JP2000339355A - 衣服の着用状態表示方法、衣服の製造方法および衣服の製造支援装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】衣服の製造において、衣服着用時の見栄え等を
コンピュータによるシミュレーションを用いて精度良く
コンピュータ画面上に再現し、この結果をもとに、体型
にあわせたパーツの作成あるいは修正する方法を提供す
ること。 【解決手段】衣服のパーツの形状データとその素材の特
性データおよび衣服に装着されたパッドを考慮した着用
者の体型データに基づいて衣服の着用状態を計算機上で
模擬実験し、その結果を表示する。この結果に基づいて
パーツ形状等のデータを修正することにより衣服をデザ
インしたり、最適な既製のパーツ形状データを選んで最
終決定し、決定した結果に基づいて衣服を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、衣服の製造にあ
たり、着衣時の様子をコンピュータシミュレーションに
より精度良く予測し、着衣時の見栄えを予測表示する衣
服の着用状態表示方法、および装置、ならびにその結果
に基づいて衣服を製造する際の型紙デザインを決定、衣
服を製造する方法およびそのようにして製造された衣服
に関する。

【０００２】

【従来の技術】衣服の着衣時の様子をコンピュータシミ
ュレーションにより予測する方法として、特許第１９８
４０９３号明細書や特開平５−２６６１４９号公報や特
開平８−４４７８５号公報などに記載の方法がある。こ
れらの方法では、型紙をもとに組み立てられた衣服を、
予め準備されたボディーに仮想的に着せ付けることによ
り着衣状態を予測、表示するものであり、ここで使用さ
れるボディーにはマネキンや顧客の体型を再現した形状
モデルが用いられることが一般的であった。

【０００３】しかし、肩パッドが装着されたジャケット
や胸パッドが装着されたドレスの場合、衣服に装着され
るべきパッドのモデリングは省略して計算されることが
多く、この結果、ジャケットにおける肩のラインおよび
その周辺部分やドレスにおけるバスト周辺が実際のシル
エットと異なる場合が多かった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】肩パッド付きジャケッ
ト、胸パッド付きドレスなど、パッドが装着された衣服
を計算する場合、パッドを衣服に結合した衣服モデルを
計算に使用する方法や、衣服のパッド部分を硬く設定し
計算する方法などが存在するが、いずれの方法も計算の
ためのモデリングや計算自体が複雑となるため、実際
は、パッドの影響を無視して計算する場合が一般的であ
った。

【０００５】しかし、パッドを考慮しない計算では、例
えば、肩パッドの場合では肩のラインが使用するボディ
ーに沿った撫で肩となり、袖が落ち、身頃のわきや背中
にたるみが発生するなど、計算結果が実物と異なる場合
が多く、衣服の製造に活用するには精度不足であった。

【０００６】本発明は、上記課題を解決するためにパッ
ド等の衣服の硬質部位を十分考慮した、精度が高く、し
かも効率的な衣服の着用状態表示方法およびこれを活用
した衣服の製造方法および製造支援装置を提供すること
を目的としてなされたものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明の衣服の着用状態表示方法によれば、硬質部
位と一般部位とを含む衣服を着用すべき人体の形状を数
値計算用にモデル化したボディー形状を入力する工程
と、前記衣服形状を数値計算用にモデル化した衣服の初
期形状モデルを入力する工程と、前記ボディー形状モデ
ルに前記衣服の初期形状モデルを着せ付けたときの前記
衣服形状モデルの各部の位置を計算機で模擬実験する工
程と、該模擬実験の結果を表示する工程とを含む衣服の
着用状態表示方法であって、前記ボディー形状データを
入力する工程は、前記ボディー形状として前記人体の形
状と前記硬質部位に対応する仮想物体の形状とをあわせ
たモデルを入力するものである衣服の着用状態表示方法
が提供される。

【０００８】また、本発明の好ましい形態によれば、前
記硬質部位は衣服に装着されたパッドである衣服の着用
状態表示方法が提供される。

【０００９】また、本発明の別の形態によれば、硬質部
位と一般部位とを含む衣服を着用すべき人体の形状を数
値計算用にモデル化したボディー形状を入力する工程
と、該衣服の少なくとも１個のパーツ形状を設定する工
程と、該パーツの素材の特性を設定する工程と、該パー
ツ形状に基づき前記衣服形状を数値計算用にモデル化し
た衣服の初期形状モデルを入力する工程と、前記ボディ
ー形状モデルに前記衣服の初期形状モデルを着せ付けた
ときの前記衣服形状モデルの各部の位置を前記素材の特
性に基づいて計算機で模擬実験する工程と、該模擬実験
の結果を表示する工程と、該模擬実験の結果に基づいて
前記衣服のパーツ形状または素材を最終決定する工程
と、該最終決定されたパーツの形状または素材に基づい
てパーツを作製する衣服の製造方法であって、前記ボデ
ィー形状データを入力する工程は、ボディー形状として
前記人体の形状と前記硬質部位に対応する仮想物体の形
状とをあわせたモデルを入力するものである衣服の製造
方法が提供される。

【００１０】また、本発明の好ましい形態によれば、前
記模擬実験の結果に基づいて選択したパーツ形状を微調
整し、該微調整結果を作製されるパーツの形状に反映さ
せる衣服の製造方法が提供される。

【００１１】また、本発明の好ましい形態によれば、前
記パーツ形状の複数の候補はサーバ装置に保存されてお
り、前記候補の選択はサーバ装置とオンラインまたはオ
ンエアで接続された端末装置において行われる衣服の製
造方法が提供される。

【００１２】また、本発明の別の形態によれば、上記衣
服製造方法により製造された衣服が提供される。

【００１３】また、本発明の別の形態によれば、硬質部
位と一般部位とを含む衣服を着用すべき人体の形状を数
値計算用にモデル化したボディー形状を入力する手段
と、前記衣服形状を数値計算用にモデル化した衣服の初
期形状モデルを入力する手段と、前記ボディー形状モデ
ルに前記衣服の初期形状モデルを着せ付けたときの前記
衣服形状モデルの各部の位置を計算機で模擬実験する手
段と、該模擬実験の結果を表示する手段とを含む衣服の
製造支援装置であって、前記ボディー形状データを入力
する手段は、ボディー形状として前記人体の形状と前記
硬質部位に対応する仮想物体の形状とをあわせたモデル
を入力するものである衣服の製造支援装置が提供され
る。

【００１４】また、本発明の別の形態によれば、上記の
衣服の着用状態の表示方法の各手順をコンピュータを用
いて実施できるようにコンピュータを動作させるソフト
ウェアを記憶した記憶媒体が提供される。本発明におい
て硬質部位とは、衣服に装着された肩パッド、胸パッド
等の衣服の他の部分に比べて硬い部位をいう。衣服にお
ける硬質部位は、衣服の外観（シルエット）を所望の形
に整えることを目的としており、硬質部位の形状は作製
者が衣服のデザインを考慮して任意に決定でき、衣服の
着用時に形状変化がほとんどないことを特徴とする。本
発明において一般部位とは、上記硬質部位を除く衣服の
大部分を占める比較的柔軟な布や革などの素材でできた
部位をいう。本発明においてパーツとは、衣服を構成す
る部品（パーツ）である。いわゆる型紙を作製するとき
には、概念上パーツと区別しないことがある。型紙と表
現しても実際にはパーツのことを指していることもあ
る。本発明において衣服の素材とは、衣服を構成する生
地、革などの材料をいう。

【００１５】

【発明の実施の形態】図１はこの発明の実施形態例の概
略手順を示すためのフローチャートである。この発明で
は、まず点と線を定義する数値データからなる衣服のパ
ーツの形状をもとに図２に示すように複数個の微小要素
の集合体としてパーツをモデル化する（ステップ１）。
ここでは、要素を構成する節点の座標の数値データの集
合と、各要素を構成する節点の番号より構成される要素
定義データの集合を数値データファイルとして作成し
て、このファイルをパーツの形状定義データとする。こ
のデータ構成の例を表１に示した。

【００１６】

【表１】

【００１７】これは、図３に示すような４つの節点、２
つの三角形要素から構成される平面形状をあらわすデー
タで、ここには、節点座標としてＮ１は（１、１、
０）、Ｎ２は（３、１、０）、Ｎ３は（３、３、０）、
Ｎ４は（１、４、０）、また要素Ｅ１は節点Ｎ１、Ｎ
２、Ｎ３、要素Ｅ２はＮ１、Ｎ３、Ｎ４より構成されて
いることが示されている。

【００１８】なお、ここで使用されるパーツ形状は、パ
タンナーがパーツの設計の際に使用するアパレル用ＣＡ
Ｄから出力されたパーツ形状データを計算用に変換して
活用することが好ましい。ＣＡＤデータの本計算用デー
タへの変換方法については、本出願人による特願平11-1
41450号明細書に詳しく記載されている。

【００１９】次に、ボディーを定義するデータを作成す
る（ステップ２）。ここでは、ボディーの立体形状を、
図４に示すようにパーツと同様に複数個の微小要素の集
合体として表現し、この形状を表す節点と要素データか
らなるボディ形状データを作成する。ボディデータは各
部の位置を関数等により表現したものであってもよい。
また、上記ボディー形状データは予め作成されたものを
データベースに保存しておき、必要なときに呼び出し、
使用してもよい。

【００２０】次に、上記ボディーを定義するデータに服
種に対応した肩パッドや胸パッド分の変形を与える（ス
テップ３）。パッド分のボディーの変形は計算の度に実
施しても良いし、予めパッドを考慮したボディーデータ
を複数準備し、データベースに保存しておいて計算する
際に呼び出し、使用してもよい。具体的な変形の方法に
ついては後述する。

【００２１】次に、使用する生地など素材の硬さなどを
定義する生地特性データを入力する（ステップ４）。こ
の時与える物性値は、繊維業界に広く利用されているＫ
ＥＳ（Kawabata's Evaluation System for fabri
c）特性を利用するのが一般的であり、好ましい。ここ
で入力される生地特性データは、引張り剛性、せん断剛
性、曲げ剛性、生地密度、厚さなど生地素材の特性を決
定する特性値である。なおこの時、硬質部位の特性は通
常一般部位と同じであるが、一般部位より硬い特性を使
用してもよい。

【００２２】次に、パーツの縫製組上げ計算、すなわ
ち、パーツの位置関係および接続関係に基づく衣服の立
体構築作業を行う（ステップ５）。ここでは、図５のよ
うにパーツ１のライン３とパーツ２のライン４上の節点
を両者で共有させることにより複数枚のパーツの縫い合
わせ後の立体的な形状を図６に示すように作成する。そ
して、パーツを全て縫い合わせた状態を衣服の着衣前の
初期形状データとする。衣服の構築には縫い合わせのほ
か接着や熱融着などによってもよい。平面パーツを縫い
合せ情報に基づいて組立て、衣服の立体形状にする方法
については、特開平１０−１２４５２８号公報の方法が
好ましい。このように、縫製とは糸でパーツを縫い合せ
るばかりでなく、接着や融着などにより接合することも
含む概念である。

【００２３】以上のように、縫製組上げ計算された衣服
と、変形されたボディーの２つの形状データと生地特性
データを準備した後、これらの数値データをコンピュー
タの着衣シミュレーション実行部分に受け渡し、このデ
ータにもとづいて衣服の着衣までのシミュレーション
（模擬実験。着装計算ともいう）をコンピュータによる
数値計算方法により実行する（ステップ６）。着衣シミ
ュレーションでは、ステップ５で縫製組上げされた初期
衣服形状のメッシュ分割をそのまま使ってもよいが、本
計算で衣服を柔かく表現するためには、メッシュ分割は
細かい方が好ましいため、着衣シミュレーションを実行
する前に図７に示すように改めてメッシュを細かく分割
し直すのが好ましい。このメッシュ細分割による着衣シ
ミュレーション方法については、特開平１０−１３４０
９５号公報に詳しく記載されている。

【００２４】さらに、結果は、コンピュータ画面上でボ
ディーが衣服を着た状態として表示されるが、よりリア
ル感を出すためにＣＧ技術によるスムージング、ライト
アップ、色柄のマッピング、背景の入力などが行われる
（ステップ７）。このとき、衣服の模様やポケットなど
の付属物など部分特徴を、パーツ各部に対応させて結び
付けて記憶しておき、上記シミュレーションにより変形
移動した後の上記各部に対応させた各部分特徴を表示す
ることにより、衣服の着用状態における実際の模様の様
子等を正確に表示することができる。

【００２５】また、衣服着衣時の見栄え表示に加え、衣
服の伸張変形結果から衣服に発生する応力や歪を算出す
ることも可能であり、発生する応力、歪から衣服のボデ
ィーに与える圧迫感を予測して衣服の着心地予測を実施
する（ステップ８）。

【００２６】具体的な数値シミュレーションの方法とし
ては、生地の物理特性すなわち引っ張り特性、せん断特
性、曲げ特性などを考慮して有限要素法に代表される数
値計算手法によりステップ６の生地の変形を求める。

【００２７】ステップ６の計算には、ボディーの形状を
拘束条件とした重力下での衣服の変形に関する力学的な
計算と、ボディーと衣服の接触を判定するための接触計
算を実行する。このとき、ボディーと衣服が接触する際
に生じるボディー上での衣服の滑りも考慮することが好
ましい。

【００２８】ステップ６に関するシミュレーションで
は、重力などの外力と、変形に伴い要素に発生する歪か
ら生じる応力や曲げに伴い発生するモーメントなどの内
力をもとに次のような衣服を構成する節点に関する運動
方程式が成立する。すなわち、時刻ｔにおいて成り立つ
運動方程式、

【００２９】

【数１】

【００３０】であり、ａは加速度ベクトル、ｖは速度ベ
クトル、ｕは、変位ベクトル、［Ｍ］は質量マトリック
ス、Ｆ(u)は内力ベクトル、［Ｃ］は粘性マトリック
ス、Ｐは重力に代表される外力ベクトルである。

【００３１】上記方程式から時刻ｔにおける各節点の加
速度を求める。このとき得られた加速度ａは変位ｕの時
間ｔによる２階微分であるから加速度ａを２階時間積分
することにより微小時間△ｔ秒後の変位△ｕを求めるこ
とができる。ここで用いる時間積分法には中央差分法が
好ましい。

【００３２】上記の手法により求めた△ｔ秒後の衣服の
モデルを構成する全ての節点の変位から、ステップ６で
の衣服の変形を求めることができる。この操作を繰り返
すことで、衣服の着衣シミュレーションにおける衣服の
変形をシミュレート、すなわち模擬実験する。

【００３３】式中で内力ベクトルＦ、質量マトリックス
［Ｍ］を生地の材料特性を考慮して組み立てることによ
りシミュレーションに生地特性を考慮することが可能と
なる。内力ベクトルＦは、要素の歪みにより面内方向に
発生する引張り回復力Ｆstretch、せん断回復力Ｆshea
r、および要素間の屈折により面外方向に発生する曲げ
回復力Ｆbendの合計として、

【００３４】

【数２】

【００３５】で表現される。なお、内力Ｆを構成する引
張り回復力、せん断回復力、曲げ回復力はそれぞれ衣服
の変形にともない発生する力であり、内力Ｆは、変位ｕ
の関数Ｆ（ｕ）として定義される。

【００３６】また、この計算の中で、重力下で落下する
衣服とボディーとの接触は、節点とボディー表面との幾
何学的な位置関係から判定する。

【００３７】次にパッドを考慮したボディー形状の定義
方法について説明する。ここでは、肩パッドを例に説明
する。図８に示すように肩パッド１０はジャケット１５
などのシルエットを整えることを目的として、肩の裏部
分１４に縫い付けられる詰め物であり、服種、デザイン
によりその高さ１１、前後の幅１２、左右の幅１３は様
々である。本発明では、本来衣服側に装着される肩パッ
ド１０をボディーの側に付与することにより、計算結果
に肩パッドの影響を再現する。肩パッドを考慮したボデ
ィー形状をモデリングする方法としては、図９に示すよ
うにマネキンや顧客体型のボディーの肩部分をパッド分
だけ高さ方向２１に持ち上げ、前後方向２２に張り出さ
せ、さらに左右方向２３に張り出させるといったパッド
等の衣服の硬質部位の形状を衣服モデル側でなくボディ
ー形状自体に反映させる方法や、図１０に示すように肩
パッド単体３１の形状データを別に作成し、これをボデ
ィー３０に足し合せて計算するといった肩パッドモデル
を衣服モデルとボディーとの間に介在させる方法があ
る。前者の方法では、操作者が任意に肩パッドの高さお
よび張り出し量を入力するとボディーのパッド相当部分
が変形するようなモデルを準備しておくのが好ましい。
この場合、１体のボディーを複数のパッド付きボディー
に変形できるため、パッドデータを複数準備する後者の
方法に比べ、簡便で好ましい。肩パッドを考慮したボデ
ィー形状の例を図１１に示す。操作者は、パッド形状を
決める高さ、張り出し量などの数値を入力することによ
り任意の形状を設定可能となっている。

【００３８】この発明の一実施態様例について、肩パッ
ドを考慮した計算を例にさらに詳細に説明する。図１２
は本実施態様例のハードウェア構成を示す図である。コ
ンピュータ１０１に入力装置１０３、表示装置１０４お
よび補助記憶装置１０２が接続されている。入力装置１
０３により、たとえば解析する衣服のパーツ形状モデル
データ、３次元的なボディ形状モデルデータの入力が受
け入れられ、こうしたデータは補助記憶装置１０２に格
納される。モデルデータは、装置の使用時に補助記憶装
置１０２からコンピュータ１０１のメモリにロードする
ことにより入力される。なお、キーボード、形状測定器
等により入力されてもよい。このように本発明において
は、データを計算機における処理が可能となるように計
算機にロードすることをデータの入力という。以上、オ
ペレータの指示によりコンピュータ１０１がこのデータ
を内部のＲＡＭ（ランダムアクセス可能な揮発性メモ
リ）に読み込み、解析を行う。得られた解析結果はたと
えば表示装置１０４により表示される。必要に応じて、
操作者がパーツ形状を変更し再び解析を行うことができ
る。また、解析結果の出力はプリンタ装置に対して行っ
てもよく、補助記憶装置１０２に格納してもよい。この
場合はたとえば別の解析装置の入力データとしてこの出
力を利用することもできる。

【００３９】また図１３は本実施態様例のブロックダイ
アグラムを示しており、着衣する人の体型（いわゆる標
準体型でもよく、特定の着用者を採寸したものであって
もよい）をもとに作成したボディーの形状データと衣服
のパーツ（型紙）形状データ、生地の物性データを読み
込む解析用データ入力部１と、入力されたボディーに対
し肩パッドを考慮した変形を施すボディー変形部２と、
衣服の型紙形状をもとにパーツを縫製等により接合して
衣服を構築し、着衣前の衣服の初期形状モデルを作成す
るパーツ縫製部３と、与えられた入力データに基づき、
重力下で衣服をボディーに着せ付ける衣服着せ付け解析
部４と、着せ付け解析部４の衣服変形結果を出力し、初
期の型紙修正を行う着衣状態表示およびパーツ修正部５
とを備えている。上記の構成のシミュレーション動作に
ついて、次に実施例を用いて説明する。

【００４０】解析用データ入力部１は、衣服を着せ付け
るボディーの基本形状データと衣服のパーツ形状デー
タ、およびパーツの縫製手順を指示するパーツ縫製デー
タを読みとる部分であり、ここでボディー形状、パーツ
形状は、ともに微小な要素の集合体としてモデル化され
ている。本実施態様例では、衣服として図１４に示すよ
うなパーツから構成されるジャケットを用いている。ボ
ディー変形部２では、データ入力部１で入力されたボデ
ィーに対し、肩パッドを考慮した変形を加える。ここで
は、操作者は考慮する肩パッドの形状を表わすパラメー
タとして例えば高さ、肩線方向の張り出し量、前後の張
り出し量を入力することにより、肩パッド考慮ボディー
を設定できる。本態様例では、肩パッドを考慮した変形
後のボディー形状として図１１の形状を使用する。

【００４１】パーツ縫製部３では、データ入力部１で入
力されたパーツ形状をもとに図１５のようにパーツの縫
い合わせ後の衣服形状モデルを作成する。

【００４２】衣服の着せ付け解析部４では、パーツ縫製
部３で組み立てられた、衣服形状モデルにボディーとの
接触を考慮しながら重力を付与したときの衣服の変形計
算を行う。このときシミュレーションでは、重力による
衣服各節点での変位を計算し、これにともなう衣服の変
形とボディーの位置関係を判定しながら、節点がボディ
ーの表面に接触したとき、その節点はボディーと接触し
たとしてボディーから受ける反力を与える。この操作を
衣服の全ての節点のもつエネルギーの総和が予め設定さ
れたしきい値以下になるまで続け、最終的に衣服が重力
下でボディー上で安定した形状を衣服着装形状とする。
図１６に本発明により肩パッドを考慮した計算結果４１
を、図１７に従来の肩パッドを考慮しない方法による計
算結果４２をあわせて表示する。本発明により得られた
衣服４１のシルエットは、従来の肩パッドを考慮しない
場合４２のシルエットに比べ、実際のシルエットに近
い。

【００４３】図１８は着せ付け解析部におけるシミュレ
ーションの手順を示したフローチャートである。ここで
は、はじめに、肩パッドを考慮して変形されたボディー
の形状データを読み込む（ステップ１）。次にパーツ縫
製部３で計算された組立て後の衣服形状データを読み込
む（ステップ２）。続いて衣服の重力の付加による衣服
の落下計算を実施する（ステップ３）。そしてステップ
３にともなう衣服とボディー表面との接触を判定し、接
触が認められた場合には反力を与える。（ステップ
４）。ここで、衣服の節点がもつエネルギーの総和がし
きい値以下になったかを判定し、しきい値に達していな
い場合にはステップ３にもどって計算を繰り返す（ステ
ップ５）。衣服の全ての節点のエネルギーの総和がしき
い値以下になった時点で本工程を終了する。

【００４４】着衣状態表示およびパーツ修正部５は、解
析部４で得られた衣服の変形結果をボディー形状に重ね
てコンピュータグラフィックス（ＣＧ）で表示し、着衣
イメージのチェックを行う。また、生地の絵柄等の部分
特徴を生地の変形を考慮しつつマッピングすることで絵
柄の見栄えチェックも行う。さらに、衣服の変形シミュ
レーションの結果から得られる布に発生する歪をもとに
着心地をＣＧ表示あるいは等高線表示することにより評
価することも可能である。以上の結果をもとに、パーツ
の修正や生地の変更を行い、さらに同様の工程を繰り返
すことによりデザインの最適化を図ることができる。

【００４５】かかる計算機上の試行錯誤の結果に基づい
て、衣服製造者は、各パーツの形状等を最終決定し、そ
の決定に基づいてパーツをカット、縫製等することによ
り衣服を製造することができる。

【００４６】上記実施態様例では、パーツの形状データ
等を与えて、これに基づいて衣服を構築し、その衣服を
肩パッドを考慮した着用者のボディーに着用させた場合
について説明した。この実施態様例は、ある衣服の製造
工程において衣服デザインする設計工程の試行錯誤を計
算機でシミュレートする場合に適する。一方、イージー
オーダーシステムでは、特定のパーツ（たとえば前身
頃）についてさまざまな形状、サイズおよび素材の属性
を有する候補が多数用意されており、そのうちのどれか
を着用者（顧客）の体型にあわせて選択し、シミュレー
ト結果により着心地や見栄えを判断し、最適なパーツ形
状や素材を最終選択し、必要に応じて若干の微調整を施
すことにより、着用者専用の最適な衣服を製造すること
ができる。この場合には、パーツデータはたとえば衣服
の工場や設計事務所等のサーバ装置に多数蓄積されてお
り、このサーバ装置にオンラインまたはオンエアでアク
セス可能な端末を衣服販売店に設置し、この端末からア
クセスして選択するようにしておくのが好ましい。上記
端末でシミュレーション結果を表示し、その結果に基づ
いて顧客が着心地や見栄えを考慮して購入する衣服に使
用されるべきパーツ形状等を選択することが店頭ででき
る。また、最終選択されたパーツ形状を必要に応じてそ
の場で微調整することもできる。最終的に決定された衣
服のデータはやはりオンラインまたはオンエアで縫製工
場等に送信され、そこで直ちに衣服を製造する作業に入
ることもできる。上述のごとく、上記実施態様例の衣服
の着用状態表示方法は、コンピュータとこれを動作させ
るプログラム等によって実現されている。上記のごとき
プログラムおよび各種データは、フロッピーディスク、
ＣＤ−ＲＯＭ等の有形記憶媒体あるいは有線もしくは無
線のネットワーク等の伝送手段によって流通される。

【００４７】

【発明の効果】この発明ではコンピュータを使った演算
手段によりパーツとボディー形状の入力に基づいて衣服
着衣時の衣服変形シミュレーション演算を行う。このと
き、使用するボディー形状に対し、衣服に装着させるパ
ッドに相当する変形を加えることにより、パッドを考慮
したシミュレーションが可能となり、より現実に近い演
算結果を得ることが可能となる。そしてこの演算手段に
よる演算結果から衣服の変形状態を出力手段によって出
力する。こうして得られた出力結果からボディーの衣服
着衣状態を予測して、これをもとにパーツの修正を実施
することができる。また、試着することなしに見栄えや
着心地を確認することが可能となる。また、パーツ作成
時に本発明を利用することによって着衣時の状態を確認
しながら最適なパーツデザインが可能となり、生産性の
向上が期待できるとともに、手軽に個人の体型にフィッ
トしたオーダーメイドのパーツの製作が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】発明のフローチャートを示した図である。

【図２】パーツの形状を定義するモデルを表した図であ
る。

【図３】形状を定義する際のデータ構造を説明するため
の図である。

【図４】ボディーの形状を定義するモデルを表した図で
ある。

【図５】節点の共有化によるパーツの縫い合わせ操作を
説明するための図である。

【図６】パーツ縫製組上げ計算後の立体形状を説明する
図である。

【図７】パーツ縫製組上げ計算後のメッシュを細分割し
た衣服モデルを説明するための図である。

【図８】肩パッドを説明するための図である。

【図９】ボディー形状を肩パッド分だけ変形させる方法
を説明するための図である。

【図１０】ボディー形状に肩パッドモデルを取り付ける
方法を説明するための図である。

【図１１】肩パッドを考慮して変形を加えたボディー形
状モデルを示した図である。

【図１２】本発明の一実施形態例のハードウェア構成を
示す図である。

【図１３】本発明の一実施形態例の論理構成を示すため
の図である。

【図１４】本発明の一実施態様例を説明するための衣服
のパーツの形状モデルを示した図である。

【図１５】本発明の一実施態様例を説明するための、パ
ーツの縫い合せ後の衣服形状モデルを示した図である。

【図１６】本発明の一実施態様例を説明するための、肩
パッドを考慮した着衣計算結果を示した図である。

【図１７】本発明の一実施態様例を説明するための、肩
パッドを考慮しない場合の着衣計算結果を示した図であ
る。

【図１８】本発明の一実施態様例を説明するための、着
せ付け解析部におけるシミュレーションの手順を示した
フローチャートである。

【符号の説明】

１：パーツ ２：パーツ ３：縫い合せライン ４：縫い合せライン １０：肩パッド １１：肩パッドの高さ １２：肩パッドの前後幅 １３：肩パッドの左右幅 １４：肩パッド装着部位 １５：ジャケット ２１：ボディー変形の高さ方向 ２２：ボディー変形の前後方向 ２３：ボディー変形の左右方向 ３０：ボディー ３１：肩パッド形状 ４１：肩パッドを考慮した計算結果 ４２：肩パッドを考慮しない計算結果 １０１：コンピュータ １０２：補助記憶装置 １０３：入力装置 １０４：表示装置

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】硬質部位と一般部位とを含む衣服を着用す
   べき人体の形状を数値計算用にモデル化したボディー形
   状を入力する工程と、前記衣服形状を数値計算用にモデ
   ル化した衣服の初期形状モデルを入力する工程と、前記
   ボディー形状モデルに前記衣服の初期形状モデルを着せ
   付けたときの前記衣服形状モデルの各部の位置を計算機
   で模擬実験する工程と、該模擬実験の結果を表示する工
   程とを含む衣服の着用状態表示方法であって、前記ボデ
   ィー形状データを入力する工程は、前記ボディー形状と
   して前記人体の形状と前記硬質部位に対応する仮想物体
   の形状とをあわせたモデルを入力するものである衣服の
   着用状態表示方法。
2. 【請求項２】前記硬質部位は衣服に装着されたパッドで
   ある請求項１に記載の衣服の着用状態表示方法。
3. 【請求項３】硬質部位と一般部位とを含む衣服を着用す
   べき人体の形状を数値計算用にモデル化したボディー形
   状を入力する工程と、該衣服の少なくとも１個のパーツ
   形状を設定する工程と、該パーツの素材の特性を設定す
   る工程と、該パーツ形状に基づき前記衣服形状を数値計
   算用にモデル化した衣服の初期形状モデルを入力する工
   程と、前記ボディー形状モデルに前記衣服の初期形状モ
   デルを着せ付けたときの前記衣服形状モデルの各部の位
   置を前記素材の特性に基づいて計算機で模擬実験する工
   程と、該模擬実験の結果を表示する工程と、該模擬実験
   の結果に基づいて前記衣服のパーツ形状または素材を最
   終決定する工程と、該最終決定されたパーツの形状また
   は素材に基づいてパーツを作製する衣服の製造方法であ
   って、前記ボディー形状データを入力する工程は、ボデ
   ィー形状として前記人体の形状と前記硬質部位に対応す
   る仮想物体の形状とをあわせたモデルを入力するもので
   ある衣服の製造方法。
4. 【請求項４】前記模擬実験の結果に基づいて選択したパ
   ーツ形状を微調整し、該微調整結果を作製されるパーツ
   の形状に反映させる請求項３に記載の衣服の製造方法。
5. 【請求項５】前記パーツ形状の複数の候補はサーバ装置
   に保存されており、前記候補の選択はサーバ装置とオン
   ラインまたはオンエアで接続された端末装置において行
   われる請求項３〜４のいずれかに記載の衣服の製造方
   法。
6. 【請求項６】請求項３〜５のいずれかの衣服製造方法に
   より製造された衣服。
7. 【請求項７】硬質部位と一般部位とを含む衣服を着用す
   べき人体の形状を数値計算用にモデル化したボディー形
   状を入力する手段と、前記衣服形状を数値計算用にモデ
   ル化した衣服の初期形状モデルを入力する手段と、前記
   ボディー形状モデルに前記衣服の初期形状モデルを着せ
   付けたときの前記衣服形状モデルの各部の位置を計算機
   で模擬実験する手段と、該模擬実験の結果を表示する手
   段とを含む衣服の製造支援装置であって、前記ボディー
   形状データを入力する手段は、ボディー形状として前記
   人体の形状と前記硬質部位に対応する仮想物体の形状と
   をあわせたモデルを入力するものである衣服の製造支援
   装置。
8. 【請求項８】請求項１〜２のいずれかの衣服の着用状態
   の表示方法の各手順をコンピュータを用いて実施できる
   ようにコンピュータを動作させるソフトウェアを記憶し
   た記憶媒体。