JP2001010180A - 偽造、改ざん防止用インクリボン及び個人認証媒体 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 偽造・改ざんの困難な画像の形成が低コスト
で真偽判定が容易に可能なインクリボンを得る。 【解決手段】 インクリボンの背面上に、弾性率の異な
る少なくとも２種の材料からなる背面層を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えばＩＤカード
等の個人認証媒体に個人情報等の記録画像を形成するた
めに用いられるインクリボンに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ＩＤカード、パスポート等に人物
画像や個人情報を記録する技術として、溶融型熱転写印
刷及び昇華型熱転写印刷が知られており、それぞれに用
いる溶融型熱転写インクリボン及び昇華型熱転写インク
リボンが広く知られている。

【０００３】そして、偽造・改ざんを防止する効果を備
えるインクリボンとして、蛍光インクリボン等が知られ
ている。

【０００４】近年、複写技術の急速な発展に伴い、ＩＤ
カード、パスポート等に記録されている人物画像や個人
情報欄をカラースキャナー等で読み取り、人物画像部分
を入れ替えた画像を出力してシートを貼り直す等の手法
を用いた改ざんが増加している。これまでの方法では、
インクリボン自体に特徴がないため、人物画像部分を貼
り替えてもなんら支障がなく、改ざんされたことを容易
に看破することはできなかった。

【０００５】また、蛍光インクリボンは、偽造、改ざん
防止効果を備えるが、蛍光インクリボンにより記録され
た画像を視認するには特殊な装置を必要とする。このた
め、蛍光インクリボンを用いて人物画像や個人情報を記
録する場合でも、同時に、通常のインクリボンを用いて
人物画像や個人情報を記録する必要があり、コストアッ
プが避けられなかった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたもので、その第１の目的は、偽造・改ざ
んの困難な画像の形成が低コストで容易に可能なインク
リボンを提供することにある。

【０００７】本発明の第２の目的は、低コストで、偽造
・改ざんの困難な画像が容易に形成され、その真偽の識
別が簡単な個人認証媒体を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の偽造、改ざん防
止用インクリボンは、シート状基材層、該シート状基材
層上に設けられたインク層、及び該シート状基材層の該
インク層の形成された面の反対面上に形成され、弾性率
の異なる少なくとも２種の材料からなる背面層を具備す
ることを特徴とする。

【０００９】本発明の個人認証媒体は、基材層と、シー
ト状基材層、該シート状基材層上に設けられたインク
層、及び該シート状基材層の該インク層の形成された面
の反対面上に形成され、弾性率の異なる少なくとも２種
の材料からなる背面層を有する偽造、改ざん防止用イン
クリボンを用いることにより、前記基材層上に形成され
た記録画像層とを具備することを特徴とする。

【００１０】

【発明の実施の形態】本発明の偽造、改ざん防止用イン
クリボンは、背面層、基材層、及びインク層を順次積層
した構造を有するもので、その背面層が弾性率の異なる
少なくとも２種の材料からなる。

【００１１】また、本発明の個人認証媒体は、基材と、
基材上に、上述のインクリボンを用いて形成された記録
画像とを有する。

【００１２】本発明のインクリボンを用いて背面からサ
ーマルヘッド等の加熱手段を押圧し、画像を形成する
と、背面層に用いられる２種類の材料の弾性率の違いに
より、押圧時に、背面層に歪みが生じ、熱伝導が不均一
となって、得られる記録画像に特異な形状の印字抜けが
発生する。

【００１３】このような印字抜けは、本発明のインクリ
ボンに特異な形状であることから、他のインクリボンを
用いて模倣することは困難である。このため、この印字
抜けの形状を識別することにより、人物画像部分を貼り
替えて、改ざんされるＩＤカード等の個人認証媒体の真
偽の判別を容易に行うことができる。

【００１４】背面層は、好ましくは第１の弾性率を有す
る有形材料と、第１の弾性率よりも低い第２の弾性率を
有し、この有形材料を含むように層構造を形成するため
の層形成材料とを含む。

【００１５】このような背面層を用いることにより、得
られる画像に、この有形材料の形状に応じた印字抜けを
発生させることができる。

【００１６】このような有形材料は、例えば微粒子状、
フィルム状、及びパターン形成された塗布膜等があげら
れる。

【００１７】微粒子としては、例えばシリコーン粒子、
アクリル、ナイロン、カーボンブラック、及びガラスビ
ーズ等が挙げられる。

【００１８】例えば微粒子状の有形材料を用いた場合、
作成したインクリボンのインク層形成面と、プラテン上
の受像シートとを当接し、インクリボンの背面層側から
サーマルヘッド等により熱エネルギーを加えると、イン
クリボン背面層に含有されるシリコーン粒子部分がサー
マルヘッドに当たり、インクリボン背面層に歪みが生じ
るため、シリコーン粒子の周りに空隙が発生する。この
空隙部分ではサーマルヘッドの熱エネルギーがインクリ
ボンヘ十分に伝わらず、インクリボンの色材が受像シー
トヘ転写しないために色抜けを発現させることができ
る。また、シリコーン粒子部分では、シリコーン粒子を
介してサーマルヘッドの熱エネルギーがインクリボンに
伝わるため、色抜けは発現しない。

【００１９】また、本発明のインクリボンに用いられる
シート状基材としては、例えばポリエチレンテレフタレ
ート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル、及び
ナイロン等が挙げられ、シート状基材の厚みは、１〜１
０μｍの範囲が好ましい。

【００２０】また、本発明のインクリボンに用いられる
インク層として、イエロー色、マゼンタ色、シアン色、
ブラック色及び蛍光色のいずれかの単色でも良く、また
これらの色の任意の組み合わせでも良い。例えば、順次
並列して配列されたイエロー色インク層、マゼンタ色イ
ンク層、及びシアン色インク層を含むカラーインク層を
用いることができる。

【００２１】また、インクリボンとしては、色材に昇華
性染料を用いた昇華型熱転写インクリボン、あるいは色
材に顔料を用いた溶融型熱転写インクリボンのいずれを
用いることも可能である。

【００２２】また、記録画像は、人物画像に制限される
ものではなく、文字情報、記号、その他の画像が適用さ
れ得る。また、記録画像は、カラー画像に制限されるも
のではなく、白黒画像も使用し得る。

【００２３】

【実施例】以下、図面を参照し、本発明を具体的に説明
する。

【００２４】実施例１ 図１は、本発明に係るインクリボンの一例を表す概略断
面図を示す。

【００２５】図示するように、このインクリボンは、少
なくとも次に述べる３つの部材や層からなるもので例え
ば厚さ４．５μｍのポリエチレンテレフタレートフィル
ムからなる基材シート２と、基材シート２上に設けられ
た例えば膜厚約１μｍインク層４と、基材シート２のイ
ンク層４が形成された面と反対の面上に形成された例え
ば膜厚約１μｍの背面層３とからなり、背面層３は、層
形成材料１５と、この層形成材料１５内に含まれ、層形
成材料１５よりも高い弾性を有する例えば粒径約０．７
μｍのシリコーン粒子とからなる。

【００２６】このインクリボンは、以下のような方法で
製造することができる。

【００２７】基材シートとして厚さが４．５μｍのポリ
エチレンテレフタレートフィルムを用意した。その一方
の面に下記の組成の樹脂液１を塗布し、１４０℃で１分
間、加熱・乾燥して、膜厚が約１μｍの背面層を形成し
た。

【００２８】背面層塗布用樹脂液１組成 バインダー樹脂……………………………８０重量部 シリコーン粒子（粒子径約０．７μｍ）…５重量部 シリカ…………………………………………５重量部 シリコーンオイル……………………………１重量部 次に、各々、イエロー色昇華性染料、マゼンタ色昇華性
染料、及びシアン色昇華性染料とバインダー樹脂とから
なる３色のインク層塗布用樹脂液を用意した。上記した
方法で作成した背面層付き基材シートのもう一方の面
に、３連のグラビアコーターを用いて乾燥後の塗膜厚み
が約１μｍになるように３色のインク層塗布用樹脂液を
塗工することにより、インク層を面順次に形成した。こ
のようにして、図１に示すインクリボンを得た。

【００２９】次に、得られたインクリボン１のインク層
と、プラテン８上に配置された個人認証媒体の受像シー
ト７とを当接し、インクリボン１の背面層側から、図示
しない昇華型熱転写印刷機のサーマルヘッド６により、
熱エネルギーを加え、画像記録を行った。

【００３０】図２は、本発明のインクリボンを用いた画
像記録の様子を説明するための図を示す。

【００３１】この画像記録の際、インクリボン背面層３
のうちシリコーン粒子５のある部分は、背面層３の他の
部分より弾性が高いため、サーマルヘッド６で押圧する
と、図示するように歪みが生じる。この歪みのために、
シリコーン粒子５の周りの背面層３と受像シート７との
間に、空隙９が発生する。この空隙９の部分では、サー
マルヘッド６の熱エネルギーがインクリボン１のインク
層ヘ十分に伝わらず、インクリボン１の昇華性染料が受
像シート７ヘ移動しないために、得られた画像に色抜け
を発現させる。一方、シリコーン粒子５のある部分で
は、シリコーン粒子５を介してサーマルヘッド６の熱エ
ネルギーがインクリボン１のインク層に伝わるため、色
抜けは発現しない。

【００３２】ここでは、インク層の色材として昇華型染
料を使用した昇華型熱転写インクリボンの例を挙げた
が、色材として顔料を用いた溶融型熱転写インクリボン
を使用することも可能であり、この場合には、印刷機と
して溶融型熱転写印刷機を使用することができる。

【００３３】図３は、本発明に係るインクリボン１を用
いて形成された色抜けの一例を表す図を示す。上記イン
クリボン１を用いて得られた画像は、図示するように、
シリコーン粒子５に相当する部分の周囲に直径約０．１
ｍｍのドーナツ型の色抜けを生じたものとなる。また、
図示しないが、二重の楕円形状の色抜けを発現させるこ
ともできる。

【００３４】図４は、本発明に係るインクリボン１を用
いて形成された人物画像を有するＩＤカードの一例を表
す平面図を示す。

【００３５】このＩＤカード２０は、例えば、その一方
の面上に受像層が形成された白色ポリエステル製カード
基材を用意し、受像層上に、本発明に係るインクリボン
を用いて人物画像１４を形成し、次に文字情報１６を記
録し、その後、紫外線硬化性樹脂を用いて保護層を形成
することによって得た。

【００３６】図示するように、このＩＤカード２０上に
は、人物画像１４と、文字情報１６が設けられており、
この人物画像１４には、所定のパターンの色抜け１３が
形成されている。この色抜け１３は、偽造・改ざん防止
効果を有する特異な形状となり、真偽判定が容易に行わ
れ得ることがわかった。

【００３７】実施例２ 図５に、本発明に係るインクリボンの他の一例を表す概
略断面図を示す。また、図６に、このインクリボン１’
の背面層の一部を表す図を示す。

【００３８】まず、基材シート２’上に、背面層を、以
下のようにして形成した。

【００３９】まず、基材シート２’として厚さが４．５
μｍのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し
た。このポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の
面上に、下記組成を有するシリコーン樹脂液を、グラビ
ア印刷機を用いて、図６に示すような格子状のパターン
に塗布し、１４０℃で１分間、加熱、乾燥することによ
り、膜厚約０．７μｍのパターン印刷を行ない、シリコ
ーンパターン層１５を形成した。

【００４０】シリコーン樹脂液組成 メチルエチルケトン…８０重量部 シリコーン樹脂…１０重量部 バインダー樹脂…１０重量部 次に、得られたシリコーンパターン層１５上に、下記組
成を有する背面層形成材料塗布液を塗布、乾燥すること
により、シリコーンパターン層１５を含む膜厚約１μｍ
の背面層３’を形成した。

【００４１】背面層形成材料塗布液組成 バインダー樹脂…１０重量部 シリカ…５重量部 シリコーンオイル…１重量部 上記した方法で作成した背面層付き基材シートのもう一
方の面に、実施例１と同様にして、インク層４’を面順
次に形成し、図５に示すように、本発明に係るインクリ
ボンの他の一例を得た。

【００４２】得られたインクリボンを用いて、画像形成
を行ったところ、複数の矩形状の色抜とけが発生した。
この色抜けは、偽造・改ざん防止効果を有すると特異な
形状となり、真偽判定が容易に行われ得ることがわかっ
た。

【００４３】比較例１下記背面層塗布用樹脂液２を用い
る以外は実施例１と同様にして、膜厚が約１μｍの背面
層を形成した。

【００４４】背面層塗布用樹脂液２組成 バインダー樹脂…………………８０重量部 シリカ………………………………５重量部 シリコーンオイル…………………１重量部 得られた背面層付き基材シートのもう一方の面に、実施
例１と同様にして膜厚が約１μｍのインク層を形成し、
インクリボンを得た。

【００４５】得られたインクリボンを用いて形成された
画像は、実施例１及び実施例２に発生したような特異な
形状の色抜けは発現しなかった。

【００４６】

【発明の効果】本発明のインクリボンを用いると、背面
層に用いられる２種類の材料の弾性率の違いにより、得
られる記録画像に偽造・改ざんの困難な特異な形状の印
字抜けを有する画像を、低コストで容易に形成すること
ができる。

【００４７】また、本発明の個人認証媒体は、記録画像
に偽造・改ざんの困難な特異な形状の印字抜けが低コス
トで簡便に形成され、また、この印字抜けの形状を識別
することにより、真偽の判別が簡単に行われる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るインクリボンの一例を表す概略断
面図

【図２】本発明のインクリボンを用いた画像記録の様子
を説明するための図

【図３】本発明に係るインクリボンを用いて形成された
色抜けの一例を表す図

【図４】本発明に係るインクリボンを用いて形成された
人物画像を有するＩＤカードの一例を表す平面図

【図５】本発明に係るインクリボンの他の一例を表す概
略断面図

【図６】図５に示すインクリボンの背面層を表す図

【符号の説明】

１…インクリボン ２…基材シート ３…背面層 ４…インク層 ５…シリコーン粒子 ６…サーマルヘッド ７…受像シート ８…プラテン ９…空隙 １０…インク層 １１…色抜け部 １２…シリコーン粒子に起因する記録部 １３…特異な形状の色抜け １４…人物画像

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 2C005 HA02 HA19 HB01 KA45 LA11 LA30 LB08 2C068 AA02 AA06 AA08 AA15 AA21 BB04 BB08 BB21 BB22 BC03 BD17 BD49 2H111 AA01 AA07 AA26 AA27 BA03 BA08 BA14 BA32 BA55 BA61 BA76

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シート状基材層、該シート状基材層上に
   設けられたインク層、及び該シート状基材層の該インク
   層の形成された面の反対面上に形成され、弾性率の異な
   る少なくとも２種の材料からなる背面層を具備する偽
   造、改ざん防止用インクリボン。
2. 【請求項２】 前記背面層は、第１の弾性率を有する有
   形材料と、該第１の弾性率よりも低い第２の弾性率を有
   し、該有形材料を含むように層構造を形成するための層
   形成材料とを含む請求項１に記載のインクリボン。
3. 【請求項３】 前記有形材料は、微粒子状、フィルム
   状、及びパターン形成された塗布膜からなる群から選択
   される少なくとも１種からなる請求項１に記載のインク
   リボン。
4. 【請求項４】 前記インク層は、順次並列して配列され
   たイエロー色インク層、マゼンタ色インク層、及びシア
   ン色インク層を含む請求項１に記載のインクリボン。
5. 【請求項５】 基材層と、シート状基材層、該シート状
   基材層上に設けられたインク層、及び該シート状基材層
   の該インク層の形成された面の反対面上に形成され、弾
   性率の異なる少なくとも２種の材料からなる背面層を有
   する偽造、改ざん防止用インクリボンを用いることによ
   り、前記基材層上に形成された記録画像層とを具備する
   個人認証媒体。