JP2000511046A - 単離されたウリジンジホスホ―グルクロノシルトランスフェラーゼの性質とその使用 - Google Patents
単離されたウリジンジホスホ―グルクロノシルトランスフェラーゼの性質とその使用Info
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Abstract
(57)【要約】
ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17(UGT2B17)を提供する。この酵素を調製する方法およびこの酵素を用いて、当該酵素の活性を阻害もしくは変化させる物質を検出する方法を開示する。さらに、当該タンパク質を検出するための、抗体を使用する方法、遺伝子配列またはその一部をプローブとして用いる方法、または遺伝子配列を、自身の発現を乱すセンスもしくはアンチセンスDNAフラグメントまたはアンチセンスRNAを調製するために用いる方法もまた、提供する。
Description
【発明の詳細な説明】
単離されたウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼの性質とその
使用
発明の背景
発明の分野
本発明は、ウリジンジホスホ-グルクロン酸から多種多様な脂溶性薬物、環境
化学物質および内因性物質へのグルクロン酸の転移を触媒する酵素ファミリーに
属する新規酵素の単離、特徴づけおよび使用に関し、より具体的には、アンドロ
ゲン化合物(特にC19ステロイド)を抱合することが見出された新規ウリジンジ
ホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)(以下UGT2B17)の特徴づけ
と、それをコードするcDNAの単離に関する。また、アッセイにおけるこの酵素の
使用と、上記DNA、そのフラグメント、そのアンチセンスフラグメント、および
それに対する抗体の各使用法についても記述する。
関連技術の説明
UGTと呼ばれる酵素は、グルクロン酸がウリジンジホスホ-グルクロン酸から多
種多様な脂溶性薬物、環境化学物質ならびにビリルビン、ステロイドホルモンお
よびチロキシンなどの内因性物質に転移されるグルクロン酸抱合過程を触媒する
酵素ファミリーである。一般にグルクロン酸抱合は肝臓と腎臓で起こり、グルク
ロニド誘導体が体内から排除される原因となる。しかしUGT活性は、前立腺、精
巣、皮膚、胸部、脳および卵巣組織を含む数多くの組織と、胸部および前立腺の
腫瘍細胞系でも確認されている。
UGT酵素ファミリーはUGT1とUGT2の2つのサブファミリーに分類されている。
UGT1ファミリーは一般に平面的で嵩高いフェノール基質とビリルビンのグルクロ
ン酸抱合に関与することが知られているが、UGT1ファミリーに属するいくつかの
酵素はエストロゲンを抱合することができる。UGT2ファミリーの酵素は2つのサ
ブファミリー、すなわち嗅上皮で発現される遺伝子がコードする酵素を含むUGT2
Aと、胆汁酸、C19ステロイド、C18ステロイド、脂肪酸、カルボン酸、フェノ
ール類およびベンゾピレンや2-アセチルアミノフルオレンなどの発がん物質のグ
ルクロン酸抱合を触媒する酵素を含むUGT2Bに分類される。UGT2Bファミリーに属
する酵素は数種類がヒトの肝臓から単離され、特徴づけられている。これらのUG
T2B酵素はその基質特異性に部分的重複があることがわかっている。
本発明は、UGT2Bファミリーの構成要素であって以下に詳述する新規UGTに関す
る。
発明の要約
本発明の目的は、UGT2B17と呼ばれる新規ウリジンジホスホ-グルクロノシルト
ランスフェラーゼ(UGT)を提供することである。
また、C19ステロイドをその3α-ヒドロキシ基または17β-ヒドロキシ基で抱合
することが明らかになったUGTを提供することも、本発明の目的である。
本発明のもう1つの目的は、アンドロステロンのアンドロステロン-グルクロン
酸への変換に関与するUGTを提供するこである。
また、アンドロゲン化合物、特にアンドロステロン(ADT)、テストステロン
、ジヒドロテストステロン(DHT)およびアンドロスタン-3α,17β-ジオール(3
α-ジオール)を含むC19ステロイドと、オイゲノール、4-メチルウンベリフェロ
ンに対して特異性を持つUGTを提供することも、本発明の目的である。
本発明のさらなる目的は、UGT2B17のヌクレオチド配列を提供することである
。
また、UGT2B17酵素の活性を阻害する化合物を同定するためのアッセイでUGT2B
17を使用する方法、もしくはUGT2B17酵素を検出および定量するためにUGT2B17に
対する抗体を使用する方法を提供することも、本発明の目的である。
本明細書では、これらの目的とその他の目的について論じる。
具体的には、新規ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ
UGT2B17を同定し、特徴づけた。UGT2B17の一次タンパク質構造は530個のアミノ
酸(配列番号2)を含み、53キロダルトンの見かけ分子量(SDS-PAGEで測定した
場合)を持つことがわかった。このタンパク質は、次に示す配列(配列番号1お
よび2)の(5'から3'の方向に番号を付けて)ヌクレオチド+52から、停止コド
ンを含めて1644まで(アミノ酸1から530まで)によってコードされる。 1590塩基の上記オープンリーディングフレームには、51塩基対の5'非翻訳領域
と463塩基対の3'非翻訳領域が隣接している。この配列のさらなる詳細について
は後述する。
本発明は、UGT2B17の合成生産法、ならびに生物学的に機能が均等なペプチド
、UGT2B17に対する抗体、および本酵素を検出し定量するための当該抗体の使用
を包含する。
UGT2B17をコードするヌクレオチド配列と、その配列を含む組換え発現ベクタ
ーには、それらが機能的に均等な酵素をコードし続ける限り、改変を加えること
ができる。さらに本発明では、コード領域内のコドンを(なかんずく遺伝コード
の縮重ゆえに同じタンパク質をコードし続けるような方法で)変異させることも
考えられる。配列番号1に類似するヌクレオチド配列、もしくは配列番号1のコー
ド領域(またはその相補鎖)に厳密な条件下でハイブリダイズするヌクレオチド
配列は、その類似するヌクレオチド配列の長さが少なくとも1500ヌクレオチド、
最も好ましくは少なくとも1590ヌクレオチドである場合はとりわけ、配列番号1
のコード領域がコードするものと機能的に均等なUGT2B17をコードするだろうと
考えられる。本明細書において「厳密な条件」とは、特に明示しない限り、0.1
×SSC(0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)と0.1%ドデシル硫
酸ナトリウム(SDS)および60℃を意味する。
また、ヒトもしくはヒト以外の起源を持つ組織または細胞、特にステロイドを
含む組織または細胞は、本発明に従って使用しうる程度にヒトUGT2B17に類似し
たUGT2B17を含むだろう。具体的に述べると、他の種で類似するcDNAを同定する
には、上述のような細胞から調製されたcDNAライブラリーを、よく知られる技術
に従い、様々な厳密度で、ここに開示するヌクレオチドを参照して調製されたプ
ローブを用いてスクリーニングすればよい。これらの類似cDNAは配列番号1と好
ましくは少なくとも92%相同であり、最も好ましくは少なくとも95%相同である。
それらは好ましくは少なくとも10ヌクレオチド長の完全に同一な区間を含み、よ
り好ましくは完全に同一な15または20、さらには30ヌクレオチドの区間を含む。
適当なプローブは配列番号1または適当な長さ(好ましくは少なくとも15ヌクレ
オチド長)のそのフラグメントから調製することができる。少なくとも2種類の
異なるプローブで確認することが好ましい。また、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR
)増幅法などの他の単離法も使用できる。
このようにして得られる相同なUGT2B17とそれらをコードする遺伝子は、それ
ぞれ配列番号2と配列番号1の使用法のすべてに、本発明に従って使用することが
できる。
組換え発現ベクターは、配列番号1に示すようなUGT2B17の全コード領域、本明
細書で論じるように改変されたUGT2B17のコード領域、ヒトUGT2B17のコード領域
もしくは他の動物に由来する上述のような類似コード領域の一部、UGT2B17に対
するアンチセンス構築物、またはUGT2B17に対するアンチセンス構築物の一部を
含みうる。
本発明に関して「単離された」とは、自然界に存在する時よりも高い純度を持
つことを意味するが、天然の供給源からの精製を必要とはしない。UGT2B17をコ
ードする単離されたヌクレオチドは合成的に作ることもできるし、UGT2B17をコ
ードするmRNAから調製されたcDNAライブラリーから得られるcDNAを単離すること
によって、あるいは当技術分野で知られる他の任意の方法によって作ることもで
きる。
一態様として本発明は、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラー
ゼ2B17をコードする単離されたヌクレオチド配列であって、配列番号1のコード
領域またはその相補鎖に厳密な条件下でハイブリダイズできる程度に配列番号1
またはその相補鎖に相同であり、かつ、アンドロステロンのアンドロステロン-
グルクロン酸への変換を触媒する酵素をコードする配列を提供する。
さらなる態様として本発明は、少なくとも配列番号1のコード領域またはその
相補鎖中の連続する30ヌクレオチドと同一な連続する30ヌクレオチドを含む単離
されたヌクレオチド配列を提供する。
さらなる態様として本発明は、配列番号1のヌクレオチド52から927までを含む
ヌクレオチド配列を提供する。
もう1つの態様として本発明は、配列番号1のヌクレオチド204から723までを含
むヌクレオチド配列を提供する。
さらなる態様として本発明は、配列番号1を含む単離されたヌクレオチド配列
を提供する。
さらなる態様として、配列番号1によってコードされるタンパク質が提供され
る。
もう1つの態様として、配列番号2をコードする単離された核酸が提供される。
さらなる態様として、配列番号2に示すアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を持
つ単離されたウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17酵素が
提供される。
もう1つの態様として本発明は、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフ
ェラーゼ2B17をコードするコード配列に作動可能に連結されたプロモーター配列
を含む発現ベクターであって、該コード配列が配列番号1のコード領域またはそ
の相補鎖に厳密な条件下でハイブリダイズできる程度に配列番号1またはその相
補鎖に相同であり、かつ、該コード配列がアンドロステロンのアンドロステロン
-グルクロン酸への変換を触媒する酵素をコードするものを提供する。配列番号1
と、配列番号2をコードするその他のDNA配列は、本発明ベクターのコード領域と
して使用できる。
さらなる態様として本発明は、上述のベクターで形質転換または形質移入され
た宿主細胞を提供すると共に、請求項3のベクターで形質転換または形質移入さ
れた組換え宿主を調製する段階と、該宿主によるウリジンジホスホ-グルクロノ
シルトランスフェラーゼ2B17の産生を招く条件下に該宿主を培養する段階とを含
むウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17の生産法を提供す
る。
さらなる態様として本発明は、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフ
ェラーゼ2B17またはその抗原性フラグメントを含む固定化抗原組成物と、該固定
化抗原と該抗原に対する抗体の複合体を検出するための手段とを含んでなる、ウ
リジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17に対する抗体を検出す
るためのキットを提供する。
さらなる態様として、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2
B17またはその抗原性フラグメントに対する抗体を含む固定化抗体組成物と、該
固定化抗体とウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17の複合
体を検出するための手段とを含んでなる、ウリジンジホスホ-グルクロノシルト
ランスフェラーゼ2B17を検出するためのキットが提供される。
もう1つの態様として本発明は、精製または組換えジホスホ-グルクロノシルト
ランスフェラーゼ2B17に対する抗血清を提供する。
さらなる態様として本発明は、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフ
ェラーゼ2B17を投与する段階を含む、組織中のアンドロゲン化合物の濃度を変化
させる方法を提供する。
さらなる態様として本発明は、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフ
ェラーゼ2B17の局所濃度を検出する方法であって、該ウリジンジホスホ-グルク
ロノシルトランスフェラーゼ2B17に対する標識抗体を投与した後、該標識を検出
することからなる方法を提供する。
もう1つの態様として本発明は、配列番号1のコード領域またはその相補鎖中の
少なくとも30残基の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を導入する段階を
含む、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17の合成を遮断
する方法を提供する。
さらなる態様として、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ
2B17を投与する段階を含む、組織中のアンドロゲン活性を変化させる方法が提供
される。
さらなる態様として本発明は、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフ
ェラーゼ2B17の濃度を測定する段階を含む、試料中のアンドロゲン活性のレベル
の変化を検出する方法を提供する。
もう1つの態様として本発明は、試験試料中のウリジンジホスホ-グルクロノシ
ルトランスフェラーゼ2B17を検出する方法であって、該試験試料をウリジンジホ
スホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17に対する抗体と接触させ、該抗体
と該ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17との免疫複合体
の形成を測定することからなる方法を提供する。
もう1つの態様として本発明は、試験試料中のウリジンジホスホ-グルクロノシ
ルトランスフェラーゼ2B17に対する抗体を検出する方法であって、該試験試料を
ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17と接触させ、該抗体
と該ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17との免疫複合体
の形成を測定することからなる方法を提供する。
本発明のその他の特徴と利点は、添付の図面に言及する次の本発明の説明から
明らかになるだろう。
図面の簡単な説明
図1は、ウリジングルクロノシルトランスフェラーゼの役割を説明する、ステ
ロイド産生のスキームを示す概略図である。
図2は本発明によって宿主細胞を形質移入するために使用可能な物の一例であ
る、pCMVベクターのマップである。
図3はUTG2B17のアイドロゲン化合物に対する特異性を測定したアッセイの結
果を示す。
図4Aおよび図4Bはそれぞれ、ADTとDHT、および3α-ジオールとテストステロン
(TESTO)のラインウィーバー-バークプロットである。
図5は様々な組織における、UGT2B17の有無を示す、サザンブロットである。
発明の詳細な説明
グルクロン酸抱合は、ステロイド代謝経路における、非可逆的酵素反応であり
、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)に触媒されている
。UGTはウリジンジホスホ-グルクロン酸の糖酸成分とステロイドとの抱合反応を
触媒している。ステロイド-グルクロナイド(-G)の形成により、アンドロゲンが
完全に不活性化されることが知られている。従って、UGT酵素は組織内の物質の
濃度を調節するのに用いることができる。
UGT2B17酵素をコード化するcDNAを単離され、530アミノ酸を有するタンパク質
をコード化する、分子量53キロダルトンのものであることがわかった。コード領
域は、ヌクレオチド+52位から1644位であり、ここにはストップコドンを含む(
そしてアミノ酸+1から530までをコード化する)。この番号付は5’から3’方
向へと成されている。このタンパク質構造には、小胞体中へタンパク質を導く疎
水性シグナルペプチドをアミノ酸5から12の位置に有する。さらに、リーダー配
列は正荷電リジンを第4位に有し、23位のシステイン残基にある分割可能部位に
て終了している。さらに、UGT2B17は疎水性膜透過領域をアミノ酸494と510の間
に有しており、これに続いて正荷電リジン残基が存在している。UGT2B17はまた
、3つのアスパラギンリンクグリコシレーション部位(NXS/T)と成り得る部位を
、をアミノ酸65、316および483位に有している。
ステロイド合成の一般的な概略図およびUGTの役割を図1に説明した。図1中、E
Rはエストロゲン受容体、ARはアンドロゲン受容体、E1はエストロン、E2はエ
ストラジオール、HSDはヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、およびDHEAは
デヒドロエピアンドロステロンを示す。
酵素のカルボキシ末端領域、即ちアミノ酸290から530を含有する領域には、ウ
リジンジホスホ-グルクロン酸(UDPGA)との結合に臨界的なドメインを含有するこ
とが示されている。さらに、基質特異性のドメインはアミノ末端領域、特にアミ
ノ酸54と227の間にあることが示されている。
UGT2B17酵素は、この遺伝子のコード領域のヌクレオチド配列をベクターへ取
りこませ、酵素の発現能を有する宿主系へこのベクターを形質転換もしくは形質
移入させることによって、産生することができる。DNAは宿主内にて保持される
か、または安定に宿主細胞のゲノム中に取りこまれる。
詳細には、UGT2B17の発現をクローニングするために、いかなる従来の発現ベ
クター、例えばプラスミドなど、を使用してもよい。ベクターは、λgt11および
λEMBL3のごときバクテリオファージλ、pBR322のごとき大腸菌株およびブルー
スクリプト(ストラタジェン)のごとき原核発現ベクターであっても、pCMVファミ
リー内の真核性ベクターであってもよい。単離したUGT2B17のヒトcDNA(配列番号
1のヌクレオチド36から1870)を導入したベクターを、ブダペスト条約に基づい
てアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC,米国メリーランド州ロック
ビル)に寄託した(ATCC寄託番号98228)。本寄託菌は、本特許出願に基づく特許権
の発効と共に第三者に分譲可能となる。遺伝子はまた、ヒト前立腺およびLNCaP
(ヒト前立腺アデノカルシノーマセルライン)細胞cDNAライブラリーを、配
列番号1の全体もしくは一部から誘導されたプローブを用いてスクリーニングす
ることによって得ることも可能である。
本発明を実施するために用い得るベクターは一般に、形質転換先の宿主系に適
合性を有する複製および調節配列を有している。プロモーター配列が、一般に含
まれる。原核生物の場合、代表的なプロモーターとしてはβ-ラクタマーゼ、ラ
クトースおよびトリプトファンが挙げられる。哺乳類の細胞で通常使用されるプ
ロモーターとしては、アデノウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)およびシミ
アンウイルス40(SV40)が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは任意
に複製起点、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニレーション
部位、転写終結配列および/または選択可能マーカーを含有してもよい。本発明
の実施に用いることができる様々な性質を有する様々なベクター系がある。本発
明の実施に使用し得るベクターの1例として、pCMVベクターのマップを図2に示し
た。
酵素を発現することが知られている、よく知られている宿主系であって、UGT2
B17遺伝子を有する適当なベクターを形質移入し得るものは、本発明の実施に用
い得る。このような宿主系には、原核生物宿主、例えば大腸菌、バチルス・ズブ
チリスのごとき杆菌もしくはサルモネラ、セラチアおよびシュードモナス種のご
ときその他の腸内細菌を含む。真核生物微生物、例えば培養酵母もまた用い
ることができる。最もよく使用されるのが、サッカロマイセスセレビジューであ
るが、他の種も市場で入手でき、また使用できる。さらに、哺乳類細胞から誘導
された細胞培養物もまた、増殖させることができる。好ましい宿主セルラインに
は胎児腎臓(293)、SW-13,チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、HeLa、骨髄
腫、ジャーカット細胞(Jurkat)、COS-1、BHK、W138およびマディン-ダービーイ
ヌ腎臓(MDCK)を含む。本発明の実施には、293細胞が好ましい。
本明細書に開示のごとく組換えにより調製したものであっても、天然から精製
したものであっても、あるいは他の方法にて調製したものであっても、UGT2B17
はこの酵素活性を阻害する、あるいは変化させる化合物の同定に用いることがで
きる。特に、UGT2B17はグルクロン抱合反応を触媒することが知られているため
、この酵素はこの反応を妨害する化合物を同定するのに用いることができる。宿
主細胞での発現の後、酵素を含有する粗ホモゲネートを調製して、組換え宿主か
ら直接酵素を得るのが好ましい。次いでアドレステロンのごとき酵素の基質、お
よび試験しようとする化合物をこのホモゲネートと混合する。試験化合物の存在
、不存在における、酵素活性を比較する。ある時間の間の基質および生成物の相
対量を容易に知るための、基質の活性に及ぼす試験化合物の効果を示す数多くの
方法が知られている。例えば、基質が生成する生成物にも標識が残るよう、基質
を標識化することが可能である。C14またはH3のごとき放射活性標識は、定量的
に分析でき、特に好ましい。
酵素、試験化合物および基質の混合物を、予め定めた時間インキュベートする
ことが、好ましい。さらに、より分析を容易にするために、生成物は基質から分
離するのが好ましい。数多くの分離手法が知られており、例えば簿相クロマトグ
ラフィー(TLC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光光度法、ガスクロマ
トグラフィー、マススペクトロホトメトリーおよび核磁気共鳴(NMR)のごとき方
法が挙げられる。さらに基質と生成物とを区別することができる、他のいかなる
方法を用いてもよい。
さらに、本願タンパク質またはそのフラグメントを含む組成物、もしくは該タ
ンパク質もしくはその抗原性フラグメントに対する抗体を含む組成物を調製する
こともできる。かかる組成物を、UGT2B17抗体もしくはUGT2B17が含有されている
と予測される体液もしくは組織のごとき試料と接触させる。接触させた後、抗原
/抗体複合体が形成されている程度を、公知の方法にて測定すればよい。
抗原/抗体複合体の生成を検出する好ましい手法には、酵素結合免疫吸着検定
法(ELISA)、間接蛍光アッセイ、ラテックス凝集、ラジオイムノアッヤイ(RIA)お
よびリポソームベースのアッセイが含まれるが、これらに限定されない。ウエス
タンブロット技術を用いてもよく、この場合には、バンドが可視で調べられ、濃
いバンドの実質的な出現が、陽性の指標となる。さらに、インビボアッセイも用
いることができるが、この場合には、該抗原に対する標識抗体がUGT2B17の存在
をインビボで検出するのに用いられる。
本発明の好ましい態様においては、本発明の抗原または抗体組成物を固定化し
て、試験しようとする試料と接触させる。試料および結合していないあらゆる抗
体もしくは抗原を洗浄除去した後、標準的な方法を用いて、抗原抗体の結合の程
度を測定すればよい。
必須ではないが試験のための試料を本発明の抗原もしくは抗体組成物と接触さ
せる前に、抗原もしくは抗体組成物は従来の手法(例えばELISA)を用いて固定化
するのが好ましい。ある態様においては、以下に詳しく述べるリポソームベース
のアッセイが用いられる。従来の方法による固定化には例えばポリスチレンプレ
ートを本発明によって調製した抗原または抗体縣濁液と接触させることが挙げら
れる。または、例えば電気泳動ゲル上にタンパク質のバンドとして単離された抗
原を、公知の方法でニトロセルロース製シートに写し取ってもよい。トウビン(
Towbin)ら、Proc.Nat'l.Acad.Sci.,76:4350-54(1979);バーネット(Burnette)
ら、Biochem.112:195-203(1981)。抗原もしくは抗体を実質的に不活性な基質上
へ固定化するための数多くの他の方法が当業者に知られている。
結合された本発明の抗原を、好ましくはUGT2B17に対する抗体の存否について
の試験をしようとする試料を含んだ希釈液と接触させる。抗原および試料は好ま
しくは少なくとも5から15分間インキュベートする。ヒトの体温である約37℃
付近でインキュベーションを行う場合は、時間を短くできる。他の温度、例えば
4℃でのインキュベーションでも可能であるが、追加のインキュベーション時間
が必要となる。37℃における好ましいインキュベーション時間は、約5分から約
90分である。結合させた抗原は、次いでリンスして結合していないすべての抗体
、即ちこの抗原に特異性を有していない抗体を除く。好ましくは、リンスはPBS
T、PBS TTまたはトリス/ツイン/塩化ナトリウム/アジドのごとき緩衝液にて行う
。複数回のリンスが好ましい。
インキュベーションの間に、UGT2B17特異的抗体は固定化抗原に結合して抗原
/抗体複合体を形成する。すべての非結合抗体はリンス工程において実質的に除
かれる。本発明の抗原は高い特異性を有しているため、UGT2B17に特異的でない
抗体はリンスによって実質的に除かれる。当然のことながら、試料がUGT2B17特
異的抗体を含有しない場合は、固定化抗原には実質的にヒト抗体が結合せず、続
く抗原/抗体複合体検出試験においてかかる複合体の実質的な存在が示されるこ
とはない。一方、試験試料にUGT2B17特異的抗体が豊富に含まれている場合には
、これらの抗体は固定化抗原に結合して大量の抗原/抗体複合体を形成し、次い
で検出される。
抗原/抗体複合体の検出は、広く様々な公知の手法を用いて行えばよい。好ま
しい方法には、酵素結合免疫吸着検定法、ラテックス凝集反応、ウエスタンブロ
ット手法または間接蛍光免疫アッセイが含まれるが、これらに限定はされない。
典型的には、固定化抗原と複合体を形成したUGT2B17特異的抗体は、検出する
免疫グロブリン(即ち抗-UGT2B17)に特異的であって、標識化した、あるいは他の
方法にて検出可能とした第2抗体と接触させて検出する。例えば試験試料がヒト
血清である場合、この検出可能な第2抗体はヒト免疫グロブリンに特異的である
。標識化第2抗体はIgGあるいはIgAなど、いずれのヒト抗体に対して特異的なも
のであってもよい。急性抗体陽転(sero-conversion)の疑いがある場合には、IgM
に特異的な第2抗体を用いたIgM試験を行うのが適当である。第2抗体と固定化抗
原は、約5分間から約2時間の間、好ましくは30分から60分の間、約20℃から約37
℃の温度にてインキュベートする。次いで、抗原を緩衝液にて好ましくは複数回
洗浄して、すべての非結合標識抗体を除去する。洗浄によって、抗原上の免疫グ
ロブリンに結合したもの以外の標識抗体が実質的にすべて除去される。もちろん
、ここに存在する実質的に唯一のヒト免疫グロブリンは、UGT2B17特異抗体であ
る。こうして、UGT2B17特異的抗体を、標識第2抗体の存否を調べることによっ
て間接的に測定することができる。
用いる標識によって様々の、標識を検出するための非常に多くの公知の手法が
ある。例えばフルオレセイン標識抗体は一定の蛍光波長における放出光を測定す
ることによって、検出することができる。また、酵素標識の場合には、適当な基
質と共にインキュベートして、酵素活性を検出すればよい。酵素活性は、色の変
化に帰結するものが好ましい。かかる活性は、目視によって測定しても、あるい
は適当な波長にセットした分光光度計によって自動的に読み取ってもよい。
例えば、西洋ワサビパーオキシダーゼにて酵素標識した場合、基質をH2O2と2,
2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)とすれば、これらは酵
素の存在下、414nmに設定した分光光度計で測定し得る化合物を生成する。
ウエスタンブロッティング法においては、酵素が第2抗体と複合体を形成して
いる場合に陽性シグナルが検出される。適当な基質とインキュベートすると、こ
の手法によって分割された抗原性バンドの周囲に着色産生物が酵素的に生成され
る。こうして、反応性のバンドの存在を、視覚検出することができる。間接的蛍
光免疫アッセイでは、フルオレセイン標識化第2抗体は、蛍光活性化検出器によ
ってあるいは、視覚により検出すればよい。
リポソームベースのアッセイには、表面上にUGT2B17抗原を発現させたリポソ
ーム内にフルオレセイン、酵素もしくは基質を含有したものを用いればよい。希
釈した試験体液試料と共にこのようなリポソームをインキュベートし、洗浄する
。免疫グロブリンがその表面に結合しているいずれのリポソームも、抗原/抗体
複合体を形成しており、リポソームを含有するポリスチレン管の内壁上の試験し
ようとする免疫グロブリンに対して特異的な第2抗体に結合することによって認
識され得る。即ち、こうして表面に抗体が結合したリポソームは管の内壁に固定
化され、そして固定化されないものは洗い流される。リポソームを例えば洗剤や
補体によって破壊すれば、内部の酵素または基質が、管内溶液中の相補的な基質
もしくは酵素と反応できるようになる。酵素活性は、視覚または分光光度計によ
る色の測定によって確認できる変色反応であるのが好ましい。
UGT2B17またはその抗原性部位に対する抗体を用い、試験試料中の抗原を検出
することも可能である。この手法および方法は、抗体を固定化し、UGT2B17を含
有すると思われる試料を試験し、標識化抗-UGT2B17を用いて、UGT2B17と固定化
した抗体との複合体形成を検出する以外は上に説明したものと同じである。
UGT2B17特異的テストキットは、抗体または抗原をいくつかの異なった検出方
法にて検出するものとして、構成することができる。抗体または抗原検出のテス
トキットは、UGT2B17抗原または抗体にて使用前に被覆されている複数のウエル
、プレート、酵素検出のためのELISA材料、および色変化指示系を含む区画に分
けられた囲いを有するものであってよい。様々な酵素および現像剤を使用するこ
とができるのは当然である。
抗体をウエスタンブロット法によって検出するための第2のテストキットは、
容器、カバー、ニトロセルロースシートおよびドデシル硫酸ナトリウムを含むポ
リアクリルアミド平板ゲル、界面活性剤、pH調節剤、乾燥ノンファットミルクお
よびトリス中のDAGとハイドロゲンパーオキシドのごとき変色指示系から構成さ
れ得る。ウエスタンブロット分析キットにはパーオキシダーゼ標識ヤギもしくは
ウサギ抗ヒト免疫グロブリンおよびUGT2B17抗原の源もさらに、含む。
間接蛍光免疫アッセイを用いて抗体または抗原を検出するための、UGT2B17-特
異的テストキットとしては、区分けされた容器にUGT2B17抗原または抗体、燐酸
緩衝生理食塩水および蛍光標識複合体を含有するものであり得る。
最後に、リポソームを用い、容器を含む抗体または抗原を検出するための別の
UGT2B17特異的試験キットには、表面にUGT2B17抗原または抗体が結合し、フルオ
レセン標識(または酵素もしくは基質)で満たされたリポソームと、界面活性剤
を含む。このアッセイにおいて、容器には適当な複合体にて予め被覆した管また
はウエルが用いられる。
陽性信号であるとすべき抗原/抗体複合体の検出程度は、選択した検出方法に
よって変わるが、一般に、他のすべてのパラメータ(例えば試料の希釈度、イン
キュベーションの時間)一定に保った際の、陰性コントロール群の結果の平均プ
ラス1標準偏差より大きな値であると規定される。高い特異性が望まれるいくつ
かの態様においては、平均プラス2または3標準偏差の基準が用いられる。
UGT2B17遺伝子またはその部分は、UGT2B17の発現をインビボで阻害するための
アンチセンス核酸を調製するのに用いることもできる。こうして、望ましい場合
には、酵素の活性および酵素に対する基質(例えばアンドロゲン)のレベルを上昇
させることができるのである。一般に、アンチセンス核酸配列は転写、スプライ
シングまたは翻訳プロセスを妨害する。アンチセンス配列は三重ラセンの形成、
RNAポリメラーゼによって生み出されたオープンループとのハイブリダイズ、ま
たは発生期のRNAとハイブリダイズすることによって転写を防止し得る。一方、
スプライシングはアンチセンス配列がエクソンとイントロンの交差する部位に結
合した場合、効果的に妨害される。最後に、翻訳は開始因子の結合をブロックす
ることによって、スタートコドンにおけるリボソームサブユニットのアセンブリ
を妨害することによって、あるいはリボゾームをmRNAのコード領域から、この場
合はこのメッセージRNAとアンチセンスなRNAを用いるのが好ましいが、ブロック
することによって影響を受ける。さらなる一般的な情報については、ヘレン(Hel
ene)ら、Biochimica et Biophysica Acta 1049:99-125(1990)に開示されており
、この開示内容は本出願に含まれる。
アンチセンス核酸配列はRNAまたは一本鎖DNA配列であって、標的タンパク質ま
たは標的遺伝子と相補的なものである。これらアンチセンス配列は、細胞内へ導
入され、細胞内ではこの相補鎖が標的遺伝子と塩基対を形成し、機能性UGT2B17
の転写、スプライシングまたは翻訳が妨害される。アンチセンス鎖は、10ヌクレ
オチドから全遺伝子長の長さであり得るが、約10から50ヌクレオチドが好ましく
、15から25ヌクレオチドが最も好ましい。
遺伝子のいずれの部分であっても、アンチセンス配列の調製に用いることはで
きるが、アンチセンスが遺伝子のコード領域またはmRNAの翻訳開始領域の周囲の
配列もしくはプロモーター領域に対するものであることが好ましい。アミノ酸1
から295位、最も好ましくはアミノ酸54から227位を含む領域を用いることが好ま
しい。
当業者によく知られているように、配列は、様々な方法によって、処置の効果
をあげるために改変してもよい。特に、RNAの3’末端に、更なるRNAを含むよう
にして、ヘアピンループ構造を取らせ、これによってヌクレアーゼによる分解を
防止してもよい。さらに、オリゴヌクレオチドのバックボーン内の化学結合を、
ヌクレアーゼによる分割を防止するために改変してもよい。
アンチセンス鎖を細胞内に導入する数多くの方法が知られている。ひとつの戦
略としては、UGT2B17をコード化する遺伝子を、ベクター内に逆向きに導入し、
プラスミドから転写されるRNAが細胞遺伝子から転写されるmRNAに対して相補
的であるようにしてもよい。強力なプロモーター(例えばpCMV)は、一般にベク
ター内の、遺伝子配列の上流に含ませて、多量のアンチセンスRNAが産性され、
センスmRNAの結合に供されるようにしてもよい。ベクターは次いで細胞内に形質
移入され、そして細胞が投与される。一本鎖DNAオリゴヌクレオチドまたはアン
チセンスRNAを調製して、これらを細胞もしくはリポソーム内に導入したものを
投与してもよい。リポソームの使用は、例えばWO95/03788に開示されている通
り(これは、本明細書に参考として含まれる)好ましい。しかしながら、他の当業
者によく理解される方法もまた、アンチセンス鎖を細胞内に導入し、あるいは処
置の必要な患者に対して投与するのに用いることができる。
以下はUGT2B17 cDNAクローンの単離に使用される材料と方法の説明である。ま
た、UGT2B17の発現と基質特異性の決定に使用される材料と方法についても以下
に記述する。これらの実施例は本発明を例示するものであって、本発明の範囲内
でその操作と供給源に改良と変更を加えたりおよび/または異なる技術を使用で
きることは当業者には十分に理解される。また、本遺伝子を組換え法で生産でき
ることも十分に理解される。
材料 UDP-グルクロン酸と全てのアグリコンはシグマケミカル社(ミズーリ州
セントルイス)とアイシーエヌファーマシューティカル(ICN Pharmaceutical)社
(カナダ・モントリオール)から入手した。非放射性ステロイド類はステラノイ
ズ(Steraloids)社(ニューハンプシャー州ウィルトン)から購入した。[9,11-3H
]アンドロステロン(59Ci/mmol)、[9,11-3Hアンドロスタン-3α,17β-ジオール
(56Ci/mmol)および[14C]UDP-グルクロン酸(285mCi/mmol)はエヌイーエヌデ
ュポン(NEN Dupont)社(マサチューセッツ州ボストン)から入手した。
[1,2-3H]ジヒドロテストステロン(47Ci/mmol)、[1,2,6,7-3H]テストステロン
(90Ci/mmol)、α-[32P]-dCTP(3000Ci/mmol)およびα-[32P]-dUTP(3000Ci/m
mol)はアマシャム(Amersham)社(カナダ・オークビル)から入手した。ジェネ
ティシン(G418)とリポフェクチンはギブコ・ビーアールエル(Gibco
BRL)社(カナダ・バーリントン)から入手した。タンパク質定量試薬はバイオラ
ッド(Bio-Rad)社(カリフォルニア州リッチモンド)から入手した。制限酵素類
とその他の分子生物学用試薬はファルマシア・エルケービー・バイオテクノロジ
ー(Pharmacia LKB Biotechnology)社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、ギ
ブコビーアールエル(Gibco BRL)社(カナダ・バーリントン)、ストラタジェン(
Stratagene)社(カリフォルニア州ラホーヤ)およびベーリンガー・マンハイム(
Boehringer Mannheim)社(インディアナ州インディアナポリス)から入手した。
AmpliTaq DNAポリメラーゼはパーキン-エルマー・セタス(Perkin-Elmer Cetus)
社(ニュージャージー州ブランチバーグ)から得た。ヒト胎児腎293細胞(HK293
)とLNCaP細胞はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(メリーラン
ド州ロックビル)から入手した。ヒト前立腺、副腎、精巣、乳腺、腎臓、子宮お
よび胚の全RNAはクロンテック(Clontech)社(カリフォルニア州パロアルト)か
ら購入した。
ヒトRNA単離 トリ・試薬(tri reagent)酸フェノール法をその供給者(モレキ
ュラー・リサーチ・センター(Molecular Research Center)社;オハイオ州シン
シナティ)の指定通りに行なうことにより、全RNAをヒト肝臓、脂肪組織、皮膚
、胎盤、良性前立腺肥大組織(BPH)およびLNCaP細胞から単離した。ヒト前立腺
肥大組織(BPH)とLNCaP細胞から得たmRNAを、オリゴ(dT)-セルロース(フア
ルマシア社;ウィスコンシン州ミルウォーキー)によるクロマトグラフィーでア
フィニティー精製した。
cDNA単離 アフィニティー精製したBPHおよびLNCaP細胞mRNAを使つて、ZAP発
現ベクターに、その供給者(ストラタジェン社;カリフォルニア州ラホーヤ)の
指定通りにして、cDNAライブラリーを構築した。フィルターを、40%ホルムアミ
ド、5×デンハート液、5×SSPE、0.1%SDSおよび100mg/mlサケ精子DNA中42℃で4
時間プレハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションはUGT2B7、UGT2B10およ
びUGT2B15c DNAから得た2.0×106cpm/mlのプローブプールを用いて同じ溶液中42
℃で16時間行なった。これらのcDNAプローブは、[α-32P]dCTPの存在下にランダ
ムプライマー法で放射標識した。そのフィルターを2×SSC、0.1%SDS中42℃で15
分間2回洗浄した後、増感紙とXAR5フィルム(コダック社;ニューヨーク州ロ
チェスター)に−80℃で2日間暴露した。
約1×106個の組換え体をスクリーニングした。30個の陽性クローンをLNCaP細
胞ライブラリーから単離し、5個の陽性クローンをBPH cDNAライブラリーから単
離した。これらのクローンのうち、LNCaPライブラリーからの2クローンとBPHラ
イブラリーからの1クローンはUGT2B17をコードすることがわかった。特異的UGT
オリゴヌクレオチドを使って、これら3つのcDNAクローンを両方向に配列決定し
たところ、5'非翻訳領域の長さとポリ(A+)末端中の残基数以外は同一であるこ
とがわかった。
UGT2B17の安定発現 5%CO2の雰囲気下37℃の加湿培養器にて、4.5g/lグルコー
ス、10mMHEPES、110μg/mlピルビン酸ナトリウム、100IUペニシリン/ml、100μ
g/mlストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ改良
イーグル培地でヒト腎293細胞を生育した。リポフェクチンを用いてその製造者
(ギブコビーアールエル;カナダ・バーリントン)の指示に従って行なったHK29
3細胞の形質移入には、5μgのpBK-CMV-UGT2B17を使用した。形質移入の48時間
後、800μg/ml G418を含む培地で、安定な形質移入体を選択した。5回の選択後
、高レベルのUGT2B17を安定に発現させるクローン細胞系が単離された。
UGT2B17酵素の活性 UGT2B17酵素をコードするcDNAをpBK-CMWベクター中に切
出すことによって、UGT2B17タンパク質を発現させた。T3ポリメラーゼを用いて
そのpBK-CMV-UGT2B17構築物を試験管内で転写し、得られた転写物をウサギ網状
赤血球系を使って翻訳した。発現されたタンパク質は53キロダルトンの分子量を
持つことがわかった。
細胞ホモジネートを用いるグルクロン酸抱合アッセイ 0.5mM DTTを含むトリ
ス緩衝食塩水にUGT2B17を発現するHK293細胞を懸濁し、ブリンクマン(Brinkman
)ポリトロンでホモジナイズした。酵素アッセイは[14C]UDP-グルクロン酸(UDP
GP))、500μMの種々のアグリコンおよび細胞ホモジネートから得た150μgの
タンパク質を用いて、50mMトリス-塩酸(pH7.5)、10mM MgCl2、100μg/mlホス
ファチジルコリンおよび8.5mMサッカロラクトン中、100μlの最終体積で行なっ
た。100μlのメタノールを添加することによってこの酵素アッセイを停止し、
各チューブを14,000gで1分間遠心分離して、沈降したタンパク質を除去し
た。その水相100μlを薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート(厚さ0.25mmの
シリカゲル;60F254S)(イーエム・サイエンス(EM Science)社;ニュージャー
ジー州ギブスタウン)にのせ、トルエン:メタノール:酢酸(比率7:3:1)を
溶媒とするクロマトグラフィーにかけた。そのTLCプレートを4日間暴露し、グル
クロン酸抱合の程度をホスホルイメージャー(Phosphorimager;モレキュラーダ
イナミクス(Molecular Dynamics社))で測定した。
UGT2B17と反応する基質をスクリーニングするために、基質を6μMの[14C]UDP
GAと94μMの非標識UDPGAに30℃で16時間さらすアッセイを行なった。このスク
リーニングアッセイでUGT2B17に対する反応性を示した化合物を、引き続いて再
測定することにより、酵素活性の量を測定した。第二のアッセイでは、基質を6
μMの[14C]UDPGAと494μMの非標識UDPGAに30℃で15分間暴露した。UDPGAのKm
が200μMである場合、酵素反応はこれらの条件下で30分間は直線状である。グ
ルクロン酸抱合活性は形質移入されていないHK293細胞には検出されなかった。
上述のように、UGT2B17をコードする遺伝子を含むベクターでHK293細胞を形質
移入することにより、UGT2B17の酵素活性を評価した。図3に示すように、安定に
発現されたUGT2B17を含むHK293細胞ホモジネートを、そのアグリコン特異性につ
いて、TLCを使って分析した。表1に示すように、60種類を越える内因性物質と外
因性物質を活性について試験したところ、それらのうち25種類の化合物がUGT2B1
7によってグルクロン酸抱合されることがわかった。UGT2B17タンパク質を含有し
ない対照HK293細胞ホモジネートでは、これら化合物のグルクロン酸抱合は起ら
なかった。 3αおよび17βヒドロキシアンドロゲンである下記の化合物が主な内因性基質
であると確認された:
ジヒドロテストステロン
テストステロン
アンドロステロン
アンドロスタン-3α,17β-ジオール
アンドロスタン-3β,17β-ジオール
アンドロスタン-5-エン-3β,17β-ジオール
また表1に記載するように、試験したアンドロゲンのうちテストステロンとそ
の5α-還元代謝産物、DHT、3α-ジオールおよびADTが、UGT2B17グルクロン酸抱
合の好ましい基質である。
ADT、DHT、3α-ジオールおよびテストステロンに対するUGT2B17の特異性をさ
らに特徴づけるために、速度論的分析も行なった。図4Aと4Bに示すように、ADT
、DHT、3α-ジオールおよびテストステロンに対する本酵素の親和力は、それら
のKm値によれば類似している。
図5は特異的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)分析のサザンブロッ
トであり、UGT2B17転写物を検出しうる組織の一部を示している。
このように内因性および外因性化合物のグルクロニド誘導体への変換は、基質
のレベルの制御に使用できる。さらに、UGT2B17のレベルはアンドロゲンのレベ
ルと相関するので、組織中のアンドロゲン活性のレベルを示すために、UGT2B17
濃度の測定単位を使用することができる。
抗血清を調製するためのUGT2B17融合タンパク質の作成と精製 UGT2B17酵素の
57位から300位までのアミノ酸配列からなる29kDaタンパク質を発現させるため、
UGT2B17 cDNAのHincII-SpeIフラグメントをpET23a(ノヴァジェン(Novagen)社;
ウィスコンシン州)原核生物用発現ベクターにサブクローニングした。この組換
えベクターを保有する大腸菌BL21細胞(ノヴァジェン社;ウィスコンシン州)を
、アンピシリン(00μg/ml)を添加したテリフィックブロス培地1リットル中37
℃で生育した。600nmでの吸光度が0.5〜0.6 OD単位に達した時点で、1mMイソプ
ロピルβ-p-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加して37℃で2時間培養するこ
と
により、融合タンパク質の生産を達成した。4℃、5000×gで10分間の遠心分離に
より、細胞を収集した。その細菌ペレットを25m1の溶菌緩衝液(125mMトリス-塩
酸(pH8.0)、4.6%SDS、10%β-メルカプトエタノールおよび20%グリセロール)
に再懸濁し、超音波発生器を用いて均一になるまで超音波処理した。タンパク質
をSDS-PAGEにて調製用12%ポリアクリルアミドゲルで分離した後、50mMトリス-塩
酸(pH7.5)と50mMトリス-塩酸(pH7.5)/150mM NaClを用いて、室温で4時間お
よび4℃で16時間の2回の透析を行なった。
免疫法 環境制御室でウサギ(チャールズリバー(Charles River)社;カナダ
・ケベック)をそれぞれ別々のカゴで飼育した。それらのウサギに、リン酸緩衝
食塩水中の合計100μgの精製融合タンパク質500μlを500μlの完全フロイン
トアジュバントと共に複数部位に注射した。6週間の間隔を置いて、不完全フロ
イントアジュバントと共に同じ量のタンパク質を使用して、2回の追加免疫注射
を行なった。各注射の12日後に耳穿刺によって採取した血液で、抗体の産生を調
べた。
免疫ブロット分析 新規抗UGT2B17抗体に関する情報を得るために、HK293細胞
、安定なHK293-UGT2B17細胞のミクロソームと、処理済LNCaP細胞のミクロソーム
を標準的な方法で精製した。各ミクロソームタンパク質10μgと、融合タンパク
質を発現させるもしくは発現させない大腸菌BL21 pLys S(ノヴァジェン社)株1
00ngを、12%SDS-PAGEゲルで分離した。そのゲルをニトロセルロースフィルター
に転写し、上記ウサギ抗血清の1:2000希釈液でプローブした。抗ウサギIgGセイ
ヨウワサビペルオキシダーゼ複合体(アマシャム社;カナダ・オークビル)を二
次抗体として使用し、認識されたタンパク質を増強した化学発光(レナイッサン
ス(Renaissance);カナダ・ケベック)で可視化し、ハイパーフィルム(コダッ
ク社;ニューヨーク州ロチェスター)に1時間暴露した。ポリクローナル抗体の
反応性を立証するために、組換えUGT2B17融合タンパク質を含む100ngの大腸菌BL
21(pLys S)細胞溶解液を使用した。
UGT2B17 によるアンドロゲン活性の低下 リポーター遺伝子の発現がアンドロ
ゲン活性の指標となるように、LNCaP細胞をアンドロゲン反応要素によって制御
されるリポーター構築物の存在下にUGT2B17で形質移入した。遺伝子導入された
UGT2B17の存在はリポーター遺伝子の発現の減少につながることから、UGT2B17が
アンドロゲンを抱合してアンドロゲン反応を終わらせることが示される。
本発明をその特定の態様に関して説明し終えたが、その他の数多くの変法や変
形およびその他の使用法は当業者には明らかである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12N 9/12 G01N 33/573 A
G01N 33/573 C12N 5/00 A
(72)発明者 ハム,ディーン・ダブリュー
カナダ、ジー1エックス・4エックス1、
ケベック、ステ―フォイ、リュ・フィリッ
ポン3847番
(72)発明者 ボリュー,マルタン
カナダ、ジー4ゼット・2ジー1、ケベッ
ク、ベ・コモー、ルイ・フィリップ・ガニ
ュ67番
(72)発明者 ルヴェスク,エリック
カナダ、ジー1ブイ・2エックス7、ケベ
ック、ヴィクトリアヴィラン、ブリエ90番
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.配列番号1のコード領域もしくはその相補鎖に対して、厳密な条件下で十分 ハイブリダイズし得るよう、配列番号1の配列またはその相補鎖の配列と十分な 相同性を有し、該配列がアンドロステロンからアンドロステロン-グルクロン酸 への転化を触媒する酵素をコード化するものである、ウリジンジホスホ-グルク ロシルホスホトランスフェラーゼ2B17をコード化する単離されたヌクレオチド配 列。 2.該配列が配列番号1のコード領域を含む、請求項1記載のヌクレオチド配列 。 3.プロモーター配列と、請求項1記載のヌクレオチド配列とを含有する、組換 え発現ベクター。 4.プロモーター配列と、請求項2記載のヌクレオチド配列とを含有する、組換 え発現ベクター。 5.請求項4記載のベクターにて形質転換もしくは形質移入された、組換え宿主 細胞。 6.宿主細胞が真核細胞である、請求項5記載の組換え宿主細胞。 7.請求項3記載のベクターにて形質移入された、組換え宿主細胞。 8.宿主細胞が真核細胞である、請求項7記載の組換え宿主細胞。 9.厳密な条件下で配列番号1の配列またはその相補鎖とハイブリダイズするヌ クレオチド配列が、宿主細胞のゲノム内に組み込まれている、請求項8記載の組 換え宿主細胞。 10.該ヌクレオチド配列が、組換えベクター上に存在している、請求項9記載 の組換え宿主細胞。 11.宿主細胞が、生物活性を有するウリジンジホスホ-グルクロノシルトラン スフェラーゼ2B17を発現し得る、請求項8記載の組換え宿主細胞。 12.配列番号1の配列のコード領域またはその相補鎖の30個の連続したヌク レオチドと同一である少なくとも30の連続したヌクレオチド配列を含有する、 単離されたヌクレオチド配列。 13.配列番号1の配列中、52位から927位のヌクレオチドを含有する、ヌ クレオチド配列。 14.配列番号1の配列中、204位から723位のヌクレオチドを含有する、 ヌクレオチド配列。 15.配列番号1のヌクレオチドを含有する、単離されたヌクレオチド配列。 16.配列番号2記載のものと同一のアミノ酸配列を有する、単離されたウリジ ンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17酵素。 17.配列番号2記載のアミノ酸配列をコード化する、単離されたヌクレオチド 配列。 18.請求項3記載のベクターにて形質転換もしくは形質移入された組換え宿主 細胞を調製する、 宿主細胞を、宿主細胞によるウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラ ーゼ2B17産生が促されるような条件下で培養する、 工程を含む、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17を調製 する方法。 19.請求項4記載のベクターにて形質転換もしくは形質移入された組換え宿主 細胞を調製する、 宿主細胞を、宿主細胞によるウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラ ーゼ2B17産生が促されるような条件下で培養する、 工程を含む、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17を調製 する方法。 20.ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17またはその抗 原性フラグメントを含む固定化抗原性組成物、 該固定化抗原と該抗原に対する抗体との複合体を検出する手段 を含有する、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17に対す る抗体を検出するためのキット。 21.ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17またはその抗 原性フラグメントに対する抗体である、固定化抗体、 固定化抗体とウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17との複 合体を検出するための手段 を含有する、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17検出の ためのキット。 22.精製もしくは組換えウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラー ゼ2B17に対する抗血清。 23.ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17を投与するこ とを含む、ある組織中のアンドロゲン化合物の濃度を変化させる方法。 24.アンドロゲン性化合物が、ジヒドロテストステロンである、請求項23記 載の方法。 25.ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17を投与するこ とを含む、ある組織中のアンドロゲン性化合物の活性を変化させる方法。 26.ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17に対する標識 化抗体を投与する、 次いで標識を検出する 工程を含む、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17の局所 濃度を検出する方法。 27.配列番号1のコード領域またはその相補鎖内へ、少なくとも30の連続し たヌクレオチド配列を導入することを含む、ウリジンジホスホ-グルクロノシル トランスフェラーゼ2B17合成のブロック方法。 28.ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17の濃度を測定 する工程を含む、試料中のアンドロゲン活性レベルの変化を検出する方法。 29.試験試料をウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2Bl7に 対する抗体と接触させ、この抗体とウリジンジホスホ-グルクロノシルトランス フェラーゼ2B17との免疫複合体の生成を測定する工程を含む、試験試料中のウリ ジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17の検出方法。 30.試験試料をウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17と 接触させ、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17に対する 抗体と、ウリジンジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ2B17との免疫複 合体の生成を測定する工程を含む、試験試料中のウリジンジホスホ-グルクロノ シルトランスフェラーゼ2B17に対する抗体の測定方法。
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