【発明の詳細な説明】
ヒト前立腺上皮不死細胞の細胞株およびクローンおよびそれらの研究および前立
腺癌治療に対する応用
発明の分野
本発明は不死化された悪性のヒト成人前立腺上皮細胞株に関連する。本発明は
また、それらの細胞株の個々の細胞クローンにも関連する。本発明はさらに対立
遺伝子ヘテロ接合性の喪失の解析によって特徴づけられた、不死化された悪性の
ヒト成人前立腺上皮細胞の細胞株およびクローンにも関連する。とくに、本発明
は自家組織の正常および悪性前立腺上皮細胞の細胞株およびクローンおよびそれ
らの研究への応用に関連する。本発明はまた前立腺癌の診断および治療における
その細胞の使用にも関連する。
発明の背景
長期のヒト前立腺癌細胞株をin vitroで確立することが困難であることは前立
腺腫瘍形成の理解および前立腺癌に対する新しい治療法の発達に向けての進歩を
阻害してきた。今日まで転移損傷から生成された4つの前立腺癌細胞株だけが前
立腺腫瘍形成を制御している生物学的および分子的なことがらに関する生体内で
の実験の大部分に対する基礎を提供してきた。従って、長期の前立癌細胞株が確
立されることは学術的、診断的、および治療的に大きな必要性がある。
近年、前立腺癌は米国の男性において最も一般的診断される癌となってきた。
本年だけても、新規の前立腺癌は300,000件近く、40,000件以上が死亡している
と見積もられており、癌の致死率は肺癌に続いて2位となっている(1)。前立腺癌
による死亡は主に転移した疾患に起因しているにも関わらず、新しく診断された
患者の60%近くは局在した一次腫瘍を有している。局在した疾患に対しては外科
手術および放射線治療がしばしば有効であるが、伝播した転移性の疾患は多くの
場合治療不能である。あらゆる科学的努力にも関わらず、前立腺癌の発生及び進
行を引き起こす生物学的な事柄に関しては比較的僅かしか知られていない。前立
腺癌の治療のための新しい方策の発達には一次前立腺癌の形成及びその転移の進
行に関与する細胞および分子的な事柄に対する理解の向上が必要である。
転移性の損傷から生成された4つのヒト前立腺癌細胞株(LNCaP,DU145,PC-3,TSU
-Pr1)は大部分の前立腺癌に関する生体内での実験の基盤を提供してきた。一次(
非転移性)前立腺癌から短期の細胞株を生体外で培養するための大きな進歩がな
された。それらの進歩は培溶液の発達および新鮮な組織の調製および前立腺上皮
細胞の培養技術の改良を含む(3,4)。しかしながら、一次腫瘍由来の長期のヒト
前立腺上皮細胞株の確立及びその維持は、生体外での不死化ができない限り不可
能であった。そのために、長期の不死化した細胞株を記載した報告は僅かであり
、それらは正常な前立腺上皮の培養に限られていた(5,6,7,8)。従って本研究の
目標は一次腫瘍に由来する永続的に分裂する前立腺癌細胞株を生成するための信
頼できる方法を確立することであった。
さらに、不死前立腺上皮細胞株の確立に固有の困難なことは、正常な上皮細胞
と培養された前立腺癌細胞を区別することに伴う問題である。複数の短期前立腺
上皮培養細胞に関する過去の細胞遺伝学的な見積りによって局在した前立腺癌か
ら生じた細胞株の大部分は正常な男性の核型を示すことが明らかにされた(9,10,
11)。このことは、短期培養細胞の顕微鏡形態の顕著でないこと、および異種移
植の完全な不成功とあわせて、ヒト一次前立腺癌細胞の同定及び特徴付けを極度
に困難にしていた。
前立腺癌の発生は対立遺伝子の染色体欠失によって表れる潜在的な癌抑制遺伝
子の不活化を含む細胞内の複数の遺伝的変化の結果として起こると信じられてい
る(12に解説されている)。新鮮な(培養されていない)一次前立腺癌標本における
染色体欠失を調べた初期の研究は染色体10qおよび16q上の対立遺伝子ヘテロ接合
性の消失(allelic loss of heterozygosity,LOH)を示している(13,14,15)。そ
れに続く研究は8番染色体短腕上に顕著に高い頻度で対立遺伝子の消失があるこ
とを示しており、従って前立腺癌に関連した腫瘍抑制遺伝子の位置の候補のリス
トの上位に染色体8pはなっている(16,17,18)。さらに、近年の99の微小切除され
た腫瘍(19)および54の微小切除されたPIN損傷(20)についての、染色体8pの短腕
上におけるLOHの調査は、相当する正常な対照群と比べて染色体8p12-21上の腫瘍
抑制遺伝子(群)の不活性化の強力な証拠を示した。従って、染色体8p12-21上の
この小さな欠失領域内のLOHを調べることは一次腫瘍に由来するヒト前立腺上皮
細胞株の同定および特徴付けのための強力な代替的方法になりうる。
本発明は一次前立腺腫瘍に由来する複数のヒト腫瘍細胞株の生成の成功および
特徴的な遺伝学的解析である。
発明の概要
本発明は腫瘍性および正常の前立腺組織に由来する長期のヒト上皮細胞株の単
離、不死化、および解析および、これらの細胞株の研究及び前立腺癌治療におけ
る応用を提供する。とくに、本発明の目的は、悪性および良性の自家標本の両方
に由来する無限増殖能を持った前立腺上皮細胞株を用いて達成された。
本発明の細胞株は上皮細胞腫瘍形成のモデルとして有用である。例えば、本発
明の不死化した前立腺上皮細胞株はとくに前立腺癌の腫瘍形成の理解のために有
用である。本発明は不死化した良性の成人前立腺細胞株を、不死化した自家性の
悪性成人前立腺細胞株とともに、良性から悪性の細胞表現型への変化を引き起こ
す遺伝学的な出来事を決定することおよび、前立腺癌における遺伝の役割を調べ
るための試薬として使用することを提供する。
本発明は単離された不死化した悪性のヒト成人前立腺上皮細胞株である。本発
明のもう一つの側面は、少なくとも一つの対立遺伝子ヘテロ接合性の消失(LOH)
をもつものとして特徴付けられたクローン化された不死化した悪性の成人前立腺
上皮細胞株である。本発明のさらなる側面は染色体1、8p、10および/または16
上の一つまたはそれ以上の対立遺伝子の消失をもつものとして特徴づけられたク
ローン化された不死化した悪性のヒト成人前立腺細胞株である。
本発明の細胞株は前もって選択されたタンパク質を生成する方法及び上皮細胞
起源のタンパク質を生成する方法において利用され得る。例えば、本発明の細胞
株は、診断の指標または免疫学的治療の標的として用いられ得る悪性の前立腺関
連タンパク質の単離において有用である。本発明の一つの態様においてはタンパ
ク質の生成の方法は本発明の上皮細胞株の培養の段階および新しい細胞によって
生産された一つまたはそれ以上のタンパク質を採集する段階からなる。このよう
なタンパク質をコードする遺伝子の同定はそのタンパク質またはその一部の効率
的な大量生産のための組み替えベクターの構築を可能にする。
本発明の細胞株はまた、例えば化学治療用薬剤、生物学的応答修飾剤、または
アンチセンスオリゴヌクレオチドのような治療用試薬の前立腺癌に対する効果の
生体外での試験にも有用である。
本発明の細胞株はまた前立腺癌の再発を治療または予防するための全細胞ワク
チンとしても有用である。全細胞ワクチンはそのままの状態でアジュバンドとと
もに投与されるかまたは、例えば様々なサイトカイン、ケモカイン、接着分子ま
たはMHC分子をコードする外来遺伝子によって修飾されて投与され得る。
本発明の細胞株はまた、前立腺癌反応性の抗体または末梢血由来の免疫細胞ま
たはリンパ節細胞を増大させるための刺激として前立腺癌患者に対して投与する
ために治療上有用である。
本発明はまた、免疫系によって認識される前立腺関連抗原の分子クローニング
に用いる不死の前立腺細胞株を提供する。これらの抗原はさらに前立腺癌の予防
または治療のための組み替えワクチンへと発展される。
本発明はさらに本発明の細胞株の一つまたはそれ以上からなる薬剤組成物、お
よび薬理学的、治療的、および診断的な不死細胞株の利用、および不死細胞株か
らなる薬理学的組成物を提供する。
本発明のこれらおよびその他の目的は付属の明細書および添付の図表によって
明らかになる。
図面の簡単な説明
図1Aおよび1B。死化した前立腺上皮細胞株の形態および増殖に関する特性。(1
A)は前立腺癌標本より生成された培養細胞1510-CPの永続的な増殖を達成するた
めにレトロウィルスLXSN16E6E7による不死化が必要であった。細胞は継代3にお
いて形質導入するか(1510-CPTX)、または形質導入せず(1510-CPNV)、そして継代
5及び10のそれぞれの時期に24穴プレート中での増殖を観察した。(1B)は10培養
継代後の1510-CPTXの顕微鏡写真(200倍、位相差顕微鏡)。この培養像は良性また
は悪性の標本から生成されたその他の前立腺上皮細胞株に典型的なものである
。
図2。良性および悪性の前立腺細胞による組織内でのPSAの発現。患者1510から
の前立腺全摘による正常な前立腺上皮(二重矢印)とともに浸潤した前立腺癌(矢
印)の領域を含むパラフィン封埋組織切片。黒い色素は抗-PSAモノクロナール抗
体の結合を示している。正常な前立腺上皮細胞によるPSAの発現は強く一様であ
るのに対し、癌細胞による発現は弱く、一様でない。間にあるストロマ細胞はPS
Aを発現していない。(200倍)。
図3。ヘテロ接合性の消失解析に用いられたミクロサテライト指標の相対的な
位置を同定した染色体8pの遺伝学的地図。
図4。患者1542より得られた新鮮な細胞および培養された細胞上のミクロサテ
ライトD8S136のPCR解析。レーン1、1542-NPTX、継代26。レーン2、微小切除さ
れた新鮮な腫瘍#11。レーン3、クローン化されていない1542-CP3TX、継代21。レ
ーン4-6、1542-CP3TXの8継代目に由来する腫瘍クローン1542-CP3TX.8.1、1542-C
P3TX.8.3および1542-CP3TX.8.4。
図5A-5F。IFN-γは1542-CP3TXの表面にMHCクラスIおよびII分子の増強された
発現を誘導する。未処理の1542-CP3TX細胞は中程度の量のクラスI分子を発現し
ている(モノクロナール抗体W6/32による染色)(5A)が検出できる量のクラスII分
子は発現していない(モノクロナール抗体L243)(5B)。IFN-γ500U/mlに3日間さら
された後ではクラスIの発現は増大し(5C)、クラスIIの発現は誘導されている(5D
)。自家のEBV-形質転換B細胞によるMHCの発現が比較のために示されている(5Eお
よび5F)。
発明の詳細な説明
本発明は正常な前立腺および前立腺癌細胞株を含む数多くの新鮮な外科的標本
に由来するヒト成人前立腺上皮細胞株およびそのクローンの単離、不死化、およ
び解析および、それらの研究及び治療に対する潜在的な応用を提供する。
本発明は一般的に不死細胞株および細胞株のクローンおよびここに述べた細胞
株の一つまたはそれ以上からなる薬剤組成物、およびそれらの薬剤活性試薬とし
ての使用を提供する。
特に、本発明は不死化した悪性の成人前立腺上皮細胞株を提供するおよび適合
する自家不死化した悪性および正常な前立腺上皮細胞株を提供する。不死化した
前立腺上皮細胞株は本明細書において1510-CP(前立腺腫瘍)、1512-NP(正常前立
腺)、1512-CP、1519-CP、1532-NP(1532-NPTXと記してある1532-NPは1996年2月2
日に12301 Parklawn Drive,Rockville,MarylandのAmerican Type Culuture Coll
ection(ATCC)に登録番号RL-12036として寄託された。)、1532-CP1,1532CP2(1532
-CP2TXと記してある1532-CP2は1996年2月2日にRockville,MarylandのATCCに登録
番号CRL-12038として寄託された。)、1535-NP(1535-NPTXと記してある1535-NPは
1996年2月2日にRockville,MarylandのATCCに登録番CRL-12039として寄託された
。)、1535-SV(貯精嚢、seminal vesicle)、1535-CP1(1535-CP1TXと記してある15
35-CP1は1996年2月2日にRockville,MarylandのATCCに登録番号CRL-12041として
寄託された。)、1535-CP2、1542-NP(1542-NPTXと記してある1542-NPは1996年2月
2日にRockville,MarylandのATCCに登録番号CRL-12040として寄託された。)、154
2-SV、1542-CP1、1542-CP2、および1542-CP3(1542-CP3Xと記してある1542-CP3は
1996年2月2日に12301 Parklawn Drive,Rockville,MarylandのATCCに登録番号CRL
-12037として寄託された)。
本発明はまたクローン化された不死化した悪性の前立腺上皮細胞株をも提供す
る。さらに本発明はまた少なくとも1つの対立遺伝子ヘテロ接合性の消失(LOH)を
持つものとして特徴づけられたクローンをも提供する。
一つの態様においてはクローン化された不死化した悪性のヒト成人前立腺上皮
細胞株は少なくとも1つの対立遺伝子のヘテロ接合性の消失を持つものとして特
徴づけられている。ヘテロ接合性の消失は染色体1、8、10および16といった染色
体のうちの一つまたはそれ以上の上に起こり得る。一つの態様においてはクロー
ン化された不死の悪性ヒト成人前立腺上皮細胞株は染色体8pの上の一つまたはそ
れ以上の遺伝子座にヘテロ接合性の消失をもつものとして特徴づけられている。
さらなる態様においてはクローン化された不死の悪性ヒト成人前立腺上皮細胞株
は染色体8pの上の遺伝子座12から21に一つまたはそれ以上の対立遺伝子のヘテロ
接合性の消失をもっている。
ある態様においてはクローン化された不死の悪性ヒト成人前立腺上皮細胞株は
D8S133、D8S136およびD8S131の上部の対立遺伝子の消失をもつものとして特徴づ
けられる。クローン化された不死化した細胞株はATCC CRL-12265として1997年1
月15日にブダペスト条約の規定に基づいてRockville,MarylandのAmerican Type
Culture Collectionに供与されたクローン化された不死の悪性ヒト成人前立腺上
皮細胞株である1542-CP3TX.8.1と同定される特徴を持っている。
もう一つのある態様においてはクローン化された不死の悪性ヒト成人前立腺上
皮細胞株はD8S133、D8S136およびD8S131の上位の対立遺伝子の消失をもつものと
して特徴づけられている。クローン化された不死化した細胞株はATCC CRL-12264
として1997年1月15日にブダペスト条約の規定に基づいてRockville,MarylandのA
merican Type Culture Collectionに供与されたクローン化された不死の悪性ヒ
ト成人前立腺上皮細胞株である1542-CP3TX.8.4と同定される特徴を持っている。
もう一つのある態様においてはクローン化された不死の悪性ヒト成人前立腺上
皮細胞株はSFTP-2、D8S136およびC8S131の下位の対立遺伝子およびC8S133および
NEFLの上位の対立遺伝子の消失をもつものとして特徴づけられている。クローン
化された細胞株はATCC CRL-12263として1997年1月15日にブダペスト条約の規定
に基づいてRockville,MarylandのAmnerican Type Culture Collectionに供与さ
れたクローン化された不死の悪性ヒト成人前立腺上皮細胞株である1535-CP1TX.1
4.3と同定される特徴を有する。
本発明の細胞系およびクローン細胞はヒトパピローマウィルス(HPV)遺伝子ま
たはその一部を用い、不死化される。ある具体例として、悪性細胞は組換えレト
ロウィルスのE6およひE7をコードするHPVの部分を用い不死化される。本発明の
不死化した悪性前立腺上皮細胞の培養細胞は、1年以上にわたり安定で生存可能
のままである。
本発明はヒト成人前立腺上皮細胞の純粋な細胞系の単離およびクローン化の方
法を提供するものである。特に、この方法は細胞培養から非上皮細胞、特に線維
芽細胞を除去するのに効果的である。この方法は一次腫瘍を、形態的に正常な前
立腺および悪性の前立腺に類似の細胞または組織へ精密に切開することを必要と
する。線維芽細胞の成長を阻害するために牛胎児血清および/またはコレラトキ
シンをほとんど含まない、またはまったく含まない培地で培養される。分別トリ
プシン処理も培養中の前立腺上皮細胞から線維芽細胞を除去するために用いられ
る。その結果、上皮細胞系は90%以上、好ましくは100%純粋である。引き続き行
う細胞系のクローン化の結果、細胞は100%純粋な上皮細胞となる。
本発明のもう一つの面は不死化した悪性前立腺上皮細胞の選択の方法である。
以前の当該技術分野においては、悪性前立腺上皮細胞を正常な前立腺上皮細胞か
ら区別する方法として、PSA発現、PAP発現、アンドロゲンによるPSA系の正の制
御(up-regulation)、ヌードマウスにおける悪性腫瘍の増殖、および異数体の核
型などのマーカーを用いてきた。しかし、これらのマーカーでは、悪性の前立腺
上皮細胞を正常細胞から確実に区別することはできない。ヘテロ接合体の喪失を
指標とする、本発明の不死化した悪性の前立腺上皮細胞の選択の方法は、恒常的
で再現性のある選択の方法を提供する。この方法は特定の染色体上の対立遺伝子
座の特異的な欠失を同定する、少なくとも一つのDNAマーカーを利用する。こ
の方法の態様として、DNAマーカーは8番染色体上の対立遺伝子座の特異的欠失を
同定する。この方法は、特定の染色体上の一つ以上の対立遺伝子座の欠失、また
は複数の染色体上の対立遺伝子座欠失を同定するために多くのDNAマーカーを
用いるだろう。
悪性細胞を検出および同定する方法において、特定の染色体上の遺伝子座に特
異なPCRプライマーを、不死化した前立腺上皮細胞系から単離したDNAと保温し、
PCR検定を行う。既知の正常細胞から得たDNAコントロールとの比較により、増幅
産物を一つまたはより多くの遺伝子座位についてLOHを解析する。LOHの基準は、
正常なDNAコントロールとの比較で、最低75%の対立遺伝子座欠失が悪性細胞で
放射線写真により検出されることである。当該技術分野において通常の知識を有
するものに知られる他の方法は、差異を検出するためのデンシトメーター解析を
含み、LOHの基準は悪性細胞で最低30%の対立遺伝子座欠失が検出されることで
ある。
本発明の不死化した悪性前立腺上皮の細胞系およびクローンは、正常な前立腺
細胞では見いだされないまたは活性でない、悪性前立腺上皮細胞に特異的または
過剰発現している新規遺伝子の同定にも役立つ。この新規遺伝子には癌誘導遺伝
子、増殖因子遺伝子、癌遺伝子、癌抑制遺伝子が含まれるが、これに限らない。
これらの遺伝子は当該技術分野において通常の知識を有するものに知られる、標
準差し引きハイブリッド形成、差異表示法、または標本差異解析(RDA)(51,52)な
どのRNA差し引き解析の方法を用いて同定される。新規遺伝子は当該技術分野に
おいて通常の知識を有するものに知られる標準的分子生物学の技術を用いてクロ
ーニングされる。前立腺ガンの発達に関与する新規遺伝子の同定は、前立腺ガン
の阻害または抑制に役立つ反コード鎖オリゴヌクレオチドの開発(42)または組換
えDNAワクチンの開発を可能とするだろう。
本発明の細胞系は上皮細胞癌遺伝子学のモデルとして役立つ。例えば、本発明
の前立腺上皮細胞系は、とくに前立腺ガンの腫瘍化を理解する上で役立つ。本発
明は良性から悪性へと細胞の表現型が変わるときの遺伝学的出来事を規定する指
示薬として、同じ患者由来の悪性前立腺細胞系との組み合わせに用いるため、お
よび前立腺ガンの遺伝形質の役割の調査のための良性の前立腺細胞系を提供する
。
本発明の細胞系は前選択タンパク質またはその一部の生産方法や悪性前立腺上
皮細胞起源タンパク質の生産の方法に利用することが可能である。例えば、本発
明の細胞系は診断のためのマーカーまたは免疫治療の標的として働く前立腺ガン
関連タンパク質の単離に役立つ。発明の具象において、タンパク質の生産方法は
、本発明の上皮細胞系の培養の工程、および新規細胞により産生される一つまた
はそれ以上のタンパク質の回収の工程を含むように規定される。そのようなタン
パク質をコードする遺伝子の同定は、標準的科学技法を用い、組換えベクター、
およびタンパク質またはその一部の効率的大容量生産のための宿主細胞の構築を
可能とする。
本発明は、前立腺ガン関連タンパク質またはその一部を発現する新規組換えウ
ィルスを含む。組換えウィルスは一つまたはそれ以上の共刺激分子、サイトカイ
ン、MHC分子、ケモカイン、および前立腺ガン関連タンパク質またはその一部に
対する免疫応答を増強する類似の分子を発現するだろう。組換ウィルスベクター
による外因性遺伝子産物の構築および発現は、当該技術分野において通常の知識
を有するものに知られる方法でおこなう(43-50)。
本発明は不死化したヒト成人前立腺上皮細胞系またはクローン由来のDNAまた
はRNAを含む。興味深いことは、不死化したヒト悪性成人前立腺上皮細胞から単
離したDNAまたはRNAはLOHを示す。また、興味深いのは、調和した自家移植をし
た、不死化ヒト正常細胞、および悪性成人前立腺上皮細胞由来のDNAおよびRNAで
ある。単離したDNA、およびRNAまたはそれらのオリゴヌクレオチドは前立腺ガン
または個体の前癌の検出および診断に用いられるだろう。DNA、および器Aまたは
オリゴヌクレオチドは、サザンブロット解析、ノザンブロット解析、PCR、RT-PC
Rおよび前立腺ガンまたは前癌の検出および診断に用いられる解析などの標準的
分子生物学の技法で用いられるプローブ探査および/またはプライマーとして用
いられる。興味深いことは、1、8、10および16番染色体などの一つまたはそれ以
上の染色体上の対立遺伝子座の欠失を有するDNAと対応するRNAである。特に興味
深いのは、8番染色体上の一つまたはそれ以上の対立遺伝子座の欠失を有するDNA
と対応するRNAである。
前立腺ガン抗原またはその抗原基(エピトープ)をコードするむき出しのDNA
は前立腺癌に対する活発な免疫治療のために用いられるだろう。当該技術分野に
おいて知られる技術を用いて、コードされる前立腺ガン抗原またはその抗原基に
対する細胞性および体液性の両方の免疫反応を誘導するために、むき出しのDNA
または脂質に結合させたむき出しのDNAを筋肉または皮膚へ注射することができ
る(33-41)。
本発明の細胞系は生体内または試験管内での前立腺癌に対する治療薬の効果の
検定にも役立つ。例えば、化学治療薬、生体反応調節剤、またはアンチセンスオ
リゴヌクレオチドなどの遺伝的試薬について、この効果をスクリーニングできる
。検定すべき化学試料または薬剤は生体内または試験管内で細胞存在下に置かれ
る。適当な期間の露出後、細胞に対する化学試料または薬剤の効果は、細胞毒素
検定、タンパク質阻害検定、腫瘍増殖の阻害などの当該技術分野において知られ
る方法により検定される。生命維持に必要な代謝機能を阻害する、または細胞を
殺す化学試料または薬剤は効果的な治療薬と考えられる。
本発明の細胞系およびクローンは、前立腺ガンの治療または再発を防ぐための
全細胞ワクチンとしても役立つ。全細胞ワクチンは、そのままで、佐剤との組み
合わせで、又は例えはさまざまなサイトカイン、ケモカイン、共刺激分子、接着
分子、MHC分子などをコードする外因遺伝子(トランスジーン)により修飾した
形で投与される。そのような修飾は、本発明の免疫原およびワクチンの免疫治療
効果を高めるために用いられる。
遺伝子は、エレクトロポレーション、ポリブレン誘導DNA導入、プラスミドや
組換えウィルスなどを介して、などでの当該技術分野において知られる方法によ
り、不死化したヒト悪性前立腺上皮細胞系またはクローンへ組み込まれる。一つ
またはそれ以上の目的の遺伝子を含む組換えウィルスはWO94/16716,WO96/11279
およびWO96/10419に記載されるように構築される。
本発明において用いることができる共刺激分子は、B7-1,B7-2,B7-3,ICAM-1,LF
A-1,LFA-3,CD72などを含むがこれらには限らない。
本発明において利用できるサイトカインはIL-2,GM-CSF,TNFα,IFNγ,IL-12,IL
-4,IL7などを含むがこれらには限らない。
MHC分子はクラスI、クラスII分子などを含むがこれに限らない。非標準MHC分
子、またはCD1などのMHC類似分子もまた用いられるだろう。
ケモカインは、RANTES,IL-8,MIP1-α,MIP-βなどを含むがこれらには限らない
。
本発明の細胞系は、前立腺ガン反応性抗体を生じる刺激剤、または末梢血また
はリンパ節の細胞由来の免疫細胞の刺激剤として、前立腺ガン患者の処置のため
の治療上有益である。
本発明は免疫系に認識される前立腺ガン関連抗原の分子クローニングへの使用
のための不死化した前立腺細胞系を提供する。クローニングされた抗原は前立腺
癌の抑制または治療のための組換えワクチンへと開発される。
さらに本発明は、本発明の不死化細胞系からなる薬剤化合物、並びに不死化細
胞系および不死化細胞系からなる薬剤組成物の薬理的、治療的、および診断的使
用を提供する。
薬剤組成物、ワクチンおよび免疫原は薬理分野において通常の技術を有するも
のに知られる標準的技術に従い調製される。そのような組成物は、患者に対し患
者に必要な投薬量を当該技術分野において通常の技術を有するものに知られる技
術で、患者ごとの年齢、体重、及び体調などの因子およびを考慮に入れ、適した
投薬方法により投薬されることが可能である。
組成物、ワクチンおよび免疫原による免疫化の方法は、非経口的方法(静脈注
射、腹膜下注射、皮内注射、筋肉注射または皮下注射)であろう。組成物、ワク
チン、および免疫原は腫瘍隗へ直接投与してもよい。さらに、組成物は試験管内
において抗原特異な細胞毒性Tリンパ球を刺激するために用い、そののちこのリ
ンパ球を患者に戻すこともできる。
組成物、ワクチン、および免疫原は、ミョウバン、不完全フロイント佐剤、お
よびその類似物、サイトカイン、共刺激分子、ケモカイン、接着分子、HMC分子
などの佐剤とともに共投与または連続投与されるだろう。さらに、組成物、ワク
チン、および免疫原は、抗新生物薬、抗腫瘍薬、抗癌薬として、および/または
抗新生物薬、抗腫瘍薬、抗癌薬の副作用を減少させるあるいは緩和させる薬剤と
ともに共投与または連続投与されるだろう。
ワクチンまたは本発明の組成物の例は、懸濁液、シロップ剤、エリキシル薬、
および非経口として皮下注射、皮内注射、筋注射、または静脈注射などのための
調製などの液体製剤を含む。薬剤組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコースな
どの安定な担体、希釈液、または補形剤とともに混合されるだろう。
処置の効果は、悪性細胞または前立腺癌のペプチドまたはそれらの一部分を認
識する抗体または免疫細胞の産生、抗原特異細胞毒性の評価、特異的サイトカイ
ンの産生、または腫瘍の後退により検定されることが可能である。
不死化したヒト成人前立腺上皮細胞またはその一部分はキットの型式で供給さ
れるだろう。そのキットは一つまたはそれ以上の不死化ヒト成人前立腺上皮細胞
またはその一部分を含むだろう。その一部分とは溶解した細胞、細胞断片、細胞
間物質、細胞外成分、タンパク質、DNA、RNA、糖脂質などを含む。キットは自己
由来のヒト成人悪性不死化前立腺上皮細胞またはその一部分を、自己由来のヒト
成人正常不死化前立腺上皮細胞またはその一部分との組み合わせで含んでもよい
。ある態様において、キットは不死化したヒト成人正常細胞系、1532-NPと自己
由来不死化ヒト成人悪性細胞系、1532-CP1および/または1532-CP2の組み合わせ
からなる。別の態様においては、キットは不死化したヒト成人正常上皮細胞系、
1535-NPと自己由来不死化ヒト成人悪性細胞系、1535-CP1、1535-CP2および/ま
たは1535-CP1TX.14.3.の組み合わせからなる。また、別の態様において、キット
は不死化したヒト成人正常上皮細胞系、1542-NPと自己由来不死化ヒト成人悪性
細胞系、1542-CP1、1542-CP2、1542-CP3、1542-CP3TX.8.1.および/または1542-
CP3TX.8.4.のうち一つまたはそれ以上との組み合わせからなる。キットは適当な
担体、希釈液、補形剤を含む個別の容器を含んでもよい。キットは、佐剤、サイ
トカイン、共刺激分子、ケモカイン、接着分子、MHC分子、抗新生物剤、抗腫瘍
剤、免疫検定試薬、PCR試薬、放射線標識なども含んでもよい。付加的に、キッ
トは材料の混合または結合、および/または投与の教本を含むだろう。
ここで用いられた「不死化した」という用語は、細胞系が、ガラス器具ないに
おいて最適な増殖培地で培養したとき、老化することなく連続的に増殖するとい
うことを意味する。
本発明はこの発明の細胞系に対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体
を含む。これらの抗体は本発明の方法で用いる抗体含有組成物の調製に用いられ
ることが可能である。抗体は当該技術分野において通常の技術を有するものに知
られる方法に従い調製される。特に、本発明の不死化した前立腺細胞系に対し産
生されたモノクローナル抗体は、前立腺ガンの検出および治療への使用に有用で
ある。抗体またはその抗原結合部位は悪性前立腺細胞に結合する。抗体またはそ
の抗原結合部位は、少なくとも一つの前立腺腫瘍拒絶抗原、または少なくとも一
つの前立腺ガン関連抗原およびその抗原基に対し免疫反応性を有する。
例示的抗体分子は、完全イムノグロブリン分子、実質的完全イムノグロブリン
、またはF(ab)、F(ab)2、およびF(v)を含む抗原結合部位を有するイムノグロブ
リン分子の部分である。ポリクローナルまたはモノクローナル抗体は当該技術分
野において通常の技術を有するものに知られる方法に従い調製される(Kohler an
d Milstein,1975 Nature 256:495-497;Campbellモノクローナル抗体技術、ゲッ
シ動物とヒトのハイブリドーマの製造と特徴Burdon et al(eds)(1985),生化学お
よび分子生物学における研究技術13巻、Elsevier Science Publishers,Amsterda
m)。抗体またはその一部分は、Traunecker et al The EMBO J.10(2):3655-3659,
1991およびMilenic,D.E.et al Cancer Research 51,6363-6371,191およびヒ
ト型抗体に関しては米国特許第5,530,101に記載されるように、キメラ抗体、一
本鎖抗体技術を含む遺伝工学的技術により製造されるだろう。
抗体またはその一部は免疫治療に用いられるだろう。抗体またはその一部は単
独で、または当該技術分野において知られる化学治療剤または免疫抑制剤ととも
に投与されるだろう。
抗体またはその一部は特に悪性前立腺細胞を標的し、殺傷するための免疫毒素
としても用いられるだろう。免疫毒素は2つの構成要素により特徴づけられ、試
験管内、または生体内において選択的に細胞を殺傷するのに特に有用である。一
つの構成成分は、細胞が接触または吸収されたとき、通常は細胞に致死的に作用
する細胞毒性剤である。2つめの構成成分は、輸送媒体として知られ、毒性剤を
悪性前立腺細胞など、特定の細胞型に対し輸送する手段を提供する。2つの構成
成分は、さまざまなよく知られる化学的段階により互いに結合される。例えば細
胞毒性剤がタンパク質のとき、抗体への連結はヘテロ二官能性架橋剤、例えばSP
DP、カルボジイミド、グルタルアルデヒド、およびその類似体などによって行わ
れるだろう。さまざまな免疫毒素の産生の手順は、当該技術分野においてよく知
られている、例えば「モノクローナル抗体-毒素融合体:魔法の弾薬を目指して
」、Thorpe et al,臨床薬におけるモノクロナル抗体,Academic Press,pp.168-1
90(1982)の中に見られる。構成成分は、Chaudhary et al Nature 339,394(1989
)に概説されているようにして連結することもできる。
さまざまな細胞毒素は免疫毒素における使用に適している。細胞毒薬剤は、ヨ
ウ素-131または他のヨウ素同位体、イットリウム-90、レニウム-188、ビスマス-
212、または他のα線放出体などの放射線核種や、ビンデシン、メトトレキサー
ト、アドリアミシン、タキソール、およびシスプラチナムなどの多くの化学治療
薬や、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、シュードモナス外毒素A、リシン、ジ
フテリア毒、リシンA鎖およびこれらの類似物(Chimeric oxins,Olsnes and Phil
l,Phannac.Ther.25,355-381(1982)のようなリボソーム阻害タンパク質、およびM
onoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,eds.Baldwin and By
ers,pp.159-179,224-266,Academic Press,1985を参照)などの細胞毒タンパク質
を含むが、これらに限らない。
診断の目的に対し、抗体は標識または非標識のどちらでも用いられるだろう。
非標識抗体は他の標識された抗体との組み合わせで用いられるだろう。放射線核
種、蛍光、酵素、酵素基質、酵素共因子、酵素阻害剤、試薬、およびそのような
ものなど多くの種類の標識が用いられる。多くの型の免疫検定が有用であり、当
該技術分野において通常の技術を有するものにより知られる。
本発明中の細胞系、遺伝子、タンパク質、および抗体はさまざまな治療および
診断に有用である。より特異的な例証を以下に記載する。
明記した参考文献は参照により本明細書に援用される。
実施例1
(1)培養上皮細胞系列が生成された患者の性質
前立腺上皮細胞系列が、中ないし高度の段階(Gleason段階6-8)の腫瘍を持つ点
で一貫性のある6人の患者に由来する根治的前立腺切除の標本から生成された。(
表1を参照のこと。)細胞の培養は、新鮮な根治的前立腺切除標本から切除された
一次腫瘍結節の機械的な破壊または酵素的な消化によって生成された。培養方法
の詳細な記述は実施例2を参照のこと。
表1:前立腺癌患者:臨床情報
(2)組織標本の病理学的解析
前立腺癌細胞系列の生成に使用した新鮮な組織標本の病理学的解析によって、
ある癌標本は純粋な腫瘍であり、別のものは良性および悪性細胞の混合物から成
ることが明らかになった。標本の予備的同定は、技術を有する病理学者による肉
眼による試験に委ねられた。表2を参照のこと。顕微鏡による同定は技術を有す
る病理学者による10ヶ所の高拡大視野の試験に委ねられた。BPH=良性前立腺肥大
、PIN=前立腺上皮細胞間新生物。a=細胞型の混合物、b=80%の標本が良性の筋繊
維間質からなる。c=ひとつの顕微鏡学的な癌の細胞増殖巣が認められた。
表2:新鮮な前立腺標本の病理学的解析
(3)前立腺由来細胞系列の上皮起源の確認
前立腺由来細胞系列の上皮起源はサイトケラチン染色により確認された。高分
子量および低分子量サイトケラチンの両方が、6個の根治的前立腺切除標本(正常
前立腺、前立腺癌、正常精嚢)に由来する16の細胞系列すべてにおいて発現され
ていた。いずれの前立腺由来の細胞系列も(但し、1519-CPの早期継代は除く)P
SAまたはPAPを発現しなかった。表3を参照のこと:F=線維芽細胞、NP=正常前立腺
、SV=精嚢、CP=癌腫前立腺、a=高分子量および低分子量サイトケラチンの両方を
含む、b=PSAおよびPAPの発現が培養継代数5において記録されたが、試験管内(in
vitro)での継代を続けた後に消えた。c=観察された染色はバックグラウンドで
ある可能性があった。
表3:不死の前立腺上皮細胞系列の免疫細胞化学的解析
(4)細胞表面の表現型の確認
細胞表面の表現型の確認は実施例II表6に記載した。
(5)前立腺上皮細胞系列の遺伝学的解析
第8染色体における対立遺伝子の欠失はPINおよび侵食性前立腺癌と関連してお
り、したがって、前立腺癌標本由来の上皮細胞系列の性質決定のための代替的方
法を示唆している。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を用いた、染色体8p上の10個の
分離した遺伝子座における対立遺伝子の欠失試験により、試験を行った9系統の
クローン化されていない癌由来の細胞系列中の1系統において、1個の遺伝子座に
おけるヘテロ接合性の欠失(LOH)が明らかになり、これが確立された長期の一次
前立腺腫瘍細胞系列であることを示唆している。試験管内(in vitro)での培養の
ためには、最も純粋な腫瘍断片を分離することに細心の注意を払ったが、引き続
きいて、元の腫瘍標本を顕微鏡で評価したところでは、良性の上皮、BPH、PIN、
および/または侵食性の腫瘍からなる変動性の混合物であり(表2を参照)、LOHが
隠されているおそれがあったため、正確な性質決定のためには上皮細胞のクロー
ン化を必要とした。本明細書に記載されている前立腺細胞系列の最終的な遺伝学
的性質決定、および前述の系列の単一細胞のクローン化は以下に記載した。
実施例2
不死悪性前立腺上皮細胞の単一細胞のクローン化および性質決定
材料および方法
一次細胞培養の生成
細胞系列の産生に使用した組織標本は、中度から高度の局地的前立腺癌(Gleas
on段階6-8、腫瘍段階T2CからT3C)の治療のためにNCIにおいて根治的前立腺切除
を実行中の6人の連続的患者から得られた。手術室から直接得られた新鮮な切除
前立腺は無菌条件下で熟練病理学者によって分離された。肉眼による検査におい
て正常な前立腺、前立腺癌、または正常な精嚢と称される組織は、細胞培養を産
生する目的で別個に分離された。培養は機械的な破壊(直径<1cmの断片)または酵
素的な消化(>1cm断片)(21)によって生成された。1510番および1512番の患者から
得られた標本は酵素的な消化により調製され、その後の培養は機械的な破壊によ
って生成された。酵素的消化のために、細分された組織は100mlの消化培地に懸
濁し、撹拌板上に室温で一晩放置した。その結果生じた単一細胞の懸濁液を滅菌
されたPBSによって洗浄し、増殖培地(以下を参照)に再懸濁し、ラット尾部I型コ
ラーゲン(Collaborative Biomedical Products,Bedford,MA)で覆われた6穴プ
レートに分配した。標本の機械的破壊のためには、組織断片を少量の増殖培地中
で2-3mm四方の立方体に注意深く細分し、その結果生じた組織および細胞の懸濁
液を6穴プレートに分配した。全ての培養は1穴あたり1mlの体積で生成され、37
度、5%CO2で保温された。生育中の細胞および組織を固定化し、およびプレート
に接着させるために、それらを2-3日間静置した。次に、未接着の残留断片を注
意深く吸い取り、穴を3-5mlの新鮮な培地で満たした。培養培地は規則的に2-4日
毎に取り替え、増殖している着生細胞は次にトリプシンによる脱離処理を行った
。確立した増殖培養物は組織培養フラスコ(Falcon,Becton Dickinson,Lincoln
Park,NJ)の中で維持した。前立腺および精嚢上皮細胞系列のための増殖培地は
、25μg/mlウシ脳下垂体抽出物、5ng/ml上皮増殖因子、2mM L-グルタミン、10mM
HEPES緩衝液、抗生物質、および5%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)(Biofluids,Roc
kville,MD)を含む、ケラチノサイト血清欠乏培地(ケラチノサイト-SFM。GIBCO-
BRL,Grand Island,NY)からなる。新鮮な組織標本からの上皮培養の生成のため
には、FBSの濃度を1-2%に減少し、および/または夾雑的線維芽細胞の増殖から
保護するために10-20ng/mlの濃度でコレラ毒素(Sigma,St.Louis,MO)を添加し
た。まれに上皮細胞培養液に線維芽細胞が残存する場合は、純粋な上皮細胞
培養物を獲得するために、分別的トリプシン処理(37℃で1-2分保温し、次に、さ
らに着生した上皮細胞を残すために遊離の線維芽細胞を洗浄除去する)が非常に
成功した。
自己由来の線維芽細胞系列は良性の前立腺間質組織の機械的な破壊から産生さ
れ、10%熱不活化FBSを含むRPMI 1640培地で培養された。自己由来のエプスタイ
ン-バーウイルス感染B細胞系列は標準的な技術を用いて産生され、RPMI 1640+10
%FBSにおいて培養された。
転移性前立腺癌細胞の培養
着生の細胞系列LNCaP、DU145、PC-3(ATCC,CRL1740,HTB81,CRL1435の各々)お
よびTSU-Pr1(Johns Hopkins大学,Baltimore,寛大にもMDのWilliam Issacs博士
より提供された;Iizumi et al.,J.Urol.137:1304-1306,1987に記載されてい
る)を10%FBSを添加したRPMI 1640培地において維持した。
一次細胞培養の不死化
細胞培養の不死化は、活性的に増殖している細胞を、ヒト乳頭腫ウイルス血清
型16(HPV16)のE6およびE7形質転換タンパク質および真核生物選択マーカーであ
るネオマイシンリン酸転移酵素をコードするLXSN16E6E7と称されるレトロウイル
ス(寛大にもDenise Galloway博士,Fred Hutchinson Cancer Research Center,
Seattle,WAより提供された)(22)によって形質導入することにより達成された。
不死化の調製において、短期上皮細胞培養(培養継代1-3)を1:2に分け、少なくと
も48時間、6穴プレートにおいて再接着させ、50-60%の集密状態の培養を得た。L
XSN16E6E7組換えウイルスによる形質導入は、培養培地を、10μg/ml DEAE-デキ
ストラン(Sigma)の存在下で24時間の間レトロウイルス産生系列PA317(22)から収
集した培養上清に置き換えることにより達成された。
不死化された細胞培養の単一細胞のクローン化
不死上皮細胞培養のクローン集団はLOH性質の研究のために産生された。簡潔
に述べると、集密的な細胞培養をトリプシンにより採収し、洗浄および計数をお
こなった。細胞は、ケラチノサイト増殖培地(上を参照)において2-5細胞/mlの濃
度に連続的に希釈し、96穴・平底微小培養プレートの穴8-10個に200μl/穴(≦1
細胞穴)ずつ分配した。DNA抽出および低温保存のための十分な細胞を確保するた
めに、<1細胞/穴の希釈に起源をもつ集密細胞を24穴プレートに展開した。
免疫細胞化学的解析
不死化された培養細胞の免疫細胞化学的研究のために、細胞をトリプシンで採
収し、洗浄し、ペレットにした。細胞のペレットは次に10%緩衝化ホルマリンで
固定し、パラフィンで包囲した。前立腺標本由来の新鮮な組織断片もまたホルマ
リンで固定し、パラフィンで包囲した。新鮮な腫瘍標本および培養した細胞塊か
ら5ミクロンの切片を調製し、帯電したスライドの上に乗せた(Fisher Scientifi
c,Pittsburgh,PA)(23)。アビジン-ビオチン・ペルオキシダーゼ複合体法およ
び以下の一次抗体を用いて免疫細胞化学を行った:抗ヒト前立腺特異的抗原(PSA
)モノクローナル抗体(Dako Corp,Carpenteria,CA);抗ヒト前立腺アシッドホス
ファターゼ(PAP)ポリクローナル抗体(Dako Corp,Carpentania,CA);抗ヒトサイ
トケラチンCAM5.2(Becton-Dickinson,San Jose,CA);および抗ヒトサイトケラ
チンAE1/AE3(Boelinger-Mannheim,Indianapolis,IN)。細胞系列および腫瘍組
織断片は細胞の染色の割合(<25%,25-50%,50-75%または>75%)および染色強度(1
+から4+まで)をもとに評価した。
フローサイトメトリー
将来的な研究およびさらなる性質決定のために、長期前立腺上皮細胞系列にお
ける免疫学的に重要な表面分子の発現量を決定することは興味深いことであった
。不死化された細胞培養を採収し、以下のモノクローナル抗体による染色をおこ
なった:CD54(抗ICAM-1),CD80(抗7.1),CD86(抗7.2)(Becton-Dickinson),W6/32(
抗HLA-A,B,C)およびL243(抗HLA-DR)(ATCC,Rockville,MD)(21)。MHC分子の表面
での発現を増強させるために、フローサイトメトリー解析の前に細胞をIFN-γ50
0U/mlの存在下で72時間培養した。
顕微解剖およひDNA抽出
ホルマリンで固定しパラフィンで包囲した組織試料由来の正常な前立腺上皮細
胞または侵食性腫瘍細胞の、選択した細胞増殖巣の顕微解剖は既に記載したとお
り直射光顕微鏡可視化のもとで行われた(24,25,26)。簡潔に述べると、未染色の
ホルマリン固定およびパラフィン包囲した5ミクロンの組織学的組織断片をスラ
イドグラス上に調製し、およびキシレンによって2回脱パラフィン化し、95%エタ
ノールで2回洗浄し、エオシンで染色して風乾した。隣接した断片はヘマトキシ
リンおよびエオシンで染色した。興味のある特異的細胞をエオシン染色したスラ
イドグラスから選択し、改良を加えた使い捨ての30ゲージの針で顕微解剖した。
DNAは顕微解剖により得られた1-5X103個の細胞から抽出した。場合によっては、
癌または正常な上皮の分離した隣接する一つ以上の細管に由来する細胞を組み合
わせた。DNAはまた活性的に増殖している不死化された培養から得られた1-5X104
個の細胞からも抽出した。細胞は即座に、0.01M TRIS-HC1 pH8.0,1mM EDTA,1%
Tween 20,および0.1mg/mlプロテイナーゼKを含む溶液(顕微解剖した細胞に対し
ては20μl、または培養細胞に対しては200μl)に再懸濁し、37℃で一晩インキュ
ベートした。インキュベーションに続いて、プロテイナーゼKを不活化するため
にその混合物を5-10分煮沸し、次のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析のために4℃
で保存した。
ヘテロ接合性の欠失の検出
染色体8p12-21におけるLOHの検出のために使用した多DNAマーカーにはSFTP-2
,D8S133,D8S136,NEFL,D8S137,D8S131,D8S339,およびANKを含めた。DNAミ
クロサテライトマーカーを増幅するために使用したPCRプライマーの組は以下の
通りである:
1)SFTP2
核酸配列:6861
プライマー:プライマー名 プライマー配列
SFTP2CA CAGCCCAGACAGGCTGGAA(Seq.ID No.1)
SFTP2GT ACTTTTCTGGCCAAACTCCTG(Seq.ID No.2)
増幅配列最小長:0.111
増幅配列最大長:0.157
Wood,S Genomics 24:597-600,1994に記載されている。SFTP2は8p11-8p22の間
の領域に位置する。
2)D8S133
核酸配列:M73471
プライマー:プライマー名 プライマー配列
D8S133CA CAGGTGGGAAAACTGAGGGA(Seq.ID No.3)
D8S133GT AGCAACTGTCAACATATTGCTC(Seq.ID No.4)
増幅配列最小長:0.094
増幅配列最大長:0.112
Wood,S Cytogenet Cell Genet 58:1932,1991:Wood,S Genomics 13:232,1992に
記載されている。
3)D8S136
プライマー:プライマー名 プライマー配列
D8S136CA GCCCAAAGAGGAGAATAAA(Seq.ID No.5)
D8S136GT CTGTTTCCACACCGAAGC(Seq.ID No.6)
増幅配列最小長:0.071
増幅配列最大長:0.089
Wood,S Cytogenet CellGenet 58:1932,1991に記載されている。
4)NEFL
核酸配列:L04147
プライマー:プライマー名 プライマー配列
214 GCAGTAGTGCCGCAGTTTCA(Seq.ID No.7)
215 TGCAATTCATCTTCCTTTCT(Seq.ID No.8)
増幅配列最小長:0.137
増幅配列最大長:0.147
Rogaev,E.Hum.Mol.Genet.1:781,1992に記載されている。
5)D8S137
核酸配列:X61694
プライマー:プライマー名 プライマー配列
D8S137CA AAATACCGAGACTCACACTATA(Seq.ID No.9)
D8S137GT GCTAATCAGGGAATCACCCAA(Seq.ID No.10)
増幅配列最小長:0.152
増幅配列最大長:0.161
Wood,S Cytogenet CellGenet 58:1932,1991;Wood,S Nucleic AcidRes.19:66
64,1991に記載されている。
6)D8S131
プライマー:プライマー名 プライマー配列
131CA2-1 ACATAGGCTGGAGAGTCACAGG(Seq.ID No.11)
131CA2-2 GGATGAGGCTCAGCACACAAGC(Seq.ID No.12)
増幅配列最小長:0.132
増幅配列最大長:0.144
引用に記載されている:Yu,CE Hum.Mol.Genet.3:211,1994。
7)D8S339
プライマー:プライマー名 プライマー配列
WT251-A TAGATGTTACCATTTCAC(Seq.ID No.13)
WT251-B GATTAGATCTTGGATCAG(Seq.ID No.14)
増幅配列最小長:0.162
増幅配列最大長:0.176
引用に記載されている:Thomas,W.Hum.Mol.Genet.2:828,1993。
8)Ank
核酸配列:D16990
プライマー:プライマー名 プライマー配列
ANK1.PCR1.1 TCCCAGATCGCTCTACATGA(Seq.ID No.15)
ANK1.PCR1.2 CACAGCTTCAGAAGTCACAG(Seq.ID No.16)
Polymeropoulos et al.Nucleic Acid Res 19:969,1991に記載されている。
PCRは既に記載されたように行われた(19)。簡潔に述べれば、12.5μl PCR反応
混合物は、200μM dATP,dGTPおよびdTTP;40μM dCTP;0.8mMプライマー(Rese
arch Genetics,Huntsville,Ala.,またはApplied Biosystems DNA合成機におい
て合成された);2μCi[α32P]dCTP;16μM塩化テトラメチルアンモニウム(27
);1X PCR反応緩衝液(1.25mM MgCl2を含む)および1ユニットのTaqポリメラー
ゼ(Boelinger Mannheim)を含めた。マーカーD8S133およびD8S137においては生成
産物の増幅および精度を改善するために5%DMSOを加えた。すべてのマーカーにつ
いて反応は以下のように行われた:95℃2分、次に28から40サイクル(マーカーに
依存する)のアニーリングおよび伸長反応(95℃30秒、アニーリング温度で30秒、
および72℃30秒)および72℃で2分間の保温と続けた。各々のマーカーに対する
アニーリング温度は、プライマーの長さおよび組成に基づく最初の推算から経験
的に決定した。
標識された増幅DNA試料を90℃で5-10分変性し、7%アクリルアミド(30:0.8アク
リルアミド:ビスアクリルアミド)、5.6M尿素、32%ホルムアミドおよび1X TBE(0
.089M Tris pH8.3、0.089Mホウ酸、0.002M EDTA)からなるゲルにのせた(28)。試
料は95で2-4時間電気泳動した。ゲルは配列決定用ゲルろ紙(Bio-Rad)に転写し、
Kodak X-OMATフィルムによって放射線写真を行った。LOHの基準は、一つのアリ
ルにおいて、自己由来の新鮮なPBL対照と比較して少なくとも75%の欠失として、
3人の独立な検査員による直接可視化によって決定された。十分な量のDNAが使用
可能な場合は、LOHは少なくとも2種類の独立した実験によって証明した。
結果
細胞培養のための組織獲得
一次(非転移性)標本由来の不死前立腺腫瘍細胞系列の生産には従来困難が伴
うことが知られていたため、先ず最も大きな粗悪な外見の癌小結節(1から3cm
)が、培養細胞を生産するための新鮮な組織原として選択された。次に最初の3
試験(患者1510、1512、1519)由来の隣接する組織分画の顕微鏡観察にから、「
癌」標本には良性前立腺上皮、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺上皮内腫瘍形成
(PIN)および浸潤性癌細胞の様々な混合物が含まれることが判明した。しかし
、患者1512および1519由来の「正常」標本は良性の前立腺上皮のみから構成され
ていた(表2)。
後の患者から癌細胞系列を生成するための純粋癌細胞を得る可能性を上昇させ
るために、小組織断片(<1cm)が組織培養、凍結およびパラフィン切片用の隣
接切片とともに獲得された。さらに、可能な場合には、複数の別々の癌組織断片
が培養細胞作製のために個々の標本から選択された。これらのより緊縮な条件を
用いることにより、3つの根本的前立腺除去手術標本(患者1532、1535、1542)
について7回中6回の試験で少なくとも95%の腫瘍形成細胞(PINと侵入腫瘍)を
含む組織切片を獲得することが可能であった。さらに、3つの良性前立腺上皮細
胞系列および2つの良性精嚢上皮細胞系列の生成に適した組織断片が、これらの
根本的前立腺除去手術標本から解剖摘出することに成功した(表2)。
前立腺由来細胞系列の不死化および免疫細胞化学的分析
表2に示された17組織標本(患者1519由来正常前立腺)のうち1つを除いて全
てが短期間培養で容易に確立された。しかし、細胞増殖は比較的遅く、5-6週間
以上の生存能力のある活発に成長する培養細胞を確立するためには、試験管内で
の上皮培養細胞の不死化が必要であった。粘着性単層培養細胞が、HPV16のE6お
よびE7形質転換タンパク質をコードする組換えレトロウイルスで2または3継代
に渡って形質転換され、その結果16個の長期上皮細胞系列が生じた。そのうち4
個は正常前立腺由来、2個は精嚢由来、10個は一次癌標本由来である。さらに、
4患者の前立腺ストロマから生成した不死繊維芽細胞系列が確立された。形質転
換の成功は、1mg/ml濃度のG418中での細胞生存率、および同時に観察された非不
死化培養細胞に比べて、50培養継代以上の細胞生存率の増加と増殖の速さにより
確認された(図1A)。顕微鏡下で、全ての不死化前立腺上皮細胞系列は良性組織
由来か悪性組織由来かによらず同じ形態を示した。即ち、培養細胞の形態は良性
細胞を悪性細胞から区別するための指標にはならない(図1B)。
前立腺由来の細胞系列の上皮および前立腺起源を確認するために、免疫細胞化
学分析が活発に増殖する不死培養由来の細胞塊に対して行われた(表3)。正常
前立腺由来、正常精嚢由来および前立腺腫瘍標本由来のものを含む、当研究室で
生成した全ての上皮細胞系列により、高および低分子量サイトケラチンが発現さ
れた。75%以上の細胞が、確立された転移性前立腺腫瘍細胞系列LNCaP、DU145、P
C-3およびTSU-Pr1で観察された染色と同程度の強度4+で染色された。即ち、これ
らの培養の上皮起源が確証された。対照の繊維芽細胞系列または黒色腫細胞では
いかなる有意なサイトケラチン発現も観察されなかった。
サイトケラチン発現陽性によって、一次前立腺腫瘍標本から生成した細胞系列
が事実上皮起源であることが示されたが、これらの培養細胞による前立腺関連タ
ンパク質PSAおよびPAPの発現を検査することも同様に重要であった。患者1519か
ら生成した不死前立腺腫瘍由来細胞系列(1519-CPTX)のみが、5培養継代後も
これらのタンパク質を検出可能なレベルで発現した(各々、>75%の強度2-3+の
細胞染色、および>75%の強度4+の細胞染色)。しかし30培養継代後では、PSAお
よびPAPの発現は1519-CPTXにおいてもはや検出されなかった。さらに、この細胞
系列の継代の後期では、発現はIFN-5-アザ-2'-デオキシシチジンまたはジヒドロ
キシテストステロンにより誘導されなかった。PSAおよびPAPの発現のための固定
された前立腺腫瘍組織切片の免疫組織化学的検定からは、しばしば癌炭化の弱い
不均質の染色と、これらのタンパク質のいかなる検出可能な発現も示さないいく
つかの癌フォーカスが見られた。反対に、同じ顕微鏡下の分画でのすべての正常
な腺はPSAおよびPAPについて強く均一に染色された(図2)。前立腺腫瘍細胞に
よる生体内(in situ)でのPSAおよびPAPの弱い不均質な発現は、不死化前立腺
癌由来細胞系列で発現が見られないことを説明し得る。しかし、良性前立腺上皮
細胞系列で発現がないことは相当する組織分画で観察される強い発現と相関せず
、PSAおよびPAPの発現の欠損は試験管内での細胞培養の結果としても生じ得ると
いうことが示唆される。
顕微解剖された組織でのLOHについての染色体8pの検定
上述したように、本発明の「前立腺腫瘍」細胞系列は多くの場合、良性および
悪性の細胞型の混合物を含む組織試料に事実上由来する(図2)。全ての培養細
胞は長期増殖を誘導するためにレトロウイルスでの形質転換を必要とし、また良
性および悪性の形質転換された前立腺上皮細胞は形態的にも組織化学的にも区別
が不可能であるため、新規に生成した培養細胞の特性決定のための代替法として
LOH分析の使用が開発された。まず対応する新鮮な組織切片から顕微解剖された
癌フォーカスまたは正常上皮細胞において、染色体8p12-21上のLOHが検査された
。顕微解剖された前立腺腫瘍標本における高割合のLOHを検出することが示され
ている(19)、8つのミクロサテライトマーカーのついたパネルが染色体8p欠失
を同定するために選択された。8つのミクロサテライトマーカーのパネルは、図
3に示すように、染色体8の遺伝子座11から21の欠失を同定することができる。
顕微鏡下で正常な外見をもつ細胞が悪性形質転換の前駆体としてLOHを含むと仮
定することにより、低温保存された新鮮な、自己由来のPBLがLOH分析のための正
常の対照として用いられた。6患者全てが、新鮮なPBL由来のDNAの分析により、
検査された4または8つ以上の遺伝子座でヘテロ接合している(情報を与える)こ
とが示された。しかし、2患者(1519および1532)については、顕微解剖された
癌標本はLOHの証拠を示さず、LOH分析はこれらの標本に由来する培養細胞の特性
決定に有用であり得ないことが示唆された(表4)。
表4 前立腺腫瘍または良性上皮の顕微解剖病巣における染色体8p上のLOH
異型接合性の保持(○)
異型接合性の欠失(●)
非情報的(同型接合性対立遺伝子)(―)
非決定(nd)
反対に、患者1510および1512からの顕微解剖された腫瘍は検査された全ての情
報座位においてLOHを示した。患者1535については、6つの別々の顕微解剖され
た癌フォーカスが検査され、全てがLOHの同様のパターンを示した。興味深いこ
とに、患者1542からの顕微解剖された異なる12の癌のLOH分析からはLOHについて
異
なるパターンが示され、12中4つは検査された16全ての情報対立遺伝子の保持を
示した(表5)。顕微解剖された正常上皮は、患者1510由来の標本を例外として
、染色体8p上のLOHの証拠を示さなかった。患者1510由来の顕微解剖された「正
常な」3つのフォーカスはすべて、自己由来の癌で観察されたLOHのパターンと
一致した大きなLOHを示し、この種の研究のための正常対照としてPBLを使用する
ことの重要性が強調される。
表5 患者1542由来の顕微解剖された前立腺組織および不死化細胞系列におけ
る染色体8p上のLOH
LOHなし(NL)
上部対立遺伝子の欠失(LU)
下部対立遺伝子の欠失(LL)
非決定(nd)
a連続的培養継代番号
b7つの個々のクローンの代表
c30個の個々のクローンの代表
dクローン1542-CP3TX.8.1
eクローン1542-CP3TX.8.4
患者1542由来の不死化細胞系列のLOH分析
患者1542から生産された細胞培養の異型接合性の欠損は、12の異なる顕微解剖
された癌フォーカスにおいて表れたLOHの様々なパターンにてらして特に興味深
い。この患者はD8S133、D8S136、D8S137、D8S131、D8S339およびANKについて情
報を示している。これらの座位のうち4つにおいて、癌、正常前立腺、正常精嚢
、および正常繊維芽細胞由来の培養細胞における対立遺伝子の欠失に関して詳細
に検査した(表5)。1542-CP3TXとして示す癌由来の初期継代の大量培養(継代
3、6、13)を反復的に分析することからは、検査された4つのミクロサテライト
マーカーのいずれについてもLOHが見られなかった。しかし、21連続培養継代
(約6カ月)後、1542-CP3TXは検査された4つの位置全てにおいて上部対立遺伝
子の欠失を示した。この欠失パターンは、顕微解剖された癌位置7番に見られる
パターンと同じであった。30の単一細胞クローンが1542-CP3TXの継代23より生成
され、全てが非クローン化後期継代培養および顕微解剖された癌7番と同じLOHパ
ターンを示し、大量後期継代細胞系列のクローンの、またはクローンに近い組成
を示した。これらの知見はまた1542-CP3TXの初期継代におけるLOHの検出の失敗
は、大量培養における異なるパターンを持つ複数の癌クローンの存在を示唆し、
PCRに基づく方法でのLOHの検出が阻害されたと思われる。このことを調べるため
、1542-CP3TXの初期継代(継代8)から単細胞クローンが生成され、LOHを検査さ
れた(図4)。9クローンのうち7つは、患者1542由来の顕微解剖された癌のう
ちの12個中3個と同様、D8S136またはD8S131においてLOHを示さなかった。しかし
、1つのクローン(クローン4)(1542-CP3TX.8.4)は顕微解剖された癌7番、15
42-CP3TXの後期継代およびその派生クローンのパターンと同じLOHのパターンを
示し、後期継代大量培養中の多くを占める癌クローンは明らかに非常に初期の培
養継代に存在したことが示唆された。興味深いことに、初期継代1542-CP3TX由来
のクローン1(1542-CP3TX.8.1)は他の8つの初期継代クローンについて観察さ
れたのとは異なるLOHパターンを示し、D8S133、D8S136およびD8S131の下部対立
遺伝子の欠失が伴った。このことは、再び、2つの顕微解剖された癌(1番およ
び3番)において検出されたLOHパターンと一致している。注意すべきは、患者15
42由来の初期および後期継代の不死化培養正常前立腺上皮、精嚢、または繊維芽
細胞を用いた反復的実験ではLOHが検出されなかったことである。このことは癌
から派生した細胞において観察されたLOHは培養によるアーティファクトであっ
たという可能性に対する反証となる。
5つの残りの患者由来の培養細胞における染色体8p12-21のLOHの検査
患者1510および1512において、LOHは顕微解剖された癌標本中の多数の座位で
検出された(表4)。しかし、対応する癌含有組織標本から生成された不死化上
皮培養細胞は、初期または後期培養継代で大量レベルで試験された場合LOHを示
さなかった。同様に、後期培養継代から成長したクローン(1510-CPTXについて
は継代23、1512-CPTXについては継代31)はLOHの証拠を示さなかった。このこと
は、これらの培養が生産されたもとの組織標本にはかなりの量の正常前立腺上皮
が存在すること(表2)と、試験管内が正常細胞が過剰成長することを反映して
いる。非常に初期の培養継代でこれらの細胞系列をクローニングすることがより
多くの価値ある結果を生む可能性がある。
患者1519(1フォーカス)および1532(8フォーカス)由来の顕微解剖された
癌フォーカスの検査はLOHを示さなかった(表4)。それにもかかわらず、これ
らの腫瘍から確立された培養細胞をLOHについて評価した。患者1519の場合は、
大量培養1519-CPTXの検査から、検査された6つの情報座位で異型接合性の保持
が示された。しかし、培養継代24由来の11の単細胞クローンのうち1つが単一の
座位D8S133でLOHを示した。患者1532の場合は、獲得された2つの癌標本のうち
一つから生成された大量培養系列1532-CP2TX(表2)が長時間の培養後のみ(継
代24)にかぎってD8S133、D8S136およびNEFLにおいてLOHを示した。後期培養継
代から生成された10クローンすべても同じ欠失パターンを示した。しかし、患者
1532由来の正常前立腺組織由来の不死化培養細胞の1つは20培養継代後にもLOH
の証拠を示さなかった。同様に、自己由来の不死化繊維芽細胞系列は1532-CP2TX
で失われたのと同じ3つの対立遺伝子における異型接合性を保持した。即ち、単
一の1519-CPTXクローンおよび1532-CP2TXで観察されたLOHから、これらの結果が
分析のために解剖されなかった生体内(in situ)腫瘍フォーカスに存在するLOHを
反映し得ることが示唆される。
患者1535由来の培養細胞で興味深い結果が得られた。この場合、広範なLOHが
6つの別々の顕微解剖された癌フォーカスにおいて示され、全てが同じパターン
の欠失を示した(表4)。前立腺腫瘍から生成された初期および後期継代の培養
細胞は、正常前立腺由来および正常精嚢由来のものと同様、LOHを示さなかった
。同様に、培養継代27で生成された11の癌クローンは欠失を示さなかった。しか
し初期継代癌培養(継代12)のクローニングによって、6つの顕微解剖された癌
病巣と合うLOHパターンを持つ一つのクローンが明らかになった(クローン1535-
CP1TX.14.3)。これらの結果は、患者1542で観察された結果を再現しており、純
粋な癌培養細胞を得るためには組織学的に異質な前立腺腫瘍標本から生成した不
死化培養細胞の初期クローニングが必要であることを示している。
前立腺腫瘍由来の不死化細胞系列によるMHC分子の発現
不死化癌由来細胞系列における表面MHCの発現の検査は、免疫学的研究のため
のこれらの系列の潜在的有用性を考慮するために重要である。6患者全てに由来
する培養は、フローサイトメトリーで決定したところ有意量の表面MHC class 1
と接着分子ICAM-1を発現した(表6)。
表6:不死化前立腺上皮細胞系列によるMHCおよび接着分子の細胞表面での発現
不死化された系列のいかなるものも、MHC class IIまたはB7ファミリーの共刺
激分子(B7.1、B7.2)のどちらも検出可能なレベルでは発現しなかった。しかし
以前にメラノーマ細胞系列で報告されたように(29)、MHC分子の発現がIFN-γ
の存在下で上流制御されることができるかどうかを決定することは興味深い。細
胞系列1532-CP2TX、1535-CP1TXおよび1542-CP3TX由来の不死化された癌を500U/m
l IFN-γの存在下で72時間培養し、その後MHCの発現を検査した。全てが有意量
のMHCc1assII分子の発現を誘導された。さらに処理されていない対照と比較した
場合、MHC class I分子の発現も増強されていた(図5Cと5Aの比較)。このこと
に照らし、これらの不死化癌由来細胞系列は、前立腺一次悪性腫瘍の患者におけ
るCD4+およびCD8+細胞媒介性免疫応答の研究または刺激のために潜在的に有益
な試薬の一つである。
前立腺上皮細胞系列のHLA型決定
前立腺上皮細胞系列が由来する個々の患者についてHLA型決定を行った。A、B
、C型は当該技術分野で既知の方法を用いたリンパ球の血清型決定によって決定
された。DRおよびDQ型は標準的な方法を用いたリンパ球の遺伝子型決定により決
定された。HLA型の結果は表7に示されている。
表7
前立腺上皮細胞系列のHLA型
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