより適宜に設定できる。このため、使用すべき機
種の大小に対応した摩擦抵抗値が得られる。
【0021】請求項4では、請求項1ないし3におい
て、軸部材の外表面に単一または複数の周溝を形成した
ので、樹脂製部材が軸部材に付着し易く、この樹脂製部
材の軸部材に対する密着性が向上し、高い摩擦トルクを
確保できる。このように、周溝の形成により、従来どお
りの大きさの軸部材で高い摩擦トルクが得られるので、
高トルクの割りには全体をコンパクトに設計できる。
【0022】請求項5では、請求項1ないし4におい
て、摩擦ヒンジ装置を具体的な製品に具現化する例を示
す。すなわち、摩擦ヒンジ装置によりディスプレイ部を
所定の角度で位置保持すべく揺動可能に支持した携帯用
事務機器に適用している。
【0023】[実施例上の効果]軸回動支持部材を形成
するために用いる樹脂製部材として、使用温度範囲(例
えば−20〜80℃)内における曲げ弾性率の変化の割
合が小さく、最大でも30%以内のものを用いる。曲げ
弾性率の変化が小さい材料では、通常使用する環境温度
が変化した場合にも、軸部材に対して同等の摩擦力を保
持できる。加えて、摩擦面での劣化がなくなるため、長
期間に亘って安定した面摩擦抵抗力を維持することがで
きる。
【0024】具体的には、PC(ポリカーボネイト)、
PAR(ポリアリレート)、PPS(ポリフェニレンサ
ルファイド)などが適している。
【0025】軸回動支持部材を形成する樹脂製部材に無
機系、有機系あるいは双方の摺動剤を混合したことによ
って、軸部材の円滑な回動を実現でき、しかも、軸部材
と軸回動支持部材との間に、別途にグリス等の摺動剤を
塗布するものではないため、塗布剤による周辺部材への
汚染の虞れがない。
【0026】また、軸部材と軸回動支持部材との間の大
きな硬度差により回転摺動に伴って生じる磨耗粉の発生
を著しく低減させることができる。また、軸回動支持部
材を形成する樹脂製部材内に強度向上のためのガラス繊
維やカーボン繊維を混合させることで、耐久性を向上さ
せることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の実施例を図に基づいて以
下に説明する。図1に示す摩擦ヒンジ装置1は、図示は
しないが、携帯用事務機器としてのノート型パソコンに
適用された一例を示す。このノート型パソコンでは、液
晶ディスプレイ部を有する蓋部材(図示せず)が、摩擦
ヒンジ装置1により前後方向に揺動可能に支持されてい
る。そして、この摩擦ヒンジ装置1は、液晶ディスプレ
イの表示角度を調節するために、蓋部材を開閉するのは
勿論、任意の開閉角度で位置保持するようになってい
る。
【0028】かかる摩擦ヒンジ装置1においては、軸部
材10は回動中心となる回転軸を構成し、パソコンの蓋
部材と一体に回転するように取り付けられている。20
は軸回動支持部材で、これはパソコン本体側に固定さ
れ、蓋部材を開閉させるべく軸部材10を回動自在に支
持している。
【0029】軸部材10は、図2に示すとおり、時効硬
化形SUS材(ステンレス)、高Siアルミ合金製など
を用いて後述する表面硬さHv(ビッカース硬さ)が8
00以上になるようにしている。これらの材料により円
柱形状の棒素材の中間部を径大部11(例えば、直径5
mm)として、その両端側を径大部11より小径の径小
部12、13(例えば、直径4mm)として成形してい
る。これの一方の径小部13の先端部には、蓋部材と嵌
合するためのほぞ14を形成している。
【0030】軸部材10の材料としては、(あ)時効硬
化形SUS材(ステンレス)、高Siアルミ合金に加え
て鋳鍛造材料、タングステン系材料、酸化物系セラミッ
ク、炭化物系セラミック、窒化物系セラミック、ほう化
物系セラミック、高炭素鋼および高炭素電縫管が列挙で
きる(セラミックの種類については図4参照)。
【0031】さて、軸回動支持部材20は、図3に示す
ように、軸部材10の径大部11の外側を内包するよう
に密着して一体的に形成された樹脂製部材で、軸部材1
0を予め金型内に配置しておき、樹脂原料を射出成形す
ることによって軸部材10にモールド成形されている。
【0032】尚、ここでは、金型温度を140℃前後に
設定して、モールド成形を行っている。これにより、樹
脂製部材の成形収縮に伴う締め代により発生する内部応
力に基づいて軸部材10と前記軸回動支持部材20との
間に所定の面摩擦抵抗が生ずるようにしている。
【0033】この摩擦ヒンジ装置1は、上述のとおり、
蓋部材をノート型パソコン本体に対して任意の角度に設
定する必要があるため、軸回動支持部材20と軸部材1
0とに加わる相対的なトルクが所定トルク以下の場合に
は、その相対角度を維持し、所定トルク以上の場合に
は、円滑な回動動作を確保する必要がある。
【0034】このため、軸部材10の径大部11は、成
形時に表面硬さHv(ビッカース硬さ)が800以上の
範囲に存するようにしている。具体的には、表面硬さH
vが800以上を示す軸部材10の材質を上述の(あ)
から選択するか、あるいは軸部材10に表面処理を施す
ようにしている。
【0035】かかる表面処理を施すにあたっては、
(あ)に列挙された材料から適宜なものを選んで、
(a)冷間圧造成形、鋳造などの加工処理や(b)浸炭
硬化、高周波焼き入れ、窒化処理などの熱処理を行う。
また、この表面処理を行うには、(あ)の材質と(a)
の加工処理および(b)の熱処理を適宜に組み合わせて
行ってもよい。
【0036】上記のように構成したのは、軸部材10の
表面硬さHvが小さい場合には、回動初動時のひっかか
りが大きく、またスティックスリップが大きいのに対
し、表面硬さHvが大きい場合には、回動初動時のひっ
かかりおよびスティックスリップがいずれも小さくでき
るからである。
【0037】軸回動支持部材20としてPAR(ポリア
リレート)樹脂を使用し、軸部材10の径大部11を直
径5mm、径小部12を直径4mmとした場合の表面硬
さHvとトルク保持率(劣化試験および耐久試験後のト
ルク/初期トルク)との関係を実験により得られた結果
として図5に示す。この図5によれば、表面硬さHvが
700〜750の区間で極大値の存する変曲点を生ずる
ので、表面硬さHvが800以上であれば摩擦ヒンジ装
置1として実用上すぐれた機能を発揮する。
【0038】尚、蓋部材の回動に伴い軸部材10と軸回
動支持部材20との間で発生する面摩擦抵抗値は、設計
時の寸法関係などから適宜に設定できるようになってい
る。
【0039】また、軸部材10の表面処理にあたって
は、この軸部材10の表面に表面硬さHvが800以上
となる被膜を形成することができる。この被膜は便宜
上、図2の(a)、(b)に硬化層11aとして示す。
かかる硬化層11aの厚み寸法としては、軸部材10の
内部全体に亘る必要はなく、その表面から少なくとも
5.0μmあればよい。
【0040】実験により得られた結果を示す図5によれ
ば、硬化層11aの厚みが3〜5μmの区間で極大値の
存在する変曲点を生ずるので、硬化層11aは厚みが少
なくとも5.0μm確保できれば実用上すぐれた機能を
発揮する。
【0041】この場合、軸部材10の硬化層11aの表
面硬さHvが800以上で、その硬化層11aの厚みを
少なくとも5.0μm確保する表面加工法としては下記
のものが挙げられる。
【0042】(1)メッキ法:ロジウムメッキ、ニッケ
ル−リン無電解メッキ、ニッケル−リン無電解または電
気メッキにアルミナ、SiC、WC、TiC、BC、S
iO2、TiO2 を分散させた合金メッキあるいは硬質
クロムメッキ(図7参照)。
【0043】(2)溶射法:タングステン、コバルト、
Al2 3 、TiO2 、WC、TiCのプラズマ溶射、
セラミックコーティング。
【0044】(3)プレーティング法:TiC、Ti
N、CrNのイオンプレーティングによる加工法。
【0045】(4)CVDによる化学蒸着法:TiC、
TiN、TiB2 、SiCなどのセラミック材料のCV
D。
【0046】これらの表面加工法のうち、図7における
工業用硬質クロムメッキは、Hv:800〜1000範
囲のものが実用化され、無電解ニッケルメッキは400
℃で熱処理すると、Hv:1000という高硬度が得ら
れる。
【0047】また、ニッケルメッキ中にアルミナや炭化
ケイ素の粒子を分散させた複合被膜もHv:600程度
の硬さを示す。同様に400℃で熱処理すると、SiC
の含有率(2〜6wt%)によってHv:1300〜1
400という高硬度を示す。さらに、ニッケル−タング
ステン合金メッキも極めて高硬度のメッキとして重要で
ある。
【0048】このように表面処理を施された軸部材10
を軸回動支持部材20に対して回転摺動させているた
め、軸回動支持部材20に好適する樹脂製部材が模索さ
れる。
【0049】この樹脂製部材としては、軸部材10に対
して安定した摩擦力を確保するために、摩擦ヒンジ装置
1を使用温度範囲(例えば、−20〜80℃)における
曲げ弾性率(GPa)の変化の割合が小さいものが用い
られる。
【0050】これは、様々な樹脂について、トルク保持
率と曲げ弾性率保持率との関係を調べたところ、図8に
示すとおり、トルク保持率が80%以上となる樹脂製部
材では、曲げ弾性率保持率が80%以上であることに基
づくもので、曲げ弾性率保持率が高い(使用温度範囲内
における曲げ弾性率の変化の割合が小さい)樹脂製部材
を用いることで、高いトルク保持率を実現できるからで
ある。ここで、トルク保持率とは下記の関係式から得ら
れる値のことである。 トルク保持率(%)={(熱劣化試験および耐久試験後
のトルク)/(初期トルク)}×100
【0051】図9、図10に、周囲の環境温度と樹脂製
部材の曲げ弾性率との関係を示す。図9に示すPAR
(ポリアリレート)では、実際に機器等が使用される周
辺の環境温度範囲内では、曲げ弾性率が大きく変化しな
いため、軸回動支持部材20として適している。
【0052】これに対して、図10に示すような一般の
結晶性樹脂では、使用温度範囲内で温度によって曲げ弾
性率が大きく変化する。こうした一般の結晶性樹脂で
は、使用温度が変化した場合に軸部材10に対して適切
な面摩擦力を与える使用温度を選んで軸回動支持部材2
0として使用すべきである。
【0053】以上の観点から、軸回動支持部材20とし
て用いるのに適した樹脂製部材の具体例としては、PA
R(ポリアリレート)、PC(ポリカーボネイト)、P
PS(ポリフェニレンサルファイド)、PES(ポリエ
ーテルサルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケ
トン)などが挙げられる。尚、本発明の他の実施例とし
て、軸部材10の表面処理後には、この表面粗さ(R
a)をバフ加工などの表面処理により0.15〜0.3
5μmに設定することができる。
【0054】次に第2実施例を説明する。第2実施例で
は、軸回動支持部材20に用いられる樹脂製部材とし
て、上述のPAR(ポリアリレート)、PC(ポリカー
ボネイト)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、
PES(ポリエーテルサルホン)、PEEK(ポリエー
テルエーテルケトン)などの単一材料ではなく、フッ素
系樹脂、オレフィン系樹脂、グラファイトあるいはカー
ボン繊維等の有機系の摺動剤を15wt%以内で添加し
て用いる。また、タルク、ガラス球、二硫化モリブデ
ン、チタン酸カリウム等の無機系摺動剤を15wt%以
内で添加してもよい。
【0055】樹脂製部材にPTFE(フッ素樹脂)を3
wt%添加した場合を図11に、添加しない場合を図1
2にそれぞれ示す。添加した場合には、初動時に滑らか
に回動を開始することが分かる。
【0056】これによって、軸部材10と軸回動支持部
材20との摩擦に伴って発生する磨耗粉を著しく低減さ
せることができる。図13に、これらの摺動剤を添加し
た場合の耐久性について、添加しないものと比較して示
す。
【0057】図から明らかなとおり、摺動剤を添加した
場合には、トルク保持率の低下の度合いが著しく小さく
なっており、長寿命のヒンジとすることができる。
【0058】次に、第3実施例について説明する。第3
実施例では、軸回動支持部材20の強度を向上させるた
めに、ミネラル、カーボン繊維、ガラス繊維などを40
wt%以内で添加する。
【0059】また、図14および図15は、軸部材10
の外表面に単一および3個の周溝10gを形成した変形
例を示す。このようにすれば、軸回動支持部材20の樹
脂製部材が周溝10gの位置で軸部材10に強く付着す
るようになる。このため、図16のグラフから分かるよ
うに、発生トルクが増加しており樹脂製部材の軸部材1
0の外表面に対する密着性が向上する。このため、従来
どおりの大きさの軸部材10で高トルクを発生できるの
で、全体のコンパクト化を図ることができる。この場
合、軸部材10に形成する周溝10gの数は、単一や3
個に限らず、必要に応じて2個、4個など複数設けるこ
とができるのは勿論である。
【0060】以上のとおり、本発明では、軸部材10の
材質を選択するか、あるいは表面処理により軸部材10
の表面硬さHvが800以上の範囲に存するようしてい
るため、トルク保持率の向上によりスティックスリップ
の発生や初動時のひっかかりがなく、安定した摩擦力を
長期にわたって維持することができる。これにより、蓋
部材等の開閉において、楽な操作で蓋部材を容易に任意
の開閉角度で位置保持することができる。
【0061】また、軸回動支持部材20を軸部材10と
モールド成形によって組付けているため、製造コストの
低減を図ることができる。
【0062】また、軸回動支持部材20として成形され
る樹脂製部材として、使用温度範囲における曲げ弾性変
化率が小さい材料を用いているため、様々な使用環境に
おいても、安定した摩擦力を維持することができるた
め、蓋部材などを備えた機器の使い勝手をよくすること
ができる。
【0063】なお、軸部材10の硬化層11aは、バフ
研磨仕上げなどにより表面粗さの小さい円滑な表面に形
成してもよいが、表面粗さ(Ra)が0.15〜0.3
5μmの範囲内なら表面粗さを考慮しないで未研磨でま
ま用いてもよい。
【0064】また、軸部材10にあっては、硬化層11
aを備えなくとも、所要の表面硬さHv(800以上)
を有するものなら、その素材をそのまま直接用いるよう
にしてもよい。
【0065】また、上記実施例では、携帯用事務機器と
してノート型パソコンなどの蓋部材を例に挙げたが、複
写機などの電子機器の蓋、自動車のトランク用フード開
閉機構、ボンネット用フード開閉機構、トラックの荷台
蓋、家屋の窓開閉機構、ピアノの鍵盤蓋あるいは便器の
蓋など、蓋部材を面摩擦抵抗に基づくトルクにより任意
の回動角度に位置保持するもの一般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の摩擦ヒンジ装置を示す斜視図である。
【図2】実施例の摩擦ヒンジ装置の軸部材を示す図で、
(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】実施例の摩擦ヒンジ装置を示す図で、(a)は
側面図、(b)は正面図である。
【図4】セラミックにおける各種の硬質材質の特性値を
具体的に示す表である。
【図5】本実施例の軸部材の表面硬さHvとトルク保持
率との関係を示す特性図である。
【図6】本実施例の軸部材の硬化層の厚みとトルク保持
率との関係を示す特性図である。
【図7】クロムメッキなどの硬度を示す表である。
【図8】各種の樹脂製部材における曲げ弾性率保持率と
トルク保持率との関係を示す特性図である。
【図9】本実施例に用いた曲げ弾性率の変化が小さい樹
脂製部材における温度と曲げ弾性率との関係を示す特性
図である。
【図10】図9と比較するための一般の結晶性樹脂にお
ける温度と曲げ弾性率との関係を示す特性図である。
【図11】第2実施例を説明するための図で、軸回動支
持部材の樹脂製部材に摺動剤を添加した場合の回動角度
とトルクとの関係を示す特性図である。
【図12】図11と比較するための図で、軸回動支持部
材の樹脂製部材に摺動剤を添加しない場合の回動角度と
トルクとの関係を示す特性図である。
【図13】第2実施例の軸回動支持部材の樹脂製部材に
摺動剤を添加した場合の耐久回数とトルクの変化との関
係を、摺動剤を添加しない場合と合わせて示した図であ
る。
【図14】軸部材の外表面に単一の周溝を形成した変形
例を示す斜視図である。
【図15】軸部材の外表面に3個の周溝を形成した変形
例を示す斜視図である。
【図16】周溝の数と発生トルクとの関係を示す棒グラ
フである。
【符号の説明】
1 摩擦ヒンジ装置 10 軸部材(回転軸) 11 径大部 12 径小部 10g 周溝 11a 硬化層 20 軸回動支持部材

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回動中心となる回転軸を有する軸部材
    と、 該軸部材を前記回転軸で回動自在に支持する軸回動支持
    部材とからなり、 前記軸回動支持部材が前記軸部材の前記回転軸の周りで
    相対的に回動自在に設けられ、前記回転軸を内包し、前
    記回転軸の外側に一体成形された樹脂製部材によって前
    記軸回動支持部材を構成し、前記樹脂製部材の成形収縮
    に伴う締め代により発生する内部応力を利用して前記軸
    部材と前記軸回動支持部材との間に面摩擦抵抗を発生す
    るようにした摩擦ヒンジ装置において、 前記軸部材の回転軸表面の表面硬さHv(ビッカース硬
    さ)が800以上の範囲に存するようにしたことを特徴
    とする摩擦ヒンジ装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記軸部材の回転軸
    表面には、表面硬さHvが800以上の範囲に存する硬
    化層を形成し、その硬化層の厚さを、少なくとも5.0
    μmになるようにしたことを特徴とする摩擦ヒンジ装
    置。
  3. 【請求項3】 請求項1および2において、前記軸部材
    と前記軸回動支持部材との間で発生する面摩擦抵抗値
    は、所望に応じ適宜に設定できるようになっていること
    を特徴とする摩擦ヒンジ装置。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3において、前記軸部材
    の外表面に単一または複数の周溝を形成し、前記樹脂製
    部材の前記軸部材に対する密着性を補強したことを特徴
    とする摩擦ヒンジ装置。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4に記載の摩擦ヒンジ装
    置を用いてディスプレイ部を所定の角度で位置保持すべ
    く揺動可能に支持したことを特徴とする携帯用事務機
    器。
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