JP2001008577A - 生殖毒性化学物質のモニタリングに使用されるトランスジェニックマウス - Google Patents

生殖毒性化学物質のモニタリングに使用されるトランスジェニックマウス

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JP2001008577A
JP2001008577A JP11184909A JP18490999A JP2001008577A JP 2001008577 A JP2001008577 A JP 2001008577A JP 11184909 A JP11184909 A JP 11184909A JP 18490999 A JP18490999 A JP 18490999A JP 2001008577 A JP2001008577 A JP 2001008577A
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transgenic mouse
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galactosidase
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Toshiaki Nose
俊明 野瀬
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 精子形成阻害効果を有する、生殖毒性化学物
質のモニタリングに使用されるMvh-lacZトランスジェニ
ックマウスの提供。 【解決手段】 Mvh 遺伝子のプロモータの制御下にある
β−ガラクトシダーゼ遺伝子を導入したトランスジェニ
ックマウスの成体雄または母胎に被検査物質を投与した
場合にマウス幼若精母細胞に特異的に産出するβ−ガラ
クトシダーゼの酵素活性を測定して、該被検査物質が有
する精子形成阻害効果による生殖阻害を定量的に評価す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、精子形成阻害効果
を有する、生殖毒性化学物質のモニタリングに使用され
るMvh-lacZトランスジェニックマウスに関する。さらに
詳しくは、本発明は、Mvh 遺伝子のプロモータの制御下
にあるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を導入したトランス
ジェニックマウス、生殖毒性を有する恐れのある被検査
物質による該マウスの精子形成阻害効果を定量的に評価
するための該マウスの使用、該マウスを使用する該被検
査物質が有する精子形成阻害効果のモニタリングシステ
ム、該マウス精巣の初代培養細胞を用いる、被検査物質
による該マウス精巣のイン・ビトロ精子形成阻害効果試
験法、および二重トランスジェニックマウスを用いる被
検査物質の生殖毒性を試験する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】残留性有機塩素化合物を始め、ノニルフ
ェノール、ビスフェノールA、フタル酸エステルなどの
汎用化学物質、アトラジン、ビンクロゾリンなどの農薬
を含め各種化合物が内分泌系に影響を与える可能性のあ
る物質として、指摘されている。これらのヒトに毒性を
与える可能性のある物質は、癌、精子数の減少、生殖毒
性、神経毒性、免疫毒性等のヒト内分泌系毒性を有する
ものと予想されている。しかしながら、内分泌撹乱物質
の哺乳動物生殖腺の機能に及ぼす影響をモニタリングす
るシステムは、未だ確立されておらず、疫学的調査およ
び魚類などの非哺乳類の性ホルモン分泌などに及ぼす影
響が調べ始められたに過ぎない。魚類、爬虫類、両生類
などで得られた結果からホルモン環境の変異を感知する
ことは可能であるが、例えば性決定機構の違いなどから
分かるように、非哺乳動物に対する結果からヒトへの影
響を直接的に類推することには問題がある。従来の化学
物質の生殖毒性検査は、被検体の精巣組織像の病理学的
解析、貯精嚢から単離する精子数の算定、および内在性
遺伝子産物の分子生物学的検出を手法として行われてき
た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来法では、
操作の難易度が高く、検定者の熟練した技術が必要とさ
れてきた。また、動物個体に被検査物質を投与し、血中
や臓器内のホルモン量を測定したり、組織学的に変異を
検索するなどの方法は、専門学的な知識や技術、設備等
を必要とするために実施可能な施設が限定される上に、
技術や測定機器の違いによるデータのバラツキなども生
じやすく、異なる施設で得られた結果の比較も困難なの
が現状である.さらにまた、多検体の同時処理に問題が
生じるので、正確な科学的数量化が困難であった。この
問題を克服するには精子形成の度合いを既存の測定機器
を用いる精密な生化学的手法で測定するシステムの開発
が必要とされていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、このよう
な生殖毒性化学物質のモニタリングシステムの開発を鋭
意検討した結果、Mvh遺伝子のプロモータの制御下に
あるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を導入したトランスジ
ェニックマウスを作成したところ、β−ガラクトシダー
ゼ遺伝子がマウス幼若精母細胞に特異的に発現するこ
と、トランスジェニックマウスの成体雄または母胎(胎
児)に被検査物質を投与した場合にマウス幼若精母細胞
に特異的に産出するβ−ガラクトシダーゼの酵素活性を
測定することにより、該被検査物質による該マウスの精
子形成阻害効果を定量的に評価できることを見出し、本
発明を完成するに至った。
【0005】本発明は、以下の発明を包含する。 (1) Mvh遺伝子のプロモータの制御下にあるβ−
ガラクトシダーゼ遺伝子を導入したトランスジェニック
マウス。 (2) β−ガラクトシダーゼをマウス幼若精母細胞に
特異的に産出する1項に記載のトランスジェニックマウ
ス。 (3) 1項または2項に記載のトランスジェニックマ
ウスの成体雄または母胎に被検査物質を投与した場合に
マウス幼若精母細胞に特異的に産出するβ−ガラクトシ
ダーゼの酵素活性を測定して、該被検査物質が有する精
子形成阻害効果による生殖阻害を定量的に評価するため
の該トランスジェニックマウスの使用。
【0006】(4) 1項または2項に記載のトランス
ジェニックマウスの成体雄または母胎に被検査物質を投
与した場合にマウス幼若精母細胞に特異的に産出するβ
−ガラクトシダーゼの酵素活性を測定することを特徴と
する該被検査物質が有する精子形成阻害効果のモニタリ
ングシステム。 (5) トランスジェニックマウス精巣の初代培養細胞
を用いることを特徴とするイン・ビトロにおける被検査
物質による該トランスジェニックマウス精巣の精子形成
阻害効果試験法。 (6) 1項又は2項に記載のトランスジェニックマウ
スと他の精子分化段階において他の指標遺伝子産物を産
出する外来遺伝子を導入したトランスジェニックマウス
の交配によって作出した二重トランスジェニックマウス
に被検査物質を投与した場合にマウス幼若精母細胞に特
異的に産出するβ−ガラクトシダーゼの酵素活性および
該外来遺伝子産物を測定して該被検査物質による該マウ
スの精子形成阻害効果を定量的に評価することを特徴と
する該被検査物質の生殖毒性を試験する方法。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のトランスジェニックマウス(遺伝子改変マウ
ス)は、Mvh遺伝子のプロモータの制御下にあるβ−
ガラクトシダーゼ遺伝子を含有するDNAを受精卵また
は初期胚の時期に導入して得られる形質転換マウスであ
る。具体的には、Mvh遺伝子のプロモータの下流にβ
−ガラクトシダーゼ遺伝子が位置する単離DNA(導入
遺伝子)を、マイクロマニュピュレータを用いて1 細胞
期の受精卵の雄性前核中へ顕微鏡下微量注入する(マイ
クロインジェクション法)。生き残った受精卵を仮親の
卵管に移植した後、該移植したマウスを飼育し、生まれ
た仔マウスから、サザンブロット解析、PCR により導入
遺伝子を有する個体をスクリーニングする。具体的に
は、得られたトランスジェニックマウスの尾から得た染
色体DNAをサザンブロット解析し、β−ガラクトシダ
ーゼ遺伝子を受け継いだ個体を得た。これは、β−ガラ
クトシダーゼ遺伝子が次世代に受け継がれることを示す
ものであり、動物モデルとして有用なトランスジェニッ
クマウスの作製が確認された。また、このトランスジェ
ニックマウス精巣から得た全RNAをRT−PCR法で
分析した結果、β−ガラクトシダーゼ遺伝子のmRNA
の発現が認められた。
【0008】以上のインビボおよびインビトロの結果
は、本発明のトランスジェニックマウスにおいて、β−
ガラクトシダーゼ遺伝子が発現されていることを示して
おり、このトランスジェニックマウスがβ−ガラクトシ
ダーゼ遺伝子を過剰発現する実験動物として有用である
ことを示唆している。したがって、本発明は、Mvh遺
伝子のプロモータの下流にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子
が位置する導入遺伝子をマウス受精卵に微量注入し、得
られた卵細胞を偽妊娠雌性マウスの卵管に移植後、該移
植されたマウスを飼育し、生まれた仔マウスから、β−
ガラクトシダーゼ遺伝子を有する仔マウスをスクリーニ
ングすることからなるトランスジェニックマウスの作製
法を提供する。受精卵細胞段階におけるβ−ガラクトシ
ダーゼ遺伝子の導入は、対象マウスの胚芽細胞および体
細胞のすべてにおいて該遺伝子が過剰に存在するように
確保される。トランスジェニック後の作製マウスの胚芽
細胞において該遺伝子が過剰に存在することにより、作
製マウスの子孫がその胚芽細胞および体細胞のすべてに
該遺伝子を過剰に有する。該遺伝子を受け継いだこの種
のマウスの子孫は、その胚芽細胞および体細胞のすべて
にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を過剰に含有する。しか
しながら、本発明のトランスジェニックマウスにおいて
は、β−ガラクトシダーゼ遺伝子は、Mvh遺伝子のプ
ロモータの制御下にあるので、β−ガラクトシダーゼ遺
伝子は、マウス幼若精母細胞に特異的に発現する
【0009】導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモ
ザイゴート(ホモ接合体)マウスを取得し、その雌雄の
マウスを交配することによりすべての子孫が該遺伝子を
安定に保持し、また該遺伝子を過剰に有することを確認
して、通常の飼育環境で繁殖継代することができる。ト
ランスジェニックマウスが有する内在性の遺伝子とは異
なる外来性遺伝子であるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を
マウスまたはその先祖の受精卵に転移する際に使用され
る受精卵は、雄マウスと雌マウスを交配させることによ
って得られる。受精卵は、自然交配によっても得られる
が、雌マウスの性周期を人工的に調節後、雄マウスを交
配させるのが好ましい。本発明のトランスジェニックマ
ウスの作製には、上記したDNA微量注入法が最も一般
的であるが、その他、上記DNAを含有するウイルスベ
クターを用いる方法およびES細胞を用いる方法も使用
できる。ウイルスベクター法によれば、透明帯を除去し
た4〜8細胞期胚にウイルスベクターを感染後、胚盤胞
まで発生させて偽妊娠させた代理母の子宮に戻す。ES
細胞(embryonic stem cell、胚性
幹細胞)を経由する方法では、DNAを導入したES細
胞からキメラマウスを経て、トランスジェニックマウス
を作製する。
【0010】上記したβ−ガラクトシダーゼ遺伝子は、
本発明のレポーターシステムで指標遺伝子として使用さ
る大腸菌β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)であり、
その構造遺伝子部分(3749bp)は、市販のプラスミドで
あるpSV-β−ガラクトシダーゼ コントロール ベクタ
ー(pSV-β−galactosidase control vector) (Promeg
a 社, cat#E1081:ジーンバンク アクセス番号X65335)
から制限酵素HindIIIとSalIの2重消化反応によって切
り出される3.7kb β−ガラクトシダーゼ遺伝子断片であ
る。
【0011】Mvh遺伝子のプロモータである、マウス
ゲノムDNA由来転写調節領域は、マウスvasaホモログ
(Mvh :mouse vasa-homolog) 遺伝子座に由来する。Mv
h はショウジョウバエ(Drosophila)の生殖細胞決定因
子の一つである Vasa 遺伝子のマウス相同遺伝子(homol
og) としてマウス精巣cDNAライブラリーから単離され
(Y. Fujiwara, T. Komiya, H.Kawabata, M. Sato, H.
Fujimoto, M. Furusawaand T. Noce. Proc. Natl. Aca
d. Sci.USA, 91, 12258-12262, 1994)、その遺伝子座
はマウス第13番染色体の遠端部に座位することが判明し
ている(K. Abe and T. Noce. Mammal. Genome, 8, 622
-623, 1997)。
【0012】Mvh ゲノム遺伝子領域はマウス129SVJ系統
のラムダFixII ゲノムライブラリー(STRATAGENE社, コ
ード番号SC946313) からクローニングされた。この領域
の中にcDNAから推定されるアミノ酸配列の翻訳開始点を
含む第2転写単位(エキソン)が同定され、さらにその
上流に遺伝子の転写開始点となる第一エキソンが同定さ
れた。用いた領域はこの第1 エキソンから上流(5'-
側)の約5.5kbのDNA 配列であり(この領域の制限酵素
地図を図1に示す)、上記ファージクローンからKpnIと
SalIの2 重切断により切り出された。
【0013】上記2 つの遺伝子断片をもとにマウスに導
入する人工遺伝子ベクターの構築及びトランスジェニッ
クマウスの作成を以下の手順で行った。 i)骨格となるプラスミッドとしては、ホタル・ルシフェ
ラーゼ遺伝子を含むpGL-ベーシック ベクター(pGL-Ba
sic Vector:Promega, cat#E1751: ジーンバンクアクセ
ス番号 U47295)を用い、そのHindIII とSalI部位を切断
してルシフェラーゼ遺伝子部分(1957bp)を切り出す。残
ったプラスミッド本体に対して、上記HindIII/SalI断片
のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を挿入したプラスミッド
pG-lacZを構築する。 ii) 次に、プラスミッド pG-lacZをKpnI部位とXhoI部位
の切断で開環して、上記Mvh 上流域のKpnI/SalI 断片を
lacZ上流に挿入したプラスミッドMvh-lacZを構築する。
この段階で導入したMvh 上流域がプロモーター(転写活
性化領域)活性を持つことは、マウス精巣由来細胞への
一過性遺伝子導入操作によってlacZ陽性細胞が得られる
ことから確認された。 iii)大量に高純度で精製したプラスミッドMvh-lacZから
KpnIと SalI 切断によりプラスミッド本体を切り出し、
残りの約9.2kb のMvh-lacZ部分を分離精製して導入用遺
伝子とした(この構造を図2に示す)。 iv) トランスジェニックマウスは、Mvh-lacZの 7ng/μ
l (PBS )濃度のDNA 溶液をC3H/C57B6 交配で得られた
受精卵前核に顕微注入して得られた。
【0014】卵管移植操作で得られた産仔37匹中、ゲノ
ム解析の結果、トランスジェニックは雄3匹、雌2 匹で
あった。このうち雄3匹(10L, 11L, 12L)についてC57B
6 雌との交配を行い、その子孫への導入遺伝子の継代を
確認して系統化した。上記のゲノム解析は、成体から切
断した尾部先端部組織からゲノムDNA を抽出し、これを
EcoRI 消化したDNA(20μg)をアガロースゲル電気泳動で
展開し、サザンブロットしたフィルターに対して、lacZ
断片を32P-dCTPラベルしたプローブで検出するサザン解
析によって行った。
【0015】本発明により、市販の酵素活性検出試薬キ
ットと測定機器を利用できる指標形質(大腸菌β−ガラ
クトシダーゼ)を精子形成の特定時期に発現するように
設計した人工遺伝子をマウスに導入して得られる、純化
したトランスジェニックマウス系統は、β−ガラクトシ
ダーゼを減数分裂期以降に特異的に産出することが確認
された。これによって、このトランスジェニックマウス
を利用した生殖毒性の精密測定試験系の確立が可能とな
った。すなわち、本発明のトランスジェニックマウス系
統は、大腸菌β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)を精
母細胞前期に発現する特性を持ち、この酵素活性を指標
にした生化学的定量及び組織学的染色法によって精子形
成分化に及ぼす化学物質の検査試験により、該化学物質
の生殖毒性を測定するための生体試験材料として使用で
きる。
【0016】本発明の一つの実施態様として、本発明の
トランスジェニックマウスの成体雄または母胎(胎児)
に被検査物質(化学物質)を投与した場合にマウス幼若
精母細胞に特異的に産出するβ−ガラクトシダーゼの酵
素活性を測定することにより、該被検査物質(化学物
質)による該マウスの精子形成阻害効果を定量的に評価
して、該被検査物質が有する生殖毒性を決定できる。ま
た、本発明は、トランスジェニックマウスの成体雄また
は母胎に被検査物質(化学物質)を投与した場合にマウ
ス幼若精母細胞に特異的に産出するβ−ガラクトシダー
ゼの酵素活性を測定することを特徴とする該被検査物質
が有する精子形成阻害効果のモニタリングシステムを提
供する。本発明のモニタリングシステムは、生殖阻害物
質の同定またはその強さの程度を決定するのに使用され
る。さらに、本発明のトランスジェニックマウスの精巣
の初代培養細胞を用い、イン・ビトロにおける被検査物
質(化学物質)が有する該トランスジェニックマウス精
巣の精子形成阻害効果による生殖阻害を試験できる。
【0017】さらにまた、本発明は、トランスジェニッ
クマウスと他の精子分化段階において他の指標遺伝子産
物を産出する外来遺伝子を導入したトランスジェニック
マウスの交配によって作出した二重トランスジェニック
マウスに被検査物質を投与した場合にマウス幼若精母細
胞に特異的に産出するβ−ガラクトシダーゼの酵素活性
および該外来遺伝子産物を測定して該被検査物質による
該マウスの精子形成阻害効果を定量的に評価することを
特徴とする該被検査物質の生殖毒性を試験する方法を提
供する。他の精子分化段階に他の指標遺伝子産物を産出
するトランスジェニックマウスとしては、減数分裂後に
半数体細胞となった精子細胞期に発現するプロタミン-1
遺伝子のプロモーターにヒト成長ホルモン遺伝子を連結
した外来遺伝子を遺伝子導入して得られたトランスジェ
ニックマウス(Zambrowicz BP, Harendza CJ, Zimmerma
nn JW, Brinster RL, Palmiter RD. Proc Natl. Acad.
Sci USA, 90, 5071-5075, 1993) 、および同時期の精子
細胞に発現する熱ショック蛋白質70t遺伝子のプロモー
ター(Ito Y, Ando A, Ando H, Ando J, Saijoh Y,Inoko
H, Fujimoto H. J. Biochem. Tokyo, 124, 347-353, 1
998) の制御下ホタルのルシフェラーゼ遺伝子を発現す
るトランスジェニックマウス等を使用できる。
【0018】産生したヒト成長ホルモンについては、抗
体による免疫学的定量法によって、また同じく産生した
ルシフェラーゼについては、その酵素活性の蛍光測定に
よって、各々同一試料からその発現量を定量化すること
ができる。二重トランスジェニックマウスの幼若精母細
胞に特異的に産出するβ−ガラクトシダーゼの産生量お
よび他の精子分化段階において発現する他の指標遺伝子
の産物である、ヒト成長ホルモンやルシフェラーゼ等の
蛋白の産生量は、精子細胞の異なる分化段階におけるβ
−ガラクトシダーゼ遺伝子およびその他の指標遺伝子の
相対的発現度の指標を提供する。
【0019】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的
に説明する。ただし、これらの実施例は説明のためのも
のであって、本発明の技術的範囲を限定するものではな
い。1 )X-gal 染色法を用いたトランスジェニック精巣のβ
−ガラクトシダーゼ発現細胞の検出 導入遺伝子Mvh-lacZのマウス臓器での発現は、β−ガラ
クトシダーゼ検出の常法とされるX-gal 染色法で検定さ
れる。トランスジェニックマウス(11L 、生後2ヶ月)
の各種臓器(精巣、脳、腎臓、肝臓、脾臓、骨格筋、
肺)の一部を摘出し、PBS ( リン酸緩衝生理食塩水、Ph
osphate Buffer Saline)で洗浄後、固定液(1%ホルマリ
ン, 0.2%グルタルホルムアルデヒド, 0.02% ノニデット
P40 (NP40)を含むPBS )を用い、室温で30分間振盪して
固定する。PBS で2回(各30分)洗浄後、X-gal 染色液
[5mMフェロシアン化カリウム(K4Fe(CN)63H2O ), 5mM
フェリシアン化カリウム(K3Fe(CN)6 ), 2mM MgCl2,
0.02% NP40 を含むPBS に10%X-gal ( 5−ブロモー4−
クロローインドリルーD−ガラクトシド, w/v ホルムア
ミド:宝酒造cat#9031) を1/100 量加えた液] に浸けて
37℃で呈色反応を行う。この操作によってβ−ガラクト
シダーゼ発現細胞は青色に染色されるが、上記臓器にお
いて呈色は精巣のみに検出され、その呈色に要する時間
は60分で充分とされた。
【0020】さらに、呈色した精巣をパラフィン包埋し
て組織切片とすることで顕微鏡下に青染色されたβ−ガ
ラクトシダーゼ発現細胞を観察することができる。その
結果、β−ガラクトシダーゼ陽性は全ての精細管におい
て減数分裂の前期精母細胞以降の精子形成細胞にのみ特
異的に見られ、セルトリ細胞や間質細胞には全く反応は
見られなかった。この精子形成段階特異性は、幼若期精
巣の染色によってより明確に判別することができた。生
後12日目の幼若精巣は、生後1週目から始まる精子分化
第1波の過渡期に当たり、その精子形成段階は精母細胞
細糸期の出現時期に相当する。この時期のMvh-lacZトラ
ンスジェニックマウス精巣を上記のX-gal 染色法で呈色
すると約1/10の精細管部位において局所的に青色呈色が
見られ、その組織像からは精細管内腔に存在する細糸期
精母細胞が染色されていることを判別することができた
(生後12日目のMvh-lacZトランスジェニックマウスのX-
gal 精巣の染色像を示す図3参照)。
【0021】以上の結果は、Mvh-lacZトランスジェニッ
クマウスにおけるβ−ガラクトシダーゼ発現が精母細胞
細糸期に開始することを明示している。従来、lacZを精
子形成特異的遺伝子の発現指標としたトランスジェニッ
クマウスには、アンギオテンシン変換酵素(Angiotensi
n-Converting Enzyme (ACE) )( T. Howward, R.Balog
h, P.Overbeek and K.E. Bernstein Mol. Cell. Biol.,
13, 18-27, 1993)、Zfy-1 ( B.P. Zambrowicz, J.W.
Zimmermann, C.J. Harendza, E. M. Simpson,D.C. Pag
e, R.L. Brinster and R.D. Palmiter 、 Development,
120, 1549-1559, 1994)の報告例があるが、これらの
場合はいずれも成熟精母細胞や精子細胞以降の発現を示
しており、Mvh-lacZトランスジェニックマウスは、精子
形成の重要な制御段階となる初期減数分裂の進行を提示
する例として新規であり、同時に減数分裂制御のモデル
系としての有用性が高いものである。
【0022】2 )β−ガラクトシダーゼ酵素活性測定に
よる定量化 β−ガラクトシダーゼの酵素活性を測定する方法として
は、発色基質を用いた吸光度測定法と近年開発された発
光基質を用いた化学発光測定法があるが、検出感度の点
において、後者の方法が圧倒的に優れているので、発光
測定法を用いたMvh-lacZトランスジェニックマウス精巣
のβ−ガラクトシダーゼ発現の定量検定を以下に示す。 i) Mvh-lacZ トランスジェニック雄マウスおよび対照試
料として同腹の野生型雄マウス(共に生後2ヶ月齢)か
ら精巣を摘出する。精巣を覆う被膜を除去し、その約1/
4 を切断分離してPBS 中に入れ(他の部分は組織解析等
の他の解析に使用する)、激しいピペッティングによっ
て細胞を懸濁し、遠心によって細胞のみを沈殿させ、酵
素活性測定試料とした。 ii) 酵素活性測定には複数の市販測定キットが利用でき
る。ここではGalacto-Star (哺乳動物細胞用β−ガラク
トシダーゼ遺伝子(β−galactosidase reportergene f
or mammalian cell); TROPIX cat#BM100S)を使用し
た。先ず、上記組織試料を添付の細胞溶解液( 溶菌緩衝
液(Lysis buffer)に最終0.5mM DTT (ジチオトレイト
ール)を添加したもの) 250 μl を入れたチューブ(1.
5ml )に浸けて懸濁し、ドライアイス・エタノールでの
凍結、37℃水浴での融解を2 度行った後、遠心分離によ
って上清部分(約200 μl )を別のチューブ(1.5ml )
に移す。
【0023】iii)野生型、トランスジェニックの各々の
試料について、OD280nm の吸光度を測定して、蛋白質を
定量する。1/4 精巣を用いた場合、各々1.70mg/ml, 1.7
5mg/ml濃度の液が得られた。 iv) 化学発光測定試料として、10μl の抽出液を用い
る。ここでは使用蛋白量の適正値を得るため、1.7mg/ml
から最小0.017mg/mlの100 倍希釈(希釈液は上記の細胞
溶解液)の範囲で測定した。野生型とトランスジェニッ
クの蛋白濃度を一定にして、5 段階の希釈系列液、各10
μl を調製し、測定用チューブ(5ml; SARSTEDT No.55.
476)に置く。これにキットに添付されている反応液200
μl (反応緩衝液(reaction buffer )に添付のgalact
on-plus 液を 1/50 量加えて調製)を加え、室温で60分
放置する。 v)上記の反応液をルミノメーター(Lumat LB9501; Bert
hold社) で測定する。測定時間は5 秒間とした。
【0024】測定結果から酵素比活性及びトランスジェ
ニック(Tg)/ 野生型(Wt)の相対比を算定した値を下記の
表1に示した(値は2回の実験の平均値)。この結果
は、野生型に対してMvh-lacZトランスジェニックマウス
精巣におけるβ−ガラクトシダーゼの発現は約100200倍
の比活性増加として検出されること、即ち薬物等の精子
形成阻害の効果を100200度数のレンジで評価が可能であ
ることを示す。、さらに、蛋白濃度の観点からは約1.0
0.01mg/mlの広い範囲で有効な比較検定が可能であるこ
と、最適濃度は35μg/ml近傍であり、これは精巣全体の
約1/200 量の組織を250 μl 溶解液に溶かした試料を用
いることに匹敵することが示される。また、調製した蛋
白抽出液は-70 ℃フリーザーにて安定に保存することが
可能であり、複数回のサンプルを同時に比較することが
できる。この実験では手動操作のルミノメーターを用い
て測定したが、96穴プレートを用いた多検体用の自動プ
レートリーダーが市販されており、一般には、これらの
機器を用いて測定することもできる。
【0025】
【表1】 *(x104RLU/mg)
【0026】
【発明の効果】Mvh 遺伝子のプロモータの制御下にある
β−ガラクトシダーゼ遺伝子を導入した、本発明のトラ
ンスジェニックマウスは、精子形成の重要な制御段階と
なる初期減数分裂期以降の精母細胞前期にあるマウス幼
若精母細胞でβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を特異的に発
現し、また産生したβ−ガラクトシダーゼは、発光基質
を用いた化学発光測定法により高感度で検出することが
できるので、本発明のトランスジェニックマウスは、精
子形成分化に影響を及ぼす、生殖毒性を有する化学物質
を検出するための生体試験材料として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Mvh ゲノム遺伝子領域の第1 エキソンから上流
の約5.5kbの領域の制限酵素地図である。図中で、E は
EcoRI,P はPstI,HはHindIII,R はEcoRV,N はNotI,SはSm
aI,XはXbaIを表す。
【図2】導入用遺伝子であるMvh-lacZ部分の構造を示
す。図中で、E はEcoRI, HはHindIII,R はEcoRV,N はNo
tI,SはSmaI,Bg はBglI,Bm はBamHI を表す。
【図3】生後12日目のMvh-lacZトランスジェニックマウ
スの精巣組織切片像で精巣管中央に観察されるX-gal 陽
性細胞(矢印の先の少し色の濃い部分)を示す。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mvh遺伝子のプロモータの制御下にあ
    るβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を導入したトランスジェ
    ニックマウス。
  2. 【請求項2】 β−ガラクトシダーゼをマウス幼若精母
    細胞に特異的に産出する請求項1に記載のトランスジェ
    ニックマウス。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載のトランスジェ
    ニックマウスの成体雄または母胎に被検査物質を投与し
    た場合にマウス幼若精母細胞に特異的に産出するβ−ガ
    ラクトシダーゼの酵素活性を測定して、該被検査物質が
    有する、精子形成阻害効果による生殖阻害を定量的に評
    価するための該トランスジェニックマウスの使用。
  4. 【請求項4】 請求項1または2に記載のトランスジェ
    ニックマウスの成体雄または母胎に被検査物質を投与し
    た場合にマウス幼若精母細胞に特異的に産出するβ−ガ
    ラクトシダーゼの酵素活性を測定することを特徴とする
    該被検査物質が有する精子形成阻害効果のモニタリング
    システム。
  5. 【請求項5】 トランスジェニックマウス精巣の初代培
    養細胞を用いることを特徴とするイン・ビトロにおける
    被検査物質による該トランスジェニックマウス精巣の精
    子形成阻害効果試験法。
  6. 【請求項6】 請求項1又は2に記載のトランスジェニ
    ックマウスと他の精子分化段階において他の指標遺伝子
    産物を産出する外来遺伝子を導入したトランスジェニッ
    クマウスの交配によって作出した二重トランスジェニッ
    クマウスに被検査物質を投与した場合にマウス幼若精母
    細胞に特異的に産出するβ−ガラクトシダーゼの酵素活
    性および該外来遺伝子産物を測定して該被検査物質によ
    る該マウスの精子形成阻害効果を定量的に評価すること
    を特徴とする該被検査物質の生殖毒性を試験する方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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