JP2000302803A - アミノ酸及びペプチドにより遊離アミノ基が選択的に置換され、実質的に水酸基の置換のない部分脱アセチル化キチン・キトサン誘導体、及びその製造方法 - Google Patents

アミノ酸及びペプチドにより遊離アミノ基が選択的に置換され、実質的に水酸基の置換のない部分脱アセチル化キチン・キトサン誘導体、及びその製造方法

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JP2000302803A
JP2000302803A JP11115071A JP11507199A JP2000302803A JP 2000302803 A JP2000302803 A JP 2000302803A JP 11115071 A JP11115071 A JP 11115071A JP 11507199 A JP11507199 A JP 11507199A JP 2000302803 A JP2000302803 A JP 2000302803A
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amino acid
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Taizo Seki
泰三 関
Keigo Aoi
啓悟 青井
Kanehiko Okada
鉦彦 岡田
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Noevir Co Ltd
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Noevir Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 遊離アミノ基が選択的にアミノ酸及びペプチ
ドにより置換され、構成糖の水酸基の置換のない部分脱
アセチル化キチン又はキトサン誘導体を得、さらに種々
のアミノ酸及びペプチドの導入にも幅広く利用できて、
それらの配列の制御や生理活性の保持も可能な、部分脱
アセチル化キチン・キトサンへのアミノ酸及びペプチド
の導入方法を提供する。 【解決手段】 アシル基等によりアミノ基を保護したア
ミノ酸及びペプチドの1種又は2種以上と、4-ヒドロキ
シフェニルジアルキルスルホニウム塩等のアリールスル
ホニウム塩より形成される水溶性の活性エステルを用い
て、部分脱アセチル化キチン又はキトサンの遊離アミノ
基を選択的に置換する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水性溶媒を用いた
均一系において、部分脱アセチル化キチン又はキトサン
の遊離アミノ基に対し、種々のアミノ酸やペプチドを選
択的に導入する方法、及び前記方法により得られる、遊
離アミノ基がアミノ酸やペプチドにより選択的に置換さ
れており、実質的に水酸基の置換のない部分脱アセチル
化キチン・キトサン誘導体に関する。さらに詳しくは、
アミノ基を保護したアミノ酸及びペプチドの1種又は2
種以上と、アリールスルホニウム塩より形成される活性
エステルを用いた導入方法、及びそれにより得られる部
分脱アセチル化キチン・キトサン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】部分脱アセチル化キチン,キトサンの遊
離アミノ基に対してアミノ酸やペプチドを導入するに際
し、従来より行われている酸塩化物,酸無水物,縮合剤
等を用いたカルボン酸の直接アミド化反応では、一般的
には有機溶媒を用いることが好ましいため、有機溶媒へ
の脱アセチル化キチン,キトサン、アミノ酸等の溶解性
により、非常に制限を受けることが多かった。また、キ
チン,キトサンの遊離アミノ基に対する選択性において
も十分なものではなく、構成糖の水酸基の置換といった
副反応が生じるといった問題もあった。さらに、ラセミ
化の制御が困難な場合も多かった。また反応開始剤とし
て、キチン,キトサンの遊離アミノ基を用いたアミノ酸
・N-カルボキシ無水物のグラフト重合法が報告されてい
る(K.Kurita et al.,Macromolecules 21 1579 (198
8))が、この方法によっては、アミノ酸残基の配列を制
御することが困難であった。従って、遊離アミノ基がア
ミノ酸又はペプチドによりラセミ化することなく選択的
に置換され、実質的に水酸基に対する置換のない部分脱
アセチル化キチン・キトサン誘導体は得られていなかっ
た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明において
は、遊離アミノ基がアミノ酸又はペプチドによりラセミ
化することなく選択的に置換され、実質的に水酸基に対
する置換のない部分脱アセチル化キチン・キトサン誘導
体を得るべく、有機溶媒に不溶な部分脱アセチル化キチ
ンやキトサンにおいても、これらの遊離アミノ基に対し
選択的にアミノ酸及びペプチドを導入でき、さらに種々
のアミノ酸及びペプチドの導入に利用できて、それらの
配列の制御や生理活性の保持が可能な方法を開発するこ
とを目的とした。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するに
当たり、本発明者らはペプチド合成においてよく用いら
れている活性エステル法の応用を試みた。その結果、ア
ミノ基を保護したアミノ酸及びペプチドの1種又は2種
以上と、アリールスルホニウム塩より形成される水溶性
の活性エステルを用いることにより、水性溶媒を用いた
均一系で反応を進行させることができ、部分脱アセチル
化キチン,キトサンの遊離アミノ基に対し選択的にアミ
ノ酸等を導入することができることを見いだした。さら
に、前記の方法は、種々のアミノ酸及びペプチドの導入
に応用することができ、しかもペプチドの配列の制御
や、アミノ酸,ペプチドの生理活性の保持を良好に行う
ことのできるものであることを見いだし、本発明を完成
するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明においてアミノ酸等を導入
する部分脱アセチル化キチン及びキトサンとしては、平
均分子量が3,000〜30,000の水溶性の低分子
化キトサンの他、さらに分子量の大きいキトサンや、ア
セチル化度が55%程度までの部分脱アセチル化キチン
を用いることができる。水溶性の低分子化キトサン及び
アセチル化度が45〜55%の水溶性キチンの場合は、
水を溶媒として用いることができ、分子量の大きいキト
サンや前記以外の部分脱アセチル化キチンの場合は、酢
酸水溶液に溶解して反応に供することができる。
【0006】次いで本発明においては、活性エステルの
調製に際し、アミノ基をアシル基等により保護したアミ
ノ酸及びペプチドを用いる。アミノ酸としては、グリシ
ン,アラニン等の脂肪族アミノ酸、バリン,ロイシン,
イソロイシン等の分岐アミノ酸、セリン,スレオニン等
のヒドロキシアミノ酸、アスパラギン酸,グルタミン酸
等の酸性アミノ酸、アスパラギン,グルタミン等のアミ
ド型アミノ酸、リジン,ヒドロキシリジン,アルギニン
等の塩基性アミノ酸、システイン,シスチン,メチオニ
ン等の含硫アミノ酸、フェニルアラニン,チロシン等の
芳香族アミノ酸、トリプトファン,ヒスチジン等の複素
環式アミノ酸、プロリン,4-ヒドロキシプロリン等のイ
ミノ酸などが挙げられ、ペプチドとしては、これらアミ
ノ酸より構成されるジペプチド,トリペプチド等のオリ
ゴペプチドが挙げられる。
【0007】また上記の他に、サルコシン(N-メチルグ
リシン),β-アラニン,γ-アミノ酪酸,ホモシステイ
ン,オルニチン,5-ヒドロキシトリプトファン,3,4-ジ
ヒドロキシフェニルアラニン(ドーパ),トリヨードチ
ロニン,チロキシン,グルタチオンといった代謝上特殊
な作用や生理活性を有するものも用いることができる。
【0008】上記アミノ酸及びペプチドのアミノ基の保
護は、アシル基の付加により行うのが好ましいが、アシ
ル基としては、炭素数2〜30程度のものを用いること
ができる。本発明においては、アシル基等によりアミノ
基を保護した上記アミノ酸及びペプチドから、1種又は
2種以上を選択して活性エステルの調製に用いる。
【0009】本発明においては、アミノ基を保護した上
記のアミノ酸及びペプチドより選択した1種又は2種以
上と、アリールスルホニウム塩を用いて活性エステルを
調製する。アリールスルホニウム塩としては、4-ヒドロ
キシフェニルジメチルスルホニウムメタンスルホン酸
塩,4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメチル
硫酸塩等の4-ヒドロキシフェニルジアルキルスルホニウ
ム塩が好ましく用いられる。活性エステルは、アミノ基
を保護した上記アミノ酸及びペプチド、アリールスルホ
ニウム塩、及びジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮
合剤をアセトニトリル等の有機溶媒中で低温にて反応さ
せ、反応生成物について洗浄,乾燥,再溶解及び溶媒の
減圧留去といった精製操作を加えることにより得ること
ができる。
【0010】アミノ基を保護したアミノ酸等の部分脱ア
セチル化キチン及びキトサンへの導入は、上記により調
製した活性エステルを精製水に溶解し、これを部分脱ア
セチル化キチン,キトサンの水溶液又は酢酸水溶液に加
え、20℃〜50℃にて24時間〜72時間程度反応さ
せて行う。反応終了後、反応液を塩基性とし、アセトン
等の有機溶媒中に滴下して再沈殿し、沈殿したポリマー
をろ別回収した後、有機溶媒で繰り返し洗浄して、目的
の反応生成物を白色粉末状沈殿として得る。得られたア
ミノ酸又はペプチド導入キチン等は、洗浄後凍結乾燥す
るのが好ましい。なお、反応の進行に従ってゲルが生成
する場合は、反応終了後かかるゲルを回収し、細粉砕し
て洗浄後、精製水に分散して凍結乾燥する。
【0011】
【実施例】さらに本発明の特徴について、実施例により
詳細に説明する。まず、本発明にて用いた活性エステル
の合成例を示す。
【0012】[4-(N-アセチルグリシルオキシ)-フェニ
ルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩の合成]N-アセチ
ルグリシン41.0g(0.35モル)と4-ヒドロキシ
フェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩93.2g
(0.35モル)を、3リットル三ツ口フラスコ中にて
アセトニトリル1.8リットルに溶解し、−10℃に冷
却した。ジシクロヘキシルカルボジイミド72.0g
(0.35モル)をアセトニトリル400mlに溶解し
て、滴下ロートにより前記反応溶液中に滴下し、滴下終
了後徐々に室温に戻して、一晩撹拌した。生成した1,3-
ジシクロヘキシル尿素の白色結晶をろ過して除去し、ろ
液より溶媒を減圧留去して得た残渣を繰り返しジエチル
エーテルで洗浄して、未反応のジシクロヘキシルカルボ
ジイミドを除去した。次いで残渣をアセトニトリルに溶
解して硫酸ナトリウムにより乾燥し、乾燥剤をろ別した
後に、再度溶媒を減圧留去して、標記の活性エステル1
18.0g(収率92%)を得た。
【0013】[4-(N-ラウロイルグリシルオキシ)-フェ
ニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩の合成]N-ラウ
ロイルグリシン90.0g(0.35モル)と4-ヒドロ
キシフェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩93.
2g(0.35モル)を、3リットル三ツ口フラスコ中
にてアセトニトリル1.4リットルに溶解し、−10℃
に冷却した。ジシクロヘキシルカルボジイミド72.0
g(0.35モル)をアセトニトリル420mlに溶解
して、滴下ロートにより前記反応溶液中に滴下し、滴下
終了後徐々に室温に戻して、一晩撹拌した。生成した1,
3-ジシクロヘキシル尿素の白色結晶をろ過して除去し、
ろ液より溶媒を減圧留去して得た残渣を繰り返しジエチ
ルエーテルで洗浄して、未反応のジシクロヘキシルカル
ボジイミドを除去した。次いで残渣をクロロホルムに溶
解して硫酸ナトリウムにより乾燥し、乾燥剤をろ別した
後に、ジエチルエーテルを少量ずつ加えて再結晶して、
標記の活性エステル61.0g(収率34%)を得た。
【0014】[4-(N-ラウロイルサルコシルオキシ)-フ
ェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩の合成]N-ラ
ウロイルサルコシン95.0g(0.35モル)と4-ヒ
ドロキシフェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩9
3.2g(0.35モル)を、3リットル三ツ口フラス
コ中にてアセトニトリル1.7リットルに溶解し、−1
0℃に冷却した。ジシクロヘキシルカルボジイミド7
2.0g(0.35モル)をアセトニトリル420ml
に溶解して、滴下ロートにより前記反応溶液中に滴下
し、滴下終了後徐々に室温に戻して、一晩撹拌した。生
成した1,3-ジシクロヘキシル尿素の白色結晶をろ過して
除去し、ろ液より溶媒を減圧留去して得た残渣を繰り返
しジエチルエーテルで洗浄して、未反応のジシクロヘキ
シルカルボジイミドを除去した。次いで残渣をクロロホ
ルムに溶解して硫酸ナトリウムにより乾燥し、乾燥剤を
ろ別した後に、再び溶媒を減圧留去して得られた残渣を
ヘキサンで繰り返し洗浄した。次いで減圧乾燥し、標記
の活性エステル170.0g(収率93%)を得た。
【0015】[4-(N-アセチルグリシルグリシルグリシ
ルオキシ)-フェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩
の合成]N-アセチルグリシルグリシルグリシン8.9g
(39ミリモル)と4-ヒドロキシフェニルジメチルスル
ホニウムメチル硫酸塩10.4g(39ミリモル)を、
1リットル三ツ口フラスコ中にてジメチルホルムアミド
270ml及びジメチルスルフォキシド100mlに溶
解し、−10℃に冷却した。ジシクロヘキシルカルボジ
イミド8.1g(39ミリモル)をジメチルホルムアミ
ド30mlに溶解して、滴下ロートにより前記反応溶液
中に滴下し、滴下終了後徐々に室温に戻して、一晩撹拌
した。生成した1,3-ジシクロヘキシル尿素の白色結晶を
ろ過して除去し、ろ液より溶媒を減圧留去して得た残渣
を繰り返しジエチルエーテルで洗浄して、未反応のジシ
クロヘキシルカルボジイミドを除去した。次いでメタノ
ールから再結晶を2回繰り返し、標記の活性エステル
4.6g(収率25%)を得た。
【0016】続いて、本発明に係る部分脱アセチル化キ
チン・キトサン誘導体の製造方法についての実施例を示
す。
【0017】[実施例1〜実施例10] N-(N'-アセチ
ルグルシル)部分脱アセチル化キチンの製造方法まず、
アセチル化度50%の部分脱アセチル化キチン粉末(味
の素株式会社製)1.0gを精製水99.0gに加えて
溶解し、1.0重量%の部分脱アセチル化キチン水溶液
100gを得た。用いた部分脱アセチル化キチンの数平
均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(カラム;
Shodex B-805,B-804、0.5M酢酸・0.5
M酢酸ナトリウム混合溶媒、27℃)により測定したと
ころ、3.9×105であった。
【0018】上記合成例により得た4-(N-アセチルグリ
シルオキシ)-フェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸
塩(Ac-Gly-OPDS)の表1に示す量を、精製水10.0
ml(実施例1)又は4.0ml(実施例2〜実施例1
0)に溶解し、上記1.0重量%の部分脱アセチル化キ
チン水溶液30.0g(実施例1)又は10.0g(実
施例2〜実施例10)に加え、表1に示す温度にて24
時間又は72時間反応させた。次いで、反応溶液に0.
1N水酸化ナトリウムを加えて塩基性とし、アセトン2
00ml中に滴下して再沈殿し、メンブレンフィルター
にて沈殿したポリマーをろ過して回収し、メタノール,
アセトン,ジエチルエーテルで繰り返し洗浄した後、精
製水に溶解して凍結乾燥し、N-(N'-アセチルグルシル)
部分脱アセチル化キチンを得た。なお実施例6〜実施例
10においては、表1に示すように、反応系にさらにト
リエチルアミン又は酢酸を加えた。
【0019】
【表1】
【0020】実施例1〜実施例10において、得られ
た、N-(N'-アセチルグルシル)部分脱アセチル化キチン
の収量及び収率と、部分脱アセチル化キチンの遊離アミ
ノ基に対する置換度を表2に示した。前記置換度は、重
水(D2O)及び重水素置換酢酸(CD3COOD)の容
量比95:5の混合溶媒による1.3重量%の溶液につ
いて、Bruker ARX400スペクトロメーター
にて333K,400MHzで測定したプロトン核磁気
共鳴スペクトル(NMR)におけるグルコサミン単位の
アノメリックプロトンシグナルと、N-アセチルグルコサ
ミン単位及びN-(N'-アセチルグリシル)グルコサミン単
位のアノメリックプロトンシグナルの比により求めた。
また収率は、前記により求められた置換度でN-アセチル
グリシル基が導入された部分脱アセチル化キチン誘導体
の理論収量を算出し、これを100%とした場合の収量
の割合により示した。
【0021】
【表2】
【0022】表2より明らかなように、本発明の実施例
においては、いずれも74%以上の高い収率が得られ
た。また、部分脱アセチル化キチンの遊離アミノ基に対
する置換度としては、4.4〜24%であり、部分脱ア
セチル化キチンの遊離アミノ基に対するAc-Gly-OPDSの
モル比や反応温度,反応時間により、前記置換度が制御
できることが示されていた。さらに、反応系にトリエチ
ルアミン0.27ミリモル又は酢酸0.31ミリモルを
添加した実施例6〜実施例10において、N-アセチルグ
リシンの導入反応への影響は認められなかった。従っ
て、本発明に係るアミノ酸等の導入方法は、水溶性の低
い高分子量キトサンや部分脱アセチル化キチンについて
も、酢酸水溶液等とすることにより応用し得ることが示
された。
【0023】[実施例11〜実施例13] N-(N'-ラウ
ロイルグリシル)部分脱アセチル化キチンの製造方法 上記合成例により得た4-(N-ラウロイルグリシルオキシ)
-フェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩(La-Gly-
OPDS)の表3に示す量を精製水5mlに溶解し、上記
1.0重量%の部分脱アセチル化キチン水溶液10.0
gに加え、27℃〜50℃の温度で72時間反応させ
た。次いで反応溶液に0.1N水酸化ナトリウムを添加
して塩基性とし、アセトン350ml中に滴下して再沈
殿し、メンブレンフィルターを用いて沈殿したポリマー
をろ別回収し、メタノール,アセトン,ジエチルエーテ
ルにより繰り返し洗浄した。得られたポリマーを精製水
に溶解し、凍結乾燥してN-(N'-ラウロイルグリシル)部
分脱アセチル化キチンを得た。収率及び部分脱アセチル
化キチンの遊離アミノ基に対する置換度を上記と同様に
して求め、収量とともに表4に示した。
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】表4より明らかなように、本発明の実施例
においては、64%〜98%の高い収率が得られた。ま
た、部分脱アセチル化キチンの遊離アミノ基に対する置
換度は、10%〜28%であった。
【0027】[実施例14] N-(N'-ラウロイルサルコ
シル)部分脱アセチル化キチンの製造方法 上記合成例により得た4-(N-ラウロイルサルコシルオキ
シ)-フェニルジメチルスルホニウムメチル硫酸塩(La-S
ar-OPDS)0.29g(0.56ミリモル)を精製水
5.0mlに溶解し、上記の1.0重量%部分脱アセチ
ル化キチン水溶液10.0g(部分脱アセチル化キチン
含量0.1g,遊離アミノ基0.28ミリモル)に加
え、40℃で72時間反応させた。反応が進行するに従
ってゲルが生成するため、反応終了後にかかるゲルを回
収し、細かく粉砕してメタノール,アセトン,ジエチル
エーテルにより繰り返し洗浄した。得られたポリマーを
精製水に分散し、凍結乾燥して99mgのN-(N'-ラウロ
イルサルコシル)部分脱アセチル化キチンを得た。上記
と同様にして求めた部分脱アセチル化キチンの遊離アミ
ノ基に対する置換度及び収率は、それぞれ8.0%及び
94%であった。
【0028】[実施例15] N-(N'-アセチルグリシル
グリシルグリシル)部分脱アセチル化キチンの製造方法 上記合成例により得た4-(N-アセチルグリシルグリシル
グリシルオキシ)-フェニルジメチルスルホニウムメチル
硫酸塩(Ac-Gly-Gly-Gly-OPDS)0.27g(0.56
ミリモル)を精製水5.0mlに溶解し、上記の1.0
重量%部分脱アセチル化キチン水溶液10.0g(部分
脱アセチル化キチン含量0.1g,遊離アミノ基0.2
8ミリモル)に加え、40℃で72時間反応させた。次
いで反応溶液に0.1N水酸化ナトリウムを添加して塩
基性とし、アセトン250ml中に滴下して再沈殿し、
メンブレンフィルターを用いて沈殿したポリマーをろ別
回収し、メタノール,アセトン,ジエチルエーテルによ
り繰り返し洗浄した。得られたポリマーを精製水に溶解
し、凍結乾燥して106mgのN-(N'-アセチルグリシル
グリシルグリシル)部分脱アセチル化キチンを得た。上
記と同様にして求めた部分脱アセチル化キチンの遊離ア
ミノ基に対する置換度及び収率は、それぞれ11%及び
100%であった。
【0029】[実施例16] N-(N'-アセチルグリシ
ル)キトサンの製造方法 水溶性を示す低分子化キトサン(数平均分子量;3,0
00〜30,000、和光純薬株式会社製)0.1gを
精製水1mlに溶解してキトサン水溶液を調製した。こ
のキトサン水溶液に、上記合成例により得た4-(N-アセ
チルグリシルオキシ)-フェニルジメチルスルホニウムメ
チル硫酸塩(Ac-Gly-OPDS)0.46g(1.2ミリモ
ル)を精製水4mlに溶解して滴下し、27℃で48時
間撹拌した。次いで反応溶液をアセトン200ml中に
滴下して再沈殿し、メンブレンフィルターを用いて沈殿
したポリマーをろ別回収し、得られたポリマーを水/ア
セトンにて繰り返し再沈殿して精製した。収量は98.
9mgであった。得られたポリマーの6重量%の重水溶
液について50℃で測定したプロトンNMRスペクトル
において、N-アセチルグルコサミンの量を示すメチル基
を内部標準とし、アミノ基の残量をグルコサミンの2位
のプロトンについて定量した結果、出発原料としたキト
サンの脱アセチル化度は94%で、遊離アミノ基含量は
0.58ミリモル、それらの置換度は73%であった。
この置換度を用いて理論収量を求めて算出した収率は7
0%であった。
【0030】次に、上記の実施例8及び実施例16にお
いて得られたN-(N'-アセチルグリシル)部分脱アセチル
化キチン(置換度=0.19)及びN-(N'-アセチルグリ
シル)キトサン(置換度=0.73)について、13CN
MRスペクトルの測定を行い、また実施例8,実施例1
3,実施例14及び実施例15において得られたN-(N'-
アセチルグリシル)部分脱アセチル化キチン(置換度=
0.19),N-(N'-ラウロイルグリシル)部分脱アセチ
ル化キチン(置換度=0.28),N-(N'-ラウロイルサ
ルコシル)部分脱アセチル化キチン(置換度=0.0
8),N-(N'-アセチルグリシルグリシルグリシル)部分
脱アセチル化キチン(置換度=0.11)について、赤
外吸収スペクトルの測定を行った。13CNMRスペクト
ルは、重水又は重水及び重水素置換酢酸の容量比95:
5の混合溶媒による溶液(原料とした部分脱アセチル化
キチンについては塩酸の重水溶液)について、Bruk
erARX400スペクトロメーターを用い、100M
Hzにて測定した。一方赤外吸収スペクトルは、JAS
CO FT/IR-610スペクトロメーターを用いて測
定した。
【0031】N-(N'-アセチルグリシル)部分脱アセチル
化キチン(置換度=0.19)及びN-(N'-アセチルグリ
シル)キトサン(置換度=0.73)について、13CN
MRスペクトルにおけるケミカルシフトの測定結果を表
5に示した。
【0032】
【表5】
【0033】N-アセチルグリシル基を導入したキトサン
又は部分脱アセチル化キチンにおいては、原料としたキ
トサン又は部分脱アセチル化キチンと構造が類似するた
め、骨格のケミカルシフト値の変化はほとんど見られな
い。しかしながら、グルコサミン単位又はN-アセチルグ
ルコサミン単位の3位又は6位の水酸基においてアシル
化が生じた場合、これらの3位又は6位の炭素のシグナ
ルに低磁場シフトが観察されるが、表5において明らか
なように、かかるケミカルシフトは認められなかった。
【0034】続いて、N-(N'-アセチルグリシル)部分脱
アセチル化キチン(置換度=0.19),N-(N'-ラウロ
イルグリシル)部分脱アセチル化キチン(置換度=0.
28),N-(N'-ラウロイルサルコシル)部分脱アセチル
化キチン(置換度=0.08),N-(N'-アセチルグリシ
ルグリシルグリシル)部分脱アセチル化キチン(置換度
=0.11)についての赤外吸収スペクトルの測定結果
を表6に示した。
【0035】
【表6】
【0036】やはり、原料としたキトサン又は部分脱ア
セチル化キチンと、これらの誘導体との構造の類似性に
より、赤外吸収波数の変化は小さい。しかしながら、エ
ステルのνC=Oは1750cm-1〜1735cm-1に現
れるが、表6に示されるように、各試料のいずれにおい
てもνC=Oについては、アミドI吸収帯(1650cm
-1の領域)より高波長側に吸収は全く観察されなかっ
た。
【0037】従って、表5及び表6に示した結果から、
本発明に係る部分脱アセチル化キチン又はキトサンの誘
導体においては、遊離アミノ基のみが選択的にN-アシル
アミノ酸又はN-アシル化ペプチドにより置換され、構成
糖であるグルコサミン又はN-アセチルグルコサミンの3
位或いは6位の水酸基の置換は全く生じていないことが
示される。
【0038】また、上記実施例1〜実施例16により得
られたN-アシルアミノ酸又はN-アシル化ペプチドを導入
した部分脱アセチル化キチン及びキトサンにおいて、ア
シル基として炭素鎖長の長いラウロイル基を用いたもの
では良好な両親媒性が認められ、界面活性剤や乳化剤と
しての用途が期待された。
【0039】さらに本発明においては、導入するアミノ
酸及びペプチドの種類やキチン,キトサンへの導入率を
制御することができ、それにより、キチン,キトサンの
溶解性,粘度,親水性−疎水性バランス,湿潤性といっ
た物性を制御することが可能である。さらに、水溶液又
は水性溶媒中にて穏和な条件で導入反応を進行させるこ
とができるため、生理活性を有するアミノ酸やペプチド
類を、それらの活性を保持したままキチン,キトサンに
導入することも可能となる。
【0040】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明により、有
機溶媒に不溶な部分脱アセチル化キチンやキトサンにお
いても、これらの遊離アミノ基に対し選択的にアミノ酸
及びペプチドを導入することができ、構成糖の水酸基の
置換の全くない部分脱アセチル化キチン,キトサン誘導
体を提供することができた。また本発明は、さらに種々
のアミノ酸及びペプチドの導入にも幅広く利用できて、
それらの配列の制御や生理活性の保持をも可能とするも
のである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C090 AA05 BA62 BB17 BB36 BB53 BD36 CA35 DA12 4D077 AB10 AC01 BA02 BA07 CA03 DA02X DC04Z DC12Z DC50Z DC53Z DD04X DD62Z DD70Z DE02X DE04X DE08X DE09X DE24X DE24Z 4H045 AA10 AA20 BA53 EA60 FA41 FA58

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アミノ基を保護したアミノ酸及びペプチ
    ドの1種又は2種以上により遊離アミノ基が選択的に置
    換されており、実質的に水酸基の置換のない部分脱アセ
    チル化キチン・キトサン誘導体。
  2. 【請求項2】 アミノ基を保護したアミノ酸及びペプチ
    ドの1種又は2種以上と、アリールスルホニウム塩より
    形成される活性エステルを用いることにより、アミノ酸
    及びペプチドを部分脱アセチル化キチン又はキトサンの
    遊離アミノ基に対し選択的に導入することを特徴とす
    る、請求項1に記載の部分脱アセチル化キチン・キトサ
    ン誘導体の製造方法。
  3. 【請求項3】 アリールスルホニウム塩が、4-ヒドロキ
    シフェニルジアルキルスルホニウム塩である、請求項2
    に記載の部分脱アセチル化キチン・キトサン誘導体の製
    造方法。
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