JP2000336040A - 筋線維芽細胞系疾患の予防または治療剤 - Google Patents
筋線維芽細胞系疾患の予防または治療剤Info
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Abstract
再狭窄、動脈硬化、脳動脈硬化症、肺線維症、肝硬変、
腎糸球体硬化症等の筋線維芽細胞増殖性の疾患に対する
予防または治療剤を提供することにある。 【解決手段】 IV型コラーゲンゲルまたはI型コラー
ゲンゲルは、動脈平滑筋細胞、腎臓糸球体メサンギウム
細胞、肝星細胞等の分化維持を保つかあるいは脱分化し
た筋線維芽細胞の再分化を誘導する作用し、従って動脈
硬化症、腎糸球体硬化症、肝硬変等の筋線維芽細胞系疾
患の予防または治療に有効である。
Description
はステント留置後の動脈再狭窄、動脈硬化症、腎糸球体
硬化症、肝硬変等、各組織の線維症または硬化症の予
防、もしくは進展防止、および治療方法についての分野
に属する。
テント留置後の動脈再狭窄は、Russell Ros
sの提唱する障害血管モデル仮説(Nature(19
93)362:801−809,The New En
g.J.of Med.(1986)14:115−1
26)に従って生じると考えられている。すなわち、動
脈壁に加えられる様々な刺激・傷害による血管内皮細胞
の剥離などを契機として、一部の動脈平滑筋細胞は、そ
の形質が分化型から脱分化型に変化し(形質転換)、血
管内腔に向かい遊走し増殖し、I型コラーゲンなどの細
胞外マトリックス蛋白の過剰生産、コラーゲン線維の沈
着の結果、新生内膜の肥厚を引き起こすというものであ
る。従って、動脈平滑筋細胞の脱分化型への抑制および
脱分化型筋線維芽細胞の再分化を誘導することが、動脈
硬化症、動脈再狭窄の防止、治療に役立つと考えられ
る。現在までのところインビトロの培養系において動脈
平滑筋細胞の脱分化型への抑制効果があるものとして
は、IGF1、インスリン、I型コラーゲンゲル等が知
られている。しかしながらこれらの抑制効果は一時的で
あり、1週間、10日の長期間の培養では抑制効果を示
さない。更に、血清存在下ではほとんど抑制効果を示さ
ない。また、脱分化型動脈平滑筋細胞を分化型にもどす
培養条件はほとんど知られていない。これまでに動脈硬
化症、動脈再狭窄の治療方法として脱分化型動脈平滑筋
細胞の増殖抑制、アポトーシスの誘導、また、脱分化型
動脈平滑筋細胞のI型コラーゲン蛋白の産生抑制(I型
コラーゲンや、TGFベータのアンチセンスDNAの利
用)および、I型コラーゲン修飾酵素またはプロッセシ
ング酵素の阻害によるコラーゲン線維の形成阻害等が試
みられている。
が障害されると腎臓糸球体メサンギウム細胞が形質転換
し、増殖し、糸球体内に過剰な細胞外マトリックス蛋白
の沈着を起こすことが観察されている。その結果とし
て、糸球体の硬化をもたらし、最終的には糸球体濾過機
能の廃絶から慢性腎不全の病態をもたらすことが知られ
ている。肝硬変では、肝星細胞が形質転換し、増殖し、
また細胞外マトリックス蛋白の過剰産生およびマトリッ
クス蛋白の沈着を生じる。その結果として、肝類洞壁の
変化を生み、肝機能の低下をもたらすことが知られてい
る。
転換を起こした動脈平滑筋細胞、腎臓糸球体メサンギウ
ム細胞、肝星細胞等の筋線維芽細胞に起因する動脈硬化
症、腎糸球体硬化症、肝硬変の予防、進展防止および治
療には有効な治療薬がないかもしくは更なる治療薬が望
まれている。
た結果、細胞外マトリックスを用いて動脈平滑筋細胞、
腎臓糸球体メサンギウム細胞、肝星細胞を分化型で維持
する方法、および形質転換して脱分化した動脈平滑筋細
胞、腎臓糸球体メサンギウム細胞、肝星細胞を再分化さ
せる方法を見いだした。これらのことは病巣部位での筋
線維芽細胞の増殖抑制と細胞外マトリックス蛋白の過剰
生産、沈着を抑制できることを示す。すなわち形質転換
した動脈平滑筋細胞、腎臓糸球体メサンギウム細胞、肝
星細胞の示す個々の変化、例えば増殖能、細胞外マトリ
ックス蛋白質生産能などを治療の標的にするのではな
く、脱分化する前のこれら細胞などの血管周皮細胞ある
いは平滑筋関連細胞の分化を維持するかまたは脱分化し
た筋線維芽細胞を再分化誘導することによりもとの分化
状態の細胞に戻すことにより、PTCA術後もしくはス
テント留置後の動脈再狭窄、動脈硬化症、腎糸球体硬化
症、肝硬変の予防、進展防止、治療することを見いだし
た。例えばIV型コラーゲンゲルを用いて培養すると、
動脈平滑筋細胞、腎臓糸球体メサンギウム細胞、肝星細
胞の形質を維持することができる。また、IV型コラー
ゲンゲルを用いて培養すると、形質転換した細胞をもと
の分化状態の細胞に戻すことができる。このような作用
を持つ物質を病巣部位に投与することで、病巣部位に存
在し、病態を進展させる形質転換細胞を正常な細胞に戻
すことができる。これによって、病状を回復、または悪
化を防ぐことができる。すなわち、本発明は下記の
(1)〜(5)に関するものである。 (1)血管周皮細胞あるいは平滑筋関連細胞の分化を維
持するかもしくは脱分化した筋線維芽細胞の再分化を誘
導して病巣部位を修復する機能を有する細胞外マトリッ
クスを、有効成分として含有する筋線維芽細胞系疾患の
予防または治療剤。 (2)筋線維芽細胞系疾患が、PTCA術後もしくはス
テント留置後の動脈再狭窄、動脈硬化症、腎糸球体硬化
症または肝硬変である上記(1)記載の予防または治療
剤。 (3)筋線維芽細胞系疾患が脳頚動脈硬化症または肺線
維症である上記(1)記載の予防または治療剤。 (4)細胞外マトリックスがIV型コラーゲンゲルまた
はI型コラーゲンゲルである上記(1)から(3)のい
ずれかに記載の予防または治療剤。 (5)IV型コラーゲンが会合し、平均直径5〜35n
mのポアサイズを持つ多角編み目構造を持つゲルである
上記(4)記載の予防または治療剤。
細胞が収縮型から合成型へと変化していることが知られ
ている。病巣部位での動脈平滑筋細胞は、形態の変化、
激しい増殖性、過剰な線維状コラーゲンの生産、コラー
ゲン線維の沈着を伴う形質変化を示し、全て線維芽細胞
様の形質となる。このような観察から病理学者は平滑筋
由来のこの細胞をmyofibroblast(筋線維
芽細胞)と称している。平滑筋細胞の形質の制御は様々
な臓器でみられる線維症または硬化症の発症に深く関わ
っていると考えられている。動脈平滑筋細胞で生じる線
維芽細胞様への形質変化と同様な変化が、血清を含む培
地を用いたインビトロの初代培養系でも起きる。すなわ
ち培養系で生じる形質転換細胞は動脈硬化病巣部位でみ
られる筋線維芽細胞の特徴と同じ特徴を獲得する。
の維持、遺伝子発現、遊走といった、細胞の基本的な機
能は、細胞をとりまく細胞外基質の影響を受ける。直接
的な証拠は、細胞培養系で基質の細胞への影響を調べ
る、インビトロの研究から得られている。培養系におい
ては、動脈平滑筋細胞の機能は培養基質として固定化さ
れた細胞外基質の影響を受け、制御される。
は線維症または硬化症に係わる疾患を示し、上記したP
TCA術後もしくはステント留置後の動脈再狭窄、動脈
硬化とともに、腎糸球体硬化症および肝硬変、さらには
脳頚動脈硬化症、肺線維症が挙げられる。また、本発明
において血管周皮細胞あるいは平滑筋関連細胞とは、筋
線維芽細胞になる前の分化状態の細胞を示し、即ち、例
えば動脈平滑筋細胞、肝星細胞、腎臓糸球体メサンギウ
ム細胞などの血管内皮細胞の裏打ちにある周皮細胞ある
いは平滑筋関連細胞を示す。また、本発明において細胞
外マトリックスとは生体内にあるのとほぼ同じ構造、機
能を有する細胞外マトリックスを示し、例えば生体内に
存在するコラーゲンがこれに相当し、特にI型コラーゲ
ン、IV型コラーゲンが好ましくIV型コラーゲンが特
に好ましい。本発明において具体的にはIV型コラーゲ
ンおよびI型コラーゲンともゲルタイプが好ましく、特
にIV型コラーゲンゲルが好ましい。また、IV型コラ
ーゲンゲルでは平均直径5〜35nm、好ましくは10
〜25nmのポアサイズを持つ多角編み目構造のものが
好ましく、これはKoichi Nakazatoら、
J.Biochemistry 120,889−89
4(1996)に記載の方法によって得ることができ
る。従来生体内と同様な構造を持ったIV型コラーゲン
ゲルを製造することは困難であったが最近上記のKoi
chi Nakazatoらの方法によって製造が可能
となり、本発明への適用も可能となった。例えば生体か
ら単離したIV型コラーゲン分子から造ったゲルは直径
18nmのポアサイズを持つ多角編み目構造を持ち、こ
れがラミナデンサの骨格構造と同じである。上記文献に
は特定の食塩濃度、温度の条件下でIV型コラーゲン溶
液はゲル化して、多角編み目構造をつくり(平均直径1
5.5nmのポアサイズ)、ゲルの硬さは特に蛋白濃度
と温度、インキュベーション時間に依存することが報告
されている。
細胞の分化を維持または再分化誘導を起こす点について
の作用機序は次の通りである。組織中のコラーゲン会合
体とその場に存在する細胞のタイプとの関係では、コラ
ーゲン会合体がその場の細胞の形質分化を維持するとい
った生物学的な意義があると考えられる。以後に記述す
る実施例で述べるように、例えば組織中ではIV型コラ
ーゲンと接して存在している動脈平滑筋細胞が、組織中
ではIV型コラーゲンとは接していない皮膚の線維芽細
胞と同様の形態、増殖能をもってプラスティック培養皿
の上では生育するが、IV型コラーゲンゲル上では全く
異なった形態、増殖能を示す。
トロで細胞を培養すると、細胞の形態、増殖能、蛋白発
現能などが異なることがよく知られている。また、同じ
コラーゲンタイプ、例えばI型コラーゲンであっても、
分子状のI型コラーゲンと線維状のI型コラーゲンでは
細胞に与える作用が異なる事も知られている。このよう
な細胞外マトリックスの細胞に対する異なった作用は、
インテグリンに代表される細胞表面の細胞外マトリック
ス受容体を介して起きると考えられている。本発明の細
胞外マトリックスが持つ細胞の分化維持または再分化誘
導作用についても細胞表面の受容体を介して発現してい
ることも考えられ、特にゲル化したIV型コラーゲンを
認識する1種または複数種の受容体によると推測され
る。
V型コラーゲンゲルを用いての上記疾患に対する治療法
について説明する。本発明のIV型コラーゲンゲルを製
剤として用いるには、単独でもよいが必要に応じ薬学的
に許容される安定化剤、保存剤、賦形剤などや、成型性
や徐放性を調節するための添加剤を必要に応じて加える
ことができる。このようにして得られたものを目的に応
じて適宜加工する。例えば、通常の粉砕器を用いて粒径
に粉砕し、これを圧縮成型してペレット、ズポ等の皮下
投与、生体内埋め込みまたは体腔内挿入して用いること
ができる。また、粉砕して得た粉末を手術時に病巣部位
に添布して治療効果を得ることができる。また、IV型
コラーゲンゲルを含む懸濁性注射剤として患部に局所注
入することも可能であり、この場合の注射用溶媒として
は例えば落花生油、ゴマ油、ひまし油、オリーブ油等の
植物油が挙げられる。
コラーゲンゲルを動脈再狭窄、動脈硬化症、腎糸球体硬
化症、肝硬変症に適用させるに当たっては、投与経路お
よび投与される患者の年齢、体重等によって投与量が異
なり、適宜増減される。通常IV型コラーゲンゲル又は
I型コラーゲンゲルとして10mg〜10g/体重の範
囲の投与量であり、これを適宜増減させながら投与す
る。例えばPTCA術時、または術後、患部に当該IV
型コラーゲンゲルペレットを留置、ステント留置時には
ステントとともに患部に当該IV型コラーゲンゲルペレ
ットを留置する。IV型コラーゲンゲルペレットはIV
型コラーゲン溶液とリン酸緩衝液の混合液を金型に入
れ、4℃で保温し、成型することができる。この際、製
剤の形状としては、円筒状、球状、円柱状、針状、ボタ
ン状など使用する部位に適合した形に成型し、患部に留
置することができる。また、ステントの血管壁との接触
部位にIV型コラーゲンゲルを成型する際には、ステン
トと金型の組み合わせにより、ステント、IV型コラー
ゲンゲルの一体成型をすることができる。PTCA術
時、または術後の患部には例えば、円筒状のIV型コラ
ーゲンゲルを患部の動脈内に留置する。
型コラーゲンゲルを細胞培養の基質として用い、10%
血清存在下での筋線維芽細胞様の動脈平滑筋細胞の基本
的な細胞機能、即ち形態、増殖能やマーカー蛋白の発現
に対するIV型コラーゲンゲル及びI型コラーゲンゲル
の作用を調べた。 (1)細胞培養 ヒト動脈平滑筋細胞は、3代継代したものをClone
tics Corp.(米国、サンディエゴ)より購入
した。この細胞は改変MCDB131培地(Clone
tics Corp.)に10%ウシ胎児血清(以下F
BSとする)(Clonetics Corp.)、1
0ng/mlの組み換え上皮細胞増殖因子(EGF)、
2ng/mlの組み換え塩基性線維芽細胞増殖因子(b
FGF)、5μg/mlのインスリン、50μg/ml
のゲンタマイシン、50ng/mlのアンホテリシンB
を加えたもの(以下増殖培地とする)を用いて37℃、
5%CO2 下で培養した。増殖因子、インスリン、抗生
物質はCloneticsCorp.より購入した。細
胞は通常直径100mmの培養皿で維持した。細胞が密
に生育した時に、0.25% トリプシン、0.02%
EDTAを含むリン酸緩衝生理食塩水(Mg++,Ca
++を含まない、以下PBS(−)とする)に細胞を接触
させ、細胞を皿よりはがした後、1:4の分割割合で、
継代した。筋線維芽平滑筋細胞(以下M−SMCとす
る)は動脈平滑筋細胞(以下A−SMCとする)を10
0mm培養皿で3〜5回継代し、9〜13回分裂を繰り
返させることによって得、様々な基質上で培養した。
ve Tissue24,157−162,1992に
記載された方法に従って、ラット尾の腱の酸抽出によっ
て得た。I型コラーゲンゲルの調製と、そのゲル上での
細胞培養も上記文献に記載された方法に従って行った。
即ち、I型コラーゲン溶液(3mg/ml)6倍容に対
し、3倍容の3倍濃度の増殖培地(FBSを含まない)
と、1倍容のFBSを4℃で混合し、最終コラーゲン濃
度が1mg/mlとなるようにした。そのうち一部(5
00μl)を24穴の培養皿に加え、ゲル化のため、3
7℃で保温した。7.2x103 個の細胞を含む1ml
の細胞懸濁液をそれぞれのゲル上に撒布し、5%CO2
下、37℃で培養した。培地は3日おきに交換した。I
V型コラーゲンゲルの調製は、4℃で9倍容のIV型コ
ラーゲン溶液(2mg/ml、1mM塩酸)に1倍容の
200mM リン酸緩衝液、pH7.3、(1.5M食
塩を含む)を混ぜ、最終濃度1.8mg/mlとした。
得られた溶液の一部(500μl)を24穴培養皿に加
えた。培養皿は少なくとも5日間は4℃で保温し、細胞
がゲル表面にのるまで十分に固くゲル化した。培地は3
日おきに交換した。細胞の形態は位相差顕微鏡で拡大率
100倍で観察した。
コラーゲンゲルまたはIV型コラーゲンゲル上で培養し
た細胞をPBS(−)で洗い、そこに細胞を懸濁するた
めに0.2% バクテリアルコラゲナーゼ(和光純薬)
及び1mM 塩化カルシウムを含むPBS(−)を50
0μl加え、37℃、2時間保温した。ばらばらになっ
た細胞の数をコールターカウンターで計測した。測定
は、培養2日、5日、10日目にそれぞれ3連で行っ
た。
および7日間培養したM−SMCを4℃、18時間4%
パラホルムアルデヒドで固定後、0.5% トライトン
X−100を含むPBS(−)溶液で25℃、90分間
処理し、浸透を容易にした。そして、非特異的結合を防
ぐために30分間、0.2% BSAを含むPBS
(−)溶液に浸した後、500倍に希釈した抗平滑筋ミ
オシン重鎖モノクローナル抗体(クローン hSM−
V、シグマ、米国)または抗ヒトβ1インテグリンモノ
クローナル抗体(MAB 1977,Chemicon
Int.Inc.、米国)とともに4℃にて18時間
保温した。150倍希釈したFITC標識ヒツジ抗マウ
スIgG抗体(Leinco Technol.、米
国)にさらした後、細胞を共焦点レーザー走査型顕微鏡
で拡大率400倍で観察した。非免疫マウスIgG(I
CN Pharmaceuticals,Inc.、米
国)を抗平滑筋ミオシン重鎖モノクローナル抗体や抗ヒ
トβ1インテグリンモノクローナル抗体の代わりにコン
トロールとして用いた。
M−SMCを3日間増殖培地で培養した。その細胞を1
nMのヒトエンドセリン−1(PeptideIns
t.,Inc.、大阪)で処理し、位相差顕微鏡で37
℃下で15分間観察した。顕微鏡写真を1分おきに撮影
した。ヒトエンドセリン−1を添加しない細胞をコント
ロールとして用いた。
代数3のA−SMCを9〜13回分裂回数までプラスチ
ック上で繰り返し継代を行うと、A−SMCは高い増殖
能を獲得した。これらの細胞を筋線維芽様平滑筋細胞、
M−SMCと表記する。M−SMCをIV型コラーゲン
ゲルで培養すると、細胞はI型コラーゲンゲルで培養し
たのと同様に、細胞が広がり伸長するのが遅くなった。
一度細胞が伸長し始めると、およそ2日間は伸長を続け
た。その後、よく伸びた細胞の先端は周りのやはり伸長
した細胞との細胞−細胞間の接合点の明白な形成によっ
ては区別がつかなくなった。細胞間の接合は培養してい
る細胞全体に及び、ついには図1で示すような編み目様
の多細胞構造を形成した。編み目構造の形成は、培養開
始3日目に完成し、14日を過ぎても維持された。IV
型コラーゲンゲルを用いて培養した動脈平滑筋細胞の3
日目の形態を図1に示した。多細胞からなる編み目構造
はバクテリアルコラゲナーゼ処理により破壊すると、細
胞は互いに離れ、最後は丸くなった。しかし、丸くなっ
た細胞を集めて再びプラスチックの培養皿に蒔くと、細
胞は増殖能を高じたスピンドル様の形態を再びとり始め
た。これらのことは、IV型コラーゲンゲル上で抑制さ
れたM−SMCの増殖は可逆的であることを示してい
る。
9回分裂回数まで繰り返し継代されたM−SMC は強
い増殖能を獲得した。IV型コラーゲンゲルではM−S
MCは21日間の培養でも全く増殖しなかった。他の増
殖因子を加えても固化したIV型コラーゲンゲルで抑え
られた増殖は全く回復しなかった。細胞増殖の停止は細
胞のアポトーシスによるものではない。なぜならば増殖
を停止したM−SMCをバクテリアルコラゲナーゼ処理
し、プラスチック上で再培養すると細胞増殖を開始した
からである。
白の発現:A−SMCの分化は通常α−平滑筋アクチン
(α−SMA)、平滑筋ミオシン重鎖(SMH)、ca
ldesmonなどの平滑筋特異的細胞骨格蛋白が発現
しているか否かを調べることで評価する。これらのマー
カー蛋白のうち、SMHは一般的に収縮型A−SMCに
最も特異的で信頼性が高いと考えられている(Biru
kov,K.G.ら、Exp.Cell Res.20
4,46−53,1993)。解析には骨格筋、心筋、
非筋肉細胞のミオシンと交雑反応しない抗体であること
が重要である(Longtine,J.A.ら、J.H
istochem.Cytochem.33,179−
184,1985)。そのような抗SMHモノクローナ
ル抗体を使って、異なった基質で13回分裂回数のM−
SMCについてSMHの発現を免疫細胞化学的に解析し
た。SMHはIV型コラーゲンゲルで3日間培養したM
−SMCで強く染まり、再分化構築が確認された。この
現象について図2に示した。I型コラーゲンゲルで培養
した細胞では、SMHは発現しているようだがほんのわ
ずかであった。培養7日目になると、ぼんやりとした、
弱いSMHの反応がI型コラーゲンゲルで培養した細胞
で認められた。対照的に、強い免疫染色はIV型コラー
ゲンゲルで培養したM−SMCで見られ、7日目でもS
MHの強い発現の維持を示した。非特異的IgGを用い
た場合は、培養3日目、7日目とも蛍光発色は認められ
なかった。
SMCの収縮:培養3日目の13分裂回数のM−SMC
に終濃度1nm/mlとなるようにエンドセリン−1を
添加し、M−SMCがエンドセリン−1によって収縮す
るのか否かを調べた。エンドセリン−1を添加すると、
IV型コラーゲンゲルで培養したM−SMCのみがわず
かに、また緩やかに多細胞ネットワーク構造のなかで形
態を変化させた。1分おきに撮影した15枚の写真はわ
ずかではあるが明らかな細胞編み目構造の一部の動きを
捉えていた。細胞の動きは15分後には観察されなくな
った。形態の変化はM−SMCの収縮によるものと思わ
れた。
油10mlに懸濁させ油性懸濁型製剤を得た。
型によって圧縮成型を行いステント一体型製剤を得た。
ックスを用いて、分化維持を保つかもしくは脱分化した
動脈平滑筋細胞を再分化させることにより動脈再狭窄等
の筋線維芽細胞系疾患を予防、治療することが期待され
る。
り、具体的にはIV型コラーゲンゲル上で培養した動脈
平滑筋細胞の培養3日目の形態を示した写真である。
り、具体的にはIV型コラーゲンゲルで培養した時の培
養3日目の動脈平滑筋細胞のSMHの発現を調べたもの
であり、IV型コラーゲンゲルが動脈平滑筋細胞の再分
化を誘導する効果を示した写真である。
Claims (5)
- 【請求項1】 血管周皮細胞あるいは平滑筋関連細胞の
分化維持を保つかもしくは脱分化した筋線維芽細胞の再
分化を誘導して病巣部位を修復する機能を有する細胞外
マトリックスを、有効成分として含有する筋線維芽細胞
系疾患の予防または治療剤。 - 【請求項2】 筋線維芽細胞系疾患が、PTCA術後も
しくはステント留置後の動脈再狭窄、動脈硬化症、腎糸
球体硬化症または肝硬変症である請求項1記載の予防ま
たは治療剤。 - 【請求項3】 筋線維芽細胞系疾患が脳頚動脈硬化症ま
たは肺線維症である請求項1記載の予防または治療剤。 - 【請求項4】 細胞外マトリックスがIV型コラーゲン
ゲルまたはI型コラーゲンゲルである請求項1〜3いず
れかに記載の予防または治療剤。 - 【請求項5】 IV型コラーゲンが会合し、平均直径5
〜35nmのポアサイズを持つ多角編み目構造を持つゲ
ルである請求項4記載の予防または治療剤。
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WO2006004076A1 (ja) * | 2004-06-30 | 2006-01-12 | Hiroshima Industrial Promotion Organization | 生理活性バイオマテリアル |
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