JP2000316576A - 枯草菌組換え体およびその作成法 - Google Patents

枯草菌組換え体およびその作成法

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JP2000316576A
JP2000316576A JP11125648A JP12564899A JP2000316576A JP 2000316576 A JP2000316576 A JP 2000316576A JP 11125648 A JP11125648 A JP 11125648A JP 12564899 A JP12564899 A JP 12564899A JP 2000316576 A JP2000316576 A JP 2000316576A
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dna
bacillus subtilis
gene
recombinant
genome
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Mitsuyasu Itaya
光泰 板谷
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Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 所望の表現型を有する枯草菌組換え体の提
供。 【解決手段】 枯草菌のゲノムDNAに挿入した1 以上
の異種DNAを形質転換により、1 以上のDNA断片で
同時または逐次に置換して得られる組換え体から、所望
の表現型を有する枯草菌組換え体を選択する。 【効果】 細菌または細胞の染色体の一部を微妙に変化
させて、多種の性質を有する遺伝子群が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、枯草菌組換え体お
よびその作成法ならびに該枯草菌組換え体を使用するゲ
ノムDNAライブラリーの作成法およびトランスジェニ
ック動物または植物に関する。さらに詳しくは、枯草菌
の形質転換システムを利用して得られる枯草菌組換え体
およびその作成法ならびににゲノムDNAライブラリー
の作成およびトランスジェニック動物または植物を作成
するための該枯草菌組換え体の使用に関する。本発明の
方法によれば、細菌または細胞の染色体の一部を微妙に
置換させて多種の性質を持った遺伝子群が得られる。具
体的には、本発明の方法により、環境浄化に優れた遺伝
子群やDNA再編成で生じる新たな免疫グロブリン遺伝
子群を枯草菌で創出することが可能になる。
【0002】
【従来の技術】遺伝子の塩基配列の改変は、クローニン
グ技術、塩基配列決定技術、組換えDNA技術の展開に
よって可能となっている。部位特異的変異といわれる手
法によって目的とする塩基を置換、挿入、欠失させた
り、制限酵素を用いて行う遺伝子組換え法で特定領域の
入れ換えが可能になっている(Sambrook,
J.,Fritsch,E.F.& Maniati
s、T.(1989)Molecular Cloni
ng:A Laboratory Manual,Se
cond Ed.(Cold Spring Harb
or Laboratory、Cold Spring
Harbor,NY).)。しかしながら、大腸菌を
用いるクローニング手法には限界があり、一度に扱える
サイズのDNAは、比較的小さなものに限定される。さ
らに多数の塩基配列を一度に変えることは困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】自然界では2種のゲノ
ムDNAが混ざり合って中間雑種が得られ、中間の形質
を発現する。たとえば、メンデルのエンドウ豆の交配実
験で赤色の花の親と白色の花の親から桃色の花を持つ中
間雑種が得られたり、ロバとウマからラバが生まれた
り、オレンジとカラタチからオレタチを育種したりとか
枚挙にいとまがない。これをDNAレベルの交配として
見ると、DNA(遺伝子)とある程度の相同性を持つD
NA(遺伝子)との中間の塩基配列を持つDNA(中間
雑種)の中に、それぞれの性質が強化されたものを得る
には、部位特異的変異を多数回繰り返して行う必要があ
る。たとえば、ヒトの遺伝子とマウスの遺伝子との間で
塩基配列が96%の相同性の有する、2つの遺伝子の中
間遺伝子を作製するためには100塩基当たり最大3塩
基を置換しなければならず、モザイク遺伝子を作製する
場合には、塩基配列を比較して部位特異的変異操作を繰
り返して行うことが必要である。
【0004】しかしながらこの方法では、DNAのサイ
ズが大きくなったり相同性が低下すればこれらの組み合
わせは等比級数的に増加することになり、部位特異的変
異で全てを網羅することが困難になる。遺伝子をその単
位領域毎に入れ換えたり(Tsuji,T.,Yosh
ida,Y.,Satoh,A.,Khono,T.,
and Yanagawa、H.(1999)Fold
ability ofbarnase mutants
obtained by permutation
of modules or secondary s
tructure unit.J.Mol.Bio
l.、286,1581−1596)、タンパク質のN
- 端とC- 端とを別の菌からとったDNAで繋ぎ変えた
りした例(桐野裕美、山岸明彦、大島泰郎、蛋白質・ 核
酸・酵素、Vol. 37、p335−345(199
2))はあるが、これらは頭と尾が別々のキメラDNA
であり、中間雑種とは言いがたく、まばらに似ている2
つの大きなDNAの間でモザイクを創製する一般的な技
術はまだ存在しない。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、枯草菌のゲ
ノムに巨大な外来性DNAを組み込める手法を見出し、
また枯草菌がもっている形質転換能によって2%程度の
塩基配列の違いを乗り越えることができることを既に見
出しているが、この2つの要素技術を組み合わせると、
枯草菌ゲノムに組み込んだどのようなDNAでもモザイ
ク化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、以下の発明を包含す
る。 (1)ゲノムDNAに挿入された、所望の表現型を付与
するモザイク組換えDNAを含有する枯草菌組換え体。 (2)モザイク組換えDNAが、殺虫性、耐旱魃性、耐
高温性または耐低温性を付与するDNAを含有する1項
に記載の枯草菌組換え体。 (3)モザイク組換えDNAが、免疫グロブリン遺伝子
または免疫グロブリンの可変領域重鎖もしくは軽鎖をコ
ードするDNAを含有する1項に記載の枯草菌組換え
体。
【0007】(4)枯草菌のゲノムDNAに挿入した1
以上の異種DNAを形質転換により、1 以上のDNA断
片で同時または逐次に置換して得られる、モザイク組換
え体DNAを含有する枯草菌組換え体から、所望の表現
型を有する枯草菌組換え体を選択することからなる枯草
菌組換え体の作成法。 (5)1以上のDNA断片が二本鎖のDNA断片である
4項に記載の方法。 (6)二本鎖DNA断片が、ゲノムDNAである5項に
記載の方法。 (7)二本鎖DNA断片が、ランダムな合成DNAであ
る5項に記載の方法。 (8)1以上のDNA断片がコンピテントである枯草菌
または形質転換能を有する枯草菌のゲノムに置換により
導入される4項に記載の方法。
【0008】(9)1以上の異種DNAが、1以上のD
NA断片で置換された組換え体の選択が、選択マーカが
発現している細胞が生き残る選択条件での陽性選択であ
る4項に記載の方法。 (10)選択マーカが、抗生物質耐性遺伝子である9項
に記載の方法。 (11)選択マーカが、ネオマイシン耐性遺伝子である
10項に記載の方法。 (12)所望の表現型を有する組換え体の選択が、抗体
との結合、酵素活性、ホルモン活性、受容体との結合ま
たは抗原との親和性に基づいて行われる4項に記載の方
法。 (13)置換により導入されるDNA断片が殺虫性、耐
旱魃性、耐高温性または耐低温性を付与するDNAを含
有する4項に記載の方法。
【0009】(14)環境浄化のための遺伝子群を枯草
菌ゲノムに挿入し、次いで形質転換により該遺伝子群を
環境浄化微生物に由来するDNAまたはランダムな合成
DNAで置換してさらに環境浄化に優れた遺伝子群を枯
草菌ゲノムに導入する4項に記載の方法。 (15)さらに環境浄化に優れた遺伝子群が、環境浄化
のためのpH, 温度、重金属浄化または圧力に関し、優
れたものである14項に記載の方法。 (16)免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリンの
可変領域重鎖もしくは軽鎖をコードするDNAを枯草菌
ゲノムに挿入し、次いで形質転換により該遺伝子のDN
A再編成で生じるDNA断片またはランダムな合成DN
Aで置換して所望の免疫グロブリン遺伝子または免疫グ
ロブリンの重鎖もしくは軽鎖をコードするDNAを枯草
菌ゲノムに導入する4項に記載の方法。
【0010】(17)動物または植物の高頻度反復配列
または中頻度反復配列を含有するDNA断片を枯草菌の
ゲノムに挿入し、次いで形質転換により動物または植物
のゲノムに由来する該反復配列を含有するDNA断片で
置換してゲノムDNAライブラリーを作成する方法。 (18)動物または植物に由来する遺伝子DNAをゲノ
ムDNAに挿入した枯草菌の形質転換により、該遺伝子
DNAに類似した遺伝子DNAを枯草菌ゲノムに導入
し、次いで所望の性質を有する遺伝子DNAを選択し、
さらに所望の性質を有する遺伝子DNAを動物または植
物に導入して得られるトランスジェニック動物または植
物。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明のモザイク組換え体DNA
を含有する枯草菌組換え体は、枯草菌のゲノムDNAに
挿入した1 以上の異種DNAを形質転換により、1 以上
のDNA断片で同時または逐次に置換して得られるモザ
イク組換え体DNAを含有する枯草菌組換え体から、所
望の表現型を有する枯草菌組換え体を選択して作成され
る。所望の表現型を有する枯草菌組換え体を作成するた
めの、本発明の方法では、異種DNAは、形質転換によ
り予め枯草菌ゲノムに挿入される必要があり、挿入され
た異種DNAの少なくとも一部はさらなる形質転換によ
って、1以上のDNA断片で置換される。
【0012】異種DNAは、枯草菌のゲノムDNAに組
み込むことができるものであれば、どのようなDNAで
あってもよい。たとえば、GC含量が70%の高度好熱
菌由来のDNAであってもよい。異種DNAの大きさに
ついては、枯草菌に組み込むことができれば特に制限は
なく、100kbの大きさのDNAであっても枯草菌の
ゲノムDNAに挿入可能である(Itaya、M. G
enetic transfer of large
sized DNA inserts todesig
nated loci of the Bacillu
s subtilis 168 genome. J.
Bacteriol.181,1045−1048(1
999)参照)。
【0013】異種DNAは、一回以上複数回、枯草菌ゲ
ノム中に挿入することが可能である。異種DNAが挿入
される枯草菌ゲノムの位置としては、挿入によって枯草
菌が死滅することがない限り、どのような位置であって
も良いが、実際1〜2kbの大きさの薬剤耐性遺伝子
は、50箇所以上の位置で枯草菌のゲノム中に挿入可能
である(Itaya、M.and T.Tanaka、
Complete physical map of
the Bacillus subtilis168
chromosome constructed by
a gene−directed mutagene
sis method、J.Mol.Biol.22
0、631−648(1991)参照)。このような枯
草菌ゲノム上での異種DNAの挿入部位の例として、枯
草菌ゲノム上のproB遺伝子が挙げられる。挿入され
る異種DNAの両末端には、挿入された異種DNAの選
択マーカとして、クロラムフェニコール耐性遺伝子やエ
リスロマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性遺伝子が存
在するのが好ましい。
【0014】枯草菌ゲノム中に組み込まれた異種DNA
の一部または全部を形質転換により同時または逐次置換
する1以上のDNA断片の大きさは, 数十bp以上であ
ればよいが、置換の頻度を上げるためには、数kb以上
であることがが好ましい。上記DNA断片は、異種DN
A中に含まれる相同領域と組換えを起こす。したがっ
て、異種DNAは、これと置換可能な相同領域を有する
複数のDNA断片によって同時または逐次置換され得
る。異種の相同領域部分と置換するDNA断片は、枯草
菌に取り込まれる段階では、二本鎖である必要がある。
二本鎖DNAは、ゲノムDNAでも、ランダムに合成さ
れたDNAであっても良い。二本鎖ゲノムDNAは、リ
ゾチーム等の細胞壁溶解酵素を用いて、細菌を溶菌する
ことによっても得られる。得られるゲノムDNAは、必
要に応じて使用前精製される。
【0015】また、ゲノムDNAの供給源が温度感受溶
菌性大腸菌の場合には、枯草菌と大腸菌を接触させ、温
度を上昇させることにより、溶菌した大腸菌中のゲノム
DNAをin situで枯草菌中に取り込ませること
ができる。枯草菌の細胞表面には、非特異的エンドヌク
レアーゼが存在し、トラップした二本鎖DNAの片方を
切断し、一本鎖を枯草菌中に取り込むとともに、残りの
一本鎖(相補鎖)を完全に分解する。枯草菌中に取り込
まれた一本鎖DNA断片は、枯草菌ゲノムに挿入された
異種DNA中の相同領域を探して、置換が生じると考え
られる。このようにして、DNA断片を取り込むことが
可能な枯草菌は、コンピテントであるか、あるいは形質
転換能を有する。
【0016】1以上の異種DNAが、1以上のDNA断
片で置換された組換え体は、選択マーカが発現している
細胞が生き残る選択条件での陽性選択によって選択され
る。選択マーカとしては、ネオマイシン耐性遺伝子等の
抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。たとえば、枯草菌ゲ
ノム中の3,516kbの部位にPr−neoのカセッ
トを挿入し、異種DNAが、DNA断片で置換された場
合にPrプロモータが働くと、下流のネオマイシン耐性
遺伝子が発現し、ネオマイシン耐性となった、DNA断
片で置換された組換え体を選択できる。
【0017】また、遺伝子産物が発現している細胞が生
き残る選択条件での陽性選択(ポジティブ選択)と細胞
に遺伝子を導入したとき、その形質が発現することによ
り細胞が死滅するような選択条件での陰性選択(ネガテ
ィブ選択)とを組み合わせた二重選択により、組換え体
を選択することもできる。具体的には、枯草菌の制限酵
素認識部位(SfiI等)に挿入したクロラムフェニコ
ール耐性遺伝子(cat)、ネオマイシン耐性遺伝子
(neo)、ブラストサイジンS 耐性遺伝子(bsr)
等は、陰性選択に使用される。
【0018】枯草菌ゲノム中に組み込まれた異種DNA
の一部または全部の形質転換により同時または逐次的な
置換により導入されるDNA断片の具体例としては、殺
虫性、耐旱魃性、耐高温性または耐低温性を付与するD
NA断片等が例示される。さらに具体的には、環境浄化
のための遺伝子群を枯草菌ゲノムに挿入し、次いで相同
的組換えにより該遺伝子群を環境浄化微生物に由来する
DNAまたはランダムな人工のDNAで置換してさらに
環境浄化に優れた遺伝子群を枯草菌ゲノムに導入するこ
とができる。環境浄化に優れた遺伝子群としては、環境
浄化のためのpH, 温度、重金属浄化または圧力に関
し、優れたものが挙げられる。
【0019】具体的には、このような環境浄化微生物と
して、耐塩素イオン硝化菌、有機塩素化合物分解微生
物、チトクロムP450に由来する遺伝子、芳香環水酸
化酵素ジオキシゲナーゼ遺伝子等を含有する微生物等が
挙げられる。さらに具体的には、有機塩素化合物分解酵
素を産生するシュードモナス・セパシア、シュードモナ
ス・プチダ等の細菌由来の同酵素遺伝子を枯草菌ゲノム
中に挿入し、次いで他の微生物由来のゲノムDNAの断
片で同酵素遺伝子を置換することにより、同酵素活性の
優れたDNA断片を含有する枯草菌を選択できる。一般
に環境浄化微生物の生育は良くないが、枯草菌は生育に
優れるため、優れた環境浄化に関与する遺伝子を導入し
た枯草菌は、環境浄化においてより効率的である。
【0020】また、クローニングした免疫グロブリン遺
伝子または免疫グロブリンの可変領域重鎖(VH)もし
くは軽鎖(VL)をコードするDNAを枯草菌ゲノムに
挿入し、次いで形質転換により該遺伝子のDNA再編成
で生じるDNA断片またはランダム合成DNAで置換し
て所望の免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリンの
重鎖もしくは軽鎖をコードするDNAを枯草菌ゲノムに
導入して重鎖および軽鎖のライブラリーを作成できる。
たとえば、ランダム合成DNAを用いて、フレームワー
ク領域にランダムな変異を含むヒト化抗体等のライブラ
リーを作成できる。このようにして作成したライブラリ
ーの中から抗体遺伝子産物の特異性が変化した抗体や、
マウスとヒトのモザイク抗体を作成できる。このように
して得られるゲノムライブラリーから所望の表現型を有
する枯草菌組換え体を選択できる。
【0021】さらに、動物または植物の高頻度反復配列
または中頻度反復配列を含有するDNA断片を枯草菌の
ゲノムに挿入し、次いで形質転換により動物または植物
のゲノムに由来する該反復配列を含有するDNA断片で
置換してゲノムDNAライブラリーを作成できる。この
ようにして得られるゲノムライブラリーから所望の表現
型を有する枯草菌組換え体を選択できる。
【0022】また、本発明の方法を応用して、動物また
は植物に由来する遺伝子DNAをゲノムDNAに挿入し
た枯草菌の形質転換により、該遺伝子DNAに類似した
遺伝子DNAを枯草菌ゲノムに導入し、所望の性質を有
する遺伝子DNAを選択し、さらに選択した所望の性質
を有する遺伝子DNAを動物または植物に導入して、ト
ランスジェニック動物または植物を作成できる。
【0023】本発明の方法に従い、上記のようにして得
られるゲノムライブラリー等から、所望の表現型を有す
る組換え体を選択するには、抗体との特異的結合、酵素
活性、ホルモン活性等の生理活性、リガンドあるいは受
容体との結合および抗原との親和性等のタンパク質−タ
ンパク質相互作用等が利用される。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、下記の実施例は本発明についての具体的認
識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は
下記の実施例により何ら制限されるものでない。
【0025】実施例1 以下、図1を参照して、枯草菌ゲノムに挿入したラムダ
DNAを、マウスゲノム由来のDNA断片を含有する異
種ラムダDNAを用いてモザイク化した例を示す。ま
ず、枯草菌168trpC2株のゲノム上のproB遺
伝子にラムダ( cI857 Sam) (Sanger
F、Coulson AR,Hong GF,Hill
DF、Petersen GB(1982) Nuc
leotide sequence of bacte
riophage lambdaDNA.J.Mol
Biol 162:729−773)を組み込んだ株B
EST2193株をレシピエント株とする(Itay
a、M.Toward abacterial gen
ome technology:Integratio
n of the Escherichia coli
prophagelambda genome in
to the Bacillus subtilis
168 chromosome. Mol.Gen.G
enet.、248,9−16(1995))。ラムダ
DNAと枯草菌ゲノムとの境界にはクロラムフェニコー
ル耐性遺伝子(Cm)とエリスロマイシン耐性遺伝子
(Em)を組み込んであり、両薬剤耐性株はラムダを持
っていることを示すマーカーである。
【0026】BEST2193のラムダにはラムダマッ
プSmaI(31,617bp)部位にcI−BSカセ
ットを挿入してあり、またゲノム中の3,516kbの
部位にPr−neoのカセットが組み込んである。これ
らの2つのカセットの役割はcIの組み込み場所を他の
ラムダで置き換える際の選択に使用することにある。そ
の原理はcIが他の塩基配列に置き換わってゲノムから
消失するとPrプロモータが働き始めて下流のneo
(ネオマイシン耐性遺伝子)が発現してネオマイシン耐
性株を与える。この作用により、cI−BSが挿入され
ている領域が別のDNAで置き換わった株をネオマイシ
ン耐性で選択できるシステムである(Itaya
M.,Effective cloning of u
nmarkedDNA fragments in t
he Bacillus subtilis 168
genome、Biosci.Biotechnol.
Biochem.、63,602−604(199
9))。
【0027】BEST2193に、ラムダクローンGS
A187−2を加えて形質転換させた。GSA187−
2は、EMBL3ベクター(東洋紡社製)由来で、cI
組み込み部位に相当する場所にはマウスゲノム由来の約
14kbの断片が入っている。EMBL3ベクターの両
アームはBEST2193中のラムダ( cI857Sa
m) とは制限酵素マップが変わっており完全な相同塩基
配列を有しない。しかしながら、この形質転換実験でG
SA187−2がcIと置き換わって挿入されている株
を多数得た(BEST2195)。BEST2195を
3株解析した結果、これらの株は、GSA187−2が
cI857 Samと部分的に置き換わったモザイクラ
ムダを含有することが確認された。
【0028】
【発明の効果】本発明による生物の形質転換を利用した
遺伝子組換え法により、細菌または細胞中の染色体の一
部を微妙に変化させて、優れた生物活性等を付与する、
所望の表現型を有する枯草菌組換え体を選択できる。ま
た、所望の表現型を付与する遺伝子を枯草菌から単離し
て、トランスジェニック動物あるいは植物を作成でき
る。その他、本発明の方法は、細菌または細胞のゲノム
DNAあるいはランダム合成DNA断片からのゲノムD
NAライブラリーの作成にも応用できる。
【0029】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、枯草菌ゲノムに挿入したラムダDNA
がモザイク化したゲノムの構築を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 5/10 C12N 5/00 A //(C12N 1/21 C12R 1:125) Fターム(参考) 2B030 AA07 AB03 AD05 AD20 CA06 CA17 CA19 CB03 4B024 AA07 AA08 AA17 AA20 CA03 CA04 DA01 DA02 DA07 EA03 FA02 FA13 GA11 GA27 HA20 4B065 AA19X AB01 AC02 AC03 AC10 BA02 CA47 CA53 CA55 CA56

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゲノムDNAに挿入された、所望の表現
    型を付与するモザイク組換えDNAを含有する枯草菌組
    換え体。
  2. 【請求項2】 モザイク組換えDNAが、殺虫性、耐旱
    魃性、耐高温性または耐低温性を付与するDNAを含有
    する請求項1に記載の枯草菌組換え体。
  3. 【請求項3】 モザイク組換えDNAが、免疫グロブリ
    ン遺伝子または免疫グロブリンの可変領域重鎖もしくは
    軽鎖をコードするDNAを含有する請求項1に記載の枯
    草菌組換え体。
  4. 【請求項4】 枯草菌のゲノムDNAに挿入した1 以上
    の異種DNAを形質転換により、1 以上のDNA断片で
    同時または逐次に置換して得られる、モザイク組換えD
    NAを含有する枯草菌組換え体から、所望の表現型を有
    する枯草菌組換え体を選択することからなる枯草菌組換
    え体の作成法。
  5. 【請求項5】 1以上のDNA断片が二本鎖のDNA断
    片である請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 二本鎖DNA断片が、ゲノムDNAであ
    る請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 二本鎖DNA断片が、ランダムな合成D
    NAである請求項5に記載の方法。
  8. 【請求項8】 1以上のDNA断片がコンピテントであ
    る枯草菌または形質転換能を有する枯草菌のゲノムに置
    換により導入される請求項4に記載の方法。
  9. 【請求項9】 1以上の異種DNAが、1以上のDNA
    断片で置換された組換え体の選択が、選択マーカが発現
    している細胞が生き残る選択条件での陽性選択である請
    求項4に記載の方法。
  10. 【請求項10】 選択マーカが、抗生物質耐性遺伝子で
    ある請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 選択マーカが、ネオマイシン耐性遺伝
    子である請求項10に記載の方法。
  12. 【請求項12】 所望の表現型を有する組換え体の選択
    が、抗体との結合、酵素活性、ホルモン活性、受容体と
    の結合または抗原との親和性に基づいて行われる請求項
    4に記載の方法。
  13. 【請求項13】 置換により導入されるDNA断片が、
    殺虫性、耐旱魃性、耐高温性または耐低温性を付与する
    DNAを含有する請求項4に記載の方法。
  14. 【請求項14】 環境浄化のための遺伝子群を枯草菌ゲ
    ノムに挿入し、次いで形質転換により該遺伝子群を環境
    浄化微生物に由来するDNAまたはランダムな合成DN
    Aで置換してさらに環境浄化に優れた遺伝子群を枯草菌
    ゲノムに導入する請求項4に記載の方法。
  15. 【請求項15】 さらに環境浄化に優れた遺伝子群が、
    環境浄化のためのpH, 温度、重金属浄化または圧力に
    関し、優れたものである請求項14に記載の方法。
  16. 【請求項16】 免疫グロブリン遺伝子または免疫グロ
    ブリンの可変領域重鎖もしくは軽鎖をコードするDNA
    を枯草菌ゲノムに挿入し、次いで形質転換により該遺伝
    子のDNA再編成で生じるDNA断片またはランダムな
    合成DNAで置換して所望の免疫グロブリン遺伝子また
    は免疫グロブリンの重鎖もしくは軽鎖をコードするDN
    Aを枯草菌ゲノムに導入する請求項4に記載の方法。
  17. 【請求項17】 動物または植物の高頻度反復配列また
    は中頻度反復配列を含有するDNA断片を枯草菌のゲノ
    ムに挿入し、次いで形質転換により動物または植物のゲ
    ノムに由来する該反復配列を含有するDNA断片で置換
    してゲノムDNAライブラリーを作成する方法。
  18. 【請求項18】 動物または植物に由来する遺伝子DN
    AをゲノムDNAに挿入した枯草菌の形質転換により、
    該遺伝子DNAに類似した遺伝子DNAを枯草菌ゲノム
    に導入し、次いで所望の性質を有する遺伝子DNAを選
    択し、さらに所望の性質を有する遺伝子DNAを動物ま
    たは植物に導入して得られるトランスジェニック動物ま
    たは植物。
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