JP2000346765A - 分析試料容器及び器具 - Google Patents

分析試料容器及び器具

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JP2000346765A
JP2000346765A JP11193498A JP19349899A JP2000346765A JP 2000346765 A JP2000346765 A JP 2000346765A JP 11193498 A JP11193498 A JP 11193498A JP 19349899 A JP19349899 A JP 19349899A JP 2000346765 A JP2000346765 A JP 2000346765A
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Koji Abe
康次 阿部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラスチック製の容器および器具に関して、
水性媒体中に微量に存在し疎水性を有する物質、例えば
尿検体中のタンパク質等をその採取や処理や保存の過程
を通してその表面への吸着ロスを抑制、または阻止でき
るように改質すること。 【解決手段】 酸化処理等の手段によってその表面に親
水性基を保持・結合させるが、好ましくはカルボキシル
基を積極的に、かつその表面構造を適切にコントロール
する範囲において導入する。 【効果】 最近の高精密の分析化学の分野においてプラ
スチック本来の特性を保持しながら、微量物質の吸着ロ
スを排除して分析値に従来にはない信頼性を与える。さ
らには様々なプラスチックの基材と形態に応用可能で、
医療やその他の産業や日用品にまでその用途の拡大が期
待される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分析化学等の分野
で使用されるプラスチック製の容器および器具に関す
る。より詳細には、試料中に存在する微量アナライト
が、試料の採取、処理、保存といった過程でそれらの容
器や器具の壁面との接触により失われることを軽減もし
くは回避したプラスチック製の容器および器具に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリス
チレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等々のプラ
スチックは、成型のし易さ、軽さ、種々用途への耐性の
良さに加えて、安価で、また取り扱い易いことから、臨
床化学や環境検査等の分析化学の分野において、また他
の化学や医学の領域で、容器類や関係器具として多様に
使われている。
【0003】これらのプラスチック製の容器・器具は、
通常、使われているプラスチック原料素材の性質を反映
してその表面は疎水的である。またこの性質は、プラス
チック製のもつ好都合な特性の一つにも挙げられ、水性
の試料や試料媒体を扱う場合に、いわゆる水切れが良
く、容器や器具表面への残存や付着量を少なくするた
め、例えば分析化学においては試料の採取や処理操作を
楽にし、また分析精度の向上を促す。
【0004】一方、様々な分野で用途に応じてプラスチ
ックの表面改質への試みが行われている。臨床化学の分
野においても、例えばプラズマ等により表面を酸化処理
して抗体等の蛋白質の吸着保持性能を高めた抗原抗体反
応用マイクロタイタープレートやビーズ、チューブ等、
また細胞の付着や増殖のための培養用シャーレやディッ
シュ等が実用に供されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように種々の有用
性をもつプラスチック製品も、最近の臨床化学や環境分
析等における水性液中の疎水性微量アナライトや生理活
性物質の取り扱いを対象とする場合には、その表面に関
する性質がさらに問題となる。
【0006】例えば、臨床化学において、タンパク質は
通常ほとんど尿中には漏出しない。従って、尿中におけ
るアルブミン等タンパク質の微量の存在は腎機能の低下
を鋭敏に反映するので、この測定は重要な診断指標のひ
とつである。しかしながら、尿試料の保存中にこの測定
値が低下したり、極端な場合にはほとんど消失してしま
う場合があるため誤診の原因となりやすく、この測定に
は十分な注意が必要で、解決すべき重要な課題のひとつ
となっている。
【0007】種々検討の結果、この現象は基本的には尿
試料中のアルブミンのプラスチック容器内面への吸着ロ
スが原因と考えられた。すなわちタンパク質の露出した
疎水部分(保存中の変性や疎水領域との接触による高次
構造の変化による露出を含めて)がプラスチック表面に
吸着にされて生じたものと推察された。またこの傾向は
ある種の農薬や環境ホルモンといわれる物質を取り扱う
場合にも生ずるといわれる。従って、この問題はこの事
例に限らず、水性液中における微量疎水性物質のプラス
チック表面との関わりとして、この方面でのプラスチッ
ク表面に関する一般的な技術課題の解決を促すものであ
る。
【0008】このような状況の下で、水性液中の微量の
疎水性物質が、その採取や処理操作、および保存時にお
いてプラスチック表面に吸着捕捉されることを回避また
は軽減でき、かつプラスチック元来の有用性を損なわな
い容器および器具の開発が緊急かつ重要な課題となって
いる。
【0009】
【課題を解決するための手段】プラスチック素材に関し
ては、種々の分野で用途に応じた表面の改質処理が行わ
れている。水濡れ性や親水性の向上に関する処理につい
てもよく知られた事実で、種々の酸化処理法による親水
性基の付加や、放射線等での活性化後における親水性モ
ノマーのグラフト化等その手法はさまざまであるが、そ
の目的はプラスチック表面の接着性や印刷・塗装性ある
いはイオン透過性等への改良を主とする。
【0010】種々の酸化処理によって、例えばポリエチ
レン表面には水酸基、カルボニル基、ヒドロペルオキシ
ドおよびカルボキシル基等が導入されることもよく知ら
れている。また、カルボキシル基の存在にはポリマー主
鎖の切断が生じると思われる。
【0011】一方、プラスチックにこれらの表面処理を
行い、細胞培養用シャーレや抗体等の蛋白を固定化でき
るマイクロタイタープレート、ビーズ、チューブ等がす
でに実用化され、販売されている。これらは細胞の付着
性、およびタンパク質への強い吸着能をプラスチック表
面に付与したもので、表面に適切な物理構造の変化と水
酸基、カルボニル基、カルボキシル基のような親水性基
の導入により機能化されたものと言われる。しかしなが
ら、少量存在するこの場合のカルボキシル基には、特に
有効な機能はなく、むしろこの基の積極的な導入の用途
はカルボジイミド等との架橋を介して行うタンパク質の
共有結合によるプラスチック表面への固定化である。
【0012】このような状況のもとで、本発明者らは水
性試料中の微量アナライトとして例えばタンパク質がプ
ラスチック表面へ吸着されることを積極的に回避・阻止
できるかとの観点で、プラスチック表面への親水性基の
導入とその吸着の関係を詳細に検討することによって、
本発明を完成した。
【0013】初期の親水化はむしろタンパク質等アナラ
イトの吸着を促すが、その後一定量のカルボキシル基の
保持によってこの吸着現象は著しく低下する。さらにそ
れ以上の酸化においてはプラスチックの表面構造の変化
に起因すると思われる吸着量の増加現象、またはそれ自
身の変質が見られることがある。
【0014】従って本発明はプラスチック表面に導入ま
たは保持された親水性基、具体的にはカルボキシル基の
適正な効果によって達成され、さらに好ましくはカルボ
キシル基がプラスチックの表面構造を適切にコントロー
ルする範囲において、そのようにプラスチックの表面を
改質した分析用に用いられる水性試料の採取、処理また
は保存のため容器および器具に関するものであり、ま
た、カルボキシル基の導入法には制限はなくこのように
改質された容器または器具に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳細に説明
する。 <基材への親水性基の導入>本発明はプラスチックの表
面に親水性基、好ましくはカルボキシル基を導入した容
器または器具に関する。導入法については既知または独
自に種々の処理法を選ぶことができる。過酸化物や酸の
溶液、例えば過酸化水素、過マンガン酸、硝酸、塩化鉄
第一鉄、クロム酸液等による表面の直接酸化、プラズマ
処理や電離性放射線、例えば電子線等の照射による表面
の活性化処理後における気相中での酸素による酸化、お
よびオゾン酸化等が用いられるがその方法は種々であ
る。オゾン酸化はその装置の簡便性や反応条件の調整の
しやすさ、およびその酸化力の強さ等のために好都合に
用いられる。またいずれの場合においても酸化処理後に
処理表面の安定化のため適宜に必要な処置を加えること
もできる。なおこのカルボキシル基は、プラズマ等によ
る表面の活性化処理後にアクリル酸モノマー等をグラフ
ト化もしくはペンダントとして保持させたものでも良
い。
【0016】例えばオゾンによる酸化処理の一例として
は、単純にはオゾン発生器で発生させたオゾンを処理室
(チャンバー)に導いて目的のプラスチックを処理す
る。このときのオゾン濃度は紫外線吸収式オゾンモニタ
ー等で観察して酸化条件を決める。具体的には、ポリス
チレン、ポリプロピレンおよびポリエチレン等の場合、
オゾン濃度500〜200,000ppm、処理時間1
0〜360分等で行うことができ、さらに好ましくはオ
ゾン濃1,000〜100,000ppm、処理時間3
0〜180分程度であるが、当然その濃度が薄い場合は
長く、濃い場合には短い処理時間を選ぶことになるが、
いずれの場合においてもその表面に必要量の親水性基を
保持させるという意味においてこの処理条件は適宜に選
ぶことができる。またプラスチックの種類によってもこ
れらは異なり、例えばポリエチレンの処理の場合には、
ポリスチレン、ポリプロピレンよりやや厳しい処理条件
が適する。
【0017】本発明の趣旨において、この酸化処理によ
り導入される親水性基のモニターは重要である。ポリス
チレン、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のプラス
チックの酸化処理によって、表面に水酸基、カルボニル
基(またはエーテルであるが、このいかんは本発明には
影響を与えないので、これ以降の記述もこれに準ず
る。)およびカルボキシル基等の親水性基が現れるが、
この量の解析はESCA(Electron Spec
troscopy for Chemical Ana
lysis)のデータに基づいて可能なことが知られて
いる。すなわち、プラスチック表面近傍の電子スペクト
ルデータから、プラスチック本来のもつ炭素−水素結合
(C−H)、および酸化処理によって生じたカルボニル
基(C−O)、水酸基(C−OH)およびカルボキシル
基(C−OOH)に関してそれぞれの炭素原子に由来す
る結合エネルギー(eV)に対応したピーク値を解析し
てこれらの含有量を求める。今回この方法で、種々のプ
ラスチックについて、逐次、導入された親水性基の解析
を行ってその含有量を求めた。
【0018】<吸着を回避する基材>親水性基の種類と
その含有率の知られた種々のプラスチックに関してヒト
アルブミン試料を用いた吸着試験を実施して、その表面
特性を調べたところ、各のプラスチックにおいて著しい
効果とそれぞれに共通する有用な知見を得ることができ
た。また、これらに基づいて疎水性物質の吸着現象が大
幅に軽減、もしくはほぼ完全に回避できるプラスチック
基材を作ることができた。
【0019】ESCAとの関連においてこの効果をより
詳しく説明すると、プラスチック表面元来の炭素−水素
結合(C−H)、および酸化によってそこに生じたカル
ボニル基(C−O)、水酸基(C−OH)およびカルボ
キシル基(C−OOH)に関して、酸化処理によるC−
Hの減少と、相対する親水性基の増加は、基本的に吸着
の抑制に寄与する。ただし、C−OOHと対比してC−
OHの含有率の高い場合にはこれが吸着の促進する恐れ
があるので、本発明の目的のためにはC−OOH自身の
含有率を高めるのが効果的で、C−OHの含有はむしろ
相対的に低いことが望ましい。C−Oは酸化の初期段階
として形成されC−OH、C−OOHへとそれ自身進む
らしく、酸化の進行に対しても含有率をあまり増やさな
い。そのためにその限りにおいて吸着との関連も目立た
ない。
【0020】従って本発明の形態は、より具体的にはプ
ラスチック表面にC−OOHを数%、好ましくは5〜1
0%以上存在させ、好ましくはC−OHが多すぎない表
面特性をもたせたプラスチックにより達成される。また
逆にC−OOHの多すぎる導入は基材自身の変質が生じ
やすいために避けるべきで、少なくとも30%をあまり
越えず、その意味では20%前後の含有が最も好ましい
実施形態といえる。
【0021】<実施対象>本発明におけるプラスチック
容器および器具に関するプラスチックとしては、ポリエ
チレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネ
ート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアク
リレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリウレタン、ポリビニル酢酸、ポリテトラフ
ルオロエチレン、エポキシ樹脂等にそれぞれ代表される
オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、塩化ビニ
ル系、フッソ樹脂系、アミド系等、種々のプラスチック
素材、およびそれらの共重合体プラスチック素材が挙げ
られるが、これらに例示されたものに限定されるもので
はない。
【0022】また本発明でいう容器および器具とは、臨
床化学や環境、食品等の分析化学や医療分野において、
試料の採取や分離精製および保存等の際に利用されるも
のを言い、例えば試料採取用チップ(サンプリングチッ
プ)、サンプルカップ、メジャーカップ、ボトル、バイ
アル、試験管、遠沈管、カラム、チューブ、フィルタ
ー、シャーレ、キュベット、ピペット、ディッシュ、フ
ラスコ、ロート、ケミカルシリンダー、シリンジ等々が
挙げられるが、目的や用途に応じて様々な種類・形態を
含む。
【0023】また本発明の対象となる疎水性微量物質と
は、本発明のプラスチック容器や器具によって効果的に
その吸着が抑制されうるものであればいずれでもよく、
また液中での存在の仕方によっても異なるが、例えば種
々のタンパク質や核酸、脂溶性ビタミンやホルモン類、
または脂質、または農薬やいわゆる環境ホルモンの類、
その他医薬品や栄養剤等を挙げることができる。
【0024】以下、本発明を実施例に基づいてより詳細
に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下
の記載例に限定されるものではない。
【実施例1】下記に示す市販のプラスチック基材をそれ
ぞれ1,000、10,000、および100,000
ppmのオゾン濃度において120分間処理した。
【0025】
【実施例2】実施例1のオゾン処理で得られた基材を、
処理オゾン濃度1,000、10,000、100,0
00ppmの順に、基材S、PおよびEに関してそれぞ
れSO1、SO2、SO3:PO1、PO2、PO3お
よびEO1、EO2、EO3と命名し、対照(未処理の
S、PおよびE)とともにESCA測定を実施した。
【0026】
【実施例3】実施例2で測定されたESCAデータの解
析からそれぞれの基材表面における炭素−水素結合(C
−H)、および酸化処理によって生じたカルボニル基
(C−O)、水酸基(C−OH)およびカルボキシル基
(C−OOH)の含有量を百分率(%)で求めた。この
結果を表1に示す。
【0027】
【比較例1】ESCA測定に関する上記の実施例2およ
び3を、市販の細胞培養用ポリスチレンディッシュ(T
CPS:FALCON社製1008)とポリプロピレン
シート(三井化学社製:プラズマ処理)についても行
い、それぞれをSXおよびPXと命名してその結果を表
1に併記した。
【0028】
【表1】 このように表面にそれぞれの基が各含有量で導入された
各プラスチック基材が得られた。なお、表中のndは数
値の小さい場合で、不確定か未検出であったことを示
す。
【0029】
【参考例1】ESCAからのデータをより詳しく説明す
ると、例えばポリスチレンについてこの酸化処理により
285eV付近の炭素原子に由来するピークが減少し、
535eV付近の酸素原子に由来するピークが増加す
る。これは酸素原子がポリスチレン表面に導入されたこ
とを意味する。また285eV付近の精査によれば、こ
のピークはブロードとなり、高エネルギー側にシフトし
たサブピークが現れている。炭素原子に関するこのエネ
ルギー帯の変移した波形解析に基づいて導入されたカル
ボニル基(289eV)、水酸基(290eV)および
カルボキシル基(291eV)の量を求める。なお本来
の炭素−水素結合(C−H)に基づくeVはこのとき2
87eVである。
【0030】
【実施例4】実施1、2および比較例1の各ポリスチレ
ンディッシュ、すなわちS、SO1、SO2、SO3お
よびSXについてヒトアルブミン(HA)を対象として
その吸着がどのように起こるかを調べた。HA試料とし
てHA630ng/mlを含む9.5mMリン酸(生理
食塩水)緩衝液(pH7.5)を調整し、その3mlを
各ディッシュに採り、蒸発を避けて37℃で2時間放置
して吸着実験とした。各ディッシュごとの吸着量の比較
については吸着実験の前後における試料中のHA濃度
を、常法に従って抗HA抗体(ウサギ由来)とアルカリ
フォスファターゼ標識抗ウサギIgG抗体を用いたEL
ISA法を実施して求めた。なお、HAおよび抗体試薬
はCappel社製、またアルカリフォスファターゼの
測定にはBio−Rad社基質キットを用いた。
【0031】上記実施例4のHAの吸着実験を同様にポ
リプロピレンおよびポリエチレンについても実施してそ
れぞれの基材に関する吸着の比較を行った。
【0032】
【実施例5】上記の実施例4と5の結果をまとめて表2
に示した。各基材ごとにその効果を、未処理の基材、す
なわちS、PおよびEへの吸着を100%とした場合の
相対吸着率で示している。
【0033】
【表2】
【0034】表2から次のことが明らかとなる。 (1)酸化処理による親水基の増加は、基本的に吸着を
軽減させる。 (2)カルボキシル基の含有が数%でも有効な吸着の軽
減効果を示す。 (3)水酸基の増加はむしろ吸着を促すおそれがある。 (4)カルボキシル基自身の含有率が吸着の回避には重
要である。 (5)カルボキシル基の含有率が5〜10%を越えたも
のはさらに有効であり、20%前後が最も有用と思われ
る。 (6)ただし、多すぎるカルボキシル基の導入は基材自
身を変性させるおそれがある。 (7)プラスチック基材の種類により導入の速さに差が
あるので、個々の製造に関してはカルボキシル基の含有
率に留意して酸化条件を調節するのがよい。
【0035】
【実施例6】市販のポリスチレン製96穴プレート
(S)に、オゾン濃度1,000、10,000、10
0,000ppmで、120分間処理をしたそれぞれ3
種のプレート(SO1、SO2およびSO3)をあらた
に作製して、実施例4と同様に下記のタンパク質に関す
る吸着試験を実施した。結果を表3に示す。ここにF
N、Lys、C3、TFは、それぞれフィブロネクチ
ン、リゾチーム、補体C3、トランスフェリンを表し、
すべてヒト由来のものを用いた。また表中の基材IMは
市販のポリスチレン製イムノアッセイ用マイクロタイタ
ープレート、SXは前出(比較例1)の細胞培養用ポリ
エチレンディッシュである。
【0036】
【表3】
【0037】表3から明らかなように、付着性が強いと
いわれるこれらのタンパク質においても特にSO2、S
O3では高い吸着抑制効果を示した。
【0038】
【実施例7】糖尿病患者についてモニター尿の保存用と
して一般に使用されるポリプロピレン製保存用サンプル
カップ(P)をオゾン濃度10,000ppmにて12
0分間処理して外見的にも全く変わらないサンプルカッ
プ(PO2)を作製した。30検体の患者尿のアルブミ
ン値を採取時に測定し、それぞれのサンプルカップPお
よびPO2に分取してマイナス20度Cで保存した。こ
れを160日目に取り出してそのアルブミン値をELI
SA法にて測定した。その結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】表4に示されるように一般のポリプロピレ
ン製保存用カップ(P)での測定値は、極端な低値とな
る。ここではその残存値は10%以下、さらに極端な場
合にはほとんど消失している。尿アルブミンは、糖尿病
診断のモニターとして重要な指標のために非常に不都合
な状況を生じる。また、ここでは凍結による検体の保存
も有効ではないことが分かった。一方、本発明のカップ
(PO2)ではその間でもHA値は十分に保存されてい
ることが分かった。
【0041】
【実施例8】通常のポリスチレン製自動分析機用サンプ
ルカップ(S)をオゾン濃度10,000ppm、処理
時間120分で改質して外見も全く変わらないサンプル
カップ(SO2)を作製した。あらたに患者尿30検体
を採取して、アルブミン値を測定し、その残部をSおよ
びSO2に等量づつ分取して冷蔵庫で保存して、10日
後にこれらの測定値を調べた。測定は同様にELISA
法である。結果を表5に示す。
【0042】
【表5】
【0043】表5に示されるように通常のポリスチレン
製サンプルカップでの保存尿は大半が極端な値の低下を
示した。検体を冷暗所で保存することについても全く効
果のないことが分かった。一方、本発明の改質したサン
プルカップは十分に値を保持し、その有用性が確かめら
れた。
【0044】
【実施例9】尿検体中のアルブミン(HA)短時間での
保存性の実状を調べるために、あらたに採取した患者検
体を次の三つのケース(a、bおよびc)で実施して本
発明の効果を調べた。 (a)実施例7で作製したポリプロピレン製保存用サン
プルカップ(PO2) (b)別にオゾン濃度100,000ppmで120分
間処理したポリエチレンチューブ(栄研チューブ:EO
3) (c)実施例8で作製したポリスチレン製自動分析機用
サンプルカップ(SO2) 上記a、bおよびcについてそれぞれの未処理の同カッ
プ(P、EおよびS)を対照にaおよびbは検体を冷蔵
庫中6時間、cは室温で2時間放置後HA値を測定して
採取時の測定値と比較した。なお採取した検体は、それ
ぞれのケースにおいて違う。この結果を表6、7および
8に示す。
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【0048】上記表6、7および8で明らかなように市
販品P、EおよびSについて、いずれの場合も冷蔵庫お
よび室温を問わず、すでに大幅な測定値の低下をきたし
ていた。この結果は、検体が各容器に分注された直後の
プラスチック基材との接触から、この現象の大半がすで
に起こることを示す。すなわち、本発明は検体の保存と
いう問題からだけではなく、むしろその採取時にも不可
欠であることを示す。本発明のa、b、cではいずれの
場合も、十分にこれが解決されていることが分かった。
【0049】
【発明の効果】本発明は、以上に説明したとおり、特別
に有利な効果をもち、利用価値は極めて大である。プラ
スチック表面の改質は、一般には目新しい技術ではな
い。しかしながら、水性媒体中に微量に存在する疎水性
を有する物質のプラスチック表面との干渉に十分な考慮
が必要な分野においては、プラスチック表面への親水性
基、特にカルボキシル基に注目してその導入を適正には
かるなら不必要な吸着が軽減または回避されるので種々
の目的に有効に適用されうる。また、今回これを実証し
たように、その効果は大であり、特別の設備は必要とせ
ず既知の技術の応用によって効率よく達成されうる。従
って本発明は、上記の分野での容器や器具を対象とし
て、特別に有用である。
【0050】直接的には分析分野での微量アナライトの
容器や器具への吸着抑制に極めて有効である。プラスチ
ック本来の便利さ失うことなく、操作への信頼性を高め
て、この分野における用途の拡大に役立つ。種々のプラ
スチック基材や形態の容器や器具に適用できるが、その
形や特性は変えずに提供できるので経済的である。
【0051】また本発明は、水性液剤として提供される
場合の疎水性をもつ微量の生理活性物質、例えばビタミ
ンやホルモン剤、脂質、あるいは他の栄養剤や医薬品等
に関するプラスチック容器類へも直接応用できる。また
同様にプラスチック製の日用品や雑貨品等における日々
の微量な脂溶性物質による汚れの蓄積を防止することに
も役立つ。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料の採取、処理または保存用であっ
    て、少なくとも水性試料との接触領域において親水性基
    を保持・結合したプラスチック製の容器および器具。
  2. 【請求項2】 親水性基がカルボキシル基である特許請
    求の範囲1に記載の容器および器具。
  3. 【請求項3】 プラスチック表面を酸化処理する工程を
    経て製造された特許請求の範囲1および2に記載の容器
    および器具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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