JP2000323150A - 燃料電池用のセパレータおよびその製造方法 - Google Patents

燃料電池用のセパレータおよびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 十分な導電性と強度を有する燃料電池用のセ
パレータを供給すると共にこのセパレータを簡易に低コ
ストで製造する。 【解決手段】 セパレータ30は、カーボン含有量の少
ない樹脂により形成された芯層部32と、カーボン含有
量の多い樹脂により芯層部32の外表面を覆うように形
成された外層部34とにより構成される。セパレータ3
0は、カーボン含有量の多い外層部34で高い導電性を
確保し、カーボン含有量の少ない芯層部32で物理的な
強度を確保する。セパレータ30は、まず、カーボン含
有量の少ない樹脂で射出成形し、その型を少し開いてカ
ーボン含有量の多い樹脂で射出成形する二層成形技術を
用いて製造する。二つの樹脂の境目は相溶して一体とな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池用のセパ
レータおよびその製造方法に関し、詳しくは、導電性材
料により形成された微小部材を含有する樹脂により形成
された燃料電池用のセパレータおよびその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の燃料電池用のセパレータ
としては、鋼体材からなる炭素板の表面に膨張黒鉛の層
を形成してなるものが提案されている(例えば、特開昭
62−272465号公報など)。このセパレータは、
黒鉛炭素板などの炭素板を成形すると共に膨張黒鉛シー
トを成形し、成形した炭素板を膨張黒鉛シートで狭持し
た状態で170℃の温度で10MPa程度の成形圧によ
り成形されている。このように表面に導電性に優れた膨
張黒鉛シートを圧着することにより十分な導電性を得る
ものとされており、鋼体材の炭素板を用いることにより
十分な強度を得るものとされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
炭素板の表面に膨張黒鉛シートを圧着してなるセパレー
タでは、製造工程が多いという問題があった。即ち炭素
板と膨張黒鉛シートを別々に成形する必要があり、さら
にこれらを圧着する必要もある。こうした多工程の製造
は、コストの増加という問題をも引き起こす。
【0004】本発明の燃料電池用のセパレータは、十分
な導電性を有すると共に十分な強度を有することを目的
の一つとする。本発明の燃料電池用のセパレータの製造
方法は、十分な導電性を有すると共に十分な強度を有す
るセパレータを簡易に製造することを目的の一つとす
る。また、本発明の燃料電池用のセパレータの製造方法
は、十分な導電性を有すると共に十分な強度を有するセ
パレータを安価に製造することを目的の一つとする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本
発明の燃料電池用のセパレータおよびその製造方法は、
上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手
段を採った。
【0006】本発明の燃料電池用のセパレータは、導電
性材料により形成された微小部材を含有する樹脂により
形成された燃料電池用のセパレータであって、前記微小
部材が内部に比して外表面に多く含有されるよう形成し
てなることを要旨とする。
【0007】こうした本発明の燃料電池用のセパレータ
では、導電性材料により形成された微小部材を多く含有
する樹脂で外表面を形成することにより十分な導電性を
確保することができ、微小部材を少なく含有する樹脂で
内部を形成することにより十分な強度を確保することが
できる。ここで、「微小部材」とは、ミリメートルオー
ダー以下の粒子や短繊維などを意味する。
【0008】こうした本発明の燃料電池用のセパレータ
において、前記内部は前記微小部材を0ないし10%含
有する樹脂により形成され、前記外表面は前記微小部材
を10%以上含有する樹脂により形成されてなるものと
することもできる。この態様の本発明の燃料電池用のセ
パレータにおいて、前記外表面は前記微小部材を20%
以上含有する樹脂により形成されてなるものとすること
もできる。
【0009】また、本発明の燃料電池用のセパレータに
おいて、前記微小部材はカーボン粒子であるものとする
こともできるし、前記微小部材はカーボン短繊維である
ものとすることもできる。また、前記微小部材は、金属
材料により形成されてなるものとすることもできる。
【0010】本発明の第1の燃料電池用のセパレータの
製造方法は、導電性材料により形成された微小部材を含
有する樹脂により形成された燃料電池用のセパレータの
製造方法であって、前記微小部材の含有量の異なる二種
類の樹脂のうち該微小部材の含有量の少ない樹脂を型に
射出成形する第1射出成形工程と、該射出成形された樹
脂が内部に存在する状態で前記型を所定量開き、該所定
量開いた型に前記二種類の樹脂のうち含有量の多い樹脂
を射出成形する第2射出成形工程とを備えることを要旨
とする。
【0011】この本発明の第1の燃料電池のセパレータ
の製造方法では、第1射出成形工程で射出成形された樹
脂が内部に存在する状態でその型を所定量開き、この所
定量開いた型に二種類の樹脂のうち含有量の多い樹脂を
射出成形することにより、内部は微小部材の含有量が少
ない樹脂により形成され、外表面は微小部材の含有量が
多い樹脂により形成されたセパレータ、即ち十分な導電
性と十分な強度とを有するセパレータを製造することが
できる。しかも第1射出成形工程の後に型を所定量開い
た状態で射出成形を行なうだけでよいから、簡易に前述
のセパレータを製造することができる。また、微小部材
を含有させた樹脂により形成するから、セパレータを安
価に製造することができる。なお、「微小部材」の意に
ついては本発明の燃料電池用のセパレータと同意であ
る。
【0012】本発明の第2の燃料電池用のセパレータの
製造方法は、導電性材料により形成された微小部材を含
有する樹脂により形成された燃料電池用のセパレータの
製造方法であって、前記微小部材の含有量の異なる二種
類の樹脂のうち該微小部材の含有量の多い樹脂を他方の
樹脂に比して流動性が高くなるよう該二種類の樹脂を調
製する樹脂調製工程と、前記流動性の高い樹脂を型に射
出成形する第1射出成形工程と、該射出成形された型に
前記他方の樹脂を射出成形する第2射出成形工程とを備
えることを要旨とする。
【0013】この本発明の第2の燃料電池用のセパレー
タの製造方法では、流動性の高い微小部材を多く含有す
る樹脂を射出成形することにより、この樹脂を型の表面
にへばり付かせ、この状態の型に流動性の低い微小部材
を少なく含有する樹脂を射出成形することにより型の中
心部を形成することができる。即ち微小部材を多く含有
する樹脂により外表面が成形され、微小部材を少なく含
有する樹脂により中心部が成形されたセパレータ、即ち
十分な導電性と十分な強度とを有するセパレータを製造
することができる。しかも、二種類の樹脂を調製し、型
に順番に射出成形するだけでよいから、簡易に前述のセ
パレータを製造することができる。また、微小部材を含
有させた樹脂により形成するから、セパレータを安価に
製造することができる。なお、「微小部材」の意につい
ては本発明の燃料電池用のセパレータと同意である。
【0014】こうした本発明の第1または第2の燃料電
池用のセパレータの製造方法において、前記微小部材は
カーボン粒子であるものとすることもできるし、前記微
小部材はカーボン短繊維であるものとすることもでき
る。また、前記微小部材は、金属材料により形成されて
なるものとすることもできる。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施
例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である
セパレータ30を備える燃料電池を構成する単電池21
の構成の概略を示す構成図である。燃料電池は、単電池
21を複数積層して構成される固体高分子型燃料電池で
ある。図示するように、単電池21は、フッ素系樹脂な
どの高分子材料により形成されたプロトン導電性の膜体
である電解質膜22と、白金または白金と他の金属から
なる合金の触媒が練り込められたカーボンクロスにより
形成され触媒が練り込められた面で電解質膜22を挟持
してサンドイッチ構造を構成するガス拡散電極としての
アノード23およびカソード24と、このサンドイッチ
構造を両側から挟みつつアノード23およびカソード2
4とで燃料ガスや酸化ガスの流路36,38を形成する
と共に隣接する単電池21との間の隔壁をなす2つのセ
パレータ30とにより構成されている。
【0016】実施例のセパレータ30は、カーボンを1
0wt%未満好ましくは数%程度の割合で含有する樹脂
により形成された芯層部32と、カーボンを10wt%
以上好ましくは20wt%以上の割合で含有する芯層部
32と同一の樹脂により形成された外層部34とから構
成されている。カーボンとしては、μmオーダー以下の
微粒子やmmオーダー以下の粒子,μmオーダーの短繊
維など種々のものを用いることができる。また、樹脂と
しては、ポリプロピレンやポリエチレン,ポリブチレ
ン,ポリアミド,ポリオキシメチレン,ポリスチレン,
ポリフェニレンサルファイト,ポリエチレンテレフタレ
ートなどの種々の樹脂を用いることができる。この芯層
部32と外層部34との接合部分は、図1では理解を容
易にするために模式的に明確に記載してあるが、樹脂の
融点以上の温度で接合されているから、その境目は明確
ではなく、相溶して混じり合っている。なお、実施例で
は、芯層部32と外層部34とを同一の樹脂を用いて形
成するものとしたが、相溶可能な樹脂であれば、異なる
樹脂を用いてもよい。
【0017】このように、実施例のセパレータ30で
は、カーボン含有量の多い樹脂で外層部34を形成する
ことにより、外層部34において良好な導電性を確保
し、カーボン含有量の少ない樹脂で芯層部32を形成す
ることにより、セパレータ30としての十分な強度を得
ている。
【0018】次に、こうした実施例のセパレータ30の
製造の様子について説明する。図2は、実施例のセパレ
ータ30の製造の様子の一例を示す製造工程図である。
工程図に示すように、実施例のセパレータ30の製造
は、まず芯層部32を形成するためのカーボン含有量の
少ないカーボンプア樹脂と外層部34を形成するための
カーボン含有量の多いカーボンリッチ樹脂を調製する工
程から始まる(工程S100)。カーボンの含有率やカ
ーボンの種類,樹脂の種類については前述した。
【0019】こうして調製した二種類の樹脂のうちカー
ボンプア樹脂でセパレータ30を形成するための型を用
いて芯層部32を射出成形する(工程S110)。射出
成形に用いる型は、製造の目的とするセパレータ30の
サイズより若干小さく形成されている。続いて、射出成
形されたカーボンプア樹脂を中央に保持した状態で型を
少し開いて或いは少しずらして目的とするセパレータ3
0のサイズに調製し(工程S120)、この型に対して
工程S100で調製したカーボンリッチ樹脂により外層
部34を射出成形する(工程S130)。カーボンリッ
チ樹脂は、カーボンプア樹脂により形成された芯層部3
2と型との隙間に対して射出成形されることになるか
ら、カーボンリッチ樹脂がカーボンプア樹脂により形成
された芯層部32の外表面に層を成して形成され、外層
部34となる。なお、カーボンリッチ樹脂の射出成形
は、樹脂の融点以上の温度で行なわれるから、芯層部3
2の外表面は溶けてカーボンリッチ樹脂と混じり合い、
一体となる。なお、こうした一つの型を用いて二回射出
成形する技術は、二層成形として知られている。
【0020】以上説明した実施例のセパレータ30によ
れば、カーボン含有量の多い樹脂でその外表面を形成す
ることにより高い導電性を確保することができる。ま
た、カーボン含有量の少ない樹脂でその芯層部32を形
成することにより十分な物理的な強度を確保することが
できる。
【0021】実施例のセパレータ30の製造方法によれ
ば、二層成形の技術を用いることにより、内部がカーボ
ン含有量が少なくその外表面はカーボン含有量が多い実
施例のセパレータ30を容易に製造することができる。
しかも、カーボンリッチ樹脂の射出成形が樹脂の融点以
上の温度で行なわれるから、芯層部32と外層部34と
を容易に一体のものとすることができる。したがって、
芯層部32と外層部34とを接着する工程を必要としな
い。このように二種類の樹脂により容易に実施例のセパ
レータ30を成形できるから、セパレータ30の製造コ
ストを低くすることができる。
【0022】次に、実施例のセパレータ30の製造方法
として、上述した方法と異なる方法(第2の製造方法)
について説明する。図3は、実施例のセパレータ30の
第2の製造の様子の一例を示す製造工程図である。セパ
レータ30の第2の製造方法では、まず芯層部32を形
成するためのカーボン含有量が少なく流動性の低いロー
フロー樹脂と外層部34を形成するためのカーボン含有
量が多い流動性の高いハイフロー樹脂を調製する工程を
行なう(工程S200)。流動性を低くするか高くする
かは、樹脂の分子量を調節することにより行なう。即
ち、ローフロー樹脂では分子量を高く調節し、ハイフロ
ー樹脂では分子量を低く調節するのである。なお、カー
ボンの含有率やカーボンの種類,樹脂の種類については
前述したもの同じである。
【0023】こうして調製した二種類の樹脂のうち、ハ
イフロー樹脂でセパレータ30を形成するための型を用
いて射出成形する(工程S210)。射出成形に用いる
型は、前述の製造方法とは異なり、製造の目的とするセ
パレータ30のサイズである。ハイフロー樹脂による射
出成形に引き続いて、ハイフロー樹脂がまだ固まらない
うちにローフロー樹脂により射出成形する(工程S22
0)。このようにローフロー樹脂を射出成形すると、型
の表面にはハイフロー樹脂がへばりついているが、中心
部はローフロー樹脂に置き換わる。勿論、ローフロー樹
脂の射出成形は、融点以上の温度で行なわれ、ハイフロ
ー樹脂が固まらないうちに行なわれるから、ローフロー
樹脂とハイフロー樹脂との接合部は相溶して一体のもの
となる。
【0024】以上説明した実施例のセパレータ30の第
2の製造方法でも、内部がカーボン含有量が少なくその
外表面はカーボン含有量が多い実施例のセパレータ30
を容易に製造することができる。しかも、ローフロー樹
脂の射出成形がハイフロー樹脂がまだ固まらないうちに
行なわれるから、芯層部32と外層部34とを容易に一
体のものとすることができる。したがって、芯層部32
と外層部34とを接着する工程を必要としない。このよ
うに二種類の樹脂により容易に実施例のセパレータ30
を成形できるから、セパレータ30の製造コストを低く
することができる。
【0025】実施例のセパレータ30やその製造方法で
は、樹脂にカーボンを含有させたが、導電性と強度とを
確保する目的であるから、カーボンに代えて、導電性を
有する材料であれば如何なる材料を用いるものとしても
よい。例えば、金属粉や金属ファイバーなどを用いるも
のとしてもよい。
【0026】実施例のセパレータ30では、固体高分子
型燃料電池に用いるセパレータとして説明したが、樹脂
の融点以下の温度で動作可能な燃料電池であれば如何な
る燃料電池に用いるものとしてもよい。
【0027】以上、本発明の実施の形態について実施例
を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限
定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲
内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるセパレータ30を備
える燃料電池を構成する単電池21の構成の概略を示す
構成図である。
【図2】 実施例のセパレータ30の第1の製造の様子
の一例を示す製造工程図である。
【図3】 実施例のセパレータ30の第2の製造の様子
の一例を示す製造工程図である。
【符号の説明】
21 単電池、22 電解質膜、23 アノード、24
カソード、30 セパレータ、32 芯層部、34
外層部、36,38 流路。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性材料により形成された微小部材を
    含有する樹脂により形成された燃料電池用のセパレータ
    であって、 前記微小部材が内部に比して外表面に多く含有されるよ
    う形成してなる燃料電池用のセパレータ。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の燃料電池用のセパレータ
    であって、 前記内部は前記微小部材を0ないし10%含有する樹脂
    により形成され、 前記外表面は前記微小部材を10%以上含有する樹脂に
    より形成されてなる燃料電池用のセパレータ。
  3. 【請求項3】 前記外表面は前記微小部材を20%以上
    含有する樹脂により形成されてなる請求項2記載の燃料
    電池用のセパレータ。
  4. 【請求項4】 前記微小部材は、カーボン粒子である請
    求項1ないし3いずれか記載の燃料電池用のセパレー
    タ。
  5. 【請求項5】 前記微小部材は、カーボン短繊維である
    請求項1ないし3いずれか記載の燃料電池用のセパレー
    タ。
  6. 【請求項6】 前記微小部材は、金属材料により形成さ
    れてなる請求項1ないし3いずれか記載の燃料電池用の
    セパレータ。
  7. 【請求項7】 導電性材料により形成された微小部材を
    含有する樹脂により形成された燃料電池用のセパレータ
    の製造方法であって、 前記微小部材の含有量の異なる二種類の樹脂のうち該微
    小部材の含有量の少ない樹脂を型に射出成形する第1射
    出成形工程と、 該射出成形された樹脂が内部に存在する状態で前記型を
    所定量開き、該所定量開いた型に前記二種類の樹脂のう
    ち含有量の多い樹脂を射出成形する第2射出成形工程と
    を備える燃料電池用のセパレータの製造方法。
  8. 【請求項8】 導電性材料により形成された微小部材を
    含有する樹脂により形成された燃料電池用のセパレータ
    の製造方法であって、 前記微小部材の含有量の異なる二種類の樹脂のうち該微
    小部材の含有量の多い樹脂を他方の樹脂に比して流動性
    が高くなるよう該二種類の樹脂を調製する樹脂調製工程
    と、 前記流動性の高い樹脂を型に射出成形する第1射出成形
    工程と、 該射出成形された型に前記他方の樹脂を射出成形する第
    2射出成形工程とを備える燃料電池用のセパレータの製
    造方法。
  9. 【請求項9】 前記微小部材は、カーボン粒子である請
    求項7または8記載の燃料電池用のセパレータの製造方
    法。
  10. 【請求項10】 前記微小部材は、カーボン短繊維であ
    る請求項7または8記載の燃料電池用のセパレータの製
    造方法。
  11. 【請求項11】 前記微小部材は、金属材料により形成
    されてなる請求項7または8記載の燃料電池用のセパレ
    ータの製造方法。
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