JP2000508852A - 非固定バッファ・サイズを利用した通信システム - Google Patents

非固定バッファ・サイズを利用した通信システム

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Abstract

(57)【要約】 マルチタスク・オペレーティング・システムを実行するシステムにおけるように、プロセッサ資源に対する競合が多いネイティブ信号処理システムにおいて特に有用な、新規なバッファを基本とする全二重通信システムを実施する装置および方法を提供する。本発明の通信システム(30)の主要な構成要素は、受信機(34)、送信機(32)、エコー・キャンセラ(36)、CODEC(62)、および電話ハイブリッド(42)を含み、入力ビット集合からなる入力サンプルのバッファに処理を行い、出力ビット集合からなる出力サンプルのバッファを生成する。本発明は、新規なバッファ切り換え機構を利用して、信号のコヒーレンシを失うことなく、一方では処理応答時間、他方では割り込みレイテンシおよびプロセッサの実施に対するロバスト性の間のトレードオフを最適化する。バッファ・サイズを増大させることにより、バッファのアンダーラン/オーバーラン・エラーの発生確率を低下させる。しかしながら、小さなバッファは、通信システムに短く精度が高い応答時間を与える。

Description

【発明の詳細な説明】 非固定バッファ・サイズを利用した通信システム 発明の分野 本発明は、通信システムに関し、更に特定すれば、ネイティブ信号処理(NS P:native signal processing)を利用したモデムに関するものである。 発明の背景 従来の全二重通信システムは、通常、図1に示す従来技術のモデム12のよう に、専用のハードウエアを用いて実施されている。モデム12は、その中核とし てのディジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)集積回路 (IC)18、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)20、ディジタルーアナ ログ変換器(D/A)24、アナログーディジタル変換器(A/D)26、およ びデータ・アクセス構成(DAA:data access arrangement)28を含む。モ デム12は、バス・インターフェース回路16を介して、ホスト・コンピュータ ・バスに結合された状態で示されている。ホスト・コンピュータ中央処理装置( CPU)14は、モデム12を介して伝送するデータを発生し、モデム12によ って受信したデータを受け取る。 図1に示す形式のようなDSPを基本とするモデムは、一般的に、入力A/D 変換器26からの比較的少数のサンプルを処理し、同様の少数のサンプルを発生 し、D/A変換器24に出力することによって動作する。これらのシステムは、 特定の実施態様に応じて、「サンプル」毎または「シンボル」毎に動作すると言 われる。かかる方式では、入力がほぼ直ちに処理されるので、読出し時間(レイ テンシ時間:latency time)が最短で済むという利点がある。しかしながら、こ れらの方式は、非常に大きな計算能力を必要とするが、この計算能力は通常専用 DSPによって供給される。 図1に示すようなモデムは非常に強力であり得るが、専用のDSPハードウエ アを必要とするため、比較的高価である。したがって、パーソナル・コンピュー タ業界における最近の傾向は、追加の処理ハードウエアを必要とせずに、内蔵型 の汎用CPUを利用することによって、モデムを実装する方向にある。このため 、モデムは、同じ処理ユニット上のシステムが実行する他のタスクと、CPU時 間を分配しなければならない。典型的なコンピュータのCPUでは、分配は、「 タイム・スライス(time slice)」に基づきオペレーティング・システムによって 管理される。各スライスの間、異なるタスクが実行される。タスクの実行は、現 タイム・スライスの終了を示す周期的タイマが発生する割り込み、または何らか のイベント(例えば、データのサンプルが得られたこと)の発生を示す他のいず れかのハードウエア・デバイス(例えば、A/D変換器)が発生する割り込みに よって、切り替える(preempt)ことができる。 割り込み機構は、現在実行中のタスクを、可能な限り短い時間で割り込みを処 理するタスクに切り換える(switch)ように設計されているが、実際には、割り 込みが実際に処理される前に相当な量の時間がかかる場合がある。この時間遅延 は、ハードウエアの遅延、コンピュータ・システムにおける多数の割り込み源( ソース)、またはある割り込みに与えられる他の割り込みに対する優先度によっ て発生する可能性がある。実際の割り込みトリガの発生と割り込み処理ルーチン の実行開始との間の時間は、「割り込みレイテンシ(interrupt latency)」と 定義されている。PC環境における典型的な割り込みレイテンシは、0ないし5 ミリ秒の範囲である。しかしながら、PC環境では、実行中のプログラムが、予 め規定されている時間以内に制御を放棄するという保証はない。行儀のよい(we ll behaved)プログラムの場合は、不当な時間期間にわたってCPUを支配しな いことを予測し得るが、タスクによっては、比較的長い時間期間にわたってCP U資源を解放しないものもある。 したがって、従来のDSPを基本とするモデムのネイティブ処理環境(NSP )への直接的単純な移行(転換)には非常に問題が多い。何故なら、「リアル・ タイム」処理要件を満たすためには、各サンプル(またはシンボル)毎にモデム ・タスクを実行すること、および次のサンプル(シンボル)が到達する前にその 実 行を完了していることが必要となるからである。サンプル(またはシンボル)の 到達とモデムの作動との間の時間を最短に抑えるために、直接的移行を実施する のでは、各サンプル(即ち、シンボル)の到達時に、割り込みを発生することに なるであろう。このような実施では、リアル・タイムの制約を克服することは余 りに困難であり、長い割り込みレイテンシのためにモデム・ルーチンを時間通り に実行することが不可能となり、その結果データの損失が発生する恐れがある。 この問題は、モデム・ルーチンを、1つのサンプルだけではなく、サンプルのバ ッファ(buffer)に対して動作させるように設計することによって克服可能となる 。サンプルのバッファは、連続するモデム・ルーチンへのコールとコールとの間 の時間期間が長くなることを意味する。この場合のリアル・タイムの要件は、サ ンプルの入力バッファを処理し送信のための出力バッファを生成するための時間 が、バッファを受信/送信する際に要する時間よりも短いことである。 しかしながら、このバッファ処理方式は、新たな問題を引き起こす。バッファ の先頭で受信されたサンプルは、バッファ全てを受信した後でないと処理されな いので、これには固有の遅延という欠点がある。この欠点は、ITU V.32 bis 14,400bpsモデム規格のような、高速データ・ポンピング(pu mping)モデムとは相容れないものものである。ITU V.32bis 14 ,400bpsモデム規格では、サンプルを処理し、接続の他端に位置するモデ ムからのある種の信号に応答する場合に、厳しい時間制約を賦課する。例えば、 V.32bis規格は、モデム接続の開始時に、レンジング(ranging)段階を含 む。この段階の間、他のモデムのレンジング信号に応答する最大応答時間を26 .6msとすることが、仕様によって要求される。信号検出から応答の送信まで の最短処理時間(ターン・アラウンド時間:turn around time)は、サンプルの獲 得、処理、割り込みレイテンシ、およびバッファの送信を考慮に入れなければな らない。 発明の概要 本発明は、NSPを基本とする全二重通信システムの実施(インプリメンテー ション)において、前述した問題を軽減するために開発された。これらの問題に は、インプリメンテーション・オーバヘッド等の処理を最適化しかつこれを可能 とすることに加えて、割り込み、オペレーティング・システムおよびその他のタ スクに関連するレイテンシに対する抵抗力の必要性が含まれる。前述したように 、伝送ビット・レートが増々高くなるに従って、公衆電話交換網(PSTN:pu blic switched telephone network)にモデムを実装する場合に、厳しい時間制 約が存在する。殆どの通信システムでは、この時間制約は通常通信リンクの初期 設定中、特に、モデム接続のレンジング・フェーズの間に存在する。 より高いビット・レートの規格、例えば、V.32およびV.34を実施可能 なNSPモデムを設計する1つの解決策は、本発明の教示によれば、NSPモデ ムの内部で非固定サイズのバッファを利用することである。バッファ・サイズを 可変とすることにより、NSPソフトウエアを規格の制約に適合化させることが 可能となる。小さなバッファは、短く正確な応答時間を通信システムに与える。 一方、バッファ・サイズを大きくすると、モデム処理のローバスト(robust)性 が向上し、インプリメンテーション・オーバーヘッドが減少するので、オペレー ティング・システムのレイテンシに対する強化を図り、タイム・スライス内即ち 割り込み間において正確な時点で柔軟性を高めることになり、データ流を混乱さ せることなく、処理を行うことが可能となる。タスクのローバスト性が向上すれ ば、行儀のよくない他のタスク、即ち、比較的長い時間期間にわたってCPUを 解放しない他のタスクの影響を受けにくくなる。 システムが定常状態にあり、応答時間が長くても対処できる場合、より大きな バッファの処理を可能とすべきである。かかるシステムでは、データのオーバー ラン/アンダーラン(overruns/underruns)またはその他のエラーを発生すること なく、バッファ・サイズを増大可能な時間点に到達する。 加えて、本発明によって教示されるバッファの切り換えは、データの損失を全 く伴わない。切り換えは、データ損失を全く生ずることなく、円滑にかつコヒー レントに行われる。ここでは、コヒーレンシ(coherency)とは、入力サンプル や出力サンプルの逸失や破棄がないことと定義する。 したがって、本発明の目的は、高ビット・レートのNSPを基本とする通信を 可能とすることによって、従来技術に伴う問題を克服するシステムを提供するこ とである。 本発明の他の目的は、所望のレイテンシ時間期間に応じて、そのデータ・バッ ファのサイズを様々に変更可能なシステムを提供することである。 本発明の更に他の目的は、オーバーランや他のデータ・エラーを生ずることな く、そのデータ・バッファのサイズを様々に変更可能なシステムを提供すること である。 本発明の他の目的は、通信信号処理プロセスへのコールの相対的なインプリメ ンテーション・オーバーヘッドを低減させることによって、CPUのようなシス テム資源の使用を最適化するシステムを提供することである。 本発明の更に他の目的は、長いデータ・ブロックに対して効率が高くなる、ブ ロック最適化信号処理技法を用いることによって、プロセッサの使用を最適化す るシステムを提供することである。 本発明は、信号受信および送信双方のためにバッファ・インターフェースを利 用する全二重通信システムを開示する。このバッファ・インターフェースは、入 力サンプルも出力サンプルも全く失うことなく、異なるサイズのバッファ間で切 り換えを行う機構を含む。本発明のバッファ切り換えを基本とする通信システム は、1群(グループ)の入力サンプルを収集し、それらをバッファ内に配置する 。次に、本システムは、バッファ内に収容されたサンプルを処理し、送信すべき サンプルのバッファを生成する。受信バッファおよび送信バッファは、典型的に は、同一長さのものである。サンプル・バッファの長さは、当該バッファを格納 するために割り当てられなければならないメモリを決定し、更に、レイテンシ時 間も決定する。レイテンシは、入力ポートにおけるイベントの発生から、当該入 力ポートにおけるイベントに応答しての出力ポートにおける他のイベントの発生 までの最短通信システム応答時間として定義する。最悪の場合のレイテンシは、 バッファを満たすのに要する時間の正確に2倍として示されている。 初期起動シーケンスの間、比較的短く精度の高い応答時間が要求される。した がって、このフェーズでは、短いバッファを用いる。しかしながら、後の長い期 間(即ち、定常状態)では、長いバッファの方が効率的となる。したがって、モ デムが異なるサイズのバッファに切り換える、ある時点が存在する。バッファの 切り換えは、コヒーレンシを全く失うことなく(即ち、入力ポートや出力ポート において全くデータを失うことなく)行われる。 したがって、好適な実施形態によれば、通信システムにおいて、一方では、処 理応答時間の平衡(バランス)を達成し、他方では、割り込みレイテンシおよび プロセッサのインプリメンテーション・オーバーヘッドに対するローバスト性を 達成する方法が提供される。 したがって、好適な実施形態によれば、通信システムにおいて、一方では処理 応答時間、他方では割り込みレイテンシおよびプロセッサのインプリメンテーシ ョン・オーバーヘッドに対するローバストネス(頑強性)の間の平衡を達成する 方法が提供され、この方法は、迅速な処理応答時間を有するように通信システム を最適化することが望ましい場合、第1のバッファ・サイズを有するデータ・バ ッファを利用するステップと、割り込みレイテンシに対するローバスト性を得る と共に、プロセッサのインプリメンテーション・オーバーヘッドを減少させるよ うに通信システムを最適化することが望ましい場合、第2のバッファ・サイズを 有するデータ・バッファを利用するステップとを含む。 加えて、先の方法は、更に、切り換え手段を備え、第1のバッファ・サイズを 有するバッファの使用と、第2のバッファ・サイズを有するバッファの使用との 間で、前記通信システムが切り換えを行うことを可能とするステップを含む。ま た、データの損失を全く生ずることなく、バッファのサイズをコヒーレントに切 り換え、第2のバッファ・サイズは第1のバッファ・サイズよりも大きい。加え て、モデム接続を再初期化または再起動する場合、第2のバッファ・サイズをよ り小さいサイズに再度切り換える。リトレイン・シーケンス(retrain sequence) を初期化した場合、第2のバッファ・サイズをより小さいサイズに再度切り換え 、通信システムが、V.32、V.32bis、およびV.34のグループから 選択された、国際電気通信連合(ITU)規格を実施する。 更に、本発明の好適な実施形態によれば、通信システムを実施する方法が提供 される。この通信システムは、送信機、エコー・キャンセラ、および受信機を備 え、この方法は、エコー・キャンセラを利用して、タイム・スライスK−1の間 に送信された遅延出力サンプルに対してエコー・キャンセルを行うステップと、 受信機を利用して、タイム・スライスK−1から受信した入力サンプルと、タイ ム・スライスKの間にエコー・キャンセラが発生したサンプルとの間の差分に対 して、受信処理を行うステップと、送信機を利用して送信処理を行い、タイム・ スライスK+1の間に送信すべき出力サンプルを発生するステップとから成る。 加えて、前述の送信機、エコー・キャンセラ、および受信機は、コンピュータ の中央処理装置(CPU)を用いて実施され、データの損失を全く生ずることな く、バッファのサイズをコヒーレントに切り換える。 図面の簡単な説明 ここでは、添付図面を参照しながら、一例としてのみ、本発明について説明す る。図面において、 図1は、ホスト・コンピュータに結合された、従来技術の従来のディジタル信 号プロセッサ(DSP)モデムを示す上位ブロック図である。 図2は、本発明の通信システムにおいて利用されるモデムの機能的な面を示す 上位機能ブロック図である。 図3は、ホスト・コンピュータに結合された本発明のネイティブ信号処理(N SP)モデムを示す上位ブロック図である。 図4は、V.32bisモデム規格の起動手順の間、発呼側モデムおよび着呼 側モデムによって交換される信号シーケンスを示す。 図5は、連続するタイム・スライスに関連して、受信、処理、および送信する ステップを示す。 図6は、本発明の処理シーケンスを示す上位フロー図である。 発明の詳細な説明 本発明のバッファ切り換えシステムの動作および有用性をよりよく例示するた めに、全二重音声帯域モデムのフレームワークについて、システムを説明する。 しかしながら、この開示全体を通じて提示する例は、本発明の範囲を何ら限定す るものではないことは理解されよう。当業者は、ここに開示する本発明のシステ ムおよび方法の原理を採用し、当技術分野では公知の、他の多くの形式の全二重 通信システムにそれらを適用することができよう。 本発明の通信システムにおいて利用される、全二重音声帯域モデム30の全体 的な実現化を表す上位機能ブロック図を、図2に示す。モデム30は、送信機3 2、受信機34、エコー・キャンセラ・ユニット36、加算器37、ディジタル ーアナログ(D/A)変換器38、アナログ−ディジタル(A/D)変換器40 、およびディジタル・アクセス構成(DAA)またはハイブリッド42を内蔵す る。エコー・キャンセラ・ユニット36は、遅延レジスタ・スタック35および エコー・キャンセラ回路41を備えている。送信機32は、送信機データ入力ポ ートからデータを受信し、送信(Tx)サンプルをエコー・キャンセラ36およ びD/A38に出力する。DAA42は、電話回線と送信機および受信機との間 でインピーダンスの整合を行うように機能する。これは、電話局(CO:centra l office)からの二線対上の平衡アナログ電圧を、2つの二線非平衡対、一方は 送信機のためのもの、他方は受信機のためのもの、に変換する。エコー・キャン セラ36は、当技術分野では公知の標準的なエコー・キャンセル技法を送信信号 に適用することによって、受信信号からエコーを除去するように機能する。エコ ー・キャンセラ36の出力は、加算器37を用いて、受信信号と加算される。受 信機34は、ディジタル受信(Rx)データ出力信号を出力する。 ホスト・コンピュータに結合された、ネイティブ信号処理(NSP)モデムを 示す上位ブロック図を図3に示す。このモデム全体を10で引用する。NSPモ デム10は、概略的に、ハードウエア部分およびソフトウエア部分から成る。ソ フトウエア部分はホスト・コンピュータのCPU54上で実行される。図3は、 全二重音声帯域モデムの一実施態様を示し、図2に示した信号処理タスク、即ち 、送信機32、受信機34、およびエコー・キャンセラ36を、ホスト・コンピ ュ ータの中央演算装置(CPU)54を用いて処理する。また、ホスト・コンピュ ータは、当該ホスト・コンピュータのオペレーティング・システムおよびそのタ スクが使用するためのランダム・アクセス・メモリ(RAM)52も含む。NS Pモデムの実行中、このモデムを動作させるために用いられるソフトウエアの部 分は、様々な時点においてRAM52内に位置する。 DAA64は、COからの二線対への物理的な線路インターフェースを形成す る(例えば、RJ−11、RJ−45、またはその他のいずれかの適切な接続方 法)。ホストCPU54は、バス・インターフェース回路56を介して、NSP モデム10と通信する。2つの先入れ先出し(FIFO)バッファを用いて、ホ スト・コンピュータのCPUに向かうサンプルおよびCPUから来るサンプルを バッファする。送信FIFO58は、アウトバウンド(outbound)サンプルをバッ ファし、受信FIFO60はインバウンド(inbound)サンプルをバッファする 。コーダ/デコーダ(CODEC)62が、送信FIFO58および受信FIF O60をDAA64に結合する。CODEC62は、D/A24およびA/D2 6(図2)のD/AおよびA/D機能を実行する。 今日のパーソナル・コンピュータの大多数は、ある種のマルチタスキング・オ ペレーティング・システム(multi-tasking operating system)を実行させている ので、ホスト・コンピュータのCPU54は何らかの形態のマルチタスキング・ オペレーティング・システムを実行していることを想定する。この場合、本発明 によって教示される、可変サイズのバッファを用いるシステムは、NSPモデム 10によって用いられ、例えば、V.32およびV.34規格のような、モデム 規格によって賦課される厳しい時間許容度に準拠するようにする。本発明によっ て教示される可変サイズのバッファを用いる機構の理解に役立てるために、V. 32bis規格を一例として使用する。即ち、データの交換が可能となる前に行 われるV.32bisの起動手順について説明する。図4に示すのは、発呼側モ デムおよび着呼側モデムによって実行される、V.32bis規格に定義された 起動シーケンスである。最上段は、発呼側モデム(即ち、発呼したモデム)の送 信信号を、時間の関数として示す。最下段は、着呼側モデムによって実行される タスクを、時間の関数として示す。初期シーケンスの間、着呼側モデム上の「S 」までは、非常に短くかつ精度の高い応答時間が必要である(例えば、64T+ /-2T、これを換算すると26.6+/-0.83msとなる)。このいわゆる レンジング期間中に、遠端エコーのラウンド・トリップ時間遅延(round trip ti me delay)を測定する。次に、エコー・キャンセラ回路41(図2)においてこ れらの測定値を用いて、受信信号からエコーを排除する。 割り当てられた時間枠内で応答するためには、短い応答時間が必要である。し たがって、この初期フェーズの間、短いバッファを用いる。トレーニング段階「 TRN」以降では、短く精度の高いイベント処理は絶対的な要件ではなく、長い バッファを用いてもよいので、こうしてCPUに関連する切り換えタスクのオー バーヘッドを低減させる。本発明者がPentium 100MHzプロセッサ を装備したPCを用いて行った実験では、レンジング期間中のCPU利用度は比 較的低く、約5パーセント未満であることが示された。トレーニング期間中では 、CPU利用度は高くなり、30パーセントを超える可能性がある。定常状態の 間、データ部分のCPU利用度は30パーセント未満に低下する。 図5は、タイム・スライスの連続処理に関する、受信、処理、および送信のス テップを示す。2本の垂直線間にある各列は、1つのタイム・スライスを表す。 垂直線は、各タイム・スライス即ちサンプル時間毎に、その開始時点において1 回発生するハードウエア割り込みを表す。各タイム・スライス毎に、NSPモデ ム10内で行われる通信プロセスを実行する。この時間中、前回のタイム・スラ イスの間に収集されたサンプルを処理し、サンプルを発生し、次のタイム・スラ イスの間に送信する。このように、タイム・スライスN−4の間に収集されたサ ンプルは、タイム・スライスN−3の間に処理される。同様に、タイム・スライ スN−3の間に、サンプルが発生され、タイム・スライスN−2の間に送信され る。 前述したように、起動シーケンスのレンジング期間(図4)の間、双方のモデ ムは26.6+/-0.83ms(即ち、64T+/-2T)の時間制約を有し、こ の間に他方の信号に応答しなければならない。処理および関連するハードウエア の平均的な遅延を6.6msと仮定すると、モデム処理にはわずかに20msが 残るのみとなる。即ち、20msがバッファ機構内における固有の遅延のための ものである。バッファ機構における最大遅延即ち最悪の場合の遅延は、前述のバ ッファ処理方式の場合、2バッファ長である。つまり、最大バッファ長は、時間 では、10msを超えることはできない。したがって、サンプリング周波数が8 KHzのCODECでは、64サンプルに等しい長さL1を有するバッファをこ のレンジングの間に用いる。これは、8msのバッファ時間に換算される。処理 オーバーヘッドを3msと仮定すると、5msのマージンが残る。したがって、 割り込みレイテンシまたはオペレーティング・システムが賦課するその他のいず れかの遅延が5msより長い場合、データのオーバーランが発生する。即ち、モ デム間のレンジングは、精度不足となり、通信を行うことができない。 ある時点において、大きなバッファに切り換える判断を行う。V.32bis の場合、大きなバッファへの切り換えは、レンジング期間が終了した後で、好ま しくはトレーニング期間が開始する前に行うことができる。本発明のシステムは 、サンプル・バッファ内に収容されているサンプルには無関係(oblivious)であ る。どのようなサンプルがバッファ内にあろうとも、相違はない。本発明のコヒ ーレンシ特性について、以下で更に詳しく説明する。 切り換え点付近におけるバッファ切り換え機構の動作について、これより更に 詳細に説明する。現タイム・スライスがN−1であり、サンプルで満杯のバッフ ァをこのスライスの間に受信したと仮定する。また、小さなバッファはもはや不 要であり、大きなバッファに切り換える決定を行ったとも仮定する。どのエンテ ィティが切り換える決定を行うかは、本発明には重要ではない。タイム・スライ スNの間、スライスN−1の間に受信したサンプルを処理する。しかしながら、 プロセッサは、次のタイム・サンプル以降、大きなバッファを用いることを知っ ている。したがって、プロセッサは、L1よりも大きな長さL2を有する、送信 対象サンプルのバッファを生成する。例示の目的のために、L2は256に等し いとする。送信プロセスは、システムの他の構成要素とは独立しており、したが っていかなる任意のサンプル数を有するバッファでも生成することができる。こ う して、スライスNの間に、256サンプルのサイズのバッファを生成する。これ らのサンプルは、次のタイム・サンプルN+1の間に送信される。また、スライ スNの間、小さなサンプルのバッファが受信され、スライスN+1の間に処理さ れる。 次のスライスN+1の間、大きなサンプルのバッファが獲得され、スライスN の間に獲得された小さなサンプルのバッファがここで処理される。大きなサンプ ルのバッファは、スライスN+2の間に送信するために生成される。加えて、ス ライスNの間に生成した大きなサンプルのバッファは、このスライスN+1の間 に送信される。同様に、スライスN+2の間、スライスN+1の間に受信された 大きなサンプルのバッファが処理され、大きなサンプルのバッファが、スライス N+3の間に送信するために生成される。次のテーブルは、切り換え遷移の前お よび後に用いられるバッファのサイズを示す。 タイム・スライスエコー・キャンセラが 受信機が 送信機が 処理する 処理する 処理する バッファ・サイズバッファ・サイズバッファ・サイズ <N L1 L1 L1 N L1 L1 L2 N+1 L1 L1 L2 >N+1 L2 L2 L2 上記テーブルを参照すると、エコー・キャンセラは、スライスKの間に受信し たスライスK−1のバッファを処理する。ここで、Kはいずれかの任意のタイム ・スライスである。したがって、バッファ内のN+1以下のL1個のサンプルを 処理し、正確にL1個のサンプルのバッファを出力する。タイム・スライスKの 間、受信プロセスは、スライスK−1において受信したバッファと、スライスK におけるエコー・キャンセラの出力との差分を処理する。したがって、タイム・ スライスNの間、受信機は、長さL1を有する、スライスN−1の間に受信した サン プルと、同様に長さL1を有する、スライスNの間のエコー・キャンセラの出力 との差分を処理する。タイム・スライスN+1の間、受信プロセスは、長さL1 を有する、タイム・スライスNにおける受信サンプルと、同様に長さL1を有す る、スライスN+1の間のエコー・キャンセラの出力との間の差分を処理する。 受信機が、適正にエコーが除去済みとなっているサンプルを確実に得るために は、送信サンプルおよび受信サンプルを適切に整合しなければならない。言い換 えると、エコー・キャンセラが用いるサンプルは、送信サンプルおよび受信サン プルと、時間的に同期していなければならない。これを達成するには、送信デー タがエコー・キャンセラによって用いられる前に、その経路内に1つのバッファ 遅延レジスタ35(図2)を配置する(エコー・キャンセル処理は、送信機の処 理の前に行われると仮定する)。こうして、エコー・キャンセラが用いる送信デ ータは、適正に遅延され、受信データとの同期が取られる。遅延レジスタ35は 、小さなバッファが常に小さなバッファから減算され、大きなバッファが常に大 きなバッファから減算されることにより、データのコヒーレンシを維持すること を確保する。 モデム規格の時間制約を満たすために、データの処理は所定の順序で行わなけ ればならない。図6に示すのは、一連の処理を表す上位フロー図である。エコー ・キャンセラ・ユニット36(図2)は、受信機よりも前に動作しなければなら ない。何故なら、受信機が処理するサンプルは、受信したサンプルとエコー・キ ャンセラの出力との差分を含むからである。前述のように、加算器37がこの減 算を行う。加えて、2箇所のバッファ時点における最大レイテンシを維持するた めに、受信機は送信機の前に動作しなければならない。タイム・スライスK−1 の間に受信したバッファの最初のサンプルの時点にトリガされたイベントは、ス ライスKにおける処理の間に検出される。応答(アンサ)は、スライスK+1の 間に送信されたバッファの最初のサンプルとして現れることができる。したがっ て、送信機が受信機の前に動作した場合、イベントは、スライスK+2において 送信されたバッファの最初のサンプルにおいてでないと応答されず、レイテンシ は3バッファ時間となってしまう。 したがって、遅延した送信データを処理するエコー・キャンセラを最初に動作 させる(ステップ70)。次に、タイム・スライスK−1からの受信サンプルと 、スライスKにおけるエコー・キャンセラのプロセスによって発生したサンプル との差分に対して、受信機の処理を行う(ステップ72)。最後に、送信処理を 行い、サンプルで満たされたバッファを生成し、タイム・スライスK+1の間に 送信し(ステップ74)、遅延レジスタ35内に格納する。 このように、本発明のバッファ切り換え機構を利用すると、割り込みレイテン シに対する抵抗力(resistance)を最大に高めることが可能となる。前述の例では 、8000サンプル/秒においてサイズが256のバッファでは、32msのバ ッファ時間となる。30パーセントの処理期間を想定すると、最大割り込みレイ テンシは22.4msとなる。これは非常に大きな時間マージンである。加えて 、長いバッファを用いることの二次的効果として、オーバーヘッドの減少によっ て、CPU利用度が低下し、CPUは他の機能を実行することが可能となる。本 発明によって得られる主要な利点は、NSPモデムが、より高いビット・レート のモデム規格(例えば、V.32 9600pbs,V.32bis14,40 0bisおよびV.34 28,800bps)の厳しい時間制約に適合するこ とを可能にすることである。 加えて、何らかの理由で、モデムの一方が接続の間にリトレイン・プロセス (retrain process)を要求する場合、バッファ・サイズを再度小さなバッファ・ サイズに変更し、リトレイン・プロセスを行うことができる。後の時点で、バッ ファ・サイズを、再び大きなバッファ・サイズに切り換える。 以上、限られた数の実施形態に関して本発明を説明したが、本発明の多くの変 形、変更、およびその他の適用も可能であることは認められよう。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU ,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH, CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G B,GE,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP ,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU, LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,N Z,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI ,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ, VN (72)発明者 コリン,ズィーヴ イスラエル国 32695 ハイファ,エイ・ エイチ・シルバー・ストリート 87/2

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.通信システムにおいて、一方での処理応答時間と、他方での割り込みレイテ ンシおよびプロセッサのインプリメンテーション・オーバーヘッドに対するロー バスト性との間のバランスを達成する方法であって、 a.迅速な処理応答時間を有するように前記通信システムを最適化することが 望ましい場合、第1のバッファ・サイズを有するデータ・バッファを利用するス テップと、 b.割り込みレイテンシに対するローバスト性を得ると共に、プロセッサのイ ンプリメンテーション・オーバーヘッドを減少させるように前記通信システムを 最適化することが望ましい場合、第2のバッファ・サイズを有するデータ・バッ ファを利用するステップと、 を含む方法。 2.請求項1記載の方法であって、更に、切り換え手段を備え、第1のバッファ ・サイズを有する前記バッファの使用と、第2のバッファ・サイズを有する前記 バッファの使用との間で、前記通信システムが切り換えを行うことを可能とする ステップを含む方法。 3.請求項2記載の方法において、データの損失を全く生ずることなく、前記バ ッファのサイズをコヒーレントに切り換える方法。 4.請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法において、前記第2のバッファ・ サイズが前記第1のバッファ・サイズよりも大きい方法。 5.請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法において、モデム接続を再初期化 または再起動する場合、前記第2のバッファ・サイズをより小さいサイズに再度 切り換える方法。 6.請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法において、リトレイン・シーケン スが初期化された場合、前記第2のバッファ・サイズをより小さいサイズに再度 切り換え、前記通信システムが、V.32、V.32bis、およびV.34の グループから選択された、国際電気通信連合規格を実施する方法。 7.通信システムを実施する方法であって、前記通信システムが、送信機と、エ コー・キャンセラと、受信機とを備え、前記方法が、 a.前記エコー・キャンセラを利用して、タイム・スライスK−1の間に送信 された遅延出力サンプルに対してエコー・キャンセルを行うステップと、 b.前記受信機を利用して、タイム・スライスK−1から受信した入力サンプ ルと、タイム・スライスKの間に前記エコー・キャンセラが発生したサンプルと の間の差分に対して、受信処理を行うステップと、 c.前記送信機を用いて、送信処理を行い、タイム・スライスK+1の間に送 信すべき前記出力サンプルを発生するステップと、 を含む方法。 8.請求項7記載の方法において、前記送信機、前記エコー・キャンセラ、およ び前記受信機が、コンピュータの中央処理装置(CPU)を用いて実施される方 法。 9.請求項7および8のいずれか1項記載の方法において、データの損失を全く 生ずることなく、前記バッファのサイズをコヒーレントに切り換える方法。 10.通信システムにおいて、一方での処理応答時間と、他方での割り込みレイ テンシおよびプロセッサのインプリメンテーション・オーバーヘッドに対するロ ーバスト性の間のバランスを達成するシステムであって、 a.迅速な処理応答時間を有するように前記通信システムを最適化することが 望ましい場合、第1のバッファ・サイズを有するデータ・バッファを利用する手 段と、 b.割り込みレイテンシに対するローバスト性を得ると共に、プロセッサのイ ンプリメンテーション・オーバーヘッドを減少させるように前記通信システムを 最適化することが望ましい場合、第2のバッファ・サイズを有するデータ・バッ ファを利用する手段と、 を備えたシステム。 11.請求項10記載のシステムであって、更に、切り換え手段を備え、第1の バッファ・サイズを有する前記バッファの使用と、第2のバッファ・サイズを有 する前記バッファの使用との間で、前記通信システムが切り換えを行うことを可 能とするシステム。 12.請求項11記載のシステムにおいて、データの損失を全く生ずることなく 、前記バッファのサイズをコヒーレントに切り換えるシステム。 13.請求項10乃至12のいずれか1項記載のシステムにおいて、前記第2の バッファ・サイズが前記第1のバッファ・サイズよりも大きいシステム。 14.請求項10乃至13のいずれか1項記載のシステムにおいて、モデム接続 を再初期化または再起動する場合、前記第2のバッファ・サイズをより小さいサ イズに再度切り換えるシステム。 15.請求項10乃至14のいずれか1項記載のシステムにおいて、リトレイン ・シーケンスが初期化された場合、前記第2のバッファ・サイズをより小さいサ イズに再度切り換え、前記通信システムが、V.32、V.32bis、および V.34のグループから選択された、国際電気通信連合規格を実施するシステム 。
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