【発明の詳細な説明】
超気門(Ultraspiracle)阻害剤のためのスクリーン発明の分野
本発明は「オーファン」核受容体(“orphan”nuclear receptors)(つまり、
天然のリガンドが知られていない受容体)の阻害剤の同定に関する。本発明はキ
イロシヨウジヨウバエ(Drosophila melanogaster)の超気門(Ultraspiracle)
蛋白質(Usp)と、他の昆虫の種の相同物に関する。本発明は化合物、異型核蛋白
質、Usp機能を阻害する他の補助蛋白質の確認方法を提供する。Usp阻害化合物は
殺虫剤として有用であり、殺虫剤の開発のための主要化合物である。発明の背景
キイロシヨウジヨウバエの超気門(Usp)遺伝子はハエの発生の間中必要とされ
る蛋白質をコードする(Oroら、Develop.115:449,1992)。Usp遺伝子は1齢期
と2齢期の間の脱皮期に死んだ変異体の表現型によって最初に確認され、この虫
は2組の気門を持っていた(Perrimonら、Genetics 111:23,1985)。この変異体
の行動はUspが変態及び成虫原基形成のエクジソン(ecdysone;Ec)反応経路で機
能することを示した。その後、Uspがメスの生殖と眼の形態形成でも機能し、ハ
エのEcに依存する過程及び、Ecに依存しない過程に関与する可能性のあることが
発見されている(ガレンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5099,1977;セグレブ
ス、Rec.Prog.Horm.Res.49:167,1994)。
Usp遺伝子のクローニングによりUspと脊椎動物のレチノイン酸X受容体(RTRs
)に配列の相同性があることが分った(DNA結合ドメインに80%の同一性があり、
ホルモン結合ドメインには49%の同一性がある)(Henrichら、Nuc.Acids.Res.18;
4143,1990;Sheaら、Genes Dev.4:1128,1990;Oroら、Nature 347:298,1990
)。この関係はUspの以下の特性の解明へとつながった。(i)Uspは脊椎動物の核
受容体の甲状腺ホルモン受容体(TR)、ビタミンD受容体(VDR)、ペルオキシソー
ム増殖活性受容体(PPAR)を二量化するRXRの代わりに機能的に用いることがで
きる(Yaoら、Cell 71:63,1992);(ii)U
spはレチノイン酸リガンドと結合や反応することができない(Yao、1992、上述
)。(iii)Uspはエクジソン受容体(EcR)と共に異型二量化するので、EcRにエク
ジソン反応を媒介する能力を与える(Oroら、Develop.115:449,1992,Yaoら、C
ell 71:63,1992,Yaoら、Nature 366:476,1993);(iv)EcR/Usp複合体のエクジ
ソン反応を媒介する能力は、キイロシヨウジヨウバエの他の3つのホルモンオー
ファン受容体(DHRs),つまりDHR78,DHR38及びsevenup(svc)によるものである(Z
elhofら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:10477,1995,Zelhofら、Mol.Cell.Biol
.15:6736,1995,スザーランドら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7966,1995);(
v)DHR38はEcRと競争してUspと共に異型二量化するので、EcR/Usp異型二量体の解
離を促進する(Sutherlandら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7966,1995)。これら
の特性はUsp-RXRシステムが進化的に保護されてきたことと、UspはRXRと同様に
異型二量化を多重信号変換経路の機能を調整する機構として使うことができるし
、UspとRXRは機能的に別個であることを示す。
これらのUspの特性はUspが殺虫剤の重要な目標であることを当然意味する。特
に、Uspの昆虫の発生における役割とUspと脊椎動物のRXR蛋白質の違いは、Uspが
昆虫の成長制御物質(IGRs)として働き、環境的に安全な化合物の目標となるもの
であることを意味する(Graf、Parasitology Today 9:471,1993)。したがって
、Uspの機能を選択的に阻害する化合物を確認するために有用な合成と方法の技
術が必要である。発明の要約
本発明は、「オーファン」核受容体の転写活性の媒介物、つまり天然のリガン
ドが確認されていない受容体の確認方法を提供する。ある面で、本発明はキイロ
シヨウジヨウバエの超気門蛋白質(Usp)の機能を阻害する化合物を確認するため
の方法を提供する。その方法は以下を含む:
(i)(a)Usp結合パートナーと、
(b)結合パートナーとの機能的複合体を形成することができるUspあるいはその
誘導体と、
(c)レポーター遺伝子の発現がUsp-Usp結合パートナー複合体を必要とす
るレポーター遺伝子と、
を含む形質転換した酵母菌細胞を提供し、
(ii)テスト化合物の存在下で、形質転換した酵母菌細胞を定温培養してテスト
培養を形成し、テスト化合物がない時に対照標準を形成し、
(iii)テスト培養と対照標準培養のレポーター遺伝子の発現を観察し、
(iv)対照標準培養と比較してテスト培養の中のレポーター遺伝子の発現を観察で
きる程度に減らすUspの何らかの化合物の機能を阻害する化合物として明らかに
する。
好ましい態様においては、UspとmAR/EcR-CDEFを含むUsp結合パートナーを発現
するS.cerevisiae細胞を提供する。この細胞はアルギニンパーミアーゼ(CAN1
遺伝子生成物)をコードするDNAに機能的に結合したエクジソン反応要素を含む
レポーター遺伝子も含んでいる。そのレポーター遺伝子はUspとmAR/EcR-CDEF間
の機能的複合体があるときのみ転写的に活性化され、その結果その細胞はCAN1を
発現し、カナバニン(アルギニン類似物)の毒性(成長阻害)作用に影響されや
すい。細胞がUsp阻害化合物にさらされる場合、レポーター遺伝子の転写的活性
化は止まり、CAN1はもはや発現されず、その細胞はカナバニンの存在下で成長で
きる。このように、多くの化合物は高処理量の方法でUsp阻害活性のためにスク
リーニングできる。
一般に、核受容体の転写的活性モジュレーターは、本発明にしたがって受容体
とそれと共に異型二量体を形成する結合パートナーとが接触することによって確
認されるが、異型二量体はホルモンとは独立して、よく知られたDNA反応要素と
相互作用し、その要素を転写的に活性化する。適切なレポーター遺伝子の転写的
活性を検査することで、モジュレーターの別個のクラス(例えば化合物、異型受
容体、補助蛋白質)が確認できる。図の簡単な説明
図1は天然及び組換え核受容体、つまり超気門蛋白質(Usp)、エクジソン受
容体(EcR)、咄乳類アンドロゲン受容体(mAR)、アミノ末端を切ったEcRΔA/B、
組換キメラの略図である。組換蛋白質は機能的ドメインAからFの標準名称に従っ
て記述され、ドメインCにより配列される。
図2は本発明によるUsp阻害剤を確認するための方法の略図である。can1酵母
菌株は、3つのプラスミドを含む:エクジソン反応要素(EcRE2)抑制下でYepcUs
pがUspを発現する;YEpmAR/EcR-CDEFがmRA/EcR-CDEFを発現すると、YEpCAN1がカ
ナバニンパーミアーゼ(CAN1)を発現する。図の左手には、UspとmRA/EcR-CDEFの
共発現がCAN1の発現となり、カナバニンによる成長抑制を示す。図の右手には、
Uspの阻害剤(I)がカナバニンパーミアーゼの遺伝子発現を阻害し、カナバニンの
存在下でも成長可能であることを示す。発明の詳細な説明
本発明はキイロシヨウジヨウバエの超気門蛋白質(Usp)の機能を阻害する化合
物並びに他の昆虫の種のUsp相同物を確認するための方法と構成を含む。好まし
い方法では、(a)Usp結合パートナーと、(b)結合パートナーとの機能的複合体を
形成することができるUspあるいはその誘導体と、(c)レポーター遺伝子の発現が
Usp-Usp結合パートナー複合体を必要とするレポーター遺伝子と、を含む酵母菌
細胞を提供する。酵母菌細胞はUsp機能を阻害する能力を評価するようにテスト
化合物がない時に培養され、結果として生ずる培養菌はレポーター遺伝子の発現
のために監視される。Usp阻害化合物は、対照培養物(処理されていない培養物
と野生型培養物を含む)と比較して、これらの化合物が処理された培養物中のレ
ポーター遺伝子発現を減らしていることが確認される。
本発明の方法は、受容体の天然リガンドがわからないとき(つまり‘オーファ
ン’受容体)であっても、核ホルモン受容体の機能を阻害する化合物を確認する
のに使うことができる。このことは細胞、好ましくは酵母菌細胞を使うことで達
成される。この酵母菌細胞は受容体と適切なレポーター遺伝子を発現し、酵母菌
細胞中ではレポーター遺伝子がリガンドと無関係な方法で受容体によって転写的
に活性化される。レポーター遺伝子のリガンドに無関係な転写活性に達すること
が必要な場合、受容体の異型二量化結合パートナーが同じ細胞内で共に発現され
る。
Uspは1527ヌクレオチドのオープンリーディングフレームによりコードされ、5
5,252ダルトンの分子量を持つ508のアミノ酸からなるポリペプチドで
ある(Henrichら、Nuc.Acids.Res.18:4143,1990,Sheaら、Genes Dev.4:1128
,1990,Oroら、Nature,347:298,1990)。UspはA/B(transactivation)ドメイン
、C(DNA結合/二量化/transactivation)ドメイン、D(核移行)ドメイン、E(
二量化)ドメインを含む核ステロイド受容体族に典型的な明確なドメイン構造を
有する。本発明の実施において、Usp誘導体はUsp結合パートナーと共に機能的複
合体を形成できるように用いられる。ここで用いる「機能的Usp-Usp結合体パー
トナー複合体」は同種のDNA転写的活性配列(Usp結合パートナーによって指定さ
れる)と生産的に影響し合う複合体である。有用なUsp誘導体は1又は2以上のア
ミノ酸が野生型配列に付加又は欠失しているか、1又は2以上のアミノ酸が機能
的Usp-Uspパートナー複合体形成に影響しない別のアミノ酸に置き換わっている
ポリペプチドを含むUsp-Usp結合を含む。さらに、本発明の方法は、Usp変異体や
誘導体が機能的Usp‐Usp結合パートナー複合体形成能力を保持していることを確
認するためにスクリーニングするのに使用できる。
Usp結合パートナーあるいはオーファン受容体はUspあるいは他のオーファン受
容体と機能的複合体を形成する天然及び組換えポリペピチドを含む。本発明によ
ると、Usp結合パートナーはエクジソン受容体を無制限に含み、エクジソン受容
体はEcR-A,EcR-B1,EcR-B2の3つの異形体(isoform)(Koelleら、Cell 67:59,1
990,タルボットら、Cell 73:1323,1993)と、脊椎動物受容体のTR,VDR,PPAR
(Yaoら、Cell 71:63,1992)を含む。有用な結合パートナー誘導体は1又は2以上
のアミノ酸が野生型配列に付加あるいは欠失している、あるいは1又は2以上の
アミノ酸が機能的Usp-Usp結合パートナー複合体の形成に影響を与えない別のア
ミノ酸で置き換わっている構造を含む。異なる核受容体蛋白質間のキメラ、たと
えばUspなどと結合するキイロシヨウジヨウバエ核蛋白質、ステロイド受容体ポ
リペプチド族のキイロシヨウジヨウバエでない核受容体蛋白質も含まれる。好ま
しい態様で、Usp結合パートナーはキメラを含み、キメラは哺乳類アンドロゲン
受容体のA/Bドメインと、EcRのC、D、E、Fドメインを含んでいる。
本発明を実施するのに有用なレポーター遺伝子は(i)Usp-Usp結合パート
ナーによって転写的に活性化される遺伝子と、(ii)酵母菌中での発現が簡単に検
出できる遺伝子と、を含む。典型的には、1つのレポーター遺伝子は少なくとも
操作的に互いに連結する2つのDNA配列構成要素で、(i)プロモーター要素と使用
される特定Usp-Usp結合パートナー複合体と反応する要素を含む5'調節領域と、(
ii)レポーターポリペプチドをコードする3'蛋白コード領域を有する。これら2つ
の配列構成要素は付加的に蛋白質合成の開始の役割を果たす配列を含むメッセン
ジャーRNAの5'非翻訳領域をコードする配列によって分けられる。更に、レポー
ターポリペプチドの蛋白コード配列はそのポリアデニル化コンセンサス配列、転
写終止配列などによる3'末端上の側面に位置する。
適切な調節領域の例にはエクジソン反応要素(ERE)、アンドロゲン反応要素(AR
E)、ビタミンD反応要素(VRER)、レチノイン酸反応要素(RRE),甲状腺ホルモン
反応要素(THRE),雛鳥のオバルブミン生産段階の転写因子反応要素(C0UP-TE)、
ペルオキシソーム増加活性化反応要素(PPAP-RE)が無制限に含まれる。特定の反
応要素配列は、結果として生ずる反応要素配列が全体として使われる特定のUsp-
Usp結合パートナー複合体により転写的に活性化されるレポーター遺伝子に受容
力を与える、つまりレポーター遺伝子が機能的反応要素を有する間は、切り詰め
られたり、多重結合したり、他の反応要素と結合したり、突然変異を起こしたり
、電子対を共有して(convalently)変化したり、レポーターコード化配列の上
の方に様々な距離で配列したり、その他操作されている可能性のあることが理解
されよう(Mangelsdorfら、Cell 83:841,1995,Danaら、Mol.Endocrinol.8:1193
,1994)。
適切なレポーターポリペプチドの例には大腸菌E.Coli(LacZ)から由来するβ−
ガラクトシダーゼ、S.cerevisiae(CAN1)から由来するアルキニンパーミアーゼ、
URA3,LEU2,LYS2,HIS3,HIS4,TRP1,ARG4遺伝子の生成物のようなヌクレオシ
ドとアミノ酸代謝に含まれるポリペプチド、ヒグロマイシン、ツニカマイシン、
シクロヘキシミドのような薬剤への抵抗力を与えるポリペプチドや緑色蛍光蛋白
質(GFP)が無制限に含まれる(Guthrieら、Meth.Enzymol.Vol.194,1991,プ
ラシェア、Trends Gen.11:320,1995)。レポー
ター遺伝子の発現(つまり、レポーターポリペプチド合成で表わされるように)
は、酵素によるアッセイ、成長アッセイ、免疫学的アッセイ、リガンド結合アッ
セイ、薬剤耐性アッセイ、蛍光アッセイなどを含む技術的に知られている手段を
使って検出できる。好ましくは機能的Usp-Usp結合パートナー複合体がないとき
、レポーター遺伝子の転写が起こるが、そのレベルは使われたアッセイ中で検出
できないほど低いか、あるいはUsp-Usp結合パートナー複合体があるとき起こる
転写からのアッセイが簡単に識別できるか、のどちらかである。Usp-Usp結合パ
ートナー複合体があるときのレポーター遺伝子発現は形質転換した酵母菌細胞に
プラスとマイナスの特性を与える。好ましい態様では機能的Usp-Usp結合パート
ナー複合体と適切なレポーター遺伝子の両方を有する酵母菌は貧弱な生長を示し
、生長はUsp機能阻害剤があるとき回復する。
本発明の実施において、分子生物学、微生物学、組換えDNA、蛋白生化学にお
ける多くの伝統的技術が用いられている。このような技術はよく知られており、
例えばサンブルックら、1989、分子クローニング:実験マニュアル、第2刷、Col
d Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,DNAクロ
ーニング:実際的アプローチ、IとII巻、1985(D.N.Glover編集)、オリゴヌクレ
オチド合成、1984(M.L.Gate編集)、転写と翻訳、1984(HamesとHiggins編集
)、分子クローニングの実際的ガイド、シリーズ、酵素における方法(Academic
Press,Inc.)、蛋白精製:原理と実際、第2刷(Spring-Verlag,N.Y.)に十分に説
明されている。
本発明の実施において、適切な組換えクローニングベクターがUsp-Usp結合パ
ートナート同様、レポーター遺伝子を含むDNA配列をコードするDNA配列に導入す
るために用いられる。このようなベクターは多くの場合クローニングや遺伝子発
現の複製システムを、例えば非栄養要求性や抗生物質耐性など、1又は2以上の
ホストの選択マーカー、及び1又は2以上の発現カセット(expression cassette
s)を含むだろう。挿入された配列は標準的方法で合成されるか、あるいは自然
の供給源から隔離される。適切なベクターは無制限にYEpとVIpベクターを含む(
Hillら、Yeast 2:163,1986)。酵母菌プロモ
ーターの無制限の例はメタロチオネインプロモーター(CUPI)、トリオス燐酸デヒ
ドロゲナーゼプロモーター(TDH3)、グリセリン酸-3-燐酸キナーゼプロモーター(
PGK)、グリセルアルデヒド-3-燐酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーター、ガラクトキ
ナーゼプロモーター(PGK)、ガラクトースエピメラーゼプロモーター(galacto
epimerase promoter)、アルコール脱水素酵素(ADH)プロモーターを含む。
ホストの酵母菌細胞は燐酸カルシウム、リチウム塩、電気穿孔法、スフェロプ
ラス形成を用いる無制限な方法を含む適切な方法で形質転換される(Shermanら
、酵母菌遺伝学の方法、Cold Spring Harbor Laboratory,1982)。適切なホス
ト細胞は制限なくSacchromyces cerevisiaeとSchizosaccharomyses pombeを含む
。Usp‐Usp結合パートナーのリガンドに無関係な活動が測定できるすべての細胞
は本発明の実施に使用できる。ホスト細胞は様々な型の燐酸化などのcovalent電
子対を共有する(covalent)、例えば一時的変異を起こす能力に関して変えられ
たり、操作したりすることも可能である。(Baiら,Vitamins Horm.51.289,19
95)
Uspを含む酵母細胞、Usp-結合パートナー及び適切なレポーター遺伝子はUsp機
能を阻害する化合物を明らかにするアッセイにおいて用いられる。典型的には、
UspとUsp結合パートナーが発現され、機能的複合体を形成しその結果レポーター
ポリペプチドの発現が起こる状況下で細胞は定温培養される。USP、USP結合パー
トナー、及びレポーターポリペプチドを発現する培養物は、テスト培養物を形成
するテスト化合物の存在下及び対照培養物を形成するテスト化合物の非存在下で
培養される。十分な時間に適切な状況で、Usp機能と以前に存在したレポーター
ポリペプチドの代謝回転の阻害準備のために定温培養は続行させる。テスト化合
物の定温培養開始から決められた時間に、アッセイは行なわれ、レポーターポリ
ペプチドのレベルと活性が調べられる。培地サンプルとアッセイサンプルに関し
て、例えば野生型酵母菌と機能的CAN1遺伝生成物を発現する酵母菌は、追加され
た対照培養物も低温培養され、Usp阻害化合物は対照培養物と比較してテスト培
養物中のレポーター遺伝子の発現が減少していることが確認される。
理論に拘束されることなく、本発明の方法が明らかにした有用なUsp阻害化合
物は以下に示すいずれかを阻害すると考えられる。(a)機能的なUsp-Usp結合パー
トナー複合体の形成、(b)Usp-Usp結合パートナー複合体との作用物質の相互作用
、あるいは(c)天然のUsp-Usp結合パートナー複合体により正常に転写的に活性化
される同種のDNA反応要素とUsp-Usp結合パートナー複合体との機能的相互作用。
好ましくは、本発明の方法は高い処置量スクリーンに適合されており、単一の
アッセイで調べられる非常に多くの化合物の検査を可能にしている。このような
阻害化合物は、天然生成物ライブラリーや、発酵ライブラリー(植物や微生物を
含む)、組み合わせライブラリー、化合物ファイル、合成化合物ライブラリーな
どで見つけられる。例えば合成ライブラリーはMaybridge Chemical Co.(トレビ
レット、コーンウオール、英国)、Comgenex(プリンストン、ニュージャージー
)、Brandon Associates(メリマック、ニューハンプシャー)、Microsource(
ニューミルフォード、コネチカット)から工業的に利用できる。珍しい化学ライ
ブラリーはAldrich Chemical Company,Inc.(ミルウォーキー、ウィスコンシン)
から利用できる。代わりになるものとして、細菌、真菌類の菌、植物、動物の抽
出物の形の天然化合物のライブラリーはPan Laboratories(ボーゼル、ワシント
ン)かMycoSearch(ノースカロライナ)などから利用できるが、容易に作り出す
こともできる。更に、天然及び合成物ライブラリーと化合物は伝統的な化学的、
物理学的、生化学的な手段により容易に変更される(ブロンデールら、TibTech 1
4:60,1996)。本発明によるUsp阻害剤アッセイは多くの別個の種類の溶剤に適応
させるのに都合がよいし、そのために多くの供給源からの化合物を調べることが
できる。
本発明の方法で 化合物はUsp阻害剤として1度確認されると、生体内と生体外
で色々なテストをして更にUsp阻害活性の性質と機構の特性を記述することがで
きる。例えばこの化合物は細胞発現においてUsp阻害活性を調べることができ、U
spに加えて、他のUsp結合パートナーとレポーター遺伝子はこの化合物の阻害活
性が最初に検出された細胞中に存在していた。化合物のU
spとUsp結合パートナーの間の異型二量化複合体形成及び/又はUsp-Usp結合パー
トナー複合体と適切な反応要素を含むDNAとの間の複合体形成を妨げることがで
きる能力を調べることで生体外で阻害活性テストをすることができる。このこと
はグリセロール勾配分別、ゲル変動アッセイ、プロテアーゼ保護アッセイなどを
用いて行なうことができる。
Usp阻害剤と確認された化合物は有効性、効力、摂取、安定性、商業的な殺虫
剤への応用への使用の適合性などを高めるために少し変えることができる。これ
らの変更は公知の方法を用いて達成され、調べられる。殺虫剤の構成
本発明によるUsp阻害化合物は「昆虫成長制御物質」(IGRs)を含む。IGRsは脊
椎動物や植物に影響を与えず、昆虫の発生を選択的に阻害する。従って、このよ
うな化合物は環境に優しいと期待されるので、殺虫剤としての利用に特に適合し
ていると思われる。
本発明の方法を用いて確認されたUsp阻害剤の殺虫剤活性は公知の技術を使っ
て調べられる。例えば確認された各化合物(以下を参照)の処方は、植物に殺虫
剤を噴霧して次に昆虫の幼虫をその植物に適用すると、所定の時間の後、幼虫に
よる植物の破壊の割合が測定される。
殺虫剤としての使用のために、Usp阻害化合物は生物学的に許容できる担体の
中に処方される。適切な生物学的に許容できる担体は燐酸‐緩衝溶液、食塩水、
消イオン水などであるが、これらに限定はしない。好ましい生物学的に許容され
る担体は生理学的または薬理学的にも許容できる担体である。
殺虫剤の組成は活性のある薬品の殺虫効果のある量を含む。殺虫効果量は植物
や動物へ昆虫が群がることに対する予防の保護を与える本発明の殺虫剤の量であ
り、動植物への昆虫の群がりを改良または回復させる。この殺虫剤効果量は目標
とする昆虫、薬剤、ホストによって異なる。この量は適用量や頻度のマトリック
スを設定し,実験単位グループを設定し,グループの比較をしたり、あるいはマ
トリックスの各点を仮定する、などによって公知の実験方法で決定することがで
きる。
農業利用のため、殺虫活性薬剤や組成物は、乳化濃縮物(EC),懸濁濃縮物
(SC)、水で散布できる顆粒剤(WDG)などのような投与単位型に形成される。薬剤
利用のために、殺虫活性剤や組成物はクリーム,軟膏、外用水液、粉末、液体、
錠剤、カプセル、スプレーなどの投与単位型を形成する。殺虫剤組成物が投与量
単位型に処方される場合、投与単位型は活性薬剤の殺虫効果量を含む。あるいは
、複数の投与単位型や複数の投与により活性薬剤の全投与量を投与する場合、投
与単位はそのような量より少なくなるであろう。投与単位型は、更に1又は2以
上の補形薬、希釈液、錠剤分解物質、潤滑剤、可塑剤、着色料、投与量賦形剤、
吸収強化剤、安定剤、殺菌剤なども含むことができる。
本発明の殺虫剤と組成物は動植物への昆虫の群がりを防ぎ、処理するのに有用
である。予防方法は殺虫剤や組成物の予防効果量を組み込む。予防効果量は昆虫
の群がりを予防するのに効果的な量であり、昆虫や薬剤やホストによって異なる
。これらの量は上に述べたように公知の方法によって実験的に決めることができ
る。処置方法は治療上効果的な殺虫剤の量や構造を組み込む。治療上効果的な量
とは昆虫の群がりを減らすのに十分な量である。この量は目標とする昆虫、薬剤
、ホストに左右され、上に述べたように決めることができる。
予防的及び/又は治療的に効果的な量は1回の投与で投与するか、あるいは繰り
返して投与することができる。昆虫の群がりが解決すると、治療的投与の後に予
防的投与が施される。
殺虫剤と組成物は植物に局所的または非局所的に(つまり規則正しく)投与さ
れる。局所的な投与は好ましくは植物へのスプレーによるものである。規則的投
与は好ましくは葉へ、土へそしてそれに続く植物の根による吸収への投与によっ
て行なわれる。好ましい様態の説明
以下の例は制限なく発明を明らかにするものである。
実施例1
UspおよびUsp結合パートナーのクローニングとリポーター遺伝子の構築
A.発現プラスミドの構築
DNAおよび酵母を操作するために用いる方法は当該技術において周知のもの
である(グスリー(Guthrie)ら、Heth.Enzymol.Vol.194,1991)。核受容体
配列の全長のN−末端および下記キメラをコードするDNA配列を、高コピーY
Ep酵母発現ベクター(マクドーネル(Mc Donnell)ら、Mol.Cell.Biol.9:3
517,1989;マック(Mak)ら、J.Biol.Chem.264:21613,1989;マック(Mak)ら、R
ec.Prog.Horm.Res.49:347,1994)中の76アミノ酸ユビキチン(Ubi)
のアミノ末端に対する枠内で融合した。酵母中に各プラスミドをトランスフェク
ションすることにより、組換え融合タンパクを発現させ、これを内因性プロテア
ーゼにより切断し、図1に示した成熟核タンパクまたはキメラを遊離させる。
YEpcUspプラスミドの構築は、Usp遺伝子をpCFIプラスミド(シ
ーア(Shea)ら、Genes Dev.4:1128,1990)中で2つのPCRフラグメントと
して増幅し、これらをYEpcMCSのEagI部位および多重クローニング部
位のDraIII部位に挿入することにより実施した。
Uspの5'側半分を、5'末端にEagIを含むセンスプライマー5'−ACTTC
ACGGCCGATGGACAACTGCGACCAGGACGCCA−3'および3'末端にBssH IIを含むア
ンチセンスプライマー5'−CACCTGGGCAAAGTGCGGCATCAT−3'で増幅した。Usp
の3'側半分を、5'末端にBssH II部位を含むセンスプライマー5'−CAAACA
GCTCTTCCAGATGGTCGA−3'および3'末端にDra III部位を含むアンチセンスプラ
イマー5'−ACTACTCAAACAGTGCTACTCCAGTTTCATCGCCAGGCC−3'で増幅した。2つ
のPCRフラグメントおよびYEpcmcsをEagIおよびDra III部位で切
断し、混合、結合してYEpcUSPを得た。YEpcUSPにおいては、銅応
答性酵母メタロチオネイン・プロモーター(CUP1)がUspの発現を制御し
、ロイシン(LEU)が選択可能なマーカーである。
YEpEcRB1プラスミドは3工程で作製した。第1工程においては、YE
pを二重鎖リンカーの付加によりAfl II−Kpn Iで修飾し、YEpBsp
E Iを得た。該二重鎖リンカーは、
で示され、5'末端、すなわち、ユビキチンのカルボキシル末端6アミノ酸を表
す配列であるEcR遺伝子の5'配列Afl II部位から最初のEcoNI部位ま
で、およびBspEI部位と3'末端のKpn I部位の双方から成る。第2工程
においては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)フラグメントは、鋳型としてEc
R−17(コエル(Koelle)ら、Cell 67:59,1990)を含むpMKIプラスミドお
よび5'末端にBspEIを含むセンスプライマー5'−AGGAGATCTGGGACGTTCATGC
CAT−3'と、プライマーとして3'末端BspEIおよびMluI部位を含むア
ンチセンスプライマー5'−TAAACGCGTTCCGGACTATGCAGTCGTCGAGTGCTCCGACTTAAC−
3'を用いて得た。得られたフラグメントはpMK1のBglI−MluI部位
に挿入し、pMK−EcRを得た。第3工程では、pMK−EcRを先ずBsp
EIで、次いでEcoNIで消化し、消化物を1%アガロース・ゲル上で分画し
、EcRの2.5kbフラグメントを切除し、ゲル精製してYEpBspEのE
coNIおよびBspBI部位に挿入し、YEpEcRを得た。YEpEcRで
は、EcRの発現が酵母構成的プロモーター・トリオースリン酸デヒドロケナー
ゼ(TDH3)により制御され、トリプトファン(TRP)が選択可能なマーカ
ーである。
プラスミドYEpEcR−AおよびYEpEcR−B2は、YEpEcR−B
1からAfl IIおよびAscIフラグメントを切除し、その場所に、EcR−
AおよびEcR−B2のユニーク配列以外は当初のものと一致するPCRフラグ
メントを挿入することにより作製した。鋳型はそれそれpWT57およびWT5
6(タルボット(Talbot)ら、Cell,73:1323.1993)であった。センスプライ
マーはそれぞれ
5'−CTTGTCTTAAGACTAAGAGGTGGCATGGATACTTGTGGATTAGT−3'および5'−CTTGTCT
TAAGACTAAGAGGTGGCATGTTGACGACGAGTGGACA−3'であった。アンチセンスプライマ
ー5'−GCACTCCTGACACTTTCGCCTCAT−3'を両方の反応に用いた。
YEpEΔcRAA/Bプラスミドは、YEpEcR−B1からTDH3プロ
モーター、Ubi遺伝子およびEcRΔA/Bを含むBamHIおよびBspE
Iフラグメントを切除し、それをTDH3プロモーター、Ubi遺伝子含有フラ
グメントおよび新規DraIII部位の双方で置換えることにより作製した。Dra
III部位は最近接BspEI部位から更に9塩基下流のEcRΔA/Bに帰着し
た。再挿入フラグメントは2つのPCRフラグメントから作製し、第1PCR反
応では、YEpecrのTDH3−Ubi部分を、BamHI部位を5'末端に含
むセンスプライマー5'-ATGTGTCAGAGGTTTTCACCG−3'およびDraIII部位を3'
末端に含むアンチセンスプライマー5'−TCATCACACGTGGTTGGCCAAGACAAG−3'に
より増幅した。第2PCR反応では、EcRからBspEIまでの部位のA/B
ドメイン下流配列を、5'末端にDraIII部位を含むアンチセンスプライマー5
'−TCATCACACCACGTGGAGCTGTGCCTGGTTTGCGGCGAC−3'およびBamHI部位を3'
末端に含むアンチセンスプライマー5'−CTCTCTTCAACCCACCAAAGGCCA−3'により
増幅した。
6種のキメラ(図1)を作製するために、YEpmAR5プラスミド(マック
(Mak)ら、Rec.Prog.Horm.Res.49:347,1994)およびYEpEcR−B1
またはYEpEcRΔA/Bプラスミドのいずれかを使用した。キメラの命名は
N−末端ドメインに寄与する核受容体で始まり、2つの核受容体間の結合を意味
する斜線「\」が続き、第二核受容体および寄与するドメインの名で終わる。す
べてのDNA塩基番号はEcR(コエル(Koelle)ら、Cell,67:59,1990)お
よびmAR(ヒー(He)ら、Biochem.Bioph.Res.Comm.171:697,1990)の遺
伝子配列に用いる番号に基づいており、それ故に、塩基番号1はORFの開始コ
ドンのAではない。ORFのATGにおいてAの+1を得るには、EcR配列か
ら1067を引き、mAR配列から32を引く。
第1キメラYEpEcR\mAR−DEは2工程で作製した。先ず、EcRB
1遺伝子をSacIおよびBspEIで消化して2151〜3706の塩基を切
除し、A/BおよびC領域およびD領域の1/3を維持した。次いで、センスプ
ライマー5'−CATCATGAGCTCTCGTAAGCTGAAGAAACTTGGAAATCT−3'およびアンチセ
ンスプライマー5'−CATCTTCTCCGGATCACTGTGTGTGGAAATAGATGGGCT−3'を用い(
mAR5遺伝子を鋳型として)、領域DおよびEを提示する1856〜2732
塩基から成るアンドロゲン受容体遺伝子を増幅し、SacIおよびBspEI末
端を有する0.9kbフラグメントを得た。それぞれの制限酵素で消化した後、
mARフラグメントを、予め調製したYEpEcRのSacIおよびBspEI
部位にクローン化した。
第2キメラYEpmAR\EcR−DEFは、YEpEcRB1のSacIお
よびBspEI部位にそれぞれ挿入したDraIIIおよびBssH IIリンカーに
より作製した。生成したプラスミドをDraIIIおよびBssH IIで切断し、D
領域の2/3およびEおよびF領域の全部をコードする2151〜3706塩基
から成る1.8kbのDNAフラグメントを遊離させた。このフラグメントを単
離し、mARの33〜1850塩基を含むYEpmAR5(マック(Mak)ら、R
ec.Prog.Horm.Res.49:347,1994)にクローン化した。両方の部位は切断さ
れたmARの3'末端に存在する。発現生成したタンパクはmARのA,Bおよ
びC領域およびEcRのD,EおよびF領域を含んでいる。
第3キメラYEpmAR\EcR−EFは、EcRB1の2358〜2306
塩基を、センスプライマー5'−CATGATCACACAGTGCAG0ATGTATGAGCAGCCATCT−3'
およびアンチセンスプライマー5'−GATCTAGCGCGCCTATGCAGTCGTCGAGTGCTCCGA−
3'で増幅し、EcRのEおよびF領域をコードし、DraIIIおよびBssH I
I末端をそれぞれ含む1.3kbのフラグメントを得る。このPCR生成物を適
当な酵素により消化し、それをYEpmAR6のDraIIIおよびBssH II部
位にクローン化した。YEpmAR6は切断したmAR遺伝子の33〜2072
塩基を含み、A,B,CおよびD領域をコードするアンドロケン受容体の一部を
発現する。
第4キメラYEpEcR\mAR−DEは、第3キメラ(YEpmAR\Ec
R−E&F)に対する手法に従いクローン化した。但し、EcR遺伝子用に用い
たアンチセンスプライマーは5'−GATCTAGCGCGCCTAAAGGTGCGACTGGACCGATGG−3'
であった。この様にして、2358〜3057塩基を含み、EcRのEおよびF
領域のみをコードする0.6kbのフラグメントを得た。
第5キメラYEpmAR−D\EcR−DEFは、第2キメラ(YEpmAR
\EcR−DEF)に対する手法に従いクローン化した。但し、この場合(Ec
RのD,EおよびF領域をコードする)2151〜3706塩基からの1.8k
bフラグメントをYEpmAR6のDraIIIおよびBssH II部位にクローン
化した。
第6キメラYEpmAR\EcR−CDEFは、YEpEcRΔA/BのDr
a III部位に、YEpmARから作製したPCR産物を挿入することにより作製
した。該PCR産物の作製には、最初の翻訳開始ATG部位からmAR遺伝子に
続く5'末端Dra III部位を含むセンスプライマー5'−TCATCACACCACGTGATGGA
GGTGCAGTTAGGGCTGGGA−3'、およびA/BドメインmAR遺伝子の配列に沿う3'
末端Dra III部位をコードするアンチセンスプライマー5'−TCATCACACGTGGTG
GGTCTTCTGGGGTGGAAAGTAATA−3'を用いた。
プラスミドYEpV3はマクドネル(HcDonnell)ら(Md.Cell Biol.9:3517
,1989)により開示されており、プラスミドYEpRXRαはマック(Mak)ら
(Gene,145:129,1994)により開示されている。UspおよびRXRαの発現
は銅応答性酵母メタロチオネイン・プロモーター(CUP1)により促進され、
その選択可能マーカーはそれぞれロイシン(LEU2)およびトリプトファン(
TRP1)である。ECR,キメラおよびVDRの発現は酵母構成性トリオース
リン酸デヒドロゲナーゼ(TDH3)により制御され、トリプトフアン(TRP
1)は選択可能マーカーとして作用する。
B.リポーター・プラスミドの構築 Uspリポーター・プラスミドYEp−
UspRE2−LacZはYEpEcRE2−LacZにおいて、EcR応答因子
(EcRE2)を推定上のUsp応答因子(UspRE2)の2コピーと置換える
ことにより構築し
た。UspRE2はコリオンs15プロモーター(シー(Shea)ら、Genes Dev.4
:1128,1990;クーリー・クリスチャンソン(Khoury Christianson)ら、Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 89:11503,1992)の−64ないし−44の配列に相当
し,オリゴヌクレオチド対の5'−TCGAGTAGGTCACGTAAATGTCCA−3'および3'−CA
TCCAGTGCATTTACAGGTCCGAGCT−5'を合成することにより構築した。これらは各配
列、すなわち、XhoI部位に対する5ヌクレオチドの5'ないし3'末端を有し
、推定上のUsp結合部位の21塩基および1個のシトシンが続いてXhoI突
出部を完成させる。
EcR応答リポーター・プラスミド(コエル(Koelle)ら、Cell 67:59,1990)
YEpEcRE2−LacZは記載(マック(Mak)ら、J.Biol.Chem.,264:21
613,1989)のとおりに作製したが、このものはドロソフィラ(Drosophila)熱
ショックプロモーター27(hsp27)のRcREを2コピー含んでいた。こ
のコピーはpC2のXhoI部位およびE.coliLacZ(EcRE2−L
acZ)の構造遺伝子に融合した酵母イソ−1−シトクロムcプロモーター(C
YC1)の上流に挿入されたものであり、選択可能マーカーとしてURA3を有
する(マック(Mak)ら、J.Biol.Chem.,264:21613,1989)。EcRE2は2
種のオリゴヌクレオチド、すなわち、5'−TCGAGGACAAGTGCATTGAACCTGTCTCCCGGG
C−3'および3'−CTGTTCACGTAACTTGGGAACAGAGGGCCCGAGCT−5'を合成すること
により構築したが、このヌクレオチドはhsp27の23塩基を含んでおり、S
maI部位に続いて、5'末端で両立し得るXhoI突出部の4つのヌクレオチ
ドで終わっている。該オリゴヌクレオチドはキナーゼ分解し、一緒にアニールし
、リポーターベクターpC2に連結反応させた。該ベクターpC2は予めXho
Iで消化し、仔ウシ腸内アルカリホスファターゼで脱リン酸化したものである。
UspRE2およびEcRE2の両方をSmaIでの消化に付すと、それらがXh
oI部位に挿入されていることが判明し、DNA配列分析(セケナーゼ・キット
、ストレートジーン)に付すと、該因子が2コピー存在することを確認し得た。
YEp−VDRE2リポーター・プラスミドはYEpEcRE2−Lac
ZからXhoIフラグメントを切除し、ヒト・オステオカルシン・プロモーター
(hOC)に存在する25塩基対配列2コピーを再挿入することにより作製した
。なお、該hOCは下記オリゴヌクレオチド対から調製したものである。
mAR応答性リポーター・プラスミドYRpA2はマック(Mak)ら、Recent P
rog.Horm.Res.,49:347,1994に開示されている。
カナバニン(canavanine,CAN1)応答性リポーターYEpEcRE2−C
AN1はYEpEcRE2−LacZからLacZ含有BamHIおよびSac
I部分を切除し、CAN1のPCR産物を再挿入することにより構築した。PC
R反応は鋳型として野生型酵母株S288CからのゲノムDNAおよびCAN1
の配列に従って調製したプライマー(ホフマン(Hoffmann)、J.Biol.Chem.,260
:11831,1985)を含んでいた。センスプライマ−5'−GTGCTCGGATCCATGACAAA
TTCAAAAGAAGACG−3'はBamHI部位をコード化してCAN1の5'末端に繋が
っており、アンチセンスプライマー5'−TGGTGGGAGCTCCTATGCTACAACATTCC−3'
はCAN1の3'末端をコード化してSacI部位に繋がっている。
C.酵母株
プラスミドYEpUsp−LacZはS.セレビシエ(S.cerevisiae)株B
J2168で使用した。該株は遺伝子型Matα leu2 trpI ura3-52prb1-1122
pep4-3 prc1-407 gal2を有する。プラスミドYEpEcRE2−CAN1,YEp
EcRE2−LacZおよびYRpA2はcan1削除S.セレビシエ酵母株CG
Y44(DC45)で使用した。該株は遺伝子型Matα stel1-Δ1 his4-519
leu2 trp1 can1-101を有する。
実施例2
酵母Usp−Usp結合パートナー複合体によるベーターガラクトシダ ーゼ・リポーター遺伝子の転写活性化
下記実験はS.セレビシエでの転写を活性化するUsp−Usp結合パートナ
ー複合体の能力を定量するために実施した。
方法
Usp,Usp結合パートナーおよびリポーター遺伝子をコード化する発現プ
ラスミドを上記実施例1と同様に構築し、酵母に形質転換した。必要な場合には
、酵母を予め10μMムリステロンAまたは1μMテストステロンで前処理した
。細胞質ゾル抽出物を調製するために、遠心分離により細胞を採取し、水で2度
洗浄して、Zバッファー(60mM Na2HPO4,40mM NaH2PO4,10mM KCl、1
mM MgSO4,50mM β−メルカプトエタノール、pH7.0)に再懸濁した。細
胞を0.5mmガラスビーズ(ブラウン・インストルーメント)で5サイクルの
ボルテックス処理(各1分)溶解し、次いで氷上1分間インキュベートした。溶
解物を高速遠沈に付して粒状物と上清分画を分離した。ブラッドフォード(Brad
ford)アッセイ(バイオラッド)により定量した上清(細胞質ゾル抽出物)のタ
ンパク濃度は概ね5〜10mg/mlであった。
β−ガラクトシダーゼ活性を、Zバッファー800μlおよび細胞質ゾル抽出
物5〜20μgを含む1mlの反応物中で測定した。反応混合物を28℃で10
分間予備インキュベートし、その後、O−ニトロフェニルガラクトピラノシド2
00μl(4mg/ml水)を添加し、更に10分間インキュベーションを続け
た。1M炭酸ナトリウム500μlを加えて反応を停止した。最後に、分光光度
計により420nmでの反応物の吸光度を測定し、測定値をタンパク1mg当た
りのミラー(Miller)単位に変換した。
結果
ドロソフィラ(Drosophila)濾胞特異コリオン遺伝子s15のヌクレオチド−
64および−44がUspに対するシス−結合因子として機能するか否かをテス
トするために、この配列の二重コピーを近位プロモーター因子およびLacZ遺
伝子を含むリポータープラスミドに挿入し、得られるリポータープラスミドYE
pUspRE2−LacZをβ−ガラクトシダーゼ発現
に対してテストした。表1はリポータープラスミドYEpUspRE2−Lac
Zを含むBJ2168酵母からの細胞質ゾル抽出物のすべてが、検出不可レベル
(それぞれ0MU/mgと比較して1500MU/mgの範囲)の対照プラスミ
ドYEpcLacZを有するものと比較して、有意な同等レベルのβ−ガラクト
シダーゼ活性を示したことを示す。YEpcUspにおいて銅応答性メタロチオ
ネイン・プロモーター(CUP1)銅プロモーターからUspの発現を誘発する
Cu2+の存在は効果がなかった。この結果はYEpUspRE2−LacZプラ
スミドが構成的に活性であり、Uspの存在により更に誘発されるものではない
ことを示している。従って、このリポーター構築物はUsp活性をアッセイする
ために使用することはできなかった。
表1
EcR−AまたはEcR−B2の転写活性をリポータープラスミドYEpEc
RE2−LacZを用いテストした。EcRのイソ型はN−末端配列が異なって
いる。従って、YEpEcR−B1プラスミドはドメイン交換により修飾され、
YEpEcR−AプラスミドおよびYEpEcR−B2プラスミドを生じる。酵
母株をプラスミドの適切な組合わせにより形質転換し、β−ガラクトシダーゼ活
性につきテストした。表2はYEpEcRE2−L
acZを含む細胞質ゾル抽出物がUspの存在または不存在下で、β−ガラクト
シダーゼ活性が検出不可であったか、あるいは無意味なレベルにあったかを示す
。これらのレベルは0ないし132MU/mgの範囲にあり、その平均値(58
)を基礎活性と定義し、活性の比誘発を定量するのに用いた。YEpEcRE2
−LacZに加えてEcRイソ型を含む細胞質ゾル抽出物は有意なレベルのβ−
ガラクトシダーゼ活性を示し、そのレベルはUspの共発現によりEcR−B1
およびEcR−A含有細胞に対して更に増大した。酵母株をEcアゴニスト・ム
リステロンA(MurA)で前処理しても効果はなかった。EcR−B1の転写
活性を4倍、すなわち、4103±709MU/mgから18007±1967
MU/mgに増大するUspの能力は、有意なUsp特異応答を提供する。しか
し、EcRのUsp−非依存活性は寒天プレート基本アッセイにおいて使用した
場合には高すぎた。
表2
*すべての実験で基礎平均値は58である。
この3種のイソ型はそのA/Bドメインのカルボキシル末端36アミノ酸を共
有し、そのN−端では異なる配列を有していて、EcR−B1,EcR−Aおよ
びEcR−B2に対してそれぞれ226、197および17アミノ酸から構成さ
れている。また、結果はEcR構築活性のレベル(それぞれ4103±709M
u/mg,2523±710MU/mg,および480±150MU/mg)お
よびUspによるその増強(4.4±0.3、3.0±1.5、および0.9±
1.5−倍誘発)の双方において低下を示している。このことはEcRイソ型の
N−末端ドメインがその非依存性構築活性並びにUspによる誘発性の双方を決
めていることを示唆する。
このことを基にして、EcR−B1のN−末端を除去して、このドメインが転
写活性に本質的なものであるか否かを決定した。EcR−B1とmARとの間の
多数のキメラを作製して、低い基礎活性と顕著なUsp−誘発活性を示すEcR
の1形態を得た。EcRのすべての形態は、YEpEcR−B1プラスミドのE
cR配列をYEpmARに存在するmARからの対応配列と置換して修飾するこ
とにより作製した。この研究に用いた核受容体の図式を図1に示す。これらはU
sp,EcR−B1,mAR,およびEcR−B1とmARの誘導体であり、こ
れらは以下のものを包含する。1)N−末端もしくはA/Bドメインを切除した
EcR(EcRΔA/B),2)それ自身のA/B,CおよびDドメインの一部
をmARから誘導されるドメインDおよびドメインEの残余部分と共に含有する
EcR(EcR\mAR−DE),3)ドメインA/BおよびCがmAR由来の
ものであり、D,EおよびFがEcRからのものであるEcR(mAR\ecr
−DEF),4)ドメインDがまたmARからのものであることを除き、mAR
\EcR−DEFに類似のEcR(mAR\EcR−EF)、5)mAR\Ec
R−EFに類似であるが、ドメインFを欠如するEcR(mAR\EcR−E)
、6)mAR\EcR−DEFに類似ではあるが、mARからのドメインDが保
持されているEcR(mAR−D\EcR−DEF)、および7)mARのA/
BドメインがEcRのA/Bドメインと置換されているEcR(mAR\EcR
−CDEF)。酵母抽出物にはmAR\EcR−CDEFキメラを除き
、組換えタンパクが高レベルで発現されていることがウエスターン・ブロットに
おいて確認された(データ未開示)。
適切なリポータープラスミドと共にEcRの各形態を含み、Uspを含有ある
いは欠如する細胞質ゾル抽出物につき、β−ガラクトシダーゼ活性をアッセイし
た。表3は媒体またはステロイド(10μMムリステロンA(MurA)または
1μMテストステロン)のいずれかで前処理した細胞について得られた結果を示
す。Eドメインが一般にステロイド/核受容体のリガンド結合ドメインであるの
で、EcRから誘導されたドメインEをもつ核受容体含有の酵母細胞は10μM
のMurAに応答すると期待されるが、一方、mARからのドメインE含有細胞
は1μテストステロンに応答すると期待される。更に、ドメインCはシス−DN
A結合ドメインを特定し、リポーター遺伝子はキメラ受容体に存在するドメイン
Cの由来に基づき選択された。すなわち、EcRからのドメインCを有するキメ
ラはYEp−EcRE2−LacZでテストし、mARからのドメインCを有す
るキメラはYRpA2−LacZでテストした。
表3
マウス・アンドロゲン受容体応答因子でテストした受容体ND*定量せず
これら実験の結果は、EcRに存在する高転写活性をUspによる有意な誘発
が検出可能であるように低下させることができることを示している。EcRから
A/Bドメインを除去するとEcRΔA/Bとなり、これは構成的活性を保持し
、Uspが存在しても影響を受けないかあるいは抑制される(それそれ、160
0±265MU/mgおよび1018±185MU/mg)。このプロフィール
はEcR−B2のプロフィールに似ている。mARからのA/BドメインをEc
RΔA/Bに付加してmAR\EcR−CDEFを形成させると、検出可能な活
性は示さないが、Uspにより誘発性となる
(1082±147MU/mgと比較して98±75)。mARのN−末端から
の寄与を増大させ、CドメインまたはDドメインを包含させると、それぞれ、m
AR\EcR−DEFとmAR\EcR−EFとmAR−D\EcR−DEFと
なる。これらは約300Mu/mgという同様の低い構成的活性を有する。Us
pを上記キメラと共発現させると第1キメラの活性を低下させ、他の3種は約2
000MU/mgに誘導する。mAR\EcR−DEFは誘発できないが、mA
R−D\EcR−DEFは誘発し得るということは、mARからのD領域がDN
A結合ドメインの機能にとって重要な領域であることを示唆している。この推測
は以前に先端切除mARで認めた観察結果と一致している。mAR\EcR−E
(Fドメイン欠如)が誘発性であることはmAR\EcR−EF(Fドメイン存
在)に似ており、この状況でFドメインはUsp機能に寄与していないことを示
唆している。EcRのN−末端A/BおよびCドメインをmARに置換するとキ
メラEcR\mAR−DEとなり、これは基礎活性が低く、Usp誘発性である
。
mAR\EcR−CDEFが示す低基礎活性は、結果として高い標準偏差とな
り、幅広い比活性化値となる。しかし、mAR\EcR−CDEFでのこの変動
にも拘わらず、すべての誘発可能なEcR型に対してUsp存在下での比誘発は
むしろ近似していて、5〜10倍の範囲内にある(すなわち、mAR\EcR−
CDEFではその範囲が15±10ないし62.0±50にあり、テストステロ
ンで予め刺激したEcR\mAR−DEを包含しない他のものでは6.0±1.
4ないし9.2±0.6である)。これらの結果が示唆することは、Uspの誘
発性にはA/Bドメインの存在が必要であり、mARおよびEcRのA/Bはそ
の機能にとって互いに交換可能であることである。これらの結果はまた、EcR
のいずれもがUspの存在、不存在に拘わらずMurAに応答しないことを示し
ている。これに対して、EcR\mAR−DEは541±367MU/mgない
し7966±1467MU/mgの範囲、あるいは17.6±8.47倍の増加
率でテストステロンにより誘発可能であることを示している。EcR\mAR−
DEによりここで得られた基礎レベルおよびホルモン誘発レベルは、完全なmA
Rについて報
告されたレベルに近似している。従って、mARはEcRのA/Bドメインを用
いるのに、その逆の状態よりもより適している。Usp存在下でのテストステロ
ンによるEcR\mAR−DEの誘発は僅かに高いように思われる(7966±
1467MU/mgないし10,763±1577MU/mg)。このさらなる
効果はテストステロンおよびUspによる誘発が独立して引き出されることを示
唆している。mAR/EcR−CDEFキメラの低基礎活性もまた、それが他の
キメラに関係するEcRの大部分を含むという理由で選択した。
実施例3
Usp阻害化合物のスクリーニング法
原理:カナバニン/アルギニン・パーミアーゼ(CAN1)はアルギニンに対
する膜輸送体であり、毒性のアルギニン類似体、カナバニン(canavanine)の唯
一の浸入手段である(ホフマン(Hoffmann)、J.Biol.Chem.,260:11831,1985
)。CAN1含有酵母は適当濃度のカナバニンが存在すると生育できないが、c
an1除去酵母では抵抗性で生育し得る。その感受性はCAN1can1細胞が
感受性であるために半優性である(ブローチ(Broach)ら、Gene 8:121,1979)
。この性質は変異株とクローン化遺伝子単離のための選択マーカーとして開発さ
れたものである。以下の実験は誘発可能なリポーター遺伝子としてのCAN1の
用途につき記載する。これらの実験では、CAN1を絶対宿主としてのcan1
酵母株のEcRE2−リポーター遺伝子LacZと置換え、カナバニンは生育培
地に含有させる。その結果、UspおよびmAR\EcR−CDEF双方が酵母
株中に存在するときは、いずれか一方が欠損あるいは単独である場合に比べて、
細胞の生育が減少する。
図2は細胞の生育救済をモニターするための転写制御CAN1システムおよび
このシステムの実用化を図式化したものである。この図式が示すのは、YEpc
Usp,YEpmAR\EcR−CDEF(「YEpCH8」と命名)およびY
EpEcRE−CAN1を移入したcan1酵母細胞はそのプラズマ膜上にカナ
バニンパーミアーゼを、また、細胞内にはカナバニン
を蓄積させ、細胞毒性に誘導することである(パネルA)。しかし、Usp転写
に対するインヒビター(I)が存在すると、CAN1の発現が阻害され(X),
細胞成長が起こる(パネルB)。
I.材料と方法
A.原液
10X濃度のアミノ酸不含酵母窒素基礎培地(YNB)(ディフコ)を調製す
るに当たり、その67gを1リットルに溶かし、その後滅菌濾過し、4℃にて貯
蔵した。ゴールド濃縮液(G−trp,−leu,−ura,−arg)は以下
の成分を含んでいた。
アデニン硫酸塩 120mg
L−ヒスチジン 120mg
L−メチオニン 120mg
L−チロシン 180mg
L−イソロイシン 180mg
L−リジン・HCl 180mg
L−フェニルアラニン 300mg
L−グルタミン酸 600mg
L−アスパラギン酸 600mg
L−バリン 900mg
L−スレオニン 1200mg
L−セリン 2250mg
これらの成分をH2O 1.1リットルに溶解した。数滴の10N−NaOH
を加えてアミノ酸を完全溶解した後、その溶液を滅菌濾過し、4℃にて貯蔵した
。
硫酸銅(CuSO4)(シグマ・カタログ#C−1297)100mM溶液を
調製するに当たり、その1.6gをdH2O 100mlに溶カル、滅菌濾過し
、遮光下室温にて保存した。
カナバニン原液(Can)(シグマ・カタログ#C−9758)を調製するに
当たり、その100mgを1mlに溶かし、滅菌濾過し、4℃にて貯蔵
した。
アルギニン原液(Arg)を調製するに当たり、その100mgを1mlに溶
かし、滅菌濾過し、4℃にて貯蔵した。
B.ゴールド培地の調製
液体培地は以下の成分を含有していた。
デキストロース 12g
10X YNB 60ml
ゴールド濃縮液 110ml
硫酸銅(II) 600μl
dH2O 430ml
各成分を総量600mlに溶解し、その溶液を滅菌濾過し、4℃にて貯蔵した
。
寒天培地は以下の成分を含有していた。
デキストロース 12g
バクト・アガー 12g
dH2O 430ml
上記成分を混合し、20分間オートクレーブ処理し、その後、以下の試薬を総
量600mlに添加した。
10X YNB 60ml
ゴールド濃縮液 110ml
硫酸銅(II) 600μl
50℃の水浴中で少なくとも20分間冷却した後、カナバニン原液300μlを
加え、混合した。
II.方法
酵母株CGY44:YEpmAR\EcR−CDEF/YEpcUSP/YE
pEcRE2−CAN1を液状ゴールド培地5ml中、30℃で振盪し、個々の
クローンから一夜生育させた。一夜培養物200μl量を液状ゴールド培地50
mlに移し、30℃で一夜振盪した。培養物のOD600を測
定した(約1.0)。OD600=1の細胞6ml量を取り出し、予め50℃に冷
却したゴールド混合培地寒天と混合した。混合物を大きなスミロン(Sumil
on)スクリーニング皿に注いだ。
寒天が固化した後、テストサンプルをプレート上に載せた。陽性コントロール
として、50および100μgのアルギニンを含む1/4インチフィルターディ
スクを使用した。該プレートを30℃インキュベーター中で一夜培養し、翌日に
そのプレートを分析した。16時間培養後、アルギニンディスクは目視可能な生
育ゾーンを示した(24時間後には更に活発な生育を示した)。
III.結果
A.アッセイ変動
一定の実験内および繰り返し試行での再現性をテストするために、該アッセイ
を3週間の期間内に独立に5回実施した。各実験では新たに生育した酵母細胞お
よび新たに調製した培地を使用した。表4に掲げたサンプル含有フィルターディ
スクを各プレート上でアッセイした。アルギニン含有ディスクのみが生育ゾーン
を生じるが、その大きさは100μgのアルキニンで最大ゾーンとなり、10μ
gで最小ゾーンを生じた。
表4 B.検出限界
ウルトラスピラクルに対するアンタゴニストは未知である。代替物としては、
アルギニン(アルギニン・パーミアーゼによる搬送をカナバニンと共に特異的に
遂行する)が酵母を救済し得る化合物の最小濃度を決めるために使用された。種
々濃度のアルギニン(1,2,5,10,20,30,40,50,60,70
,80,90,100,200,400および800μg)をフィルターディス
ク上に置いた。10μgおよびそれ以上を含有するディスク周辺に生育ゾーンが
目視できた。従って、スクリーニングの感度はアルギニン10μgである。しか
し、ウルトラスピラクルに特異的なインヒビターはもっと低い限界を有すると思
われる。
表5はカナバニンおよびアルギニンそれぞれをスポットしたフィルターディス
ク周辺での細胞生育およびカナバニンの不存在下(A)または存在下(B)での
生育につき、縮小(A)あるいは拡大(B)した直径で定量化したものを示す。
表5
A
B
*ND:検出不可
mAR\EcR−CDEF、YEpEcRE2−CAN1およびUsp含有酵
母細胞は、検出可能な阻害ゾーンを示さないUsp不含相応細胞に比べて、生育
阻害のより大きなゾーンを生じることによりカナバニン(フィルターディスクに
スポット)の存在に応答する(パネルA,Usp欄対ベクター欄)。これらの結
果はディスク上のカナバニン50μgでゾーンの大きさが
27mmに達したことを示す。この値は最高値に近く、多分拡散の限界である。
その理由はカナバニンを100μgに倍増してもゾーンの拡大は31mmが限界
だからである。YEpecRE2−CAN1およびUsp含有酵母細胞を更に制
御してもゾーンは示さなかった。その逆のアッセイは対応する結果を生じた。
mAR\EcR−CDEF、UspおよびCAN1を発現する細胞をカナバニ
ン含有培地上で生育させるとき、ディスク上アルギニンの存在は細胞を救済する
(パネルB)。救済にはアルギニンおよびカナバニンの濃度が直接関係しており
、カナバニン濃度が増大するにつれて、救済ゾーンを拡大させるためにより多く
のアルギニンが必要となる。寒天培地中のカナバニンが50μg/mlでは、デ
ィスク上10μgのアルギニンは10mmの小さなゾーンを生じるが、アルギニ
ン100μgでは22mmのより大きなゾーンを与えた。カナバニンに対するゾ
ーン毒性またはアルギニンによる救済は生育の16時間後に最も顕著となり、次
いでそれが背景の生育に放散していく。寒天中のカナバニン量が1mgまで増加
しても、完全な系をもつ酵母株の成長は妨げなかった。これに対し、野生型細胞
の成長は2μg/mlのカナバニンにより完全に抑制される。この違いは、工学
株には野生株でのアルギニンパーミアーゼの少ないものが存在することに由来す
ると思われる。リポータープラスミドの誘発は上記表3に示すように非常に低い
レベルである。
第二に、細胞を殺すためには最少数のアルギニンパーミアーゼが要求される。
工学株が分裂するとき、リポータープラスミドの分化分離はカナバニン感受性を
与えるパーミアーゼのレベルが余りにも低い娘細胞を生じる。これらの理由は、
CAN1/can1二倍体細胞が中庸の感受性を示すことから、カナバニンに対
する感受性は半優性であるとする報告された性質と矛盾しない。
C.醗酵培地の適合性
アッセイに際しての醗酵した新鮮真菌培地の効果は、20μlの各ブロスもし
くは培地ブランクを含むフィルターディスクをテストプレート上に置く
ことにより決定した。対照として、100μgのアルギニンを含むブランク培地
もテストした。表6に結果を示すように、テストした9種の培地(A1,AA,
B,F−1,B,L−1,FM7,FM2,およびFM3については現在パール
・リバーで使用している培地コードを参照する)は、それらが培養醗酵したか否
かに拘わらずスクリーニングに影響しなかった。
表6
上記の系は合成化合物および天然物についての高処理能力スクリーニング方式
において実施されている。救済の百分比は0.01%である。非特異的なリード
を除くために、推定上のリードを2μg/mlカナバニン中で育成した野生型C
AN1株についてテストした。もし救済が起こるなら、リードは廃棄する。もし
そうでなければ、それは保持され、評価を受ける。非特異的なリードは抗真菌化
合物ニスタチン、アルギニンパーミアーゼを阻害する化合物、およびトリプトフ
ァンを包含し、これらは選択可能なマーカーとしてのTRP1を有するYEpm
AR\EcR−CDEFプラスミド欠失の原因となった。この観察はEcRとU
spの共発現が細胞死にとって必須のものであることを示している可能性がある
。
推定上リードの特異性を決めるための更なる二次スクリーニングのために、Y
EpEcR−B1,YEpEcR−A,YEpEcR−B2,またはYEpEc
R\mAR−DEのいずれか、およびYEpEcRE2−CAN1を含有する株
を、YEpcUspの存在もしくは不存在下に用いた。カナバニンに対するそれ
らの感受性を表7に示す。EcRイソ型はすべて100μgのカナバニン含有フ
ィルターディスクの周囲に非生育ゾーン(それぞれ、34,17、および17m
m)を生じ、それらが不存在の場合(12mm)に対比し得る。Uspはそれ自
身効果を持たないが(12mmゾーン)、3種のEcRイソ型すべてを増強した
(それぞれ、42,34、および25mmのゾーンを形成した)。mAR\Ec
R−CDEFおよびUspを発現する酵母細胞は27nMの生育停止ゾーンを生
じた。Uspの存在もしくは不存在下にEcR\mAR−DEを含有する細胞は
非感受性であった。しか
し、テストステロンの存在下、それらは36nMのゾーンを生じた。EcRΔA
/B含有細胞は非感受性であり、Uspの共発現も効果がなかった。これらの結
果は、この場合Uspが明らかにEcR−B2イソ型を増強するということを除
き、β−ガラクトシダーゼの結果(表2および3)と矛盾しない。更にこれらの
結果は、これらの株がリードを確認するための二次スクリーニングとして用い得
ることを示している。更にこれらが示唆することは、β−ガラクトシダーゼアッ
セイに比較したカナバニンアッセイがやや非定量的ではあるが、より感受性であ
ること、すなわち、EcR−B2はEcR−Aのようにカナバニンに対して相当
の感受性を示すが(17mmゾーン)、一方、β−ガラクトシダーゼの発現誘発
が弱く(それぞれ、480±150対6694±3187;表2)、Usp存在
下でのEcR−B2は、不存在下に比べてカナバニンに対して有意に感受性の増
大を示すこと(それぞれ、25mm対17mmゾーン)、しかし、β−ガラクト
シダーゼアッセイでの同じ状態では余り明確ではない(Usp存在による誘発は
0.9±1.5、表2)ことである。
表7
A
112mmを表す;2未処理および3テストステロン処理細胞
結果は2つの独立したクローンの平均であり、2またはそれ以上の独立した実験
からのものである。
B.カナバニン感受性−非生育ゾーン
C.β−ガラクトシダーゼ活性−LacZ誘発
E.RXRαおよびUspは酵母中で相互交換し得ない
RXRαは酵母中での結合およびトランス活性化においてUspと置換し得る
ので、RXRαをUspと置換することが推定上のリードを確認するために有用
であるか否かをテストするために実験した。この実験は先ずカナバニンアッセイ
を用いて行い(表7、パネルB)、β−ガラクトシダーゼアッセイを用いて確認
した(表7、パネルC)。この結果は、RXRαはN−末端切除EcR(EcR
ΔA/B)をトランス活性化するが、キメラ受容体mAR/EcR−CDEFに
ついては活性化しないことを示す。これはUspの逆で、UspはEcRΔA/
Bを活性化しないが、mAR/EcR−CDEFを活性化する。UspまたはR
XRαのいずれかの存在下または不存在下、YEpEcRE2−CAN1含有酵
母はカナバニンに対し感受性を示さない、すなわち、100μgのカナバニンを
スポットしたフィルターディスクの周囲に有意なゾーンを示さなかった(それぞ
れ、15,13、および
12mm)。YEpEcRE2−CAN1およびEcRΔA/B含有の酵母は非
生育のゾーン(22mm)を示し、更にUspが存在しても影響を受けない(2
0mm)が、RXRαが存在すると拡大する(29mm)。これに対し、YEp
EcRE2−CAN1およびmAR/EcR−CDEF含有の酵母はカナバニン
に対して非感受性を示し、RXRαが存在しても影響を受けない(15mmゾー
ン)が、更にUspが存在するとより大きなゾーンを生じる(26mm)。
β−ガラクトシダーゼを蓄積する際にも同じ様式が見られる。YEpEcRE2
−LacZを単独であるいはUspまたはRXRαのいずれかと共に含有する
酵母から調製した細胞質ゾル抽出物は有意なレベルのβ−ガラクトシダーゼ活性
を蓄積しない。更にEcRΔA/Bが存在するとリポーター遺伝子の基礎活性化
に至り(2085±509MU/mg)、これはUspの存在により影響されな
いか、むしろ抑制される(1350±291MU/mg)が、RXRαが存在し
ても増大しない(4320±1230MU/mg)。この逆はmAR/EcR−
CDEFで真実であり、そのもの単独あるいはRXRαの存在によっては影響を
受けない(それぞれ、83±25MU/mgおよび238±94MU/mg)が
、Uspの存在下では増大する(726±246MU/mg)。
要約すると、RXRαおよびUspは互いに交換可能ではないが、これらを含
む株はアッセイにより同定したリード化合物の特異性を評価するために用いるこ
とができる。
あるいは、RXRαは酵母中のビタミンD受容体(VDR)をトランス活性化
すると報告されているので、我々はUspが当該株を活性化するに際してRXR
αと置換し得るか否かを決めようとして、カナバニンの感受性を決定した。予備
的定量のために、我々はリポーター遺伝子としてLacZをもつプラスミドを使
用した。VDRに代わると報告されたHREであるhOCから誘導される25塩
基対配列の二重コピーをリポータープラスミドに挿入し、得られるリポータープ
ラスミドYEpVDRRE2−LacZを適当な酵母株中でテストした。表8に
提示した結果は、RXRαとhVDR双方を
含有する酵母株の細胞質ゾル抽出物が、いずれかの受容体のみを含有する株より
もより強いβ−ガラクトシダーゼ活性、すなわち、それぞれ1320±50MU
/mg、520±360MU/mg、96±9MU/mgを有することを示すが
、UspとhVDRを含有するものはUspのみを含有する細胞と略同じレベル
、すなわち、それぞれ473±110MU/mgおよび520±0MU/mgを
有する。興味深いことに、リポーターのみをもつ細胞は175±59MU/mg
のβ−ガラクトシダーゼ活性を有し、Usp単独でこのリポータープラスミドに
より検出し得る転写活性を有することを示唆している。
表6
従って、これは核受容体にとってのヘテロ二量体パートナーとしてRXRαお
よびUspが相互交換し得ない酵母を用いる第二の観察である。EcRΔA/B
およびVDRが何を共通に持つかを考えるとき、顕著な類似性は、EcRΔA/
BがA/Bドメインをもたず、VDRは非常に小さなもの(高々21アミノ酸)
しかもたないということである。この観察はEcR−B2およびUspを用いて
得た結果と矛盾しない。
F.一組の天然物のスクリーニング
既知の多様な活性を有する一組の天然物(6,500サンプル)につき、各化
合物10〜20μgを96穴レプリカプレートによる寒天テストプレー
トに移し、アッセイした。3つの化合物が生育ゾーンに囲まれた致死ゾーンを生
じ、有力なリード化合物であると判定した。
G.DIVPIK化合物のスクリーニング
DIVPIKコレクション(種々の化学的分類を代表する化学化合物の収集物
)中の6592サンプルを5〜10μgの量でスクリーニングした。明らかに陽
性のものは検出されなかった。しかし、5つの化合物が該4種の化合物に類似の
生育ゾーンに囲まれた致死ゾーンを生じた。これらの予備的ヒット品を更に二次
スクリーニングに掛け、該化合物が同じ表現型を再生するかテストした。これら
のヒット品はアルギニンパーミアーゼを阻害したが、ウルトラスピラクルは阻害
しなかったので、陽性として得点されなかった。従って、DIVPIKコレクシ
ョンの化合物には特異的にウルトラスピラクルを阻害するものが見出されなかっ
た。
H.合成ライブラリーのスクリーニング
合成ライブラリー中の38,000サンプル以上について本発明方法を用いス
クリーニングした。
上述のすべての特許、特許出願、物品、刊行物、および試験方法はそれらをこ
とごとく参照することにより、その結果として具体化される。
本発明の多くの改変はそれ自身、上記の詳細な説明の記載に照らして当業者に
示唆を与えるだろう。そのような明白な改変は本発明においてすべて企図した範
囲内のものである。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
G01N 33/50 G01N 33/50 Z
//(C12N 1/19
C12R 1:85)
(C12N 1/19
C12R 1:865)
(72)発明者 キルシュ,ドナルド,アール.
アメリカ合衆国 ニュージャージー州
08540、プリンストン、ターハン ロード
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