JP2000512391A - カラーのない円周方向磁化トルク変換器及びそれを用いたトルク測定方法 - Google Patents

カラーのない円周方向磁化トルク変換器及びそれを用いたトルク測定方法

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Abstract

(57)【要約】 部材の軸方向に延びる軸線周りに印加されたトルクを示す出力信号を出力する磁気弾性トルクセンサであって、上記部材内で単一の円周方向に成極されるとともに、上記部材に対してトルクを印加した後にトルクが零になったときに磁化を上記単一の円周方向に戻すよう充分な磁気異方性を有しており、それにより上記トルクに応じて変動する磁界を生成する第一磁気弾性作用領域を備えたトルクセンサ。磁界センサ手段が、上記磁気弾性作用領域に近接しかつこれに対向する位置に取り付けられ、上記磁界の大きさを検出してこの大きさに応じた出力信号を出力する。上記部材の少なくとも上記磁気弾性作用領域は、局部的な磁化分布の少なくとも50%が上記単一円周方向を中心に対称的に配置された90度の四分円の中に存在する多結晶材料から形成されているとともに、上記磁気弾性作用領域から生じた磁界が上記磁気弾性作用領域に近接する部材領域を磁化することにより上記磁界センサ手段によって検出される正味の磁界のトルク検出にとっての有用性を損なうほどの強さの寄生磁界を発生させないだけの充分に高い保磁力を有している。

Description

【発明の詳細な説明】 カラーのない円周方向磁化トルク変換器及びそれを用いたトルク測定方法 関連出願の参照 本出願は、1997年10月21日に出願された米国仮出願第60/064,831号に 基づく優先権を主張するものである。 発明の分野 本発明はトルクセンサ、特に、シャフトに加えられるトルクを測定する非接触 式トルクセンサに関する。 発明の背景 回転する駆動シャフトを有するシステムの制御においては、基本的にトルクと 回転速度とが重要なパラメータである。従って、正確で信頼性があり、安価な方 法でトルクの検出及び測定を行うことが、数十年来、研究者の主要な目標となっ てきた。 従来、トルクの測定は、シャフトに直接取り付けられた接触式のセンサを用い て行われていた。その種のセンサとして、“ストレインゲージ”式トルク検出装 置がある。この検出装置は、1または2以上のストレインゲージがシャフトの外 周面に直接取り付けられ、歪みによって生じる抵抗の変化をブリッジ回路や他の 公知技術によって測定するようになっている。ところが、接触式センサは、回転 シャフトと直接接触しているために、比較的不安定であり、信頼性が低い。加え て、接触式センサは非常に高価であるため、近年トルクセンサが必要とされてい る自動車のステアリング装置など種々の用途において競争力をもって使用するに は商業上非実用的である。 その後、回転シャフトと共に使用される磁気歪み式の非接触式トルクセンサが 開発された。例えば、Garshelisの米国特許第4,896,544号に開示されたセンサは 、適切な強磁性と磁歪性とを有する表面と、それぞれ左右対称で、螺旋状に方向 付けられた残留応力及び誘導された磁気異方性が付与される2本の別個の周方向 の帯体とを備えるトルク伝達部材を有しており、また、トルクを受ける上記部材 に接触せずに、同じ軸方向の磁力に対する上記2本の帯体の反応の相違を検出す る磁気弁別装置を有している。最も典型的には、磁化及び検出は、上記帯体を覆 って取り囲む一対の励磁コイルまたは磁性コイルを備えることにより行われてお り、上記コイルは、直列に接続され、交流電流により作動されるようになってい る。トルクは、一対の互いに逆方向に接続された検出コイルを用いて検出され、 この検出コイルは、2本の帯体の磁束から発生する異なる信号を測定するように なっている。しかしながら、上記センサが使用される装置上及び装置回りに、上 記必要な励磁コイル及び検出コイルにとって十分なスペースを設けることは、ス ペースが割り増しされたことで、実用面で様々な問題を発生させる。また、その 種のセンサは、自動車用の用途などの価格競争の激しい装置に使用するには、非 実用的なほど高価である。 さらに最近では、初期の円周方向の残留磁化をトルクの誘導により傾斜させる ことによって生ずる磁界を測定するようにしたトルク変換器が開発されている。 このトルク変換器は、好ましくは、磁界生成要素として機能する薄い仕切リング (wall ring)(“カラー”)を利用するものである。例えば、Garshelisの米国特 許5,351,555号や5,520,059号を参照のこと。上記リングの引っ張り方向の“フー プ”応力は、測定されるトルクを伝達するシャフトへの取付手段と協働して、支 配的な円周方向の一軸異方性を形成している。シャフトにねじり応力が作用する と、磁化は方向を変え、ねじり応力が増加するほど徐々に螺旋状になる。ねじり によって生じた螺旋状の磁化は、周方向成分及び軸方向成分の双方を有し、軸方 向成分の大きさは、もっぱらねじりに依存している。1個以上の磁界ベクトルセ ンサは、トルクが加えられることによって変換器のまわりの空間に生ずる磁界の 大きさ及び極性を検知し、及びトルクの大きさに反映した信号出力を供給する。 当該変換器のトルク/磁界伝達関数(transfer function)が厳しい使用環境下で 安 定していることは、円形成極を安定させる際の一軸異方性の効力に反映する。こ の異方性は、また、空間的に閉ざされた静止時の成極の性質と共に、比較的大き な磁界において成極損失を著しく削減することができる根拠となる。リング自体 から生じる磁界は上記異方性に関して困難軸(hard axis)成分のみを有する一方 、磁化されるのに十分なほどリングに接近した透磁性材料によって生じる“寄生 的な”磁界には、そのような制限はない。トルクに依存するリングからの磁界に 対しそのような寄生的な磁界を付加することは、伝達関数のほぼ理想的な特徴を 、ひどく低下させることがある。その結果、そのようなひずみの主原因を避ける ために、リング下に位置するシャフト、もしくはシャフトとリングとの間に位置 するスリーブは、通常、常磁性材料によって形成されている。さらに、リングと シャフトとの接触面における滑りによってリングの許容ピークトルクは限られて いるので、過負荷条件でのリングとシャフトとの接触面における滑りによって生 じるひずみが、著しく懸念される。このように異なる材料からなる複数の部品が 必要であり、それとともにそれら部品の組立の方法及び詳細が固定されて滑るこ とのない機構と所望の磁気異方性の両方を達成しなければならないという要求も あるため、代替構造の研究が促進されている。 発明の概要 従って、本発明の目的は、トルク検出用の作用(active)領域が、シャフトに取 り付けられるべき別個の強磁性要素にではなく、シャフト自体に直接形成される 磁気弾性トルク変換器を提供することである。 本発明の別の目的は、許容ピークトルクが、従来のセンサにおけるような作用 要素とシャフトとの接触面での滑りによってではなく、シャフト材料自体の強度 によって決定される磁気弾性トルク変換器を提供することである。 本発明の更に別の目的は、トルクが零になったときに磁化を前もって設定され た円周方向に戻すために、別個の強磁性要素のトルク検出用作用領域に1軸磁気 異方性を注入する方法に依存するのではなく、異方性の一次発生源であるシャフ ト自体の結晶磁気異方性に依存する磁気弾性トルク変換器を提供することである 。 本発明の更に別の目的は、測定されるトルクが零のとき本質的に零である量を 検出するよう作動するとともに、測定されるトルクに応じてその方向と大きさと を変える、カラーなし(collarless)磁気弾性トルク変換器を提供することである 。 本発明の更に別の目的は、動作のために外部の励磁磁界を必要とせず、かつ励 磁電流もコイルも必要としない磁気弾性トルク変換器を提供することである。 本発明の更に別の目的は、それぞれの機能に適した磁気特性を有する作用領域 と非作用領域とを備え全体的にほぼ均質な化学組成の一体型シャフトを有する磁 気弾性トルク変換器を提供することである。 本発明の更に別の目的は、変換領域を有しトルクを受けるトルク部材を提供す る工程と、上記変換領域を単一の円周方向に成極する工程と、上記トルク部材上 のトルクの指標として変換器の磁界出力成分を測定する工程とを備え、上記変換 領域は上記トルク部材に対してトルクを印加した後にトルクが零になったときに 上記変換領域の磁化を上記単一の円周方向に戻すよう充分な磁気異方性を有して おり、それにより上記トルク部材上のトルクに応じて変動する変換領域磁界が発 生するとともに、上記トルク部材は、局部的な磁化分布の少なくとも50%が円 形残留磁化方向を中心に対称的に配置された90度の四分円の中に存在する多結 晶材料から形成されているとともに、上記変換領域の磁界が磁界測定装置によっ て分かる正味の磁界のトルク検出目的での有用性を損なうほどの強さを有する寄 生磁界をトルク部材に近接する領域に発生させないだけの充分に高い保磁力を有 している非接触トルク測定方法を提供することである。 本発明の更に別の目的は、作用領域と非作用領域とを備えた単体シャフトの上 記各領域にそれぞれの機能に適した磁気特性を付与するため、シャフトの該当領 域に対して熱的な相変態処理、機械的な相変態処理、またはそれらの組合せを行 って上記各領域に所望の治金相を得ることにより、全体的にほぼ均質な化学組成 の上記単体シャフトを有する磁気弾性トルク変換器を作る方法を提供することで ある。 上記の目的およびその他の目的は、トルクを受けたシャフト上の磁気弾性作用 領域と、この磁気弾性作用領域に対してトルクを印加した結果生じる変換領域の 磁界に反応するホール効果センサ等の磁界センサとを備えたトルクセンサを提供 することにより達成される。好ましい実施の形態では、上記磁気弾性作用領域は 単一円周方向に極性が付与されるとともに、上記部材に対してトルクを印加した 後にトルクが零になったときに上記磁気弾性作用領域の磁化を上記単一円周方向 に戻すよう充分な磁気異方性を有しており、上記トルクを受けたシャフトは、局 部的な磁化分布の少なくとも50%が磁極化方向を中心に対称的に配置された9 0度の四分円の中に存在する多結晶材料から形成されているとともに、上記変換 領域の磁界が磁界センサによって分かる正味の磁界のトルク検出目的での有用性 を損なうほどの強さを有する寄生磁界を上記シャフトに近接する領域に発生させ ないだけの充分に高い保磁力を有する。特に好ましい実施の形態では、シャフト は立方対称性(cubic symmetry)を有しかつランダムな配向の多結晶材料から形成 されており、上記保磁力は15より大きく、望ましくは20より大きく、さらに 好ましくは35より大きい。 本発明の別の実施の形態では、上記及びその他の目的は、それぞれの機能に適 した磁気特性を有する作用領域と非作用領域とを備えた全体的に均質な化学組成 の一体型のシャフトを有するトルクセンサを提供することによって達成される。 そのようなトルクセンサは、上記各領域にそれぞれの機能に適した磁気特性を付 与するため、シャフトの該当領域に対して熱的な相変態処理、機械的な相変態処 理、またはそれらの組合せを行って上記各領域に所望の治金相を得ることにより 形成される。 図面の簡単な説明 図1(a)は中実シャフト上に形成された隣接して互いに逆極性で磁気的に連続 する円周方向領域を有する作用領域ABCを備えた本発明のトルクセンサを示す 組立図である。 図1(b)は中実シャフトではなく中空のシャフトを使用した図1(a)のセンサ を示す。 図1(c)は作用領域が形成されるシャフトの拡径部分を有する図1(a)のセン サを示す。 図1(d)は単一の成極方向のみを有する作用領域ABを備えた図1(a)のセン サを示す。 図1(e)は作用領域が形成されるシャフトの減径部分を有する図1(a)のセン サを示す。 図1(f)は減径された作用領域が別のシャフト上にあることを除けば図1(e) と同様のセンサを示す。 図1(g)は隣接して交互に逆極性で磁気的に連続する3つの円周方向領域を有 する作用領域ABCDを備えた図1(a)のセンサを示す。 図2(a)は代表的な“大”ヒステリシスループを示すグラフである。 図2(b)は代表的な“小”ヒステリシスループを示すグラフである。 図3は2つの有極性領域を同時に生成するためのシャフトと成極磁石との代表 的な構成を示す正面図及び側面図である。 図4は成極磁石の強さと得られたセンサの感度との関係を示すグラフである。 図5はシャフトの作用領域に沿った軸方向位置とトルクを印加した結果発生す る径方向の対応する磁界強度との関係を示すグラフである。 図6は印加トルクと径方向の磁界強度との関係を示す、高速度鋼からなるカラ ーなしトルクセンサの伝達関数を示すグラフである。 図7はシャフト上の強磁性磁歪性材料からなる中央作用領域と低透磁率材料か らなる両側非作用領域とを示す本発明のトルクセンサの組立図である。 図8は図7のセンサを作る一方法を示す図である。 図9は冷間圧延ロールの間隔と得られたセンサの感度との関係を示すグラフで ある。 図10は冷間圧延の期間と得られたセンサの感度との関係を示すグラフである 。 好ましい実施の形態の詳細な説明 この数年間、非接触式磁気弾性トルクセンサに対する関心が高まっている。こ のセンサは、シャフトと、円周方向を磁化容易軸(easy axis)とする1軸磁気異 方性が付与されかつ円周方向に極性が付与された上記シャフト表面上の磁気弾性 作 用要素と、シャフトに対してトルクを印加した結果発生する磁界の大きさを検出 する磁界センサとを備えている。これまで、作用要素が機能を発揮するためには 物理的に別個の部分、例えば、リングすなわち“カラー”を使用することが最も 望ましいとされてきた。そのようなセンサでは、1軸磁気異方性は通常シャフト とリングとの干渉嵌めにより発生する“フープ応力”の結果として発現される。 本発明によれば、様々な問題を伴うようなリングとシャフトとの接触面を作る代 わりに、局部的な磁化分布の主要部分が円形残留磁化方向を中心に対称的に配置 された90度の四分円の中に存在するよう制限された多結晶性シャフトを使用す れば、シャフトに対してトルクを印加した際に検出可能な磁界を発生させるだけ の十分な円周方向磁気異方性を示すことが分かった。それ故、シャフト用の強磁 性材料を慎重に選択することにより、適宜に円周方向の成極を行うだけでシャフ ト上に直接作用領域を生成することができる。しかしながら、いかなる強磁性シ ャフト上に対しても十分な作用領域が生成されるわけではないことは明らかであ る。この点に関して、重要な問題は安定性、線形性及びヒステリシスである。 安定性、線形性及びヒステリシスはトルク変換器において他の影響を全く受け ない特性ではない。例えば、ヒステリシスの存在は線形性に対して明らかに制約 要因である。さらに、ヒステリシスの存在は非可逆的な磁化変化過程が進行中で あることを意味するので、新規なトルクの振幅(excursion)に対応する伝達関数( transfer function)が同じトルクの振幅を100回繰り返したときにそれに対応 して正確に繰り返されるか否かは実際に試してみるまで分からない。一般に、あ る安定したヒステリシスループから別のヒステリシスループへの変化は漸進的で ある(“匍匐(reptation)”と呼ばれる過程)。非可逆的な磁化過程を回避する か少なくとも最低限に抑えることが望ましいことは明らかである。非可逆的な磁 化の変化は、たいていの場合、以下の2つの過程、すなわち、磁壁移動(domain wall motion)とある容易軸から別の容易軸へのベクトル回転との一方あるいは両 方により起こる。実際の材料内に存在する異方性は十分に大きいので、また、容 易軸同士は通常受けるねじり応力により発生する傾斜角度よりもかなり大きな角 度間隔を有する(例えば、10度以下に対して90度)ので、円周方向からほぼ 等距離で離れた容易軸間のベクトル回転が初期のトルク循環中に作用するとして も、 ベクトル回転が伝達関数(transfer function)の非可逆性の潜在的な源として重 大な脅威になるとは思えない。したがって、変換器の伝達関数に多くのヒステリ シスや匍匐がある場合は、その犯人は恐らく磁壁移動であることが分かるであろ う。 センサの動作に対する磁壁移動の影響及びその悪影響を回避する方法はセンサ の動作時に作用している上記シャフト特性、最終的にはカラーなしトルクセンサ の性能を特定し検査することで明らかになるであろう。これらの特性には、様々 な材料特性に加えて、作用領域及び隣接領域の寸法的及び形状的特徴も含まれる 。明らかに、トルクセンサの性能は、ある特定の特性の大きさだけでなく上記特 性の一部同士間の相互関係にも依存している。この点については、図1(a)に示 すカラーなしトルクセンサの基本構造の概略図及び以下の説明が明らかにしてく れるであろう。 図1(a)において、本発明にかかるトルクセンサを符号2で示す。このトルク センサ2は変換器4と磁界ベクトルセンサ6を備えている。変換器4は、シャフ ト12の作用領域、すなわち、変換器領域を単に画定するにすぎない、1個のあ るいは軸方向に分かれて磁気的に連続し相互に逆極性の2個以上の円周方向帯域 、すなわち、領域8,10を備えている。図のA点の左側のシャフト領域14及 びB点の右側のシャフト領域16は、大きな残留磁化が存在しないことだけで作 用領域と区別され得る。シャフト12は通常、後にさらに詳しく述べるが、作用 領域も同様の結晶構造を有する同じ強磁性磁歪性材料から形成されるように、特 に望ましい結晶構造を有する強磁性磁歪性材料から形成される。トルク20がシ ャフト12の一部に加わると、シャフトの他の部分にも伝達され、そこではトル ク20に起因するシャフト12の運動が何らかの有用な働きを行うようになって いる。トルク20は図のシャフト12の一端側で時計方向に表現されているが、 シャフト12を内蔵する機械の性質次第で時計回り反時計回りのいずれか一方向 にも両方向にもシャフトを回転させるようあるいはシャフトに回転を付勢するよ う印加され得ることは言うまでもない。 変換器4は、その開示を本文に引用の形で盛り込んだ米国特許5,315,555号及 び5,520,059号に教示されているように、トルク20が存在しない状態(静止状 態)では少なくとも軸11の方向にも径方向にも正味の磁化成分が全く存在しな い程 度まで、ほぼ純粋な円周方向に磁極化されている。変換器4の閉じた円筒形状に より完全な回路が実現され、それにより成極の安定性を高めることができる。 変換器4の構造、材料選択及び処理により、シャフト12に対してねじり応力 が印加されると、変換器4の極性を有する磁化の方向が変化する。極性を有する 磁化はねじり応力が増大するにつれて螺旋形状を強めてゆく。変換器4の磁化の ヘリシティは伝達されたトルク20の大きさに依存し、キラリティは伝達された トルクの方向性と変換器4の磁気弾性特性に依存する。変換器4のねじれに起因 する螺旋状の磁化は円周方向成分と軸11に沿う軸方向成分の両成分を有してい る。特に重要なことは、軸方向成分の大きさが変換器4のねじれに完全に依存し ていることである。 磁界ベクトルセンサ6は変換器4に対向して配置された磁界ベクトル検出装置 であり、極性を有する磁化が静止状態の(quiescent)円周方向からより勾配の大 きいあるいは小さい螺旋方向へと方向を変えた結果として変換器4回りの空間に 発生する磁界の大きさと極性を検出するようになっている。磁界ベクトルセンサ 6はトルク20の大きさに応じた信号出力を発生する。好ましくは、磁界ベクト ルセンサ6は集積回路ホール効果センサである。磁界ベクトルセンサ6は配線2 4により直流電源に接続されており、配線24は磁界ベクトルセンサ6の信号出 力を、シャフト12を内蔵する機械またはシステムの制御回路やモニター回路等 の受信装置(図示せず)に伝達するようになっている。磁界ベクトルセンサの種 類、特性、配置及び機能に関するより詳しい説明は、その開示が本文に引用の形 で盛り込まれている米国特許5,351,555号の第6ないし第9欄及び同じく米国特 許5,520,059号の第7ないし第11欄及び第25欄に明示されている。 円周方向の極性を有する2つの領域8,10はともに変換器4の作用領域4を 構成する。図示の磁界センサは上記互いに逆極性の2つの領域間の“磁壁”を中 心に配置され、その位置で径方向の磁界を検出するよう方向付けられている。磁 界センサは1個であってもそれ以上使用されてもよい。一般に、そのような各セ ンサは、作用領域の近くに配置され、シャフトがトルクを伝達している際に発生 する磁界を検出するのにできる限り有効であるように方向付けられることになる 。この変換器と円周方向の1軸異方性を付与された作用領域を採用した来国特許 5, 351,555号及び5,520,059号(“リングセンサ”)の従来構造とが類似しているこ とは明らかである。以下のように、一部の相違点は明白であるが、それ以外はも っと微妙な相違である。 1.上記の基本的なカラーなし構造における作用領域は計器上の残留磁化の存在 によってのみ画定される。A点の左側のシャフト部分及びB点の右側のシャフト 部分は感知可能な残留磁化が(その部分に)存在しないことによってのみAB間 の部分と区別される。したがって、他のシャフト機能に関連する、あるいは作用 領域を視覚的に特定するための、あるいは変換器の性能の何らかの特徴を最適化 するための二次的な理由を除けば、AC間のシャフトの化学組成も治金条件も径 も表面処理も仕上げもA点の左側部分及びC点の右側部分と異ならない。2部構 成の作用領域、すなわち、磁気的に連続し互いに逆極性の2個の円周方向リング は、本発明に関して(米国特許5,351,555号におけるような単一極性の領域に比 べて)好ましい構成であるが、その好ましい理由は、A点及びC点という円形に 磁化された領域と非残留磁化領域との間のそれ程はっきりとは画定されていない 境界における周囲の軸方向磁界の曖味な効果を回避するためというよりは、むし ろB点ではっきりと画定された磁化の勾配(したがって、磁化がねじりを受けて 傾斜する際の大きな発散(divergence))を得ることにより関係が深い。なお、こ の点に関して、A点及びC点が単一の円形残留磁化方向を有する作用領域の終端 を示すとすると、軸方向の磁界により傾斜させられる時の軸方向成分は、A点の 左側及びC点の右側の非極性領域内部に発生する軸方向成分によって多かれ少な かれ整合(matched)させられる。したがって、作用領域がシャフトの一端の近く にない限り、軸方向の磁界は軸方向の磁化にあまり発散を引き起こすことはなく 、それ故“信号”磁界も殆ど発生させない。一方、ねじり応力は、それにより円 形の残留磁化が軸方向成分を発生するが、シャフトの非磁化領域内で軸方向磁化 成分を変化させることはない。したがって、この軸方向成分の発散があるので、 外部磁界が発生する。この発散は2つの部分からなる領域構成のB点で発生する ものから減少しており、その理由はB点で残留磁化の極性が反転するからのみな らず、成極過程が結果的にA点とC点での残留磁化の勾配をさらに広げるからで ある。 この点に関して、上記非極性領域の磁界強度を低下させて近くのシャフト材料に 対する磁界の効果を弱めるためには、実際には、A点とC点における円形残留磁 化の“両端”を故意に広げることが望ましい。 2.作用(磁界生成)領域は均質なシャフトの一構成部分であるので、シャフト 材料は強磁性でなければならない。飽和磁化が高いほど、トルク依存性の磁界を 発生させる磁位(potential)は高くなる。低合金の炭素鋼は元素状態の鉄と同じ 飽和磁化(4πMs=21,600 Gauss=2.16 Tesla)を有する。合金化は普通非強磁 性合金元素の割合にほぼ比例してMsを減少させる。少量のニッケルは殆ど効果 を及ぼさず、コバルトはMsを上昇させる。一部の高張力鋼は30%もの高い割 合で非鉄構成物質の混合物を含む高合金である。それにもかかわらず、シャフト に使用される強磁性鋼はすべて鉄の場合の20%以内でMsを必ず有することに なる。したがって、特定のシャフト材料のMsの実際の値はトルク変換器の性能 に対して他と無関係の若干の影響を及ぼす。 3.作用領域ひいてはシャフト自体が磁歪性を有している必要がある。磁気歪み λとねじり主応力σとの積は変換器の動作に基本的な磁気弾性的異方性の影響を 示す。米国特許5,351,555号のトルクセンサと同様、この異方性は、容易軸を一 方の軸方向あるいは他方の軸方向に偏向させ信号磁界の発生源である磁化発散を 生成するものである。シャフトの原料である多結晶材料を構成する個々の晶子(c rystallite)が等方磁歪を有することは稀である。鉄の場合、磁気歪みλは、結 晶の磁化方向に応じてその正負(sign)を変える程度にまで特に異方性である。例 えば、理想的に消磁された鉄の単結晶が立方縁(cube edge)に平行に磁化されて いる場合、その磁化方向の長さは20ppm増加し、立方対角線(cube diagonal)に 平行に磁化されている場合は、その磁化方向の長さは21ppmだけ減少する。磁 気学者の表現を借りれば、λ100=20ppm及びλ111=-21ppmである。一部の合金 元素、 る(結果的に、等方磁歪が増大する)。ここで、記憶すべきことが2点ある。そ の1点は、磁化残留状態では磁壁はなく、たとえ内部磁界の結果90度の磁壁が 形成されたとしても、その位置に効果的にピン止めされる(pinned)ということで ある。2点目は、静止時の磁化が容易軸に沿っている(例えば、一般的な鋼製シ ャフトでは<100>軸方向である)ので、磁化は磁気弾性的異方性λσにより 容易軸から回転させられる。線形伝達関数のために、磁気歪みエネルギーはトル ク(すなわちσ)と正比例の関係にあることが望ましい。したがって、磁化のベ クトルが静止時の容易軸からλσだけ回転する際にλが一定であることが望まし い。一部の結晶では、その方位次第で、容易軸の+σ方向の回転によりベクトル が<111>軸方向に近づくので、λ111が負であれば、<100>軸方向と< 111>軸方向との間に、σがいかなる値であってもλσ=0が成立する補償点 が存在する。純鉄や合金含有率が非常に低い鋼の場合には、<110>軸方向で さえも負であるので、いかなる結晶方位にとっても望ましくないこのような状態 を回避するのは不可能である。この理由により、ニッケルや珪素が望ましい合金 元素である。 4.作用領域ひいてはシャフト自体が、トルクが零になった時に磁化を(成極過 程で)設定された円周方向に復帰させる異方性発生源を所有していなければなら ない。時計方向及び反時計方向のトルクに対する対称的な反応を確保するために 、静止時の異方性は円周方向を中心に対称である必要がある。トルクに伴う磁気 弾性的異方性によりシャフトの全ての残留磁化部分を確実に軸方向成分の発現に 協働的に寄与させるためには、静止時の異方性は円周方向から45度を越えて離 れたどの場所に存在していてもいけない。言い換えれば、異方性が必要であると いうのは、円周方向に向けられた90度の四分円内に円形の残留磁化を閉じこめ る必要があるということである。局部の磁化の少なくとも50%が円形残留磁化 方向を中心に対称的に配置された90度四分円内に存在するならば、十分な性能 を得ることができる。静止時の異方性がその主要な発生源として、多軸対称性を 有する格子構造の原子配列、例えば、各晶子が<100>軸方向あるいは<11 1>軸方向の磁化容易軸に関して(四辺形等の歪んだ立方晶を含む)立方対称性 (cubic symmetry)を有するランダムな配向の多結晶材料、に伴う結晶磁気異方性 を有しているならば、50%を越える晶子の静止時円周方向残留磁化は上記“4 5度”の要件を自動的に満たすことになる。鉄及び一般的な鋼の全てはそのよう な立方対称性を備えているので、(この要件にのみ基づけば)それら全てがカラ ーなしトルク変換器用材料の候補である。純鉄の異方性の大きさは通常一般的な 合 金元素によって低減されるが、それはタングステン及びマンガンによって、マン ガンの方がより控えめではあるが、引き起こされる。モリブデン、バナジウム及 びスズは低減方向の比較的小さな変化をもたらし、クロムの場合は純鉄の場合に 比べて異方性が低下する際の反応がわずかに速くなる。ニッケル、コバルト、珪 素あるいはアルミニウムの量が十分であれば、異方性を零またはそれ以下まで低 下させることができる。カラーなしトルク変換器においては、結晶(結晶磁気の 略)異方性の大きさの絶対値が低すぎることが懸念される。なぜなら、それはト ルクが除去された時に磁化をその静止時円周方向に復帰させる“ばね”の働きを するからである。従って、例えば、σrをシャフトの前処理に伴う残留応力の大 きさであるとすると、結晶異方性(K1)がλσrより小さい場合、K1はもはや 主要な異方性ではなく、50%を越える静止時残留磁化はもはや45度の配分要 件を満たさなくともよい。このことから、変換器の動作にとってそれぞれ重要な いくつかの材料特性間の相互関係の重要性を初めてかいま見ることができる。K 1とλが組成に依存する(固有の)特性である一方、σr及びその他の構造依存 特性(例えば、組織(textures)、化学的または構造的配列(ordering))は上記固 有の特性と協力して静止時異方性の大きさ、方向及び対称性を測定するよう作用 する。さらに、少量のニッケルまたは珪素は、λを効果的に増大させる一方でK 1を低下させる。したがって、シャフト用に適切な合金を選択する際には、合金 の含有率を慎重に加減する必要がある。 5.今ではもう、本発明では、シャフト自体が強磁性かつ磁歪性を有し、磁気異 方性の必要な大きさ及び方位の分布を与える必要があると理解されるが、磁界に 対するシャフトの磁化の反応はこれまで考慮されていない。強磁性材料は磁界に より誘導された磁化の変化の大きさと、大きな磁化の変化を誘導するために必要 な磁界の大きさとによって容易に特徴づけることができる。これらの特徴は、1 個の変数に対してただ1個の値を有する関数ではないので、磁界Hが対称的な両 極間の範囲にわたって循環的に変動するような磁化M対磁界H線図によって適宜 表現される。このような大ヒステリシスループの顕著な特徴点は、後にさらに詳 しく説明する図2(a)に示されており、この図において、様々な傾きと線分が材 料ごとに可変であり、傾きは局部的な磁化率を示し、y軸上の線分は残留磁化で あ り、X軸上の線分は保磁力である。 ヒステリシスループの様々な部分にわたって変化する傾きは、それぞれ異なる 強さの磁界で起こる磁化の変化に起因する異なる過程を表している。カラーなし トルク変換器の動作時には、磁界が作用領域を発生させ、これら磁界が磁界セン サが位置する空間のみならずシャフト自体が占める空間にも広がることから、上 記ヒステリシスループの細部に対しては単に学術的にのみ関心があるわけではな い。シャフトの非作用領域内で起こされた磁化の変化は別の磁界を発生させるこ とになり、このような(寄生的な)磁界も磁界センサが位置する空間領域に広が る。したがって、作用領域の伝達関数(transfer function)を損なわないために は、作用領域の磁界に比べて寄生磁界が非常に小さく、理想的には零であること 、もし強さが大きい場合には、印加トルクに対して線形かつ無履歴的に(anhyste retically)変化する(あるいは全く変化しない)こと、さらに、シャフトが受け るいかなる動作条件下及び環境条件下においても時の経過とともに安定化するこ とが重要である。言い換えれば、いかなる寄生磁界が発生しても、その磁界は、 磁界センサによって分かる正味の磁界がトルク検出目的にとって有用であるよう な作用領域磁界に比べて十分に小さい磁界でなければならない。寄生磁界はシャ フトの非作用領域内の磁化を発生源としているので、そのような磁化は小さく維 持されることが望ましく、もしそれが大きい場合には、作用領域により生成され た磁界(及びその他の周辺磁界あるいは偶発的に印加された磁界)の作用の下で ほとんど変化しないことが望ましいことは明らかである。Ms値が低ければ、あ るいは磁化率(χ=ΔM/ΔH)またはそれに密接に関連する透磁率(μ=χ+ 1)が低ければ、磁化が小さいことを保証することができる。Ms値が高いこと は作用領域にとって好ましいので、Ms値が低い値であることはこの基本的なカ ラーなし構造においてはあり得ない。したがって、寄生磁界によって伝達関数を 損なう影響をできる限り少なくするためには、シャフト材料が曝される磁界の値 が何であっても、χ値が低いシャフト材料を使用することが重要である。χ値は 、磁化の変化が主としてベクトル回転に因るのかあるいは磁壁移動に因るのかに 依存する。ベクトルの回転は異方性によって阻害される一方、磁壁移動は異質性 によっ て阻害される。保磁力は磁界が磁化を変化させるのを難しくする手段となる。保 磁磁界Hcは残留磁化(飽和磁界に曝された後に残留する磁化)を零に低下させ るのに必要な磁界強度として定義される。したがって、保磁磁界Hcでは、50 %の磁化が反転されている。磁化の反転がベクトル回転によってのみ起こってい るならば、Hcの値(このような過程ではHcは臨界磁界(critical field)とも 呼ばれる)は、K1>0の立方対称性を有するランダムに配向された晶子からな る材料内では、2K1/Msに等しい。鉄の場合、K1=450,000ergs/cm3でかつ4 πMs=21,600 Gaussであれば、ベクトル回転に必要なHc値は524 Oeである 。炭素鋼及び低合金鋼の場合のHcの測定値は、一般的には、合金含有率及び熱 的または機械的処理に依存し、5ないし50 Oe(焼き鈍しされた鉄の場合はさ らに低い)範囲内にある。したがって、明らかに、これらの材料内で磁化が変化 される主要な過程は、ベクトル回転ではなく、むしろ磁壁移動である。さらに、 Hc=50 Oeの材料はHc=5 Oeの材料に比べてカラーなしトルクセンサでの使 用により適していることがわかる。したがって、Hc値がさらに高ければ、さら に適していることになる。いかなる鋼においても、Hc値は冷間加工や熱処理に よって5以上の係数分だけ増加する。Hc値は一般に機械的に最も硬い(最も強 度が高い)状態の時により高くなる。このことは、強度とは結晶内のある層の原 子群が別の層にまで流れる(滑る)こと(格子間原子や応力等による転位、空隙 、包接(inclusion)、凝結物(prcipitates)、格子歪み)に対して妨害が存在する ことを示しており、Hc値は結晶構造内部にこれら同じ不均質性を有する磁壁に 対するピンニング効果(pinning effect)を示すという事実からもたらされる。 上記に示すように、様々な材料及び磁気パラメータの矛盾する、時には正反対 の影響は、カラーなしトルク変換器の設計にジレンマをもたらす。経済的な磁界 検出装置で容易に検出されるくらいに、かつ通常出会う周辺磁界よりもかなり大 きくなるくらいに十分な振幅を有するトルク発生磁界を得るためには、作用領域 ができる限り大きな磁界を生成することが望ましい(高λ/K1値、高Ms値に有 利)。しかし、このような磁界が作用領域内で磁化の大きな変化を引き起こすほ どの十分な強さを有しているなら、伝達関数(transfer function)はトルクレベ ルが高い時に安定しないであろう(高λ/K1値、低Ms値に有利)。上記磁界が 作 用領域に近接するシャフト部分に十分な強さを有しているなら、結果的に発生す る寄生磁界は変換器の有用性を減殺させたり失わせる(ヒステリシス、不安定、 非線形)ようにして変換器の伝達関数を損なう可能性がある(低Ms値、低λ値 、低χ値、高Hc値、高K1値に有利)。これらの問題は、実際のHc値を異方 性により設定された限界値の近くまで上昇させるくらい十分に確実に磁壁をピン 止めすることができれば、直ちに緩和され得る。主として、原材料の問題、シャ フト材料の選択、シャフトを製造するために使用する工程及びその後の熱的機械 的処理が通常は本来のシャフト機能、すなわちトルクの伝達を最適に満たすよう になされている一方で、これらの要因がトルクの検出にとって好ましい選択にな るかどうかについてはあまり問題にされていない。 なお、上記の説明は全て図1(a)に示す基本的かつ最も単純なカラーなし構造 に関するものである。後述する本発明の他の実施の形態から分かるように、カラ ーなし構造の概念の中には、シャフトの他の部分に存在するよりも優れた重要な 特性の組み合わせを得るようにして作用領域(あるいはシャフトの非作用部分) の変化を禁じるものは何も存在しない。したがって、残留磁化の存在が作用領域 とシャフトの隣接領域とを区別する唯一の特徴であることはカラーなし変換器の 概念にとって重要ではない。様々な局部処理や他の変形例が米国特許5,391,555 号第4なしし第15欄に説明されており、本文中にも引用されている。 基本的なカラーなし構造のその他の変形によっても、現在の理解に基づいて、 性能の改善に通じることが分かるであろう。例えば、図1(c)に示すように、シ ャフトが軸方向のある限度を超えて拡径され、その後円周方向に磁化された(す なわち、作用領域が段部に存在する)場合には、たとえ作用領域が図1(a)の単 一径の基本構造と同じ単位トルクあたりの磁界を発生させたとしても、シャフト の近接部分(今はそれほど近くはない)の信号磁界の強さは低下することになる 。その上、磁界センサは寄生磁界の発生源からさらに遠ざかることになる。 先に述べたように、円周方向の磁化をテーパ状にして図1(a)に示す作用領域 のA端及びC端を広げることは有利である。この場合の目的は、シャフトの非作 用部分の信号磁界の強さを低下させる(それによりその部分の磁化が低下する) とともに信号磁界により磁化された時にその部分から発生するトルク依存性の磁 界 の強さを低下させることにより、シャフトの非作用部分から寄生磁界を減少させ ることである。この取り組みは作用領域を構成する分極を生成するために使用さ れる磁石の作用領域への接近距離あるいは強さにテーパを設けることにより容易 に実現され得る。 例えば、図1(b)のような中空の無心焼入れシャフトは、いくつかの理由から 中実シャフトや肌焼きシャフトよりすぐれているのが分かる。中空シャフトは中 実シャフトに比べてねじり応力をより均一に受け、したがって、断面全体が信号 磁界に寄与することができる。中実シャフトの全体を通して円形の残留磁化を発 生させることは不可能である。これを大径シャフトに近いものにすることは非実 用的で困難である。たとえ円形磁化が得られても、シャフトの中心領域は、応力 が小さいので、信号磁界にあまり寄与しない。さらに、そのような中心領域は“ 近透磁性材料”となり、寄生磁界の発生源に十分なりうるかもしれず、その場合 、トルク変換器の性能に寄与するのではなくむしろ性能を減殺させることになる 。中実シャフトのこのような潜在的にマイナスの特性は一般に悪化することにな る。その理由は、(硬度が焼入れ(quenching)によって得られた)無心焼入れシ ャフトにおいても、中心領域は一般に表面領域ほど固くはないので、Hc値がよ り低くなるからである。これらの理由から、無心焼入れは肌焼きより好ましいこ とが分かる。他方、窒化による表面硬化は、一部の鋼の硬度をさらに上昇させお そらくはHc値も上昇させることができるので、有利である。極低温処理も一般 に使用される(肌焼き)シャフト材料の硬度をかなり上昇させることが知られて いる(例えば、8620の場合はロックウェル硬度60〜64,4320の場合 はロックウェル硬度55〜62)。このような処理もHc値を上昇させることが できる。 図1(d)は作用領域が一方向にのみ成極されている点を除けば図1(a)と同じ センサを示している。この構成は、端部領域(A及びB)が軸方向の磁界に両極 を発生させるので、段部を有するシャフトには不向きだが、中実あるいは中空の シャフトには適している。(仮想線で示す)作用領域右端の第2センサの配置は 周辺磁界に対する径方向の感度を低下させるのを助長することが分かっている。 図1(e)は作用領域のシャフト径が主シャフトの径より小さいことを除けば図 1(a)と同じセンサを示している。この構成では、シャフトがトルクを伝達して いる 際にA点及びC点で形成する磁極が、隣接領域のより量的に大きい材料を磁化す る際にそれほど効果的でない。これにより、隣接領域によりもたらされる寄生磁 界の強さが低減される。さらに、この構造により、磁界センサを、拡径部分の表 面位置から半径方向内側の、寄生磁界の強さが低減される個所に配置させること ができる。図1(d)の段部付き構成の場合、一つの有極性領域に対してのみ使用 することには適さない。 図1(f)は作用領域が別個のシャフト上に形成されていることを除けば図1( e)と同じセンサを示している。この磁気弾性的作用シャフトのAC間の部分は 、その全長にわたって減径されているように表現されているが、実際には、それ が取り付けられる主シャフト部分と同じかそれより大きな径を有していてもよい (各端部が同じ径である必要はない)。作用シャフトは、干渉嵌め、ピン留め、 溶接、螺着等により主シャフトに固定されていてもよい。主シャフトは、ステン レス鋼、アルミ真鍮、ファイバーグラス、プラスチック等非強磁性材料からなる ことが好ましいが、好ましくは硬化された炭素鋼等の磁気歪みの小さい低透磁率 強磁性材料からなっていてもよく、また、大きな磁界を生成できないことが好ま しい。作用シャフトは、中空または中実であってもよく、AB間及びBC間にお いてのみ円周方向に成極されている。AA’領域及びBB’領域はトルクを伝達 する割合が比較的低いので、寄生磁界に対する貢献度は非常に低い。また、作用 領域でない作用シャフトのこれらの部分は磁化された工具(ねじ回し、レンチな ど)のような磁界を乱す恐れのある局部磁界発生源に容易には接近できない。 図1(g)は3つの円周方向有極性領域と(B点及びC点に)発散の大きい2つ の“磁壁”を有していることを除けば図1(a)と同じセンサを示している。両磁 壁間の磁界強度を大きくすることにより、各磁壁に1個づつ計2個の磁界センサ を使用する代わりに、仮想線で示すような軸方向に向けられた磁界センサを1個 のみ使用することが可能になる。 図2(a)は典型的な“大”ヒステリシスループの形状と特徴を示しており、そ の限定的な磁界は磁化が飽和状態に近づく形跡を示すのに十分である。このこと は、ループ極値を平坦化して上昇または下降するループの両縁間の磁化の差を狭 めることにより証明される。ヒステリシスループは動的な現象を効果的に表現し てお り、反時計回り、すなわち、上昇して右へ、下降して左へ等に旋回される。ここ で示された大ループは、磁界が±100 Oeを越えてさらに増加してもそのピー ク磁化が±18kGを大きく越えて上昇することはない。磁界がこのような“技術 的飽和”値に到達した後零まで低下すると、磁化はR(または逆極性の磁界の場 合にはR’)で示す値まで“戻る”。R及びR’は“残留”磁化を示す。図示の ループにおいてRの値は15.8kGである。“残留比”、すなわちピーク磁化 に対する残留磁化の比は、この場合、(15.8/18)=0.878である。 磁界方向に一軸異方性を有する材料では、残留比は最大可能値である1.00に 等しくなる。磁界方向がそのような材料の異方性に対して直角であれば、残留比 は最小可能値である零になる。各立方縁に沿って磁化容易軸を有するランダムな 配向の立方晶を有する材料内では、その比は0.8312である。それら容易軸 が各立方対角線に沿っている場合は、残留比は0.866となる。図2(a)に示 すループにおいて残留比が比較的高いのは、晶子がランダムな配向でないかある いは他の何らかの異方性の影響が存在することを示している。このような場合に は、他の磁界方向のヒステリシスループが一般により高いあるいはより低い(そ れぞれ異なる)残留比を示すことになる。 磁化が零(C点及びC’点)に低下する磁界の値は“保磁磁界”である。保磁 磁界は一般に磁界のピーク振幅の増加とともに増大し、飽和状態で(“保磁力” と呼ばれる)最大値に到達する。図示のループの保磁磁界は、このループを発現 する仮想の材料の保磁力より最小限にわずかに小さい値である30 Oeである。 RとC’との間の磁化反転が、400,000 erg/cm3(低合金鋼の代表値)の結晶異 方性に対する局部モーメントの(各磁区内での)コヒーレント回転によるもので あれば、保磁力は観測値のほぼ19倍の2×400,000/(18,000/4π)=559 Oeとな る。したがって、図示のループがこのタイプの材料(例えば、低合金鋼)による ものであれば、磁化反転は干渉性の回転によってではなく磁壁の移動によって主 として発生することは明らかである。 図2(a)のA及びA’は、“小”ヒステリシスループの極値を示し、このルー プでは、磁界のピーク振幅が保磁力より非常に小さい。この小ループの拡大図を 図2(b)に示す。このループの残留磁化及び保磁磁界の両方が非常に小さいこと が分 かるが、それらは零ではない。したがって、印加磁界の振幅が小さい場合でさえ 、その結果生じる磁化の変化はいくらかの非可逆性を含んでいることが分かる。 保磁力に比べて小ループの磁界振幅が小さいほど、その非可逆的特徴が小さくな る。磁界の振幅が(相対的に)非常に小さいために、ループはAA’間を通じて 直線にまで狭まっている。いずれにせよ、小ループのAA’間の直線の傾きは可 逆磁化率(χrev)として公知である。磁化された試料において、χrevの値は大 ループ上の保磁磁界内のいかなる点においてもほんの少しだけ(おそらくは±1 5%の範囲にわたって)変化する。一軸方向の材料の小ループは、残留磁化も保 磁力も示さないが、一般に、異方性に対して直角な磁界では有限のχrev値を、 異方性軸に平行な磁界では(完全に一様でコヒーレントな異方性のために)零χ rev値をそれぞれ示す。 大部分の材料が小さな磁界においてさえ有限のχrev値と残留磁化と保磁力を 示すという事実は、明らかにカラーなしトルク変換器の動作に関係がある。その 有限のχrev値のおかげで、トルクがシャフトに印加された時に作用領域により 生成された磁界にさらされるシャフト領域が磁化を発生させる。作用領域自体の 範囲内では、磁界は静止時の円形磁化の傾斜に逆らおうとする方向に作用するの で、そのような磁界は“反磁”界と呼ばれる。そのような磁界はその原因物質よ りも決して強くはないので、その作用は単にトルクの影響を低減させるにすぎず 、したがって、反磁界は変換器の感度の潜在能力を低下させる。シャフト材料の 有限の残留磁化と保磁力のおかげで、非作用領域の反作用磁化が印加トルクに応 じて履歴的に変動する。その原因となる磁界は作用領域から離れるにつれて減衰 するので、その反作用磁化は一様でない。そのような磁化はいずれも円周方向に 向いていない。さらに、シャフト材料は磁歪性であるので、反作用的に磁化され た領域内の磁化は印加トルクに応じて変動することになる。その結果、このよう な初めは非作用的で新たに磁化された領域自体がシャフト内及びその周辺の空間 に磁界成分を付与する。磁界センサにより見える正味の磁界(すなわち、信号磁 界)は、したがって、作用領域からの目的の磁界と反作用領域からの寄生磁界と の結果物である。当然ながら、望ましくは線形で非履歴的な変換器の伝達関数は 、カラーなし構成の場合には、磁化可能材料が必ず近接して存在するために、損 なわ れる恐れがある。保磁力を高く保つことが望ましいことは明らかであろう。 変換器の動作は、シャフト“表面”が残留磁化で円周方向に磁化されることを 必要とする。円周方向に磁化されていない材料は、反作用的に磁化されて寄生磁 界の発生源になるかもしれない。磁化の深さの点でより深いシャフト領域はそれ 故より優れているように見えるが、2つの要因がシャフトの断面全体を円周方向 に磁化する必要を緩和している。すなわち、第1に、表面から距離が離れるにつ れてねじり剪断応力が減少するので、信号磁界への関係磁位の付与がシャフト断 面のより中心に近い領域から次第に減少する。第2に、たとえそのようなより深 い領域がその個所に有益な磁界強度を発生させたとしても、その領域の(シャフ ト表面から半径方向外側にいくらか離れた)磁界センサ位置における磁界強度に 対する貢献度はかなり低下することになる。これら同じ要因により、極めて問題 の多い寄生磁界を“遠い”磁界センサで発生させる内奥の非円周方向磁化領域の 能力が低下する。上記第1の要因は、小さなシャフト内において必要な円周方向 磁化の深さをおそらく半径の50%に限定する。第2の要因は、非常に大きなシ ャフトでさえ、10〜20mmを越える深さの円周方向磁化が殆ど役に立たないこ とを示している。多くの中空シャフトにおいては、そのような深さまで浸み込め ば内周面に届いてしまう。このことは、中空シャフトが利用可能な材料強度をよ り効率的に利用しかつ重量を減らすために中空にされていることから、中空シャ フトにとって、特に肉薄の中空シャフトにとって望ましい状態であるということ になる。シャフト断面全体が有用なトルクを伝達しているならば、その断面の一 部に信号磁界を損なわせた後その部分を寄生磁界に寄与させるのではなく、その 断面の全体を信号磁界に寄与させることが道理に適っている。しかしながら、実 用的な問題として、大径のシャフトでさえ約1〜2mmを越える深さまで磁化する ことは極めて困難である。なぜなら、磁界発生源からそれほど遠く離れて十分に 強い磁界を発生させることは困難だからである。 円周方向の磁化を発生させるのに利用可能な手段を考えると、断面全体を成極 する必要が無いことは幸いである。成極の方法及び過程は、その開示が引用の形 で本文に盛り込まれているJ.Appl.Phys.79(8),4756,1996及び米国特許5,35 1,555号の第13〜14欄及び同5,520,059号の第15〜16欄及び第26〜28 欄で説明されている。カラーなしトルク変換器に作用領域を形成するには、さら に2つの考慮が必要である。第1に、作用領域は一般に軸方向に一定の広がりを もち、シャフトに沿った所望の軸方向位置に位置づけられるので、シャフト全体 を通してあるいは中空シャフトを貫通する同軸の導体を通して電流を導く方法は 適さない。一定のはっきり限定された軸方向の長さに電流を流すために様々な構 成が可能であるが、これらの構成は適用可能性を制限するとともに、認め得る長 所がない。近接する勾配の大きな磁界、永久磁石または電磁石を回転させて成極 する方法は、同じ成極装置や成極過程がシャフトの径及び材料の広い範囲で利用 可能であるため、最も好ましい方法である。作用領域の軸方向長及び軸方向位置 は、この方法により、精確に制御可能である。第2に、カラーなしトルク変換器 の成極は従来の“リング付きシャフト”構造の成極よりもはるかに強い励磁磁界 を必要とする。このことは、各構造にそれぞれ適した材料の大ヒステリシスルー プの比較から直接に導き出されるし、一般に、カラーなし構造の方が同じサイズ のシャフトに薄肉のリングを適用した構造よりも励磁磁界の浸み込みがいいこと 、及びカラーなし構造で使用されるシャフトの内部領域がリングを付けて使用す るシャフトよりも高い透磁率を本来備えていることを考慮することによっても導 き出される。近接する透磁性の材料は成極磁石からの磁束を“短絡させ”、効果 的に利用可能な磁界強度を減少させる傾向がある。しかしながら、結果は同じで あり、磁界発生源である磁石と対象物との間の透磁性材料は磁石の磁界から対象 物を遮蔽する。この場合、その表面領域が内部領域を遮蔽して成極深度を制限す る。IEEE Trans.Mag 28(5),2202,1992の図5及びすでに引用した文献J.Appl .Phys.の図5に示すように、フープ応力を受けたリングの大ループは、角形( 一軸異方性)で、一般にわずか数エルステッドの保磁磁界を示す。他方、カラー なしトルク変換器のシャフト材料の大ループは、もっと丸みのある形状(ランダ ムな立方異方性)を有し、約15エルステッドを越える保磁力を示す。保磁力は 35以上であることが好ましい。成極を行うのは磁化を発生させる磁石からの磁 界のうち逆方向の磁界“ローブ(lobes)”であるので、また、これらローブの強 さは正方向の磁界ローブの約25%にすぎないので、さらに、(残留磁化を最大 化するのに必要な)“技術的飽和状態”はシャフト材料の保磁力の少なくとも2 倍の保磁 力を有する磁界を必要とするので、そしてさらに、寄生磁界を極力小さくして安 定性をできる限り高めるためには保磁力が大きい方がよいので、カラーなし構造 にとって強い成極磁石が必要であることは明らかである。十分に大径の中空シャ フトの場合、均一で最深部まですっかり成極された作用領域を得るためには、シ ャフトの内面側と外面側で協働的に作用する成極磁石を採用することが有利であ る。シャフトと成極磁石の代表的な構成を図3に示す。この図では、図1(a)に 示すカラーなし構造のように、磁気的に連続する2つの有極性領域を同時に形成 する成極磁石とシャフトの構成が示されている。磁界を成極する源の数は一般に 形成される有極性領域の数と等しい。 最も単純な実施の形態では、成極磁石は、シャフトが軸線周りのどちらかの方 向に回転している間シャフト表面に接近した状態に維持された主として高エネル ギーの(例えば、サマリウム−コバルト製あるいはネオジミウム−鉄−ボロン製 の)永久磁石からなる。より高い保磁力を有するシャフトを使用する場合は、軟 らかい磁性の“磁極片”がそれぞれ永久磁石に嵌め込まれ、適宜成形され、(シ ャフトに磁束を通すために)利用可能な磁石の起磁力を最大限効率的に利用する よう間隔を置いて配置されていることが望ましい。図3は互いに逆極性で一定の 小さな間隔を置いて軸方向に配置されたそのような2個の成極磁石1,2を示す 。シャフト上の太い矢印は、結果的に発生する円周方向残留磁化方向、すなわち 、共に変換器の作用領域を構成する有極性領域を示す。シャフトの軸に対して垂 直な線は有極性領域の境界部分の予測位置である。なお、これらの領域の幅(軸 方向範囲)は成極磁石の幅より幾分長い。これら互いに逆極性の2個の領域間の ハッチングで示す部分は残留磁化が一方の円周方向から他方の円周方向へ遷移す る副領域(sub-region)である。この遷移領域の幅は、上記2個の成極磁石の間隔 を大きくするだけで望み通りに広げることができる。遷移領域の幅は上記間隔を 小さくすることで狭めることができるが、遷移領域がそれ以上小さくならない最 小限の間隔がある。両磁石1,2が互いに近づくほど、そのそれぞれの磁界は他 方の磁界を弱めてゆく。両磁石が接触するほど近くなると、その界面にはもはや N極もS極も存在しない。したがって、シャフトを成極するために円周方向に適 切な磁界強度が存在する以前に、磁石自体に沿って一定の間隔が存在することに な る。遷移領域の最小限の幅は、成極磁石の実効強さ(effective strength)とシャ フト材料の保磁力とに依存し、前者の増加に応じて減少し、後者の増加に応じて 増大する。遷移領域の最適な幅はトルク依存性の磁界を検出するために使用され る磁界センサの種類、サイズ及び向きに依存する。並行に配置された成極磁石1 ,2を使用した場合に得られるよりもさらに狭い遷移領域を得ることが必要な場 合には、一方の磁石に対する他方の磁石のシャフト軸線周りの角度をずらすこと により、両磁石を互いに弱める相互作用を低減させるのに必要な間隔がもたらさ れる。図3では、便宜上、180度の最大間隔を示す。磁石2を磁石1と並行に する代わりに、磁石2’として仮想線で示す位置まで回転させている。一度に一 つの領域を磁化し、すなわち、1個の磁石1のみを所定の位置に配置した状態で シャフトを回転させた後、磁石1を外し、磁石2を所定の位置に配置してシャフ トを回転させることも可能である。永久磁石を用いる仕組み上、磁石は、シャフ トの回転が停止する前にシャフトに接近した状態から遠ざけられる必要がある( あるいは、各仕組みにおける磁極間に“保磁子”が滑り込まされてもよい)。電 磁石の場合、その“強さ”が調節可能であり、磁石自体も保磁子も物理的に移動 させることなく、電磁石を効果的に“遮断”させることができるので、成極用に 使用すると有利かもしれない。 図4は、(感度、すなわち単位トルクあたりの磁界で測定された場合の)トル ク変換器の性能の(起磁力及び磁気回路抵抗で測定された場合の)成極磁石の“ 強さ”に対する依存性の一例を示す。この図からすぐに分かるように、ほぼ1. 5Aより小さい磁化電流の場合には、トルク依存性磁界は全く存在しない。この ことは、シャフト材料が大きな円周方向残留磁化を発現する前に有効磁界(effec tive field)が一定の臨界強度に達する必要があることを証明している。この臨 界強度は、大きな残留磁化を発現するためには、逆方向の磁界ローブの強さがシ ャフト材料の保磁力に、この場合は44 Oeに近づく必要があるので、シャフト 材料の保磁力に関係がある。言い換えれば、磁界は磁壁の“ピン止め解除”を大 規模に行うために十分な強さを得る必要がある。磁化電流が閾値(この場合、1 .5A)を越えて増加するにつれて、感度が連続的に上昇することがわかる。電 流の増加に応じた感度の上昇率は最初は急激であるが、まもなく減少し、最終的 には 最大値に達する兆候を示している。磁石とシャフトとの間隔を零の状態にして1 2Aと15Aの二個所のデータ点で試験した結果、両者間に0.25mmの間隔を 置いた場合に得られる感度の予想飽和値が、シャフトの残留磁化の真の飽和値よ りも装置の影響をより大きく受けることが示された。この二つのデータ点は、感 度飽和値に達することの困難さと磁化回路の抵抗を極力小さくすることの重要性 とを表している。ここに示す伝達関数は以下の相互作用的な特性と現象が組み合 わされた結果である。 1.ピーク磁化に応じた保磁磁界の成長 2.シャフト材料の保磁力 3.起磁力に応じた臨界磁界振幅の半径方向内側への浸み込み 4.表面からの距離に応じて次第に減少する剪断応力 5.表面からの距離に応じて次第に減少する軸方向磁化 6.より内側の領域から次第に減少する単位トルク当たりの磁界 7.より内側の磁界発生源から次第に増大する磁界センサとの距離 8.成極用磁界強度の増加に応じた遷移領域幅の減少 9.電流の増加に応じた成極用磁界の非線形性(飽和状態) 局部的な円周方向磁化により作用領域がいったん形成されると、シャフトはト ルク変換器としての適切な特徴を与えられ得る。作用領域は二つの分極から構成 されることが好ましい。通常の実施の形態では、印加トルクから発生する残留磁 化の傾斜はそのような磁化の傾斜から発生する磁界の一部の成分の強さに反応す る近接する装置により検出されるが、そのような傾斜に伴う残留磁化の軸方向成 分の変化は、シャフトを取り巻きかつ円周方向の極性を有する領域上の中央に配 置されたコイルに誘導された電圧(起電力)で検出されてもよい。(トルクに比 例する)磁化の軸方向成分は上記誘導起電力を時間で積分することにより復元し 得る。現状の電子技術では、数秒ないし数分程度の短時間にわたって低ドリフト (low drift)を達成することは可能であるが、全くドリフトのない積分手段は存 在しない。にもかかわらず、当該トルクが短時間存在するだけの用途において、 例えば、パルス手段やインパルス手段において、この構成は、特に作用領域に単 一の成極しか有さない構造において実行可能な検出構成である。 図5は、(トルクの印加に伴って発生する)半径方向磁界の関係強度が図4に 示す最高到達可能感度での成極により成極されたシャフトの作用領域に沿う軸方 向位置に応じて変動する様子を示す。この磁界分布の一般的な形状は、互いに逆 方向に向かう軸方向磁化を有する隣接する2つの領域から予測されるほぼ4極性 の磁界と一致する。例えば、この形状は同極性の磁極が隣接した状態で配置され た同軸の2個の棒磁石の周辺の空間で見られる磁界分布の形状である。この図を 詳細に吟味すれば、成極装置の物理的な構成とシャフト材料の磁気特性とをとも に反映する特徴が分かる。例えば、中央のピークは実際には中間に小さな谷を有 する2個のピークであることが分かるだろう。これは、同極性の磁極が幾らか離 れている場合の2個の棒磁石から予測される種類の磁界分布である。それ故、そ れは、大きな幅を有する遷移領域が存在することを明示している。2個のピーク の高さが等しくないのは、おそらく2個の成極磁石がわずかに異なることを示し ている。図4から分かるように、両磁極片とシャフトとの間隔の小さな変化が感 度に著しい悪影響をもたらす可能性がある。磁石表面とシャフトとの間が少しで も平行でなければ、このデータを得るために使用する両磁石がシャフトから精確 に同じ間隔で位置することがなくなり、また、それぞれその幅全体をシャフトに 対して実際に摩擦させることができなくなる。このデータを得るために使用され る両磁石間のスペースの幅は両ピーク間の軸方向の間隔とほぼ同じ2.5mmだっ たので、(遷移領域が磁石間隔より狭い)図3に示す遷移領域の幅と磁石間隔と の関係は明らかに一般的な結果ではない。すでに述べたことから分かるように、 遷移領域は上記の間隔より広くてもよい。他方、±15mmより少しだけ内側の両 位置にある小さい方の(逆極性の)ピーク間の間隔が27.5mmの磁石全体のサ イズを越える時には、(有極性領域が両端で磁石の幅を超えることになる)広い 間隔を有する両磁石のために、遷移領域が磁石間隔より十分に狭くなっていても よい。成極過程をこのように理解すると、感度飽和値に対するよく見られるゆっ くりとした取り組みに対して上記項目8.が寄与していることがこれで理解でき る。両磁石間の空間の幾何学的中心位置にある磁界センサは、両ピーク間の谷の 深さが減少するにつれて感度の上昇を示す。 図5に示す曲線の二重のピークの不完全な対称性は一つの実験結果にすぎない 。 一部の用途では、中央にただ一つの鋭いピークを有していることが望ましいかも しれないが、別の用途では、(例えば、シャフトの軸方向の“遊び”に対する感 度の変動を少なくするために)中央に幅広で比較的平坦なピークを有することが より望ましい場合もある。一般に、そして装置の説明を簡単にするためにも、中 央にただ一つピークを有する対称曲線の方が好ましい。その一方で、二つ、数個 または多数の単一極性領域がシャフトに沿って配分されることが有利な特定の用 途もあり得る。実際には、そのようなシャフトは、様々な特別の目的のために、 同じあるいは逆向き円周方向の分極を有する一つ以上の作用領域を備えることに なる。このような多数領域構成の際だった特徴は、各領域から発生する磁界が近 接空間で互いに依存していないことである。図5に示すような線図は、したがっ て、各有極性領域の端部であるいはその近傍で(同じ振幅を有する)対称的な正 と負のピークを示すことになる。明らかに、一つ以上の有極性領域を有する変換 器においては、1個で複数方向のあるいは複数個で一方向の有極性領域など作用 領域の特徴に差異を設定するのは遷移領域の幅である。 簡単に処理すべき関連の問題として、トルク変換器の性能に対する作用領域の 軸方向範囲による影響がある。作用領域の寸法は二つの観点から考慮する必要が ある。第一点は、当然ながら、トルク検出機能の実現のためにシャフト上で利用 できるスペースはどの程度かという問題である。特定の用途において、あるいは 無関係の磁化可能材料、例えば、玉軸受けや歯車などに近接しているせいで、こ のスペースが厳しく制限されているならば、それが最優先の問題になる。所望の 大きさのスペースが利用可能であれば、作用領域の寸法は一般に所望の感度(す なわち、単位トルクあたりの信号磁界)を達成するように選択される。ここでの 目標は、単に印加トルクのピーク値における磁界強度を最大化することではなく 、むしろ磁界センサ(あるいは軸方向磁化成分センサ)の好ましいタイプと向き に調和する磁界強度を達成することである。高すぎる信号磁界は一部のタイプの 磁界センサを飽和させるばかりか、トルク検出に無関係の機能を果たす機械部分 の隣接強磁性材料を磁化してしまう恐れがある。信号磁界強度は(作用領域の長 さに応じて減少する)減磁率と(作用領域の長さに応じて増加する)軸方向磁化 成分との積であるので、作用領域の長さは磁界強度を左右する決定因子ではない 。 したがって、トルク範囲が大幅に変動する(すなわち、様々なシャフト径を有す る)トルク変換器系が構成される場合には、同じ磁界センサ構造が全てのトルク 変換器に対して採用されるようにするために、全て同じ寸法の作用領域を使用す ることが有利である。シャフト径に対して作用領域寸法の有効範囲は整数倍であ り、たとえば、3mm径の範囲の小さなシャフトの場合にはその径の4倍、20mm 径の範囲のシャフトの場合にはその等倍、100mm径のシャフトの場合にはその 径の0.3倍にしてもよい。1〜1000mm径のシャフトに対して作用領域の長 さを5〜100mmに設定することは考慮すべき有用な意見である。作用領域の軸 方向範囲は、大部分は、作用領域が実用的な磁界を発現させるのに十分な長さが あって、なおかつ市販の実用的な磁界ベクトルセンサで検出可能な適切なサイズ を有するというような実用的な動機から決定される。このような領域の有効な端 部が故意に広げられている場合には、作用領域の“寸法”はそれほど問題にはな らない。設計上の都合は、作用領域の寸法と軸方向位置を決定する際の重要な考 慮点である。一般に、周辺の付随的なあるいは偶発的な磁界源から発生する磁化 の悪影響を避けるようシャフト両端から十分な間隔を置いたシャフト領域に作用 領域を配置することが好ましい。 すでに述べたように、シャフトが有用なカラーなしトルク変換器として作用す るためには、適切に組み合わされた機械的、磁気的及び磁気弾性的特性を有して いる必要がある。普通に手に入る多数の鋼において、適切な特性の組み合わせが 分かっている。強度と延性の適度な組み合わせを有するいくつかの“永久磁石” 合金も、その商業的な入手に制限があること及び相対的にコストが高いことによ って特定の用途に使用が制約されているが、適切な材料である。必要な機械的磁 気的特性の組み合わせを得ることは、化学組成の役割と同じくらい冶金条件の役 割が大きい。したがって、選択されたシャフト材料はほぼ確実に何らかの形の熱 (及び/または機械的)処理を受ける。この処理は、適切な温度への加熱、制御 された速度での冷却(例えば、風焼き、油焼入れ、水焼入れ)、及び低い温度へ の再加熱とさらにゆっくりとした冷却(焼戻しと金属間化合物を析出するための “時効”)からなることが多い。極低温処理も得られた特性を最適化しかつ/ま たは安定化するために適切である。いずれにせよ、このような処理の全ては、材 料の機械強度を高める(耐力強度を上昇させる)ことと同時に磁気的に“硬質に する”(保磁力を上昇させる)ことが目標である。一般に、最終状態の材料が好 ましくは15 Oeより高い、より好ましくは20 Oeより高い、さらに好ましくは 35 Oeより高い、そして理想的には(磁界方向に測定された場合に)最大予想 トルクの印加で発生する最大磁界強度よりも高い保磁力(HC)を有する必要が ある。 カラーなしトルク変換器に適することが分かっている材料の分類例を以下に示 す。各部類の代表的な等級も示す。 1.マルテンサイト系ステンレス鋼(好ましくは自硬鋼) AISI/SAE等級:403,410,414,416,420,431,440A,440B,440C 2.析出硬化系ステンレス鋼(クロム及びニッケル) AISI/SAE等級:15-5PH,17-4PH,17-7PH,PH13-8Mo 3.合金鋼(焼入れ及び焼戻し処理、時には浸炭または窒化処理され る) AISI/SAE等級:4140,4320,4330,4340,4820,9310 代表的な呼称:300M,Aermet 100,98BV40,9-4-20,9-4-30 4.工具鋼(好ましくは焼入れ及び焼戻し処理され冶金的に“純な”高 合金鋼) AISI等級:タイプA,D,H,L,M,O,T,W及び高コバルト高速度工具鋼 5.マルエイジング鋼(高ニッケル、低炭素) 代表的な呼称:18 Ni 250,C-250,Vascomax T-300,NiMark,Marvac 736 6.延性永久磁石材料 代表的な呼称:Vicalloy,Remendur,Cunife,Cunico,Vacozet 7.磁石鋼 代表的な呼称:KS鋼、MT鋼、3.6%Cr鋼、15%Co鋼、タン グステン鋼 8.特殊合金及びその他材料 代表的な呼称:パーメンジュール、アルフェル、アルフェノール、コバ ー、硬引抜ニッケル、硬引抜パーマロイ カラーなしトルク変換器の現在達成可能な性能はリング付きシャフト構造で実 現可能な性能に達していない。伝達関数のヒステリシスが不完全な性能の主な原 因である。にもかかわらず、現在達成可能な性能は多くの用途において十分満足 のいくものである。さらに、正及び負の両方の値を含む広い範囲のヒステリシス が(様々な材料や熱処理の場合に)観察されているので、その性能がさらなる開 発につれて向上することは明らかである。図6は、図4及び図5に示すデータを 得るために使用したものと同じ種類とサイズの高速度鋼材料からなる実験用のカ ラーなしトルク変換器の伝達関数を示す。ヒステリシスがはっきりと存在する点 以外は、この変換器の伝達関数は優れた線形性を示していることが分かる。負荷 が±50N.mまで増加すると、回帰線に大きな変化が見られなくなった。(一般 に低保磁力の材料からなる)他の実験用変換器の伝達関数はさらに高いヒステリ シス値と(最高トルクレベルで傾きを減少させる)飽和の兆候を示した。 本発明の説明を通して明らかになったように、変換器の作用領域に近い磁化可 能な透磁性材料の存在を完全に排除するかあるいは少なくとも最小限にすること が望ましい。米国特許5,351,555号のリング付きシャフトセンサの場合、それは 通常、低透磁率材料のシャフトを使用すること、あるいは例えば低透磁率のスリ ーブを介在させることで所望の透磁率より高い透磁率を有するシャフトから“リ ング”を空間的に分離することによって達成される。カラーなし構造の場合、近 接材料の望ましい低透磁率は、時には作用領域を隣接するシャフト部分から幾何 学的に分離することも行いながら、比較的高保磁力のシャフト材料を使用するこ と により実現される。功を奏するカラーなし構造にとって必要不可欠な特徴は、ト ルクにより生成された磁界の大きさが小さすぎるために作用領域に近接するシャ フト領域に磁化の大きな非可逆的変化を起こさせないことである。 円形に磁化されたトルク変換器のさらにもう一つの実用的要件は、一つ以上の 作用領域がそれぞれ、シャフトの端から端までの長さより短い有効軸方向範囲と シャフト上で識別可能な所在を有していることである。米国特許5,351,555号の リング付きセンサの場合、リングの寸法が作用領域の軸方向範囲を制限している 。そして、作用領域が明らかにリング寸法の範囲内に限定されているので、シャ フト上の作用領域の位置はリングの位置によって自動的に設定される。カラーな し構造の場合、作用領域の軸方向範囲も軸方向位置も、協力関係にある幾何学的 特徴の存否にかかわらず、注入された円周方向残留磁化の細部として設定される 。 カラーなしトルクセンサのさらに別の構造は、作用領域に近接するシャフト材 料内に寄生磁界が発現することを事実上避けるものである。この構造に因れば、 作用領域の近くに磁化可能材料が存在しないようにするとともに、選択されたシ ャフト材料の独自の特性を利用することにより作用領域の一定のサイズと位置と が設定される。適切な材料であれば、それぞれ異なる(変換器の必要動作温度範 囲にわたって)安定した二つ以上の冶金相で存在することができる。そのような 相の一つは作用領域の要件を満たすのに十分な強磁性と磁歪性を有し、もう一方 の相は効果的な磁化不可能性を有する、すなわち実質的に非作用の領域の要件を 満たすのに十分な低透磁率を有する。ここで使用した“実質的に非作用”とは、 磁界に曝されたときに、磁界センサによって分かる正味の磁界のトルク検出目的 での有用性を損なうほどの強さを有する寄生磁界を生じるほどには磁化されない 領域を意味する。これらの相を適切な処理によって任意に作ることが可能ならば 、それぞれ所望のサイズと位置を有する作用及び実質的非作用領域を同じシャフ ト状に共存させることができる。その後、作用領域の該当部分に所望の円形の向 きで円周方向残留磁化を注入させる(すなわち、成極する)だけで、トルク変換 器が作られる。当然ながら、分極を維持する異方性が残留磁化を円周方向の45 度以内に制限することが望ましい。明らかに最も望ましいのは、リング付きシャ フトセンサのリングに注入されているようなこの方向の一軸異方性である。さら に また望ましいのは、カラーなしセンサ構造用に選択されたシャフト材料を特徴づ ける、例えばbcc(体心立方)結晶構造を有する立方構造等、多軸対称性を有 する格子構造の原子配列に伴う結晶磁気異方性である。作用領域が望ましくは実 質的に非作用の領域の横側に接しているにもかかわらず、作用領域の保磁力が高 いままであることは重要である。これにより、印加トルクの結果として生じる磁 界が作用領域内の円周方向成極の大きさを非可逆的に損失させることが防止され る。本発明の先に述べた実施の形態におけるように、保磁力は、15より高いこ とが望ましく、20より高いことが特に望ましく、35より高いことが好ましい 。トルク変換器として使用するために冶金処理されたシャフトの基本構造を、所 望の軸方向寸法及び位置を有する孤立した強磁性磁歪性領域(磁化可能作用領域 )を有するよう処理された一区域を示す図7のセンサに関連して表す。シャフト は、物理的には一片からなり、一般的には全体的に均質な化学組成を有している が、それそれの機能に適した磁気特性を有する作用領域と実質的に非作用の領域 とから構成されている。 多くの固体材料が多形と呼ばれる特徴である1以上の構造的形態で存在するこ とができる。それぞれ異なる多形の(すなわち同質異像の)形態は相を構成する 。ある相から別の相への変態は金属材料ではありふれた出来事である。冷却時あ るいは加熱時の固有の温度で、多くの純金属や合金に相変化が起こることが分か っている。相の変態が起こる臨界温度範囲は、融点に近い温度から絶対零度に近 い温度までの範囲で金属の組成に応じて異なる。一部の相変態は、その最終相は 臨界温度範囲を通して冷却(または加熱)速度に依存することがいっそう多いけ れども、ある期間にわたって等温的に起こる。一部の合金の場合、冷却時に通常 起こる相変態が、冷却のみに必要な温度を遥かに超えた温度で起こるよう機械的 手段により引き起こされてもよい。有効な処理としては、塑性変形、衝撃波、そ して時にはもっと単純な水圧プレスなどが含まれる。冷却時に絶対零度に近い温 度であっても全く起こらない相変態が、このような機械的手段によってより高い 温度で起こることもよくある。そのような冷間加工により引き起こされ得る相変 態の程度は、組成、変形温度(degree of deformation)及び変形速度(rate of de formation)に応じて異なる。冷間加工された材料の熱に起因する相変態は、同じ 組 成を有する変形されていない材料の場合とは異なる温度で発生することが多い。 多くの鉄リッチ合金(フェロアロイ)(iron rich(ferrous)alloys)の場合、大 部分の機械装置の動作温度範囲(−50度から+150度)にわたって安定した 様々な相が非常に幅広い磁気的な特徴を含んでいる。したがって、単一の合金は 、その熱処理及び機械的処理の履歴に対して強磁性依存、常磁性依存(あるいは 反強磁性依存)している相において安定的に存在することができる。共存するそ れぞれ別の強磁性相がその磁気的及び磁気弾性的特性において著しく異なること も可能である。一つの材料の異なる相が、異なる密度、異なる電気抵抗、異なる 弾性係数及びその他異なる物理的特性を持つことも非常に多い。 使用される合金に関係なく、そして、位相変態が引き起こされるのが熱処理の みによってか機械的処理のみによってかあるいはその両方の組合せによってかに 関係なく、シャフトを処理する一般的な方法は、作用及び実質的に非作用の各領 域をそれぞれ所望の相を得るのに必要な別々の処理状態に置くことになる。従っ て、少なくとも一つの処理工程はこれらシャフト領域の一方には局在されるが他 方には局在されない。 局部領域をいくつかの種類の機械変形にかけることは容易に達成される。鍛造 、すえ込み、ローレット切り、表面圧延などの処理において、処理すべき領域の シャフト上の位置及び軸方向範囲を、関係工具類のサイズ及び位置により容易に 制御することができる。衝撃波の集中は、シャフトの所望の領域を適切な爆薬で 包むことにより容易に起こすことができる。軸方向の引張り及び圧縮も適切な締 結装置を用いて局在させることができる。 様々な温度の偏位を局部領域に限定するためには、収束されたエネルギー源の 注意深い使用、断熱、及び加熱または冷却された表面との部分接触が必要である 。これらの技術は、1以上の処理工程の間に単独でもしくは組み合わせて利用さ れてもよい。その基本的な考えを、電流の通過によって加熱されたシャフトを表 す図8の具体例で示す。中央の“冷却”ブロック領域のシャフト温度は冷却され ない端部領域よりも低く維持される。 図示の“冷却”ブロックのサイズ、形状及び複雑性はシャフトのサイズ、冷却 ・非冷却領域間の必要温度勾配及びその勾配が維持されるべき時間に依存する。 小径のシャフトの場合、すなわち熱循環時間が急速な場合、締まり嵌め銅リング (恐らくさらに電気メッキされた)で十分であるかもしれない。銅の高い導電性 により、密閉されたシャフト領域のオーミック加熱が低減される。処理時間が長 く、大きなシャフト及び/または大きな温度勾配の場合には、フィン付きブロッ クによる強制空冷や水冷もしくは冷媒冷却ブロック等など積極的な熱の吸い込み が必要になるかもしれない。更に一様で制御が容易な温度を維持すると同時に必 要電力を削減するために、冷却されないシャフト領域を低熱伝導率を有するファ イバガラス、アスベストまたはその他の材料で断熱することも望ましい。断熱及 び熱吸い込みの使用及び位置は、それより高温の熱処理を必要とするシャフト領 域が作用領域なのか非作用領域なのかに依存する。図8に示す方法以外に、その 他多数の選択的加熱(あるいは冷却)手段があり得る。誘導加熱、放射加熱、加 熱または冷却された液体への部分浸せき、及びエネルギーを局限されたシャフト 領域に伝達するその他の手段も潜在的に利用可能である。 相変態を引き起こす際の塑性変形の効果は温度に依存するので、局部領域の変 態は、シャフト全体に多かれ少なかれ一様な塑性歪みを印加しつつシャフトのそ れぞれ異なる部分を異なる温度に維持するだけで発生する。歪みに起因する相変 態を受ける材料には、それを越えるともはや歪みに起因する変態が起こらない温 度(一般にMdで示す)が存在する。トルク変換器の動作温度範囲が歪みを受け た材料が熱に起因する相変態(Msで示す)を受ける温度より高い場合は、この ような加工熱処理により形成された二つの位相は安定する。相変態を引き起こす 様々な熱的、機械的及び加工熱手段の中からの処理の選択は、各合金系の特性に 左右される。 トルク変換器として有用であるためには、候補材料は、適度の磁気残留成分と 磁気歪みと保磁力を有する一つの安定した相と、(曝される磁界の範囲内で)磁 気歪みの小さい弱い強磁性しか有さないもう一つの相とを備えている必要がある 。幸運なことに、当該温度範囲内でそのような磁気的に異なる安定した相を有す る公知の合金系は多数存在する。例えば、18%ニッケルマルエージング鋼は熱 処理により格段の相違がある磁気特性及び磁気弾性特性を有する様々な冶金状態 にできることが分かっている。一般に、高合金化された、鉄分を多く含む多数の 材 料が、1片からなるトルク変換器を構成するのに将来的に有用となるのに十分な 異なる磁気特性及び磁気弾性特性を有する状態になるまで熱処理及び/または機 械的処理可能である。有用な公知の合金系の例は以下の通りである。 1.低温で存在し得る(通常は高温で存在する)オーステナイトγ相を安定させ るために炭素鋼に多量のマンガン(あるいは他の元素または元素の組み合わせ) を加えることに依るハッドフィールド鋼及びその変形物。オーステナイトは通常 常磁性である。極低温で、一部のオーステナイトは反強磁性を示す。古典的なハ ッドフィールド鋼は12%Mnと1.2%Cで合金された鉄からなる。オーステ ナイトの強磁性マルテンサイトへの変態は室温での冷間加工により実現される。 局部変形を発生させる表面圧延またはその他の処理は、磁化不可能な非作用領域 と軸方向(及び内部方向)に連続する(処理に依存する深さを有する)作用領域 を形成するために使用することができる。この点に関して、注目すべきなのは、 ハッドフィールド鋼は鉄道のレールとして100年以上も使用されており、その 硬く耐摩耗性のあるマルテンサイトが列車の車輪の圧延作用から生まれたという ことである。 2.TRIP鋼。この鋼は一般に高密度の転位を発生させるために温間加工され る(温度Md以上で塑性変形される)。そのオーステナイト構造は室温で(及び それ以下で)維持される。温度Mdより低い温度でさらに塑性変形された場合は 全てマルテンサイトに変態する。TRIP鋼は一般に複合合金であり、鉄以外の 元素を30%以上含むことが多い。これらの元素(代表的なものは、Cr、Co 、Ni、Mo)は一般に磁気歪みに寄与する(そしてしばしば結晶異方性を低下 させる)ので、この合金は磁気弾性的に作用する。さらに、戦車の床板を破る地 雷のような厳しい役務のために開発されたので、群を抜く強度を有している。 3.18−8(18%Cr、8%Ni)の多様な普通ステンレス鋼はその溶液が 焼き鈍しされた状態でオーステナイト結晶構造を有する。正確な合金含有率に依 存して、この系の鋼の多くの結晶構造は、極低温処理、冷間加工またはそれらの 組み合わせにより強磁性マルテンサイトに変態される。一般に、さらに低い合金 含有率を有する合金(例えば、AISI 302)はより高い合金含有率を有する合金 (例えば、AISI 316)よりも容易にマルテンサイトに変態する。この種の合金の 一部は表面加工により硬く耐摩耗性を有するマルテンサイトを成長させるように 処方されている。これらは建設機械や農機具での用途がある。 4.室温でオーステナイト構造を保持するのに十分なクロムとニッケルを含む析 出硬化系ステンレス鋼は時効処理によりマルテンサイトに変態される。時効の間 、“オーステナイト状態の”元素の濃度を低下させる析出物が形成される。 5.ハッドフィールド鋼に似た特性を有する鉄、ニッケル、炭素合金(ニッケル はマンガンより高価であるが)。 本方法によるカラーなしトルクセンサの製造を示すため、1/4”(6.35mm )の外径を有するステンレス鋼継ぎ目なし管(約18%クロムと8%ニッケルを 含むAISI-304)から試験シャフトを製造した。焼き鈍しされたままの状態で、こ のシャフトは本質的に非強磁性(1.1にすぎない透磁率)を有していた。各シ ャフトを回転させながら、適当な時間公知のロール間隔を有する2個の硬化鋼ロ ーラ間に圧入させた。この処理により、表面材料がその降伏強度を超える周期的 な逆方向の曲げ応力を受けた。この塑性変形は、オーステナイトを強磁性マルテ ンサイト(10〜100の範囲の透磁率)に変態させた。この結果、変換器の作 用領域が生じる。ローラ対に対して軸方向にシャフトを移動させることにより、 ローラの表面幅よりも広い軸方向範囲を有する作用領域を生成することができる 。その後、シャフトはそれぞれ、二重構造の領域を有する変換器を作るために、 互いに逆極性の一対の磁石の近接位置で回転させられて円周方向に磁化された。 変換器は、トルクがシャフトに印加された冷間加工領域から発現する半径方向の 磁界を測定することにより試験された。試験結果は、図9に示すように、感度が ロール間隔の減少に応じて上昇することを(ロール間隔が小さいほど冷間加工量 が増大することを)示し、図10に示すように、感度が圧延時間に応じて上昇す る(圧延時間が長いほど冷間加工量が増大する)ことを示している。冷間加工が 多いほどマルテンサイトの形成が増えるので、これらの結果は驚くべきことでは ない。産業上の利用分野 トルク変換器のための通常の全用途に加えて、カラーなし構造は、シャフトの 一片からなる構造および/または作用及び非作用部分の一般的な化学組成が望ま しいあるいは必要な多数の分野及び具体的な用途に特に適している。その一部を 以下で説明する。 1. 腐食性環境にさらされるシャフト。 18%Niマルエージング鋼等の高張力鋼は、引張り応力を受け塩水、特に熱 い酸性の塩水にさらされたときに、応力腐食亀裂を起こしやすい。従来の“リン グ付きシャフト”変換器の場合、装着されたリングが干渉嵌めによるシャフトへ の取り付けの結果としてかなりの引っ張り応力を受けることが多い。カラーなし 構造はリングを持たないので、目的があって引張り応力を受けるシャフト領域は ない。実際には、疲労強度を高める目的で、残留圧縮応力を付与するために高負 荷のシャフト表面をショットピーニングしたり、圧延したり、その他の処理を加 えることは一般的でないことはない。作用領域及び非作用領域の両方が単一の化 学組成であれば、電気的に接触した非類似の金属が電解質にさらされたときに存 在する電流腐食の機会を避けることができる。 2. 非常に大きなトルクを伝達するシャフト。 リング付きシャフト構造の限界トルクはリングとその下のシャフトとの間の界 面の滑りの開始によって決定されることが多い。一片からなる高張力鋼シャフト を使用すれば、そのような滑りの恐れをなくすことができる。 3. 極高温または極低温で、あるいは極端な温度変化の状態で動作するシャフ ト。 一片からなるシャフトを使用すれば、非常に低温の際にリングとその下のシャ フトとの熱膨張(収縮)に差があるせいで接触圧(及び関連するフープ応力)が 弛緩することへの気遣いをなくすことができる。同様に、非常に高温の際にクリ ープ(シャフト及びリング両方の降伏強度の低下及び熱膨張の相違に起因する干 渉の増大に伴う非弾性歪み)のせいで接触圧が弛緩することへの気遣いをなくす ことができる。 4. 繰り返し取り外されたり交換されるシャフト(使い捨てシャフト)。 ねじりはドリル、タップ、リーマ、エンドミル、中繰り棒などの切削工具上で の主要な負荷の態様である。この種の工具は以下の2つの形式、すなわち工具を 回転させるか加工物を回転させるかどちらかの形式で使用される。どちらの場合 でも、工具を通じて伝達されたトルクは、工具の状態(鋭さ、健全性など)だけ でなく、加工物の関係特性と操作環境(加工物の硬さ、その存在、冷却水の存在 と効力、潤滑剤、溝を詰まらせるくずの存在など)を表す。多くの切削工具は、 カラーなしトルク変換器シャフト用に申し分のない材料である高速度鋼から製造 される。作用領域が(チャック手段またはその他の駆動手段または保持手段と切 削領域との間の)利用可能な(露出した)シャンク部分に形成されるともに、相 応しい磁界検出手段が適切に取り付けられるだけでよい。個々の工具が機械に装 着される前に専用の取り付け具において成極されるシステムも予想される。成極 はそのような工具の装着の直前であっても製造中、研磨中または研磨直し中の都 合のいいどの時点であっても行うことができる。工具が回転する用途においては 、磁界検出用の組立体内に成極磁石を組み込むことで前もって磁気状態の調整が なされない工具の使用を考慮することも可能である。これら工具の使用中にくず が発生するので、その検出組立体への侵入を防ぐ構成が作られる必要がある。リ ング付きシャフト構造はこのタイプの大部分の用途に殆ど適合せず、工作機械の 主軸(または他の部分)に装着される変換器にもっと適している。トルク変換器 の機能を切削工具に直接持たせる長所は、機械上で使用される最大の工具に寸法 をあわせるのではなく実際のツールで使用されるトルクの範囲に自動的に寸法を あわせるという点である。 5. トルクが軸方向の位置に応じて変動する“列”シャフト。 1本の軸の複数部分に沿って伝達されているトルクを測定可能であることが望 ましい場合もある。このような用途は、1本の軸が多数の荷重を駆動するために 使用される場合やねじり荷重がシャフト長に沿って連続的に配分される場合に存 在する。前者の例は、1個所でシャフトに印加された駆動トルクが空間的に離れ た多数の個所で多数の歯車、プーリ、スプロケット等を駆動する包装用機械類及 び織機類で見られる。織物・シート製造取り扱い機械はトルク印加の連続的な( 長さ方向の)分布を有するローラ(すなわちシャフト)を利用する。作用領域が 1本の軸の多数個所で容易に作られるようにすることによって、カラーなし構造 はこのシャフトに沿ったトルクの配分を監視し、均一化するなどの制御を行う調 法な手段を実現する。1本の軸に多数のリングを装着することは、特に全て同じ サイズである場合には、少なくとも難しい仕事である。 6. 極小または極大シャフト。端部が大きいシャフト。改造された機械類。 極小シャフト(例えば、直径1mm)上で使用される極小のリングは取り扱いが難 しく、圧入により装着するのも困難である。極端な速度で小さいシャフト群を作 動させるには精確な釣り合いが必要である。極大シャフト(形も長さも)は、リ ングがシャフト端部から離れた位置で軸方向に沿って装着される場合、取り扱い 用の大きな機械類を必要とし、かつ大きい(そして高価な)工具の使用を必要と する可能性がある。所望の変換器位置とシャフト端部との間に存在するフランジ 、軸受けジャーナルまたは他の拡径部分は、シャフト構造にリングを使用するの を困難にあるいは不可能にする。リング(及びおそらくは絶縁用の常磁性スリー ブも)の装着が非常に複雑で、高価であり及び/または時間のかかる現場設置の 機械類は、磁界センサを適切な位置に取り付け、シャフトが普通に回転するのに 必要な位置に磁石が一時的または永久的に支持された状態で所望の領域を成極す るだけで、トルク変換器機能を使用して仕事が修正されてもよい。その例として 、船のプロペラシャフト、圧延機のシャフト、大きなモータ、発電機、ポンプ及 びギヤボックスのシャフトがある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U Z,VN,YU,ZW

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.部材の軸方向に延びる軸線周りに印加されたトルクを示す出力信号を出力す る磁気弾性トルクセンサであって、 上記部材内で単一の円周方向に成極されるとともに、上記部材に対してトルク を印加した後にトルクが零になったときに磁化を上記単一の円周方向に戻すよう 充分な磁気異方性を有しており、それにより上記トルクに応じて変動する磁界を 生成する第一磁気弾性作用領域と、 上記磁気弾性作用領域に近接しかつこれに対向する位置に取り付けられ、上記 磁界の大きさを検出してこの大きさに応じた出力信号を出力する磁界センサ手段 とを備え、 上記部材の少なくとも上記磁気弾性作用領域は、局部的な磁化分布の少なくと も50%が上記単一円周方向を中心に対称的に配置された90度の四分円の中に 存在する多結晶材料から形成されているとともに、上記磁気弾性作用領域から生 じた磁界が上記磁気弾性作用領域に近接する部材領域を磁化することにより上記 磁界センサ手段によって検出される正味の磁界のトルク検出にとっての有用性を 損なうほどの強さの寄生磁界を発生させないだけの充分に高い保磁力を有してい る磁気弾性トルクセンサ。 2.上記第一の磁気弾性作用領域と軸方向に区分され磁気的に連続するとともに 上記第一の作用領域の成極方向と逆の円周方向に成極された少なくとも一つの磁 気弾性作用領域をさらに備えている請求項1に記載の磁気弾性トルクセンサ。 3.上記部材は立方対称性を有する多結晶材料から形成されている請求項1記載 の磁気弾性トルクセンサ。 4.上記部材はマルテンサイト系ステンレス鋼、クロムとニッケルを含む析出硬 化系ステンレス鋼、焼入れ及び焼戻し処理合金鋼、工具鋼、高ニッケル含有マル エイジング鋼、延性永久磁石材料、磁石鋼、パーメンジュール、アルフェル、コ バー、硬引抜ニッケルおよび硬引抜パーマロイからなる集まりから選択された材 料から形成されている請求項3記載の磁気弾性トルクセンサ。 5.上記部材は、上記多結晶材料から形成されているとともに、上記磁気弾性作 用領域から生じた磁界が上記磁気弾性作用領域に近接する部材領域を磁化するこ とにより上記磁界センサ手段によって検出される正味の磁界のトルク検出にとっ ての有用性を損なうほどの強さの寄生磁界を発生させないだけの充分に高い保磁 力を有している請求項1記載の磁気弾性トルクセンサ。 6.上記部材が中実の細長いシャフトである請求項1記載の磁気弾性トルクセン サ。 7.上記部材が中空の細長いシャフトである請求項1記載の磁気弾性トルクセン サ。 8.上記部材はその両端間に軸方向に延びる拡径部を有する細長いシャフトであ って、上記磁気弾性作用領域は上記拡径部に形成されている請求項1記載の磁気 弾性トルクセンサ。 9.上記部材はその両端間に軸方向に延びる減径部を有する細長いシャフトであ って、上記磁気弾性作用領域は上記減径部に形成されている請求項1記載の磁気 弾性トルクセンサ。 10.上記減径部は大径の両端部分に一体に取り付けられた別個のシャフトであ る請求項9記載の磁気弾性トルクセンサ。 11.上記部材の保磁力が15 Oeより大きい請求項1記載の磁気弾性トルクセ ンサ。 12.上記部材の保磁力が20 Oeより大きい請求項1記載の磁気弾性トルクセ ンサ。 13.上記部材の保磁力が35 Oeより大きい請求項1記載の磁気弾性トルクセ ンサ。 14.上記磁界センサ手段がソリッドステートセンサを備えている請求項1記載 の磁気弾性トルクセンサ。 15.上記磁界センサ手段がホール効果センサを備えている請求項14記載の磁 気弾性トルクセンサ。 16.上記磁界センサ手段がフラックスゲート磁力計を備えている請求項1記載 の磁気弾性トルクセンサ。 17.上記磁界センサ手段は上記磁界の極性を検出するよう上記磁気弾性作用領 域に対して対向して設けられている請求項1記載の磁気弾性トルクセンサ。 18.上記磁界センサ手段は上記磁気弾性作用領域に近接する定位置に設けられ ている請求項17記載の磁気弾性トルクセンサ。 19.上記センサ手段は上記領域の端部近くに位置している請求項17記載の磁 気弾性トルクセンサ。 20.上記センサ手段が少なくとも2個のセンサを備え、少なくとも1個のセン サが上記領域の各端部近くに位置している請求項17記載の磁気弾性トルクセン サ。 21.上記磁気弾性作用領域は、上記部材にトルクが印加されていないとき、磁 化の正味の軸方向成分がない円周方向の磁気配向を有している請求項1記載の磁 気弾性トルクセンサ。 22.上記磁気弾性作用領域は、上記部材にトルクが印加されたとき、円周方向 及び軸方向の両方向の成分を含む螺旋状の磁気配向を有しており、上記磁界セン サ手段は上記磁化の軸方向成分から生じた磁界を検出するように配置されかつ方 向付けられている請求項21記載の磁気弾性トルクセンサ。 23.軸方向に延びるトルク部材に印加されるトルクを検出する方法であって、 上記部材内で単一の円周方向に成極されるとともに、上記部材に対してトルク を印加した後にトルクが零になったときに磁化を上記単一の円周方向に戻すよう 充分な磁気異方性を有する第一磁気弾性作用領域を上記部材に設ける工程と、 上記部材にトルクを印加して磁界を発生させる工程と、 上記磁気弾性作用領域の近接位置で、上記部材に印加されたトルクの大きさの 指標として磁界の大きさを検出する工程とを備え、 上記部材の少なくとも上記磁気弾性作用領域は、局部的な磁化分布の少なくと も50%が上記単一円周方向を中心に対称的に配置された90度の四分円の中に 存在する多結晶材料から形成されているとともに、上記磁気弾性作用領域から生 じた磁界が上記磁気弾性作用領域に近接する部材領域を磁化することにより上記 磁界センサ手段によって検出される正味の磁界のトルク検出にとっての有用性を 損なうほどの強さの寄生磁界を発生させないだけの充分に高い保磁力を有してい るトルク検出方法。 24.上記部材に対するトルクの印加は上記磁気弾性作用領域に円周方向及び軸 方向の両方向の磁化成分を含む螺旋状の磁気配向をもたらし、上記検出工程は上 記磁化の軸方向成分から生じた磁界の検出を含む請求項23記載の方法。 25.上記第一の磁気弾性作用領域と軸方向に区分され磁気的に連続するととも に上記第一の作用領域の成極方向と逆の円周方向に成極された少なくとも一つの 磁気弾性作用領域をさらに設ける工程を含む請求項23記載の方法。 26.上記部材は立方対称性を有する多結晶材料から形成されている請求項23 記載の方法。 27.上記磁気弾性作用領域の保磁力が15より大きい請求項23記載の方法。 28.上記検出工程は、上記磁界検出装置を少なくともその一部が上記磁気弾性 作用領域に近接しかつ該領域から離間するように配置することにより行われる請 求項23記載の方法。 29.軸方向のトルクに応じて変動する磁界を作るためにトルクが印加される部 材を利用して、上記磁界の大きさを検出して印加トルクを示す出力信号を出力す る磁気弾性トルク変換器を作る方法であって、 上記部材に第一磁気弾性作用領域を有する強磁性かつ磁歪性の部材を設ける工 程と、 励磁磁界内の上記領域の一定の軸方向範囲に対し単一の円周方向の成極を行う 工程とを備え、 上記領域は上記部材に対してトルクを印加した後にトルクが零になったときに 上記領域の磁化を上記単一の円周方向に戻すよう充分な磁気異方性を有しており 、 上記部材は、局部的な磁化分布の少なくとも50%が上記単一の円周方向を中 心に対称的に配置された90度の四分円の中に存在する多結晶材料から形成され ているとともに、上記磁気弾性作用領域から生じた磁界が上記磁気弾性作用領域 に近接する部材領域を磁化することにより上記磁界センサによって検出される正 味の磁界のトルク検出にとっての有用性を損なうほどの強さの寄生磁界を発生さ せないだけの充分に高い保磁力を有しているトルク検出方法。 30.上記部材は長手方向の軸を有し、上記成極は上記変換器を互いに逆極性の 2個の磁極の近傍の励磁磁界にさらした状態で上記部材の軸回りに回転させるこ とにより行われる請求項29記載の方法。
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