JP2000247611A - 電解酸化による多硫化物の製造方法 - Google Patents

電解酸化による多硫化物の製造方法

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JP2000247611A
JP2000247611A JP11051016A JP5101699A JP2000247611A JP 2000247611 A JP2000247611 A JP 2000247611A JP 11051016 A JP11051016 A JP 11051016A JP 5101699 A JP5101699 A JP 5101699A JP 2000247611 A JP2000247611 A JP 2000247611A
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polysulfide
chamber
producing
cathode
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Tetsuji Shimodaira
哲司 下平
Tatsuya Ando
達也 安藤
Junji Tanaka
潤治 田中
Keigo Watabe
啓吾 渡部
Yasutoku Nanri
泰徳 南里
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Kawasaki Kasei Chemicals Ltd
Nippon Paper Industries Co Ltd
Jujo Paper Co Ltd
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Kawasaki Kasei Chemicals Ltd
Asahi Glass Co Ltd
Nippon Paper Industries Co Ltd
Jujo Paper Co Ltd
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    • D21PAPER-MAKING; PRODUCTION OF CELLULOSE
    • D21CPRODUCTION OF CELLULOSE BY REMOVING NON-CELLULOSE SUBSTANCES FROM CELLULOSE-CONTAINING MATERIALS; REGENERATION OF PULPING LIQUORS; APPARATUS THEREFOR
    • D21C11/00Regeneration of pulp liquors or effluent waste waters
    • D21C11/0057Oxidation of liquors, e.g. in order to reduce the losses of sulfur compounds, followed by evaporation or combustion if the liquor in question is a black liquor

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Abstract

(57)【要約】 【課題】チオ硫酸イオンの副生を極めて少なくして高濃
度の多硫化イオウを含む蒸解液を高選択率かつ低電力で
得る。 【解決手段】多孔性アノードを配するアノード室、カソ
ードを配するカソード室、アノード室とカソード室を区
画する隔膜を有する電解槽のアノード室に硫化物イオン
含有溶液を導入し、多硫化物イオンを得る多硫化物の製
造方法において、電解時にカソード室側の圧力をアノー
ド室側に対して高くする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電解酸化による多
硫化物の製造方法に関し、特にパルプ製造工程における
白液または緑液を電解酸化して多硫化物蒸解液を製造す
る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】木材資源の有効利用として、化学パルプ
の高収率化は重要な課題である。この化学パルプの主流
をなすクラフトパルプの高収率化技術の一つとして多硫
化物蒸解プロセスがある。
【0003】多硫化物蒸解プロセスにおける蒸解薬液
は、硫化ナトリウムを含むアルカリ性水溶液、いわゆる
白液を、活性炭等の触媒の存在下に空気等の分子状酸素
により酸化する(例えば下記反応式1)ことにより製造
される(特開昭61−259754号公報、特開昭53
−92981号公報)。この方法により硫化物イオンベ
ースで転化率60%、選択率60%程度で多硫化イオウ
濃度が5g/L程度の多硫化物蒸解液を得ることができ
る。しかし、この方法では転化率を上げた場合に副反応
(例えば下記反応式2、3)により蒸解には全く寄与し
ないチオ硫酸イオンの副生が多くなるため、高濃度の多
硫化イオウを含む蒸解液を高選択率で製造することは困
難であった。
【0004】
【化1】
【0005】ここで多硫化イオウとは、ポリサルファイ
ドサルファ(PSーS)とも称し、たとえば多硫化ナト
リウムNa2Xにおける価数0のイオウ、すなわち原子
(x−1)個分のイオウをいう。また、多硫化物イオン
中の酸化数−2のイオウに相当するイオウ(SX 2-につ
き1原子分のイオウ)および硫化物イオン(S2-)を総
称したものを本明細書中ではNa2S態イオウと表すこ
とにする。なお、本明細書では容量の単位リットルをL
で表す。
【0006】一方、PCT国際公開WO95/0070
1号には多硫化物蒸解液の電解製造方法について記載さ
れている。この方法では、アノードとして、担体上にル
テニウム、イリジウム、白金、パラジウムの酸化物を被
覆したものを使用している。具体的には、多数のエキス
パンドメタルを組み合わせた担体の3次元メッシュ電極
が開示されている。また、PCT国際公開WO97/4
1295号には本出願人らによる多硫化物蒸解液の電解
製造方法について記載されている。この方法では、アノ
ードとして少なくとも炭素からなる多孔性のアノードが
用いられ、特に直径1〜300μmの炭素繊維の集積体
が用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、硫化物イオ
ンを含む溶液、特にパルプ製造工程の白液または緑液か
ら電解法により高濃度の多硫化イオウを含む蒸解液を、
チオ硫酸イオンの副生を極めて少なくして高選択率でか
つ低電力で製造することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、多孔性アノー
ドを配するアノード室、カソードを配するカソード室、
アノード室とカソード室を区画する隔膜を有する電解槽
のアノード室に硫化物イオンを含有する溶液を導入し、
電解酸化により多硫化物イオンを得る多硫化物の製造方
法であって、カソード室内の圧力がアノード室内の圧力
より高いことを特徴とする多硫化物の製造方法を提供す
る。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明における多孔性アノードと
しては様々な形状や材質のものが用いられるが、具体的
には、例えば炭素繊維、カーボンフェルト、カーボン
紙、金属発泡体、網目状金属等、網目状カーボンがあげ
られる。表面に白金等の修飾を施した金属電極も適用で
きる。
【0010】本発明で用いる多孔性アノードは物理的に
連続な3次元の網目構造を有することが好ましい。3次
元の網目構造にすることによりアノード表面積を大きく
でき、電極表面の全面で目的とする電解反応が起り副生
物の生成を抑制することができる。また、アノードを繊
維の集合体ではなく物理的な連続体にすれば、アノード
として十分な電気伝導性を示し、アノードにおけるIR
ドロップを小さくできるので、セル電圧をより低くする
ことができる。
【0011】網目構造は物理的に連続的な構造であり、
溶接等で連続的に結合していても良い。具体的には、少
なくともその表面がニッケルまたはニッケルを50重量
%以上含有するニッケル合金からなる物理的に連続的な
3次元の細目構造体が好ましい。例えば、発泡高分子材
料の骨格にニッケルをメッキした後、内部の高分子材料
を焼成除去して得られる多孔性ニッケルをあげることが
できる。
【0012】3次元網目構造のアノードは、その網目を
構成する網の糸に相当する部分の直径が0.01〜2m
mであることが好ましい。直径が0.01mmに満たな
い場合は、製造が極めてむずかしく、コストがかかるう
え、取扱いも容易でないので好ましくない。直径が2m
mを超える場合は、アノードの表面積が大きいものが得
られず、アノード表面における電流密度が大きくなり、
チオ硫酸イオンのような副生物が生成しやすくなるだけ
でなく、アノードが金属の場合にはアノード溶解を起し
やすくなるので好ましくない。その直径が0.02〜1
mmである場合は特に好ましい。
【0013】アノードの網目の平均孔径は0.001〜
5mmであることが好ましい。網目の平均孔径が5mm
よりも大きいと、アノード表面積を大きくすることがで
きず、アノード表面における電流密度が大きくなり、チ
オ硫酸イオンのような副生物が生成しやすくなるだけで
なく、アノードとして金属を用いた場合にはアノード溶
解を起しやすくなるので好ましくない。網目の平均孔径
が0.001mmより小さいものは、電解槽内に固形成
分が混入した場合に目詰まりを起し、液の圧力損失が大
きくなるといった電解操作上の問題が生じるおそれがあ
るので好ましくない。アノードの網目の平均孔径が0.
2〜2mmである場合はさらに好ましい。
【0014】本発明では、電解操作において、カソード
室内の圧力がアノード室内の圧力よりも大きい条件下で
行われる。電解槽は一般的に隔膜がアノードとカソード
との間に挟まれた構造を有している。組立精度や隔膜保
護の観点からアノードとカソードの間は比較的距離をあ
けて配される。具体的には数mm程度の距離があけられ
ることが多い。その間に配される隔膜は電解の条件によ
ってアノード側に近づいたり、あるいはカソード側に近
づいたりすることになる。本発明では隔膜をアノードに
強制的に常時接するようにし、アノードと隔膜間に空間
部分をなくして、アノード液を多孔性アノード内部に全
て導入することによって、電流効率等を向上させようと
するものである。本発明においては、その手段として、
カソード室内の圧力がアノード室内の圧力よりも大きい
条件下で電解操作を行う。こうすることにより、隔膜が
アノードに押し付けられるので、多孔性アノード内部に
十分にアノード液を流すことができ、高い選択率が実現
される。
【0015】本発明において、カソード室内の圧力をア
ノード室内の圧力より高くする手段としては、カソード
室に導入する溶液(以下カソード液という)の流量をア
ノード室に導入する溶液(以下アノード液という)の流
量に対して相対的に上げる方法、カソード側の出口配管
径を小さくするなどしてカソード液の出口抵抗を増す方
法などがあげられる。
【0016】本発明においては、多孔性アノードの少な
くとも表面がニッケルまたはニッケルを50重量%以上
含有するニッケル合金からなることが好ましい。アノー
ドの少なくとも表面部分がニッケルであるので、多硫化
物の製造において実用的に十分な耐久性を有する。ニッ
ケルは安価であり、かつその酸化物を含めた溶出電位が
多硫化イオウやチオ硫酸イオンの生成電位より高いの
で、本発明において適した材料である。
【0017】また、本発明における多孔性アノードは、
その表面積が、アノード室とカソード室を隔てる隔膜の
有効通電面積当り2〜100m2/m2であるのが好まし
い。アノード表面積が2m2/m2よりも小さいと、アノ
ード表面における電流密度が大きくなり、チオ硫酸イオ
ンのような副生物が生成しやすくなるだけでなく、アノ
ードが金属の場合はアノード溶解を起しやすくなる。ア
ノード表面積が100m2/m2よりも大きいと、多孔性
アノード自体の圧損が高くなり、さらに、カソード室内
の圧力をアノード室内の圧力より高くすることが困難に
なるおそれがあるので好ましくない。アノード表面積は
隔膜の有効通電面積当り5〜50m2/m2であるのがさ
らに好ましい。
【0018】アノード室体積当りのアノード表面積は、
500〜20000m2/m3であることが好ましい。ア
ノードの表面積が500m2/m3より小さいと、アノー
ド表面における電流密度が大きくなり、チオ硫酸イオン
のような副生物が生成しやすくなるだけでなく、アノー
ドが金属の場合はアノード溶解を起しやすくなるので好
ましくない。アノードの表面積を20000m2/m3
り大きくすると、液の圧力損失が大きくなるといった電
解操作上の問題が生じるおそれがあるので好ましくな
い。アノード室体積当りのアノード表面積は、1000
〜20000m2/m3の範囲であるのがさらに好まし
い。
【0019】隔膜面での電流密度は0.5〜20kA/
2で運転するのが好ましい。隔膜面での電流密度が
0.5kA/m2に満たない場合は必要以上に大きな電解
設備になるので好ましくない。隔膜面での電流密度が2
0kA/m2を超える場合は、チオ硫酸、硫酸、酸素など
の副生物を増加させるだけでなく、アノードが金属の場
合はアノード溶解を起すおそれがあるので好ましくな
い。隔膜面での電流密度が2〜15kA/m2である場合
はさらに好ましい。本発明では、隔膜の面積に対して、
表面積の大きなアノードを用いているためアノード表面
での電流密度が小さい範囲で運転することができる。
【0020】アノード各部分の表面での電流密度が均一
であると仮定して、アノードの表面積からアノード表面
での電流密度を求めた場合、その値は5〜3000A/
2であることが好ましい。より好ましい範囲は10〜
1500A/m2である。アノード表面での電流密度が5
A/m2に満たない場合は不必要に大きな電解設備が必要
となるので好ましくない。アノード表面での電流密度が
3000A/m2を超える場合は、チオ硫酸、硫酸、酸素
などの副生物を増加させるだけでなく、アノードが金属
の場合はアノード溶解を起すおそれがあるので好ましく
ない。
【0021】アノード液の平均空塔速度としては、1〜
30cm/秒が好適である。30cm/秒より大きい場
合は、不必要に大きな電解設備が必要となるので好まし
くない。アノード液の平均空塔速度が小さすぎる場合
は、チオ硫酸、硫酸、酸素などの副生物を増加させるだ
けでなく、アノードが金属の場合はアノード溶解を起す
おそれがあるので好ましくない。アノード液の平均空塔
速度が1〜15cm/秒、特には2〜10cm/秒の場
合はさらに好ましい。カソード液の流速は限定されない
が、発生ガスの浮上力の大きさ、電解槽の許容圧力やカ
ソード側で生成するアルカリ濃度などによって決められ
る。
【0022】アノードで電解反応が効率よく起るために
はアノード内を被処理液体が流通する必要があるので、
アノード自体が十分な空隙を有することが好ましく、多
孔性アノードの空隙率は30〜99%であるのが好まし
い。空隙率が30%に満たない場合は、圧力損失が大き
くなるおそれがあるので好ましくない。空隙率が99%
を超える場合は、アノード表面積を大きくすることが困
難になるので好ましくない。空隙率が50〜98%であ
る場合は特に好ましい。
【0023】アノードには、アノード集電体を通じて電
流を供給する。集電体の材質としては、耐アルカリ性に
優れた材質が好ましい。例えば、ニッケル、チタン、炭
素、金、白金、ステンレス鋼などを用いることができ
る。集電体はアノードの背面や周辺等に取り付けられ
る。集電体がアノードの背面に取り付けられる場合、そ
の表面は平面状でよい。単に、アノードとの機械的な接
触により電流を供給するものでもよいが、溶接等により
物理的に接着させるのが好ましい。
【0024】カソード材料としては、耐アルカリ性の材
料が好ましく、ニッケル、ラネーニッケル、硫化ニッケ
ル、鋼、ステンレス鋼などを用いることができる。カソ
ードは、平板またはメッシュ状の形状のものを、一つま
たは複数を多層構成にして用いる。線状の電極を複合し
た3次元電極を用いることもできる。
【0025】電解槽としては、1つのアノード室と1つ
のカソード室とからなる2室型の電解槽が用いられる。
3つまたはそれ以上の部屋を組み合わせた電解槽も用い
られる。多数の電解槽は単極構造または複極構造に配置
することができる。
【0026】隔膜すなわちアノード室とカソード室とを
区画し隔てる膜としては、カチオン交換膜を用いるのが
好ましい。カチオン交換膜は、アノード室からカソード
室へはカチオンを導き、硫化物イオンおよび多硫化物イ
オンの移動を妨げる。カチオン交換膜として、炭化水素
系またはフッ素樹脂系の高分子に、スルホン酸基、カル
ボン酸基などのカチオン交換基が導入された高分子膜が
好ましい。また、耐アルカリ性などの面で問題がなけれ
ば、バイポーラ膜、アニオン交換膜などを使用すること
もできる。
【0027】アノード室の温度は70〜110℃である
のが好ましい。アノード室の温度が70℃より低い場合
は、セル電圧が高くなるだけでなく、硫黄の析出や副生
物が生成しやすく、アノードが金属の場合はアノード溶
解のおそれがあるので好ましくない。温度の上限は、実
際上、電解槽または隔膜の材質で制限される。
【0028】アノード電位は、硫化物イオンの酸化生成
物としてS2 2-、S3 2-、S4 2-、S5 2-などの多硫化物イ
オン(SX 2-)が生成し、チオ硫酸イオンが副生しないよ
うに維持されることが好ましい。アノード電位は、−
0.75〜+0.25Vの範囲になるよう運転するのが
好ましい。アノード電位が−0.75Vより低い場合
は、多硫化物イオンの生成が実質的に起らないので好ま
しくない。アノード電位が+0.25Vより高い場合
は、チオ硫酸イオンなどの副生物が生成するだけでな
く、アノードが金属の場合にはアノード溶解を起すおそ
れがあるので好ましくない。なお、本明細書において電
極電位は25℃飽和KCl溶液におけるHg/Hg2Cl
2の参照電極に対して測定された電位を表す。
【0029】アノードが3次元電極である場合には、ア
ノード電位を正確に測定することは容易でない。したが
って、工業的には電位を規制して製造条件を制御するよ
りは、セル電圧や隔膜面における電流密度を規制して製
造条件を制御するのが好ましい。なお、この電解方法は
定電流電解が好適であるが、電流密度を変化させること
も可能である。
【0030】アノード室に供給される硫化物イオンを含
有する溶液は、アノード室で電解酸化された後、少なく
とも一部を同じアノード室に循環することができる。ま
た、そのような循環を行わずに次工程へ供給する処理、
いわゆるワンパス処理を採用することもできる。硫化物
イオンを含有する溶液が、パルプ製造工程における白液
または緑液である場合には、アノード室から流出する電
解酸化された白液または緑液を、同じアノード室に循環
することなく次工程へ供給するのが好ましい。
【0031】アノード液における、硫化物イオンのカウ
ンターカチオンとしてはアルカリ金属イオンが好まし
い。アルカリ金属としてはナトリウムまたはカリウムが
好ましい。
【0032】本発明の方法は、パルプ製造工程における
白液または緑液を処理して多硫化物蒸解液を得る方法に
特に適している。本明細書で、白液または緑液というと
き、それぞれ白液または緑液について、濃縮、希釈また
は固形分の分離処理などをほどこした液体も含むものと
する。パルプ製造工程中に、本発明による多硫化物製造
工程を組み入れる場合、白液または緑液の少なくとも一
部を抜き出して本発明の多硫化物製造工程で処理したう
えで、蒸解工程に供給する。
【0033】白液の組成は、例えば、現在行われている
クラフトパルプ蒸解に用いられている白液の場合、通
常、アルカリ金属イオンとして2〜6mol/Lを含有
し、そのうちの90%以上はナトリウムイオンであり、
残りはほぼカリウムイオンである。またアニオンは、水
酸化物イオン、硫化物イオン、炭酸イオンを主成分と
し、他に硫酸イオン、チオ硫酸イオン、塩素イオン、亜
硫酸イオンを含む。さらにカルシウム、ケイ素、アルミ
ニウム、リン、マグネシウム、銅、マンガン、鉄のよう
な微量成分を含む。一方、緑液の組成は、白液の主成分
が硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムであるのに対し
て、硫化ナトリウムと炭酸ナトリウムが主成分である。
緑液中のその他のアニオンや微量成分については白液と
同様である。このような白液または緑液を本発明による
アノード室に供給して電解酸化を行った場合、硫化物イ
オンが酸化されて多硫化物イオンが生成する。それに伴
いアルカリ金属イオンが隔膜を通してカソード室に移動
する。
【0034】パルプ蒸解工程で用いる場合、白液または
緑液中の硫化物イオン濃度にもよるが、電解して得られ
る溶液(多硫化物蒸解液)中のPS−S濃度は5〜15
g/Lであるのが好ましい。5g/Lより少ない場合
は、蒸解時のパルプ収率増加の効果が十分得られないお
それがある。PS−Sの濃度が15g/Lより大きい場
合は、Na2S態イオウが少なくなるので、パルプ収率
が増加しないうえ、電解時にチオ硫酸イオンが副生しや
すくなる。また存在する多硫化物イオン(SX 2-)のxの
平均値が4を超えるようになると、同様に電解時にチオ
硫酸イオンが副生するようになり、アノードが金属の場
合はアノード溶解も起りやすくなるので、蒸解液中の多
硫化物イオンのxの平均値は4以下、特に3.5以下に
なるように電解操作を行うことが好ましい。硫化物イオ
ンのPS−Sへの転化率(反応率)は、15%以上75
%以下であるのが好ましく、72%以下がより好まし
い。
【0035】カソード室の反応は、種々選択することが
できるが、水から水素ガスが生成する反応を利用するの
が好適である。その結果生成する水酸化物イオンとアノ
ード室から移動してきたアルカリ金属イオンから、水酸
化アルカリが生成する。カソード室に導入される溶液
は、実質的に水とアルカリ金属水酸化物とからなる溶液
が好ましく、特に水とナトリウムまたはカリウムの水酸
化物からなる溶液が好ましい。アルカリ金属水酸化物の
濃度は限定されないが、例えば1〜15mol/L、好
ましくは2〜5mol/Lである。場合にもよるが、ア
ノード室を流通する白液のイオン強度よりも低いイオン
強度の溶液をカソード液として用いれば、隔膜に不溶分
が沈着することを防ぐことができる。
【0036】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されないこ
とはもちろんである。
【0037】[例1]以下のように2室型の電解槽を組
み立てた。ニッケルの集電板に、アノードであるニッケ
ル発泡体(住友電工社製、商品名セルメット、高さ10
0mm×幅20mm×厚み4mm)を電気溶接した。カ
ソードとしてメッシュ状ラネーニッケルを隔膜としてフ
ッ素樹脂系カチオン交換膜(旭硝子社製、商品名フレミ
オン)を用意した。アノードに5mm厚のアノード室枠
をはめ、隔膜、カソード、4mm厚のカソード室枠、そ
してカソード室板の順に重ねて押さえつけて固定した。
アノード室の形状は、高さ100mm、幅20mm、厚
さ5mmであり、カソード室の形状は高さ100mm、
幅20mm、厚さ5mmで、隔膜の有効面積は20cm
2である。電解操作中は、アノード液とカソード液をと
もに各室の高さ方向に下から上に向かって流し、カソー
ド室側の圧力がアノード室よりも高くなるようにした。
【0038】このときのアノードの物性および電解条件
等は次のとおりである。 アノード室厚み:4mm アノード厚み:4mm アノード室体積に対するアノード見掛け体積率:100% アノード室の空隙率:95% アノード室内の液平均空塔速度:4cm/秒 アノード室体積当りのアノード表面積:7000m2/m3 網目の平均孔径:0.51mm 隔膜面積に対する表面積:28m2/m2 電解温度:85℃ 隔膜での電流密度:6kA/m2
【0039】アノード液として、モデル白液(Na
2S:イオウ原子換算で16g/L、NaOH:90g
/L、Na2CO3:34g/L)を1L調製し、アノー
ド室の下側から導入して上側から抜き出しながら、19
2mL/分の流速(アノード室内平均空塔速度:4cm
/秒)で循環させた。カソード液としては3N:NaO
H水溶液2Lを用い、カソード室の下側から導入して上
側から抜き出しながら、80mL/分の流速(空塔速
度:1.3cm/秒)で循環させた。アノード側および
カソード側ともに熱交換器を設け、アノード液およびカ
ソード液を昇温してセルに導入するようにした。
【0040】電流12A(隔膜での電流密度6kA/
2)で定電流電解を行って多硫化物蒸解液を合成し、
所定の時間にセル電圧の測定を行うとともに、循環液の
サンプリングを行い、その溶液中のPS−S、硫化物イ
オン、チオ硫酸イオンについて分析定量した。なお、分
析は特開平7−92148号公報に記載された方法に基
づいて行った。
【0041】各種硫黄化合物の濃度の定量値、およびセ
ル電圧の測定値の経時的経過については以下のとおりで
あった。電解開始から1時間30分後の多硫化物蒸解液
の組成は、PS−Sが10.6g/L、Na2Sがイオ
ウ原子換算で5.1g/L、増加したチオ硫酸イオンが
イオウ原子換算で0.25g/Lであり、多硫化物イオ
ン(SX 2-)のxの平均値は3.0であった。この間のP
S−Sの電流効率は95%、選択率は97%を維持して
いた。
【0042】電解開始から1時間程度までのセル電圧は
約1.1Vで一定であったが、その後徐々に上昇した。
チオ硫酸イオン濃度が上昇し始める1時間40分あたり
では1.3Vであり、さらに20分経つと電圧は2V程
度まで上昇し、ニッケルの溶出反応が進行するようにな
った。
【0043】「電流効率」および「選択率」は、生成し
たPS−S濃度がA(g/L)、生成したチオ硫酸イオ
ン濃度がイオウ原子に換算してB(g/L)であると
き、次のように定義する。電解操作中、ニッケル溶出反
応が起るまでは、PS−Sとチオ硫酸イオンのみが生成
するので、下記のように定義して差し支えない。 電流効率=(A/(A+2B))×100% 選択率=(A/(A+B))×100%
【0044】[例2(比較例)]例1と同じ電解槽を用
いたが、例1とは逆にアノード室内の圧力がカソード室
内の圧力より高い条件で定電流電解を行った。これによ
ってアノードと隔膜間に1mmの空隙が維持されるた
め、アノード室の厚さは5mmに増加し、カソード室の
厚さは4mmに減少した。アノード室内およびカソード
室内の液の平均空塔速度を例1と同じ値に設定すべく、
アノード液の流量を240mL/分、カソード液の流量
を64mL/分に変更した。各種硫黄化合物の濃度の定
量値、およびセル電圧の測定値の経時的経過については
以下のとおりであった。電解開始から1時間30分後の
多硫化物蒸解液の組成は、PS−Sが10.0g/L、
Na2Sがイオウ原子換算で5.4g/L、増加したチ
オ硫酸イオンがイオウ原子換算で0.64g/Lであ
り、多硫化物イオン(SX 2-)のxの平均値は2.9であ
った。この間のPS−Sの電流効率は89%、選択率は
94%を維持していた。
【0045】電解開始から1時間程度までのセル電圧は
約1.3Vで一定であった。チオ硫酸イオン濃度が上昇
し始める1時間40分あたりでは1.4Vであり、さら
に1時間経つと電圧は2V程度まで上昇し、ニッケルの
溶出反応が進行するようになった。例1と比べると、圧
力損失が低く、ニッケルの溶出する時間が遅いことが見
受けられたが、PS−Sの電流効率が悪かった。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、チオ硫酸イオンの副生
が極めて少なく、高濃度の多硫化イオウを含み、残存N
2S態イオウの多い蒸解液を高い選択率を維持しなが
ら低電力で製造することができる。特にパルプ製造工程
の白液または緑液から、このようにして得られた多硫化
物蒸解液を蒸解に用いることによりパルプ収率を効果的
に増加させることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下平 哲司 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内 (72)発明者 安藤 達也 神奈川県川崎市川崎区千鳥町1番2号 川 崎化成工業株式会社内 (72)発明者 田中 潤治 神奈川県川崎市川崎区千鳥町1番2号 川 崎化成工業株式会社内 (72)発明者 渡部 啓吾 山口県岩国市飯田町2−8−1 日本製紙 株式会社岩国技術研究所内 (72)発明者 南里 泰徳 山口県岩国市飯田町2−8−1 日本製紙 株式会社岩国技術研究所内 Fターム(参考) 4K011 AA11 AA17 DA11 4K021 AB25 BA01 BB03 BB04 BB05 BC09 CA05 DB05 DB12 DB19 DB31 DC15 4L055 AB02 BC01 EA17 EA26 EA32 EA34

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】多孔性アノードを配するアノード室、カソ
    ードを配するカソード室、アノード室とカソード室を区
    画する隔膜を有する電解槽のアノード室に硫化物イオン
    を含有する溶液を導入し、電解酸化により多硫化物イオ
    ンを得る多硫化物の製造方法であって、カソード室内の
    圧力がアノード室内の圧力よりも高いことを特徴とする
    多硫化物の製造方法。
  2. 【請求項2】上記多孔性アノードが物理的に連続な3次
    元の網目構造を有している請求項1に記載の多硫化物の
    製造方法。
  3. 【請求項3】上記多孔性アノードが、少なくともその表
    面がニッケルまたはニッケルを50重量%以上含有する
    ニッケル合金からなる請求項2に記載の多硫化物の製造
    方法。
  4. 【請求項4】上記多孔性アノードの表面積が隔膜の有効
    通電面積当り2〜100m2/m2である請求項1〜3の
    何れか1項に記載の多硫化物の製造方法。
  5. 【請求項5】上記電解酸化における電流密度が隔膜の有
    効通電面積当り0.5〜20kA/m2である請求項1
    〜4の何れか1項に記載の多硫化物の製造方法。
  6. 【請求項6】上記硫化物イオンを含有する溶液を平均空
    塔速度1〜30cm/秒でアノード室に流通させる請求
    項1〜5の何れか1項に記載の多硫化物の製造方法。
  7. 【請求項7】上記硫化物イオンを含有する溶液がパルプ
    製造工程における白液または緑液である請求項1〜6の
    何れか1項に記載の多硫化物の製造方法。
  8. 【請求項8】アノード室から流出する電解酸化された白
    液または緑液を、該アノード室に循環することなく次工
    程へ供給する請求項7に記載の多硫化物の製造方法。
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