JP2000513935A - Aattプロモーターエレメントおよび転写因子 - Google Patents

Aattプロモーターエレメントおよび転写因子

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Abstract

(57)【要約】 異種プロモーター構築物におけるシスエレメントの活性を、プロモーターの固有な特異性を変更することなく増大させる新規な転写エンハンサーエレメント(AATT)nが提供される。(AATT)反復エレメントに特異的に結合する転写因子PABFおよびその使用方法もまた提供される。

Description

【発明の詳細な説明】 AATTプロモーターエレメントおよび転写因子発明の分野 本発明は遺伝子の発現に関する。さらに特定すると、機能しうる形でそこに連 結された遺伝子の転写速度を増大させる新規なエンハンサーエレメント、特に植 物におけるエンハンサーエレメントに関する。発明の背景 遺伝子は、誘導的に、細胞型に特異的に、または構成的に調節される。遺伝子 発現の調節に関与する異なる種類の構造エレメントが存在する。遺伝子に近接し て、または遺伝子内に位置するシス作用性エレメントは、配列特異的DNA結合 タンパク質すなわちトランス作用性因子を結合するように働く。タンパク質とD NAとの結合は、遺伝子転写の開始、維持またはダウンレギュレーションに関与 する。 遺伝子を制御するシス作用性エレメントには、プロモーター、エンハンサーお よびサイレンサーが含まれる。プロモーターは転写開始部位の隣に位置し、方向 依存性の様式で機能する。他方、プロモーターの活性を調節するエンハンサーお よびサイレンサーはそれらの方向および転写開始部位からの距離に関して柔軟性 でありうる。 植物において特異的に調節される遺伝子の一例として、フェニルアラニンのケ イ皮酸(フェニルプロパン骨格に基づく多様な天然産物の前駆体)への脱アミノ 反応を触媒するフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)が挙げられる。 維管束発生の間に、PALは構造ポリマーであるリグニンの沈着と関連して、分 化しつつある木部細胞において選択的に発現される。セルロースに次いで最も豊 富なバイオポリマーであるリグニンは、植物組織(木部)における管を形成する 細胞の主要な細胞壁構成要素である。木部は、植物の根から茎への水および無機 溶質の移動に関与する。PAL遺伝子は分化しつつある木部において対応して高 いレベルで発現される。 遺伝子発現の速度を人為的に調節する能力は、新しい特徴を有する植物を作製 する手段を提供する。内因性遺伝子発現レベルの増大を含めて、遺伝子発現レベ ルの増大が望ましい状況は数多く存在する。そのような状況には、例えば、農業 または商業上の目的のための植物産物(タンパク質)の産生が含まれる。発明の概要 本発明は、非特異的エンハンサーとして機能する新規な反復エレメントを提供 する。すなわち、本発明のエンハンサーエレメントは、このエンハンサーエレメ ントに結合しているプロモーターの固有な特異性に影響を与えない。それどころ か、このエンハンサーエレメントはプロモーターの活性を高め、それによってプ ロモーターに結合している遺伝子の所望レベルの発現をもたらす。この新規な反 復エレメントに結合する新規な転写因子であるパリンドロームエレメント結合因 子(palindromic element binding factor:PABF)もまた提供される。 第1の実施態様において、本発明は少なくとも配列(AATT)n(ここでnは≧2 で、好ましくは約2から約20である)からなる単離されたヌクレオチド配列を含 むエンハンサーエレメントを提供する。配列(AATT)nは、シス作用性の、非特異 的なエンハンサー活性を有する。1つの面において、本発明は、機能しうる形で 遺伝子に結合している異種プロモーターに(AATT)n反復エレメントを機能しうる 形で連結し、それによって該遺伝子の増大した発現を可能とする、細胞における 遺伝子の発現を増大させる方法を提供する。 別の実施態様において、本発明は、SDS-PAGEで測定したとき約67kDの分子量を 有し、(AATT)n反復エレメント(ここでn≧2)に結合し、そして、H1ヒスト ンドメイン、グルタミンが豊富なドメイン、および高速移動群(HMG)I/Yドメイ ンを有することによって特徴づけられる、実質的に精製されたパリンドロームエ レメント結合因子(PABF)ポリペプチドを提供する。PABFは転写因子と して作用し、本発明の(AATT)反復エレメントに結合する。図面の簡単な説明 図1、パネルAは、図1Bに示す構築物を含むそれぞれ独立した形質転換体由 来の成熟した、、着色した花冠(花弁)組織(パネルa〜d)、未着色の花冠組 織(パネルf)、および第5節間より上の葉柄(パネルe)の抽出物におけるG US活性(各トランスジェニック系統について2植物体の平均)の棒グラフを示 す。影をつけて囲った部分は、それぞれ独立したトランスジェニック系統におい て測定したGUS活性の平均値を表す。パネルaの文字およびパネルdの数字は 、トランスジェニック系統を示し、パネルeおよびfのGUSデータはそれらか ら誘導された。 図1、パネルBは、プロモーターGUS-融合構築物を示す(一定の縮尺によって 描いたものではない)。PAL2プロモーターの153bp RsaI断片または(AATT)13配列 を有する合成パリンドローム配列(PAs)を-326 CHS15/GUS遺伝子融合体の前にク ローン化した(それぞれ構築物-326 Rsaおよび-326 PAs);または-72 CHS15/GU S遺伝子融合体の前にクローン化した(それぞれ構築物-72 Rsaおよび-72 PAs) 。CHS15プロモーターを斜線を引いた四角で示す。PAL2プロモーター内のRsaI断 片の位置(PAL2、点々を付してある)、およびPAL2△PA構築物におけるPA欠失の 位置(破線)を示してある。矢印は転写開始部位を示す;GUSはレポーター遺伝 子を示す。 図2、パネルAは、標識化RsaI断片を添加する前に表示の温度で10分間インキ ュベートしたマメ(タンパク質20mg)の粗製核抽出物(NE)を用いた電気泳動移動 度シフトアッセイ(EMSA)を示す。結合反応は0℃または25℃で30分間実施した 。 図2、パネルBは、結合反応の前に80℃で10分間インキュベートしたタバコの 茎から調製した核抽出物(20mg)を用いた電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA) を示す。この結合反応には、コンカテマー化した(concatemerized)オリゴヌクレ オチドの五量体(すなわち(AATT)5)をプローブとして用いた。4%非変性ポリア クリルアミドゲルおよび高イオン強度Tris-グリシン緩衝液を用いた電気泳動(10 V/cm)によって未結合DNAからタンパク質-DNA複合体を分離した。 P:遊離のプローブ、C1およびC2:複合体。 図3は、マメ核抽出物を用いたRsaI断片のDNアーゼIフットプリント分析を示 す。末端標識RsaI断片をマメ核抽出物の存在下(+)または不在下(−)でイン キュベートし、、次に0.25および1単位/mlのDNアーゼIでそれぞれ消化した。 消化産物を、6%変性ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動、および同一DN A断片のマクサム・ギルバートAおよびG配列決定反応(レーンA/G)によっ て分析した。DNアーゼIによる消化から保護された領域を示し、また対応する配 列(配列番号9)を左側に示す。番号は転写開始部位に対するヌクレオチドの位 置を示す。 図4は、多量体化PAプローブを用いてつり上げた、λ900に対して溶原性の培 養物由来のタンパク質抽出物のサウスウエスタンブロット分析を示す。パネルA は、SDS-PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜にブロットし、再生させた溶 原性ファージのタンパク質抽出物である。膜を6枚の帯片に切り、図示したプロ ーブとハイブリダイズさせた。M:kDa単位の見かけ分子量を有するマーカータ ンパク質の位置。PAn:コンカテマー化PAプローブ;PA:単量体PAプローブ;1〜4 :PAL2プロモーターの異なる領域を表すPCR産物。パネルBは、PAL2プロモー ター内のPCR産物1〜4の相対的位置を示す。師部(phloem)エレメントAT-、P F-、およびPA-モチーフの位置を示す。番号は転写開始部位に基づく位置を示す 。矢印は130kDaの、ファージにコードされた融合タンパク質を示す。 図5aおよび5bは、PABF cDNAのヌクレオチド配列および推定され るアミノ酸配列を示す(それぞれ配列番号2および3)。一文字表記で示す推定 されるアミノ酸配列は、第61位にあるオープンリーディングフレームの最初のメ チオニンから始まり、N-546の次に位置する終止コドンで終わる。矢印は、最初 に単離された、端を切断されたcDNAクローンの5'および3'末端を示す。AT- フック(hook)モチーフに下線を付してある。 図6は疎水性プロットである。上のパネルは、負の数値が親水性領域を表す疎 水性プロットを示す。数字は、PABF配列内におけるアミノ酸の位置を示す。 下のパネルは、PABFの構成を図式的に示す。黒い四角は、HMG I/Yドメイン に見いだされるAT-フックモチーフを示す。 図7Aは、PABFのドメインと、植物ヒストンH1遺伝子およびHMG I/Y D NA結合モチーフ(AT-フック)(配列番号10〜16)との配列相同性の比較を示 す。アミノ酸の同類置換を+で示す。 図7Bは、哺乳動物HMG I/Yタンパク質の反復dA-dT-DNA結合モジュール( a〜c)(配列番号17〜24)を示す。類似した反復配列がPABF(a〜g)に 見いだされた。共通AT-フックモチーフと異なるアミノ酸のみを示してある。不 変のコアモチーフであるRGRPを太字で印刷してある。括弧内の数字は、各タンパ ク質内のアミノ酸の位置を示す。好ましい実施態様の説明 本発明は、新規なエンハンサーエレメントおよびこのエンハンサーエレメント に結合する新規なパリンドロームエレメント結合因子(PABF)を提供する。 本発明のエンハンサーエレメントおよび結合因子は、特に植物において遺伝子発 現を増大させる方法を提供する。PAL2 エンハンサーエレメント 本発明のエンハンサーエレメントは、複数の離れた反復ユニット(AATT)を含む 。このエンハンサーは、少なくとも発現の増大に必要とされる数の反復エレメン トを有し、通常はその数は天然のエンハンサーに存在する反復ユニットの数の約 2倍以下である。 本明細書に記述する(AATT)反復は不完全であってよい。すなわち、全反復配列 中にはある程度の変動をもって、特異的コア配列(AATT)を有してよい。本発明の エンハンサーエレメントは、全てAATT反復から成ってもよいし、不完全な反復か ら成ってもよいし、またはAATT反復と不完全な反復の組合せから成ってもよい。 本発明のエンハンサーエレメントは、上記4bp配列の少なくとも2反復、好ま しくは少なくとも約4反復、最も好ましくは少なくとも8反復を有し、そして好 ましくは上記4bp配列の約20の反復しか有さない。従って、エンハンサーエレメ ントは少なくとも8塩基対(bp)、好ましくは約16から約32bp、そして最も好まし くは約80bp以下を有する。 本発明のエンハンサーエレメントは、それが由来する種またはそれが天然に機 能する種と同じまたは異なる種に用いることができる。天然のエンハンサーは、 天然の環境下では一般にプロモーターの上流約600bp以内に位置するDNA配列 を含む。本発明のエンハンサーエレメントはシスに作用し、そして増強すべきプ ロモーター内の転写開始ドメインの約5000bp、好ましくは約2000bp以内、最も好 ましくはそれに隣接するか1000bp以内に位置する。例えば、mRNAの最初のヌ クレオチドを+1とすると、エンハンサーを含む配列は好ましくは約-50から約- 1000bp、通常は約-50から-900bp、そしてより具体的には約-50から約-800 bp上流に位置する。エンハンサーエレメントは、それが増強するプロモーターに 対して上流または下流に位置することができる。または、エンハンサーエレメン トは転写ユニット中のイントロン内に位置してもよい。 本発明のエンハンサーエレメントは、天然においてこのエンハンサーの制御下 に見いだされるプロモーター(同種)および天然においてはこのエンハンサー領 域と関連していないプロモーター(異種)を含む種々のプロモーターと共に使用 することができる。 植物における転写の増大は、高レベルの内因性遺伝子の発現および高レベルの 外因性遺伝子の発現を得るのに有用である。本明細書に用いる「内因性」という 用語は、野生型宿主に通常見いだされる遺伝子を言い、他方、「外因性」という 用語は野生型宿主に通常見いだされない遺伝子を言う。 本発明のエンハンサーエレメントは、転写開始ドメインを含むプロモーターに 機能しうる形で連結される。「転写開始ドメイン」という用語は、少なくともR NAポリメラーゼ結合部位およびmRNA開始部位を有するプロモーターを言う 。そしてプロモーターは、オープンリーディングフレーム(ORF)を含む場合 にはタンパク質をコードする、典型的には5'および3'非翻訳配列を含む内因性ま たは外因性の遺伝子に機能しうる形で連結している。そのようなオープンリーデ ィングフレーム、またはRNAをコードする配列は、タンパク質産物をコードす る天然のオープンリーディングフレーム;mRNA由来のcDNA配列;合成D NA;天然遺伝子のエキソンに由来する、タンパク質をコードする配列(例えば 、エキソン連結によって生じるオープンリーディングフレーム);および/また は上記の組合せを含む。適切な転写終止配列およびポリアデニル化配列もまた含 まれる。 本発明によってその発現レベルを増大させることができる目的の遺伝子は、例 えば、一次RNA産物をコードする天然の遺伝子(植物、動物、細菌、ウイルス 、真菌)に由来する配列;特定のRNAまたはタンパク質産物をコードする合成 DNA配列;例えば、部位特異的突然変異誘発 等の突然変異誘発によって改変されたDNA配列;(融合タンパク質を産生する ための)上記の任意のもののキメラ;および相補的RNA分子(アンチセンス) をコードするDNA配列、並びに上記のものの組合せおよび/またはフラグメン トを含む。 本発明を用いて増大したレベルで産生させることができるタンパク質の例は、 以下のものを含むがそれらだけに限定されない。すなわち、栄養的に重要なタン パク質;増殖促進因子;植物における早期開花のためのタンパク質;特定の環境 条件下で植物に保護を与えるタンパク質、例えば、金属または他の毒性物質(除 草剤または殺虫剤等)に対する耐性を付与するタンパク質;極端な温度に対する 耐性を付与するストレス関連タンパク質;真菌、細菌、ウイルス、昆虫および線 虫に対する耐性を付与するタンパク質;特定の商業的価値のあるタンパク質、例 えば、EPSPシンターゼ等の代謝経路に関与する酵素である。 本明細書に記述するエンハンサーエレメントは天然の供給源(例えば、フェニ ルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL))から単離することができる。または 、標準的DNA合成技法(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Unit 2.11,Ausubelら(編),John Wiley,1995参照)によって合成するこができ る。 1つの実施態様において、本発明は細胞における遺伝子発現を増大させる方法 を提供する。この方法は、目的の遺伝子に機能しうる形で連結したプロモーター に上記の(AATT)n反復エレメントを機能しうる形で連結し、そして該遺伝子の発 現を増大させることを含んでなる。プロモーターは構成的なものでも、誘導性の ものでもよい。本明細書に用いる「増大した」または「増大させる」という用語 は、本発明のエンハンサーエレメントを含むプロモーターと連結していない対応 する野生型遺伝子の発現に較べて上昇した遺伝子発現を言う。 本明細書に用いる「機能しうる形で連結された」または「機能しうる形で連結 している」という用語は、本発明のエンハンサーエレメントとプロモーター配列 との間の、およびプロモーター配列と該プロモーター によって調節される構造遺伝子との間の機能的な連結を意味する。機能しうる形 で連結されたエンハンサーおよびプロモーターは構造遺伝子によってコードされ るポリペプチドの発現を制御する。 本発明に用いた構造遺伝子の発現は、多数のプロモーターによって誘導するこ とが可能である。本明細書では目的の構造遺伝子の内因性プロモーターを該遺伝 子の転写調節のために用いることが可能であるが、好ましくはプロモーターは外 来の調節配列である。植物発現ベクターに対して適切なウイルスプロモーターは 、CaMVの35S RNAおよび19S RNAプロモーター(Brissonら,Nature 310:511 ,1984;Odellら,Nature 313:810,1985);ゴマノハグサ(figwort)モザイクウイ ルス(FMV)由来の全長転写プロモーター(Gowdaら,J.Cell Biochem.,13D:301, 1989)およびTMV由来のコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら,EMBO J.6: 307,1987)を含む。あるいはまた、リブロースビスリン酸カルボキシラーゼの小 サブユニット(ssRUBISCO)由来の光誘導性プロモーター(Coruzziら,EMBO J.,3: 1671,1984;Broglieら,Science 224:838,1984);マンノピン(mannnopine)シン ターゼプロモーター(Veltenら,EMBO J.,3:2723,1984);ノパリンシンターゼ(N OS)およびオクトピンシンターゼ(OCS)プロモーター(アグロバクテリウム・ツメ ファシエンス(Agrobacterium tumefaclens)の腫瘍誘導性プラスミドに担持され ている)、または、例えばダイズhsp17.5-Eまたはhsp17.3-B(Gurleyら,Mol.C ell.Biol.,6:559,1986;Severinら,Plant Mol.Biol.,15:827,1990)等の 熱ショックプロモーター、等の植物プロモーターを用いることができる。 本発明に有用なプロモーターは、構成的および誘導性の天然プロモーターの両 方、ならびに作製されたプロモーターを含む。CaMVプロモーターは構成的プロモ ーターの例である。最も有用であるためには、誘導性プロモーターは1)誘導物 質の不在下では低い発現をもたらし、2)誘導物質の存在下では高い発現をもた らし、3)植物の正常な生理を妨げない誘導機構を用い、そして4)他の遺伝子 の発現に全く影響を及ぼさ ないものでなければならない。植物において有用な誘導性プロモーターの例は、 化学的手段によって誘導されるものを含む。例えば、銅イオンによって活性化さ れる酵母メタロチオネインプロモーター(Mettら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:4567,1993);置換されたベンゼンスルホンアミド(例えば除草剤の毒性緩和剤 )によって活性化されるIn2-1およびIn2-2調節配列(Hersheyら,Plant Mol.Biol .,17:679,1991);およびグルココルチコイドによって誘導されるGRE調節配列(S chenaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10421,1991)などである。当業者に は他の構成的および誘導性プロモーターが公知であろう。 選択される特定のプロモーターは、十分な発現を引き起こして有効量の構造遺 伝子産物の産生をもたらすことが可能でなければならない。本発明の構築物に用 いるプロモーターは、所望であれば、その制御特性を変更するために改変するこ とができる。 環境的に調節されるプロモーター、例えば光および乾燥によって調節されるプ ロモーターを本発明に用いることができる。ホルモン的に調節されるプロモータ ーもまた用いることができる。 組織特異的プロモーターもまた本発明に用いることができる。組織特異的プロ モーターの例は、苗条分裂組織に発現されるプロモーターである(Atanassovaら ,Plant J.,2:291,1992)。果実特異的および種子特異的プロモーター、または cdc2aプロモーターおよびcyc07プロモーターを含む、トランスジェニック植物に おいて有用な他の組織特異的プロモーターが当業者には公知であろう。(例えば 、Itoら,Plant Mol.Biol.,24:863,1994;Martinezら,Proc.Natl.Acad.Sc i.USA 89:7360,1992;Medfordら,Plant Cell 3:359,1991;Teradaら,Plant J ournal,3:241,1993;Wissenbachら,Plant Journal,4:411,1993を参照された い。) 先に述べたように、本発明に使用するプロモーターに機能しうる形で連結され たエンハンサーエレメントはプロモーターの特異性を変更しない。すなわち、本 発明のエンハンサーエレメントはこのエンハンサーエ レメントに連結したプロモーターの固有の特異性に影響を与えない。 場合により、機能しうる形でプロモーターに連結したエンハンサーエレメント および構造遺伝子を含む構築物に選択マーカーを結合することができる。本明細 書に用いる「マーカー」という用語は、該マーカーを含む植物または植物細胞の 選択またはスクリーニングを可能とする特性または表現型をコードする遺伝子を 言う。好ましくはマーカー遺伝子は、適切な抗生物質を用いて非形質転換細胞の 中から形質転換植物細胞を選択することを可能とする抗生物質耐性遺伝子である 。適切な選択マーカーの例は、アデノシンデアミナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクタ ーゼ、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、キ サンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼおよびアミノグリコシド3 '-O-ホスホトランスフェラーゼII(カナマイシン、ネオマイシンおよびG418耐 性)を含む。当業者には他の適切なマーカーが公知であろう。例えば、uidA遺伝 子、GUS、ルシフェラーゼまたはGFP遺伝子等の他のスクリーニング可能なマーカ ーもまた用いることができる。 本発明による植物の形質転換は、植物分子生物学の分野の当業者に公知の種々 の方法のうち本質的に任意のものを用いて実施することができる。(例えば、参 考としてここに組み入れるMethods of Enzymology,Vol.153,198:7,Wuおよび Grossman編,Academic Pressを参照されたい。)本明細書に用いる「形質転換」 という用語は、外因性または内因性の核酸配列の導入によって宿主植物の表現型 を変更することを言う。 本発明に従って形質転換プロセスを開始するためには、まず適切なベクターを 構築し、それを植物細胞に適切に導入する必要がある。ここで用いるベクターの 構築の詳細は、植物遺伝子工学の分野の当業者には公知である。 例えば、Tiプラスミド、根誘導性プラスミド(Ri)および植物ウイルスベ クターを用いて本発明に使用するエンハンサー-プロモーター構築物を植物細胞 中に導入することができる。このような技法の総論については、例えば参考とし てここに組み入れるWeissbachおよびWeissb ach,1988,Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,NY,Secti on VIII,pp.421-463;並びにGriersonおよびCorey,1988,Plant Molecular Bio logy,第2版,Blackie,London,第7-9章、およびHorschら,Science 227:1229 ,1985を参照されたい。 当業者は本発明の核酸配列を比較的完全な状態で導入するための適切なベクタ ーを選択することができるであろう。従って、導入されたDNA配列を担持する 植物をもたらすベクターであればどれでも十分であるに違いない。裸のDNA断 片(naked piece of DNA)でさえも、効率は低いが、本発明の特性を付与すること ができるだろうと予想される。ベクターの選択、またはベクターを用いるべきか どうかは、典型的には選択された形質転換法によって左右される。 例えば、Tiプラスミドを有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスを用 いて異種核酸配列を植物細胞中に導入することができる。形質転換ビヒクルとし てアグロバクテリウム・ツメファシエンス培養物を用いる場合は、形質転換され た組織の正常な、非発癌性分化が可能となるように、ベクター担持体としてアグ ロバクテリウムの非発癌性株を用いることが最も有利である。また、アグロバク テリウムがバイナリー(binary)Tiプラスミド系を有することが好ましい。この ようなバイナリー系は、1)伝達DNA(T-DNA)の植物への導入に必須の ビルレンス(virulence)領域を有する第1のTiプラスミド、および2)キメラ プラスミドからなる。キメラプラスミドは、導入されるべき核酸配列に接してい る、野生型TiプラスミドのT-DNA領域の少なくとも1つのボーダー領域を 有する。バイナリーTiプラスミド系は植物細胞を形質転換するのに効果的であ ることが示された(De Framond,Biotechnology,1:262,1983;Hoekemaら,Natur e,303:179,1983)。このようなバイナリー系は、アグロバクテリウムのTiプ ラスミドへの核酸配列の組み込みを必要としないので好ましい。 アグロバクテリウムを使用する方法は、1)アグロバクテリウムと培養され単離 されたプロトプラストの同時培養;2)アグロバクテリウムを用 いた植物細胞または組織の形質転換;または3)アグロバクテリウムを用いた種子 、頂部または分裂組織の形質転換を含むが、これらだけに限定されない。 さらに、遺伝子導入はBechtoldら(C.R.Acad.Sci.Paris,316:1194,1993) が記述するようにアグロバクテリウムによるin situ形質転換によって達成する ことが可能である。この方法は、アグロバクテリウム菌体懸濁物の真空浸透に基 づいている。 植物細胞に核酸を導入する好ましい方法は、外植片、分裂組織または種子等の 植物細胞を上記のように形質転換アグロバクテリウム・ツメファシエンスに感染 させることである。当分野で公知の適切な条件下で、形質転換植物細胞を増殖さ せ、苗条および根を形成させ、さらに植物体を発生させる。 または、機械的または化学的手段を用いて、本明細書に記述するエンハンサー 構築物を植物細胞と接触させることによって細胞中に導入することができる。例 えば、マイクロピペットを用いた直接マイクロインジェクションによって核酸を 機械的に植物細胞中に導入することができる。さらに、植物細胞に取り込まれる 遺伝子物質と沈降複合体を形成するポリエチレングリコールを用いて、核酸を植 物細胞中に導入することができる。 核酸はエレクトロポレーションによっても植物細胞中に導入することができる (Frommら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5824,1985。これは参考としてここ に組み入れている)。この技法では、関連する核酸配列を含むベクターまたは核 酸の存在下で植物プロトプラストを電気穿孔する。高い電界強度の電気的衝撃は 植物の膜を可逆的に透過性とし、核酸の導入を可能とする。電気穿孔された植物 プロトプラストは細胞壁を再形成し、分裂し、そして植物カルスを形成する。導 入した遺伝子を有する形質転換植物細胞の選択は、本明細書に記述する表現型マ ーカーを用いて実施することができる。 核酸を植物細胞中に導入する別の方法は、導入すべき核酸を小ビーズ または粒子のマトリックス内に、またはそれらの表面に有する小さい粒子を用い た高速衝撃による打ち込みである(Kleinら,Nature,327:70,1987)。典型的に は新しい核酸配列の1回のみの導入が必要とされるが、この方法は特に多重導入 を提供する。 カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)もまた異種核酸を植物細胞中に導入す るためのベクターとして使用できる(米国特許第4,407,956号)。CaMVのウイル スDNAゲノムを親細菌プラスミドに挿入し、細菌中で増殖させることができる 組換えDNA分子を作製する。クローン化した後、組換えプラスミドを再度クロ ーン化し、所望の核酸配列の導入によってさらに改変することができる。次に、 組換えプラスミドの改変されたウイルス性部分を親細菌プラスミドから切り出し 、これを植物細胞または植物に接種する。 以下の実施例においては、タバコ植物体を大体においてRogersら(Methods Enz ymol.118:627,1986)の方法によって形質転換する。すなわち、表面を滅菌した タバコの葉からタバコリーフディスクを採取し、ムラシゲ-スクーグ(Murashige- Skoog)(MS)培地で培養し、傷ついた表面における部分的細胞形成を促進する。次 に、エンハンサー、プロモーターおよび目的の遺伝子の所望の組合せを有するプ ラスミドを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス菌体の培養物中にリーフ ディスクを浸漬する。次に、これらのディスクを、形質転換細胞のみが増殖して カルスを形成するカナマイシン含有MS培地で培養する。次に、苗条が成長し、そ して発根培地で成長させることによってカルスから小植物体が再生される。パリンドロームエレメント結合因子(PABF) 本発明はまた、還元SDS-PAGEによる測定で約67kDaの分子量を有し、(AATT)n( 配列中、nは2以上(前記で詳細に説明したとおり))反復エレメントに結合し、 N末端からC末端方向にH1ヒストン様ドメイン、グルタミンに富むドメインおよび HMG I/Y様ドメインを有することにより特徴づけられる実質的に純粋なパリンド ロームエレメント結合因子(PABF)を提供する。 本発明で用いる「実質的に純粋」なる用語は、PABFが、天然では結合している 他のタンパク質、脂質、炭水化物または他の物質を実質的に含まないことを意味 する。当業者であれば、タンパク質の精製ための標準的な技術を用いてPABFを精 製することが可能である。実質的に純粋なポリペプチドは、非還元または還元ポ リアクリルアミドゲル上で単一の主要バンドを与える。また、PABFポリペプチド の純度は、アミノ末端アミノ酸の配列分析により判定することができる。PABFポ リペプチドは、PABFの活性が完全に維持されている限りポリペプチドの機能的断 片を含む(すなわち、該断片は転写因子として機能し、(AATT)n反復エレメント に対する結合能を保有している)。そのようなポリペプチドには、抗体産生を誘 導しうる免疫学的に反応性のペプチドが含まれる。本発明の好ましいPABFは、植 物細胞に由来するものである。 本発明は、PABFポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供 する。これらのポリヌクレオチドは、PABFをコードするDNA、cDNAおよび RNA配列を含む。PABF活性を有するポリペプチドをコードする限り(すなわち 、コードされるペプチドが、転写因子として作用し、(AATT)n反復エレメントに 対する結合能を保有する限り)、PABFの全部または一部をコードするすべてのポ リヌクレオチドが本発明に含まれると理解される。そのようなポリヌクレオチド には、天然に存在するポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチドおよび意図的に 操作されたポリヌクレオチドが含まれる。例えば、PABFポリヌクレオチドを、部 位特異的突然変異誘発に付すことができる。また、PABFのポリヌクレオチド配列 には、アンチセンス配列も含まれる。本発明のポリヌクレオチドには、遺伝暗号 の結果として縮重している配列が含まれる。20個の天然アミノ酸が存在し、それ らのほとんどは2個以上のコドンにより特定される。したがって、すべての縮重 ヌクレオチド配列が、本発明に含まれる。 特に本発明で開示するのは、タバコPABFをコードするDNA配列である。該配 列は、約546アミノ酸長のポリペプチドをコードするオープン リーディングフレームを含有する。好ましくは、本発明の植物PABFヌクレオチド 配列は、配列番号2に記載の配列であり、該アミノ酸配列は、好ましくは、配列 番号3(図5)である。 PABFをコードするポリヌクレオチドは、配列番号2、および配列番号2に相補的 な核酸配列(図5)を含む。相補的配列には、アンチセンス核酸を含めることが 可能である。該配列がRNAである場合には、配列番号2のデオキシヌクレオチ ドA、G、CおよびTを、それぞれ、リボヌクレオチドA、G、CおよびUで置換する。 また、本発明には、配列番号3のタンパク質をコードするDNAに生理的条件下 で選択的にハイブリダイズが可能となるのに十分な長さである少なくとも15塩基 長の前記核酸配列の断片が含まれる。特に、「選択的にハイブリダイズ(する) 」なる用語は、ある断片が、PABFタンパク質をコードするDNAに中等度〜高度 にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることを意味する(Sambrook, FritschおよびManiatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版)を 参照されたい)。 後記実施例に記載のPABF核酸配列は、最初のATGが翻訳開始部位として使用さ れると仮定すると546アミノ酸の1個の長いオープンリーディングフレームを含有 する。これは、67kDaの見掛け算出相対分子量(Mr)を有するタンパク質を生じ る。SDSポリアクリルアミドゲル上で分画されたタバコ核抽出物を用いたサザン ウエスタンブロット分析から、PABFポリペプチドが(AATT)nエンハンサーエレメ ントに結合することが確認された(実施例3)。 疎水性予測分析(KyteおよびDoolittle,J.Mol.Bio.,157:105,1982)は、 PABFが高度に疎水性であることを示しており、PABFが3個の異なるドメインを含 有することを示唆している。N末端のアミノ酸38〜127は、ヌクレオソーム間のリ ンカーDNAに結合して高次構造の形成を引き起こす塩基性染色体タンパク質で あるヒストンH1の中央球状ドメインに高度の相同性を示す。アミノ酸153〜231の PABFの中央部分は、グルタミンに富むドメインよりなる。78個のアミノ酸のうち の39個 (50%)がグルタミン残基であり、これらは均一に分布していた。C末端ドメイ ンのアミノ酸274〜484は、哺乳動物HMG I/Yタンパク質に対して高度の類似性を 示した。HMG I/Yタンパク質は、ATに富む配列に優先的に結合する小さな塩基性 非ヒストン染色体タンパク質である(Bustinら,前掲)。結合は、HMG I/Y遺伝 子内で3回反復している11アミノ酸のペプチドであるATフックモチーフにより媒 介される。PABF内には、6個のATフックモチーフが存在する。さらに、7アミノ酸 で分離された第7ATフックモチーフの1個のN末端および1個のC末端半分が見出さ れる。PABFドメインの、最初に単離されたC末端部分は、3個のATフックモチーフ を含有し、このことは、このモチーフがPABFのDNA結合活性を与えること強く 示唆している。 PABFの一次アミノ酸配列の小さな修飾は、本明細書に記載のPABFポリペプチド と実質的に同等の活性を有するタンパク質を与えうる。そのようなタンパク質は 、「配列番号3のアミノ酸を実質的に有する」なる用語で定義されるタンパク質 を含む。そのような修飾は、部位特異的突然変異誘発による意図的なものであっ ても、あるいは自発的なものであってもよい。これらの修飾により産生されるポ リペプチドのすべては、PABFの生物活性を保有している限り、本発明に含まれる 。さらに、1以上のアミノ酸の欠失は、得られる分子の構造を、その生物活性を 有意に改変することなく修飾しうる。これは、潜在的により広範な用途を有する 、より小さな活性分子の開発につながりうる。例えば、PABFの生物活性に要求さ れないアミノまたはカルボキシ末端アミノ酸を除去することが可能である。 本発明のPABFポリペプチドは、開示されている配列(配列番号3、図5)、およ びその保存変異体を含む。本発明で用いる「保存的変異」なる用語は、あるアミ ノ酸残基が、別の生物学的に類似した残基で置換されることを意味する。保存的 変異には、例えば、疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまた はメチオニン)同士の置換、あるいは極性残基同士の置換(例えば、リシンから アルギニンへの置換、ア スパラギン酸からグルタミン酸への置換またはアスパラギンからグルタミンへの 置換など)が含まれる。「保存的変異」なる用語はまた、非置換の親アミノ酸の 代わりに、置換されたアミノ酸を使用することを含む(ただし、これは、該置換 ポリペプチドに対して産生される抗体が、該非置換ポリペプチドとも免疫反応性 である場合に限られる)。 本発明の核酸配列は、いくつかの方法により得ることができる。例えば、該D NAを、当該技術分野でよく知られているハイブリダイゼーション技術を用いて 単離することができる。これらには、1)相同ヌクレオチド配列を検出するため の、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーとプローブとのハイブリダ イゼーション、2)対象となるDNA配列に対してアニーリングしうるプライマ ーを使用する、ゲノムDNAまたはcDNA上でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR )、および3)共通の構造的特徴を有するクローン化DNA断片を検出するため の、発現ライブラリーの抗体スクリーニングが含まれるが、それらに限定される ものではない。 好ましくは、本発明のPABFポリヌクレオチドは、植物に由来する。核酸ハイブ リダイゼーションに基づくスクリーニング法を用いると、適当なプローブが入手 可能である限り、任意の生物に由来する任意の遺伝子配列の単離が可能となる。 対象となるタンパク質をコードする配列の一部に対応するオリゴヌクレオチドプ ローブは、化学的に合成することが可能である。このためには、アミノ酸配列の 、短いオリゴペプチド伸長が既知であることが必要である。該タンパク質をコー ドするDNA配列は、遺伝暗号から推定することができるが、遺伝暗号の縮重を 考慮しなければならない。該配列が縮重している場合には、混合付加反応を行な うことが可能である。これは、変性二本鎖DNAの不均一混合物を含む。そのよ うなスクリーニングのためには、ハイブリダイゼーションを、好ましくは、一本 鎖DNA上または変性二本鎖DNA上で行なう。対象となるポリペブチドに関す るmRNA配列の存在量が極端に少ない起源に由来するcDNAクローンの検出 においては、ハイブリダイゼーション が特に有用である。すなわち、非特異的結合を避けるように定められたストリン ジェントなハイブリダイゼーション条件を用いることにより、例えば、ある特異 的cDNAクローンを、該標的DNAとその完全な相補体である該混合物中の単 一プローブとのハイブリダイゼーションによりオートラジオグラフィーで可視化 することが可能になる(Wallaceら,Nucl.Acid Res.,9-879,1981;Maniatisら ,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.1989) 。 また、PABFをコードする特異的DNA配列の生成は、1)ゲノムDNAからの 二本鎖DNA配列の単離、2)対象となるポリペプチドの必要なコドンを得るた めの、DNA配列の化学的製造、3)真核供与細胞から単離されたmRNAの逆 転写による二本鎖DNA配列のin vitro合成、および対象となるDNA配列とア ニーリングしうるプライマーを使用するゲノムDNAまたはcDNAのPCRによ り達成することができる。最後者の場合には、最終的には、cDNAと一般に称 される、mRNAの二本鎖DNA相補体が形成される。 DNA配列の合成は、しばしば、所望のポリペプチド産物のアミノ酸残基の全 配列がわかっている場合にうってつけの方法である。対象となるcDNA配列を 単離するための標準的な方法としては、高い遺伝子発現レベルを有する供与細胞 内に豊富に存在するmRNAの逆転写に由来する、プラスミドまたはファージを 保持するcDNAライブラリーの形成がある。ポリメラーゼ連鎖反応技術と組合 せて使用する場合には、希有発現産物でさえもクローニングすることが可能であ る。該ポリペプチドのアミノ酸配列の有意部分がわかっている場合には、標的c DNA内に存在すると推定される配列を複製する標識された一本または二本鎖の DNAまたはRNAプローブ配列の生成を、一本鎖形態に変性しているcDNA のクローン化コピー上で行なうDNA/DNAハイブリダイゼーション法におい て利用することができる(Jayら,Nucl.Acid Res.,11:2325,1983)。 PABFに特異的な抗体を使用して、少なくとも1つのエピトープを有す るPABFペプチドに関してラムダgt11などのcDNA発現ライブラリーを間接的に スクリーニングすることができる。そのような抗体はポリクローナル的またはモ ノクローナル的のいずれで誘導することも可能であり、PABF cDNAの存在の 指標となる発現産物を検出するために使用することができる。 PABFをコードするDNA配列は、適当な宿主細胞内へのDNA導入によりin v itroで発現させることができる。「宿主細胞」とは、ベクターの増殖とそのDN Aの発現が行われる細胞である。この用語は、対象宿主細胞の任意の後代(子孫 )も含む。複製中に突然変異が生じる可能性があるため、すべての後代がそれら の親細胞と同一であるわけではないと理解される。しかしながら、「宿主細胞」 なる用語を使用する場合には、そのような後代を含めることとする。安定な導入 (これは、外来DNAが宿主内で連続的に維持されることを意味する)の方法は 、当該技術分野で公知である。 再生された植物(例えば、花、種子、葉、枝、果実など)から得られる部分は 、これらの部分が、本発明に従い形質転換されている細胞を含む限り、特許請求 する発明の範囲内に含まれる。これらの部分が本発明の導入核酸配列を含む限り 、再生された植物の後代および変異体および突然変異体もまた、本発明の範囲内 に含まれる。 本発明においては、PABFポリヌクレオチド配列を組換え発現ベクター内に挿入 することができる。「組換え発現ベクター」なる用語は、PABF遺伝子配列の挿入 または組込みにより操作されている当該技術分野で公知のプラスミド、ウイルス または他の担体を意味する。そのような発現ベクターは、宿主の挿入遺伝子配列 の効率的な転写を促進するプロモーター配列を含有する。発現ベクターは、典型 的には、複製起点、プロモーター、および形質転換細胞の表現型選択を可能にす る特異的遺伝子を含有する。 PABFをコードするポリヌクレオチド配列は、植物、原核生物または真核生物内 で発現させることができる。宿主には、微生物、酵母、昆虫お よび哺乳動物に加えて、植物細胞を含めることができる。真核またはウイルス配 列を有するDNA配列を原核生物内で発現させる方法は、当該技術分野でよく知 られている。宿主内での発現および複製の能力を有する生物学的に機能するウイ ルスおよびプラスミドDNAベクターが、当該技術分野で公知である。そのよう なベクターを使用して、本発明のDNA配列を組み込ませる。 組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者によく知られている慣用の 方法で行なうことができる。 本発明により提供される組換え的に発現されたポリペプチドまたはその断片の 単離および精製は、分取クロマトグラフィー、モノクローナルまたはポリクロー ナル抗体を用いる免疫学的分離などの慣用の手段により行なうことができる。 また、本発明のPABFポリペプチドを使用して、PABFポリペプチドのエピトープ に対して免疫反応性であるか又は結合する抗体を製造することができる。種々の エピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体から実質的になる抗 体、および種々のモノクローナル抗体調製物が提供される。モノクローナル抗体 は、該タンパク質の断片を含有する抗原から、当該技術分野でよく知られている 方法により製造する(Kohlerら,Nature,256:495,1975;Current Protocols i n Molecular Biology,Ausubelら編,1989)。 本発明で用いる「抗体」なる用語は、無傷の分子に加えて、エピトープ決定基 に結合しうるその断片(例えば、Fab、F(ab')2およびFv)を含む。これらの抗体 断片は、その抗原または受容体に選択的に結合する何らかの能力を保有しており 、以下のとおりに定義される。 (1)Fab:抗体分子の一価の抗原結合性断片を含有する該断片は、全抗体を酵 素パパインで消化して無傷の軽鎖と1本の重鎖の一部とを得ることにより製造す ることができる; (2)Fab'2:抗体分子の該断片は、全抗体をペプシンで処理した後に還元して 無傷の軽鎖と重鎖の一部とを産生させることにより得ることが でき、抗体1分子当たり2個のFab'断片が得られる; (3)F(ab')2:これは、全抗体を酵素ペプシンで消化することにより(その後 の還元は行なわない)得ることができる抗体断片であり、2個のジスルフィド結 合で連結された2個のFab'断片の二量体である; (4)Fv:これは、2本の鎖として発現された軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを 含有する遺伝的に操作された断片と定義される; (5)一本鎖抗体(「SCA」):これは、遺伝的に融合された一本鎖分子として 適当なポリペプチドリンカーで連結された軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含有 する遺伝的に操作された分子と定義される。 これらの断片の製造法は、当該技術分野で公知である(例えば、Harlowおよび Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1988)を参照されたい;これを参考として本明細書に組み入れる。)。 本発明のPABFポリペプチドに結合する抗体は、無傷ポリペプチド、または対象 となる小さなペプチドを含有する断片のいずれかを免疫化抗原として使用して製 造することができる。例えば、PABFのN末端またはC末端ドメインに特異的に結合 する抗体を製造するのが望ましいかもしれない。免疫化に使用するポリペプチド またはペプチドは、翻訳されたcDNAまたは化学合成に由来するものであって もよく、所望により担体タンパク質に結合させることができる。該ペプチドに化 学的に結合させる一般的に使用されるそのような担体には、キーホールリンペッ トヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)および破 傷風トキソイドが含まれる。ついで該結合ペプチドを使用して、動物(例えば、 マウス、ラットまたはウサギ)を免疫する。 また、エピトープを模擬するモノクローナル抗体を産生させるために、抗イデ ィオタイプ技術を用いることも可能である。 本明細書に記載されている遺伝子発現の増強方法は、発現させる遺伝子に機能 しうる形で連結している異種プロモーターと(AATT)n反復エレメントとを機能し うる形で連結し、場合により、遺伝子発現をさらに増 強するために該反復エレメントをPABFポリペプチドと接触させることを含む。前 記のとおり、PABFは、(AATT)n反復エレメントに結合し(後記の実施例に示すと おり)、さらに(AATT)nエンハンサーエレメントの活性を「増強」するDNA結 合性タンパク質である。さらに増強するために、(AATT)n反復エレメントと機能 しうる形で連結されたプロモーター領域とPABFコードポリヌクレオチドとを機能 しうる形で連結することが望ましいであろう。ある特定の理論に拘束されるもの ではないが、プロモーターと本発明の(AATT)n反復エレメントとの両方に機能し うる形で連結したPABFの発現の増強により正のフィードバックループが形成され 、それによりPABFは、(AATT)n反復エレメントに結合しそれ自体の発現の連続的 な増強を刺激することにより、それ自体の発現を誘導すると考えられる。 前記の開示は、本発明の一般的な記載である。以下の特定の実施例を参考にす ることにより、より完全な理解が得られるが、記載されているこれらの実施例は 例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。 実施例 以下の実施例では、非特異的エンハンサーとして機能するPAL2プロモーターの 上流領域内の(AATT)反復PAシス-エレメントの同定について記載する。このモチ ーフが異種プロモーターに機能しうる形で連結している場合に、特異的転写パタ ーンの一般的な増強が認められた。そのC末端ドメイン内に存在するATフックD NA結合モジュールを介してこのエレメントに結合する新規因子をクローニング した。この因子は、非特異的エンハンサーとしてのコグネイト・シス-エレメン トの活性と符合する機能特性を有する集合体である新規な三部分(tripartite) ドメイン構造を有する。実施例1 材料および方法 プラスミドの構築および植物の形質転換 PAL2プロモーター(Cramerら,Plant Mol.Blol.,12:367,1989)の153bpのR saI断片を、−326および−72 CHS15プロモーター/GUS遺伝子融合体の上流のフ ィルインされたHindIII部位内にクローニングした(Stermerら,Mol.Plant-Mic rob.Int.,3:381,1990)。同様に、(AATT)3オリゴヌクレオチドを合成し、キ ナーゼで処理し、連結し、フィルイン反応後にpGEM7のSmaI部位内にクローニン グした。1つのプラスミド(pPAs)は、合成パリンドローム(PA)エレメントに 関してPAsと称される配列(AATT)13の挿入断片を含有していた。この断片を使用 して、−326および−72 CHS15プロモーター/GUS遺伝子融合体の上流にPAsモチ ーフをサブクローニングした。トランスジェニックタバコ植物を、アグロバクテ リウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)LB4404を使用する葉 ディスク形質転換により作製し(Rogersら,Methods Enzymol.,118:627,1986 )、200μg/mlカナマイシンを含有するMS培地(MurashigeおよびSkoog,Physio l.Plant,15:473,1962)上、25℃にて明期16時間/暗期8時間のサイクルで成 長させた。 蛍光GUSアッセイ 対応するグルクロニドからの4-メチルウンベリフェロン(MU)の生成をFluoro /Colorimeter(American Instrument Company)で測定することにより(Jeffers onら,EMBO J.,6:3901,1987)、組織抽出物中のGUS活性を測定した。タンパク 質濃度を、Bradford(Bradford,M.M.,Anal.Biochem.,72:248,1976)に従い 測定した。 一般的な分子生物学的技術 タバコDNAを葉から単離し(MurrayおよびThompson,Nucl.Acids Res.,8: 4321,1980)、全RNAを各種のタバコ組織から調製した(Chirgwinら,Bioche mistry,18:5294,1979)。サザンおよびノーザンブロットのために、核酸をNyt ranメンブレン(SchleicherおよびおよびGilbert,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:1991,1984)、メンブレンを 2×SSC、1%SDS中、室温で2回、0.2×SSC、1%SDS中、60℃で1回、そしてより 低ストリンジェンシーなハイブリダイゼーションのために1×SSC、1%SDS中、60 ℃で洗浄した。λ900 cDNA断片のランダムプライミング(FeinbergおよびVo gelstein,Anal.Biochem.,132:6,1983)により、プローブを調製した。Milli pore(Bedford,MA)DNA合成装置で、オリゴヌクレオチドを合成した。 プローブとして使用した種々のオリゴヌクレオチドの配列(5'-3')を以下に示 す: 一連のネステイドデレーション(段階的欠失)を生成させた後、PABFをコード するcDNAを両方の鎖上で配列決定した(Sangerら,Proc.Natl.Acad.Sci .USA,74:54563,1977)。Wisconsin大学遺伝子コンピューターグループの配列 決定用ソフトウエアパッケージング(Devereuxら,Nucl.Acids Res.,12:387, 1984)を用いて配列データを分析し、Blastネットワーク・サービス(Altshulら ,J.Mol.Biol.,215:403,1990)で相同性検索を行なった。 電気泳動移動度シフト分析(EMSA) 結合反応を、2×104cpmの32P標識プローブ、培養したマメ細胞(品種Canadian Wonder)およびタバコの茎のそれぞれの核抽出物(Staigerら,Proc.Natl.Ac ad Sci.USA,86:6939,1989)20μg、60μgのポリ[dI-dC]を結合緩衝液(2 0mM Hepes,pH7.9/20%グリセロール/0.2MKCl/0.4mM EDTA/0.5mM PMSF/2mM MgCl2 /1mM DTT)中に含有する20ml中で行なった(Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons,NY,1992)。PAモチーフ(AATTAATTAATCAATTAATTAATTAATTG ATTGATT)(配列番号1)を有する相補的オリゴヌクレオチドをキナーゼで処理 し、アニーリングし、連結して、コンカテマー化PAエレメントを得た(Vinsonら ,Genes Dev.,2:801,1988)。ゲル精製した五量体をプローブとして使用した 。クレノウポリメラーゼを用いたフィルイン反応により、制限断片を標識した。 DNアーゼIフットプリント分析 Ausubelら(Ausubelら,前掲)に従い、DNアーゼIフットプリンティングを行 なった。簡単に説明すると、pGEM7中にサブクローニングした153bpのRsal PAL2 プロモーター断片(−410〜−255)の非コード鎖を、該ベクターのマルチクロー ニング部位内に存在するBamHI部位の陥凹3'末端のフィルインにより標識した。D NアーゼI(0.25u/mlおよび1u/ml)による25℃で1分間の消化の前に、該標識化断 片を10μgのマメ核抽出物と共に50mlの反応中、それぞれ0℃で10分間および25 ℃で20分間インキュベートした。化学分解法(Maxamら,Methods Enzymol,65:4 99,1980)による配列決定のために、該標識化断片のアリコートを使用した。 サウスウエスタン分析−タバコ茎RNAから調製したλgt11ライブラリを、二 重鎖PAオリゴヌクレオチドをコンカテマー化することによって作製したPAエレメ ントの多重コピーを含有するプローブでスクリーニングした。組換えファージの 増殖およびイソプロピルβ−チオガラクトシド誘導後、タンパク質をニトロセル ロース膜上に移した(Schleicher (Vinsonら、上記;Singhら、Bio Techniques,7:252,1989)。5%脱脂乾燥ミル クを補充した結合緩衝液(BB,20 mM Hepes,pH 7.9/3 mM MgCl2/40mM KCl/1m M DTT)中で30分、膜をブロッキングした後、0.25%ミルク、106cpm/mlプローブ および5μg/ml変性鮭精子DNAを含むBB中、室温で3時間、フィルターをハ イブリダイズした。オートラジオグラフィーの前に、フィルターをBBで10分間、 3回洗浄した。 大腸菌Y1089中でPABF組換え溶原菌を産生させた。溶原性抽出物(Sambrookら 、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Lab.Press,第2版)を 10%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロースに移した。再生 および5%ミルクを含むBBでの4℃で9時間のブロッキング後、膜を細片に切り分 け、各種のプローブと4℃で10時間ハイブリダイズさせた。コンカテマー化オリ ゴヌクレオチドプローブをさらなるゲル精製せずに使用した。PCR断片を標識す るために、非標識dCTPに代えてα-35S dCTPを使用した。 実施例2 普遍的エンハンサーとしてのPAエレメントートランスジェニックタバコ中のPA L2プロモーターの5'欠失の分析によって、主要な量的エレメントは転写開始部位 に対して-480および-289位置の間に存在することが明らかになった(Leyvaら、P lant Cell,4:263,1992)。図1、パネルBはプロモーターGUS融合構築物を示し ている(定比率で描いてはいない)。PAL2プロモーターの153bp RsaI断片または (AATT)13配列を有するPAsを-326CHS15/GUS遺伝子融合物(それぞれ-326Rsaおよ び-326PAs構築物)または-72CHS15/GUS遺伝子融合物(それぞれ-72Rsaおよび-72 PAs構築物)の前端にクローン化した。CHS15プロモーターを斜線部分で表す。PA L2プロモーター内のRsaI断片の位置(PAL2、ドット部分)およびPAL2ΔPA構築物 内のPA欠失位置(破線)を示す。矢印はリポーター遺伝子の転写開始部位を示す 。 この領域内に2つの注目すべき配列モチーフが存在する:ジヌクレオチドATの 19タンデム反復(AT−エレメント:-467〜-429)および配列AATTの不完全10回反 復であるパリンドロームエレメント(PA:-340〜-300)。PAシスエレメント(-3 40〜-300)の機能を、豆カルコンシンターゼCHS15プロモーターの上流にこの配 列を置いた場合の影響の分析、および全長豆PAL2プロモーターからこのエレメン トを欠失させることによって評価した。豆PAL2プロモーターの-410〜-255の153b p RsaI断片、または完全(AATT)13配列で構成される合成PAエレメント(PAs)の 両方 を-326CHS15/GUSおよび-72CHS15/GUSプロモーター遺伝子融合物の上流に挿入し た(図1、パネルB)。転写開始部位に対して-326まで5'側を欠失したCHS15プ ロモーターは花弁の着色表皮細胞中で発現するが、花弁の非着色領域または導管 組織中では発現しない。CHS15プロモーターをさらに-72まで5'側を欠失さると、 CHSの発現のために必須のG-ボックス9(-74〜-68)の破壊によって、トランスジェ ニックタバコおよび懸濁培養した大豆細胞(Dronら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,8 5:6738,1988)中でのGUSの発現が阻害される。 図1、パネルBに要約したCHS15/GUSおよびPAL2/GUS遺伝子融合構築物で形質 転換したT2植物からの花弁の着色部分におけるGUS活性を測定した。それぞれ5種 の独立した-326トランスジェニック系および7種の独立した-326 PAs系の複製植 物を抽出性GUS活性についてアッセイした。図1Aは図1、パネルBに図示する 構築物を含有する独立した形質転換物からの成熟着色花冠(花弁)組織(パネル a〜d)、非着色花冠組織(パネルf)および第5節間の上の葉柄(パネルe) の抽出物中のGUS活性(各トランスジェニック系について2つの植物の平均)に 関する棒グラフを示す。影をつけた部分は独立したトランスジェニック系中で測 定したGUS活性の平均値を表す。パネルaの文字およびパネルdの数字はパネル eおよびfのGUSデータを導いたトランスジェニック系を示す。 -326植物の着色花弁組織中のGUS活性はおよそ100pmol 4-メチルウンベルリフ ェロンmgタンパク質/minである。-326PAs植物中にPAsエレメントを存在させる と、着色組織中で抽出性GUS活性が特異的に10倍に増大した。-326 Rsa構築物で 形質転換した5種の独立したトランスジェニック系は-326植物に比較して、着色 組織中でGUS活性が8倍に増大することが示された。(図1A、パネルb)。野 性型-326CHS15プロモーターが活性でないその他の組織中では増大したGUS活性は 見られなかった。花弁の非着色部分および葉柄中では、両構築物(-326PAs, -326Rsa)についてGUS活性はバックグラウンド値を超えず(図1A、パネルeお よびf)、観察された効果が厳密に量的なものであることが示唆された。 -72最小CHS15プロモーター構築物での結果は異なっていた。7つの独立した-7 2Rsa系の分析の結果、花弁中ではGUS活性を示さなくなったこのプロモーターが1 53bp RsaI断片の導入によってなお活性化することができることが明らかになっ た(図1A、パネルc)。しかし、PAsエレメントのみ(9独立系)では-72まで 欠失したCHS15プロモーターの上流に置かれたとき、GUSの発現を刺激することは できなかった(図1A、パネルcの-72PAs参照)。これによって、PAsエレメン トは非特異的エンハンサー活性を有しているが、これ自身ではプロモーターを活 性化することができないことが示された。153bp RsaI PAL2断片は(AATT)n エ レメントの他に特異的シスエレメントを含有することが推定され、PAL2プロモー ターに関する以前の分析(Leyvaら、上記)と一致している。 PAエレメントに関するエンハンサー機能もまた、このエレメントをPAL2プロモ ーターから特異的に欠失させた実験(PAL2ΔPA)によって示された。こうして、 PAL2ΔPA/GUS遺伝子融合物を含有するトランスジェニック植物の花弁および葉柄 中のGUS活性は、野性型PAL2プロモーターの制御下にあるGUSとの遺伝子融合物を 含有する同等の植物よりも実質的に低かった(図1A、パネルdおよびe)。 核抽出物はPAエレメントに対する熱安定性DNA結合活性を含有する−PAL2プ ロモーターの-480〜-289領域に結合する核因子を電気泳動移動度分析(EMSA)に よって同定した。図2、パネルAは、標識RsaI断片を添加する前に、指示温度で 10分間インキュベートした豆の粗核抽出物(NE)(タンパク質20mg)での電気泳 動移動度分析(EMSA)を示す。結合反応を0℃または25℃のいずれかで30分間実 施した。 室温でEMSA結合反応を実施したとき、2つの複合体、C1およびC2が観察された 。主要な複合体、C2はプローブの約90%と結合する。ATに富む 配列と優先的に結合する小さい染色体タンパク質の1クラス(Bustinら、Bioche m.Biophys.Acta,1049:231,1990)である、高移動度グループのタンパク質(H MG)がこれらの複合体に関与するかどうかを試験するため、この結合因子の熱安 定性を試験した。両複合体は熱安定性であった。70℃で10分のインキュベート後 、C2における当初の結合活性の約40%が残存したが、80℃でのインキュベート後 は消失した。対照的に、複合体C1は80℃まで安定で、高温での方が優先的に形成 された。 トランスジェニックタバコ中での豆PAL2プロモーターの発現パターンは豆中の ものに非常に類似しており、調節機構の保存を示唆している(Liangら、Proc.Na tl.Acad.Sci.USA,86:9284,1986b)。タバコ抽出物中に同様のDNA結合活性が 存在するかどうかを試験するため、プローブとしてPA結合部位を使用してEMSAを 実施した。タバコ茎から調製した核抽出物中に同様の熱安定性DNA結合活性( C2、図2b)が検出された。80℃で10分間のインキュベート後、結合のごくわず かの減少が観察された。その上、タバコ抽出物の熱処理の後、さらに小さい複合 体(C1)が出現した。 図2、パネルBは、タバコ茎から調製し、プローブとしてコンカテマー化した PAオリゴヌクレオチドの5量体を使用する結合反応の前に、80℃で10分インキュ ベートした核抽出物(20mg)の電気泳動移動度シフト分析(EMSA)を示す。高イ オン強度のTris−グリシン緩衝液を使用する4%非変性ポリアクリルアミドゲル 上での電気泳動(10V/cm)によって、非結合DNAからタンパク質−DNA複合 体を分離した。P:遊離プローブ、C1およびC2:複合体。 この領域の大部分をカバーする153bp RsaI制限断片(-410〜-255)についての 特異性を示す、豆核抽出物中に存在するDNA結合活性を同定した(図2A)。 豆核抽出物の存在下(+)または不在下(−)で末端標識したRsaI断片をイン キュベートし、続いてそれぞれDNアーゼI 0.25および1単位/mlで消化した。 消化生成物を、同一のDNA断片のMaxam-Gilbert A及びGシークエンシング反応物(レーンA/G)とともに6%変性ポリアクリルアミ ドゲル上で分析した。図の右側にDNアーゼI消化から保護された領域を示し、対 応する配列を記載する。数字はPAL2プロモーターの転写開始部位aに対するヌク レオチドの位置を示す。153bp RsaI断片に結合するトランス因子のDNアーゼIフ ットプリント分析の結果、(AATT)反復PAエレメントに正確にマッピングする単一 の保護部位(-343〜300)が明らかになった(図3)。 実施例3 PA特異的DNA結合タンパク質をコードするタバコcDNA−PAエレメントと 相互作用するタンパク質を同定するため、タバコ(Nicotianatabacum)茎RNA から調製したλgt11発現ライブラリを、PAプローブを使用して、DNA結合タン パク質についてスクリーニングした。1×106プラークのスクリーニング後、PA プローブに結合したDNA結合タンパク質(PAPF)を発現する単一の組換えファー ジ(λ900)を単離した。 PABFの結合がPAプローブに対して特異的であるか、または普遍的なDNA結合 活性を有するのかを決定するため、DNA−タンパク質フィルター結合アッセイ を実施した。IPTGでの誘導後、λ900プラークからのタンパク質をニトロセルロ ースに移し、これを9個に切断して、別種のプローブとハイブリダイズさせた。 スクリーニングに使用したPAはPABFに強く結合した。トランスジェニック植物の 機能研究のために使用したPAsの結合はPAの結合と識別できなかった。ATの19回 反復からなるATに富む領域(AT)は、PAL2の-480〜-289領域内のPAエレメントの 上流に存在する。PAに類似しているにもかかわらず、ATプローブとの結合は観察 されなかった。その外に、PFと命名した10AT塩基対(AATTTAATTT)の妨害されてい ないストレッチがPAL2プロモーターのATとPAモチーフとの間に位置しているが、 このエレメントも同様にPABFに結合しなかった。その上に、特にAT塩基対に富ん ではいないプローブを試験した:PAL2プロモーターのACに富むエレメントおよび 各種の変異体(mAC-1,-2,-3)、G-ボックス(Giulianoら、Proc.Natl.Acad .Sci.USA, 85:7089,1988)ならびにH-ボックス(Loakeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,8 9:9230,1992)モチーフ。これらのモチーフはいずれもPABFに結合しなかった。 図4は、マルチマー化PAプローブでプローブしたλ900に対して溶原性の培養 物からのタンパク質抽出物のサウスウエスタンブロット分析を示す。図4、パネ ルAはSDS-PAGE上で分離し、ニトロセルロース上にブロットし、そして再生した 溶原性ファージのタンパク質抽出物である。膜を6枚に切断し、指示したプロー ブとハイブリダイズさせた。M:kDaで示す実際の分子量を有するマーカータンパ ク質の位置;PAn:コンカテマー化PAプローブ;PA:モノマーPAプローブ;1〜4 :PAL2プロモーターの各種領域を表すPCR-断片。図4BはPAL2プロモーター内の PCR断片1〜4の相対位置を示す。篩部エレメント、AT-,PF-,およびPA-モチーフ の位置を指示している。数字は転写開始部位に対する位置を表す。矢印は130kDa のファージにコードされた融合タンパク質を表す。 マルチマー化PAプローブ(PAn)でプローブしたλ900に対して溶原性の培養物 からのタンパク質抽出物のサウスウエスタンブロット分析で、約130kDaの融合タ ンパク質が検出された(図4、パネルA)。PAnへの結合に比較して、モノマー PAエレメントは弱く結合するのみで、大部分のプローブは約33kDaの細菌タンパ ク質に結合した(図4、パネルA、レーンPA)。しかし、PAL2プロモーターとの 関係では、PABFは単一のPAエレメントを認識する。このため、完全プロモーター 構築物(PAL2)またはPAエレメント(PAL2ΔPA)若しくはATストレッチ(PAL2Δ AT)のいずれかが欠失した構築物(図4、パネルB)を使用するPCRによって、2 00bpのPAL2プロモーター領域-480〜-280の断片を作製した。この領域の外側から の断片を対照として含ませた。完全PAエレメントを有する断片のみがDNA結合 タンパク質に結合した(図4、パネルA、レーン1および2)。このように、PA BFはマルチマー化PAプローブに結合したばかりでなく、PAL2プロモーター内には めこまれたPAエレメント にも強く結合した。 PABFの転写物サイズおよび発現パターン−PABF転写物のサイズをノーザンブロ ット分析によって決定したところ、約2.2kbであった。タバコの根、茎、葉およ び花組織から調製した総RNAのPABFmRNAレベルについての分析によって、構成 的に発現することが知られているβ-ATPアーゼ遺伝子(Boutry and Chua,EMBO J .,4:2159,1985)に比較して、すべての組織でPABFの強い発現が明らかになった 。茎および葉の組織において他の組織よりもわずかに多い定常状態のPABFmRN Aレベルが検出された。 PABFは三部構造(tripartite structure)のHMG I/Y様タンパク質である−ノー ザンブロットデータではポリ(A)尾部を有する850bpcDNA断片を含有するλ 900は全長cDNAクローンではないことが示された。全長cDNAを単離する ため、この3'断片を使用してλgt11花芽ライブラリをスクリーニングした。4×1 05プラークをスクリーニングし、単離した最大のクローン(λ2200)は2153bp断 片を含有しており、これを両鎖について配列決定した(図5)。 λ900の配列はポリ(A)尾部を欠如している以外はλ2200の3'配列(図5、ヌ クレオチド 1182−1993)と同一である。λ2200は546アミノ酸の長いオープン リーディングフレームを1つ含有しており、翻訳開始部位として1番目のATGが 使用されると推定される。これから計算上の相対分子量(Mr)が67kDaのタンパ ク質が生じる。図5はPABFcDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列を示 す(それぞれ配列番号2および3)。1文字のコードで示す推定アミノ酸配列は オープンリーディングフレームの61位の最初のメチオニンで始まり、N-546に続 く停止コドンで終了する。矢印は当初単離された切断されたcDNAクローンの 5'および3'末端を示す。ATフックモチーフに下線を付けている。SDSポリアクリ ルアミドゲルで分画したタバコ核抽出物でのサウスウエスタン分析によって、HM Gタンパク質およびヒストンと推定される約18kDaの小さなタンパク質の他に、PA BFを含む、40kDaから80kDaの範囲 内のその他のHMG様タンパク質がPAプローブに結合することができることが確認 された。 図6は疎水性プロットである。上部パネルは疎水性プロットを示し、マイナス 値は親水性部分を表す。数字はPABF配列内のアミノ酸位置に相当する。下部のパ ネルにPABFの構成を図式によって示す。黒色部分はHMG I/Yドメイン中に見られ るATフックモチーフを示す。疎水性予測(Kyte and Doolittle,J.Mol.Bio., 157:105,1982)では、PABFが高度に親水性であることが示され、またPABFが3つ の区別されるドメインを含有しているらしいことが示唆された(図6、上部パネ ル)。この構造的構成はPABFの推定アミノ酸配列に対する類似性に関するデータ ベース検索によって確認された(図6)。N-末端のアミノ酸38〜127は、ヌクレ オソーム間のリンカーDNAに結合して、さらに高次構造の形成を導く塩基性染 色体タンパク質である、ヒストンH1の中央の球状ドメインに対して高度の類似性 を示した(図7A)。アミノ酸153と231との間のPABFの中央部はグルタミンに富 むドメインで構成されていた。78アミノ酸の中で39(50%)がグルタミン残基で あり、これらが均一に分布していた。C-末端ドメインのアミノ酸274〜484は哺乳 類HMG I/Yタンパク質への高度の類似性を示した。HMG I/Yタンパク質は塩基性で ヒストンを含まない小さな染色体タンパク質で、ATに富む配列と優先的に結合す る(Bustinら、上記)。結合は11アミノ酸のペプチドモチーフからなるATフック によって仲介され、HMG I/Y中ではこれが3回反復している。このATフックモチ ーフに類似した6つの短い配列がPABF中に存在した(図6および7B)。その上 、7アミノ酸で隔てられた、このDNA結合単位の1個のN-末端および1個のC- 末端の半分が見出だされた。当初単離されたPABFのC-末端部分はこれらの結合単 位を3個含有しており、このモチーフがDNA結合活性に対応することを強く示 唆している。 PABFのゲノム構成−タバコゲノム中のPABF遺伝子の構成を決定するため、低ソ トリンジェントの条件下でサザンブロットを実施した。5個の制限エンドヌクレ アーゼによって、等強度の2または3個のハイブリダ イズ断片が観察され、PABFはおそらく2つと考えられる遺伝子群の小さな遺伝子 ファミリーの1員であることが示された。N.tabacumの複二倍体的性質から、こ れらのシグナルは2つのタバコ原種N.sylvestrisおよびN.tomentosiformisのPAB F遺伝子に対応するのかも知れない。花ライブラリの再スクリーニング後に単離 したcDNAのおよそ半分がPABFcDNAに比較して異なる制限パターンを示し た。配列分析によって、この第2の遺伝子はPABFに94%同一であり、ATフックモ チーフが特によく保存されていることが示された。 要約 非特異的エンハンサーとしてのPA機能−上記の実施例は合成PAエレメント(PA s)が豆PAL2プロモーター内の量的シスエレメントの機能を有していることを示 している。こうして、豆CHS15プロモーターの上流に置かれたとき、このエレメ ントは相同性プロモーターによって誘導される発現の空間的および時間的パター ンを変更することなく、トランスジェニックタバコ中で発現を約10倍刺激した。 植物遺伝子中でいくつかのATに富むエレメントがカリフラワーモザイクウイルス (CaMv)35S-90プロモーターからの方向に無関係な様式の転写を強化することがわ かっている。しかし、これらの場合、上流エレメントはそのプロモーターの発現 パターンを改変する(Bustosら、Plant Cell,1:839,1989;Jordanoら、Plant Ce ll,1:855,1989)。2つの別の研究も組織特異的発現においてATに富む領域を関 連づけている(Jofukuら、Nature,328:734,1987;Jensenら、EMBO J.,7:1265,19 88)。対照的に、PAL2PAエレメントでは発現パターンの改変は見られなかった。 このように、PAエレメントの導入はCHS15プロモーターの発現パターンに影響せ ず、PAsエレメントが普遍的エンハンサーとして作用することを証明している。 PABFはPAモチーフに特異的に結合する−豆核タンパク質はPAエレメントを誘導 する 153bp RsaI断片と非常に熱に安定な複合体を形成した。DNアーゼIフット プリント分析によって、豆核タンパク質のための結合部位としてのPAエレメント が同定された。高度の熱安定性およびATに富 む配列への優先的な結合は、機能的に確定された塩基性の小さな非ヒストン染色 体タンパク質であるHMGタンパク質の特性である(Bustinら、上記)。いくつか の場合、ATに富む上流配列に特異的な植物DNA結合活性がHMGタンパク質とし て同定されている(Czarneckaら、上記;Jacobsenら、Plant Cell,2:85,1990;P edersenら、Plant Mol.Bio.,16:95,1991)。上記のデータは異なる電気泳動移動 度を有する2つの熱安定性複合体、C1およびC2を示し、ATに富む配列に対して異 なる親和性を有する別個のHMGタンパク質の存在を示唆している。類似の結合パ ターンがCzarneckaら(Czarneckaら、上記)によっても観察され、SDS-PAGEによ る分画において、低移動度複合体は46〜69kDaポリペプチドに分けられ、一方高 移動度複合体はそれぞれ32および23kDaの2つのタンパク質に分かれた(Czarnec kaら、上記)。 PABFの機能−ヒストンH1とPABF中のHMG I/Y染色体タンパク質ドメインとには さまれたグルタミンに富む区域の新規な組合せは、転写の協奏的、非特異的刺激 を提供するようである。こうして、同種(AATT)反復シスエレメントへのPABFの結 合は、ヒストンH1によって仲介される基礎抑制を減少させ、そしてプロモーター に対する転写因子の普遍的な接近を助長するためのヌクレオソーム構造の局部的 再編成によるばかりでなく、転写開始複合体の形成を強化するためのグルタミン に富む区域の配置によって、転写を増加させるようである。各成分は作用におい て非特異的であると予想され、このキメラタンパク質の組み合わされた、おそら く相乗的な寄与が、同種(AATT)反復シスエレメントの、特異的シスエレメントの 存在に依存し、最小プロモーターについては不活性な非特異的エンハンサーとし ての性質と協調する。こうして、PAL2プロモーター中でのPABFとPAエレメントの 相互作用は、単離したとき弱い木部特異的発現を与えるにすぎない下流の導管特 異的シスエレメントによって特定される選択的発現を強化する機構を提供する。 さらに、PABFは、プロモーター強度を非特異的に量的に調節するための、転写活 性化ドメインが染色体タンパク質ドメインと各種の組合せで並列している、転写 因子の 新規なクラスの始原型であるようである。 本発明を現在のところ好ましい態様を参照して記載したが、本発明の精神から はずれることなく各種の改変がなされ得ると理解されるべきである。したがって 、本発明は以下の請求の範囲のみによって限定される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/21 C12N 1/21 5/10 C12P 21/02 C12P 21/02 C12N 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG ,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT ,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA, CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F I,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE ,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS, LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,M X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE ,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT, UA,UG,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 ドエルナー,ピーター アメリカ合衆国 92109 カリフォルニア 州,サン ディエゴ,ホーンブレンド 1410 (72)発明者 レイブル,ゴエッツ オーストリア国 エー―1030 ビエンナ, ドクター ボール―ガッセ 7

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 少なくとも配列(AATT)n(ここでn≧2)からなる単離されたヌクレオチド 配列。 2. nが約2から約20である、請求項1に記載のヌクレオチド配列。 3. (AATT)nが、シスに作用する非特異的なエンハンサーエレメント活性を有す る、請求項1に記載のヌクレオチド配列。 4. 配列が(AATT)13である、請求項1に記載のヌクレオチド配列。 5. 実質的に精製されたパリンドロームエレメント結合因子(PABF)ポリペ プチド。 6. PABFが a)SDS-PAGEで測定したとき約67kDの分子量を有し; b)(AATT)n反復エレメント(ここでn≧2)に結合し;そして c)H1ヒストンドメイン、グルタミンが豊富なドメイン、およびHMG I/Yド メインを有する、 ことによって特徴づけられる、請求項5に記載のポリペプチド。 7. タンパク質のアミノ酸配列が配列番号3(図5)に示すアミノ酸配列と実質 的に同一である、請求項5に記載のポリペプチド。 8. アミノ酸配列が配列番号3(図5)に示すアミノ酸配列と実質的に同一であ る、請求項5に記載のポリペプチド。 9. 請求項5に記載のPABFポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレ オチド。 10.配列番号2(図5)に示すヌクレオチド配列、もしくは同一のアミノ酸配列 をコードするがアミノ酸のいくつかについて異なったコドンを有するその変異 型、またはそのスプライシング変異型(splice variant)ヌクレオチド配列を有 する、請求項9に記載の単離されたポリヌクレオチド。 11.請求項9に記載の核酸配列を含む組換え発現ベクター。 12.請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。 13.請求項5に記載のタンパク質または該タンパク質の抗原性断片に結合する抗 体。 14.細胞における遺伝子の増大した発現を提供する方法であって、機能しうる形 で該遺伝子に結合している異種プロモーターに(AATT)n反復エレメントを機能 しうる形で連結することを含んでなる、前記方法。 15.プロモーターが構成的プロモーターである、請求項14に記載の方法。 16.プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項14に記載の方法。 17.細胞が植物細胞である、請求項14に記載の方法。 18.請求項5に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同時発現さ せることをさらに含む、請求項14に記載の方法。 19.機能しうる形で(AATT)nに連結されたPABFをさらに含む、請求項14に記 載の方法。
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