JP2000330606A - 周期性信号の適応制御方法 - Google Patents

周期性信号の適応制御方法

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JP2000330606A
JP2000330606A JP11137683A JP13768399A JP2000330606A JP 2000330606 A JP2000330606 A JP 2000330606A JP 11137683 A JP11137683 A JP 11137683A JP 13768399 A JP13768399 A JP 13768399A JP 2000330606 A JP2000330606 A JP 2000330606A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 適応速度が向上し、より短時間で誤差信号を
収束させることができる周期性信号の適応制御方法を提
供すること。 【解決手段】 本発明の周期性信号の適応制御方法は、
適応信号発生アルゴリズム11、適応係数ベクトル更新
アルゴリズム12および直交化表現された伝達特性推定
アルゴリズム13を有する。適応係数ベクトル更新アル
ゴリズム12は、適応信号y(n)の振幅a(n)およ
び位相φ(n)を適応的に調整する。この際必要な推定
直交化係数P^(n),Q^(n)は、伝達特性推定ア
ルゴリズム13から供給される。推定直交化係数P^
(n),Q^(n)は、それぞれ互いに同格な変数であ
るので、一方の収束が他方の収束の足を引っ張ることが
なくなる。その結果、適応速度が向上し、より短時間で
誤差信号ε(n)を収束させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、制御技術の技術分
野に属し、より詳しくは周期性信号の能動抑制技術の技
術分野に属する。例えば、周期性信号が振動であれば能
動制振の技術分野に属し、周期性信号が雑音であればア
クティヴ・ノイズ・サプレッションの技術分野に属する
というように、周期性信号の種類によって本発明の応用
範囲は広く拡がっている。
【0002】
【従来の技術】本発明に対する従来技術としては、本出
願と同一出願人により出願された周期性信号の適応制御
方法が、特開平9−319403号公報(特願平8−1
32090号)に開示されている。
【0003】前記従来技術は、適応信号発生アルゴリズ
ムと、適応係数ベクトル更新アルゴリズムと、伝達特性
推定アルゴリズムとを有し、更新周期Tの離散時刻nが
更新される度に各アルゴリズムをデジタル演算する。こ
こで、適応信号発生アルゴリズムは、正弦関数により適
応信号y(n)=a(n) sin{ωTn+φ(n)}を
発生させ、伝達特性を介して適応信号y(n)を観測点
に加えることにより、観測点での周期性信号f(n)を
相殺するアルゴリズムである。また、適応係数ベクトル
更新アルゴリズムは、誤差信号ε(n)と前記伝達特性
のゲイン推定値A^(n)および位相推定値Φ^(n)
に基づいて、適応信号y(n)の振幅a(n)および位
相φ(n)を適応的に調整するアルゴリズムである。一
方、伝達特性推定アルゴリズムは、前記適応係数ベクト
ル更新アルゴリズムの演算に供される前記伝達特性のゲ
イン推定値A^(n)および位相推定値Φ^(n)を適
応的に調整するアルゴリズムである。
【0004】この従来技術によれば、適応信号y(n)
から観測点に至る伝達特性の変動にも柔軟に対応するこ
とができるので、より安定性に優れた周期性信号の適応
制御方法を提供することができた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
従来技術では、安定性が優れており、収束も比較的速や
かではあるものの、このような周期性信号の適応制御方
法に於いては、なお適応速度が高いことが望ましいこと
はいうまでもない。ここで、適応速度が向上するという
ことは、とりもなおさず観測点で観測される誤差信号の
収束がより速やかになるということである。
【0006】そこで本発明は、適応信号y(n)から観
測点に至る伝達特性の変動にも柔軟に対応することがで
きながら、よりいっそう適応速度が向上した周期性信号
の適応制御方法を提供することを解決すべき課題とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に、発明者は、前記従来技術の適応速度を規制している
要因について考察した。
【0008】その結果、適応信号y(n)から観測点に
至る伝達特性を推定するに際して、伝達特性推定アルゴ
リズムにより推定されるゲイン推定値A^(n)および
位相推定値Φ^(n)は、性格が互いに異なる変数であ
ることに思い至った。すなわち、伝達特性推定アルゴリ
ズムでは、互いに性格が異なる二種類の異なる変数であ
るゲイン推定値A^(n)および位相推定値Φ^(n)
が同時に調整される。それゆえ、一方の変数と他方の変
数との収束時間に差違があり、遅い方の収束時間をもっ
て誤差信号が収束していることに、収束時間の短縮を阻
む問題があるものと考えられる。
【0009】そこで発明者は、伝達特性の推定値を直交
化表現に改め、推定直交化係数P^(n),Q^(n)
をもって伝達特性を表現することにして、互いに同格な
推定直交化係数P^(n),Q^(n)を同時に調整す
ることにした。ここで、伝達特性のゲイン推定値A^
(n)および位相推定値Φ^(n)と推定直交化係数P
^(n),Q^(n)との関係は、A^(n)=√{P
2(n)+Q^2(n)},tanΦ^(n)=Q^
(n)/P^(n)である。また、P^(n)=A^
(n)cos{Φ^(n)},Q^(n)=A^(n)
sin{Φ^(n)}である。
【0010】すなわち発明者は、伝達特性推定アルゴリ
ズムを、前述の適応信号y(n)の振幅a(n)および
位相φ(n)と伝達特性の推定直交化係数P^(n),
Q^(n)とを用いて導出した。その際、周期性信号f
(n)の特定周波数成分の一周期または複数周期にTi
が相当するタップ数iを導入し、 sin(ωTn)と sin
{ωT(n−i)}とを近似的に等価として数式を簡略
化できることを発見した。もちろん、 cos(ωTn)と
cos{ωT(n−i)}とについても同様であって、両
者を近似的に等価と置いて数式を簡略化することができ
ることを発見した。以上の数式の簡略化については、後
ほど実施例1の導出の項で周期偏差E(n)の導き出し
に当たって具体的に説明する。その結果、伝達特性推定
アルゴリズムを簡略化することができたので、マイクロ
プロセッサ等の演算手段にかかる負荷を減らすことがで
きるようになった。
【0011】そこで発明者は、以上の洞察と発見とに基
づき、以下の手段を発明した。
【0012】(第1手段)本発明の第1手段は、請求項
1記載の周期性信号の適応制御方法である。
【0013】すなわち本手段は、適応信号発生アルゴリ
ズムと、適応係数ベクトル更新アルゴリズムと、伝達特
性推定アルゴリズムとを有する。
【0014】適応信号発生アルゴリズムは、更新周期T
の離散時刻nにおいて、観測点に加わる周期性信号f
(n)のうち抑制すべき特定周波数成分の角振動数ωに
基づき、正弦関数である適応信号y(n)を、次の数8
に従って発生させる。
【0015】
【数8】 y(n) = A(n)sin{ωTn+φ
(n)} 適応信号y(n)は、所定の伝達特性を介して観測点に
加えられ、周期性信号f(n)のうち抑制すべき特定周
波数成分を相殺して、観測点で検出される誤差信号ε
(n)を抑制する。すなわち、適応信号y(n)の振幅
a(n)および位相φ(n)は、適応係数ベクトル更新
アルゴリズムによって適正に調整され、適応信号y
(n)は、観測点において計測される誤差信号ε(n)
を低減するように作用する。
【0016】また、適応係数ベクトル更新アルゴリズム
は、適応信号y(n)が結果的に周期性信号f(n)の
うち特定周波数成分を相殺するように、適応信号y
(n)の振幅a(n)および位相φ(n)を適応的に調
整する。すなわち、適応信号y(n)の振幅a(n)お
よび位相φ(n)を要素とする適応係数ベクトルW
(n)を、前記誤差信号ε(n)と、前記伝達特性の推
定値の直交化表現である推定直交化係数P^(n),Q
^(n)とに基づいて、離散時刻nの経過毎に更新す
る。そして、周期性信号f(n)が含む特定周波数成分
の振幅、位相または角振動数ωの変動と、伝達特性の変
動とに適応して、適応係数ベクトルW(n)=[a
(n),φ(n)]T の各要素を調整する。
【0017】その結果、前記伝達特性を介して観測点に
伝達された適応信号y(n)は、観測点に加わる周期性
信号f(n)のうち特定周波数成分と互いに相殺して、
観測点で検出される誤差信号ε(n)を抑制するに至
る。
【0018】さらに、伝達特性推定アルゴリズムは、前
記伝達特性の推定直交化係数P^(n),Q^(n)を
適応的に調整して、周期性信号f(n)の特定周波数成
分の角振動数ωに対応する同伝達特性のゲインおよび位
相を推定する。すなわち、伝達特性の推定直交化係数P
^(n),Q^(n)を、適応信号y(n)の振幅a
(n)および位相φ(n)と周期偏差E(n)とに基づ
いて、離散時刻nの経過毎に更新する。ここで、周期偏
差E(n)は、伝達特性の両推定直交化係数P^
(n),Q^(n)に基づく誤差信号ε(n)の予測値
と、実際に観測された誤差信号ε(n)との差に関し
て、角振動数ωの特定周波数成分に一周期分または複数
周期分(すなわち自然数周期分)に当たる差分を取り、
周期性信号f(n)の影響を除去した偏差である。
【0019】その結果、伝達特性推定アルゴリズムによ
って、周期性信号f(n)の影響が除去され、抑制すべ
き特定周波数成分の角振動数ωに対応する前記伝達特性
のゲインおよび位相が推定され得るようになる。そし
て、推定された前記伝達特性の直交化表現である推定直
交化係数P^(n),Q^(n)は、前述の適応係数ベ
クトル更新アルゴリズムの演算に提供されるに至る。
【0020】このようにして、本手段では、先ず、伝達
特性推定アルゴリズムにより、抑制すべき特定周波数成
分の角振動数ωに対応する前記伝達特性のゲインおよび
位相に相当する推定直交化係数P^(n),Q^(n)
が推定される。次に、伝達特性の推定直交化係数P^
(n),Q^(n)は、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズムの演算に使用され、同アルゴリズムによって次の離
散時刻における適応信号y(n)の振幅a(n)および
位相φ(n)が適応的に調整される。最後に、適応的に
調整された振幅a(n)および位相φ(n)に基づき、
適応制御アルゴリズム1によって適応信号y(n)が生
成される。その結果、前記伝達特性を介して観測点に伝
達された適応信号y(n)は、同観測点に加わる周期性
信号f(n)のうち抑制すべき特定周波数成分を相殺し
て、同観測点で検知される誤差信号ε(n)が抑制され
る。
【0021】この際、前記伝達特性の推定値は、推定直
交化係数P^(n),Q^(n)により直交化表現され
ており、推定直交化係数P^(n),Q^(n)が伝達
特性推定アルゴリズムによって同時に調整される。する
と、変数としての性質が互いに同格な両推定直交化係数
P^(n),Q^(n)が並行して調整されるので、両
者の収束時間はほぼ同等になり、適応の過程において一
方が他方の足を引っ張ることもなくなる。その結果、伝
達特性推定アルゴリズムの適応速度が向上し、誤差信号
ε(n)の収束時間が短縮されるという効果がある。
【0022】したがって、本手段の周期性信号の適応制
御方法によれば、適応信号y(n)から観測点に至る伝
達特性の変動にも柔軟に対応することができながら、従
来の技術よりも適応速度が向上するという効果がある。
【0023】なお、タップ数iは、通常の場合、特定周
波数成分の一周期分に相当する値であってよい。ただ
し、例外的に複数周期分の遅延に相当する値である方が
好ましい制御成績が得られる場合もある。この例外的な
場合とは、たとえば、特定周波数成分が所定の周期で同
一パターンの増減を繰り返す場合などである。それゆ
え、特別な場合を除き、タップ数iはTiが特定周波数
成分の一周期分に相当する値でよい。
【0024】(第2手段)本発明の第2手段は、請求項
2記載の周期性信号の適応制御方法である。
【0025】すなわち本手段では、適応係数ベクトル更
新アルゴリズムは、次の数9ないし数11のうちいずれ
かの更新式に従って、前記適応係数ベクトルW(n)を
更新する。
【0026】
【数9】
【0027】
【数10】
【0028】
【数11】
【0029】以上の数9ないし数11の導き出し方につ
いては、後ほど実施例1の導出の項で段階を踏んで詳し
く説明する。
【0030】これらの更新式では、適応信号y(n)の
振幅a(n)および位相φ(n)のの更新は比較的簡素
な演算で行われ、適応係数ベクトル更新アルゴリズムの
演算負荷が軽減される。
【0031】特に、前記数10を適応係数ベクトル更新
アルゴリズムとして採用すれば、第1手段で述べたよう
に適応速度が向上するばかりではなく、演算手段にかか
る負荷が軽減されるという効果もある。
【0032】一方、前記数11を適応係数ベクトル更新
アルゴリズムとしてとして採用すれば、伝達特性のゲイ
ンが低下した場合にも、正規化された適応係数ベクトル
更新アルゴリズムの適応速度はあまり低下することがな
い。そればかりではなく、正規化するに当たってゲイン
推定値の二乗A^2(n)=P^2(n)+Q^2(n)
に正の発散防止定数γが足されているので、適応係数ベ
クトル更新アルゴリズムの発散が防止されている。すな
わち、ゲイン推定値A^(n)がゼロにまで低下するこ
とがあっても、右辺第二項の分母がゼロにならないの
で、適応係数ベクトル更新アルゴリズムが発散すること
は防止される。
【0033】なお、前記数11の右辺第二項の分子に
は、明瞭に推定直交化係数P^(n),Q^(n)が含
まれているばかりではなく、誤差信号ε(n)にも推定
直交化係数P^(n),Q^(n)が含まれているもの
と考え得る。それゆえ、前記数11の右辺第二項をP^
2(n)+Q^2(n)+γで割るという手段は、推定直
交化係数P^(n),Q^(n)の無次元化の視点から
しても妥当である。
【0034】また、前記数9ないし前記数11を正規化
する別法として、√{p2(n)+q2(n)}+γ2
たは√{p2(n)+q2(n)+γ2 }で右辺第二項を
割るという手段もある。ここで、γ2 はゼロ以上の発散
防止定数である。右辺第二項中に含まれる誤差信号ε
(n)は、適応信号y(n)が伝達特性を通して伝達さ
れた信号(相殺信号)と周期性信号f(n)との和であ
る。それゆえ、周期性信号f(n)が小さい場合には、
適応信号y(n)が適正に収束していなくても、周期性
信号f(n)が小さいことに起因して誤差信号ε(n)
の絶対値が小さい場合があり得る。そこで、この第二法
の手段をとれば、周期性信号f(n)が小さい場合にも
適応速度が速やかになり、誤差信号ε(n)の収束が速
くなるという効果がある。
【0035】(第3手段)本発明の第3手段は、請求項
3記載の周期性信号の適応制御方法である。
【0036】すなわち本手段では、伝達特性推定アルゴ
リズムは、次の数12および数13の一対の更新式と両
該更新式の右辺第二項を正規化した一対の更新式とのう
ち一方に従って、伝達特性の推定直交化係数P^
(n),Q^(n)を更新する。
【0037】
【数12】P^(n+1) = P^(n)+μP
(n)[ a(n)sin{ωTn+φ(n)}−a(n
−i)sin{ωT(n−i)+φ(n−i)}]
【0038】
【数13】Q^(n+1) = Q^(n)+μQ
(n)[ a(n)cos{ωTn+φ(n)}−a(n
−i)cos{ωT(n−i)+φ(n−i)}] ただし、これらの数12および数13において、 μP,μQ:ステップサイズパラメータ(0<μP,0<
μQ) i:一周期分または複数周期分にあたるタップ数 E(n):周期偏差(次の数14に定義)
【0039】
【数14】E(n)≡{ε(n)−ε(n−i)}−P
^(n)[a(n)sin{ωTn+φ(n)}−a(n−
i)sin{ωT(n−i)+φ(n−i)}]−Q^
(n)[a(n)cos{ωTn+φ(n)}−a(n−
i)cos{ωT(n−i)+φ(n−i)}] 以上の数12および数13の導き出し方は、後ほど実施
例1の導出の項で順を追って具体的に説明する。
【0040】前記数12および前記数13では、伝達特
性の推定直交化係数P^(n),Q^(n)の両更新式
は、sin,cos の違いがあるだけで、数式の次元も構成も
同じで同格である。それゆえ、両ステップサイズパラメ
ータμP,μQが互いに同等であれば、両推定直交化係数
の適応速度はほぼ同等であるものと考えられる。それゆ
え、適応係数ベクトル更新アルゴリズムとして前記数1
2および前記数13を採用すれば、両推定直交化係数P
^(n),Q^(n)がほぼ同時に適応する。その結
果、両推定直交化係数P^(n),Q^(n)のうち一
方の適応速度が、他方の適応速度よりも遅れてしまうこ
とがないので、適応係数ベクトル更新アルゴリズムの適
応速度が向上するという効果がある。
【0041】そればかりではなく、本手段の伝達特性の
直交化表現した推定値である推定直交化係数P^
(n),Q^(n)の推定が前記数12および前記数1
3に則って行われる場合には、第一手段で述べた効果に
加え、比較的演算負荷が小さくてすむという効果があ
る。
【0042】ここで、前記数12および前記数13の右
辺第二項を正規化する第一法としては、両数式の右辺第
二項を√{P^2(n)+Q^2(n)}+γ’または√
{P^2(n)+Q^2(n)+γ’}で割るという手段
がある。ここで、γ’はゼロ以上の発散防止定数であ
る。すると、伝達特性のゲインが低下した場合にも適応
速度はあまり低下することがない。そればかりではな
く、ゲイン推定値A^(n)≡√{P^2(n)+Q^2
(n)}に正の発散防止定数γ’を足して正規化してい
るわけであるから、たとえゲイン推定値A^(n)がゼ
ロにまで低下することがあっても、適応係数ベクトル更
新アルゴリズムが発散することは防止されている。それ
ゆえ、適応係数ベクトル更新アルゴリズムに前記第一法
の正規化が施されていれば、伝達特性のゲインが低下し
ても適応速度が衰えないばかりではなく、ゲイン推定値
A^(n)≡{P^2(n)+Q^2(n)}がゼロにな
っても発散が防止されるという効果もある。
【0043】また、前記数12および前記数13の右辺
第二項を正規化する第二法として、適応信号y(n)の
振幅a(n)を用い、a(n)+γ”またはa2(n)
+γ”で右辺第二項を割るという手段もある。ここで、
γ”はゼロ以上の発散防止定数である。すなわち、右辺
第二項中には、a(n),a(n−i)やε(n),ε
(n−i)の項が含まれているので、周期性信号f
(n)の振幅が小さい場合に、制御信号y(n)の振幅
a(n)や誤差信号ε(n)の絶対値も小さいこともあ
りうる。また、制御信号y(n)の振幅a(n)の初期
値がゼロに設定される場合もありえ、これら場合には、
振幅a(n)またはa2(n)で右辺第二項を割ると数
値が発散したり不定になる可能性がある。しかしなが
ら、この第二法によれば、γ”を適正な大きさの正の値
に設定しておけば、このような場合にも前記数12およ
び前記数13が発散することは防止される。
【0044】あるいは、前記数12および前記数13の
右辺第二項を正規化する手段の第三法として、前記第一
法と前記第二法とを併用するという手段もある。このよ
うな第三法によれば、演算負荷こそ若干増えるが、前記
第一法および前記第二法の効果を併せ持つという効果が
ある。
【0045】(第4手段)本発明の第4手段は、請求項
4記載の周期性信号の適応制御方法である。
【0046】すなわち本手段では、抑制すべき特定周波
数成分の角振動数ωk(1≦k≦K)の個数Kと、誤差
信号εl(n)(1≦l≦L)の個数Lと、前記適応信
号ym(n)(1≦m≦M)の個数Mとのうち、少なく
とも一つは複数である。換言すれば本手段は、前述の第
1手段をK成分・L入力・M出力に拡張した周期性信号
の適応制御方法である。それゆえ本手段は、多成分多入
力多出力の複雑な系に対しても適用することができる。
【0047】したがって、本手段を多成分多入力多出力
の複雑な系に対して適用した場合、適応信号ym(n)
から誤差信号εl(n)に至る伝達特性の変動にも柔軟
に対応することができながら、適応速度がより向上する
という効果がある。
【0048】なお、本手段の具体的な各アルゴリズムの
数式と、それらの導き出し方とについては、後ほど実施
例2の項で一例を挙げて説明する。
【0049】
【発明の実施の形態】本発明の周期性信号の適応制御方
法の実施の形態については、当業者に実施可能な理解が
得られるよう、以下の実施例で明確かつ十分に説明す
る。
【0050】[実施例1] (実施例1の構成)本発明の実施例1としての周期性信
号の適応制御方法は、図1に示すように、一入力一出力
系の適応制御系において実施される。すなわち、適応制
御系への入力としての誤差信号ε(n)は一つであり、
適応制御系からの出力としての適応信号y(n)も一つ
である。本実施例での適応制御系は、適応信号発生アル
ゴリズム11と、適応係数ベクトル更新アルゴリズム1
2と、伝達特性推定アルゴリズム13と、伝達特性23
とをもつ。
【0051】ここで、適応制御系を含む全体的なシステ
ム構成について、予備知識として説明しておく。
【0052】周期性信号f(n)は、単一の特定周波数
成分を含む外乱信号であって、誤差信号ε(n)を観測
する観測点24に入力される。本実施例の周期性信号の
適応制御方法は、この周期性信号f(n)のうち前記特
定周波数成分が観測点24に与える影響を相殺し、観測
点24で検知される誤差信号ε(n)を抑制することを
制御目的とする。
【0053】ここで、周期性信号f(n)の前記特定周
波数成分の角振動数ωは、工学的に十分精密に計測さ
れ、適応信号発生アルゴリズム11、適応係数ベクトル
更新アルゴリズム12および推定伝達特性13に与えら
れるものとする。たとえば、周期性信号f(n)が自動
車のエンジンに起因する振動加速度であるとすると、そ
の角振動数ωは、点火パルス等の信号を観測することに
より、リアルタイムで容易かつ正確に計測することがで
きる。
【0054】適応信号発生アルゴリズム11は、周期性
信号f(n)の特定周波数成分の角振動数ωに基づい
て、同特定周波数成分に同期した適応信号y(n)を発
生させるアルゴリズムである。適応信号y(n)は、所
定の伝達特性23を介して相殺信号z(n)に変換さ
れ、観測点24に加えられる。観測点24では、周期性
信号f(n)と相殺信号z(n)とが合成され、その結
果としての誤差信号ε(n)=f(n)+z(n)が観
測される。前述の自動車のエンジンの例でいえば、観測
点24は乗員席の基台に固定された振動加速度センサに
相当し、誤差信号ε(n)は同センサの出力に相当す
る。
【0055】すなわち、本実施例の周期性信号の適応制
御方法では、観測点24に影響を及ぼす周期性信号f
(n)に対し、周期性信号f(n)に同期している一つ
の特定周波数成分からなる適応信号y(n)が、伝達特
性23を介して逆位相で加えられる。こうすることによ
って、周期性信号f(n)のうち特定周波数成分が観測
点24へ及ぼす影響が能動的に除去され、その結果、観
測点24で検知される誤差信号ε(n)が低減される。
【0056】以下、適応信号発生アルゴリズム11、適
応係数ベクトル更新アルゴリズム12および伝達特性推
定アルゴリズム13を中心として、本実施例の周期性信
号の適応制御方法についてより詳しく説明する。
【0057】適応信号発生アルゴリズム11は、更新周
期Tの離散時刻nにおいて、周期性信号f(n)のうち
抑制されるべき一つの特定周波数成分がもつ角振動数ω
に基づき、次の数15に従って直交化表現された正弦関
数である適応信号y(n)を発生させる。
【0058】
【数15】 y(n) = a(n)sin{ωTn+φ
(n)} 一方、前記適応係数ベクトル更新アルゴリズム12は、
次の数16に従って下記の適応係数ベクトルW(n)を
更新するアルゴリズムである。
【0059】
【数16】
【0060】ここで、適応係数ベクトルW(n)は、次
の数17に定義するように、適応信号y(n)の特定周
波数成分の振幅a(n)および位相φ(n)を要素とす
る二要素のベクトルである。
【0061】
【数17】
【0062】すなわち、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12は、適応係数ベクトルW(n)を、伝達特性2
3の一対の推定直交化係数P^(n),Q^(n)と誤
差信号ε(n)とに基づいて、離散時刻nの経過毎に更
新するアルゴリズムである。適応係数ベクトル更新アル
ゴリズム12による適応係数ベクトルW(n)の更新に
より、周期性信号f(n)の特定周波数成分の振幅、位
相または角振動数ωの変動に対応して、適応係数ベクト
ルW(n)の各要素は適応的に調整される。そして、適
応係数ベクトル更新アルゴリズム12により更新された
適応係数ベクトルW(n)の各要素a(n),φ(n)
をもって、適応信号発生アルゴリズム11で発生する適
応信号y(n)の特定周波数成分の振幅a(n)および
位相φ(n)が更新される。
【0063】さらに、伝達特性推定アルゴリズム13
は、伝達特性23の直交化推定値である推定直交化係数
P^(n),Q^(n)を適応的に調整して、周期性信
号f(n)の特定周波数成分の角振動数ωに対応する伝
達特性23を推定する。すなわち、伝達特性23の推定
直交化係数P^(n),Q^(n)を、振幅a(n)お
よび位相φ(n)やその一周期遅れの信号a(n−
i),φ(n−i)や周期偏差E(n)等に基づいて、
離散時刻nの経過毎に適応的に更新する。
【0064】ここで、周期偏差E(n)は、誤差信号ε
(n)の予測値と実際に計測された誤差信号ε(n)と
の差に関して、角振動数ωの特定周波数成分の一周期分
に当たる差分を取り、周期性信号f(n)の特定周波数
成分の影響を除去した偏差である。また、タップ数(更
新周期数)iは、Tiが角振動数ωの特定周波数成分の
一周期分に相当する時間になる整数値(自然数)である
ものとすると、誤差信号ε(n)の一周期分の差分は、
{ε(n)−ε(n−i)}である。
【0065】このような伝達特性推定アルゴリズム13
は、次の数18および数19の組み合わせで表記され
る。
【0066】
【数18】P^(n+1) = P^(n)+μP
(n)[ a(n)sin{ωTn+φ(n)}−a(n
−i)sin{ωT(n−i)+φ(n−i)}]
【0067】
【数19】Q^(n+1) = Q^(n)+μQ
(n)[ a(n)cos{ωTn+φ(n)}−a(n
−i)cos{ωT(n−i)+φ(n−i)}] ただし、これらの数18および数19において、 μP,μQ:ステップサイズパラメータ(0<μP,0<
μQ) E(n):周期偏差(次の数20に定義)
【0068】
【数20】E(n)≡{ε(n)−ε(n−i)}−P
^(n)[a(n)sin{ωTn+φ(n)}−a(n−
i)sin{ωT(n−i)+φ(n−i)}]−Q^
(n)[a(n)cos{ωTn+φ(n)}−a(n−
i)cos{ωT(n−i)+φ(n−i)}] その結果、伝達特性推定アルゴリズム13によって、抑
制すべき特定周波数成分の角振動数ωに対応する伝達特
性23のゲインおよび位相に相当する推定直交化係数P
^(n),Q^(n)が推定される。そして、推定され
た伝達特性23の推定直交化係数P^(n),Q^
(n)は、前述の適応係数ベクトル更新アルゴリズム1
2の演算に提供されるに至る。
【0069】なお、伝達特性推定アルゴリズム13で
は、誤差信号の一周期分の差分{ε(n)−ε(n−
i)}が使用されており、また、振幅a(n)および位
相φ(n)の遅延信号a(n−i),φ(n−i)が使
用されている。このことを明瞭にするために、図1で
は、伝達特性推定アルゴリズム13のブロックの外に一
周期分の遅延ブロック14,15を描いたが、これらの
遅延ブロック14,15は、伝達特性推定アルゴリズム
13に含めて図示しても構わない。
【0070】(実施例1の導出)以上の本実施例の周期
性信号の適応制御方法は、以下のようにして導き出すこ
とができる。
【0071】先ず、周期性信号f(n)のうち抑制すべ
き特定周波数成分の角振動数ωが、工学的に正確に計測
されるものする。ここで、周期性信号f(n)の特定周
波数成分の変動に従って、角振動数ωも時間変化しうる
ものとする。
【0072】そして、適応信号発生アルゴリズム11
は、直交化表現された次の数21に従って、適応信号y
(n)としての正弦波信号を発生させるものとする。
【0073】
【数21】 y(n) = a(n)sin{ωTn+φ
(n)} すると、伝達特性23を介して観測点24に加えられる
相殺信号z(n)は、適応信号y(n)が伝達特性G
[A(ω),Φ(ω)]を直交化表現したものによる直
交化係数P,Qの影響を受けたものであるから、次の数
22で表される。ここで、直交化表現された伝達特性G
[P(ω),Q(ω)]は、jを虚数単位として複素表
現すれば、G[P(ω),Q(ω)]≡P(ω)+jQ
(ω)と書き表される。
【0074】
【数22】 z(n) = a(n)[ Psin{ωT
n+φ(n)}+Qcos{ωTn+φ(n)}] それゆえ、誤差信号ε(n)は、観測点24において周
期性信号f(n)と相殺信号z(n)とが合成されたも
のであるから、次の数23によって書き表される。
【0075】
【数23】ε(n)= f(n)+z(n)= f
(n)+a(n)[ Psin{ωTn+φ(n)}+Qc
os{ωTn+φ(n)}] 次に、適応係数ベクトルW(n)を適応的に更新する適
応係数ベクトル更新アルゴリズム12は、勾配法に基づ
いて次の数24で書き表される。
【0076】
【数24】 W(n+1) = W(n)−μ∇(n) ここで、適応係数ベクトルW(n)は、次の数25に示
すように、適応信号y(n)の振幅a(n)および位相
φ(n)を要素とする二要素ベクトルである。
【0077】
【数25】
【0078】なお、前記数24において、μはステップ
サイズパラメータを表すが、単なるスカラーではなく、
傾斜ベクトル∇(n)≡∂J(n)/∂W(n)の各要
素にかけられる調整係数μa,μφを要素とする対角行
列を表すものとする。なお、適応係数ベクトル更新アル
ゴリズム12の更新式は、振幅a(n)および位相φ
(n)に関して形式上は互いに同格であるが、振幅a
(n)と位相φ(n)とは性格を異にするから、通常、
ステップサイズパラメータはμa≠μφである。経験的
には、μa≪μφとすることが望ましい。
【0079】ここで、評価関数J(n)を、次の数26
に示すように、誤差信号ε(n)の二乗で定義する。
【0080】
【数26】 J(n) ≡ ε2(n) すると、最小二乗法による傾斜ベクトル∇(n)=∂J
(n)/∂W(n)は、次の数27のように表される。
【0081】
【数27】 ∇(n) = ∂J(n)/∂W(n) = ∂ε2(n)/∂W(n) = 2ε(n)・∂ε(n)/∂W(n) この数27に前記数23および前記数25を代入する
と、この数27は次の数28のように展開される。
【0082】
【数28】
【0083】ところで、現実においては、伝達特性23
のゲインAおよび位相Φに相当する直交化係数P,Q
は、真値であるから通常は直接知ることができない。そ
こで、伝達特性23の推定直交化係数P^(n),Q^
(n)を推定し、この推定直交化係数P^(n),Q^
(n)をもって前記数28中の伝達特性23の直交化係
数P,Qに代えることにより、前述の適応係数ベクトル
更新アルゴリズム12の基本形が得られる。すると、適
応係数ベクトル更新アルゴリズム12は、次の数29の
ように書き表される。
【0084】
【数29】
【0085】ここで、振幅a(n)をステップサイズパ
ラメータに丸め込んでしまっても、適応係数ベクトル更
新アルゴリズム12は大過なく機能するということが、
発明者の経験からわかっている。そこで、この数29中
の第二要素に含まれている振幅a(n)をステップサイ
ズパラメータμφに丸め込んでしまえば、適応係数ベク
トル更新アルゴリズム12は、次の数30のように書き
改められる。
【0086】
【数30】
【0087】ここでさらに、伝達特性23の推定ゲイン
の二乗に相当する値に発散防止定数γを足したものでこ
の数25の右辺第二項を割って正規化すれば、適応係数
ベクトル更新アルゴリズム12は、次の数31で書き表
される。
【0088】
【数31】
【0089】この際、適応係数ベクトル更新アルゴリズ
ム12を作用させるには、伝達特性23の推定直交化係
数P^(n),Q^(n)を求める目的で、伝達特性推
定アルゴリズム13を導入することが必要になる。
【0090】そこで最後に、伝達特性推定アルゴリズム
13は、次のようにして導き出すことができる。
【0091】先ず、推定偏差δ(n)を次の数27のよ
うに定義する。
【0092】
【数32】 δ(n) ≡ ε(n)−{f(n)+z^(n)} ={ε(n)−f(n)}−z^(n) = z(n)−z^(n) ここで、推定相殺信号z^(n)は、伝達特性23の真
値を知ることができないので、伝達特性23の直交化係
数P,Qの代わりに推定直交化係数P^(n),Q^
(n)を用いて、相殺信号z(n)を推定したものであ
る。すなわち、推定相殺信号z^(n)は次の数33に
よって定義される。
【0093】
【数33】 z^(n)≡a(n)[ P^(n)sin
{ωTn+φ(n)}+Q^(n)cos{ωTn+φ
(n)}] 次に、周期性信号f(n)のうち観測点24への影響を
消去すべき特定周波数成分の一周期に相当するタップ数
iを定め、推定偏差δ(n)の一周期分の差分である周
期偏差E(n)を次の数24のように定義する。
【0094】
【数34】 E(n)≡δ(n)−δ(n−i)= ε
(n) −{f(n) +z^(n) }−[ε
(n−i)−{f(n−i)+z^(n−i)}] ここでさらに、周期性信号f(n)は一周期違いで同一
の値を取るものと仮定すると、この数34においてf
(n)−f(n−i)=0と置ける。この仮定は、周期
性信号f(n)が定常状態にあるときには完全に正し
く、周期性信号f(n)が遷移状態にあるときには近似
的に正しい。ただし、周期性信号f(n)がステップ状
に変動する瞬間には、この仮定は崩れるが、変動後に定
常状態または遷移状態に入るならば、この仮定は再び完
全にまたは近似的に正しくなる。それゆえ、周期性信号
f(n)が急激に変動する瞬間には、伝達特性推定アル
ゴリズム13の推定値は乱れるが、周期性信号f(n)
の急変が収まり次第、伝達特性推定アルゴリズム13の
推定値は適正な値の付近で安定する。このことは、発明
者が数値シミュレーションで確認し、本実施例の周期性
信号の適応制御方法が正常に機能することを確認してい
る。
【0095】また、伝達特性23のゲインAおよび位相
Φが定常状態ないし準定常状態にある場合は、P^
(n)=P^(n−i),Q^(n)=Q^(n−i)
と置けるものと仮定する。実際のシステムに於いて、事
故等の特別な場合を除きほとんどの場合には、伝達特性
23が急変することはまずないと考えて良いので、この
仮定は概ね妥当である。また、発明者は数値シミュレー
ション等の手段により、実験的にこの仮定が成立し、こ
の仮定に基づいて導かれた伝達特性推定アルゴリズム1
3が適正に作用することを発見した。
【0096】そこで、これらの仮定を受け入れることに
すると、前記数34は次の数35のように展開される。
【0097】
【数35】 E(n) = ε(n) −z^(n) −{ε(n−i)−z^(n−i)} = {ε(n)−ε(n−i)} −{z^(n)−z^(n−i)} = {ε(n)−ε(n−i)} −P^(n)[ a(n)sin{ωTn+φ(n)} −a(n−i)sin{ωTn+φ(n−i)}] −Q^(n)[ a(n)cos{ωTn+φ(n)} −a(n−i)cos{ωTn+φ(n−i)}] 伝達特性23の推定直交化係数P^(n),Q^(n)
が適正に推定されていれば、適応係数ベクトル更新アル
ゴリズム12によって、振幅a(n)および位相φ
(n)もそれぞれ適正な値に収束してくるはずである。
すると、定常状態ではa(n)=a(n−i),φ
(n)=φ(n−i)となるから、周期偏差E(n)は
ゼロに近づくはずである。そこで発明者は、周期偏差E
(n)の二乗を最小にするように最小二乗法に基づく勾
配法を導入し、推定直交化係数P^(n),Q^(n)
の推定更新式を、それぞれ次の数36および数37のよ
うに導き出した。
【0098】
【数36】 P^(n+1) =P^(n)−μP'・∂E2(n)/∂P^(n) =P^(n)−μPE(n)・∂E(n)/∂P^(n) =P^(n)+μPE(n)[ a(n)sin{ωTn+φ(n)} −a(n−i)sin{ωTn+φ(n−i)}]
【0099】
【数37】 Q^(n+1) =Q^(n)−μQ'・∂E2(n)/∂Φ^(n) =Q^(n)−μQE(n)・∂E(n)/∂Φ^(n) =Q^(n)+μQE(n)[ a(n)cos{ωTn+φ(n)} −a(n−i)cos{ωTn+φ(n−i)}] ただし、これら数36および数37において、μPおよ
びμQは、ステップサイズパラメータ(0<μP,0<μ
Q)であり、推定直交化係数P^(n),Q^(n)が
互いに同格であるので、通常はμP=μQと置くことが望
ましい。
【0100】以上のように、これら数36および数37
の組み合わせをもって、前述の数18および数19の組
み合わせからなる伝達特性推定アルゴリズム13が導き
出される。
【0101】なお、これら数36および数37を正規化
することもできる。
【0102】たとえば、正規化の第一法として、右辺第
二項をa2(n)+γまたはa2(n−i)+γで割ると
いう手段がある。ここで、γはゼロ以上の発散防止定数
である(前述の発散防止定数γとは関係なく設定でき
る)。こうすれば、制御信号y(n)の振幅a(n)や
誤差信号ε(n)の振幅がゼロに近い場合にも、速やか
な収束特性が得られる。そればかりではなく、γが正の
実数であれば、前記数36または前記数37の右辺第二
項がゼロになった場合にも、これらの数式の発散を防止
することができる。
【0103】また、正規化の第二法として、これら数3
6および数37の右辺第二項を、√{P^2(n)+Q
2(n)}+γ’または√{P^2(n)+Q^
2(n)+γ’}で割るという手段もある。このように
すれば、伝達特性のゲインがほとんどゼロになった場合
にも、発散が防止されていながら、速やかな収束特性が
得られるという効果がある。
【0104】あるいは、これらの第一法と第二法とを組
み合わせて適用することもできる。このようにすれば、
第一法の効果と第二法の効果とがあわせて得られる。
【0105】(実施例1の作用効果)本実施例の周期性
信号の適応制御方法は、以上のように構成されているの
で、以下のような作用効果を発揮する。
【0106】前記数11の適応信号発生アルゴリズム1
1に基づいて、適応信号y(n)が生成され、伝達特性
23を介して観測点24に加えられる。観測点24で
は、角振動数ωの抑制すべき特定周波数成分を含む周期
性信号f(n)に対し、角振動数ωの特定周波数成分か
らなる正弦波信号である適応信号y(n)が伝達特性2
3を介して伝達された相殺信号z(n)が合成される。
その結果、観測点24では誤差信号ε(n)=f(n)
+z(n)が生成され、適応制御システムによって検知
される。
【0107】すると先ず、伝達特性推定アルゴリズム1
3によって、抑制すべき特定周波数成分の角振動数ωに
対応する伝達特性23の両直交化係数P,Qが推定され
る。この際、誤差信号の差分{ε(n)−ε(n−
i)}を含む周期偏差E(n)が導入され、伝達位相特
性同定アルゴリズム13の演算に使用される。そして、
抑制すべき特定周波数成分の角振動数ωに対応して推定
された伝達特性23の推定直交化係数P^(n),Q^
(n)は、適応係数ベクトル更新アルゴリズム12に提
供される。
【0108】次に、伝達特性23の推定直交化係数P^
(n),Q^(n)は、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12の演算に使用され、同アルゴリズム12によっ
て次の離散時刻における適応信号y(n)の振幅a
(n)および位相φ(n)が適応的に調整される。
【0109】最後に、適応係数ベクトル更新アルゴリズ
ム12から提供された振幅a(n)および位相φ(n)
に基づいて、適応信号発生アルゴリズム11が適応信号
y(n)を生成する。その結果、適応信号y(n)は、
伝達特性23を介して伝達されて相殺信号z(n)とな
り、観測点24に加えられる。そして、観測点24に加
えられた相殺信号z(n)は、同じく観測点24に加わ
る周期性信号f(n)のうち抑制すべき特定周波数成分
を相殺して、観測点24で検知される誤差信号ε(n)
が抑制されるに至る。
【0110】この際、伝達特性23が直交化表現されて
いるので、推定直交化係数P^(n),Q^(n)が伝
達位相特性同定アルゴリズム13により同時に調整され
る。すると、変数としての性質が互いに同格な推定直交
化係数P^(n),Q^(n)が並行して調整されるの
で、両者の収束時間はほぼ同等になり、適応の過程にお
いて一方が他方の足を引っ張ることがなくなる。
【0111】それゆえ、適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12は、伝達位相特性同定アルゴリズム13によっ
て速やかに収束した推定直交化係数P^(n),Q^
(n)を利用して、速やかに適応信号y(n)の振幅a
(n)および位相φ(n)を収束させることができる。
その結果、適応係数ベクトル更新アルゴリズム12と、
直交化された伝達位相特性同定アルゴリズム13との組
み合わせにより、誤差信号ε(n)の収束時間は短縮さ
れ、適応速度が向上するという効果がある。
【0112】したがって、本実施例の周期性信号の適応
制御方法によれば、適応信号y(n)から観測点23に
至るまでの伝達特性の変動にも柔軟に対応することがで
きながら、適応速度が向上するという効果がある。
【0113】また、適応係数ベクトル更新アルゴリズム
12では、伝達特性23のゲインに比例する傾向がある
誤差信号ε(n)を、ゲイン推定値A^(n)の二乗に
相当する値P^2(n)+Q^2(n)で正規化してい
る。それゆえ、ある角振動数ωで伝達特性23のゲイン
が低下した場合にも、適応係数ベクトル更新アルゴリズ
ム12の適応速度はあまり低下することがない。それば
かりではなく、推定直交化係数P^(n),Q^(n)
の二乗和P^2(n)+Q^2(n)に正の発散防止定数
γを足して正規化するものとすれば、P^2(n)+Q
2(n)がゼロにまで低下することがあっても、適応
係数ベクトル更新アルゴリズム12が発散することは防
止されている。したがって、本実施例の適応係数ベクト
ル更新アルゴリズム12によれば、伝達特性23のゲイ
ンが低下しても適応速度があまり衰えないうえに、P^
2(n)+Q^2(n)がゼロになっても発散が防止され
るという効果もある。
【0114】(実施例1の数値シミュレーション)本実
施例の周期性信号の適応制御方法の効果を実証する目的
で、発明者は数値シミュレーションによって本実施例の
応答を検証してみた。この数値シミュレーションでの条
件は以下の通りである。
【0115】先ず、周期性信号f(n)は、図2に示す
ように、抑制すべき特定周波数成分(正弦波)だけから
なるものとし、その角振動数ωは40π[rad/s]
(周波数は20Hz)であった。そして、周期性信号f
(n)の振幅は0.25√2≒0.354であり、その
位相は45°であった。すなわち周期性信号f(n)
は、次の数38に従って観測点24に加えられた。
【0116】
【数38】 f(n)=0.25{sin(ωTn)+cos(ωTn)} =0.25sin(ωTn)+0.25cos(ωTn) =0.25√2sin(ωTn+π/4) ここで、影響を抑制すべき特性周波数成分の角振動数は
ω=20×2π[rad/s]であり、Tは後述の適応制御
システムのサンプリング周期、nは離散化された時刻を
示す整数である。
【0117】これに対し、適応係数ベクトル更新アルゴ
リズム12(数12参照)での振幅a(n)および位相
φ(n)の初期値は、a(0)=0,φ(0)=0と設
定されていた。
【0118】次に、伝達特性23は、周波数に関わりな
く直交化係数P=Q=0.3に設定されていた。これに
対して伝達特性推定アルゴリズム13(数18および数
19参照)での両推定直交化係数の初期値は、P^
(0)=Q^(0)=−0.3に設定されていた。すな
わち、伝達位相特性同定アルゴリズム13において、推
定直交化係数P^(n),Q^(n)の初期値では、ゲ
インは真値と等価に設定されているが、位相は180°
の誤差を持つように設定されていた。
【0119】なお、適応制御システムのサンプリング周
期(更新周期)Tは1ミリ秒に設定されていた。このサ
ンプリング周期は、サンプリング周波数に換算すると
1,000Hzである。
【0120】また、適応係数ベクトル更新アルゴリズム
12のステップサイズパラメータは、μa=0.04,
μφ=0.2に設定されており、発散防止定数はγ=
0.01に設定されていた。一方、伝達特性推定アルゴ
リズム13のステップサイズパラメータは、μP=μQ
0.03に設定されていた。
【0121】その結果、誤差信号ε(n)の時間応答
は、図3に示すように、約0.3秒でおおむね収束して
いる。この際、収束するまでの誤差信号ε(n)の乱れ
は数往復であり、外乱としての周期性信号f(n)の振
幅を越えることが二度だけあるが、比較的速やかにかつ
あまり乱れることなく、誤差信号ε(n)は素直に収束
している。
【0122】同様に、伝達特性推定アルゴリズム13の
推定直交化係数P^(n),Q^(n)も、図4(a)
〜(b)に示すように、0.1秒程度で所定の値に収束
して完全に安定している。そして、両推定直交化係数P
^(n),Q^(n)ともに、収束に当たってはほとん
ど乱れることがなく、素直に所定値に収束している。な
お、両推定直交化係数P^(n),Q^(n)の収束値
は、真値の0.3とは若干異なる0.2強であるが、P
^(n)≒Q^(n)であるから伝達特性23の位相の
推定はおおむね正確である。一方、前述のように伝達特
性23のゲインの推定はそれほど正確とは言えないが、
ゲイン推定値の不足分は適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12が振幅a(n)を大きくして、ゲイン推定値の
不足分を補っている。
【0123】すなわち、伝達位相特性同定アルゴリズム
13に求められるのは位相推定の正確さであり、ゲイン
推定にはそれほどの精度を要さない。ただし、伝達位相
特性同定アルゴリズム13を削除し、適応信号発生アル
ゴリズム11および適応係数ベクトル更新アルゴリズム
12だけで適応制御システムを作動させると、誤差信号
ε(n)を収束させる作用は全く得られない。
【0124】一方、比較例として、前述の従来技術に基
づいて同様の条件で数値シミュレーションを行い、その
結果を時間応答グラフにして図5および図6に示す。こ
の従来技術では、前述のように、適応信号発生アルゴリ
ズム11も適応係数ベクトル更新アルゴリズムも直交化
されていない。各パラメータおよび初期値の設定は、前
述の本実施例とほぼ同様である。ただし、伝達特性の推
定値のうち、ゲイン推定値A^(n)の初期値は、A^
(0)=√(0.32+0.32)≒0.424で真値で
あり、位相推定値Φ^(n)の初期値は、Φ^(0)=
−3π/4≒−0.236である。すなわち、この比較
例でも前述の実施例1と同様に、伝達特性23の推定値
の初期ゲインは真値であるが、初期位相差は180°に
設定されている。
【0125】その結果、誤差信号ε(n)の時間応答
は、図5に示すように、幾度も大きく乱れており、完全
に収束するまでに前述の本実施例よりも長く0.45秒
程度かかっている。この収束時間は、前述の実施例1に
おける収束時間の五割増しである。また、伝達特性推定
アルゴリズムのゲイン推定値A^(n)および位相推定
値Φ^(n)も、図6(a)〜(b)に示すように、
0.3秒強で所定の値に収束するまでにオーバーシュー
トなどの乱れが大きく、素直には収束していない。この
ことから、直交化されていない伝達特性推定アルゴリズ
ムの収束の遅れが、適応係数a(n),φ(n)の収束
の遅れを招き、誤差信号ε(n)の収束を遅らせている
ことは明らかである。すなわち、このような従来技術で
は、本実施例の周期性信号の適応制御方法ほどに速やか
で素直な誤差信号ε(n)の収束特性は得られていな
い。
【0126】したがって、本実施例の周期性信号の適応
制御方法によれば、20Hzの特定周波数成分の影響を
約0.3秒という短時間のうちに相殺して誤差信号ε
(n)を収束させることができる。すなわち、本実施例
の周期性信号の適応制御方法は収束安定性が良好であ
り、高い適応速度を発揮することができるという効果が
ある。その結果、本実施例では収束安定性が向上してお
り、誤差信号ε(n)は、従来技術よりもより短時間の
うちにあまり乱れることもなく収束するという効果が得
られる。
【0127】[実施例2] (多入力多出力系の導出)本項では、前述の実施例1の
周期性信号の適応制御方法を、K成分・L入力・M出力
に拡張する。すなわち、本項の対象とする場合は、抑制
すべき特定周波数成分の角振動数ωk (1≦k≦K)の
個数Kと、誤差信号εl(n)(1≦l≦L)の個数L
と、前記適応信号ym(n)(1≦m≦M)の個数Mと
のうち、少なくとも一つは複数である場合である。この
ような場合に対応でき、すなわち、多成分多入力多出力
の複雑な系に対しても適用することができ、収束時間が
より短い周期性信号の適応制御方法を提供することを、
本項の課題とする。
【0128】したがって、本手段を多成分多入力多出力
の複雑な系に対して適用した場合、適応信号ym (n)
から誤差信号εl (n)に至る伝達特性23’(図7参
照)の変動にも柔軟に対応することができながら、適応
速度がより向上するという効果がある。
【0129】K成分・L入力・M出力に対応した周期性
信号の適応制御方法の各アルゴリズムの数式は、以下の
ようにして導出することができる。
【0130】先ず、適応信号発生アルゴリズム11’
(図7参照)を次の数39のように定義する。ここで、
本適応制御システムはM出力であるから、m=1,・
・,M(1≦M)である。
【0131】
【数39】
【0132】すると、適応係数ベクトルWm (n)は、
各適応信号ym (n)の各角振動数ωk に対応する振幅
km(n)および位相φkm(n)を要素としてもち、次
の数40に示すように定義される。ここで、本適応制御
システムが抑制すべき特定周波数成分はK成分(ω1
・・,ωK)であるから、k=1,・・,K(1≦K)
である。
【0133】
【数40】
【0134】また、観測点24’(図7参照)で周期性
信号f(n)に加えられて誤差信号εl (n)を生じる
相殺信号zl(n)は、前記適応信号ym(n)が、直交
化表現された伝達特性Gklm [Pklm ,Qklm ]を介し
て伝達された信号である。それゆえ、相殺信号z
l (n)は、次の数41に示すように表記される。ここ
で、本適応制御システムはL入力であるから、l=1,
・・,Lである。
【0135】
【数41】
【0136】次に、適応係数ベクトル更新アルゴリズム
を導き出すために、評価関数J(n)を次の数42に示
すように定める。
【0137】
【数42】
【0138】そして勾配法によって適応係数ベクトル更
新アルゴリズムを導出すると、次の数43に示すように
なる。この際、伝達特性Gklm [Pklm ,Qklm ]の真
値は不可知であるので、伝達特性推定アルゴリズムによ
って推定された推定直交化係数P^klm(n),Q^klm
(n)をもって代替する。ここで、本適応制御システム
が抑制すべき特定周波数成分はK成分(ω1,・・,
ωK)であるから、k=1,・・,Kである。
【0139】
【数43】
【0140】ここでさらに、この数43の右辺第二項を
ゲイン推定値A^klm(n)の二乗に相当するP^klm 2
(n)+Q^klm 2(n)に発散防止定数γklm を加えた
もので割って正規化することができる。こうすることに
より、次の数44に示す適応係数ベクトル更新アルゴリ
ズム12’(図7参照)を導き出すことができる。
【0141】
【数44】
【0142】この数44の適応係数ベクトル更新アルゴ
リズムによれば、推定直交化係数P^klm(n),Q^
klm(n)がゼロまたはゼロに近い場合にも発散するこ
となしに、収束性を向上させることができる。
【0143】最後に、伝達特性推定アルゴリズムは、前
述の実施例1の場合と同様に、以下のようにして導き出
される。
【0144】始めに、推定偏差δl(n)および周期偏
差El(n)について定義する。ここで、本適応制御シ
ステムはL入力系であるから、l=1,・・,L(1≦
L)である。
【0145】推定偏差δl(n)は、次の数45に従っ
て定義される。
【0146】
【数45】 δl(n) ≡ εl(n)−{fl(n)
+z^l(n)} また、周期偏差El(n)は次の数42によって定義さ
れる。
【0147】
【数46】 El(n) ≡ δl(n)−δl(n−
i) ここで、この数46に前述の実施例1と同様の仮定をた
てて周期性信号fl(n)の影響を除くなどの簡略化を
施すことにより、周期偏差El(n)は次の数47に示
すように整理される。
【0148】
【数47】
【0149】周期偏差E(n)の二乗を評価関数として
最小二乗法に基づく勾配法を取り、前述の実施例1と同
様にして整理すれば、伝達特性推定アルゴリズム13’
(図7参照)は、次の数48および数49の組み合わせ
として定義される。
【0150】
【数48】 P^klm(n+1)= P^klm(n)+μ
Pklml(n)[ akm(n)sin{ωkTn+φ
(n)}−akm(n−i)sin{ωkTn+φ(n−
i)}]
【0151】
【数49】 Q^klm(n+1)= Q^klm(n)+μ
Qklml(n)[ akm(n)cos{ωkTn+φ
(n)}−akm(n−i)cos{ωkTn+φ(n−
i)}] 以上のようにして、K成分・L入力・M出力の複雑な系
に対しても、本実施例の周期性信号の適応制御方法を適
用できるようになり、収束安定性および適応速度を向上
させることができる。
【0152】なお、伝達位相特性同定アルゴリズム1
3’を構成するこれら数48および数49を正規化する
こともできる。
【0153】たとえば、正規化の第一法として、右辺第
二項を{akm 2(n)+γkm}または{akm 2(n−i)
+γkm}で割るという手段がある。ここで、γはゼロ以
上の発散防止定数である(前述の発散防止定数γとは関
係なく設定できる)。こうすれば、制御信号ykm(n)
の振幅akm(n)や誤差信号εl(n)の振幅がゼロに
近い場合にも、速やかな収束特性が得られる。そればか
りではなく、γが正の実数であれば、前記数48または
前記数49の右辺第二項がゼロになった場合にも、これ
らの数式の発散を防止することができる。
【0154】また、正規化の第二法として、これら数4
8および数49の右辺第二項を、[√{Pklm2(n)
+Qklm2(n)}+γklm’]または√{Pklm
2(n)+Qklm2(n)+γklm'}]で割るという手
段もある。このようにすれば、伝達特性のゲインがほと
んどゼロになった場合にも、発散が防止されていなが
ら、速やかな収束特性が得られるという効果がある。
【0155】あるいは、これらの第一法と第二法とを組
み合わせて適用することもできる。このようにすれば、
第一法の効果と第二法の効果とがあわせて得られる。
【0156】(実施例2の構成および効果)本発明の実
施例2としての周期性信号の適応制御方法は、図7に示
すように、1成分2入力2出力の適応制御システムにお
いて実施される。なお、この図7は、本実施例の適応制
御システムを概念的に図示したものであって、図の複雑
化を避けるためにある程度簡素化されている。たとえ
ば、誤差信号ε1(n),ε2(n)の一周期分の差分
と、各適応係数akm(n),φkm(n)の一周期分の差
分とが混然と扱われているが、これは各信号の大まかな
流れ方向を示すものとして御宥恕願いたい。
【0157】本実施例の周期性信号の適応制御方法によ
っても、実施例1と同様に、収束安定性および適応速度
が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の適応制御システムの構成を示すブ
ロック図
【図2】 実施例1での周期性信号の波形を示すグラフ
【図3】 実施例1での誤差信号の時間応答を示すグラ
【図4】 実施例1での伝達特性の推定直交化係数の収
束を示す組図 (a)推定直交化係数P^(n)の時間応答を示すグラ
フ (b)推定直交化係数Q^(n)の時間応答を示すグラ
【図5】 従来技術での誤差信号の時間応答を示すグラ
【図6】 従来技術での伝達特性推定値の収束を示す組
図 (a)ゲイン推定値A^(n)の時間応答を示すグラフ (b)位相推定値Φ^(n)の時間応答を示すグラフ
【図7】 実施例2の適応制御システムの構成を概念的
に示すブロック図
【符号の説明】
11,11’:適応信号発生アルゴリズム 12,12’:適応係数ベクトル更新アルゴリズム 13,13’:伝達特性推定アルゴリズム 14,15,14’,15’:一周期分の遅延ブロック 23,23’:伝達特性 24,24’:観測点 P,Q:角振動数ωに対応する伝達特性の直交化係数 P^(n),Q^(n):角振動数ωに対応する伝達特
性の推定直交化係数 a(n),φ(n):適応信号y(n)の振幅および位
相 y(n):適応信号 z(n):相殺信号 ε(n):誤差信号 f(n):周期性信号 T:サンプリング周期(タップ周期または更新周期) ω:角振動数 i:一周期分の遅延タップ数 1≦k≦K:角振動数ωkの数(抑制すべき特定周波数
成分の数) 1≦l≦L:誤差信号εl(n)の数(センサの数) 1≦m≦M:適応信号ym(n)の数(アクチュエータ
の数)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J048 AB07 EA07 5D061 FF02 5H004 GA02 GA14 GB12 HA12 HA20 HB08 HB09 HB15 JB30 KA32 KB21 KC08 KC12 KC53 LA11 MA11 9A001 FF01 GG01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】観測点に影響を及ぼす周期性信号f(n)
    に対し、該周期性信号f(n)に同期している特定周波
    数成分からなる適応信号y(n)を所定の伝達特性を介
    し逆位相で加えることによって、該周期性信号f(n)
    のうち該特定周波数成分が該観測点へ及ぼす影響を能動
    的に除去し、該観測点で検知される誤差信号ε(n)を
    低減する周期性信号の適応制御方法において、 更新周期Tの離散時刻nにあって、前記周期性信号f
    (n)のうち前記特定周波数成分の角振動数ωに基づ
    き、正弦関数である前記適応信号y(n)を、下記数1
    に従って発生させる適応信号発生アルゴリズムと、 該適応信号y(n)の該特定周波数成分の振幅a(n)
    および位相φ(n)を要素とする適応係数ベクトルW
    (n)を、前記誤差信号ε(n)と前記伝達特性の推定
    直交化係数P^(n),Q^(n)とに基づいて該離散
    時刻nの経過毎に更新し、該周期性信号f(n)が含む
    該特定周波数成分の振幅、位相または該角振動数ωの変
    動と前記伝達特性の変動とに適応して、該適応係数ベク
    トルW(n)の各該要素を調整する適応係数ベクトル更
    新アルゴリズムと、 該伝達特性の該推定直交化係数P^(n),Q^(n)
    を、該誤差信号ε(n)と該誤差信号ε(n)の予測値
    との差に関して該角振動数ωの該特定周波数成分の一周
    期分または複数周期分にあたる差分をとり該周期性信号
    f(n)の影響を除去した周期偏差E(n)に基づき、
    該離散時刻nの経過毎に更新することによって該伝達特
    性を適応的に推定する伝達特性推定アルゴリズムとを有
    し、 該適応係数ベクトル更新アルゴリズムにより更新される
    該適応係数ベクトルW(n)の両該要素a(n),φ
    (n)をもって、該適応信号発生アルゴリズムにより生
    成される該適応信号y(n)の該振幅a(n)および該
    位相φ(n)が更新されることを特徴とする、 周期性信号の適応制御方法。 【数1】 y(n) = a(n)sin{ωTn+φ
    (n)}
  2. 【請求項2】前記適応係数ベクトル更新アルゴリズム
    は、次の数2ないし数4のうちいずれかに従って、前記
    適応係数ベクトルW(n)を更新するアルゴリズムであ
    る、 請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。 【数2】 【数3】 【数4】
  3. 【請求項3】前記伝達特性推定アルゴリズムは、次の数
    5および数6の一対の更新式と両該更新式の右辺第二項
    を正規化した一対の更新式とのうち一方に従って、前記
    伝達特性を示す前記推定直交化係数P^(n),Q^
    (n)を更新するアルゴリズムである、 請求項1記載の周期性信号の適応制御方法。 【数5】P^(n+1) = P^(n)+μP
    (n)[ a(n)sin{ωTn+φ(n)}−a(n
    −i)sin{ωT(n−i)+φ(n−i)}] 【数6】Q^(n+1) = Q^(n)+μQ
    (n)[ a(n)cos{ωTn+φ(n)}−a(n
    −i)cos{ωT(n−i)+φ(n−i)}] ただし、該数5および該数6において、 μP,μQ:ステップサイズパラメータ(0<μP,0<
    μQ) i:一周期分または複数周期分に当たるタップ数 E(n):周期偏差(次の数7に定義) 【数7】E(n)≡{ε(n)−ε(n−i)}−P^
    (n)[a(n)sin{ωTn+φ(n)}−a(n−
    i)sin{ωT(n−i)+φ(n−i)}]−Q^
    (n)[a(n)cos{ωTn+φ(n)}−a(n−
    i)cos{ωT(n−i)+φ(n−i)}]
  4. 【請求項4】前記特定周波数成分の前記角振動数ω
    k (1≦k≦K)、前記誤差信号εl (n)(1≦l≦
    L)および前記適応信号ym (n)(1≦m≦M)のう
    ち少なくとも一つは複数である、 請求項1〜3のうちいずれかに記載の周期性信号の適応
    制御方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2012141190A1 (ja) * 2011-04-15 2012-10-18 株式会社明電舎 周期外乱抑制装置および周期外乱抑制方法
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