JP2000355720A - フレキシブルプリント回路基板用圧延銅箔およびその製造方法 - Google Patents

フレキシブルプリント回路基板用圧延銅箔およびその製造方法

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JP2000355720A JP16546199A JP16546199A JP2000355720A JP 2000355720 A JP2000355720 A JP 2000355720A JP 16546199 A JP16546199 A JP 16546199A JP 16546199 A JP16546199 A JP 16546199A JP 2000355720 A JP2000355720 A JP 2000355720A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高屈曲性圧延銅箔の軟化温度を適度に高めて
保管中の軟化に伴うトラブルを解消することにより,優
れた屈曲性と適度な軟化特性を併せ持つFPC用圧延銅箔
を提供すること。 【解決手段】 100〜500 wt ppmの酸素を含有し,80 wt
ppm以下のPb , 120 wtppm以下のSn,さらに Ag, Zn,
Cd, Inに関してはそれぞれ350 wt ppm以下,Fe, Ni
, Coに関してはそれぞれ500 wt ppm以下の内の一種以
上を,次式で定義したTが100〜400になる範囲で含有
し, T = 4.5[Pb]+3.0[Sn]+[Ag]+[Zn]+[Cd]+[In]+0.6
[Fe]+0.3[Ni]+0.5[Co] (ただし,[i]は元素iのwt ppm濃度) S,As,Sb,Bi,SeおよびTeの合計量が30 wt ppm以下で
あり,厚さが5〜50μmであり,120〜150℃の半軟化温度
を有し,30℃において継続して300 N/mm2以上の引っ
張り強さを保持し優れた屈曲性と適度な軟化特性を有す
ることを特徴とする,フレキシブルプリント回路基板用
圧延銅箔。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は優れた屈曲性および好適
な製造性を有するフレキシブルプリント回路基板(Flex
ible printed circuit,以下FPCと表記する)等の可撓
性配線部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】有機物を基材としたプリント配線基板
は,ガラスエポキシおよび紙フェノール基板を構成材料
とする硬質銅張積層板(リジット)と,ポリイミドおよ
びポリエステル基板を構成材料とする可撓性銅張積層基
板(フレキシブル)とに大別され,プリント配線基板の
導電材としては主として銅箔が使用されている。銅箔は
その製造方法の違いにより電解銅箔と圧延銅箔に分類さ
れる。
【0003】上記プリント配線基板のうち,フレキシブ
ルプリント回路基板(FPC)は,樹脂基板に銅箔をラミ
ネートし,接着剤あるいは加熱加圧により一体化して形
成される。近年では高密度実装の有効な手段として,ビ
ルドアップ基板と呼ばれる多層配線基板が多く用いられ
ている。このFPCの構成部材となる銅箔には,主に圧延
銅箔が用いられている。
【0004】FPCは,プリンターのヘッド部やハードデ
ィスク内の駆動部等の可動部分への配線が必要とされる
場所に広く使用され,100万回以上の屈曲が繰り返され
る。近年の装置の小型化や高水準化に伴い,この屈曲性
への要求はより高度化している。
【0005】FPCに使用される銅箔の素材には,主にタ
フピッチ銅(酸素含有量100〜500 wt ppm)が用いられ
る。このタフピッチ銅箔は,インゴットを熱間圧延した
後,所定の厚さまで冷間圧延と焼鈍とを繰り返して製造
される。その後,樹脂基板との接着性を向上させるた
め,銅箔には表面に粗化めっきが施される。粗化めっき
後の銅箔は,裁断された後,樹脂基板と貼り合わせられ
る。銅箔と樹脂との貼りあわせには,例えばエポキシ等
の熱硬化性樹脂からなる接着剤が用いられ,張り合わせ
後130〜170℃の温度で1〜2時間加熱して硬化させる。つ
ぎに,銅箔をエッチングして種々の配線パターンを形成
する。
【0006】銅箔の屈曲性は再結晶焼鈍を行うことによ
り圧延上がりよりも著しく向上する。そこで銅箔は焼鈍
状態でFPCの構成部材として使用されるが,この焼鈍は
粗化めっきして裁断した後に加熱処理を行うか,銅箔を
樹脂基板と接着する際の加熱で兼ねる。このように,焼
鈍状態の銅箔を最初から用いず製造工程の中間で焼鈍を
行う理由は,焼鈍後の軟質状態では裁断や樹脂基盤との
貼りあわせの際に銅箔が変形したり,銅箔にしわが生じ
たりするためであり,圧延上がりの硬質の状態の方がFP
Cの製造容易性の点からは有利なためである。
【0007】FPCの屈曲性を高めるためには,その素材
となる圧延銅箔の屈曲性を高めることが有効である。焼
鈍後の銅箔の屈曲性は,立方体集合組織が発達するほど
向上する。また,この立方体集合組織を発達させるため
には,銅箔の製造プロセスにおいて,最終圧延での加工
度を高くすること,および最終圧延直前の焼鈍での結晶
粒径を小さくすることが効果的である(特願平10-10185
8)。
【0008】ところが,このようなプロセスで製造した
銅箔は,圧延で蓄積される塑性歪みが増大するため軟化
温度が著しく低下し,場合によっては,室温で保管して
いても保管期間が長期に及ぶと軟化することがある。上
述したように,すでに軟化した銅箔を用いてFPCを製造
すると,銅箔が変形する等の問題が生じ,FPCの製造容
易性が著しく低下する。したがって,上記の製造プロセ
スを選択して銅箔の屈曲性を向上させる場合,同時に銅
箔の軟化温度を適度に高くする必要がある。
【0009】圧延銅箔が室温で保管中に軟化する問題は
特開平10-230303でも指摘されており,この問題を回避
する手段として50〜90%と低い圧延加工度で銅箔を製造
することが提唱されている。しかし,このような低い圧
延加工度で銅箔を製造すると銅箔の屈曲性は著しく低下
するため,屈曲性が優れた銅箔を製造する場合にこの手
段を用いることはできない。そこで本発明では,従来の
タフピッチ銅箔に合金元素を微量添加することにより軟
化温度を適度な範囲まで高めることを目指した。なお,
過去にFPC用として各種の元素を添加した種々の銅合金
箔が提案されているが,例えば,合金元素を添加する
目的の一つが立方体集合組織((100)方位)の発達を抑
制することであり,しかもこの合金箔の軟化温度は異常
に高い(特許番号第2505480号),多量の合金元素
を,屈曲性を改善する目的で銅に添加している(特開昭
59-78592)等,いずれも本課題を解決するための参考に
はならなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,高屈
曲性圧延銅箔の軟化温度を適度に高めて保管中の軟化に
伴うトラブルを解消することにより,優れた屈曲性と適
度な軟化特性を併せ持つFPC用圧延銅箔を提供すること
である。
【0011】
【課題を改善するための手段】即ち本発明は,上記の問
題点を解決したものであり, 100〜500 wt ppmの酸素を含有し,80 wt ppm以下のPb,
120 wt ppm 以下のSn,さらに Ag, Zn, Cd, Inに関してはそれぞ
れ350 wt ppm以下, Fe, Ni, Coに関してはそれぞれ5
00 wt ppm以下の内の一種以上を,次式で定義したTが10
0〜400になる範囲で含有し, T = 4.5[Pb]+3.0[Sn]+[Ag]+[Zn]+[Cd]+[In]+0.6
[Fe]+0.3[Ni]+0.5[Co] (ただし,[i]は元素iのwt ppm濃度) As,Sb,Bi,SeおよびTeの合計量が30 wt ppm以下であ
り,厚さが5〜50μmであり,120〜150℃の半軟化温度を
有し,30℃において継続して300 N/mm2以上の引っ張
り強さを保持し優れた屈曲性と適度な軟化特性を有する
ことを特徴とする,フレキシブルプリント回路基板用圧
延銅箔。
【0012】(2)酸素が100〜500 wt ppmで,80 wt p
pm以下のPb, 120 wt ppm以下のSn ,さらに Ag, Zn,
Cd, Inに関してはそれぞれ350 wt ppm以下, Fe, Ni
, Coに関してはそれぞれ500 wt ppm以下の内の一種以
上を,次式で定義したTが100〜400になる範囲で含有
し, T = 4.5[Pb]+3.0[Sn]+[Ag]+[Zn]+[Cd]+[In]+0.6
[Fe]+0.3[Ni]+0.5[Co] (ただし,[i]は元素iのwt ppm濃度) S,As,Sb,Bi,SeおよびTeの合計量が30 wt ppm以下
であり,厚さが5〜50μmであり,200℃で30分間の焼鈍
後の圧延面のX線回折で求めた200面の強度(I)が微粉
末銅のX線回折で求めた200面の強度(I0)に対しI/I0
>20.0であり,120〜150℃の半軟化温度を有し,30℃
において継続して300 N/mm2以上の引っ張り強さを保持
し,優れた屈曲性と適度な軟化特性を有することを特徴
とする,フレキシブルプリント回路基板用圧延銅箔。
【0013】(3)上記(1)および(2)に関わる圧
延銅箔を,インゴットを熱間圧延した後,冷間圧延と焼
鈍とを繰り返し,最後に冷間圧延で箔に仕上げるプロセ
スで製造し,最後の冷間圧延の直前の焼鈍をこの焼鈍で
得られる再結晶粒の平均粒径が20μm以下になる条件下
で行い,最後の冷間圧延の加工度を90.0 %を超える値と
し,優れた屈曲性と適度な軟化特性を得ることを特徴と
する,フレキシブルプリント回路基板用圧延銅箔の製造
方法に関するものである。
【0014】銅箔を高加工度または微細結晶粒のプロセ
スで製造して立方体集合組織を発達させれば,屈曲性は
向上するが,軟化温度が低くなり過ぎる。しかし,素材
の微量成分をコントロールすることにより軟化温度を高
めると,適度な軟化温度を有する銅箔を得ることが可能
となる。
【0015】ここでいう適度な軟化温度とは,(1)銅
箔の圧延上がりの引張り強さは400〜500 N/mm2である
が,室温(20〜35℃)で1年間放置しても300 N/mm2
上の引張り強さを保つこと,(2)粗化めっきして裁断
した後の熱処理または樹脂基板と接着する際の熱処理
で,銅箔が軟化すること,の2つの条件によって規定さ
れ,30分間焼鈍の際の半軟化温度(引張強さが焼鈍前と
完全に軟化したときの中間の値になるときの焼鈍温度)
でいえば,120〜150℃の範囲に相当する。
【0016】本発明者らは,優れた屈曲性が得られるプ
ロセスで製造したタフピッチ銅箔の軟化温度を目標の範
囲に収めるために,インゴット溶製の際に添加する元素
として,Pb,Sn,Ag,Zn,Cd,In,Fe,NiまたはCoが適
当であることを見出した。これは以下の理由による。
【0017】(1)活性な元素は溶湯に添加する際に酸
化するため,その濃度を安定してコントロールすること
が困難である。一方,Pb,Sn,Ag,Zn,Cd,In,Fe,Ni
およびCoはそれほど活性でないため,濃度のコントロー
ルが容易である。
【0018】(2)Cu中に添加させた元素は,析出状態
よりも固溶状態の方が軟化抑制効果が著しい。例えばS
のような固体Cu中への溶解度が低く,その溶解度が温度
に対して大きく変化する元素の場合,焼鈍の際に添加元
素の固溶/析出反応が生じ,この反応が軟化特性に大き
な影響を及ぼす。そこで,軟化温度を制御するために
は,元素の添加量だけではなく,固溶/析出反応をも制
御しなければならない。一方,Pb,Sn,Ag,Zn,Cd,I
n,Fe,NiおよびCoはCu中の溶解度が比較的高く,数100
ppm添加してもCu中で固溶状態で存在するため,添加量
だけを制御すれば軟化温度を制御できる。
【0019】以上のように,本発明は,従来のタフピッ
チ銅にPb,Sn,Ag,Zn,Cd,In,Fe,NiまたはCoを添加
し,箔に加工後の軟化温度を適度な範囲にコントロール
することを主旨とするが,この場合,タフピッチ銅中に
含有される不純物を所定のレベル以下に規制した方が,
より正確に軟化温度をコントロールできる。
【0020】本発明に関わる圧延銅箔の限定理由を以下
に示す。本発明では,圧延銅箔を室温において継続して
300 N/mm2以上の引張り強さを保持することを目標とし
た。より望ましくは30℃において1年間保管した場合で
あっても300 N/mm2以上の引張り強さを保持できること
である。
【0021】ここで,30℃とは日本国内の年間平均気温
を超える温度に相当し,銅箔がFPCに加工されるまでの
保管期間は継続してとは,継続して保管されることとが
多く,更に長くても1年間である。また,引張り強さが
300 N/mm2以上であれば,銅箔を加工中にしわが生じる
等のトラブルは発生しない。したがって,30℃で1年間
放置しても300 N/mm2以上の引張り強さを保持できれば
実用上問題はない。このような軟化特性は,30分間焼鈍
したときの半軟化温度に換算すると,120℃以上の温度
に相当する。
【0022】一方,30分間焼鈍したときの半軟化温度が
150℃を超えると, 粗化めっきして裁断した後の熱処理
または樹脂基板と接着する際の熱処理で銅箔が軟化しな
いことがある。そこで,30分間焼鈍したときの半軟化温
度を120〜150℃に規定した。
【0023】FPCの屈曲性を高めるためには,銅箔の屈
曲性を高める必要がある。銅箔は再結晶状態でFPC中に
組み込まれるが,純Cuの再結晶集合組織である立方体集
合組織を発達させれば,銅箔の屈曲性は向上する。満足
できる屈曲性が得られるときの立方体集合組織の発達度
は,X線回折で求めた200面の強度が微粉末銅のX線回折
で求めた200面の強度(I0)に対し I/I0>20.0の関係
であることで規定され,より好ましくI/I0>40.0の関
係で規定される。ここで,200℃で30分間の焼鈍は,X線
強度の測定に際し,銅箔を再結晶させるために行うもの
である。
【0024】Pb,Sn,Ag,Zn,Cd,In,Fe,NiおよびCo
は,半軟化温度を高める目的で添加するが,それぞれの
元素で軟化温度上昇への寄与率が異なるため,元素によ
る重み付けを行う必要がある。そこで,軟化温度上昇指
数(T)を次式で定義した。 T = 4.5[Pb]+3.0[Sn]+[Ag]+[Zn]+[Cd]+[In]+0.6
[Fe]+0.3[Ni]+0.5[Co] ここで,[i]は元素iのwt ppm濃度である。このTが100〜
400の範囲になるように,上記元素を添加すれば,高屈
曲が得られるプロセスで製造した銅箔の半軟化温度を12
0〜150℃の範囲に収めることができる。一方,Tが100よ
り小さくなると半軟化温度が120℃より低くなり,Tが40
0を超えると半軟化温度が150℃より高くなる。また,P
b,Sn,Ag,Zn,FeおよびNiの添加量に上限を設けた理
由は,これら元素が上限の濃度を超えると,粒界に偏析
する,介在物を形成する等により,熱間圧延で割れが発
生したり,熱間圧延後に箔まで冷間圧延する過程で割れ
やピンホールが発生するためである。なお,このような
弊害が生じるそれぞれの成分の濃度の上限値は各元素で
異なり,Pbは80 wt ppm,Snは120 wt ppm,Ag,Zn,Cd
およびInは350 wt ppm,Fe,NiおよびCoは500 wt ppmで
あることが,実験の結果明らかになった。
【0025】S,As,Sb,Bi,SeおよびTeは,通常のタ
フピッチ銅中に含れている不純物であり,半軟化温度へ
の影響が比較的大きい。したがって, Pb,Sn,Ag,Z
n,Cd,In,Fe,NiおよびCoの添加で半軟化温度をコン
トロールする場合,これら不純物の濃度を低レベルに抑
えた方が,半軟化温度のコントロールが容易になる。こ
れら元素は主として,タフピッチ銅箔の原料として用い
られる電気銅から混入するため,その濃度を調整するた
めには,用いる電気銅の不純物量を管理する必要があ
る。
【0026】S,As,Sb,Bi,SeおよびTeは,その各成
分の内一種以上の合計で30 wt ppm以下にすることが望
ましく,30 wt ppmを超えると,上述した軟化温度上昇
指数Tが同じでも半軟化温度に大きなばらつきが生じた
り,Tの値によっては半軟化温度が150℃を超えたりす
る。
【0027】通常純度の無酸素銅は,酸素濃度が低い影
響として,タフピッチ銅よりも軟化温度が著しく高いこ
とが知られている。また,タフピッチ銅中に過剰に含有
された酸素は,Cu2Oの介在物を形成する。酸素濃度を10
0〜500 wt ppmに規定した理由は,酸素濃度が100 wt pp
m未満の状態で Pb,Sn,Ag,Zn,Cd,In,Fe,Niまたは
Coを添加すると半軟化温度が150℃を超え,酸素濃度が5
00 wt ppmを超えるとCu2O介在物が増大し屈曲性が低下
するためである。
【0028】銅箔の厚みについては,薄いほど曲げ部の
外周に生じる歪みが減少するため,屈曲性が向上する。
銅箔の厚さが50μmを超えると,立方体集合組織を発達
させても所望の屈曲性は得られない。一方,銅箔の厚さ
を5μm未満にすると,箔の強度が低くなり過ぎ,破断な
どにより箔の取り扱いが困難となる。そこで銅箔の厚み
を5〜50μmとした。
【0029】次に,本発明に関わる銅箔は,平均粒径が
20μm以下になる条件で再結晶焼鈍を行なった後,90.0
%を超える加工度の冷間圧延を行うことによって箔に仕
上げられるが,圧延前の焼鈍での平均粒径が20μmを超
える場合または加工度が90.0 %以下の場合には,I/I0
<20.0となって良好な屈曲性が得られない。なお,最終
冷間圧延前の焼鈍を熱間圧延で兼ねることもできるが,
この場合も熱間圧延上がりの結晶粒径を20μm以下に調
整することが望ましい。
【0030】
【実施例】以下,本発明の様態を実施例により説明す
る。表1に示す成分の厚さ200 mm,幅600 mmの銅インゴ
ットを製造し,熱間圧延により10 mmまで圧延した。
【0031】
【表1】
【0032】つぎに,焼鈍と冷間圧延を繰り返し,厚さ
t0 mmの圧延上がりの板を得た。この板を焼鈍して再結
晶させ,酸化スケールを除去した後,所定の厚みt mmま
で冷間圧延した。ここで,最後の冷間圧延での加工度は
Rは,
【数1】R = (t0−t) / t0 × 100 (%) で与えられる。また,最終冷間圧延前の焼鈍では,焼鈍
後の結晶粒径を圧延方向に直角な断面において切断法で
測定した。
【0033】このように種々の中間焼鈍条件および最終
圧延加工度で製造した銅箔試料について以下の特性を評
価した。 (1)立方体集合組織 試料を200℃で30分間加熱した後,圧延面のX線回折で求
めた(200)面強度の積分値(I)求めた。この値をあらか
じめ測定しておいた微粉末銅の(200)面強度の積分値(I
0)で割り,I/I0の値を計算した。なお,ピーク強度の
積分値の測定は,Co管球を用い,2θ=57〜63°(θは
回折角度)の範囲で行った。
【0034】(2)屈曲性 試料を200℃で30分間加熱して再結晶させた後,図1に
示す装置により,屈曲疲労寿命の測定を行った。この装
置は,発振駆動体4に振動伝達部材3を結合した構造に
なっており,被試験銅箔1は,矢印で示したねじ2の部
分と振動伝達部材3の先端部の計4点で装置に固定され
る。振動伝達部材3が上下に駆動すると,銅箔1の中間
部は,所定の曲率半径rでヘアピン状に屈曲される。本
試験では,以下の条件下で屈曲を繰り返したときの破断
までの回数を求めた。
【0035】試験片幅12.7 mm,試験片長さ:200 mm,
試験片採取方向:試験片の長さ方向が圧延方向と平行に
なるように採取,曲率半径r:2.5 mm,振動ストロー
ク:25 mm,振動速度:1500回/分 なお,屈曲疲労寿命が3万回以上の場合に,優れた屈曲
性を有していると判断した。また,この試験は加速試験
であり,実際にFPCが使用させる条件よりも厳しい条件
下で行っている。
【0036】(3)半軟化温度 種々の温度で30分間の焼鈍を行なった後の引張り強さを
測定した。そして,焼鈍後の引張り強さが,圧延上がり
の引張り強さと300℃で30分間焼鈍し完全に軟化させた
後の引張り強さとの中間の値になるときの焼鈍温度を求
めた。半軟化温度が120〜150℃の範囲であれば,適正な
軟化特性を有していると判断した。
【0037】(4)室温での軟化挙動 圧延上がりの材料を30℃に調整した恒温槽中に保管し,
保管開始から1ヶ月毎に引張り強さを測定し,引張り強
さが300 N/mm2以下の値になるまでの期間を求めた。こ
の評価は12ヶ月間まで継続した。
【0038】表2に銅箔の加工履歴と特性を示す。本発
明に関わる圧延銅箔は,焼鈍を行うと立方体集合組織が
発達して200面のI/I0が20.0を超え,その結果として3万
回以上の優れた屈曲寿命を示している。また,軟化温度
は,目標の120〜150℃の範囲内であり,室温(30℃)で
1年間保管しても引張強さが300 N/mm2以上の値を保って
いる。
【0039】
【表2】
【0040】一方,比較例のNo.3は軟化温度上昇指数
(T)が100より小さいため,半軟化温度が120℃よりも
低く,30℃の保管で1年以内に引張強さが300 N/mm2以下
に低下している。比較例のNo.4はTが400を超えるため,
比較例のNo.6は不純物であるS,As,Sb,Bi,SeおよびT
eの合計量が30 wt ppmを超えているため,比較例のNo.1
は酸素濃度が100 wt ppmより低いため,半軟化温度が15
0℃を超えており,FPCの製造段階で再結晶しない危険性
が高い。
【0041】比較例のNo.2は酸素濃度が500 wt ppmを超
えているため,Cu2O介在物が増大し,立方体集合組織が
発達しているにもかかわらず,屈曲回数が3万回未満の
低い値を示している。比較例のNo.5はPb濃度が80 wt pp
mを超えたため,インゴットを熱間圧延する際に割れが
発生し箔に加工できなかった。同様に他の添加元素が規
定濃度を超えた場合にも,製造歩留が低下した。比較例
のNo.8は圧延前の結晶粒径が20μmを超えているため,
比較例のNo.9は圧延加工度が90.0 %以下であるため,20
0面のI/I0が20.0未満であり,屈曲回数が3万回に満た
ず,圧延で蓄積された塑性歪み少ないため半軟化温度が
150℃を超えている。比較例のNo.7は厚さが50μmを超え
ているため,立方体集合組織が発達しているにもかかわ
らず,屈曲回数が3万回未満である。
【0042】
【発明の効果】本発明のフレキシブルプリント回路用圧
延銅箔は優れた屈曲性を有する。また,適度な軟化温度
を有し,保管中に軟化するあるいは焼鈍を行っても軟化
しないといったトラブルが生じないため,フレキシブル
プリント回路基板としての好ましい製造性を有する。も
ちろんこの銅箔は,リチウムイオン電池の電極等のフレ
キシブルプリント回路以外の用途にも好適である。
【0043】
【図面の簡単な説明】
【図1】屈曲疲労寿命の測定を行うために使用した屈曲
試験装置の説明図である。
【符号の説明】
1 銅箔 2 ねじ 3 振動伝達部材 4 発振駆動体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/08 C22F 1/08 B // C22F 1/00 622 1/00 622 661 661A 685 685Z 686 686Z

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 100〜500 wt ppmの酸素を含有し,80 wt
    ppm以下のPb , 120 wtppm以下のSn,さらに Ag, Zn,
    Cd, Inに関してはそれぞれ350 wt ppm以下,Fe, Ni
    , Coに関してはそれぞれ500 wt ppm以下の内の一種以
    上を,次式で定義したTが100〜400になる範囲で含有
    し, T = 4.5[Pb]+3.0[Sn]+[Ag]+[Zn]+[Cd]+[In]+0.6
    [Fe]+0.3[Ni]+0.5[Co] (ただし,[i]は元素iのwt ppm濃度) S,As,Sb,Bi,SeおよびTeの合計量が30 wt ppm以下で
    あり,厚さが5〜50μmであり,120〜150℃の半軟化温度
    を有し,30℃において継続して300 N/mm2以上の引っ
    張り強さを保持し優れた屈曲性と適度な軟化特性を有す
    ることを特徴とする,フレキシブルプリント回路基板用
    圧延銅箔。
  2. 【請求項2】酸素が100〜500 wt ppmで, 80 wt ppm以
    下のPb, 120 wt ppm以下のSn ,さらに Ag, Zn, C
    d, Inに関してはそれぞれ350 wt ppm以下, Fe, Ni
    , Coに関してはそれぞれ500 wt ppm以下の内の一種以
    上を,次式で定義したTが100〜400になる範囲で含有
    し, T = 4.5[Pb]+3.0[Sn]+[Ag]+[Zn]+[Cd]+[In]+0.6
    [Fe]+0.3[Ni]+0.5[Co] (ただし,[i]は元素iのwt ppm濃度) S,As,Sb,Bi,SeおよびTeの合計量が30 wt ppm以下で
    あり,厚さが5〜50μmであり,200℃で30分間の焼鈍後
    の圧延面のX線回折で求めた200面の強度(I)が微粉末
    銅のX線回折で求めた200面の強度(I0)に対しI/I0>2
    0.0であり,120〜150℃の半軟化温度を有し,30℃に
    おいて継続して300 N/mm2以上の引っ張り強さを保持
    し,優れた屈曲性と適度な軟化特性を有することを特徴
    とする,フレキシブルプリント回路基板用圧延銅箔。
  3. 【請求項3】請求項1および請求項2に関わる圧延銅箔
    を,インゴットを熱間圧延した後,冷間圧延と焼鈍とを
    繰り返し,最後に冷間圧延で箔に仕上げるプロセスで製
    造し,最後の冷間圧延の直前の焼鈍をこの焼鈍で得られ
    る再結晶粒の平均粒径が20μm以下になる条件下で行
    い,最後の冷間圧延の加工度を90.0 %を超える値とし,
    優れた屈曲性と適度な軟化特性を得ることを特徴とす
    る,フレキシブルプリント回路基板用圧延銅箔の製造方
    法。
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