JP6407507B2 - 神経変性疾患関連タンパク質を神経細胞内で可視化したモデル動物 - Google Patents

神経変性疾患関連タンパク質を神経細胞内で可視化したモデル動物 Download PDF

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Description

本発明は、アミロイドβタンパク質(Aβ)などの神経変性疾患関連タンパク質を神経細胞内で可視化したモデル動物等に関する。
神経変性疾患、中でもアルツハイマー病(AD: Alzheimer's disease、アルツハイマー型認知症ともいう)は、大脳皮質や海馬の細胞外実質に見られるAβ線維を主成分とする老人斑と、細胞内の過リン酸化タウ蛋白質による神経原線維変化をその病理組織学的特徴とする疾患である。
ADの発症機序はこれまで、神経細胞から細胞外に分泌されたAβの異常凝集が原因であるとするアミロイド仮説が広く受け入れられている。しかし、老人斑の形成部位と神経細胞脱落部位とが時間的・空間的に一致しないこと、早発性家族性ADで老人斑形成以前に神経細胞内にAβが蓄積すること (非特許文献1:Gouras et.al., Am.J.Pathol., 156, pp.15-20, 2000)、遺伝子改変動物で細胞外Aβの沈着以前に神経症状を呈すること(非特許文献2:Chui et. al., Nat. Med.,5 , pp. 560-564, 1999)等が報告され、神経細胞外へのAβの沈着よりむしろ細胞内での蓄積、特にAβ1-42の蓄積の方が神経細胞の障害に重要である可能性が示唆されている。
これまでAβの細胞内外の局在観察は専ら組織染色に頼っており、これは固定法や抗原賦活化の影響を容易に受けて変化することが知られている。更に、蛋白質異常凝集体の形成過程や局在様式、分解過程までを生体内で観察しながら抑制因子等の評価を行うことが、ADの病因解明と本質的な創薬候補物質の探索に重要である。しかしながら、従来、AβとGFP等の蛍光蛋白質との融合体は、Aβの重合が進むとGFPのコンフォーメーションに影響し蛍光が消失することから、凝集したものを可視化することが困難であった。従って、これまでAβの細胞内動態を可視化できる動物が報告された例は、本発明者の知る限り存在しない。
Gouras et.al., Am.J.Pathol.,156, pp.15-20, 2000 Chui et. al., Nat. Med., 5, pp.560-564, 1999
本発明は、神経変性疾患関連タンパク質を神経細胞内で可視化したモデル動物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、神経変性疾患関連タンパク質(例えばAβ)をコードするDNAと蛍光タンパク質をコードするDNAとを、所定の長さを有し任意のアミノ酸配列からなるリンカー配列をコードするDNAを用いて連結されたベクターを非ヒト動物又は線虫に導入することにより、Aβを神経細胞内で可視化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アミロイドβタンパク質、タウタンパク質、αシヌクレイン、SOD1、TLS、TDP-43、ハンチンチン及びプリオン蛋白質からなる神経変性疾患関連タンパク質群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコードするDNA、少なくとも1個の長さを有し任意のアミノ酸配列からなるリンカー配列をコードするDNA、並びに蛍光タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクター。
(2)アミロイドβタンパク質をコードするDNA、1〜50個の長さを有し任意のアミノ酸配列からなるリンカー配列をコードするDNA及び蛍光タンパク質をコードするDNAがこの順に連結された、(1)に記載のベクター。
(3)アミロイドβタンパク質がAβ1-42である、(1)又は(2)に記載のベクター。
(4)蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のベクター。
(5)リンカー配列がLE又はQSTVPRARDPPVATで示されるアミノ酸配列からなるものである(1)〜(4)のいずれか1項に記載のベクター。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の組み換えベクターが導入されたトランスジェニック非ヒト動物。
(7)非ヒト動物がマウスである(6)に記載の動物。
(8)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の組み換えベクターが導入されたトランスジェニック線虫。
(9)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の組み換えベクターが導入された形質転換細胞。
(10)前記(6)又は(7)に記載の非ヒトトランスジェニック動物からなる、神経変性疾患モデル動物。
(11)前記(8)に記載のトランスジェニック線虫からなる、神経変性疾患モデル線虫。
(12)前記(9)に記載の形質転換細胞からなる、神経変性疾患モデル細胞。
(13)神経変性疾患がアルツハイマー病である(10)に記載の動物。
(14)神経変性疾患がアルツハイマー病である(11)に記載の線虫。
(15)神経変性疾患がアルツハイマー病である(12)に記載の細胞。
(16)前記(10)若しくは(13)に記載の神経変性疾患モデル動物、前記(11)若しくは(14)に記載の神経変性疾患モデル線虫、又は前記(12)若しくは(15)に記載の神経変性疾患モデル細胞に被検物質を投与し、当該被検物質投与後の当該モデル動物又はモデル線虫における神経変性疾患関連タンパク質を検出し、検出結果を指標として神経変性疾患の治療薬を選択する工程を含む、神経変性疾患治療薬のスクリーニング方法。
本発明により、神経変性疾患関連タンパク質、特にAβタンパク質を神経細胞内で可視化したモデル動物及びモデル線虫が提供される。本発明のモデル動物及びモデル線虫では、生体内でAβの動態と凝集状態を観察できるようにした。このモデルを用いることで、生体内でAβの蓄積等の観察を行いながら、凝集抑制物質の探索等が可能になる。
Aβ-GFP融合遺伝子の概略図である。 Aβ-GFP融合タンパク質を発現させたマウス胎児と海馬初代培養神経細胞を示す図である。 Aβ-GFP融合タンパク質を発現させたマウスの脳組織を示す図である。 Aβ-GFP融合タンパク質を発現させた線虫(C. elegans)のコリン作動性運動神経における蛍光発現パターンを示す図である。
本発明は、神経変性疾患の主要原因となるタンパク質と蛍光タンパク質とを、リンカーを介して連結させた融合タンパク質を発現させるための発現ベクターに関し、また本発明は、この融合タンパク質を細胞内に特異的に蓄積させたトランスジェニック動物及び線虫、並びにこれらの動物及び線虫からなる神経変性疾患モデル動物及び線虫に関する。
従来、Aβのように凝集体を形成するタンパク質は、その凝集により融合させた蛍光タンパク質の蛍光が抑制され、生体や培養細胞内で凝集体形成の過程や動態を観察することが困難であった。
そこで本発明において、神経変性疾患関連タンパク質と蛍光タンパク質とをつなぐリンカーの配列を工夫することで、生体内で神経変性疾患関連タンパク質の動態と凝集状態を観察できるようにした。特に、本発明においては、アルツハイマー病の主要原因であるアミロイドβタンパク質(Aβ)と蛍光タンパク質との融合タンパク質をマウス及び線虫の神経細胞内に蓄積させ、これを可視化させることに成功した。
この可視化モデルは、Aβが凝集しても蛍光の発光が維持されるタイプ、及びAβが凝集したときに蛍光が消失するが、凝集抑制物質を作用させると凝集が解除されて蛍光を発するタイプの2つのモデルである。これらのモデルを用いることで、生体内でAβの蓄積等の観察を行いながら、凝集抑制物質の探索等が可能になる。
1.組換えベクター
本発明の組換えベクターは、神経変性疾患関連タンパク質をコードするDNA及び蛍光タンパク質をコードするDNAを、所定の長さのアミノ酸配列をコードするDNA(リンカー配列)により連結したものであり、好ましくは神経変性疾患関連タンパク質をコードするDNA、リンカー配列をコードするDNA、蛍光タンパク質をコードするDNAの順で連結されている。
神経変性疾患とは、中枢神経系の神経細胞が徐々に変性して細胞死に陥る進行性の疾患であり、アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)、パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)、筋萎縮性側策硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)、ハンチントン舞踏病、プリオン病などが知られている。これらの疾患において、Aβ、タウタンパク質、αシヌクレイン、ハンチンチン、SOD1、TLS、TDP-43、プリオン蛋白質などの異常蓄積、異常発現又は異常凝集などが観察される。
従って、本発明においては、ベクターの構築、及びトランスジェニック非ヒト動物又はトランスジェニック線虫の作製の対象となる変性疾患関連タンパク質として、Aβ、タウタンパク質、αシヌクレイン、SOD1、TLS、TDP-43、ハンチンチン及びプリオン蛋白質が挙げられ、これらの1つ又は2つ以上を使用することができる。
Aβは、β-及びγ-セクレターゼの働きにより前駆体タンパク質(APP: amyloid β protein precursor)から切り出される40-43アミノ酸からなるポリペプチドであり、本発明においては、ヒト由来Aβ、マウス由来Aβ、ラット由来Aβなどを使用することができる。
これらのAβをコードするDNAはすでにクローニングされており、塩基配列は、所定のデータベースから入手可能である。例えば、ヒトAβについては例えばGenbankアクセッション番号BC065529、マウスAβについてはアクセッション番号BC070409.1、ラットAβについてはアクセッション番号BC062082.1が利用可能である。
タウタンパク質をコードするDNAの塩基配列は、所定のデータベースから入手可能である。例えば、ヒトタウタンパク質については例えばGenbankアクセッション番号BC000558.2、マウスタウタンパク質についてはアクセッション番号BC014748.1が利用可能である。
αシヌクレインをコードするDNAの塩基配列は、所定のデータベースから入手可能である。例えば、ヒトαシヌクレインについては例えばGenbankアクセッション番号AY049786.1、マウスαシヌクレイン質についてはアクセッション番号BC046764が利用可能である。
ハンチンチンをコードするDNAの塩基配列は、所定のデータベースから入手可能である。例えば、ヒトハンチンチンについては例えばGenbankアクセッション番号BC014028、マウスハンチンチンについてはアクセッション番号U24233が利用可能である。
SOD1(Superoxide dismutase 1)は、は、スーパーオキシドアニオン(・O2-)を酸素と過酸化水素へ不均化する酸化還元酵素である。哺乳動物ではSOD1、SOD2及びSOD3の3種のSODが存在し、本発明においては、細胞質に存在するSOD1を使用することができる。SOD1をコードするDNAの塩基配列は、所定のデータベースから入手可能である。例えば、ヒトSOD1については例えばGenbankアクセッション番号BT006676、マウスSOD1についてはアクセッション番号BC002066が利用可能である。
TLS(Translocated In Sarcoma)は、「CHOP」と呼ばれる転写因子にt(12; 16)で転座していることから発見されたタンパク質であり(Nature 363:640, 1993)、ALS患者において遺伝子異常を有することが示唆されている。TLSをコードするDNAの塩基配列は、所定のデータベースから入手可能である。例えば、ヒトのTLSについてはGenbankアクセッション番号S62140.1が利用可能である。
TDP-43は、ヒト免疫不全ウイルス、タイプI (HIV-1)のTAR DNA に結合する転写抑制因子として発見されたタンパク質であり(J Virol 69:130, 1995)、ALS患者において蓄積することが示唆されている。TDP-43をコードするDNAの塩基配列は、所定のデータベースから入手可能である。例えば、ヒトのTDP-43については例えばGenbankアクセッション番号BC001487.2、マウスのTDP-43についてはアクセッション番号BC027772が利用可能である。
プリオン蛋白質をコードするDNA配列は、所定のデータベースから入手可能である。例えばヒトのプリオン蛋白質については例えばGenbankアクセッション番号AY008282、マウスのプリオン蛋白質についてはアクセッション番号BC006703が利用可能である。
上記神経変性疾患関連タンパク質をコードするDNAは、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、遺伝子工学的手法として一般的に用いられているDNA合成装置を用いた核酸合成法を使用することができる。また、鋳型となるDNA配列を単離又は合成した後に、それぞれのDNAに特異的なプライマーを設計し、PCR装置を用いてその遺伝子配列を増幅するPCR法、又はクローニングベクターを用いた遺伝子増幅法を用いることができる。上記方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Fourth Edition) Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)等に従い、当業者ならば容易に行うことができる。得られたPCR産物の精製には公知の方法を用いることができる。
本発明の好ましい態様において、上記DNAを鋳型とし、当該遺伝子特異的なプライマーを用いてPCRを行うことにより、各断片長を有する各DNA領域を調製することができる。
例えば、Aβの場合、本発明においては、γセクレターゼにより切断される43のアミノ酸領域(「Aβ1-43」という)、AβのN末端側の1〜40番のアミノ酸領域(「Aβ1-40」という)、あるいはN末端側の1〜42番のアミノ酸領域(「Aβ1-42」という)のポリペプチドを利用することができる。本発明においてはAβ1-42を使用することが好ましい。
ヒトAβ及びマウスAβ及びラットAβの塩基配列及びアミノ酸配列を表1に示す。

ヒト、マウス又はラットのAβをコードするDNAは、ヒト、マウス又はラットのAβ1-43をコードするDNAからPCRなどによって調製することができる。
また、上記ヒト、マウス又はラットのAβ1-43、Aβ1-40、Aβ1-42をコードするDNAのほか、以下のAβ活性を有するタンパク質(変異型Aβ)をコードするDNAも、本発明において使用することができる。
配列番号1に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヒトAβ1-43活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号3に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヒトAβ1-40活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号5に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ヒトAβ1-42活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号7に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、マウスAβ1-43活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号9に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、マウスAβ1-40活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号11に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、マウスAβ1-42活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号13に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ラットAβ1-43活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号15に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ラットAβ1-40活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号17に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ラットAβ1-42活性を有するタンパク質をコードするDNA。
上記ハイブリダイゼーションにおいて、ストリンジェントな条件としては、例えば、0.1×SSC〜10×SSC、0.1%〜1.0%SDS及び20℃〜80℃の条件が挙げられ、より詳細には、37℃〜56℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、0.1×SSC、0.1%SDS中、室温で10〜20分の洗浄を1〜3回行う条件が挙げられる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Fourth Edition) Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)等を参照することができる。
また、配列番号1、3又は5に示す塩基配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、ヒトAβ1-43、Aβ1-40又はAβ1-42の構造タンパク質と同等の機能を有するタンパク質(これも変異型Aβとする。以下同様。)をコードするDNAを用いることができる。
さらに、配列番号7、9又は11に示す塩基配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、マウスAβ1-43、Aβ1-40又はAβ1-42の構造タンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAを用いることができる。
さらに、配列番号13、15又は17に示す塩基配列と60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、ラットAβ1-43、Aβ1-40又はAβ1-42の構造タンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAを用いることができる。
「同等の機能」とは、神経細胞内においてAβ蓄積を生じる機能などを意味する。
本発明においてAβ活性(Aβ1-43活性、Aβ1-40活性又はAβ1-42活性)とは、Aβが被験動物(マウス等)の神経細胞内において生成、蓄積及び/又は凝集し、細胞内で細胞機能や生存に影響を与える活性を意味する。
Aβ活性は、上記DNAを、蛍光タンパク質をコードするDNAにリンカー配列を介して連結しベクターを作製し、これを非ヒト動物又は線虫に導入して蛍光色素を検出又は測定することで確認できる。また、Aβ活性は従来の免疫組織染色、ウエスタンブロット法などにより確認することもできる。
上記の変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばSite-Directed Mutagenesis Kit(Promega, Invitrogen等)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)などが用られる。
Aβ以外の神経変性疾患関連タンパク質であるタウタンパク質、αシヌクレイン、ハンチンチン、SOD1、TLS、TDP-43、プリオン蛋白質についても、それぞれのタンパク質の活性を有する限り、変異型Aβと同様、変異型の各タンパク質及びそれをコードするDNAを使用することができ、同等の機能活性の確認もAβと同様の手法を適用することができる。
また、本発明に用いられる蛍光タンパク質は、一般に使用される蛍光タンパク質であれば特に限定されるものではなく、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFPやCFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、などが挙げられる。また、生体透過性の高さの観点から近赤外蛍光タンパク質(iRFP)を選択することも可能である。近赤外蛍光物質としては、フルーツ蛍光タンパク質(mCherry、mOrange、mStrawberry、tdTomato等)、などが挙げられる。また、Dendra2、Kikume Green-Redなどの光転換型蛍光タンパク質も挙げられる。
本発明のベクターを構築するために、これらの蛍光タンパク質をコードするDNAを使用する。本発明においては、GFPをコードするDNAを用いることが好ましい。
上記蛍光タンパク質をコードするDNAは、化学合成により、あるいは市販品として得ることができる(例えばGFPはClontech社製、TagRFPはEvrogen社製)。
本発明において使用されるリンカーとなるアミノ酸配列は、所定の長さを有し、かつ任意の配列を有するものである。「リンカー」とは、神経変性疾患関連タンパク質と蛍光色素タンパク質とを連結するペプチドである。なお、本明細書において、「リンカー」、「リンカー配列」と表示した場合、塩基配列を意味する場合がある。
リンカーのアミノ酸配列の長さ(アミノ酸残基の個数)は特に限定されるものではなく、少なくとも1個の配列であり、好ましくは2以上である。長さの上限は特に限定されるものではないが、製造コストなどの観点からアミノ酸数は50以下、好ましくは20以下である。
本発明においては、神経変性疾患関連タンパク質の凝集により蛍光を発光させることを目的とする場合(タイプ1とする)は、リンカー配列に含まれるアミノ酸数は、14〜20個、より好ましくは14個である。他方、神経変性疾患関連タンパク質の凝集により蛍光を消失させ、凝集抑制により蛍光を発光させることを目的とする場合(タイプ2とする)は、リンカー配列に含まれるアミノ酸数は、1〜10個、好ましくは2〜6個である。
リンカー配列に含まれるアミノ酸残基の種類及び配列は特に限定されるものではなく、任意に、すなわちランダムに決定することができる。但し、神経変性疾患関連タンパク質の種類や、使用する蛍光タンパク質の種類に応じて適宜アミノ酸組成を変えることもできる。例えばタイプ1の場合、クローニングベクター等のマルチクローニングサイトのDNA配列に基づいてアミノ酸配列を設計すればよい。一般的に特定の構造を有するアミノ酸配列に対して柔軟性の高いグリシンやセリンの繰返し配列の場合は蛍光が観察されないか、非常に弱いことから、適度に電荷を有するアミノ酸を含むように設計することが好ましい。
タイプ2の場合、本発明者の予備実験結果によると12あるいは13アミノ酸のリンカーを用いた解析では蛍光は観察されないという報告があるので、より短いリンカーを適用することで蛍光が消失するリンカーを構築することができる。タイプ2では、2以下のアミノ酸でリンカーを構成した場合、アミノ酸組成に関わらず蛍光は観察されない。
本発明において種々検討した結果、蛍光タンパク質としてGFPを使用する場合において、上記タイプ1を目的とするときは、リンカー配列はQSTVPRARDPPVATで示されるアミノ酸配列(配列番号19)であることが好ましく、上記タイプ2を目的とするときは、リンカー配列はLEで示されるアミノ酸配列であることが好ましい。
上記アミノ酸配列をコードするDNA配列を組換えベクターの構築に使用する。組換えベクターの構築は、通常の遺伝子工学的手法を採用することができる。
例えば、目的の神経変性疾患関連タンパク質をコードするDNA(以下「神経変性疾患関連遺伝子」ともいう)、リンカー配列をコードするDNA(以下「リンカーDNA」ともいう)及び蛍光タンパク質をコードするDNA(以下「蛍光タンパク質遺伝子」ともいう)をPCR等により調製する。PCRは、Taqポリメラーゼ又はその他のDNAポリメラーゼを用いる通常の方法によって実施することができる。
増幅した目的断片は制限酵素で消化した後、pBluescript(登録商標)(Stratagene)などのプラスミドベクターの制限酵素部位またはマルチクローニング部位に挿入し、目的のプラスミドを得る。なお、得られたPCR産物は、塩基配列をシークエンサー等で確認し、正しい配列を含むプラスミドであることを確認することが好ましい。
ところで、組織特異的プロモーターを利用して所定の遺伝子を目的とする組織に特異的に発現させる試みがなされている(J Neurosci Res. 2001 Aug 1;65(3):220-7.等)。本発明のベクターは、神経変性疾患関連タンパク質(例えばAβ)、リンカー及び蛍光タンパク質を中枢神経細胞において特異的に発現させることを目的とするため、中枢神経細胞において機能するプロモーターの制御下にあることを特徴とする。
ここで、「プロモーターの制御下にある」とは、当該プロモーターが機能して神経変性疾患関連遺伝子が中枢神経細胞において特異的に発現され得るように、すなわち、当該プロモーターが神経変性疾患関連遺伝子に作用可能なように連結されたものであることを意味する。すなわち、適切な調節エレメントの制御下に、導入される遺伝子(DNA)の発現を可能にする様式で、そのベクター中に導入遺伝子が挿入されている。神経変性疾患関連遺伝子、リンカーDNA及び蛍光タンパク質遺伝子は、この順序でタンデムに連結されていることが好ましい。
但し、本発明においては、神経変性疾患関連遺伝子、リンカーDNA及び蛍光タンパク質遺伝子がそれぞれ1種類連結される態様に限定されるものではなく、1つのベクター内に複数の神経変性疾患関連遺伝子、複数のリンカーDNA及び複数の蛍光タンパク質遺伝子が含まれていてもよく、これらの複数の神経変性疾患関連遺伝子及び蛍光タンパク質遺伝子が発現できるように、調節エレメントを挿入することができる。
例えば、1つの細胞中にAβとタウタンパク質を発現させる場合、「第一のプロモーター-Aβ遺伝子-第一のリンカーDNA-第一の蛍光タンパク質DNA」からなる構築物と、「第二のプロモーター-タウタンパク質遺伝子-第二のリンカーDNA-第二の蛍光タンパク質DNA」からなる構築物とを、同一プラスミドに導入することもできる。また、2種類の神経変性疾患関連タンパク質が一つのプロモーターの制御下で発現できる場合は、例えば、「プロモーター- Aβ遺伝子-第一のリンカーDNA-第一の蛍光タンパク質DNA-タウタンパク質遺伝子-第二のリンカーDNA-第二の蛍光タンパク質DNA」からなる構築物とすることもできる。
調節エレメントとしては、例えばプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーターなどが挙げられる。
中枢神経細胞において機能するプロモーターとしては、特に限定されるものではないが、例えばβアクチンプロモーター、シナプシンプロモーター、Thy-1プロモーター(脳神経特異的)等が挙げられる。
また、本発明のベクターは、神経変性疾患関連遺伝子、リンカーDNA及び蛍光タンパク質遺伝子を挿入した領域以外の位置に他の外来遺伝子を保持してもよい。このような外来遺伝子としては、例えば、ベクターをモニターするためのマーカー遺伝子などが挙げられ、特に限定されるものではない。
2.トランスジェニック非ヒト動物及びトランスジェニック線虫
上記のように構築された組換えベクターを、非ヒト動物又は線虫に導入してトランスジェニック非ヒト動物又はトランスジェニック線虫を作製する。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、中枢神経細胞において機能するプロモーター、並びに神経変性疾患関連遺伝子、リンカーDNA及び蛍光タンパク質遺伝子が導入された動物である。
本発明に用いることができる非ヒト動物としては、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ、サル(霊長類)、ヒツジ、ヤギ、ウシ及びウマ等のヒトを除く哺乳類動物、あるいはトリ、両生類(カエルやイモリなど)、魚類(ゼブラフィッシュなど)が挙げられ、中でも、マウス、ラット及びモルモット等の齧歯類(ネズミ目)動物が好ましく、より好ましくはマウスである。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物において神経変性疾患関連遺伝子を発現させる「中枢神経」は特に限定されるものではなく、脳神経(大脳、間脳、中脳、小脳の各神経)、延髄神経、脊髄神経などが挙げられる。また、本発明のトランスジェニック線虫において神経変性疾患関連遺伝子を発現させる場所は、例えばコリン作動性神経、グルタミン酸作動性神経、セロトニン作動性神経などである。
以下に、本発明のトランスジェニック非ヒト動物の作出方法について、説明の便宜上マウスを用いた場合を例に挙げて説明するが、他の非ヒト動物を用いる場合についても同様の方法を適用することができる。また、神経変性疾患関連遺伝子として、Aβ遺伝子を例に説明する。
本発明のトランスジェニックマウスは、公知の作出方法、すなわち受精卵核へのDNAマイクロインジェクションによる方法、胚性幹細胞(ES細胞)にDNAを導入した後キメラを作製する方法、及びレトロウイルスベクターを初期発生胚に感染させて導入する方法等のいずれの方法を用いることができる。これらの方法については、例えば、「Manipulating the Mouse Embryo-A Laboratory Manual, 2nd Ed. (1994) Hogan B et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor」、「マウス胚の操作マニュアル 第2版 (1997) Hogan B et al.(著), 山内一也ら(訳)近代出版, 東京」、「Gordon, J. W. (1993) Guide to Techniques in Mouse Development (Wassarman, P. M., and DePamphilis, M. L., Eds.), Academic Press, San Diego」等に記載されており、これらの記載を適宜参照してトランスジェニックマウスを作出することができる。
公知の作出方法の中でも、最も一般的である受精卵核へのDNAマイクロインジェクション法を用いる場合について、以下に概略を説明する。
(i) 雌のマウスにホルモンを注射して強制的に過剰排卵させ、受精を行い、交尾後1日目の卵管から受精卵を採集する。
(ii) 核が融合する前の時期の受精卵に、顕微鏡下で導入対象のDNAをマイクロインジェクションにより注入する。
(iii) マイクロインジェクション後の受精卵を約40個程度、仮親となる偽妊娠雌マウスの子宮又は卵管内に移植する。
(iv) 移植後の雌マウスを通常の飼育条件下で飼育し、子マウスを出産させる。
(v) 必要に応じて、子マウスの一部(尾の先端や耳介片など)からゲノムDNAを抽出し、PCR法又はサザンブロット法等により、Aβ遺伝子の導入の成否を確認する。
以上のようにして作出されたトランスジェニックマウスは、野生型のマウスと交配させることにより、Aβヘテロ遺伝子型マウス(+/-)を得ることができる。さらに、このヘテロ遺伝子型のマウス同士を交配させることにより、Aβホモ遺伝子型マウス(+/+)を得ることができる。また、メンデルの法則に従い、Aβトランスジェニックマウスと共に、同腹の野生型マウス(-/-)(対照マウス)を得ることができる。
Aβトランスジェニックマウスにおいて、中枢神経特異的にAβが発現していることの確認は、例えば、発現ベクターに連結された蛍光タンパク質の蛍光により行なうことができる。
本発明の組換えベクターの線虫への導入も、通常のマイクロインジェクション法により行なうことができる。例えば、通常成虫(雌雄同体)の生殖巣にDNA溶液をマイクロイ
ンジェクションすることにより行う。成虫の生殖巣は多核であるので、前後の生殖巣に一度ずつマイクロインジェクションすれば、外来DNAを持った形質転換した子 (F1)を多数得ることができる。また、Bombardment法やトランスポゾンを用いた遺伝子導入法を用いることも可能である。
3.形質転換細胞
本発明においては、上記トランスジェニック非ヒト動物及びトランスジェニック線虫のほか、本発明のベクターを宿主細胞に導入することにより、形質転換細胞を作製することができる。これらの形質転換細胞はAβを発現するため、神経変性疾患のモデル細胞として使用することができる。
発現ベクターを導入する宿主細胞は、目的とする遺伝子を発現できるものであれば特に限定されず、例えば、宿主として大腸菌(Escherichia coli) 、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis) 等の細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母、COS細胞、CHO細胞等の哺乳類細胞、各種ウイルスなどが挙げられる。
大腸菌等の細菌を宿主として用いる場合は、本発明の遺伝子が宿主中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、転写終結配列を含む構成であることが好ましい。発現ベクターとしては、例えばpGEX、pUC18、pET(Novagen社)等が挙げられる。プロモーターとしては、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。例えば、trpプロモーター、lac プロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターなどの大腸菌やファージ等に由来するプロモーターが用いられる。 細菌への組み換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法や塩化カルシウム法を用いることができる。
酵母を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして、例えばYEp13、YCp50、pESC(Agilent社)等が挙げられる。プロモーターとしては、例えばgal1 プロモーター、gal10プロモーター等が挙げられる。酵母への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
哺乳類細胞を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして例えばpcDNA3、pFP(Clontech社)等が挙げられる。哺乳動物細胞への発現ベクターの導入は、例えばエレクトロポレーション、リポソーム法が挙げられる。
さらに、本発明においてはウイルスベクターを用いることができる。ウイルスベクターは細胞への遺伝子導入及びタンパク質発現の有用なツールであり、物理的又は化学的遺伝子導入法と比較して遺伝子導入効率が高く、かつ、長期間発現させることができるという利点を有する。
本発明において使用できるウイルスは、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、バキュロウイルスなどが挙げられ、市販品(Adeno-X,Clontech社)として入手可能である。
アデノウイルスは、アデノウイルスは直径約80 nm の正二十面体構造をしておりエンベロープは持たないが、内部には直鎖状で約35〜36 kb の二本鎖DNAをゲノムに持つウイルスである。一般に使用されているアデノウイルスベクターは、5 型アデノウイルスを基本骨格とし、ウイルス増殖に必須なE1A及びE1B 領域を目的の遺伝子と置換して作製することができる。このような組換えウイルスベクターを293細胞等に導入することにより、ウイルス粒子を増殖させることができる。
レトロウイルスは、エンベロープを持つ一本鎖RNAウイルスであり、そのウイルスゲノムは両端にプロモーター活性を有する反復配列(LTR:Long Terminal Repeat)と構造遺伝子gag(構造タンパク質)、pol(プロテアーゼ,逆転写酵素,インテグラーゼ)、env(エンベロープ)、RNA ゲノムが粒子内に取り込まれるのに必要なパッケージングシグナル(ψ)から成る。レトロウイルスベクターの作製は、gag、pol、env を発現し、パッケージングシグナルを除いたパッケージングプラスミドと、gag、pol、env の代わりに発現の目的遺伝子を挿入したベクタープラスミドとを、同時にCOS 細胞や293T 細胞などに導入することによって作製される。
レンチウイルスベクターを用いた遺伝子導入法は、一般に、初代培養細胞、幹細胞、神経細胞、非分裂細胞を含むほぼ全ての哺乳類細胞に遺伝子導入することができ、安定な遺伝子導入細胞株を得ることができる。
レンチウイルスベクターは、発現可能なポリヌクレオチド配列を含有するエンベロープで覆われたビリオン粒子であり、このビリオン粒子を宿主細胞(COS 細胞や293T 細胞)に導入することができる。
バキュロウイルスは、環状の二本鎖DNAを遺伝子としてもつエンベロープウイルスであり、昆虫に感染して病気を起こすウイルスである。本発明で用いられるバキュロウイルスとしては、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)のNPV(AcNPV)、カイコ(Bombyx mori)のNPV(BmNPV)などが挙げられ、これらのウイルスをベクターとして用いることができる。
AcNPVの宿主(感染、継代細胞)としては昆虫細胞(例えばSf9、Sf21細胞)などが挙げられ、BmNPVの宿主(感染、継代細胞)としてはBmN4細胞などが挙げられる。
4.スクリーニング方法
前述の通り、Aβトランスジェニック非ヒト動物は、神経細胞において、ヒトの神経変性疾患(例えばアルツハイマー型認知症)の病態とよく一致するため、これら疾患の治療薬の開発において極めて有用なものである。また、線虫は、世代時間が短く一度に多数の個体を安価に扱えること、また1匹当り極微量の化合物や天然物などの治療薬候補物質で処理し効果を解析することが可能である点で有用であり、利用価値がある。さらに、培養細胞に神経変性疾患関連遺伝子を導入した細胞を用いて、簡易に治療薬候補物質を検索することもできる。
そこで本発明は、トランスジェニック非ヒト動物、トランスジェニック線虫又は形質転換細胞を用いた神経変性疾患の治療薬のスクリーニング方法を提供する。
ここで、神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン舞踏病、プリオン病などが挙げられる。
本発明において、トランスジェニック非ヒト動物又はトランスジェニック線虫を用いて神経変性疾患治療薬をスクリーニングする方法は、以下の(a)〜(c)の工程を含む。
(a) 治療薬の候補となる被検物質(候補物質)を本発明のトランスジェニック非ヒト動物又はトランスジェニック線虫に投与する工程(投与工程)
(b) 上記トランスジェニック非ヒト動物又はトランスジェニック線虫について、神経変性疾患関連タンパク質を検出する工程(検出工程)
(c) 上記得られた検出結果を指標として神経変性疾患の治療薬を選択する工程(選択工程)
また、形質転換細胞を用いて神経変性疾患治療薬をスクリーニングする方法は、以下の(a)〜(c)の工程を含む。
(a) 治療薬の候補となる被検物質(候補物質)を本発明の形質転換細胞に接種する工程(接種工程)
(b) 上記形質転換細胞について、神経変性疾患関連タンパク質を検出する工程(検出工程)
(c) 上記得られた検出結果を指標として神経変性疾患の治療薬を選択する工程(選択工程)
以下に、上記各工程について説明する。なお、本節においても、便宜上、神経変性疾患関連タンパク質としてAβを例に説明する。
(a) 投与又は接種工程
本発明のトランスジェニック非ヒト動物又はトランスジェニック線虫に投与する被検物質、あるいは形質転換細胞に接種する被検物質としては、限定はされないが、各種ペプチド、タンパク質(酵素や抗体を含む)、非ペプチド性化合物、核酸(ポリヌクレオチド(DNA, RNA)、オリゴヌクレオチド(siRNA等)、ペプチド核酸(PNA)など)、低分子又は高分子合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、細胞培養上清、植物抽出液、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)の組織抽出液又は血液成分などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよく、また天然であっても人為的に合成されたものでもよい。被検物質は単一の物質を独立に試験しても、混合物(ライブラリーなどを含む)について試験をしてもよい。複数の被検物質を含むライブラリーとしては、合成化合物ライブラリー(コンビナトリアルライブラリーなど)、ペプチドライブラリー(コンビナトリアルライブラリーなど)などが挙げられる。
被検物質投与の対象となるトランスジェニック動物(被検動物)及び対照動物としては、特に限定されるものではないが、通常、同種の非ヒト動物を用いる。また被験動物及び対照動物は、同腹の動物を用いることが好ましく、同性及び同齢の動物を用いることがより好ましい。さらに被験動物及び対照動物は、飼料の摂取量以外の飼育条件は同様であることが好ましい。
被検動物としては、Aβトランスジェニック非ヒト動物(+/+)を用いてもよいし、又はAβトランスジェニック非ヒト動物(+/-)を用いてもよい。対照動物として、Aβ非トランスジェニック(-/-)の非ヒト動物を用いることができる。
また、被検線虫及び対照線虫も特に限定されるものではないが、通常、トランスジェニック線虫として導入遺伝子がゲノムに安定して挿入された系統を用い、対象線虫として標準的な野生型(N2 Bristolなど)、あるいは蛍光タンパク質のみを発現させたトランスジェニック線虫を用いる。
被検物質の投与は、非ヒト動物の場合は経口的又は非経口的に行うことができ、限定はされず、いずれの場合も公知の投与方法及び投与条件等を採用することができる。投与量についても、投与対象動物の種類及び状態、並びに候補物質の種類等を考慮して、適宜設定可能である。
線虫に被検物質を投与する場合は、飼育培地中に含ませたり、餌となる大腸菌に発現させたり、直接体内にマイクロインジェクション法を用いて導入することができ、公知の投与方法及び投与条件等を採用することができる。投与量についても、線虫の状態や被検物質の種類等を考慮して、適宜設定可能である。
形質転換細胞に被検物質を接種する場合の態様は特に限定されるものではなく、形質転換細胞と被検物質が接触し得る任意の方法を採用することができる。例えば、形質転換細胞が含まれる培養容器中に被検物質を添加すればよい。
(b)検出工程
被検物質を本発明のトランスジェニック非ヒト動物若しくはトランスジェニック線虫又は形質転換細胞に投与又は接種した後、蛍光タンパク質を検出する。蛍光タンパク質の検出は、蛍光発色や蛍光強度について、肉眼による観察、顕微鏡下の観察、蛍光検出装置を用いた検出など、種々の方法を採用することができる。蛍光検出装置を用いる場合は、使用する蛍光タンパク質の励起波長を発する装置、例えば蛍光プレートリーダー装置(Biotek社製)、細胞イメージアナライザー装置(ThermoFisher社製)などを用いて検出することができる。
(c) 選択工程
神経変性疾患の治療薬を選択(スクリーニング)する場合は、候補物質が投与された非ヒト動物又は線虫、及び候補物質が投与されていない非ヒト動物又は線虫について、例えば、蛍光強度の測定、蛍光発色の有無等について比較評価することが好ましい。これら評価の方法(測定方法等)は、公知の手段及び手順により行うことができる。形質転換細胞についても上記に準じて行なえばよい。
被検動物の表現型と対照動物の表現型との比較を行なう方法について、以下に説明する。
「対照動物」は、被検動物との比較対照に使用されるに適している限り限定されるものではなく、Aβトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+)又は(+/-)〕であっても、同腹のAβ非トランスジェニック(-/-)の非ヒト動物であっても、トランスジェニック動物でない野生型動物であってもよい。
比較検討は、Aβトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+)又は(+/-)〕を被検動物とし、当該被検動物以外の非ヒト動物(-/-)を対照動物として用い、上記(a)及び(b)の工程を含む方法を採用することができる。また、Aβトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+)又は(+/-)〕を被検動物として用い、被検物質を投与しないAβトランスジェニック非ヒト動物〔(+/+)又は(+/-)〕を対照動物として用いることもできる。
本発明の非ヒト動物と同腹又は同種の野生型非ヒト動物は、正確な比較実験を行うことができる点で対照動物として好ましい。
そして、前記タイプ1において、対照と比較して、被検動物若しくは線虫又は形質転換細胞における蛍光の凝集体が消失し、細胞内に一様に分布するなどの局在パターンの変化が観察されたとき、被検物質は、神経変性疾患治療薬として選択することができる。
他方、本発明においては、前記のとおりリンカーの長さにより神経変性疾患関連タンパク質が凝集したときに蛍光が消失し、凝集が抑制されたとき、すなわち凝集が解かれたときに蛍光が発する(前記タイプ2)。この態様は、被検物質を投与したときに対照と比較して蛍光が発せられ又は蛍光強度が強くなったときは、当該被検物質は、神経変性疾患治療薬として選択することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例においては、本発明のトランスジェニック動物に対し、APPではなくAβ1-42の細胞内での機能や毒性機構について解析するため、ヒトAβ1-42をβ-アクチンプロモーターを用いて神経細胞内だけに発現させた。さらに、発現したAβ1-42を可視化するため、Aβ1-42と蛍光タンパク質(GFP)のリンカー部分を工夫し、Aβ1-42の重合が進んでも、GFPが蛍光を発することを可能にした。その結果、Aβ1-42の動態を固定や抗原賦活化の影響を受けることなく、生きた細胞内で観察可能とした。
<方法>
1.Aβ-GFP融合タンパク質発現用プラスミドDNAの作製
(1)トランスジェニックマウス作製用DNA
チキンのβ-actin遺伝子プロモータ領域DNA断片(2.9kb)をpBluescriptII SK(+)ベクターのApaI/HindIIIサイトに挿入し、さらにpEGFP-N1 (Clonetech)から切り出したEGFP-SV40 polyA断片をBamHI/SpeIサイトに挿入し、得られたベクターを神経細胞特異的EGFP発現用ベクターとした。
ヒトのAmyloid beta precursor protein のcDNAクローン(DANAFORM, Clone ID:100068486)を鋳型として、Aβ1-42をコードするDNA断片をPCRで増幅した。プライマーは以下の通り。
Forward: 5’-GGC AAG CTT GCG ATG GAT GCA GAA TTC CGA CAT GAC-3’ (配列番号20)
Reverse: 5’-ACG CGT CGA CTG CGC TAT GAC AAC ACC GCC-3’ (配列番号21)
PCRは、以下の組成の反応液を用い、98℃で10秒、55℃で10秒及び72℃で1分のサイクルを1サイクルとしてこれを25サイクル行なった。
PCR反応液組成:
5×PCRバッファー 10μl
dNTP mix 4μl
Forward primer 1μl
Reverse primer 1μl
Taq polymerase 0.5μl
鋳型DNA 1μl
蒸留水 32.5μl
Total 50μl

得られた断片をHindIIIおよびSalIで処理し、上記EGFP発現用ベクターの同サイトにクローニングした。
(2)トランスジェニック線虫作製用DNA(図1)
(A) pDK291 (Pacr-2:: Aβ1-42:: GFP):
上記のヒトAmyloid beta precursor protein cDNAクローンを鋳型として、Aβ1-42をコードするDNA断片をPCRで増幅した。用いたプライマーは以下の通り。
Forward: 5’-GGC AAG CTT GCG ATG GAT GCA GAA TTC CGA CAT GAC-3’ (配列番号22)
Reverse: 5’-ACG CGT CGA CTG CGC TAT GAC AAC ACC GCC-3’ (配列番号23)
PCR反応液組成及び反応サイクルは前記と同様である。
得られた断片をKpnIおよびXhoIで処理し、線虫GFP発現用ベクターpPD95.77 (Addgene, #1495)の同サイトにサブクローニングした。線虫コリン作動性運動神経(VD/DD neurons)に特異的に発現させるために、線虫ゲノムDNAを鋳型にacr-2遺伝子プロモータ領域(3.3kb)を増幅し、SphI/KpnIサイトに挿入した。Aβ1-42とGFPは2アミノ酸(LE)をコードするリンカー配列により連結されている。
(B) pDK294:
1-42-GFP融合タンパク質の対象として、GFPのみをコリン作動性運動神経に発現させるために、上記acr-2プロモータDNAをpPD95.77のSphI/KpnIサイトに挿入した。
(C) pDK526:
pDK291から発現されるAβ1-42-GFP融合タンパク質のAβ凝集を弱めるアミノ酸置換を2つpDK291に導入した。Site-directed mutagenesis kit (Promega)を用いて、Aβの19番目のフェニルアラニンをセリンに、34番目のロイシンをプロリンに置換した。
(D)pDK529:
トランスジェニックマウスに発現させたAβ1-42-EGFPを線虫に発現させるために、上記マウス用DNA(β-actin promoter:: Aβ1-42:: EGFP)を鋳型としてPCRで増幅した。用いたプライマーは以下の通り。
Forward: 5’- ATG CGG TAC CGG TAG AAA AAA TGG ATG CAG AAT TCC GAC AT-3’(配列番号24)
Reverse: 5’- ATG CCA ATT GTT ACT TGT ACA GCT CGT CCA TGC C-3’ (配列番号25)
PCR反応液組成及び反応サイクルは、伸長反応を3分としたこと以外は、前記と同様である。
増幅したDNA断片をKpnI/MfeIで処理し、KpnI/EcoRIで処理したpDK291にサブクローニングした。Aβ1-42とGFPは14アミノ酸(QSTVPRARDPPVAT:配列番号19)をコードするリンカー配列により連結されている。
2.Aβ-GFPトランスジェニックマウスの作製
上記方法から得られたトランスジェニックマウス用のプラスミドDNAをNotIおよびScaIで処理し、導入すべきDNA(β-actin promoter-Aβ1-42-EGFP)を切り出して精製した後、通常の方法を用いてマウス受精卵の核の中に微量注入した。受精卵は、その後代理母マウスの卵管に移植され、正常に発生したものが個体として出生した。出生個体の遺伝子型を確認し、目的遺伝子が導入されたマウス(トランスジェニックマウス)を同定した。複数のトランスジェニックマウスを系統化した後、導入遺伝子の発現状況を調べた。
3.Aβ-GFPトランスジェニック線虫の作製
通常のマイクロインジェクション法を用いて、上記方法から得られた線虫用のプラスミドDNAをlin-15(n765ts)変異体の生殖巣にインジェクションした。その後産まれた子孫を25℃で飼育し、マーカー遺伝子の発現によりlin-15変異体の表現型異常が回復し、かつDsRed2の発現が観察できた個体をF1世代のトランスジェニック個体とした。この中から、F3世代においても安定してトランスジーンが保持されているものを、各DNAの形質転換体ラインとして確立した。インジェクションに用いたmixture DNAは、対象DNA(GFPあるいはAβ-GFP融合遺伝子をコードする各プラスミドDNA); 20ng/μl、 インジェクションマーカーDNAとしてpDK300 (Podr-1:: DsRed2); 30ng/μlおよび pbLH98 (lin-15(+)); 50ng/μlのトータル100ng/μlに調整した混合溶液を用いた。
4.組織学的解析
(a) 海馬スライスの作製:
生後3〜4ヶ月齢のAβ-GFPマウスを頸椎脱臼にて屠殺、抜脳後、ビブラトームで300μm厚のスライスを作り、無固定のまま共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
(b) 灌流固定による組織切片の作製:生後3〜4ヶ月齢のAβ-GFPマウスをイソフルラン麻酔下で4%パラフォルムアルデヒドにて灌流固定し、抜脳後、凍結ミクロトームで30μmの切片を作製し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
5.海馬初代培養細胞の作製
Aβ-GFPマウスの雄とICRの雌を掛け合わせ、胎生16日目(E16)の胎児を子宮より取り出し、蛍光実体顕微鏡下で胎児頭部のGFPの蛍光の有無を確認した。GFPの蛍光が確認された胎児の脳より海馬を切り出し、トリプシンで処理後、40000個/cm2の密度で培養した。培養はCO2インキュベーター内で37℃で行った。Neurobasal medium (Invitrogen) 中で1週間培養後、4%パラフォルムアルデヒドで固定して共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
<結果>
1.Aβ-GFPを発現させたトランスジェニックマウス(図2、図3)
遺伝子を導入した受精卵より得られた10系統のマウスより、遺伝子発現を解析し最終的に明確なGFPの蛍光が観察される2系統を得た。胎児脳、成熟個体の脳スライスおよび灌流固定した脳を用いて、Aβ-GFPの発現を確認した。
まず妊娠16日目の胎児を子宮より取り出し、個体を蛍光実体顕微鏡下で観察した。
結果を図2に示す。図2において、各パネルは以下の通りである。
A: Aβ-GFP融合タンパク質を発現するE16の胎児。骨や皮膚を通して大脳部分にGFPの蛍光が観察される。
B:Aと同腹の野生型マウスの胎児。
C: Aβ-GFP融合タンパク質を発現するE16の胎児から取り出した脳。全体にAβ-GFP融合タンパク質の発現が観察される。
D:Aと同腹の野生型マウスの脳。
E: Aβ-GFP融合タンパク質を発現するE16の胎児の海馬初代培養神経細胞。細胞体・樹上突起に明るい蛍光が観察される。
図2(A)に示すように、胎児の頭部に、頭蓋骨と皮膚を通して体表面からGFPの発現が確認された。これに対し、同腹の野生型の胎児ではGFPの発現は全く観察されなかった(図2(B))。また、頭蓋骨より大脳および脳幹を摘出し、これらを蛍光実体顕微鏡下で観察したところ、脳全体からGFPの蛍光が観察された(図2(C))。更にこの脳の海馬神経細胞を用いて初代培養を行ったところ、培養初期よりGFPの蛍光が細胞体や樹状突起に観察された(図2(E))。
生後3〜4ヶ月齢の脳スライスによる観察結果を図3に示す。図3において、各パネルは以下の通りである。
A: 生後3~4ヶ月齢のAβ-GFPマウスの海馬スライス。CA1領域にAβ-GFP融合タンパク質を発現する錐体細胞が観察される(矢印)。
B: Aと同腹の野生型マウスの海馬スライス像。
C:生後3〜4ヶ月齢のAβ-GFPマウスの灌流固定後の脳切片。海馬錐体細胞の樹上突起にもAβ-GFP融合タンパク質の発現が観察される。
D: Aと同腹の野生型マウスの脳組織像。
生後3〜4ヶ月齢の脳スライスによる観察では、海馬CA1〜CA3領域の錐体細胞層や大脳皮質の各層の細胞にAβ-GFPの発現が確認された(図3(A))。また灌固定した脳による詳細な観察では、上記のほか、海馬歯状回、大脳基底核、視床でもAβ-GFPの発現が確認され、特に海馬錐体細胞層ではapical dendriteにも発現が確認された(図3(C))。また、初代培養でも脳組織でも細胞内に小さなAβ-GFPの凝集が観察された。
2.リンカー長の異なるAβ:: GFP融合タンパク質を発現させたトランスジェニック線虫(図4)
各プラスミドDNAを導入したトランスジェニック線虫のGFP発現を観察した。
結果を図4に示す。図4は、Aβ-GFP融合タンパク質を発現させた線虫(C.elegans)のコリン作動性運動神経における蛍光発現パターンであり、最上に示した線虫の模式図において四角で囲った部分を観察した。丸が細胞体の位置を、矢頭が軸索を示している。
GFP単独を発現させると(pDK294)、コリン作動性運動神経の細胞体および軸索に明瞭な蛍光が観察された。これに対し、同じプロモーターの制御下でタイプ2のAβ-GFPを発現させた線虫では(pDK291)、Aβ-GFP融合タンパク質が発現されているはずの運動神経における蛍光は全く観察されなかった。このトランスジェニック線虫が融合タンパク質を発現しているかどうかを確かめるために、Aβの凝集を阻害する作用が知られているクルクミンを加えた培地上で2日間線虫を飼育したところ、蛍光が観察されるようになった。したがって、タイプ2の Aβ-GFP融合タンパク質は、形質転換体の神経に発現はしているが、凝集によりGFPの蛍光が抑制されている事が示された。これをさらに確認するために、Aβ1-42の凝集を弱めることが知られているアミノ酸(F19およびL34)に変異を導入したpDK526を線虫に発現させたところ、クルクミン処理と同様に細胞体および神経軸索に蛍光が確認された。これに対して上記マウスと同じタイプ1のAβ-GFP融合タンパク質を同じプロモーターの下流で発現させたところ、細胞体の核周辺部に大きな凝集体と思われる強い蛍光が観察された。また、軸索上にもドット状に局在する事が観察された。
以上のことから、Short linkerにより融合されたAβ-GFPタンパク質は、タンパク質は細胞に発現しているが、Aβの凝集によりそのGFPからの蛍光が強く抑えられていると考えられる。それに対して、Long linkerのAβ-GFP融合タンパク質は、細胞体内および軸索上に強く集積するものの、明瞭な蛍光を発する。これはAβ-GFPの凝集にも拘らず、GFPの蛍光は発せられているといえる。
配列番号19:合成ペプチド
配列番号20〜25:合成DNA

Claims (13)

  1. アミロイドβタンパク質をコードするDNA、QSTVPRARDPPVAT(配列番号19)で示されるアミノ酸配列からなるリンカー配列をコードするDNA、及び緑色蛍光タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターであって、当該DNAは、アミロイドβタンパク質をコードするDNA、前記リンカー配列をコードするDNA、緑色蛍光タンパク質をコードするDNAの順で連結されている、前記組み換えベクター
  2. アミロイドβタンパク質をコードするDNA、LEで示されるアミノ酸配列からなるリンカー配列をコードするDNA、及び緑色蛍光タンパク質をコードするDNAを含む組み換えベクターであって、当該DNAは、アミロイドβタンパク質をコードするDNA、前記リンカー配列をコードするDNA、緑色蛍光タンパク質をコードするDNAの順で連結されている、前記組み換えベクター
  3. 請求項1又は2に記載の組み換えベクターが導入されたトランスジェニック非ヒト動物。
  4. 非ヒト動物がマウスである請求項3に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  5. 請求項1又は2に記載の組み換えベクターが導入されたトランスジェニック線虫。
  6. 請求項1又は2に記載の組み換えベクターが導入された形質転換細胞。
  7. 請求項3又は4に記載のトランスジェニック非ヒト動物からなる、神経変性疾患モデル動物。
  8. 請求項に記載のトランスジェニック線虫からなる、神経変性疾患モデル線虫。
  9. 請求項6に記載の形質転換細胞からなる、神経変性疾患モデル細胞。
  10. 神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項7に記載の神経変性疾患モデル動物。
  11. 神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項8に記載の神経変性疾患モデル線虫。
  12. 神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項9に記載の神経変性疾患モデル細胞。
  13. 請求項7若しくは10に記載の神経変性疾患モデル動物、請求項8若しくは11に記載の神経変性疾患モデル線虫、又は請求項9若しくは12に記載の神経変性疾患モデル細胞に被検物質を投与又は接種し、当該被検物質投与又は接種後の当該モデル動物、モデル線虫又はモデル細胞における神経変性疾患関連タンパク質を検出し、検出結果を指標として神経変性疾患の治療薬を選択する工程を含む、神経変性疾患治療薬のスクリーニング方法。
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