JP2000319430A - 親水性表面を有する成形物の製造方法 - Google Patents

親水性表面を有する成形物の製造方法

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JP2000319430A
JP2000319430A JP11127854A JP12785499A JP2000319430A JP 2000319430 A JP2000319430 A JP 2000319430A JP 11127854 A JP11127854 A JP 11127854A JP 12785499 A JP12785499 A JP 12785499A JP 2000319430 A JP2000319430 A JP 2000319430A
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meth
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Takanori Anazawa
孝典 穴澤
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Original Assignee
Kawamura Institute of Chemical Research
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い親水性を示す表面を有し、且つ表面の平
滑性と透明性に優れた成形物の製造方法を提供するこ
と。 【解決手段】 活性光線により重合可能な化合物(a)
と光重合開始剤とを必須成分として含む光重合性樹脂組
成物(A)を賦形し、得られた未硬化の賦形物を、気相
と接触させることなく、化合物(a)と共重合可能な親
水性化合物(b)を含有し光重合開始剤を含まない液状
の親水性層形成材料(B)に浸漬し、その状態でこれら
に活性光線を照射することによって、未硬化の賦形物を
硬化させると共に、未硬化の賦形物と親水性層形成材料
(B)との界面において、化合物(a)と化合物(b)
の一部とを共重合させる表面親水性成形物の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品工業、医療
(人工臓器等の医療用具や診断を含む)、医薬品工業、
廃水処理、塗装、印刷等の分野において用いられる、タ
ンパク質、コロイド、バクテリア、フミン質、油脂、大
気中の汚染物質等の吸着が少ない成形物や生体適合性の
成形物、また酵素、菌体等を変性させない固定化用担
体;商業、農業、交通、家庭用品、光学機器、塗料など
の分野において用いられる防曇性フィルム、防曇性塗膜
などの防曇性成形物;電子工業などの分野において用い
られる静電気防止などの用途に使用できる表面親水性成
形物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】上記の各分野で使用されている成形物に
求められる表面特性は、第1に、タンパク質、油脂、フ
ミン質等の物質の材料表面への吸着の抑制である。例え
ば、塗料分野においては、雨水中の油性物質が付着しな
い防汚性塗膜が求められ、センサーとして使用する場合
に、これらの物質の非特異的吸着が少ない表面が求めら
れている。第2の要求特性は防曇性であり、強い親水性
に加えて光学的に高い透明度と平滑性が求められる。第
3の要求特性は、人工臓器などの医療分野における生体
適合性であり、血栓、溶血、感作性、抗原抗体反応など
を抑制する表面が求められている。第4は帯電防止であ
り、特に電子工業分野において重要である。
【0003】このような要求を満足させるために、通
常、成形物の表面の親水化処理が行われている。表面の
親水化方法としては多くの方法が知られているが、例え
ば、特開平10−53658号報には、光重合を利用し
て成形物の表面に親水性重合体を共重合させる方法、即
ち、活性光線により重合可能なモノマー及び/又はオリ
ゴマー(a)と光重合開始剤とを必須成分として含む光
重合性樹脂組成物(A)を賦形し、得られた未硬化の賦
形物を、親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー
(b)からなり、光重合開始剤を含まない親水性層形成
材料(B)と接触させた状態で、これらに活性光線を照
射することによって、未硬化の賦形物を硬化させると共
に、未硬化の賦形物と親水性層形成材料(B)との界面
において、光重合性樹脂組成物(A)中のモノマー及び
/又はオリゴマー(a)と親水性層形成材料(B)中の
親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)の一
部とを共重合させる表面親水性成形物の製造方法であっ
て、モノマー及び/又はオリゴマー(a)は、重合開始
剤の存在下又は不存在下で使用する活性光線によって重
合可能であり、親水性モノマー及び/又は親水性オリゴ
マー(b)は、重合開始剤の存在下では、使用する活性
光線によって重合可能であるが、重合開始剤の不存在下
では、使用する活性光線によって重合しない、という条
件を満足するモノマー及び/又はオリゴマー(a)、親
水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)及び活
性光線を使用することを特徴とする表面親水性成形物の
製造方法が開示されている。
【0004】この方法は、親水基が共有結合で成形物の
表面に結合しているために耐久性に優れること、表面に
親水性基を高密度に導入できるため高い親水性を実現で
きること、成形物内部には親水基の導入を避けることが
できるため基材の耐水性が損なわれないこと、製造速度
が速く一工程で製造することができること、といった優
れた特徴を有する製造方法である。
【0005】そして、上記公報には、光重合性樹脂組成
物(A)の未硬化の賦形物と親水性層形成材料(B)と
の接触方法として、賦形物の親水性層形成材料(B)中
への浸漬、賦形物表面への親水性層形成材料(B)の流
延又はスプレー、賦形物と親水性層形成材料(B)の泡
との接触、光重合性樹脂組成物(A)と親水性層形成材
料(B)の共押し出し、気体(蒸気)状の親水性層形成
材料(B)との接触などの方法が挙げられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法によって親水性成形物、特にフィルム状の基材に塗
装した成形物を製造すると、表面の平滑性が低くなりが
ちであった。即ち、表面に筋状や波状の模様が生じがち
であり、商品価値を低下させるのみならず、光学的な用
途への利用が制約されていた。勿論、製造条件を最適化
することによって、このようなムラを軽減させることは
できたが、素材のモノマー及び/又はオリゴマー(a)
の選択の範囲が狭まったり、製造条件の自由度が狭まっ
ていた。本発明の課題は、表面の平滑性に優れた表面親
水性成形物を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、この模様は、塗
膜の厚さムラによるものであり、その原因が、未硬化又
は半硬化の塗膜が親水性層形成材料(B)と接触した瞬
間に、塗膜/気相/親水性層形成材料(B)の三者の共
通接触部において、親水性層形成材料(B)の液面が振
動することにあること、そして、上記の製造方法におい
て、未硬化の塗膜を気相と接触させることなく親水性層
形成材料(B)中に浸漬することによって、この模様の
発生を防止できることを見出し、本発明を完成するに至
った。
【0008】即ち、本発明は上記課題を解決するため
に、(1)活性光線により重合可能なモノマー及び/又
はオリゴマー(a)と光重合開始剤とを必須成分として
含有する光重合性樹脂組成物(A)を賦形して未硬化の
光重合性樹脂組成物(A)からなる賦形物を形成する第
1工程、(2)賦形物の表面に、モノマー及び/又はオ
リゴマー(a)と共重合可能な親水性モノマー及び/又
は親水性オリゴマー(b)を含有する液状の親水性層形
成材料(B)に浸漬する第2工程、(3)前記浸漬状態
下の賦形物に活性光線を照射する第3工程とから成り、
(4)前記第3工程において、(イ)賦形物を硬化させ
ること、(ロ)賦形物と親水性層形成材料(B)との接
触界面で、モノマー及び/又はオリゴマー(a)と親水
性モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)とを共重
合させて賦形物の表面に親水性モノマー及び/又は親水
性オリゴマー(b)の分子を化学的に結合させること、
(ハ)親水性層形成材料(B)の中では前記接触界面を
除き光重合反応を起こさせないこと、を条件とする親水
性表面を有する成形物の製造方法において、第1工程に
おける賦形物を形成した後、気相と接触させることなく
直ちに親水性層形成材料(B)に浸漬することを特徴と
する親水性表面を有する成形物の製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法で使用する活性
光線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマー
(a)は、有機、無機を問わず、光重合開始剤の存在下
又は不存在下で、活性光線、例えば紫外線、可視光線、
赤外線等の照射により重合し、ポリマーとなるものであ
ればよく、ラジカル重合性、アニオン重合性、カチオン
重合性等、任意のものであってよい。そのようなモノマ
ー及び/又はオリゴマー(a)としては、例えば、分子
内にビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタク
リロイル基[以下、アクリロイル基とメタクリロイル基
を併せて(メタ)アクリロイル基と称する。(メタ)ア
クリル、(メタ)アクリレート等についても同様であ
る。]、マレイミド基などを有する化合物が挙げられる
が、中でも活性光線照射による重合速度が速いことか
ら、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好まし
い。
【0010】本発明の製造方法で使用できる活性光線に
より重合可能なモノマー(a)としては、例えば、エチ
ル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレ
ート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル
(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレー
ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリ
ル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレ
ート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソ
ルブ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチ
レングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル
(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)ア
クリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)ア
クリレートの如き単官能モノマー;
【0011】ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレー
ト、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ
(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリン
モノメタクリレート、2,2′−ビス(4−(メタ)ア
クリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパ
ン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ
ポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、ジシクロペ
ンタニルジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アク
リロイルオキシエチル]ヒドロキシエチルイソシアヌレ
ート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトリレ
ンジイソシアネート、アジピン酸ジビニル、N−メチレ
ンビスアクリルアミドの如き2官能モノマー;
【0012】トリメチロールプロパントリ(メタ)アク
リレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレ
ート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イ
ソシアネート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アク
リレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリ
レート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレー
ト、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、カ
プロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシア
ヌレートの如き3官能モノマー;ペンタエリスリトール
テトラ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)ア
クリレートヘキサメチレンジイソシアネートの如き4官
能モノマー、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペ
ンタ(メタ)アクリレートの如き5官能モノマー;ジペ
ンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの如き
6官能モノマー;2−イソシアネートエチルメタクリレ
ートの如き複数種の重合性官能基を有するモノマー、な
どが挙げられる。
【0013】また、本発明の製造方法で使用できる活性
光線により重合可能なオリゴマー(プレポリマーともい
う)(a)としては、分子量500〜50,000のも
のが好ましい。そのようなオリゴマーとしては、例え
ば、ビスフェノールA−ジエポキシ−(メタ)アクリル
酸付加物の如きエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エス
テル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸エステ
ル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エステ
ル、分子末端に(メタ)アクリル基を有するポリウレタ
ン樹脂、などが挙げられる。
【0014】これらの活性光線により重合可能なモノマ
ー及び/又はオリゴマー(a)は、単独で用いること
も、2種以上の材料を混合して、例えば、モノマー同士
或いはオリゴマー同士を混合して用いることもでき、ま
た、モノマーとオリゴマーを混合して用いることもでき
る。モノマー及び/又はオリゴマー(a)としては、賦
形物の硬度や強度を増すためには多官能のモノマー及び
/又はオリゴマーを使用することが好ましい。
【0015】これらの活性光線により重合可能なモノマ
ー及び/又はオリゴマー(a)として、光重合開始剤機
能を有するマレイミド系のモノマーやオリゴマーを用い
ることもできる。
【0016】マレイミド系のモノマーとしては、例え
ば、マレイミド;N−メチルマレイミド、N−エチルマ
レイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイ
ミド、の如きN−アルキルマレイミド;N−シクロヘキ
シルマレイミドの如きN−脂環族マレイミド;N−ベン
ジルマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−(アル
キルフェニル)マレイミド、N−ジアルコキシフェニル
マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、
2,3−ジクロロ−N−(2,6−ジエチルフェニル)
マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2−エチル−6
−メチルフェニル)マレイミドの如きN−(置換又は非
置換フェニル)マレイミド;N−ベンジル−2,3−ジ
クロロマレイミド、N−(4’−フルオロフェニル)−
2,3−ジクロロマレイミドの如きハロゲン基を有する
マレイミド;ヒドロキシフェニルマレイミドの如き水酸
基を有するマレイミド;
【0017】N−(4−カルボキシ−3−ヒドロキシフ
ェニル)マレイミドの如きカルボキシ基を有するマレイ
ミド;N−メトキシフェニルマレイミドの如きアルコキ
シ基を有するマレイミド;N−[3−(ジエチルアミ
ノ)プロピル]マレイミドの如きアミノ基を有するマレ
イミド;N−(1−ピレニル)マレイミドの如き多環芳
香族マレイミド;N−(ジメチルアミノ−4−メチル−
3−クマリニル)マレイミド、N−(4−アニリノ−1
−ナフチル)マレイミドの如き複素環基を有するマレイ
ミド;ビオチンマレイミド、ペルオキシダーゼマレイミ
ド、ホスファターゼマレイミドの如き生理活性官能基を
有するマレイミド;
【0018】4,4’−メチレンビス(N−フェニルマ
レイミド)、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−
3−チエニル)マレイミド、1,2−ビスマレイミドエ
タン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、トリエチレン
グリコールビスマレイミド、N,N’−m−フェニレン
ジマレイミド、m−トリレンジマレイミド、N,N’−
1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−ジフェニ
ルメタンジマレイミド、N,N’−ジフェニルエーテル
ジマレイミド、N,N’−ジフェニルスルホンジマレイ
ミド、1,4−ビス(マレイミドエチル)−1,4−ジ
アゾニアビシクロ−[2,2,2]オクタンジクロリ
ド、4,4’−イソプロピリデンジフェニル=ジシアナ
ート・N,N’−(メチレンジ−p−フェニレン)ジマ
レイミドの如き2官能マレイミド;N−(9−アクリジ
ニル)マレイミドの如きマレイミド基とマレイミド基以
外の重合性官能基とを有するマレイミド、などが挙げら
れる。
【0019】マレイミド系オリゴマーとしては、ポリテ
トラメチレングリコールマレイミドカプリエート、ポリ
テトラメチレングリコールマレイミドアセテートの如き
ポリテトラメチレングリコールマレイミドアルキレート
などが挙げられる。
【0020】これらのマレイミド系のモノマーやオリゴ
マーは単独で使用することも、2種類以上を混合して使
用こともできる。
【0021】活性光線により重合可能なモノマー及び/
又はオリゴマー(a)の選択により、表面親水性成形物
の塗膜の物性を任意に制御することができる。耐熱性、
力学強度、硬度、寸法安定性、耐溶剤性などに優れた表
面親水性成形物を得るために、モノマー及び/又はオリ
ゴマー(a)としては、多官能のモノマー及び/又はオ
リゴマー(a)を使用することが好ましい。また、支持
体との接着性を増すためには、モノマー及び/又はオリ
ゴマー(a)として、多官能のモノマー及び/又はオリ
ゴマー(a)と親水性基や極性基を有する単官能のモノ
マー及び/又はオリゴマー(a)を混合使用することが
好ましい。
【0022】また、活性光線により重合可能なモノマー
及び/又はオリゴマー(a)に疎水性のものを選択する
ことにより、水に非膨潤性の成形物とすることができ
る。なお、本明細書でいう「水に非膨潤性」とは、25
℃の水に24時間浸漬した場合、乾燥重量に対する重量
増加率が10重量%以下であることをいう。水に非膨潤
性であることにより、成形物は耐水性を有し、湿潤状態
でも強度が低下することはない。
【0023】本発明の製造方法において、光重合性樹脂
組成物(A)は、親水性層形成材料(B)に接触してか
ら光重合硬化までの間、賦形された状態を実質的に保持
できるものであることが必要である。そのために、光重
合性樹脂組成物(A)の主要な構成要素であるモノマー
及び/又はオリゴマー(a)が親水性層形成材料(B)
に溶解しないもの、あるいは、光重合性樹脂組成物
(A)が高粘度のものが好ましい。
【0024】光重合性樹脂組成物(A)の必須構成要素
である光重合開始剤は、本発明で使用する活性光線に対
して活性であり、モノマー及び/又はオリゴマー
(a)、並びに親水性モノマー及び/又は親水性オリゴ
マー(b)を重合させることが可能なものであれば、特
に制限がなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン
重合開始剤、カチオン重合開始剤であって良い。そのよ
うな光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチル
トリクロロアセトフェノン、2,2′−ジエトキシアセ
トフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニ
ルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾ
フェノン、4、4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノ
ン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサン
トン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチ
オキサントンの如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾイン
メチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベ
ンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル
類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキ
シルフェニルケトンの如きベンジルケタール類、などが
挙げられる。
【0025】光重合開始剤は、光重合性樹脂組成物
(A)に溶解あるいは分散した状態で用いることができ
るが、光重合性樹脂組成物(A)に溶解し、かつ親水性
層形成材料(B)には不溶か難溶であることが好まし
い。光重合性樹脂組成物(A)中の光重合開始剤濃度
は、0.01〜20重量%の範囲が好ましく、0.1〜
10重量%の範囲が特に好ましい。
【0026】光重合開始剤として、それ自体が重合性で
ある光重合開始剤、換言すれば、光重合開始剤機能を有
するモノマーやオリゴマーを使用することもできる。モ
ノマー及び/又はオリゴマー(a)として、光重合開始
剤機能を有するモノマーやオリゴマーを使用した場合に
は、一部の該モノマーやオリゴマーが光重合開始剤とし
て機能するため、本発明において、光重合性樹脂組成物
(A)に別途光重合開始剤を添加する必要はない。この
ような、それ自体が重合性である光重合開始剤の例とし
ては、例えば、前記したマレイミド基を有するモノマー
やオリゴマー、上記のそれ自体が重合性でない光重合開
始剤を分子中に有するビニル系モノマーやオリゴマーを
挙げることができる。また、重合性の炭素−炭素二重結
合を有するモノマーやオリゴマーであっても、活性光線
の強度や波長を選択することによって、これらを光重合
開始剤機能を有するモノマーやオリゴマーとして機能さ
せることができる。
【0027】光重合性樹脂組成物(A)には、その他の
成分を溶解又は非溶解の状態で含有させることもでき
る。その他の成分としては、例えば増粘剤として機能す
る重合体、最終成形物の物性改良剤として機能する重合
体、充填剤などの無機物、アラミド繊維などの強化材、
着色剤、防黴剤などの薬剤、孔質体を成形するための貧
溶剤等が挙げられる。
【0028】本発明の製造方法で使用する親水性モノマ
ー及び/又は親水性オリゴマー(b)は、分子内に親水
性基を有し、モノマー及び/又はオリゴマー(a)と共
重合可能な重合性化合物であり、かつ、本発明の製造方
法で使用する活性光線を照射した際に、光重合開始剤が
存在する時は重合するが、光重合開始剤が存在しない時
には重合しないものである。
【0029】親水基としては、例えば、ポリエチレング
リコール基、ポリオキシメチレン基、水酸基、糖含有
基、アミド基、ピロリドン基の如きノニオン性親水基;
カルボキシル基、スルホン基、燐酸基の如きアニオン性
親水基、アミノ基、アンモニウム基の如きカチオン性親
水基;アミノ酸骨格を有する基や、燐酸基/アンモニウ
ムイオン基の如き両性イオン基等が挙げられる。勿論、
親水性基は、これらの誘導体であって良く、例えば、ア
ミノ基、アミド基、アンモニウム基、ピロリドン基のN
−アルキル置換体が挙げられる。親水性モノマー及び/
又は親水性オリゴマー(b)は、分子中に単数又は複数
の親水基を有するものであってよく、複数の種類の親水
基を有するものであってもよい。
【0030】親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマ
ー(b)は、水又は水と有機溶剤との混合溶剤と任意の
割合で相溶するものが好ましく、水と任意の割合で相溶
するものがさらに好ましい。
【0031】親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマ
ー(b)が光重合開始剤の不存在下で本発明で使用する
活性光線によって重合するものであると、光照射によっ
て、親水性層形成材料(B)中で、成形物の表面に結合
していない重合体の生成量が増加するために、親水性モ
ノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)の利用効率が
悪くなる上、親水性層形成材料(B)の交換頻度が高く
なり生産性も低下するので、好ましくない。
【0032】親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマ
ー(b)が光重合開始剤の存在しない状態で重合するか
しないかは、使用する活性光線にも依存する。本発明で
使用する活性光線の波長や強度を選定することによっ
て、親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)
が光重合開始剤の不存在下で重合しないようにすること
も可能である。
【0033】そのような親水性モノマー及び/又は親水
性オリゴマー(b)としては、例えば、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル
(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アク
リレートの如き水酸基を有するモノマー;ジエチレング
リコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリ
コールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリ
コールモノ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコ
ールモノ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレング
リコールモノ(メタ)アクリレート、トリエイコサエチ
レングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレ
ングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエ
チレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリ
エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテ
トラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキ
シノナエチレングリコール(メタ)アクリレート、メト
キシテトラデカエチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、メトキシトリエイコサエチレングリコール(メタ)
アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール
(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリ
コール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレ
ングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシノナエ
チレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポ
リエチレングリコール(メタ)アクリレートの如きポリ
エチレングリコール構造単位を有するモノマー;
【0034】N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−
n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピ
ル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メ
タ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)
アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルア
ミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−
メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N
−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、
N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)ア
クリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルピぺ
リジン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチレンビ
スアクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アク
リルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アク
リルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルア
ミド、N−1−メトキシメチルプロピル(メタ)アクリ
ルアミド、N−メトキシエトキシプロピル(メタ)アク
リルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチル(メ
タ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル
(メタ)アクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン
−2−イル)(メタ)アクリルアミドの如きアミド基を
有するモノマー;
【0035】N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)ア
クリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)
アクリルアミド、N,N−(ビスメトキシメチル)カル
バミルオキシエチルメタクリレート、N−メトキシメチ
ルカルバミルオキシエチルメタクリレートの如きアミノ
基を有するモノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシ
エチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロ
ピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル
コハク酸の如きカルボキシル基を有するモノマー;モノ
(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェ
ート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッド
ホスフェートの如き燐酸基を有するモノマー;
【0036】(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメ
チルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオ
キシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの如き
4級アンモニウム塩基を有するモノマー;2−アクリル
アミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリル
アミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、(メタ)ア
クリロイルオキシエチルスルホン酸ナトリウム、(メ
タ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウ
ム、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルス
ルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン酸ソーダエト
キシメタクリレートの如きスルホン基を有するモノマ
ー;N−メタクリロイルオキシエチルカルバミン酸アス
パラギン酸の如き分子中にアミノ酸骨格を有するモノマ
ー;6−アクリロイル(1−O−)n−ブチルグルコシ
ドの如き分子中に糖骨格を有するモノマー;これらの親
水基を有する分子量500〜50000の重合性オリゴ
マーなどが挙げられる。
【0037】親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマ
ー(b)は、透明性に優れた薄い表面親水性層を形成す
るためには、単官能モノマー及び/又は単官能オリゴマ
ーを用いることが好ましい。
【0038】本発明の親水性層形成材料(B)は、親水
性モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)を必須構
成要素とする。親水性モノマー及び/又は親水性オリゴ
マー(b)は単独又は2種類以上の混合物であってよ
い。親水性層形成材料(B)は、その他に溶剤、界面活
性剤、重合禁止剤、連鎖移動剤などを含有してもよい
が、本発明で使用する活性光線に活性な光重合開始剤を
実質的に含有しない。親水性層形成材料(B)中に、そ
のような光重合開始剤を含むと、親水性モノマー及び/
又は親水性オリゴマー(b)が光重合開始剤の不存在下
で本発明で使用する活性光線により重合するものである
場合と同様の不都合が生じる。しかしながら、例えば、
賦形物からの光重合開始剤の溶出などにより、親水性層
形成材料(B)に微量の光重合開始剤が含有される場合
であっても、重合禁止剤や連鎖移動剤を同時に含有させ
ることにより、上記の不都合を減じることは可能であ
る。
【0039】本発明で使用する親水性層形成材料(B)
は、液体であり、親水基結合量の制御し易さから、親水
性モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)と溶剤か
らなる溶液であることがより好ましい。溶剤は、水、水
溶性溶剤、界面活性剤もしくはそれらの混合物であるこ
とが好ましく、表面親水性に優れる成形物を得るために
は、水又は水を主成分とする溶剤であることがさらに好
ましく、界面活性剤と水との混合物であることが、最も
好ましい。
【0040】水溶性溶剤は、水と任意の割合で混和しう
る溶剤を言い、そのような水溶性溶剤としては、例え
ば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレン
グリコール、グリセリンの如きアルコール系溶剤、酢酸
の如き酸、アセトンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド
の如きアミド系溶剤などが挙げられる。
【0041】必要に応じて親水性層形成材料(B)に添
加することのできる界面活性剤は、親水性モノマー及び
/又は親水性オリゴマー(b)を含む溶剤に溶解するも
のであればよく、そのような界面活性剤としては、例え
ば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如き
アニオン性界面活性剤、n−ドデシルトリメチルアンモ
ニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオ
キシエチレンソルビタンモノラウレート(商品名「ツィ
−ン20」)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの
如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0042】溶液として用いる場合の親水性層形成材料
(B)中の親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー
(b)の濃度は、成形物表面に要求される親水性、界面
での反応性及び親水基結合量の制御、並びに後洗浄等の
面から、0.5〜50重量%の範囲が好ましく、3〜3
0重量%の範囲が特に好ましい。
【0043】一般的に、親水性層形成材料(B)中の親
水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)の濃度
が高くなるほど、支持体成形物の表面に固定される親水
性層が厚くなるが、厚くなりすぎると(例えば、乾燥状
態で厚さ10μm以上)、湿潤時の透明性が低下するの
みならず、湿潤時に表面強度が低下し、親水性層の変形
や剥離が生じ易くなる。親水性層形成材料(B)中の親
水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)の濃度
を上記の範囲にすることで、充分な親水性を示し、且つ
表面親水性層が過度に厚くない親水性成形物を得ること
ができる。
【0044】本発明の製造方法では、親水性のモノマー
及び/又は親水性オリゴマー(b)を用いることによ
り、成形物の表面に親水性を付与することができるだけ
でなく、水酸基、糖含有基、カルボキシル基、りん酸
基、スルホン基、アミノ基、アミド基、4級アンモニウ
ム塩基、アミノ酸含有基、ハロゲン等の置換基を容易に
成形物の表面に導入することもできる。
【0045】本発明の、光重合性樹脂組成物(A)の賦
形物の形状は、賦形物を賦形した後、気相と接触させる
ことなく直ちに親水性層形成材料(B)中に浸漬し、そ
の状態で光り取捨する事ができる形状であれば特に制限
はないが、例えばフィルム状、板状、塗膜状、糸状、中
空糸状、管状、円筒状、などであることが好ましい。
【0046】本発明の製造方法は、光重合性樹脂組成物
(A)の賦形後、賦形物を気相と接触させることなく直
ちに親水性層形成材料(B)中に浸漬すること、換言す
れば、賦形物を気液界面を通過させることなく親水性層
形成材料(B)中に浸漬することを特徴とする。賦形物
が賦形後に気相と接触させることなく直ちに親水性層形
成材料(B)中に浸漬することで、賦形物が親水性層形
成材料(B)と気相との界面を通過して親水性層形成材
料(B)中に入る際に、親水性層形成材料(B)の液面
の揺らぎや賦形物の親水性層形成材料(B)による濡れ
速度の不均一に起因する賦形物表面の波状もしくは皺状
の模様の発生を排除することができる。
【0047】光重合性樹脂組成物(A)を賦形し、賦形
物を気相と接触させることなく直ちに親水性層形成材料
(B)中に浸漬する方法としては、例えば、押し出しノ
ズルから光重合性樹脂組成物(A)を親水性層形成材料
(B)中に直接押し出す方法、光重合性樹脂組成物
(A)を塗布するにあたり、バーコーター、コンマコー
ターなどのコーターの出口側を親水性層形成材料(B)
中に浸漬する方法、相互に溶解しない光重合性樹脂組成
物(A)と親水性層形成材料(B)が界面を有して互い
に接触している状態で、物品や支持体を光重合性樹脂組
成物(A)相に浸漬した状態から、その界面を通過させ
て親水性層形成材料(B)へ入れる方法などをとること
ができる。
【0048】光重合性樹脂組成物(A)の未硬化の賦形
物を親水性層形成材料(B)に浸漬した状態で、該賦形
物に活性光線を照射すると、賦形物の内部や表面でラジ
カル、アニオン、カチオンなどの活性種が発生し、モノ
マー及び/又はオリゴマー(a)が重合するとともに、
発生したこれらの活性種あるいは引き続くモノマー及び
/又はオリゴマー(a)の重合連鎖における活性種によ
って、賦形物の表面で親水性層形成材料(B)に含有さ
れる親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)
の重合も誘発される。即ち、重合反応は賦形物内部にお
いてモノマー及び/又はオリゴマー(a)同士、賦形物
と親水性層形成材料(B)との接触面においてモノマー
及び/又はオリゴマー(a)と親水性モノマー及び/又
は親水性オリゴマー(b)の間、及び該接触面近傍の親
水性層形成材料(B)相中において親水性モノマー及び
/又は親水性オリゴマー(b)同士で起こり、モノマー
及び/又はオリゴマー(a)と親水性モノマー及び/又
は親水性オリゴマー(b)とのブロック共重合体が形成
される。従って、賦形物の硬化物の内部には、親水性モ
ノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)あるいはその
重合体は存在せず、親水性モノマー及び/又は親水性オ
リゴマー(b)あるいはその重合体は、賦形物の表面の
みに結合される。支持体成形物の表面に結合した親水性
モノマー及び/又は親水性オリゴマー(b)は、重合体
とならない親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー
(b)単独体であることもあり得る。モノマー及び/又
はオリゴマー(a)と親水性モノマー及び/又は親水性
オリゴマー(b)の反応は、反応論的にはブロック共重
合であるが、見かけ上は、賦形物の表面に親水性モノマ
ー及び/又は親水性オリゴマー(b)がグラフト共重合
した状態となる。
【0049】なお、本発明の製造方法では、親水性モノ
マー及び/又は親水性オリゴマー(b)は、使用された
量の一部分が光重合性樹脂組成物(A)の塗膜の表面に
結合し、残余の親水性モノマー及び/又は親水性オリゴ
マー(b)は、未硬化のまま親水性層形成材料(B)相
中に残留する。
【0050】本発明の製造方法で使用する活性光線とし
ては、紫外線、可視光、赤外光を挙げられる。これらの
活性光線の中でも、重合硬化速度の点から紫外線、可視
光が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の波長が
短すぎると、光重合開始剤の非存在下でも親水性モノマ
ー及び/又は親水性オリゴマー(b)が重合する場合が
生じ、親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー
(b)の選定範囲を狭めることになるため、主たる波長
が300nm以上であるが好ましく、350nm以上である
ことが特に好ましい。活性光線の他に、電子線、エック
ス線、γ線等のエネルギー線の使用も可能であるが、支
持体成形物に結合しない親水性モノマー及び/又は親水
性オリゴマー(b)重合体の発生量を減じるためには活
性光線が最も好ましい。照射する活性光線の強度は、1
〜5000mW/cm2 の範囲が好ましく、10〜200
0mW/cm2 の範囲が特に好ましい。また、重合硬化速
度を速め、重合を完全に行う目的で、光照射を不活性ガ
ス雰囲気下で行なうことが好ましく、親水性層形成材料
(B)に溶解している酸素を除去しておくことが好まし
い。光重合性樹脂組成物(A)もまた溶存酸素を除去し
ておくことが好ましい。
【0051】本発明によって製造される表面親水性成形
物における親水性層は、乾燥状態で厚み100μm以
下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1μm
以下に形成することができる。親水性層の厚みの下限
は、分子寸法で規定されるため、特に限定する必要はな
い。厚みがこの値以上であると、膨潤時の寸法変化によ
り表面から剥離し易くなる。親水性層の厚みは、上記範
囲で用途目的に応じて設計できる。
【0052】
【実施例】以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更
に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に
限定されるものではない。なお、以下の実施例におい
て、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、夫々
「重量部」及び「重量%」を表わす。
【0053】[測定方法]以下の例中の測定は、次の方
法に従って行った。 <水接触角>試料を25℃、湿度60%に48時間静置
した後、協和科学株式会社製の液滴法CA−D型接触角
計を用いて、安定化時間約3分で測定した。
【0054】<膨潤>試料を45℃にて6時間真空乾燥
して秤量し、乾燥重量とした。この試料を25℃の水に
24時間浸漬した後、表面を濾紙で拭って秤量し、重量
増加を測定した。
【0055】[実施例1] <親水性表面を有する成形物の作製>ジシクロペンタニ
ルジアクリレート(日本化薬株式会社製の「カヤラッド
R−684」)95部及び光重合開始剤ヒドロキシシク
ロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イル
ガキュアー184」)5部を均一に混合して、光重合性
樹脂組成物(A−1)を得た。
【0056】一方、ジメチルアミノエチルメタクリレー
ト四級化物(共栄社化学株式会社製の「ライトエステル
DQ−75」)10部及び蒸留水90部を均一に混合し
て、親水性層形成材料(B−1)を得た。
【0057】次に、幅30cm、厚さ100μmの長尺ポ
リエチレンテレフタレートシート(東レ株式会社製の
「ルミラー T−100」)をローラー系を用いて2cm
/秒の速度で流し、図1に示した製造装置を用いて、該
シート(3)に光重合性樹脂組成物(A−1)(4)を
30μm厚に塗布した。該製造装置のコーター部は、バ
ーコーター(1)のシート出口側とバックロール(2)
の下半分が親水性層形成材料(B−1)(5)中に浸漬
されており、コーター部から出た塗工されたシート
(3)を空気(8)と接触させることなく直接親水性層
形成材料(B−1)(5)中に浸漬した。光重合性樹脂
組成物(A−1)塗膜は、親水性層形成材料(B−1)
中で、石英ガラス板(6)を通して100mW/cm2
紫外線(7)を10秒間照射して硬化させた。ついで、
該シートを適当な寸法に切断し、流水で1時間洗浄した
後、25℃、湿度60%にて48時間風乾させて、ポリ
エチレンテレフタレートシート上に形成された塗膜状の
親水性表面を有する成形物を得た。
【0058】<測定結果>得られた成形物は目視では完
全に透明であり、縞状や皺状の模様は全く認められなか
った。走査型電子顕微鏡による観察によっても、縞状や
皺状の模様は全く認められなかった。また、本成形物の
水接触角は7度であった。さらに、本成形物は25℃の
水への24時間浸漬によって、膨潤や白化は認められな
かった。
【0059】<確認実験>一方、光重合性樹脂組成物
(A−1)をガラス板にバーコーターを用いて厚さ約1
25μmに塗布し、蒸留水に浸漬して100mW/cm2
の紫外線を20秒照射した。このようにして得た硬化塗
膜をガラス板からはがし、流水で1時間洗浄した後、2
5℃、湿度60%にて48時間風乾させて、フィルム状
の成形物を得た。
【0060】このフィルム状成形物の水接触角は70度
であった。また、25℃の水への24時間浸漬による重
量増加は0.2%であった。即ち、表面に結合した親水
性化合物部分を除く本親水性表面を有する成形物は25
℃の水によって膨潤しないことが確認された。
【0061】[比較例1]製造装置のコーター部が、図
2に示した角度で設置されており、シート(3)と塗膜
はコーター部から一度空気(8)中に出て、空気(8)
と親水性層形成材料(B−1)(5)との気液界面から
親水性層形成材料(B−1)(5)中に浸漬した以外
は、実施例1と同様にして親水性表面を有する成形物を
得た。
【0062】得られた成形物は細かい縞状の模様が認め
られ、透明性に劣っていた。走査型電子顕微鏡による観
察によれば、ピッチ約10μm及び約0.5mmのほぼ平
行な凹凸が重なった模様が観察された。水接触角及び膨
潤に関しては、実施例1の結果と同様であった。
【0063】[実施例2] <親水性表面を有する成形物の作製>実施例1におい
て、(イ)ポリエチレンテレフタレートフィルムに代え
て、厚さ130μmの2軸延伸ポリスチレンシート(大
日本インキ化学工業株式会社製の「デックシートOPS
GK130」)を用いたこと、(ロ)光重合性樹脂組
成物(A−1)に代えて、平均分子量約2000の3官
能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学
工業株式会社製の「ユニディックV4263」)95部
及びヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガ
イギー社製の「イルガキュアー184」)5部を均一に
混合して得た光重合性樹脂組成物(A−2)を用いたこ
と、及び、(ハ)親水性層形成材料(B−1)に代え
て、親水性モノマー(b)として〔モノ(2−アクリロ
イルオキシエチル)アシッドホスフェート(共栄社化学
株式会社製の「ライトエステルPA」)5部、界面活性
剤としてポリエチレングリコールモノ−p−ノニルフェ
ニルエーテル(東京化成工業株式会社製の「PMNE1
0」)5部及び蒸留水90部を均一に混合した親水性層
形成材料(B−2)を用いたこと、以外は実施例1と同
様にして、ポリスチレンシート上に形成された塗膜状の
親水性表面を有する成形物を得た。
【0064】<測定結果>得られた成形物は目視では完
全に透明であり、縞状や皺状の模様は全く認められなか
った。走査型電子顕微鏡による観察によっても、縞状や
皺状の凹凸は全く認められなかった。また、本成形物の
水接触角は0度であった。さらに、本成形物は25℃の
水への24時間浸漬によって、膨潤や白化は認められな
かった。
【0065】<確認実験>実施例1の確認実験におい
て、光重合性樹脂組成物(A−1)に代えて、光重合性
樹脂組成物(A−2)を用いた以外は、同様にしてフィ
ルム状の成形物を得た。
【0066】このフィルム状成形物の水接触角は68度
であった。また、25℃の水への24時間浸漬による重
量増加は0.3%であった。即ち、表面に結合した親水
性化合物部分を除く本親水性表面を有する成形物は25
℃の水によって膨潤しないことが確認された。
【0067】[比較例2]製造装置のコーター部が、図
2に示した角度で設置されており、シート(3)と塗膜
はコーター部から一度空気(8)中に出て、空気(8)
と親水性層形成材料(B−1)(5)との気液界面から
親水性層形成材料(B−1)(5)中に浸漬した以外
は、実施例2と同様にして、親水性表面を有する成形物
を得た。
【0068】得られた成形物は、比較例1よりやや透明
性は良いものの、やはり細かい縞状の模様が認められ
た。走査型電子顕微鏡による観察によれば、比較例1と
同様の形状の凹凸が観察された。水接触角及び膨潤に関
しては、実施例2の結果と同様であった。
【0069】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、高い親水性
を示しながら、表面の平滑性と透明性に優れ、光学的な
用途に好適な成形物、特にフィルム状あるいはフィルム
に塗布された塗膜状の成形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した製造装置の側面図である。
【符号の説明】
1 バーコーター 2 バックロール 3 シート 4 光重合性樹脂組成物(A) 5 親水性層形成材料(B) 6 石英ガラス板 7 紫外線 8 空気
【図2】比較例で使用した製造装置の側面図である。
【符号の説明】
1 バーコーター 2 バックロール 3 シート 4 光重合性樹脂組成物(A) 5 親水性層形成材料(B) 6 石英ガラス板 7 紫外線 8 空気
フロントページの続き Fターム(参考) 4F006 AA12 AA22 AA32 AA34 AB24 AB33 AB43 BA10 BA11 CA01 CA08 CA09 EA03 4J011 QA03 QA13 QA22 QA23 QA24 QA27 QB03 QB05 QB15 QB16 QB20 QB24 SA04 SA07 SA12 SA16 SA17 SA18 SA20 SA22 SA25 SA28 SA32 SA34 SA52 SA54 SA64 UA01 VA04 WA01 WA02 WA07 WA09 4J038 FA091 FA121 FA131 FA141 FA151 FA161 FA171 FA231 FA251 FA271 FA281 GA01 GA02 GA03 GA06 GA08 GA09 GA13 GA14 JA29 JA33 JC18 KA03 LA02 MA14 NA01 NA05 NA06 PA17

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)活性光線により重合可能なモノマ
    ー及び/又はオリゴマー(a)と光重合開始剤とを必須
    成分として含有する光重合性樹脂組成物(A)を賦形し
    て未硬化の光重合性樹脂組成物(A)からなる賦形物を
    形成する第1工程、(2)賦形物の表面に、モノマー及
    び/又はオリゴマー(a)と共重合可能な親水性モノマ
    ー及び/又は親水性オリゴマー(b)を含有する液状の
    親水性層形成材料(B)に浸漬する第2工程、(3)前
    記浸漬状態下の賦形物に活性光線を照射する第3工程と
    から成り、(4)前記第3工程において、(イ)賦形物
    を硬化させること、(ロ)賦形物と親水性層形成材料
    (B)との接触界面で、モノマー及び/又はオリゴマー
    (a)と親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマー
    (b)とを共重合させて賦形物の表面に親水性モノマー
    及び/又は親水性オリゴマー(b)の分子を化学的に結
    合させること、(ハ)親水性層形成材料(B)の中では
    前記接触界面を除き光重合反応を起こさせないこと、を
    条件とする親水性表面を有する成形物の製造方法におい
    て、第1工程における賦形物を形成した後、気相と接触
    させることなく直ちに親水性層形成材料(B)に浸漬す
    ることを特徴とする親水性表面を有する成形物の製造方
    法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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