JP2000261016A - 光合成型有機太陽電池 - Google Patents

光合成型有機太陽電池

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JP2000261016A
JP2000261016A JP11065136A JP6513699A JP2000261016A JP 2000261016 A JP2000261016 A JP 2000261016A JP 11065136 A JP11065136 A JP 11065136A JP 6513699 A JP6513699 A JP 6513699A JP 2000261016 A JP2000261016 A JP 2000261016A
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JP11065136A
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Hiroshi Imahori
博 今堀
Hiroko Nakashima
容子 中島
Shinichiro Ozawa
真一郎 小澤
Yoshimitsu Sakata
祥光 坂田
Kiminori Ushita
公規 丑田
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Japan Science and Technology Agency
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
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RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Japan Science and Technology Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、高効率の光合成型有機光電池及び
その材料を提供する。 【解決手段】 本発明は、球殻状の炭素分子を電子受容
体として内包している化合物からなる光電荷分離材料、
より詳細には球殻状の炭素分子を電子受容体として内包
している化合物が、電子供与体、光増感剤、電子受容体
を3次元的に配置し、光励起による電荷分離状態に方向
性を持たせた化合物である光電荷分離材料、及び、それ
を用いた光電池に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子供与体、光増
感剤、電子受容体を3次元的に配置した化合物からなる
電荷分離材料、及び、それを用いた光電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、環境問題・エネルギー問題との関
連から太陽エネルギーの有効利用に関心が集まってい
る。既にエネルギー変換効率が10%前後の無機系半導
体を用いた太陽電池は実用化されるに到っている。しか
しながら、これらの太陽電池はコストや効率の点で満足
のいくものでない。一方、植物の光合成は光エネルギー
を化学エネルギーに変換する天然のシステムであり、光
による電荷分離の効率に限ればほぼ100%である。従
って、この原理をうまく利用できればエネルギー変換効
率の高い太陽電池が開発できる可能性がある。そこで我
々は植物の光合成型有機太陽電池の開発を目指している
のだが、その効率を向上させる一般的な原理を確立した
のでここに報告する。
【0003】植物の光合成では反応中心タンパク質に巧
妙に配置された発色団間を効率よく電子が移動すること
で長寿命の光電荷分離状態が生成し、最終的に光エネル
ギーが化学エネルギーへと変換されている。これを人工
的に実現するためには、 i)電子供与体、光増感剤、電子受容体を3次元的に適
切に配置し、光増感剤の光励起により励起された増感剤
から電子受容体に電子が移動し、さらに光増感剤から電
子供与体へと正孔が移動することで効率よく後続反応に
利用可能な電荷分離状態が生成すること、 ii)前記のi)で述べた電荷分離状態を方向性を持たせ
ることにより失活することなくマクロな電流として取り
出すことが重要である。
【0004】光合成において、光エネルギーを化学エネ
ルギーに変換する場合の鍵となるプロセスは、反応中心
タンパク質複合体における初期光電荷分離過程である
( Deisenhofer, J. & Norris, J. R. (eds) ”The Pho
tosynthetic Reaction Center”(Academic, San Diego,
1993))。超高速で単向性の電子移動は、その膜タンパ
ク質中に配向されて埋め込まれた発色団に沿って起こ
り、膜の内外に電荷分離状態を100%近い量子収率で
生成する。この高効率のプロセスをまねた太陽エネルギ
ーの変換システムを構築しようとして、数々の試みがな
されている( Nishitani, S. et al., J. Am. Chem. So
c. 106, 2442-2443 (1984); Moore, T. A. et al., Na
ture 307, 630-632 (1984); Wasielewski, M. R., et
al., J. Am. Chem. Soc. 107, 5562-5563 (1985)な
ど)。このような有機分子に基づいた光エネルギ−変換
は、電子移動のMarcus理論に基づいて巧妙に光電
荷分離機能を持つ化合物を設計し、その化合物を単向性
配列することによって実現されるであろう。シリコンな
どの無機半導体を使う常法にくらべて、このアプローチ
の利点は、発色団や発色団間の結合を有機合成の手法で
修飾することによって微妙な調整が可能となる点であ
る。従って、各電子移動過程を最適化することにより、
光エネルギー変換の高効率化が期待できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高効率の光
合成型有機太陽電池を提供する。本発明は、電子供与
体、光増感剤、電子受容体を3次元的に適切に配置し、
光増感剤の光励起により励起された増感剤から電子受容
体に電子が移動し、さらに光増感剤から電子供与体へと
正孔が移動することで効率よく後続反応に利用可能な電
荷分離状態が生成し、前記の電荷分離状態を方向性を持
たせることにより失活することなくマクロな電流として
取り出すことができる太陽電池を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の
i)に関しては電子供与体、光増感剤、電子受容体とし
てフェロセン類、ポルフィリン類、球殻状の炭素分子
(例えば、フラーレン(C 60))を用い、さらにこれ
らを適切に化学結合で連結することで分子内での光に誘
起された電荷分離状態を高効率で達成することを可能に
した。また前記のii)に関しては自己組織化単分子膜
法を用いることで金属、半導体などの基板上に先の分子
を化学結合を介して並べることに成功し、高効率の光電
池となることを見い出した。
【0007】具体的には金基板上に上記の3種の分子を
連結した分子を自己組織化単分子膜法を用いて基板の法
線方向に揃うように並べた。この修飾金電極を作用極、
白金電極を対極、銀・塩化銀電極を参照電極に用いて、
3極湿式系の光電気化学セルを組み立てその光電池とし
ての性能を評価したところ、電子担体として酸素または
メチルビオローゲン存在下に量子収率25%以上を示し
た。これは光合成の光誘起多段階電子移動をまねた有機
光電池としては最高の性能のものである(今までの最高
値に比較して2倍以上)。従来の光合成型光電池に比べ
て効率が大きく向上した理由としては、球殻状の炭素分
子、好ましくはフラーレンを電子受容体として用いたこ
とがあげられる。これはフラーレンが小さな再配向エネ
ルギーを持つためにポルフィリンからの光電荷分離を加
速する一方、逆電子移動を遅く、さらに電子担体への電
荷シフトを加速したためと考えられる。これにより電荷
分離の効率を大きく上げることができた。
【0008】この手法はC60以外のフラーレンやナノ
チューブを用いても可能であると考えられ、また有機分
子を用いているために電子移動の効率を分子設計により
最適化できると思われる。また自己組織化単分子膜法は
金属に限らず、半導体、絶縁体などの基板上にも作製可
能なため適用範囲が広いと考えられる。以上のように、
本発明は有機分子に基づいた太陽電池作製の新たな原理
を提供するものである。
【0009】即ち、本発明は、球殻状の炭素分子を電子
受容体として内包している化合物が、電子供与体、光増
感剤、電子受容体を3次元的に配置し、光励起による電
荷分離状態に方向性を持たせた化合物からなる光電荷分
離材料に関する。本発明の球殻状の炭素分子を電子受容
体として内包してなる化合物としては、一般式(I)、 A−Y−B−Z−D (I) (式中、Aはサンドイッチ型の有機金属錯体を含有する
基を示し、Bは4つのピロール環がα位置で4つのメチ
ン基と交互に結合した大環状化合物からなる基を示し、
Dは球殻状の炭素分子からなる基を示し、Y及びZはそ
れぞれ独立して前記A、B及びDの基を結合させるリン
カー基を示す。)で表される電荷移動用化合物、より詳
細には、次式
【化2】 (式中、Rは水素原子、メルカプト低級アルコキシ基
又はメルカプト低級アルキル基を示し、Arは置換基を
有してもよいフェニル基を示す。)で表される化合物が
挙げられ、本発明はこれらの化合物にも関する。
【0010】また、本発明は、電子供与体、光増感剤、
電子受容体を3次元的に配置し、光励起による電荷分離
状態に方向性を持たせた光電池、より詳細には前記した
本発明の化合物を用いてなる光電池に関する。本発明の
光電池は、電子供与体、光増感剤、電子受容体を3次元
的に配置した化合物が基板に物理的又は化学的に結合、
例えば、吸着されている状態であってもよい。さらに本
発明は、基板の表面に前記した本発明の化合物が自己組
織化単分子膜を形成している、自己組織化単分子膜を含
有した基板に関する。
【0011】本発明の前記した基板としては、本発明の
前記した化合物が吸着や化学結合などにより物理的又は
化学的に結合できるものであり、好ましくは基板の表面
にこれらの化合物からなる自己組織化単分子膜を形成す
ることができるものであればよく、例えば、金などの金
属、半導体、絶縁体などを使用することができる。ま
た、基板を電池の電極として使用することもでき、この
場合には金属などの導電性の基板を使用するのが好まし
い。
【0012】本発明の化合物における、 球殻状の炭素
分子としては、サッカーボール状などの球殻状の炭素分
子や直径がナノメートル単位の筒状の炭素分子であるナ
ノカーボンなどであって、例えばC60、C70などの
フラーレン類やナノチューブなどが挙げられる。これら
のフラーレン類は置換基を有するものであってもよい。
本発明の4つのピロール環がα位置で4つのメチン基と
交互に結合した大環状化合物としては、光増感剤として
の性質を有するものであり、例えばポルフィリンやフタ
ロシアニンなどのポルフィリン類が好ましい。また、本
発明のサンドイッチ型の有機金属錯体としては、シクロ
ペンタジエンなどの環状化合物により金属がサンドイッ
チされている金属錯体であり、例えば、フェロセンなど
の鉄錯体が挙げられる。
【0013】本発明の前記A、B及びDの基を結合させ
るリンカー基としては、前記した電子供与体となる化合
物、光増感剤となる化合物及び電子受容体となる化合物
を適当な距離を置いて化学的に結合させ得るものであれ
ばよく、官能基を有していなくてもよいが、化学結合を
容易に生成させるための官能基、例えばアミド基、エス
テル基、エーテル基などを有しているものが好ましい。
本発明の化合物は、金属などの基板に物理的又は化学的
に結合することができるための側鎖を有しているものが
好ましい。このような側鎖は、本発明の化合物の電子供
与体部分、光増感剤部分、電子受容体部分、又は、リン
カー基のいずれの部分から出すこともできるが、電子供
与体部分、光増感剤部分、又は電子受容体部分をこのよ
うな側鎖で化学修飾するよりも、リンカー基にこのよう
な側鎖を有するように化学修飾するほうが製造が容易で
あるために、リンカー基にこのような側鎖を有するのが
好ましい。
【0014】リンカー基の側鎖の長さは、その原子数が
多いと基板との相互作用が少なくなり、例えば基板とし
て金属を使用する場合には原子数が多くなると金属によ
る光増感剤の失活が抑えられることになる。また、原子
数が一定以上(例えば、10個以上)になると高密度で
高配向性の膜を作製することが可能となる。しかし、原
子数が余り多くなり過ぎると、逆に金属などの基板と電
荷分離分子との電子のやりとりが遅くなるので、これら
の要因のバランスをとってリンカー基の側鎖を設計する
必要がある。このような側鎖としては、基板と本発明の
化合物とが適当な距離を保てるような原子数を有し、か
つ、基板と物理的又は化学的に結合することができる基
を有するものであれば特に制限はない。基板と本発明の
化合物の距離としては、原子数で、3〜100、好まし
く5〜20、より好ましく10〜20程度である。ま
た、基板と物理的又は化学的に結合することができる基
としては種々のものが使用できるが、金属、特に金との
結合の場合には硫黄含有の基、例えばメルカプト基など
が好ましい。
【0015】好ましい側鎖としては、メルカプト低級ア
ルコキシ基又はメルカプト低級アルキル基などが挙げら
れる。低級アルキル基としては、炭素数5〜100、好
ましくは5〜20、より好ましくは10〜20の直鎖又
は分枝状のものが挙げられ、低級アルコキシ基としては
前記した低級アルキル基から誘導されるものが好まし
い。また、これらの低級アルキル基や低級アルコキシ基
の一部の炭素原子が酸素原子や窒素原子などの異種原子
やフェニル基で置き換えられているものを使用すること
もできる。例えば、次式、 HS-(CH)-O-(p-C)-O-(CH)-O-
(p-C)-O-(CH )-O− (式中、(p−C)は、パラフェニレン基を示
し、l、m、nは整数を示す。)で表される基などとす
ることもできる。
【0016】以下、本発明をより具体的に説明する。電
極上に形成したフェロセン(Fe(C サン
ドイッチ型の有機金属錯体)−ポルフィリン(4つのピ
ロール環がα位置で4つのメチン基と交互に結合した大
環状化合物)−フラーレン(C60やC70をはじめと
する一連の球殻状の炭素分子の総称。サッカーボール分
子)の3種の分子を連結した分子(以下、トライアド
(triad)という。)からなる自己組織化単分子膜
の光電気化学的性質を検討した。トライアド電池の量子
収率は25%であり、電極上で人工的に光合成をまねた
ものの中での最高値であった。
【0017】光合成における多段階的な電子移動は、共
有結合した電子供与体−受容体分子により提示されてい
るが、その電荷分離状態を利用する方法についてはこれ
まで十分構築されていない。自己組織化単分子膜は、構
造が均一で配向性がよいため、基板上に作る電子供与体
−電子受容体連結分子を配列するのに使用することも可
能である。本発明者らは、3つの発色団をフェロセン
(Fe)、ポルフィリン(P)、C 60の順番に並べこ
れらが線型に固定された配列を有する次式、
【化3】 (式中、Rは−O(CH11−SHであり、Ar
は3,5−ジ(tert−ブチル)フェニル基を示
す。)で表されるトライアド(1)を設計した。
【0018】ポリメチレン・アルカンチオールは、S−
Au結合を使って金の表面に密に充填された単分子膜を
形成することはよく知られている。このように、長いア
ルキル鎖を持ったチオールをトライアド化合物の末尾に
導入すれば、トライアド(1)は金の表面上に単向性に
整列し、均一な単分子膜を形成することが予想される
(CPKモデルから予測される厚みは50Å(オングス
トローム)程度である。)。各状態におけるトライアド
のエネルギー勾配は、 Fc−−C60>Fc−P−C60 >Fc
−P−C60 の順序となる。したがって、類似のカルテノイド−ポル
フィリン−C60トライアドで見られたように(Liddel
l, P.A., et al., J. Am. Chem. Soc., 119, 1400-1405
(1997))、分子内で逐次的な電子移動(ET)を示す
であろう。すなわち、 Fc−−C60 → Fc−P−C60
Fc−P−C60 である。一方、フラーレンの特異な電子移動(ET)特
性を解明するため、電子供与体を結合したフラーレンが
多数合成されている(lmahori, H., et al., Adv. Mate
r., 9, 537-546 (1997);Martin, N., et al., Chem. R
ev., 98, 2527 (1998))。
【0019】本発明者らは、ETの再配向エネルギー
(λ)が小さいため、C60が電子受容体として、分子
間の光誘起電荷分離(CS)を加速し、電荷再結合(C
R)を減速することを報告してきた(Imahori, H., et
al., Chem. Phys. Lett., 263,545-550 (1996); Imaho
ri, H., et al., J. Am. Chem. Soc., 118, 11771-1178
2 (1996); Imahori, H., et al., Angew. Chem., Int.
Ed. Engl., 36, 2626-2628 (1997); Guldi, D. M., e
t al., J. Am. Chem. Soc., 119, 5744-5745 (199
7))。
【0020】C60のλが小さいことは、光合成ETの
反応中心における場合と同様に、自由エネルギーの消費
が極小になり、CSが溶液中および電極上での電子移動
反応を定量的に取り扱う理論であるMarcus理論に
おけるトップ領域に入り、そしてCRが同じく逆転領域
に強制的に入ってしまうような、人工的な多段階電子移
動プロセスを実現するために重要な点である。したがっ
て、C60を含んだトライアドと自己組織化単分子膜
(SAMs)の組み合わせは、人工的に光合成を模倣す
る場合の有用な手法になると考えられる。
【0021】図1に示される化合物1〜化合物7の分子
構造はプロトン核磁気共鳴法およびマススペクトル法等
の分光学的データによって完全に確認された。THF中
の化合物2の吸収スペクトルは、基本的に化合物5、6
および7の吸収スペクトルの線形和であり、これらの発
色団の間に強い相互作用がないことを示す。化合物2お
よび3の蛍光スペクトルは化合物5のスペクトルに比べ
て、同濃度でソーレー帯(ポルフイリン類に共通な吸収
スペクトルの、400nm付近のものをいう。)を励起
した場合、大きく消光される(THF中における相対強
度は、化合物2が0.14、化合物3が0.19であ
る)。それとは対照的に、化合物4の化合物5に対する
相対蛍光量子収率(0.60)は、先に述べたものに比
べてかなり大きく、励起一重項のポルフイリンが結合し
たC60によって失活することが、化合物1の内部での
主要経路であると考えられる。
【0022】表面の被覆密度を計算するために、0.1
M n−BuNPFの電解質を含むジクロロメタ
ン溶液中で金基板上の化合物1につき、100 mV
の掃引速度でサイクリック・ボルタンメトリーを
実施した。最初の酸化と、それに引き続く再還元の波形
の間にあるΔEpeak(=180 mV)が通常の溶
液中の値(60mV)よりも大きいのは、電極−フェロ
セン間が空間的に固定されているためである。フェロセ
ン部分の酸化波ピーク面積の電荷量から計算した金電極
上の化合物1の吸着量は1.9×10−10mol c
−2(1分子の占有面積:86平方オングストローム
/分子)であり、これは金電極上のポルフィリン−ポリ
アルカンチオール系の値(0.8−2.0×10−10
molcm−2)と同程度であった。
【0023】トライアドが金表面上に垂直配向している
と仮定すれば、1分子の占有面積は約87平方オングス
トロームと計算され、推定値と一致する。したがって、
トライアド分子は単分子膜中でほぼ垂直配向した密な充
填となっていると結論できる。
【0024】金基板上の化合物1を使って、酸素飽和し
た0.1 M NaS0溶液中で3極系の光電気化
学的な測定を行った。438.5(±4.9)mmの光
を60μ W cm−2照射したときの、それぞれのバ
イアス電圧に対する光電流の変化を図2に示す。SAM
(自己組織化単分子膜)は、光を点滅させると光電気化
学的な応答を示した。光電流は、アルゴンを溶液中に吹
き込むと減衰し、続いて酸素を吹き込むと初期状態に戻
った。この結果は、C60 がOに電子1個を供与し
てO を生成し、光電流を発生させていることを示す
(Imahori, H., et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 印
刷中; Kim, Y. S., et al., J. Phy. Chem., 98, 984-
988(1994))。
【0025】光電流は照射中、少なくとも1時間は持続
した。ポルフィリン−ポリアルカンチオール系の光電流
の強度は、本システムよりも2桁小さかった。金電極に
負の電位を印加してゆくとカソード光電流が増加するこ
とは、光電流が電解質を通じて金電極から対極へ流れる
ことを示す。+500mV付近で電位を負に印加してゆ
くと光電流強度が劇的に増加するが、これはフェロセン
の第一酸化電位の値とよく一致する(図2参照)。この
ことは、光電流の発生が、金電極とフェロセン間の電子
移動の速度によって制御されていることを示す。
【0026】メチルビオローゲン(MV2+)を電子担
体として用いると、光電流の経時特性はMV2+濃度に
依存する。アルゴンまたは酸素飽和条件においてMV
2+濃度を増加すると初期および安定した光電流が増加
したが、これはMV2+もC から電子を受容して
MVを生成し、光電流を発生させていることを示す。
【0027】図3は、THF中の化合物2および空気中
金基板上の化合物1の透過モードでの吸収スペクトルと
トライアド光電池の作用スペクトルとを示す。金基板上
の化合物1のソーレー帯のピーク位置は、THF中にお
ける場合に比べて、11nm赤色シフトしている。この
ことは、SAM中でポルフィリン部分のπ−π相互作用
が増加したことを示し、表面被覆値が大きいという計算
結果とよく一致する。光電池の作用スペクトルが金基板
上の化合物1の吸収スペクトルとおおよそ一致すること
は、ポルフイリンが光電流発生のための主要な光活性種
であることを示す。
【0028】金基板上の化合物1に吸収された光子の数
に基づいた量子収率を、入力エネルギー、光電流密度お
よび吸収スペクトルで測定された吸光度を用いて計算し
た。30mM MV2+の酸素飽和溶液を用いた最適条
件では、トライアド光電池の光電流密度は−200mV
において660nA cm−2であった。また、入力光
子エネルギー2.8eVで出力電子エネルギーが0.2
8eV(=−0.2−(−0.48))であることか
ら、励起波長438.5nmにおける量子収率および量
子収率に基づいた光エネルギー変換効率はそれぞれ25
%および2.5%となり、これは、電極上で光合成を人
工的にまねたこれまでの報告の最高値(11%)を2倍
以上うわまわる。
【0029】この光電流の発生は、図4に示した機構で
説明できる。蛍光の消光実験および以前に報告した結果
に基づけば、光誘起電子移動は、励起一重項状態のポル
フィリンからC60に優先的に起こる。その結果生じた
60 が、酸素(−0.48V(O/O ))
(Bard, A. J., Rarsons, R. & Jordan, J.(eds) "Stan
dard Potentials in Aqueous Solution",(Marcel Dekke
r, New York, 1985))、および/またはMV+2(−
0.62V(MV+2/MV))等の電子担体に1個
の電子を移動し、次いでこれらの電子担体が対極に1個
の電子を供与する。一方、引き続いてフェ口センからP
、次いで金電極からFcへの電子移動が起こって、
その結果初期状態が回復され、トライアド単分子膜と電
解質を通して金電極から対極へと電子の流れが発生す
る。
【0030】本システムの高効率について、その特徴を
挙げる。本発明者らは、金電極上のSAM中のポルフィ
リンの励起状態が、金電極によって強く失活することを
既に示している(Imahori, H., et al., Langmuir, 14,
5335-5338 (1998))。このことから、高効率化のため
には、i)はじめに起こるから第一の受容体への
光励起電子移動が金電極による失活過程と十分に競争す
ること、ii)第二の受容体への電子移動が基底状態へ
のCR(電荷再結合)よりも十分に速いこと、が必要に
なる。システム中にC60を用いることはこれらの要求
事項を十分に満足するため、量子収率の大幅な向上が得
られたと考えられる。フラーレンを電子受容体とし、分
子工学を利用して基板にSAMを作製する本発明のアプ
ローチは、高効率の有機分子に基づく人工光合成材料を
開発するための重要な指針となるものである。
【0031】
【実施例】次に実施例により、より具体的に本発明を説
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。
【0032】実施例1 実験方法 (111)表面を有する金電極は、(100)シリコン
ウェーハー(Sumitomo Sitx Cor
p.)上に順番にクロム(50Å(オングストロー
ム))と金(2000Å(オングストローム))とを真
空蒸着して作製した。金コートしたウェハーをスライド
状(約1−3cm × 1−3cm)に切り、希塩酸、
ミリボア(millpore)水、およびエタノールで
洗浄し、アルゴン気流中で乾燥した。単分子膜は、5.
0×10−5MのCHCl溶液で25℃で20時間
処理して形成した。浸漬後、電極をCHClおよび
エタノールでよく洗浄し、アルゴン気流中で乾燥した。
表面粗さ(1.1)はヨウ素の化学吸着により測定し
た。電気化学測定はCV−50Wボルタンメトリック・
アナライザー(Bioanalytical Syst
ems、Inc.)を用い3極セルには、修飾金作用極
(0.48cm)、白金ワイヤ対極およびAg/Ag
Cl参照極を使用した。光電気化学測定は、Pyrex
UVセル(5ml)内で、酸素雰囲気中、180Wハ
ロゲンランプ(Sumida LS−140UV)から
の光を干渉フィルター(MIF−S、Vacuum O
ptics Corporation of Japa
n)に通した単色励起光を照射して実施した。光強度は
光パワー光度メーター(Anritsu ML9002
A)によってモニターした。
【0033】以上の実験の手順を図5にまとめて示す。
また、光電流の測定に用いた装置を図6に示す。
【0034】
【発明の効果】本発明は、光合成の原理を利用した高効
率の光電池を提供するものである。また、本発明は、球
殻状の炭素分子を電子受容体として内包している化合物
からなる光電荷分離材料を提供するものであり、本発明
の光電荷分離材料は、電子供与体、光増感剤、電子受容
体を化学結合により3次元的に配置した光電荷分離材料
用化合物を用いることにより高効率で電荷の移動がで
き、光エネルギーを化学エネルギーや電気エネルギーに
高効率で変換する材料として極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の化合物1−7の化学構造を例
示したものである。
【図2】図2は、トライアドSAM修飾金電極中の光電
流の各バイアス電圧に対する経時変化を示す。
【図3】図3は、トライアド光電池の作用スペクトル
(実線○印)および、空気中の金基板上の化合物1(破
線)とTHF中の化合物2(点線)の吸収スペクトルを
示す。
【図4】図4は、本発明の光電流発生の原理を模式的に
示す。
【図5】図5は、本発明の単分子膜の形成方法の手順を
例示したものである。
【図6】図6は、本発明の光電池の光電流を測定する装
置の例を示したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中島 容子 大阪府豊中市待兼山町1−12 大阪大学宿 舎4−3 (72)発明者 小澤 真一郎 大阪府箕面市小野原東2−5−54 スカー ルハイツ101号 (72)発明者 坂田 祥光 京都市右京区鳴滝春木町5−2 (72)発明者 丑田 公規 埼玉県朝霞市大字上内間木752−1 ライ トウェーブ朝霞501号 Fターム(参考) 5F051 AA20 FA06 5H032 AA06 AS16 EE01 EE16 EE17 EE20

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 球殻状の炭素分子を電子受容体として内
    包している化合物からなる光電荷分離材料。
  2. 【請求項2】 球殻状の炭素分子を電子受容体として内
    包している化合物が、電子供与体、光増感剤、電子受容
    体を3次元的に配置し、光励起による電荷分離状態に方
    向性を持たせた化合物である請求項1に記載の光電荷分
    離材料。
  3. 【請求項3】 球殻状の炭素分子を電子受容体として内
    包している化合物が一般式(I)、 A−Y−B−Z−D (I) (式中、Aはサンドイッチ型の有機金属錯体を含有する
    基を示し、Bは4つのピロール環がα位置で4つのメチ
    ン基と交互に結合した大環状化合物からなる基を示し、
    Dは球殻状の炭素分子からなる基を示し、Y及びZはそ
    れぞれ独立して前記A、B及びDの基を結合させるリン
    カー基を示す。)で表される電荷移動用化合物である請
    求項1又は2に記載の光電荷分離材料。
  4. 【請求項4】 球殻状の炭素分子が、C60又はC70
    である請求項1〜3のいずれかに記載の光電荷分離材
    料。
  5. 【請求項5】 サンドイッチ型の有機金属錯体が、フェ
    ロセンである請求項3又は4に記載の光電荷分離材料。
  6. 【請求項6】 4つのピロール環がα位置で4つのメチ
    ン基と交互に結合した大環状化合物がポルフィリン類で
    ある請求項3〜5のいずれかに記載の光電荷分離材料。
  7. 【請求項7】 リンカー基が、基板に物理的又は化学的
    に結合し得る基を有している請求項3〜6のいずれかに
    記載の光電荷分離材料。
  8. 【請求項8】 次式 【化1】 (式中、Rは水素原子、メルカプト低級アルコキシ基
    又はメルカプト低級アルキル基を示し、Arは置換基を
    有してもよいフェニル基を示す。)で表される請求項3
    〜7のいずれかに記載の光電荷分離材料。
  9. 【請求項9】 電子供与体、光増感剤、電子受容体を3
    次元的に配置し、光励起による電荷分離状態に方向性を
    持たせた光電荷分離材料を含有してなる光電池。
  10. 【請求項10】 電子供与体、光増感剤、電子受容体を
    3次元的に配置した化合物が請求項3〜8のいずれかに
    記載の光電荷分離材料用の化合物からなる請求項9に記
    載の光電池。
  11. 【請求項11】 電子受容体部分がフラーレンから誘導
    される基である請求項9又は10に記載の光電池。
  12. 【請求項12】 電子供与体、光増感剤、電子受容体を
    3次元的に配置した化合物が基板に物理的又は化学的に
    結合している請求項9〜11のいずれかに記載の光電
    池。
  13. 【請求項13】 基板に電子供与体、光増感剤、電子受
    容体を3次元的に配置した化合物が吸着している請求項
    12に記載の光電池。
  14. 【請求項14】 基板が金属である請求項12又は13
    に記載の光電池。
  15. 【請求項15】 基板の表面に電子供与体、光増感剤、
    電子受容体を3次元的に配置した化合物が自己組織化単
    分子膜を形成している、自己組織化単分子膜を含有した
    基板。
  16. 【請求項16】 基板が金属である請求項15に記載の
    自己組織化単分子膜を含有した基板。
  17. 【請求項17】 電子供与体、光増感剤、電子受容体を
    3次元的に配置した化合物が請求項3〜8のいずれかに
    記載の化合物である請求項15又は16に記載の自己組
    織化単分子膜を含有した基板。
  18. 【請求項18】 請求項3〜8のいずれかに記載された
    電荷移動用化合物。
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