JP2000309543A - 抗糖尿病剤 - Google Patents

抗糖尿病剤

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JP2000309543A
JP2000309543A JP11121067A JP12106799A JP2000309543A JP 2000309543 A JP2000309543 A JP 2000309543A JP 11121067 A JP11121067 A JP 11121067A JP 12106799 A JP12106799 A JP 12106799A JP 2000309543 A JP2000309543 A JP 2000309543A
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glutathione
reduced
cells
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Junji Hamuro
淳爾 羽室
Yukie Murata
幸恵 村田
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Ajinomoto Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ヒトの免疫性疾患の改善、治療、予防のための
経口摂取が可能で、マクロファージや探求等の酸化、還
元状態を制御し得る斬新な方法により、ヒトの糖尿病の
治療、改善、予防を目的とした抗糖尿病剤、特に医薬品
(輸液製剤、経口剤等)や飲食品の形態でも使用可能な
抗糖尿病剤の開発が期待される。 【解決手段】マクロファージ細胞内の酸化型及び/又は
還元型グルタチオン量を測定し、酸化型と還元型のグル
タチオンの量比を検定することにより、マクロファージ
をそれぞれ異なった機能を有する酸化型マクロファージ
と還元型マクロファージとに分類し、種々の免疫性疾患
の病態や程度をこの視点で解析し、その結果に基づき、
マクロファージの還元型グルタチオン量を変化させる作
用を有する物質を含有せしめることにより上記課題を解
決するヒトの糖尿病の治療、改善、予防を目的とした経
口摂取を可能とする抗糖尿病剤を提供することができ、
医薬品や飲食品、栄養剤、輸液製剤の形態でも使用可能
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規抗糖尿病剤、詳し
くはマクロファージ(以下、Mφと略することもあ
る。)や、単球等の機能の斬新な制御作用を含み、特
に、ヒトのインスリン依存性並びに非依存性糖尿病の治
療、病態改善、予防を目的とした経口摂取可能な抗糖尿
病剤、及びこれを含む医薬品、並びに食品(医療用食
品、健康食品、更には特定保健食品等を含む。)、栄養
剤及び輸液製剤等の形態にある抗糖尿病剤に関する。
【0002】
【従来の技術】免疫系は、ウイルス、細菌等の外部から
の感染、又は自己由来細胞が異常を来たすことで生成す
る細胞(癌細胞等)による生体侵襲から自己を防衛する
ためのシステムである。しかしながら、この免疫系が異
常を来たし、過剰に働いたり、自己成分を排除する方向
に免疫系が働いたりすると共に、逆に、排除機能が不全
状態に陥ることがある。このような状態を惹起する疾患
は総称して免疫性疾患と呼ばれる。例えばアトピー性皮
膚炎、花粉症、喘息、ザルコイドーシス等の急性並びに
慢性炎症性疾患、アレルギー性疾患、慢性関節リウマ
チ、糖尿病(IDDM)、SLE、慢性疲労性症候群
(CFS)等の自己免疫疾患や、肝炎、肝硬変、潰瘍性大
腸炎、クローン病等炎症性腸疾患(IBD)、癌悪液質
状態等数多くの疾患が含まれる。これら免疫性疾患の原
因は様々であるが、サイトカイン、炎症性メディエータ
ーの局所での産生を介して、特定の細胞の増殖、分化、
壊死を伴う炎症を引き起こすことを発端として全身性の
免疫不全、免疫異常、機能不全状態に至る。
【0003】免疫を担当する細胞としてはTリンパ球、
Bリンパ球がよく知られ、各々細胞性免疫、液性免疫の
担い手として多彩な機能を発揮する。一方、マクロファ
ージ/単球等は細胞性免疫及び液性免疫に深く関与する
細胞で、アレルギー、リウマチ等の免疫性疾患、癌、細
菌感染等の非自己である異物排除に深く関わっている。
マクロファージ/単球等の機能は、分泌機能、抗原呈示
を中心とした免疫調節機能、異物、老廃物の処理、貪食
機能、標的細胞の障害処理機能の4種に大別され、TN
F、IL−12、IL−1、IL−6、TGFβ、IL
−8、IL−18等のサイトカイン、ネオプテリン(N
PT)、ジヒドロキシエピアンドロステン(DHEA)
等のホルモン様分子、PGE2やLTB4等のアラキド
ン酸代謝産物、C5a,C3等の補体系分子、活性酸
素、活性窒素等、炎症像を規定する種々の分子を産生す
ることが知られている。これらの多彩な機能が単一のマ
クロファージ/単球等によって担われているのか、機能
を異にするマクロファージ/単球等集団によって担われ
ているのかは不明であり、リンパ球がその細胞表面マー
カーによって分類されその機能との対応が明確になって
いるのに対し、マクロファージ/単球等の機能の多様性
と細胞亜集団の対応については全く不明である。このた
め、上述のような炎症性、アレルギー性、免疫性疾患の
発症と病態進展に、マクロファージ/単球等は極めて重
要な役割を有しているにも拘らず、マクロファージ/単
球等の細胞亜集団の存在を想定しての機能分類のヒトの
疾患の診断、治療、病態改善、予防への応用は全く為さ
れておらず、想定されたことすらなかった。
【0004】近年、アレルギー疾患、慢性関節リウマチ
等の自己免疫性疾患や悪性腫瘍患者において、末梢血中
のヘルパーT細胞亜集団のタイプの片寄りが疾患と対応
づけられつつあり、Tリンパ球中の亜集団であるヘルパ
ーTリンパ球が更に2つの亜集団Th1とTh2に分類
され、その2種の存在比が生体の免疫機能の重要な指標
になることが立証されつつある。本指標を基に疾患の病
態を診断したり、その存在比を改善することにより、よ
り適切な治療法を樹立しようとの試みがなされつつあ
る。即ち、B細胞からのIgE産生を引き起こすTh2
がTh1より多い場合(Th1<Th2)、アレルギー
性疾患が悪化することが分かってきており、Th1/T
h2を測定することにより、免疫の状態を検定したり、
Th1>Th2にすることによりアレルギーを抑制しよ
うとする試みがなされつつある。逆に、Th1が支配的
な状況で引き起こされる疾患の存在も慢性関節リウマチ
や慢性期の炎症を始め、次々に指摘されつつある。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】生物材料を用いてT
h1とTh2のバランスを測定し、Tリンパ球を標的に
この2つの亜集団の機能を調節しようとしても、局所慢
性炎症やアレルギー性疾患の検定、診断に利用すること
には、現在のところ成功していない。最近、Th1病や
Th2病という言葉も用いられるが、必ずしも2者に明
確に区別できないのが実態である。
【0006】Th1/Th2の存在比は、リンパ球亜集
団の指標でしかなく、リンパ球亜集団の生体内での動態
は本発明で取り扱うマクロファージや樹状細胞、クッパ
ー細胞を始めとするアクセソリー細胞と呼ばれる細胞群
の機能と実際には複雑に関わっているため、Th1/T
h2の存在比だけで疾患の病態を適切に診断し、その情
報を基に治療することは困難である。後述するが、マク
ロファージ/単球等の機能状態によってTh1/Th2
のバランスは制御されているのである。治療のためにT
h1>Th2に傾斜させることを意図しても、それだけ
では複雑なサイトカインネットワークにおいては効果が
得難く、新たな診断、治療のための指標が待ち望まれて
いる。
【0007】炎症反応に深く関与しているマクロファー
ジにおいて、酸化ストレス、サイトカイン刺激、ウイル
ス、細菌感染等の環境因子により細胞の機能が変化する
ことが判明しているが、その機能とマクロファージの細
胞亜集団分類の対応については全く不明である。それら
機能、分類において新たな知見が必要であり、それらの
知見が得られることにより、飛躍的に有用な新たな治療
方法の開発に繋がる。以上の状況下に、免疫を調整する
優れた薬剤、即ち免疫調整剤の開発が望まれ、本発明者
らはすでにこの考えに沿って新規免疫調整剤を開発し
た。(特願平9−303426号、特願平10−308
300号)。本発明は、これらのマクロファージの機
能、分類において得た新たな知見をもとに、特に糖尿病
の発生を抑制し、糖尿病の病態を改善する新規な抗糖尿
病剤を開発することをその課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題
解決に向けて鋭意検討した結果、次の知見を得た。即
ち、炎症の遷延化作用の強いマクロファージ(単球、ク
ッパー細胞及び樹状細胞等を含む)と、免疫調整性のマ
クロファージとの区別を、マクロファージのレドックス
状態(ポテンシャル)の相違から試み、糖尿病自然発症
動物において病態の進展とともにマクロファージのレド
ックス状態が変化することを見出し、課題解決を可能と
した。マクロファージのレドックス状態の指標としては
マクロファージ細胞内の還元型グルタチオン(GSH)
含量を採用する。
【0009】グルタチオンは、ほ乳類のあらゆる細胞に
存在し、内因性の抗酸化物質としてよく知られ、細胞内
においてラジカルや過酸化物の除去、プロスタグランジ
ン等のエイコサノイドの代謝、生体異物の解毒、アミノ
酸輸送等多様な機能を有しているトリペプチドである。
還元型(GSH)と酸化型(GSSG)が存在し、両者
間で共役サイクルを形成する。通常の細胞では、GSH
の濃度は還元状態の方が圧倒的に多く、酸化ストレス、
特にH22に対して防御的に作用する。
【0010】本発明者等は、マクロファージ中の還元型
GSH含量を測定するとともに、GSH含量を異にする
マクロファージの免疫機能に及ぼす効果に大きな差のあ
ること、本測定法で生体の免疫能を検定できること、そ
の酸化還元状態を経口投与可能な低分子物質で人為的に
調整できること、及び本法が疾患の治療に広範に応用で
きること、並びに食品として活用できる可能性を見出し
た(特願平9−303426号、特願平10−3083
00号)。本概念に基づき、糖尿病自然発症マウスのマ
クロファージのレドックス状態について鋭意研究を進め
た結果、本発明を完成するに至った.
【0011】図1は、本願と同一発明者等による先発明
により見出された知見に基づき、マクロファージ又は単
球、クッパー細胞及び樹状細胞等(本発明ではこれらを
併せてマクロファージと称する)の機能の相違、並び
に、Th1及びTh2バランスに及ぼす効果、更にはマ
クロファージの機能の相違によって引き起こされる免疫
抑制、悪液質状態、癌細胞の悪性化誘導の機序、局所炎
症等との関係の仮説模式図を示したもので、例えば、担
癌進行に従い、局所のTh1/Th2バランスが崩れ、
液性免疫に傾き、サイトカインレセプター複合体構成と
機能が変化し、GSH含量の少ない酸化型マクロファー
ジが増加し、活性酸素や、PGE2、IL−6、IL−
10、IL−8等の炎症伝達因子の産生が高まり、全身
性の免疫抑制、悪液質状態となる。
【0012】本発明者等は上記知見に基づき、更に研究
を重ねた結果、炎症反応に重要な役割を果たしているマ
クロファージ細胞中の酸化型グルタチオンと還元型グル
タチオンの含量を検定することにより、不均一なマクロ
ファージ集団が2つのタイプ即ち酸化型マクロファージ
と還元型マクロファージとに分類することができ、酸化
型マクロファージが免疫疾患に伴う局所慢性炎症やアレ
ルギー反応を引き起こし、液性免疫と細胞性免疫のバラ
ンスに関与するTh1/Th2バランスはマクロファー
ジの酸化/還元状態によって制御されていること、当該
マクロファージの酸化還元状態が免疫性疾患の病態に重
要な役割を果たしており当該酸化還元状態を検定し、そ
の状態を人為的に制御、修飾することにより当該疾患の
診断及び治療に役立つこと、しかもその制御が経口摂取
可能な低分子物質によって簡便に行えることを見出し
た。
【0013】本発明での酸化型マクロファージ及び還元
型マクロファージの定義は、還元型グルタチオン(GS
H)に特異的な化学試薬モノクロロバイメイン(MON
OCHLOROBIMANE)と反応させることで細胞
内GSH量を定量し、無刺激のマクロファージに比較し
てGSH含量が増加しているものを還元型マクロファー
ジ、逆に含量の低下しているものを酸化型マクロファー
ジとするものである。更に、経口摂取可能な低分子物質
をマクロファージと2〜24時間接触させることで、G
SH含量が2nmoles/5×105マクロファージ
細胞以上のものを還元型マクロファージ(又は単球
等)、0.1nmoles/5×105マクロファージ
細胞以下のものを酸化型マクロファージとすることが好
ましい。或いは、無刺激のマクロファージのGSH含量
に比較してGSH量が2倍以上になっているのを還元型
マクロファージ、1/5以下になっているものを酸化型
マクロファージとすることもできる。
【0014】現在、Th1/Th2バランスはIL−
6、IL−10若しくはIL−4と、IL−12が生体
内でどのような割合で産生されるかによって規定される
とされている。前者によって液性免疫に関与するTh2
が、IL−12によってTh1が誘導されることが既に
知られている。しかしながら、IL−6、IL―10、I
L−12がマクロファージから産生されることは判明し
ているが、同一のマクロファージ細胞がIL−6もIL
−12もすべてIL−10産生すると仮定すると、Th
1誘導にもTh2誘導にも関与する1種のマクロファー
ジが存在することとなり、生体の免疫応答を考えるに当
り大きな矛盾にぶつかる。
【0015】本発明者等はGSH含量の高い還元型マク
ロファージによってのみIL−12が産生されTh1誘
導に働き、酸化型マクロファージによってはIL−6の
産生が亢進し、Th2が誘導されることを見出した。ま
た、Th1サイトカインの代表であるIFNγが産生さ
れてもマクロファージが酸化型に傾斜していると、IF
Nγの作用でTh2を誘導するIL−6が大量に産生さ
れることも見出された。逆に、還元型マクロファージが
存在するとTh1サイトカインの代表であるIFNγに
よってマクロファージの還元型形質が一層増強されるこ
とも判明した。酸化型マクロファージが誘導されている
ところにTh2サイトカインの代表であるIL−4が作
用すると酸化型マクロファージの形質が更に増強され
る。これらの知見は液性免疫と細胞性免疫という対局に
ある免疫応答がマクロファージの酸化還元状態によって
一義的に規定されていることを示すもので、免疫学の根
幹に関わる重要な知見である(図2参照)。この知見に
より免疫系疾患の病態診断と治療法について、従来の混
沌とした免疫性疾患治療法に代わる頗る有用で独創的な
発明を既に完成しており、この発明に基づき、糖尿病自
然発症動物について鋭意検討した結果、新しく本発明を
完成するに至った。
【0016】即ち本発明は、マクロファージ細胞内の還
元型グルタチオン量を変化させる作用を有する物質を含
有することを特徴とする抗糖尿病剤である。更に本発明
には、マクロファージ細胞内の還元型グルタチオン量を
増加させることにより炎症性細胞の膵島浸潤を抑制する
作用、又はマクロファージ細胞内の還元型グルタチオン
量を減少させることによりIL−12産生、NO産生、
IFNγ産生を抑制し、遅延型過敏症反応を抑制する作
用を有する物質を含有することに特徴を有する抗糖尿病
剤も含まれる。本発明においてはマクロファージには単
球、クッパー細胞及び樹状細胞等も含められる。本発明
者等は前記知見に基づき更に研究を糖尿病に特化し、マ
クロファージ細胞内の還元型グルタチオン量を減少させ
たり、増加させる物質を探索し、その効果を発揮する物
質を見出し、ヒトの糖尿病に類似する病態を自然発症す
る動物モデルを作製し、医薬品としての抗糖尿病薬、医
療用食品、健康食品、特定保健食品等に用いる糖尿病治
療、予防、病態改善効果を有する食品例えば栄養剤及び
輸液製剤の開発に研究を深化発展させ、その物質として
下記の化合物を用いて、試験管内の免疫活性の抑制効
果、動物投与下における免疫抑制効果を広く検定し、更
には自発的に糖尿病を発症するNOD,db/dbマウ
スを用いて候補物質の薬効を検討し、マクロファージ及
び単球等の細胞内の還元型グルタチオン量を増加させる
及び低下させる物質としての下記に示す化合物が糖尿病
の治療、予防、病態改善に有効であることを見出した。
【0017】本発明の抗糖尿病剤に含まれる物質として
は、一つにマクロファージの細胞内の還元型グルタチオ
ン量を増加させることによりインターロイキン12(I
L−12)の産生を惹起し、炎症性細胞の膵島浸潤を抑
制するものが好ましく、例えばγ−グルタミルシステイ
ン、γ−グルタミルシステインジメチルエステル及びN
−アセチルシステインニトロキシブチルエステル等のグ
ルタチオンの前駆体、グルタチオンモノエステル、グル
タチオンニトロキシブチルエステル及びグルタチオンジ
エステル等のグルタチオン誘導体、リポ酸(LIPOI
C ACID)、グリオトキシン及びその誘導体等の、
分子内にメルカプト基(SH基)を2個以上含有する化
合物、同化合物を生成する前駆体、並びにオルテン(O
RTENE)等から選択される低分子物質がより好まし
く、経口投与又は経皮投与が可能である物質が特に好ま
しい。フラボノイド及びその誘導体等の抗酸化物質のう
ち、マクロファージと接触させることでGSH含量を上
げ、IL−12産生を上げ、IL−6の産生を下げるも
のを用いることも可能である。また、これらと併用され
る物質として、例えばβ(1−3)グルカン、サイトカ
イン等の高分子物質は、静脈内投与、DDS(ドラッグ
デリバリーシステム)等を用いての投与において好まし
い。当該サイトカインとしては、例えばIL−2、IL
−12、IL−18、IFNγ等のサイトカインが好ま
しく、細胞性免疫を増強したい場合にはIL−2及び/
又はIFNγ(インターフェロンγ)が特に好ましい。
これらの物質は1又は2以上含有することが可能であ
り、低分子の経口可能な抗糖尿病剤と高分子の静脈投与
に適した免疫調製剤を併用することでより高い効果が期
待される。
【0018】また、本発明には、マクロファージ細胞内
の還元型グルタチオン量を減少させ、遅延型過敏症反応
を抑制し、IL−12,IFNγ産生を抑制する作用を
有する化合物も含まれる。好ましくは、このような作用
を有する一群の化合物としては分子内にジスルフィド結
合(−S−S−)を有する化合物がよい。本発明にはな
かんずくジスルフィド結合を有する化合物がシスチン誘
導体であり、下記構造式(1)で示されるものも含まれ
る。
【0019】
【化2】
【0020】但し、上記式中、R1及びR2はそれぞれ独
立していて、置換基を有していてもよいアルキル基、好
ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜12のア
ルキル基である。特に好ましくは当該置換基がニトロキ
シ基である。更に好ましくは当該置換基を有していても
よいアルキル基がニトロキシブチル基である。R3及び
4はそれぞれ独立していて、アシル基及びペプチジル
基の何れかを、それぞれ表す。尚、ペプチジル基はアミ
ノ酸残基又は複数のアミノ酸で構成されるペプチド残基
でそのカルボキシル基を介して結合する残基である。
又、ニトロキシ基とは、「−ONO2」を意味する。
【0021】マクロファージ細胞内の還元型グルタチオ
ン量を増加させ、IL−12産生を増加させることによ
り炎症性細胞の膵島浸潤を抑制すること、若しくは、並
びにマクロファージ細胞内の還元型グルタチオン量を減
少させることによりIL−12産生、NO産生、IFN
γ産生を抑制する作用を有する物質を実際の患者に適用
するにあたっては、患者のマクロファージのレドックス
状態を診断することで適切に用いることができる。
【0022】細胞内の還元型グルタチオン量に差のある
酸化型マクロファージ及び還元型マクロファージの2種
マクロファージの何れか一方を選択的に除去し得る物質
を含有することを特徴とする抗糖尿病剤も本発明に含ま
れる。当該物質としては、例えば、細胞毒性を有するD
NAアルキル化剤をグルタチオンに共役させた物質、酸
化型又は還元型マクロファージ特異的抗体とマクロファ
ージに細胞毒性を有する低分子化合物並びにマクロファ
ージに取り込まれた後に細胞毒性を示す物質とを直接又
はリンカーを介して結合させた物質等がある。当該アル
キル化剤としては、例えばサイクロフォスファミド、ニ
ムスチン(ACNU)、マイトマイシンC、メルファラ
ン等がある。アルキル化剤とグルタチオンとを直接又は
リンカーを介して共有結合させることにより、グルタチ
オンSートランスフェレース(グルタチオンS−トラン
スフェラーゼ)酵素が活性化されている酸化型マクロフ
ァージでは、当該酵素の働きによりDNAアルキル化剤
が遊離し、酸化型マクロファージを特異的に殺傷するこ
とにより除去することができる。また、インビトロで
は、殺細胞性が無いものの酸化型又は還元型の何れかの
マクロファージ中で増大している酵素の作用により、殺
細胞性を示すようになる物質をプロドラッグとして用い
ることもできる。
【0023】更に、本発明には、前記抗糖尿病薬として
の医薬品を含むが、前記、治療、予防、病態改善効果を
含有する経口剤の形態にあるもの、食品(医療用食品、
健康食品、特定保健食品等を含む。)、栄養剤又は輸液
製剤の形態にあるものも含まれる。食品としては、通常
の食品や、歯磨きやチューインガム等口の中に運ばれる
ものも含まれ、特に健康志向の食品に含有されるのが好
ましい。また、食品に添加する添加剤の形で用いられて
もよい。栄養剤としては、例えばビタミン剤、カルシウ
ム剤等の何れの栄養剤でもよい。輸液製剤の形態として
は、例えば高カロリー輸液の形態、生理食塩水により希
釈された形態、血液製剤等の通常用いられる輸液製剤に
含有された形態を選択することができる。
【0024】更に詳細に述べると、本発明は好ましくは
次の通りである。
【0025】ヒトから分離・採取した体液/細胞試料を
用いて、マクロファージ細胞内の酸化型及び/又は還元
型グルタチオン量を検定することにより、マクロファー
ジをそれぞれ異なった機能を有する酸化型マクロファー
ジと還元型マクロファージとに分類し、その存在割合を
経口摂取できる物質で人為的に制御したり、片方の(酸
化型若しくは還元型の)マクロファージを人為的に除去
することで糖尿病患者治療に有用な薬剤や病態改善、予
防に役に立つ食品、栄養剤、輸液を提供することであ
る。ヒトからの分離・採取した体液/細胞試料とは、例
えば末梢血や腹腔、胸腔、各種臓器より分離した細胞で
ある。
【0026】グルタチオンの測定方法としては、直接的
に酵素リサイクリング法で生化学的に酸化型又は還元型
グルタチオン含量を測定する(活性酵素実験プロトコー
ル(細胞工学別冊)、秀潤社、頁84-88,1994年、ANALYT
ICAL CHEMISTRY, VOL. 106,PP207-212, 1980; CELLULAR
IMMUNOLOGY, VOL. 164, PP73-80, 1995等参照。)のみ
ならず、間接的な測定、例えば酸化型又は還元型マクロ
ファージに対する特異的なモノクローナル抗体又はポリ
クローナル抗体を用いて測定したり、モノクロロバイメ
インのようにGSHに特異的に反応し、錯体を形成し、
レーザー光励起により蛍光を発するような試薬を用いれ
ばよい。更には高速液体クロマトグラフイー(HPLC)、
ガスクロマトグラフイーを用いることも可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を更に詳しく
説明する。
【0028】本発明におけるグルタチオンとは、別名5
−L−グルタミル−L−システイニルグリシンであり、
生体内に最も多く存在する、メルカプト基(SH基)を
有する化合物で、一般にGSHと記述される。グルタチ
オンは、その分子の酸化状態により還元型グルタチオン
と酸化型グルタチオンに分類される。還元型グルタチオ
ンとは、前記のグルタチオン(GSH)のことであり、
酸化型グルタチオンは、別名グルタチオンジスルフィド
と呼ばれるもので、GSSGと記述される。
【0029】本発明におけるマクロファージには、前述
の通り単球も含まれる。同時に、樹状細胞やクッパー細
胞と呼ばれるマクロファージの類縁細胞も含まれる。マ
クロファージは、様々なサイトカインや炎症性メディエ
ーター等の情報伝達物質をその細胞から遊離、放出する
ことが知られているが、その活性化状態、分化状態によ
り、放出されるか否か、また、放出される量が異なる。
本発明によれば、例えばマクロファージ細胞内の酸化型
グルタチオンと還元型グルタチオンとの量に着目し、酸
化型マクロファージと還元型マクロファージに分類後、
生体の免疫状態を確認して、本発明の抗糖尿病剤等によ
り、これらマクロファージの酸化還元状態のバランスを
調整することにより、生体内の免疫状態や肝機能、糖代
謝を改善し、インスリン依存性、非依存性糖尿病疾患の
治療、病態改善や予防に役立てられる。
【0030】還元型マクロファージでは、細胞内の還元
型グルタチオンが酸化型マクロファージより相対的に多
いのに対して、酸化型マクロファージでは、還元型グル
タチオンが還元型マクロファージより相対的に少ない。
また、還元型マクロファージと酸化型マクロファージで
は、還元型GSH含量の違いのために転写制御因子の活
性化に違いが生じ、サイトカインや炎症伝達因子の遺伝
子発現に違いが起こり、産生される炎症性サイトカイン
や炎症性メディエーターの種類や量が変化し、炎症の質
が変化する。
【0031】酸化型マクロファージでは、IL−6、I
L−1、IL−8、IL−10、TNF、過酸化水素、
スーパーオキシド、PGE2等の炎症性サイトカイン及
びメディエータが産生されるのに対して、還元型マクロ
ファージでは、一酸化窒素(NO)、IL−12、LT
B4等が産生される。更に、酸化型マクロファージ及び
還元型マクロファージは、刺激等により変換する。例え
ば、炎症や敗血症性ショックを誘導するLPSやPMA
や、IL−4、TGFβ等のサイトカインにより人為的
に刺激することにより、還元型マクロファージは酸化型
に変換され、逆に、IFNγ、IL−2、抗腫瘍性多糖
であるレンチナン(LNT)等のβ(1−3)グルカン
やリポ酸等の抗酸化剤を添加することにより、酸化型マ
クロファージを還元型に変換することができる。このこ
とにより、糖尿病疾患の治療に応用することができる。
【0032】インスリン依存性糖尿病病態動物において
は、早期に炎症性細胞の膵島浸潤が起こり、これら炎症
性細胞の産生するメデイエーターの作用により抗原特異
的な免疫応答なかんずく細胞性免疫が活性化され後期に
活性化された細胞性免疫を介して膵島のランゲルハンス
島が破壊されてインスリンの分泌不全に至り、糖尿病を
発症すると推定されている。発症にいたるまでの病態変
化に伴い、酸化型マクロファージ及び還元型マクロファ
ージの含まれる量が異なることが本発明において初めて
見出された。
【0033】他の疾患においても病態によって酸化型マ
クロファージ及び還元型マクロファージの含まれる量が
異なることを本発明者らは見出している。消化管炎症疾
患モデル動物(肝炎、クローン病、潰瘍性大腸炎)より
採取したマクロファージ中の還元型グルタチオン量は、
正常動物より相対的に減少していることが、Adher
ent cell analyzing system
(ACAS)を用いる画像解析や酵素リサイクリング法
を用いる生化学的定量により判明した。これに対して、
糖尿病を自然発症するNODマウスにおいてはマクロフ
ァージ等の炎症性細胞の膵島浸潤時期には腹腔内マクロ
ファージ中の還元型グルタチオン量は、正常動物より相
対的に減少しており(酸化型マクロフアージ優位)、ラ
ンゲルハンス島破壊による糖尿病発症時期には、逆に腹
腔内マクロファージ中の還元型グルタチオン量は、正常
動物より相対的に増加して(還元型マクロフアージ優
位)いることが本発明において初めて判明した.このこ
とはインスリン依存性の糖尿病においてはマクロファー
ジのレドックス機能は酸化型への傾斜から、還元型への
傾斜へと病態の進展とともにスイッチのおこることを示
す。この知見は世界で始めてのものであり、免疫性疾患
としてのインスリン依存性糖尿病の治療、予防、病態改
善の手段としてマクロファージ中の還元型グルタチオン
量を修飾することが実際に有益であることを初めて見出
したものである。なかんずく、病態の変化に対応して適
切な治療手段を提供することをはじめて可能とした。本
発明になるこの知見を無視して治療を行うことは逆に病
態を悪化させる危険性をも示唆する重要な知見である。
【0034】本発明に従えば、好ましくはマクロファー
ジの細胞内の還元型グルタチオン量を上記方法で測定し
た後に、当該マクロファージの細胞内の還元型グルタチ
オン量を変化させる作用を有する低分子化合物で経口摂
取でも活性が保持されるものを医薬品として通常の製剤
化を行い、病態をモニターしつつ連日若しくは一定の期
間をあけ患者に摂取させればよい。
【0035】本発明での酸化型マクロファージ及び還元
型マクロファージの定義は、還元型グルタチオン(GS
H)に特異的な化学試薬モノクロロバイメインと反応さ
せることで細胞内GSH量を定量し、無刺激のマクロフ
ァージに比較してGSH含量が増加しているものを還元
型マクロファージ、逆に含量の低下しているものを酸化
型マクロファージとするものである。更に、経口摂取可
能な低分子物質をマクロファージと2〜24時間接触さ
せることで、GSH含量が2nmoles/5×105
マクロファージ細胞以上のものを還元型マクロファー
ジ、0.1nmoles/5×105になっているのを
還元型マクロファージ、1/5以下になっているものを
酸化型マクロファージとすることもできる。
【0036】マクロファージの細胞内の還元型グルタチ
オン量を増加させる作用を有する物質としては、マクロ
ファージの細胞内の還元型グルタチオン量を増加させる
ことによりインターロイキン12の産生を惹起し、炎症
性細胞の膵島浸潤を抑制するものが好ましく、例えば、
γ−グルタミルシステイン、γ−グルタミルシステイン
ジメチルエステル、N−アセチルシステインニトロキシ
ブチルエステル等のグルタチオンの前駆体、グルタチオ
ンモノエステル、グルタチオンニトロキシブチルエステ
ル及びグルタチオンジエステル等のグルタチオン誘導
体、リポ酸(LIPOIC ACID)、グリオトキシ
ン及びその誘導体等の、当該分子内にメルカプト基を2
個以上含有する化合物、同化合物を生成する前駆体、並
びにオルテン(ORTENE)から選択される低分子物
質がより好ましく、経口投与又は経皮投与が可能であ
る。フラボノイド及びその誘導体等の抗酸化物質のう
ち、マクロファージと接触させることでGSH含量を上
げ、IL−12産生を上げ、IL−6の産生を下げるも
のを用いることも可能である。
【0037】マクロファージ内のGSH量を減少させる
ものとしては、好ましくは分子内にジスルフィド結合を
有する化合物で、マクロファージ細胞内の還元型グルタ
チオン量を減少させ、遅延型過敏症反応を抑制しIL−
12、IFNγ産生を抑制する作用を有する化合物が用
いられる。グルタチオン誘導体もこの中に含まれる。な
かんずくジスルフィド結合を有する化合物が好ましくは
シスチン誘導体であり、更に好ましくは下記構造式
(1)で示されるものを用いることができる。
【0038】
【化3】
【0039】但し、上記式中、R1及びR2はそれぞれ独
立していて、置換基を有していてもよいアルキル基、R
3及びR4はそれぞれ独立していて、アシル基及びペプチ
ジル基の何れかを、それぞれ表す。
【0040】以下に、特に本発明の抗糖尿病剤としてシ
スチン誘導体を使用する場合について説明する。還元型
グルタチオン量を減少させる作用を有する物質について
は、好ましくは前記の通りジスルフィド結合を含有する
化合物群より選択され、IL−12産生、NO産生、I
FNγ産生を抑制し、遅延型過敏症反応を抑制する作用
を有する物質を本発明においては用いることができるの
であり、前記構造式(1)に示され、マクロファージ細
胞内の還元型グルタチオン量を減少させ、遅延型過敏症
反応を抑制し、IL−12、IFNγ、NO産生を抑制
する作用を有する化合物であれば全て本発明に使用する
シスチン誘導体に含まれる。
【0041】この化合物の骨子としては、ジスルフイド
結合によりマクロファージ細胞内の還元型グルタチオン
が酸化されて酸化型マクロファージに誘導されるもので
あれば、式(1)において、R1からR4を表す置換基に
は、広範な範囲のものが許容される。好ましくはR1
びR2はそれぞれ独立していて、置換基を有していても
よい炭素数1−12のアルキル基、更に好ましくはニト
ロキシブチル基等の置換基を有するアルキル基を、R3
及びR4はそれぞれ独立していて、好ましくは炭素数1
−12のアシル基、及びペプチジル基の何れかを、それ
ぞれ表す。
【0042】シスチン誘導体として、N,N’−ジアセ
チルシスチン((NAC)2)、N,N’−ジプロピルシスチ
ン((NPC)2)、N,N’−ジアセチルシスチンジメチル
エステル((NAC-OMe)2)、N,N’−ジアセチルシスチ
ンジイソプロピルエステル((NAC-OiPr)2)、N,N’
−ジ−L−アラニルシスチンジメチルエステル((NAlaC
-OMe)2)、これらのニトロキシブチルエステル体等が好
ましい。
【0043】マクロファージ(又は単球等)を96穴マ
イクロプレートで、5×105細胞/200μl/穴宛
培養し、被験物質を0.01μM〜5mM添加し、 3
7℃で5%CO2インキュベーターで培養し、2〜24
時間後に対照群に対し 還元型GSH量を増加又は減少
させるものならば何れも用いることができる。2nmo
les/5×105マクロファージ細胞以上に増加させ
る物質又は0.1nmoles/5×105マクロファ
ージ細胞以下に減少させることもできるものが望まし
い。これらの薬剤は単独若しくはそれらの混合物として
用いることができる。その効果は摂取若しくは投与後炎
症局所や末梢血から単核球を採取し、前述の方法で細胞
内還元型グルタチオン量の治療前に対する変化を検定す
ることで判定できる。このことで抗糖尿病剤としての有
用性は明確に判定され、疾患に対して効果を有する。
【0044】対象として用いることのできる疾患として
は、インスリン依存性、非依存性糖尿病やそのハイリス
クの健康状態を挙げることができる。
【0045】本発明で取扱う抗糖尿病剤は実際の医療現
場では単独で投与することもできるが、本発明に含まれ
る経口摂取可能な抗糖尿病剤同士、若しくは、経口摂取
不可能であるが異なる作用機転でマクロファージの細胞
内の還元型グルタチオン量を変化させる他の免疫調整
剤、例えばレンチナンを代表とするβ(1−3)グルカ
ンや、インターロイキン2(IL−2)を代表とするサ
イトカイン等生体外由来並びに生体内由来の物質と混合
若しくは併用することもできる。特に、細胞性免疫を増
強したい場合にはIL−2と併用したり、インターフエ
ロンγ(IFNγ)と併用すると還元型マクロファージ
より大量にインターロイキン12(IL−12)が生体
内で産生され本発明の効果を一層増強する。逆に、細胞
性免疫を減弱することで治療効果を意図する場合にはイ
ンターロイキン4(IL−4)やTGFβ(形質転換増
殖因子β)と併用するとIL−12の産生が減弱し効果
を増強する。これらサイトカインはそれ自体がマクロフ
ァージの細胞内の還元型グルタチオン量を変化させるこ
とも本発明者らにより見出され、本発明の有用性とその
範囲を補強するものである。生体外由来の物質としては
抗体以外にもIL−12の産生や機能を阻害する物質で
あれば併用することにより更なる相乗効果が期待され
る。
【0046】細胞内の還元型グルタチオン量に差のあ
る、即ち、還元型GSH含量の低いマクロファージ(酸
化型マクロファージ)、若しくは高いマクロファージ
(還元型マクロファージ)の何れか一方を選択的に除去
する物質を使用することも本発明に含まれる。その際に
用いられる物質は低分子化合物、高分子化合物の何れで
もよく、中でも抗体及びその誘導体は効率的である。
【0047】既に述べた通り、マクロファージ/単球等
の機能の多様性と細胞亜集団の対応については今まで全
く不明であった。このため、炎症性、アレルギー性、免
疫性疾患の発症と病態進展に、マクロファージ/単球等
は極めて重要な役割を有しているにも拘らず、マクロフ
ァージ/単球等細胞亜集団の存在を想定しての機能分類
のヒトの疾患の治療、改善、予防への応用は全く為され
ておらず、想定されたことすら無かった。本発明完成の
前段階として、マクロファージの還元型GSH含量を測
定するとともに、世界で始めて、GSH含量を異にする
マクロファージの免疫機能に及ぼす効果に大きな差のあ
ることを見出し、炎症反応に重要な役割を果たしている
マクロファージ細胞中の酸化型グルタチオンと還元型グ
ルタチオンの含量を検定することにより、不均一なマク
ロファージ集団が2つのタイプ即ち酸化型マクロファー
ジと還元型マクロファージとに分類され、酸化型マクロ
ファージが免疫疾患に伴う局所慢性炎症やアレルギー反
応を引き起こし、液性免疫と細胞性免疫のバランスに関
与するTh1/Th2バランスはマクロファージの酸化
/還元状態によって制御されていること、当該マクロフ
ァージの酸化還元状態が免疫性疾患の病態に重要な役割
を果たしていることが見出された。この2種のマクロフ
ァージの存在割合を人為的に制御するには前述の化合
物、好ましくは経口摂取可能な低分子物質を医薬品とし
て用いる以外に、何れか片方のマクロファージを選択的
に除去することも頗る有用な方法である。このことはリ
ンパ球に対する各種モノクローナル抗体が免疫抑制剤と
して上市されている事実からも明らかである。片方のマ
クロファージにのみ若しくは多量に発現されているマー
カーに対する抗体を用いればよいことは当業者には容易
に想定できるところである。
【0048】また、細胞に対して毒性を有する物質やそ
の誘導体を用いることができるが、還元型マクロファー
ジと酸化型マクロファージの間には細胞内の各種酵素活
性に大きな違いがあるのでプロドラッグの形のもので還
元型マクロファージ若しくは酸化型マクロファージの何
れかの細胞内で選択的に細胞毒性を有する物質に変換で
きるもの等は、本発明に最も叶う。酸化型マクロファー
ジ内で活性が上昇するピリミジンヌクレオチドホスホリ
レース(ピリミジンヌクレオチドホスホリラーゼ)酵素
活性やグルタチオンーSートランスフエレース(グルタ
チオンーSートランスフエラーゼ)酵素活性の活用等が
その例であり、細胞毒性を有するアルキル化剤にグルタ
チオンを共役させたもの等がある。
【0049】本発明の抗糖尿病剤が糖尿病性疾患及び同
疾患に伴う合併症に広く適用できることは、マクロファ
ージからの炎症性伝達因子の分泌を基本的なところで制
御することから明白である。例えば、非ステロイド性酸
性抗炎症剤(アスピリン等)は、プロスタグランジン産
生、遊離を抑制することでその薬効を発揮するといわれ
る。一方、ビタミンE等の抗酸化剤は活性酸素の産生を
抑制することで薬効を発揮する等、その作用が図1に示
す炎症性細胞たるマクロファージの多彩な機能の1局面
を制御するのみである。そのため、その効果も著明では
なく、特に慢性炎症には効果は殆ど認められない。それ
に対して本発明になる抗糖尿病剤はマクロファージの酸
化/還元状態を制御することを基本とするもので、有害
な炎症伝達因子の産生を一度に多数抑制できるものであ
る。従来の糖尿病治療剤の概念を基本から変革するもの
といえる。
【0050】以上のように、本発明の抗糖尿病剤の医療
現場における有用な薬効は、その有用な免疫薬理活性か
らして自明であり、疾患の急性期、慢性期の何れにも、
また糖尿病疾患に随伴する合併症の予防、治療、病態改
善にも有用である。
【0051】これらの薬剤は単独若しくはそれらの混合
物として用いることができる。その効果は摂取若しくは
投与後炎症局所や末梢血から単核球を採取し、前述の方
法で細胞内還元型グルタチオン量の治療前に対する変化
を検定し、生体の免疫活性の変動を測定することで判定
できる。
【0052】本発明の抗糖尿病剤の投与形態としては、
注射投与、経口投与、経皮的投与等特に制限はないが、
経口投与が好ましい。有効成分である還元型グルタチオ
ン量を変化させる作用を有する物質の投与量は、患者等
投与対象者の症状や使用目的に応じて選択されるが、1
日当たり1mg〜5000mg(経口剤)程度、好まし
くは10〜500mg程度である。製剤を製造する場合
は特に困難はなく、経口剤、注射剤、経皮剤等所望の剤
型において、それぞれ公知の方法を利用して製造するこ
とができる。
【0053】以上、本発明になる抗糖尿病剤が狭義の医
薬品として如何に有用で、新規性に優れるかを説明し
た。本発明において、抗糖尿病剤は経口摂取可能な物質
をその主要成分とした場合には、その用途は、医療現場
における医薬品に限られない。即ち、ヒトマクロファー
ジ(単球、クッパー細胞及び樹状細胞等を含む)細胞内
の還元型グルタチオン量を変化させる作用を有する物質
を単独若しくは混合物として含有する医療用食品、健康
食品、特定保健食品等として食品(チューインガムや歯
磨き等の口に入れるものは全て含まれる)並びに、栄養
剤、輸液製剤の形態で提供することも可能で有り、本発
明に含まれる。医療用食品等は固形物であっても、液体
であってもよくその形態を問わない。
【0054】適用対象としては医薬品として提供する場
合と同じである。糖尿病性疾患及び同疾患に伴う合併症
に広く適用でき、抗糖尿病作用を有する経口剤、食品例
えば栄養剤の形態、輸液製剤の形態で提供することので
きるものである。有効成分の使用量については、前記医
薬品の場合に説明した内容に準じて行うとよい。発症、
慢性化した糖尿病疾患だけでなく、糖尿病のハイリスク
の人に予防的に摂取させることを可能にする。
【0055】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものでは
ない。
【0056】(実施例1) <酸化型マクロファージ及び還元型マクロファージの機
能の検定> (方法)酸化型マクロファージは、LPS(リポポリサ
ッカライド)20μgをマウス腹腔内に投与して誘導さ
れること、還元型マクロファージはレンチナン100μ
gを同じく腹腔内に1日おきに3回投与することにより
誘導されていることが、腹腔浸出細胞をプラスチック表
面に付着させた後、モノクロロバイメイン10μMと3
7℃、30分間反応させ、ACASで解析することで判
明した。酸化型の増量は反応産物が殆ど認められないこ
と、即ちネズミ色や青色の画像になること、還元型の増
量は赤色や黄色の画像が得られることから肉眼的に容易
に検定できる。
【0057】そこで、腹腔浸出付着細胞を以下のように
して酸化型及び還元型に誘導して産生されるNO、IL
−6、PGE2を測定した。
【0058】(1)材料 細胞:上記のように刺激して得られた腹腔浸出付着細
胞、即ちマクロファージを96穴マイクロプレートに1
×105細胞/200μl宛添加。 培地:フエノールレッドフリーのRPMI1640:2
00μl/穴。 LPS:リポポリサッカライド(シグマ社製)(由来:
E.coli)100ng/ml。 IFNγ:100単位/ml。
【0059】(2)培養方法 5% CO2インキュベーター中37℃で、48時間培
養。
【0060】(3)測定方法 上記培養終了後、培養上清を回収し、IL−6はIL−
6依存性の細胞株のMH60を用いて増殖反応で、PG
E2はエライザキットを用いて、NOはグリースロイミ
ン試薬を用いて、何れも当業者が日常に行う方法で各々
の産生量を測定した。
【0061】(結果)結果を図3に示した。図3から明
らかなように、酸化型マクロファージと還元型マクロフ
ァージとでは、産生する炎症性サイトカインIL−6、
炎症性メディエーターPGE2、NOの産生強度、種類
が異なることが明らかである。即ち、酸化型マクロファ
ージではTh2サイトカインであるIL−6の産生と免
疫抑制性でTh1誘導を抑制するPGE2産生が上昇
し、NO産生は低下する。これとは対照的に還元型マク
ロファージからはNOの産生が上昇し、PGE2産生や
IL−6産生は抑制される。両マクロファージの間に機
能的な差異が存在することが明確である。
【0062】(実施例2) <糖尿病自然発症NODマウス病態動物を用いた検定>
酸化型Mφと還元型Mφにおいて、何故炎症メディエー
ターやサイトカインの産生に違いが生じるのかを物質レ
ベルで解析することは、炎症の慢性化、増悪のメカニズ
ムを解明するために重要である。一般に、外からの刺激
(リガンド等)は、細胞表面上に存在する受容体(レセ
プター)を介して細胞内に伝達する。レセプターからの
信号により、種々のキナーゼが活性化され、更に転写因
子が活性化され、転写因子が核内に移行し、標的となる
遺伝子に結合して発現する。最近の研究により、細胞内
の酸化還元系は、転写因子の活性化、核内への移行、遺
伝子との結合に関与していることが明らかとなりつつあ
る(ANNUAL REV. IMMUNOLOGY, VOL.8, PP453-475,1990,
EMBO J.,10,2247-2251, 1991)。Mφにおける炎症メデ
ィエーターやサイトカインのレセプターを介した遺伝子
発現系に、細胞内の酸化還元系がどのように関与してい
るかは現在のところ明らかではない。
【0063】(サイトカイン、刺激剤)マウスIFNγ
には、ゲンザイム社製のリコンビナント体を用いた。ヒ
トIL−2及びヒトIL−6には、味の素社製のリコン
ビナント体を用いた。ヒトIL−12には、ファーミン
ジェン社製のリコンビナント体を用いた。
【0064】LPSには、ディフコ社製のE.Col
i.055;B5由来のものを用いた。レンチナンとし
ては、味の素社で製造した製剤品を用いた。
【0065】(使用したマウス)インスリン依存性糖尿
病病態動物としてのNODマウスは日本クレアより購入
し、主として雌マウスを実験に供した。対照として用い
た野生型マウスは、日本チヤールスリバァー(CRJ)
より購入したICRマウスを用いた。インスリン非依存
性糖尿病病態動物としては日本クレアより購入したdb
/dbマウスを用いた。
【0066】(腹腔Mφの採取)腹腔細胞の採取は、エ
ーテルにより犠牲死させたマウスの腹腔内に、氷冷した
5mlのフェノールレッドフリーのDMEM培地(日研
生物社製)を22ゲージの針を付けた注射筒により注入
し、しごいた後、培地を抜き取ることにより行った。
【0067】(IL−6の定量)1×106個のMφに
刺激剤を添加し、37℃のCO2インキュベーターにて
2日間培養した。遠心後培養上清を採取した。
【0068】IL−6の定量は、IL−6に依存的に増
殖するマウスハイブリドーマMH60細胞を用いて行っ
た(EUR.J.IMMUNOL.,VOL. 18, PP 951, 1988)。10%
FCS含有RPMI培地で1×105個/mlに調製し
たMH60細胞液100 μlに、培養上清100μl
を添加し、37℃のCO2インキュベーターにて、 2日
間培養した。その後、同培地にて5mg/mlの濃度に
調製したMTT(シグマ社製)を10μl加え、37℃
にて5時間反応させた。反応終了後遠心し、上清を16
0μl取り除き、塩酸−プロパノールを100μl加え
て、ピペットマンで懸濁することにより細胞を溶解し
た。溶解後直ちに570nmの吸光度をイムノメーター
(バイオラッド社製)により測定した。
【0069】(NO2−濃度の測定)1×106個のMφ
に刺激剤を添加し、37℃のCO2インキュベーターに
て2日間培養した。遠心後培養上清を採取した。
【0070】100μlの培養上清に、50mg/ml
の濃度に蒸留水で調製したグリースロイミン試薬(和光
純薬社製)を100μl加えて室温で15分間反応させ
た。反応終了後、540nmの吸光度を測定した。尚、
スタンダードとして、NaNO2を用いた。
【0071】(ACASによる細胞内GSHの検出)C
hambered coverglass(Nunc社
製、#136439)に、RPMI1640培地(フェ
ノールレッドフリー)にて調製した3×10 5個/ml
の細胞懸濁液を300μl入れ、37℃のCO2インキ
ュベーターにて2時間培養した。同培地にて洗浄後、同
培地にて調製した10μMのモノクロロバイメイン(M
olecular plobe社製)を300μl添加
し、37℃のCO2インキュベーターに入れ、30分反
応させた後、ACASにて蛍光 強度を測定した。尚、
ACASではUVレーザーを用いた。
【0072】(IL−12の定量)IL−12定量は、
ヒトT細胞株2D6細胞を用いたバイオアッセイで行っ
た(J.LEUKOCYTE BIOLOGY, VOL 61, PP346, 1997)。
【0073】500pg/mlのリコンビナントヒトI
L−12、50μMの2−メルカプトエタノール、10
%FCS(牛胎児血清)を含むRPMI1640培地に
て培養しておいた2D6細胞をチューブに移し、IL−
12を除いた同培地にて3回遠心洗浄し、細胞濃度を1
×105/mlに調製した。予め50μMの2−メルカ
プトエタノール、10%FCSを含むRPMI1640
培地により系列希釈したサンプルを100μlづつ入れ
た96穴平底プレートに、細胞懸濁液を100μlづつ
加えた。その後、37℃、5%CO2インキュベーター
に入れ、48時間培養した。最後の6時間で、3H−T
dRをパルスした(50μMの2−メルカプトエタノー
ル、10%FCSを含むRPMI1640培地により、
370kBq/mlに調製したものを50μlづつ添
加)。細胞をハーベストし、βカウンター(マトリック
ス96;パッカード社製)で放射活性を測定した。
【0074】(NODマウスより調製したMφのGSH
濃度の測定)前述の方法で腹腔細胞を調製し、MCB試
薬を用いたACASにより、細胞内GSH量を解析し
た。対照のマウスに比べ、3−5週令のNODマウスに
おいては、還元型グルタチオンの量は著明に減少し、発
症マウスにおいては逆に著明に増大した。
【0075】(NODマウスより調製したMφの機能)
野生型マウスと、NODマウスより腹腔細胞を調製し、
LPS、IL−2、IFNγ及びその組み合わせにより
刺激し、NO産生及びIL−12産生能を測定した。I
L−12産生に関しては、無刺激では何れのマウスでも
殆ど産生がみられないが、LPSとIFNγ刺激の組み
合わせにおいて、3−5週令のNODマウスにおいて
は、産生は認められず、発症マウスにおいては産生が認
められた。NO産生は3−5週令のNODマウスにおい
ては、対照の3−4分の1に低下し、発症マウスにおい
ては逆に対照の2−3倍に産生量は増大した。このこと
は、ここに用いたNOD病態動物は炎症性細胞の膵島浸
潤時期には酸化型マクロファージが優位でTh2主流の
液性免疫が亢進し、Th1によって担われる細胞性免疫
が低下していることを示す。一方、ランゲルハンス島の
破壊による糖尿病発症、インスリン分泌不全状態の時期
には還元型マクロファージが優位でTh1主流の細胞性
免疫が亢進し、Th2によって担われる液性免疫が低下
していることを示す。病態動物モデルにおいても、本発
明の抗糖尿病剤提供や適用に必要な疾患の病態診断が独
創的で、有意義であることを明確に示す例である。
【0076】(実施例3) <NODマウスにおける還元型グルタチオン測定による
検定> (方法)NODマウス及び対照マウスの腹腔から採取し
たマクロファージの酸化型及び還元型の検定を行った。
マウスに生理食塩水5mlを腹腔内注射し、腹腔内マク
ロファージを採取し3×106個/mlになるように1
0%牛胎児血清含有フエノールレッドフリーの RPM
I1640培地に懸濁し、100μl宛Lab−Tek
Chamber Slide(NUNC社製、#136
439)に添加し、37℃、5%CO2条件下、3時間
培養し、浮遊細胞を除去した後、血清非含有の上記培地
を200μl添加し、次いでモノクロロバイメイン(M
ONOCHLOROBIMANE=MCB)を10μM
になるように添加し、30分間反応させ、ACAS装置
(MERIDIEN社製)にてUV吸収を基に画像解析
した。
【0077】(結果)ACAS法により、還元型グルタ
チオンを定量した結果、対照マウスに比べ、3−5週令
のNODマウスにおいては、還元型グルタチオン含量が
減少したマクロファージ、即ち酸化型マクロファージが
相対的に増量した。酸化型マクロファージが増量してい
るため、上記マクロファージ培養上清中のIL−6が著
明に増量していた(対照マウスの120pg/mlに対
して、430pg/ml)。発症マウスにおいては還元
型グルタチオン含量が増加したマクロファージ、即ち還
元型マクロファージが相対的に増量した。数多くのパラ
メーターを測定しなくてもマクロファージの酸化還元状
態をグルタチオンの含量を測定することで糖尿病患者の
病態、免疫機能診断等のための検定を簡便且つ的確に行
うことができることを示す。このこのことにより、本発
明の抗糖尿病剤の使用に当たり、以上のマクロファージ
分類方法により、糖尿病患者の病態、免疫機能診断等の
ための検定を行うことができる。
【0078】(実施例4) <3−5週令NODマウスへの薬剤投与による還元型マ
クロファージの誘導>4週令のNODマウスに、毎日1
mg/0.5ml/hのグルタチオンエチルエステルを
1日おきにゾンデを用いて5回経口投与した。そのマウ
スより実施例3と同様の方法で腹腔内細胞を採取し、腹
腔内マクロファージを採取し3×10 6個/mlになる
ように10%牛胎児血清含有フエノールレッドフリーの
RPMI1640培地に懸濁し、100μl宛Lab−
TekChamber Slide(NUNC社製、#
136439)に添加し、37℃、5%CO2条件下、
3時間培養し、浮遊細胞を除去した後、血清非含有の上
記培地を200μl添加し、次いでモノクロロバイメイ
ンを10μMになるように添加し、30分間反応させ、
ACAS装置(MERIDIEN社製)にてUV吸収を
基に画像解析した。
【0079】(結果)ACAS法により、還元型グルタ
チオンを定量した結果、対照生理食塩水投与群NODマ
ウスに比べ、グルタチオンエチルエステル投与のNOD
マウスでは、還元型グルタチオン含量が減少したマクロ
ファージ、即ち酸化型マクロファージが相対的に減量し
た。還元型マクロファージが増量しているため、上記マ
クロファージ培養上清中のIL−6が著明に減量してい
た(対照マウスの3800pg/mlに対して、460
pg/ml)。マクロフアージのレドックス状態がグル
タチオンエチルエステルの経口投与で改善できることが
判明した。同様の作用はγ−グルタミルシステインジメ
チルエステルの腹腔内投与(2mg/0.5ml/匹、4
週令より1日おき5回投与)、N−アセチルシステイン
ニトロキシブチルエステルの腹腔内(0.5mg/0.
5ml/匹、4週令より1日おき5回投与)、経口投与
(1mg/0.5ml/匹、4週令より1日おき5回投
与)、グルタチオンモノエチルエステル(2mg/0.
5ml/匹、4週令より1日おき5回投与、腹腔内、経
口)、グルタチオンニトロキシブチルエステル0.5m
g/0.5ml/匹、4週令より1日おき5回投与、腹腔
内、経口)及びグルタチオンジエチルエステル(2mg
/0.5ml/匹、3週令より1日おき6回投与、腹腔
内、経口)の経口、腹腔内投与、リポ酸(LIPOIC
ACID)の腹腔内投与(4mg/0.5ml/匹、4
週令より1日おき5回投与)でも認められた。
【0080】(実施例5) <ザルコイドーシス疾患患者から採取したマクロファー
ジの検定とその酸化状態の還元状態への変換>ザルコイ
ドーシス(類肉腫症)の疾患の患者の末梢血及び胸腔内
より常法により分離・採取した単核球中に含まれるマク
ロファージの酸化型及び還元型マクロファージの量を酵
素リサイクリング法により、還元型グルタチオン(GS
H)及び酸化型グルタチオン(GSSG)の量を生化学
的に測定することにより検定を行った。対照としては健
常人の末梢血を用いた。
【0081】(材料)健常人の末梢血及びザルコイドー
シス患者の末梢血をヘパリン採血或は患者の気管支に経
気管支鏡(BRONCHOFIBER)的に150ml
の生理食塩水を注入し、75mlを回収して、何れもフ
ィコールーハイペーク(LYMPHOPREP)で分離
精製した単核球を10%牛胎児血清含有RPMI164
0倍地に懸濁し、3回洗浄後、ガラスシャーレに30分
間付着させたマクロファージ/単球画分を用いた。この
後、5mMのNーアセチルシステイン(NAC)を添加
して3時間培養する群及び培地成分のみの群を調製し
た。シャーレからの分離にはラバーポリースマンを用い
た。5×106個のマクロファージについて以下のよう
に検定を実施した。
【0082】(方法)還元型と酸化型のグルタチオンの
測定は前述の酵素リサイクリング法によった。
【0083】(サンプル調製)PBSにて洗浄した細胞
のペレットに、冷やした5mMEDTAを含む0.1M
リン酸バッファー、pH7.5により調製したTrit
onX−100を100μl添加し、5分間室温に放置
して細胞を溶解した。0.1MのHClを15μl添加
し、更に50% sulfosalicylic ac
id(SSA)溶液を15μl添加して混合後、12,
000rpmで5分間遠心して上清を採取し[*]、総
グルタチオン濃度(GSH+GSSG)の測定サンプル
とした。
【0084】(測定法)0.5mMEDTAを含む10
mMリン酸バッファー、pH7.5を590μl、6u
/mlの濃度に同バッファーで調製したグルタチオンリ
ダクターゼ(ベーリンガーマンハイム社製)を100μ
l、5%NaHCO3にて調製した4mMのNADPH
(シグマ社製)を50μl、サンプルを10μl加え
て、37℃にて5分間インキュベートし、5mMEDT
Aを含む0.1Mリン酸バッファー、pH7.5により
調製した10mMの5,5’−dithio−bis
(2−nitrobenzoic acid)(DTN
B;シグマ社製)溶液を50μl加えて、37℃におけ
る412nmの吸光度の経時的変化を分光光度計により
測定した。尚、標準サンプルとして、GSH(シグマ社
製)をサンプルと同じ調製法で調製して用いた。別途、
酸化型グルタチオン(GSSG)量のみを測定し−−上
記*印の後に、2μlの2ービニルピリジン(東京化成
社製)を添加し、室温で1分間混和しpHを7.5に調
製後、室温に60分間放置し、測定サンプルとし、同様
に測定する−−総グルタチオン量より差し引くことで還
元型グルタチオン(GSH)量を求めた。
【0085】(結果)患者の末梢血中の還元型と酸化型
グルタチオンの量はGSSG 5.29μM、GSH
20.45μMと還元型GSHが還元型が約80%で、
依然として優位であるが(健常人においては90%以上
が還元型GSHである)、胸腔内マクロファージでは還
元型GSHが1.45μMであり、酸化型GSSGが1
5.85μMと酸化型が約86%とその存在比が完全に
逆転することが判明した。NAC添加群においては、還
元型GSHが20.45μMであり、酸化型GSSGが
4.32μMと酸化型が急激に減少し、還元型の比率が
80%を超え、末梢血レベルに回復した。このことは、
本疾患において酸化型マクロファージが病態形成に大き
な位置を占めること、その病態がNAC投与で改善でき
ることを示し、本発明の効果は単に病態動物に留まら
ず、糖尿病患者やそのハイリスクの人においても有用で
あることを示唆するものである。
【0086】(実施例6) <還元型、酸化型マクロファージからのIL−12産生
の差異>T細胞の分化過程、選択過程、機能発現過程に
異常があると、生体の免疫系が破綻することから、免疫
系の中心的役割は、T細胞により担われていると考えら
れる。T細胞の亜集団の一つであるヘルパーT細胞(T
h)は、リンホカインを産生することにより、免疫担当
細胞や炎症性細胞を制御している細胞であるが、最近、
Thは、産生するリンホカインの種類により、更にTh
1とTh2の2種類に分けられ、それぞれが異なった免
疫機能を担っているという考えが提唱されている(J. I
MMUNOL., VOL. 136, PP 2348, 1986)。即ち、Th1
は、I L−2やIFNγを産生し、細胞性免疫の調節
の主体であり、Th2はIL−4、IL−5、IL−6
やIL−10を産生し、液性免疫の調節の主体であり、
生体内の免疫調節の恒常性は、Th1とTh2のバラン
スにより保たれているとする考えである。通常は、Th
1/Th2バランスがどちらかに傾くと、それを是正す
ることにより恒常性が維持されるが、何らかの原因によ
りバランスが是正されない状態が持続すると免疫病が発
症すると考えられている。Th1とTh2は、Th0と
いう段階からそれぞれに分化するが、Th0からTh1
への分化にはMφの産生するIL−12が重要であり(I
MMUNOLOGY TODAY, VOL.335, PP 14, 1993)、Th0から
Th2への分化にはNKT細胞が産生するIL−4が重
要である(J.EXP. MEDICINE, VOL.179, PP 1285, 199
4)。
【0087】Mφのレドックス状態の相違によりMφ機
能が異なることは前出の各実施例より明らかである。M
φには、GSH量の相違から酸化型Mφと還元型Mφの
2種類のMφが存在し、NOやIL−6産生パターンが
異なる。Th0からTh1への分化を誘導し、Th1/
Th2バランス制御の鍵の分子であるIL−12の主な
産生細胞はMφと考えられるが、その詳細な解析はこれ
まで報告されていない。IL−12の産生は、酸化型M
φと還元型Mφで異なるのか否かは、免疫病の発症メカ
ニズムの観点からも興味深い点である。本発明者等は、
IL−12が還元型Mφからのみ産生することを見出す
とともに、IL−12と同じくTh1/Th2バランス
制御を行っていると考えられているIL−4が、酸化型
Mφ、還元型Mφに作用し、Th2側へシフトさせてい
ることを見出した。本発明の完成に先立って得られたこ
れらの知見を基に、Mφのレドックス状態が、Th1/
Th2バランスを制御していることを示し、本発明を使
用する上で免疫系疾患の病態診断に如何に有用かを説明
する。
【0088】(IL−12は還元型Mφから産生され
る)実施例1において、レンチナン(LNT)を腹腔内
注射して調製したMφは、GSH量の高い還元型であ
り、LPSを腹腔内注射して調製したMφは、GSH量
の低い酸化型であることを示した。LNT誘導MφとL
PS誘導Mφにおいて、IL−12産生能が異なるか否
かを検討した。LPSとIFNγの刺激により、LNT
誘導Mφでは著明なIL−12産生(1312pg/m
l)がみられたが、LPS誘導Mφ及び対照のレジデン
トMφでは産生がみられなかった(図4)。次に、細胞
内GSH量を変化させる物質を腹腔内注射して調製した
Mφを用いて同様の解析を行った。細胞内GSH量を増
加させる物質であるグルタチオンモノエチルエステル
(GSH−OEt)、低下させる物質であるマレイン酸
ジエチルエステル(DEM)をそれぞれ投与し調製した
Mφでは、GSH−OEt投与マウス由来Mφでのみ、
LPSとIFNγ刺激によりIL−12が産生された
(3570pg/ml)。これらの結果は、細胞内のG
SH量の多い還元型Mφでのみ、IL−12が産生され
ることを示す。
【0089】(還元型MφからのIL−12産生は、細
胞内GSH量を低下させることにより抑制される)細胞
内のGSH量の多い還元型Mφでのみ、IL−12が産
生されることを示したが、この産生は、Mφを酸化型に
することにより抑制されるか否かを検討した。即ち、レ
ンチナン誘導Mφを、DEM刺激することにより、IL
−12の産生が抑制されるかを解析した。その結果、レ
ンチナン誘導MφからのIL−12産生(828pg/
ml)は、DEMを添加することにより、完全に抑制さ
れる(0pg/ml)ことが明らかとなった。即ち、D
EM処理により細胞内の還元型グルタチオンを枯渇さ
せ、還元型Mφを酸化型Mφへと変換することにより、
IL−12産生は抑制されることが示唆された。
【0090】(IL−4は、還元型MφからのIL−1
2産生を抑制する)IL−4は、Mφに作用し、抑制的
に働くとされているサイトカインである。IL−4は、
Th1/Th2バランスの制御においても、IL−12
と相対する作用を有していると考えられている。そこ
で、IL−4が、還元型MφからのIL−12産生に対
し、抑制的に作用するか否かを検討した。LNT誘導M
φからのIL−12産生及びGSH投与マウス由来Mφ
からのIL−12産生ともに、IL−4で前処理するこ
とによりは著明に抑制することが明らかとなった(各々
1580pg/mlより370pg/mlへ、490p
g/mlより258pg/mlへ)。即ち、IL−4は
Mφに作用し、IL−12産生を抑制することにより、
Th1/Th2バランスをTh2側にシフトしている可
能性が示唆された。この際、IL−4はMφ中の還元型
グルタチオン量を著明に減少させることがACASによ
る画像解析で判明した。
【0091】(IL−4は、NO産生を抑制し、IL−
6産生を亢進する)還元型Mφは、酸化型Mφに比較し
てIFNγ刺激でのNO産生が亢進し、逆にIL−6産
生は抑制される。IFNγは、Th1細胞から産生され
るサイトカインとして知られており、IL−4がIFN
γによるNO産生及びIL−6産生に対し、どのような
作用を示すか、それぞれのMφを用いて解析した。IL
−4で前処理したMφ(レジデント、LPS誘導、LN
T誘導)にIFNγを作用させ、NO産生量を測定した
ところ、IL−4で処理していないMφに比較して、I
L−4処理したMφからのNO産生は有意に抑制され
た。また、GSH−OEt刺激により細胞内GSH量を
増加させたMφ及びDEM刺激により細胞内GSH量を
低下させたMφをIL−4で前処理後、IFNγとLP
Sを作用させてNO産生量を測定したところ、IL−4
未処理に比較して、著明にNO産生が抑制された。
【0092】一方、IL−6産生は、レジデントMφ、
LPS誘導Mφ、LNT誘導Mφ何れともIL−4によ
り前処理することにより、IFNγでの産生が著しく亢
進した。更に、GSH−OEt刺激により細胞内GSH
量を増加させたMφ及びDEM刺激により細胞内GSH
量を低下させたMφをIL−4で前処理後、IFNγを
作用させてIL−6産生量を測定したところ、IL−4
未処理に比較して、著明にIL−6産生が亢進された。
これらの結果より、IL−4は、細胞内還元型グルタチ
オン量を減少させることにより、酸化型マクロファージ
を誘導し、IFNγ刺激によるNO産生を抑制し、IL
−6産生を亢進することが明らかとなった。このこと
は、IL−4はIFNγの作用、即ちTh1型の作用と
考えられるNO産生を抑制し、本来IFNγは弱い作用
であったIL−6産生誘導を亢進させ、Th2型の作用
を増強させる活性を有していることを示すものである。
本知見は本発明になる抗糖尿病剤の有用性を科学的に証
明するものである。
【0093】(実施例7) <経口摂取NACとIL−2の併用によるIL−12産
生の増強>DBA/2♀の8週令のマウスに実施例6同
様の方法で水道水を自由飲水させる群とNAC1mg/
ml濃度の水道水を自由飲水させる2群を作り、更に各
々の群にヒトリコンビナントIL−2:2μg/0.5
ml/hを1日2回隔日に2週間腹腔内投与を併用する
群を設定した。14日目に実施例6同様にMφからのI
L−12産生量を検定した。
【0094】(調製したMφのGSH濃度の測定)それ
ぞれの処置を受けたマウスの腹腔細胞を調製し、MCB
試薬を用いたACASにより、細胞内GSH量を解析し
た。対照のマウス(水道水自由飲水群)に比べ、NAC
溶解水道水自由飲水群及びIL−2投与群において、還
元型グルタチオンの量は著明に増加し、還元型Mφの画
像を示した。NAC溶解水道水自由飲水にIL−2投与
を併用する群においては何れの単独群よりも還元型グル
タチオンの量は更に増加し、還元型Mφの誘導における
併用効果がACAS画像解析で明瞭に認められた。併用
群では、全てのMφ中に還元型グルタチオンの量の増加
が認められた(単独処置群の増量が40−50%のMφ
に認められることと対照的である)。
【0095】(各群より調製したMφの機能)4群、そ
れぞれのマウスより腹腔細胞を調製し、LPS+IFN
γにより刺激し、NO産生、IL−6産生、及びIL−
12産生能を測定した。単独投与、併用群の3群何れも
対照群に対して還元型マクロファージが増量しているた
め、上記マクロファージ培養上清中のIL−6量が減少
した(対照マウスの1240pg/mlに対して、NA
C溶解水道水自由飲水群320pg/ml、IL−2投
与群520pg/ml、NAC溶解水道水自由飲水にI
L−2投与を併用する群67pg/ml)。IL−6が
Th2を誘導する主たるサイトカインであること考える
と、これらのNAC経口摂取にIL−2なるサイトカイ
ンの注射による併用で生体のTh1/Th2バランスが
より強力に制御できることを明確に示す。NO産生の増
強パターンはIL−6産生と逆相関した。IL−12産
生については、対照マウスの0pg/mlに対して、N
AC溶解水道水自由飲水群620pg/ml、IL−2
投与群946pg/ml、NAC溶解水道水自由飲水に
IL−2投与を併用する群2386pg/mlと著明な
併用効果が認められた。本発明が、サイトカイン類との
併用で、免疫系疾患としての糖尿病の著しい病態改善に
有益な抗糖尿病剤として独創的で、有意義であること示
す。
【0096】(実施例8) <(NAC-OMe)2 投与による酸化型マクロファージの誘導
>酸化型マクロファージは (NAC-OMe)220μg/0.5m
l/h、若しくは アセチルグリオトキシン10μg/0.5
ml/h をd1、d2にマウス腹腔内に投与して誘導される
こと、還元型マクロファージは NAC 2 mg/0.5ml/h
を同じく腹腔内にd1、d2投与することにより誘導され
ていることが、投与終了後20時間後に腹腔浸出細胞を採
取し、プラスチック表面に付着させた後、モノクロロバ
イメイン10μMと37℃、30分間反応させ、ACA
Sで解析することで判明した。酸化型の増量はモノクロ
ロバイメインとの反応産物が殆ど認められないこと、即
ちネズミ色や青色の画像になること、還元型の増量は赤
色や黄色の画像が得られることから肉眼的に容易に検定
できる。免疫抑制作用のよく知られるステロイド剤の代
表であるデキサメサゾン40 μg/0.1ml/hを マウス背
部皮下にd1、d2に投与して20時間後に誘導されるマ
クロファージは殆どネズミ色の画像になること、即ち酸
化型マクロファージが強力に誘導されることが判明し
た。一方、N-アセチルシステイン(NAC)2mg投与後
20時間目の腹腔浸出細胞を採取して同様に検定したと
ころ赤色や黄色の画像が得られ還元型マクロファージが
誘導されることが確認された。同様に酸化型マクロフア
ージの誘導されることは、シスチン誘導体である、N,
N’−ジアセチルシスチンニトロキシブチルエステル、
N,N’−ジアセチルシスチンジメチルエステル((NAC
-OMe)2)、N,N’−ジアセチルシスチンジイソプロピ
ルエステル((NAC-OiPr)2)、N,N’−ジ−L−アラ
ニルシスチンジメチルエステル((NAlaC-OMe)2)の腹腔
内投与(各々20μg/0.5ml/h、週2回3週間投与、
週令9−11)でもACASにより確認された。
【0097】<(NAC-OMe)2、アセチルグリオトキシン投
与によって誘導されたマクロフアージからのNO、IL
−6産生>そこで、腹腔浸出付着細胞を以下のように培
養し、培養上清に産生されるNO、IL−12を測定し
た。IL−6産生量は刺激剤不在下の自発産生量を測定
した。
【0098】(1)材料 細胞:上記のように刺激して得られた腹腔浸出付着細胞
即ちマクロフアージを96穴マイクロプレートに1X1
5細胞/200μl宛添加 培地:フエノールレッドフリーのRPMI1640 200μl
/穴 LPS:リポポリサッカライド(シグマ社製)(由来:
E.coli)100ng/ml IFNγ:100単位/ml
【0099】(2)測定方法 (腹腔Mφの採取)腹腔細胞の採取は、エーテルにより
犠牲死させたマウスの腹腔内に、氷冷した5mlのフェ
ノールレッドフリーのDMEM培地(日研生物社製)を
22ゲージの針を付けた注射筒により注入し、しごいた
後、培地を抜き取ることにより行った。
【0100】(IL−6の定量)実施例2の場合と同様
に定量した。
【0101】(NO2−濃度の測定)実施例2の場合と同
様に測定した。
【0102】(ACASによる細胞内GSHの検出)実施
例2の場合と同様に検出した。
【0103】(IL−12の定量)実施例2の場合と同様
に定量した。
【0104】(結果)マクロフアージからのNO、IL
−6、IL−12産生の抑制効果についての結果を表1
に示す。
【0105】
【表1】
【0106】表1から明らかなように、(NAC-OMe)2、ア
セチルグリオトキシン投与により誘導された酸化型マク
ロファージでは、産生される炎症性サイトカインIL−
6、NO、IL−12の産生量が変動することが明らか
である。即ち、薬剤投与で得られた酸化型マクロファー
ジではIL−6の産生は増強され、臓器障害性に働くN
O産生も細胞性免疫を増強するIL−12産生も低下す
る。この効果は典型的免疫抑制剤であるステロイドのデ
キサメサゾンより強いか同等である。これと対照的にN
−アセチルシステイン(NAC)により誘導される還元型
マクロファージからはNOの産生、IL−12の産生が
上昇し、IL−6産生は抑制される。
【0107】(実施例9) <卵白アルブミン抗原に対する遅延型過敏症反応の抑制
効果>(NAC-OMe)2、(NAC)220μg/0.5ml/h、NAC、
デキサメサゾンを実施例8と同様にd1からd5まで連日
投与、抗原として卵白アルブミンとコンプリートH37R
aアジュバント(DIFCO)1:1懸濁液100μl(含む2
50μg卵白アルブミン)を感作抗原としてd2に背部皮
下に投与、惹起抗原としてd8に左耳に皮下投与し24
時間の左耳の腫脹厚を右耳と比較した。
【0108】卵白アルブミン抗原に対する遅延型過敏症
反応の抑制効果についての結果は表2に示す通りであ
り、(NAC-OMe)2、(NAC)2投与によって卵白アルブミン抗
原に対する遅延型過敏症反応は著明に抑制された。この
ことはこれらの物質の投与により細胞性免疫が抑制され
たことを示す。
【0109】
【表2】
【0110】(実施例10) <3−6週令のマクロフアージが酸化状態にあり炎症性
細胞の膵島浸潤の起こる時期のNODマウスへの薬剤投
与効果>日本クレアより購入したNODマウスを自家繁殖
させインスリン依存性糖尿病を高率に自然発症するNOD
マウスコロニーを樹立し、本コロニーから得られた雌の
NODマウスを実験に供した。週令3週令から6週令ま
で、週に3回、合計9回にわたり、薬剤を経口、若しく
は腹腔内投与し糖尿病発症を尿糖の陽性、陰性で週に1
回追跡した。尿糖の判定にはウロペーパー(山之内製薬
製BMテストグルコース5000)を用いた。結果を表3
に示す。
【0111】
【表3】 (イ) 18週令目、(ロ)22週令目、特記の無いもの
は腹腔内投与
【0112】以上の結果は、3−6週令のマクロフアー
ジが酸化状態にあり炎症性細胞の膵島浸潤の起こる時期
のNODマウスでは還元型マクロフアージを誘導するγ
−グルタミルシステイン、γ−グルタミルシステインジ
メチルエステル、N−アセチルシステインニトロキシブ
チルエステル等のグルタチオンの前駆体、グルタチオン
モノエステル、グルタチオンニトロキシブチルエステル
及びグルタチオンジエステル等のグルタチオン誘導体、
レンチナン等のβ(1−3)グルカンの投与により糖尿
病自然発症の抑制されることを明白に示す薬効実験の結
果である。一回投与量については、(NAC)2、(N
ACOMe)2は20μg/匹、NAC、GSHOEtは
2mg/匹、レンチナンは0.1mg/kgである。
【0113】(実施例11) <3−6週令のマクロフアージが酸化状態にあり炎症性
細胞の膵島浸潤の起こる時期及び9−11週令のNOD
マウスへの薬剤投与効果>日本クレアより購入したNOD
マウスを自家繁殖させインスリン依存性糖尿病を高率に
自然発症するNODマウスコロニーを樹立し、本コロニー
から得られた雌のNODマウスを実験に供した。週令3週
令から6週令まで、週に3回、週令9週令から11週令
まで週に2回合計15回にわたり、薬剤を経口、若しく
は腹腔内投与し糖尿病発症を尿糖の陽性、陰性で週に1
回追跡した。尿糖の判定にはウロペーパー(山之内製薬
製BMテストグルコース5000)を用いた。結果を表4
に示す。
【0114】
【表4】 22週令目に判定を行った。
【0115】以上の結果は、3−6週令のマクロフアー
ジが酸化状態にあり炎症性細胞の膵島浸潤の起こる時期
並びに9−11週令における還元型マクロフアージの誘
導される時期の双方にわたる投与では還元型マクロフア
ージを誘導するγ−グルタミルシステイン、γ−グルタ
ミルシステインジメチルエステル、N−アセチルシステ
インニトロキシブチルエステル等のグルタチオンの前駆
体、グルタチオンモノエステル、グルタチオンニトロキ
シブチルエステル及びグルタチオンジエステル等のグル
タチオン誘導体、レンチナン等のβ(1−3)グルカン
の投与により、膵島への炎症性細胞の浸潤が抑制された
結果、膵島炎や糖尿病の自然発症が抑制されることを明
白に示す薬効実験の結果である。
【0116】(実施例12) <9−11週令のマクロフアージが還元状態にあるNO
Dマウスへの薬剤投与効果>日本クレアより購入したNO
Dマウスを自家繁殖させインスリン依存性糖尿病を高率
に自然発症するNODマウスコロニーを樹立し、本コロニ
ーから得られた雌のNODマウスを実験に供した。週令9週
令から11週令まで、週に3回、合計9回にわたり、薬剤
を経口、若しくは腹腔内投与し、糖尿病発症を尿糖の陽
性、陰性で週に1回追跡した。尿糖の判定にはウロペー
パー(山之内製薬製BMテストグルコース5000)を用
いた。結果を表5に示す。
【0117】
【表5】 22週令目に判定、投与量については実施例11と同様
である。
【0118】以上の結果は、9−11週令のマクロフア
ージが還元状態にあるNODマウスへの薬剤投与におい
ては、N,N’−ジアセチルシスチン((NAC)2)、N,
N’−ジプロピルシスチン((NPC)2)、N,N’−ジア
セチルシスチンジメチルエステル((NAC-OMe)2)、N,
N’−ジアセチルシスチンジイソプロピルエステル((N
AC-OiPr)2)、N,N’−ジ−L−アラニルシスチンジ
メチルエステル((NAlaC-OMe)2)、これらのニトロキシ
ブチルエステル体等、前記構造式(1)に示され、マク
ロファージ細胞内の還元型グルタチオン量を減少させ、
遅延型過敏症反応を抑制し、IFNγ、IL−12産生
を抑制する作用を有する化合物に薬効が認められるとい
う事実を明白に示す。
【0119】(実施例13) <db/dbマウスにおける薬剤効果>日本クレアより
購入したdb/dbマウスを自家繁殖させインスリン非
依存性糖尿病を高率に自然発症するdb/dbマウスコ
ロニーを樹立し、本コロニーから得られた雄のdb/d
bマウスを実験に供した。週令4週令から9週令まで、
週に3回、合計18回にわたり、薬剤を腹腔内投与し、
インスリン非依存性糖尿病の病態改善効果を飽食時血糖
にて週に1回追跡した。結果を表6に示す。
【0120】
【表6】 投与量は実施例11と同様である。
【0121】以上の結果は、インスリン非依存性糖尿病
を高率に自然発症するdb/dbマウスへの投与では還
元型マクロフアージを誘導するγ−グルタミルシステイ
ン、γ−グルタミルシステインジメチルエステル、N−
アセチルシステインニトロキシブチルエステル等のグル
タチオンの前駆体、グルタチオンモノエステル、グルタ
チオンニトロキシブチルエステル及びグルタチオンジエ
ステル等のグルタチオン誘導体、レンチナン等のβ(1
−3)グルカンの投与により、血糖値の低下が有意にも
たらされ、これらの物質がグルコースの筋肉、脂肪細胞
への取り込み不全によるインスリン非依存性の糖尿病に
対しても病態改善効果を有することを明白に示す薬効実
験の結果である。その作用機作は不明であるが、肝機能
の改善若しくはホスファターゼに対する阻害作用等が薬
理効果の因と推定される。
【0122】
【発明の効果】本発明の抗糖尿病剤により、マクロファ
ージ(単球、クッパー細胞及び樹状細胞等を含む。)の
機能の斬新な制御が可能となり、特にヒトのインスリン
依存性糖尿病、インスリン非依存性糖尿病、同疾患に随
伴する合併症、同疾患のハイリスク状態の治療、病態改
善、予防を可能とする。特に、経口摂取することがで
き、医薬品や、飲食品、栄養剤及び輸液製剤の形態とし
ても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、想定される、マクロファージの機能の
相違並びにTh1及びTh2による免疫抑制、悪液質状
態、癌細胞の悪性化誘導の機序、局所炎症等との関係の
仮説模式図を示す。
【図2】図2は、酸化型、還元型マクロファージの存在
比がTh1型、Th2型サイトカインの選択的な産生制
御を介して免疫機能を制御していることを説明したもの
である。本発明者等の新しい知見に基づくものであり、
マクロファージの酸化還元状態がin vivoにおけ
る免疫能の傾きを増幅する要になっていることを示す。
【図3】図3は、実施例1における両マクロファージの
機能の検定の結果を表す図で、酸化型マクロファージ及
び還元型マクロファージにおける機能の差を示したグラ
フである。
【図4】図4は、LNT誘導MφとLPS誘導Mφにお
いて、IL−12産生能が異なるか否かを検討した結果
を表す図で、酸化型、還元型マクロファージによってT
h1サイトカインであるIL−12の産生量が全く異な
り、IL−12は還元型グルタチオン含量の高い還元型
マクロファージからのみ産生されることを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 31/00 643 A61K 31/00 643D 31/22 31/22 31/235 31/235 Fターム(参考) 4B018 MD07 ME03 4C076 AA12 BB01 BB17 CC03 CC21 DD70 EE41 4C084 AA17 BA01 BA08 BA14 BA15 BA26 BA27 BA31 DA01 MA01 MA02 NA14 ZC352 4C206 AA01 AA02 JA58 JA62 MA01 MA02 MA04 MA13 NA14 ZB08 ZC35

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】マクロファージ細胞内の還元型グルタチオ
    ン量を変化させる作用を有する物質を含有することを特
    徴とする抗糖尿病剤。
  2. 【請求項2】当該物質が、当該マクロファージ細胞内の
    還元型グルタチオン量を増加させることにより炎症性細
    胞の膵島浸潤を抑制するものである請求項1に記載の抗
    糖尿病剤。
  3. 【請求項3】当該物質が、γ−グルタミルシステイン、
    γ−グルタミルシステインジメチルエステル及びN−ア
    セチルシステインニトロキシブチルエステル等のグルタ
    チオンの前駆体、グルタチオンモノエステル、グルタチ
    オンニトロキシブチルエステル及びグルタチオンジエス
    テル等のグルタチオン誘導体、リポ酸(LIPOICA
    CID)、グリオトキシン及びその誘導体等の、分子内
    にメルカプト基を2個以上含有する化合物、同化合物を
    生成する前駆体、オルテン(ORTENE)、並びにフ
    ラボノイド及びその誘導体等の抗酸化物質から選択され
    る少なくとも1種を含むものである請求項2に記載の抗
    糖尿病剤。
  4. 【請求項4】β(1−3)グルカン及びサイトカインか
    ら選択される少なくとも1種を含む請求項2及び3何れ
    かに記載の抗糖尿病剤。
  5. 【請求項5】当該物質が、マクロファージ細胞内の還元
    型グルタチオン量を減少させることによりIL−12産
    生、NO産生、IFNγ産生を抑制し遅延型過敏症反応
    を抑制するものである請求項1に記載の抗糖尿病剤。
  6. 【請求項6】当該物質が、分子内にジスルフィド結合を
    有する化合物である請求項5に記載の抗糖尿病剤。
  7. 【請求項7】当該ジスルフィド結合を有する化合物が下
    記構造式(1)で示される化合物である請求項6に記載
    の抗糖尿病剤。 【化1】 但し、上記式中、R1及びR2はそれぞれ独立していて、
    置換基を有していてもよいアルキル基を、R3及びR4
    それぞれ独立していて、アシル基及びペプチジル基の何
    れかを、それぞれ表す。
  8. 【請求項8】当該置換基を有していてもよいアルキル基
    が、ニトロキシブチル基である請求項7に記載の抗糖尿
    病剤。
  9. 【請求項9】細胞内の還元型グルタチオン量に差のある
    酸化型マクロファージ及び還元型マクロファージの2種
    のマクロファージの何れか一方を選択的に除去し得る物
    質を含有する請求項1に記載の抗糖尿病剤。
  10. 【請求項10】当該物質が、細胞毒性を有するDNAア
    ルキル化剤にグルタチオンを共役させた物質又は前駆体
    としてマクロファージに取り込まれた後に細胞毒性を示
    す物質である請求項9に記載の抗糖尿病剤。
  11. 【請求項11】飲食品、栄養剤及び輸液製剤の何れかの
    形態にある請求項1〜10何れかに記載の抗糖尿病剤。
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