JP2000236231A - 弾性表面波素子 - Google Patents

弾性表面波素子

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JP2000236231A JP11353264A JP35326499A JP2000236231A JP 2000236231 A JP2000236231 A JP 2000236231A JP 11353264 A JP11353264 A JP 11353264A JP 35326499 A JP35326499 A JP 35326499A JP 2000236231 A JP2000236231 A JP 2000236231A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基板の接合強度が接合面において不均一であ
ることによって、弾性表面波の伝搬特性にばらつきを生
じる。 【解決手段】 圧電基板である伝搬基板11と、伝搬基
板11に直接接合により積層された補助基板12と、伝
搬基板11の補助基板12との接合面と反対側の面上に
形成され、弾性波を励振する櫛形電極13とを備え、伝
搬基板11と前記補助基板12とは、少なくとも櫛形電
極13の形成領域、または櫛形電極13の形成領域を含
む弾性表面波伝搬領域の直下の領域では、互いに接合し
ておらず、補助基板12の弾性波の伝搬方向の熱膨張係
数は、伝搬基板11の弾性波の伝搬方向の熱膨張係数よ
り小さい弾性表面波素子である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移動体通信機器等
に使用される弾性表面波素子等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、移動体通信技術の進歩発達によ
り、通信機器の高性能化が進んでいる。これらの機器に
は必ず高周波フィルタや発振子やといったデバイスが必
要であり、これらのデバイスに対しても高性能化が求め
られている。従来よりこれらのデバイスには弾性表面波
素子が広く用いられている。
【0003】弾性表面波素子の特性は、主に弾性表面波
が伝搬する圧電基板によって決まる。圧電基板の特性と
して重要なのは電気機械結合係数と温度依存性である。
電気機械結合係数は、弾性表面波素子によって構成され
るフィルタの通過周波数帯域幅や、共振器のQ値に関わ
る量であり、温度依存性は、温度変化に対してのフィル
タの中心周波数の変動量や、共振器の共振周波数の変動
量に関わる。また、電気機械結合係数や温度依存性は圧
電基板の材料および基板方位に固有である。
【0004】弾性表面波素子を形成する圧電基板に要求
される特性は、たとえば高周波帯域においては通過帯域
を広く確保するため、電気機械結合係数が大きいこと、
また、周波数変動を抑制するため、温度依存性が小さい
ことである。しかしながら、既存の圧電基板について
は、電気機械結合係数が大きいものは、温度依存性も大
きい。このため、電気機械結合係数が大きく、温度依存
性が小さい弾性表面波素子を実現することが、フィルタ
設計において課題となっている。
【0005】移動体通信の方式のひとつであるPCNシ
ステムを一例として説明する。PCNシステムは、高周
波帯域における送信周波数帯域と受信周波数帯域の周波
数間隔が20MHzと狭い。高周波帯域のフィルタ設計
において、素子の製造偏差および温度変化による周波数
変動量を考慮すると、送信周波数帯域フィルタと受信周
波数帯域フィルタの周波数間隔がさらに狭くなる。
【0006】したがって、送信帯域に対する受信周波数
帯域フィルタの減衰量、および受信帯域に対する送信周
波数帯域フィルタの減衰量、いわゆる帯域間減衰量の確
保が難しくなる。たとえば、圧電基板として36゜回転
YカットX伝搬のタンタル酸リチウムを用いた場合、電
気機械結合係数は5%、温度依存性(遅延時間温度係
数;TCD)は35ppm/℃であるため、実質的な帯
域間隔は10数MHzとなり、十分な帯域間減衰量を確
保することができない。したがって、周波数帯域幅の確
保のために電気機械結合係数が5%程度もしくはそれ以
上で、帯域間減衰量の確保のためにTCDが35ppm
/℃より小さい圧電基板が望まれている。
【0007】しかしながら、電気機械結合係数が大き
く、TCDが小さい圧電基板があればよいが、既存基板
にはそのようなものはない。そのため、既存基板のTC
Dを低減する方法が提案されている。
【0008】たとえば、アイ・イー・イー・イー トラ
ンザクションズ オン ソニックスアンド ウルトラソ
ニックス,ボリューム SU−31,第51頁〜第57
頁(1984年)(IEEE Transactions on Sonics and U
ltrasonics, volume SU-31, pp. 51-57(1984))に示され
るように、ニオブ酸リチウム基板上に、その材料温度係
数の符号と逆の酸化珪素薄膜層を形成することによっ
て、弾性表面波伝搬特性の温度依存性を改善する方法が
知られている。
【0009】しかしながら、前記アイ・イー・イー・イ
ーの方法においては、温度特性の改善効果を得るために
は酸化珪素薄膜層の厚みを最大でも使用弾性表面波波長
に対して1波長以内のように極めて薄くする必要があ
る。しかし、そのような薄い酸化珪素膜層の厚みおよび
膜質を均一にすることは困難である。
【0010】これらの課題を解決するものとして、特開
平6−326553公報に示される温度特性改善方法が
ある。この方法は、熱膨張係数の異なる基板を直接接合
によって積層化した基板を用いるものであり、基板単独
の場合と比較して積層化した基板の実質的な熱膨張係数
は低減され、その結果弾性表面波素子の温度依存性が改
善されるものである。
【0011】以下に、特開平6−326553公報に示
される温度特性改善方法に基づく、従来の弾性表面波素
子について説明する。
【0012】図11は直接接合による積層基板を用いた
従来の弾性表面波素子の断面図である。図11におい
て、31は圧電基板である伝搬基板、32は低熱膨張係
数材料を用いた補助基板、33は櫛形電極である。
【0013】伝搬基板31と補助基板32とは、直接接
合されている。伝搬基板31としてはタンタル酸リチウ
ムやニオブ酸リチウムが用いられる。伝搬基板31の厚
みは通常、使用波長の5倍以上である。伝搬基板31と
補助基板32の熱膨張係数が異なることから貼り合わせ
基板の実質的な熱膨張係数は、それらの基板が有する熱
膨張係数とは異なるものとなり、その結果温度依存性も
異なるものとなる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の弾性表面波素子は、以下のような課題を有してい
る。
【0015】従来の弾性表面波素子は、伝搬基板と補助
基板を全面で接合している。この場合、基板接合が完全
であればよいが、基板接合が不十分であると、温度変化
によって伝搬基板表層に作用する応力は、均一ではなく
なる。その結果、弾性表面波が基板上を伝達する途中
で、弾性表面波速度が変化する。また、場合によっては
弾性表面波伝搬損失が増大する。
【0016】本発明は、このような従来の弾性表面波素
子において、基板の接合強度が接合面において不均一で
あることによって、弾性表面波の伝搬特性にばらつきを
生じるという課題を考慮し、良好な温度特性を有する弾
性表面波素子を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】第1の本発明(請求項1
に対応)は、圧電基板である伝搬基板と、前記伝搬基板
に直接接合により積層された補助基板と、前記伝搬基板
の前記補助基板との接合面と反対側の面上に形成され、
弾性波を励振する櫛形電極とを備え、前記伝搬基板と前
記補助基板とは、少なくとも前記櫛形電極形成領域の直
下の領域では、互いに接合しておらず、前記補助基板の
前記弾性波の伝搬方向の熱膨張係数は、前記伝搬基板の
前記弾性波の伝搬方向の熱膨張係数より小さいことを特
徴とする弾性表面波素子である。
【0018】第2の本発明(請求項2に対応)は、前記
伝搬基板側に、凹部または溝が形成され、その凹部また
は溝の存在によって、前記伝搬基板と前記補助基板とが
接合しない領域を形成していることを特徴とする第1の
本発明の弾性表面波素子である。
【0019】第3の本発明(請求項3に対応)は、前記
補助基板側に、凹部または溝が形成され、その凹部また
は溝の存在によって、前記伝搬基板と前記補助基板とが
接合しない領域を形成していることを特徴とする請求項
1記載の弾性表面波素子。
【0020】第4の本発明(請求項4に対応)は、前記
伝搬基板と前記補助基板とが接合する領域は、前記伝搬
基板の全周囲に渡っていることを特徴とする第1,2,
または3の本発明の弾性表面波素子である。
【0021】第5の本発明(請求項5に対応)は、前記
伝搬基板と前記補助基板とは実質上矩形形状をしてお
り、それら基板同士が接合する領域は、前記伝搬基板の
いずれかの一対の対向する二辺に存在することを特徴と
する第1の本発明の弾性表面波素子である。
【0022】第6の本発明(請求項6に対応)は、前記
いずれかの一対の対向する二辺とは、二つある一対の二
辺の内、前記弾性波の伝搬方向に実質上垂直な面内にお
ける受ける応力がより均一となる方の、一対の二辺であ
ることを特徴とする第5の本発明の弾性表面波素子であ
る。
【0023】第7の本発明(請求項7に対応)は、前記
溝は、前記櫛形電極の指の方向に平行に形成されている
ことを特徴とする第2または3の本発明の弾性表面波素
子である。
【0024】第8の本発明(請求項8に対応)は、前記
伝搬基板の熱膨張係数は異方性を有し、前記溝は、前記
伝搬基板の熱膨張係数のより大きい方向に実質上垂直な
方向に形成されていることを特徴とする第2または3の
本発明の弾性表面波素子である。
【0025】第9の本発明(請求項9に対応)は、前記
直接接合は、前記伝搬基板および前記補助基板それぞれ
の基板表面を平坦化し、鏡面化し、清浄化し、親水化し
て、重ね合わせた後、熱処理により接合したものである
ことを特徴とする第1〜8の本発明のいずれかの弾性表
面波素子である。
【0026】第10の本発明(請求項10に対応)は、
第1〜9の本発明のいずれかの弾性表面波素子と、アン
テナと、送信信号処理回路と、受信信号処理回路とを備
え、前記弾性表面波素子は、フィルタ又は発振子として
用いられていることを特徴とする移動体通信機器であ
る。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図
面を参照して説明する。
【0028】(第1の実施の形態)まず、本発明の第1
の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0029】図1は、本発明の第1の実施の形態におけ
る弾性表面波素子の一部切欠斜視図であり、図2は、図
1のa−a’部での断面図である。図1と図2に示す弾
性表面波素子は、圧電基板である矩形状の伝搬基板1
1、矩形状の補助基板12、櫛形電極13で構成されて
いる。
【0030】櫛形電極13は、伝搬基板11の補助基板
12との接合面と反対側の面上に形成され、伝搬基板1
1の補助基板12に相対する面には、櫛形電極13を構
成する櫛形電極指と実質的に平行な方向に、溝14が形
成されている。
【0031】図3は、伝搬基板11と補助基板12を分
解して示す斜視図である。本実施の形態における弾性表
面波素子においては、伝搬基板11と補助基板12とが
直接接合により接着剤なしに積層化されている。
【0032】なお、本実施の形態における弾性表面波素
子においては、伝搬基板11として厚さ100μmの3
6°回転YカットX伝搬のタンタル酸リチウム基板を用
い、補助基板12として厚さ300μmの低熱膨張ガラ
ス基板を用いている。
【0033】次に、このような本実施の形態の動作を説
明する。櫛形電極13に交番電界を印加することによっ
て、弾性表面波が励振され、伝搬基板11表面に沿って
弾性表面波が伝搬する。この弾性表面波は櫛形電極13
で再び電気信号に変換される。以上によって、弾性表面
波素子として機能するものである。
【0034】なお、図1と図2には、櫛形電極13を用
いた弾性表面波素子の基本構成を示しているが、フィル
タや共振子にする場合には、櫛形電極の数や構成を必要
に応じて変更する。
【0035】次に、本実施の形態の弾性表面波素子の温
度特性補償方法について説明する。
【0036】まず、温度特性について説明する。弾性表
面波素子の遅延時間温度係数(TCD)は温度特性を示
す量のひとつであり、近似的に伝搬基板の弾性波の伝搬
方向の熱膨張係数αと弾性表面波速度の温度係数(TC
V)の差で表される。また、TCVは主に伝搬基板の弾
性定数の温度係数と、伝搬基板の密度の温度係数に依存
し、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどの電気
機械結合係数の大きい基板は、TCVは負値である。
【0037】伝搬基板11の深さ方向における弾性表面
波のエネルギーは、弾性表面波波長の約1波長以内にほ
とんどが集中する。本実施の形態における伝搬基板11
の厚みは弾性表面波波長の10倍以上であるため、TC
Vは伝搬基板11の基板定数(材料定数)で決定され、
補助基板12の基板定数(材料定数)には関わらない。
【0038】本実施の形態においては、弾性表面波伝搬
方向における熱膨張係数について、伝搬基板11の方
が、補助基板12よりも大きい。
【0039】このような伝搬基板11と補助基板12を
直接接合している。その結果、正の温度変化に対して伝
搬基板11の表層では圧縮応力が作用し、伝搬基板11
単体の場合よりも、伝搬基板11の伸びが抑制される。
【0040】そのため伝搬基板11の密度変化も抑制さ
れるが、同時に応力によって弾性定数変化(弾性定数自
体の減少および弾性定数温度係数の減少)も生じる。密
度変化の抑制はTCVの増大に寄与し、前記弾性定数変
化はTCVへの減少に寄与するが、前記弾性定数変化の
影響が大きく、結果として伝搬基板単体の場合よりもT
CVは減少する。最終的には、弾性表面波伝搬方向の熱
膨張係数係数が小さくなることとあわせ、前記弾性表面
波素子のTCDは減少する。
【0041】以上によって、本実施の形態の弾性表面波
素子の温度特性補償が行われる。
【0042】つづいて本実施の形態における弾性表面波
素子の製造プロセスについて説明する。
【0043】本実施の形態の弾性表面波素子における製
造プロセスは、伝搬基板11上の溝14形成と直接接合
の大きく2つのプロセスに分かれる。
【0044】まず伝搬基板11上の溝14形成について
説明する。
【0045】伝搬基板11を洗浄したのち、伝搬基板1
1の溝14形成予定面以外の場所にレジストマスクを形
成する。次にレジストマスクを形成した伝搬基板11を
フッ酸と硝酸の混合液でエッチングする。本実施の形態
においては、伝搬基板11はタンタル酸リチウムである
ため、エッチング液としてフッ酸と硝酸の混合液を用い
るが、基板材料に応じて適切なエッチング液を用いる。
溝14形成工程終了後、レジストマスクを除去する。
【0046】あるいは、伝搬基板11の溝14は以下の
ように形成してもよい。伝搬基板11の溝14形成予定
面以外の面は鏡面研磨されている。溝14は、ダイシン
グ・ソーを用いて、溝14の断面が矩形もしくは矩形に
準じる形状となるように、形成される。広幅の溝14を
形成する場合は、複数回ダイシングブレードを入れるこ
とによって所望の溝幅とする。
【0047】また、伝搬基板11の溝14は次のように
形成してもよい。まず伝搬基板11を洗浄したのち、伝
搬基板11の溝14形成予定面以外の面にレジストマス
クを形成する。つぎにレジストマスクを形成した伝搬基
板11の溝14形成予定面をブラスト砥粒によってサン
ドブラストする。最後にレジストマスクを除去する。
【0048】なお、伝搬基板11の溝14形成は上記の
方法に限定するものではなく、溝14を形成するもので
あれば方法は問わない。
【0049】また、本実施の形態においては、溝14断
面が矩形もしくは矩形に準じる形状であるが、V字型あ
るいは他の断面形状であってもよい。
【0050】次に、直接接合について説明する。
【0051】まず、直接接合しようとする伝搬基板11
の表面ならびに補助基板12の溝14形成面を清浄化す
る。続いて前記伝搬基板11の表面と前記補助基板12
の溝14形成面を親水化処理する。具体的には例えばア
ンモニア−過酸化水素溶液に浸すことにより、基板表面
に水酸基が容易に付着するようになり親水化される。次
に純水で十分に洗浄する。これにより基板表面に水酸基
が付着する。
【0052】この状態で基板を重ね合わせると、主とし
て水酸基の水素結合により重ね合わせた基板どうしが吸
着する。これにより、伝搬基板11の表面ならびに補助
基板12の表面が原子レベルで結合し、両基板の直接接
合構造が実現される。以上のプロセスは室温で行う。
【0053】このままでも十分な接合強度が得られてい
るが、さらに接合強度を強固とするために、その吸着状
態のままで、100℃以上の温度で数10分から数10
時間熱処理することにより、接合界面から水構成成分が
抜けていく。本実施の形態においては約300℃で10
時間の熱処理を行っている。
【0054】この熱処理によって、水酸基による水素結
合主体の結合から、酸素や水素、また基板構成原子の関
わる結合が進み、基板構成原子同士の接合が序々に始ま
り、接合は強化される。特に、珪素や炭素、酸素がある
場合、共有結合が進み、接合は強化される。
【0055】以上のプロセスによって得られた接合基板
に、フォトリソグラフィーによって接合基板上に櫛形電
極13を形成する。本実施の形態においては、櫛形電極
13を櫛形電極指と伝搬基板11に形成した溝14とが
平行となるように配置している。以上のプロセスを経
て、本実施の形態における弾性表面波素子は製造され
る。
【0056】つづいて、本実施の形態の弾性表面波素子
の伝搬基板11の溝14について説明する。本実施の形
態では、基板接合の熱処理工程において、接合基板に作
用する応力を緩和させ、また、伝搬基板14表層の弾性
表面波伝搬領域に応力を一様に作用させることを目的と
して溝14を形成している。
【0057】ここで、応力の緩和は接合基板を破砕を抑
制するために必要であり、また、伝搬基板14表層の弾
性表面波伝搬領域への一様な応力の作用は弾性表面波素
子として良好な特性を得るために必要である。
【0058】応力を緩和するためには、基板接合面積を
小さくすればよい。これは基板接合面積が小さくなると
接合基板の熱歪みも小さくなるためであり、結果として
応力が緩和される。そのため、本実施の形態では基板接
合面積を小さくする方法として伝搬基板11の裏面へ溝
14形成を行っている。
【0059】応力緩和の度合いは、溝14の形成方法、
言い換えると溝14の形成方向や大きさによって変化す
る。例えば、形成方向については、弾性表面波伝搬方向
に対して垂直に溝14形成した場合、弾性表面波伝搬方
向の応力が緩和される。
【0060】一方、弾性表面波伝搬方向に対して平行に
溝14形成した場合は、弾性表面波伝搬方向に垂直な方
向の応力が緩和される。また、応力の大きさは、応力の
作用する方向における伝搬基板11と補助基板12の熱
膨張係数差に比例するため、本実施の形態では、熱膨張
係数差が大きい方向に垂直に溝14を形成すると応力緩
和が効果的に行われる。しかし、溝14を弾性表面波伝
搬方向に垂直に形成すると、基板接合面積が小さくな
り、十分な接合強度が得られない場合がある。
【0061】例えば、櫛形電極13形成領域に対して、
弾性表面波伝搬方向の基板寸法が大きくないときがこの
場合にあたる。このとき、温度特性補償効果がきわめて
小さくなる。そのような場合には、溝14を弾性表面波
伝搬方向に平行に形成してもよい。
【0062】また応力緩和の大きさについては、溝14
が深いほど応力緩和は大きくなり、溝14の幅が広いほ
ど応力緩和が大きくなる。本実施の形態においては溝1
4の深さは平均で30μm、溝14の幅は400μmと
しているが、溝14を深くすることによってさらに応力
の緩和が行われ、また、溝14の幅を400μmとした
が、溝14の幅を広くすることによってもさらに応力の
緩和が行われる。
【0063】溝14を形成した状態で、伝搬基板11表
層の弾性表面波伝搬領域に応力を一様に作用させるため
にも、溝14の形成方向、さらに溝14形成位置どのよ
うにするかが重要である。本実施の形態では、伝搬基板
11として圧電性材料を用いているが、圧電性材料は熱
膨張係数に異方性を有する。
【0064】すなわち、伝搬基板11面内では方向によ
って熱伸縮の大きさが異なる。そのため、溝形14成方
向が弾性表面波伝搬方向に対して斜めの場合、伝搬基板
11表層の弾性表面波伝搬領域において応力分布が生じ
るので、この領域を伝搬する弾性表面波伝搬特性たとえ
ば弾性表面波音速が伝搬領域において一様でなくなり、
好ましくない。
【0065】したがって、伝搬基板11表層の弾性表面
波伝搬領域に一様に応力を作用させるために、弾性表面
波伝搬方向に垂直もしくは平行に溝14形成をする必要
がある。また、溝14の形成位置については、一様に応
力を作用させるために、少なくとも櫛形電極13形成領
域の直下、あるいは櫛形電極13を含む弾性表面波の伝
搬領域の直下であることが望ましい。
【0066】これは、伝搬基板11表層の弾性表面波伝
搬領域の直下に溝14部分と接合部分が併せてある場
合、熱歪みの差によってその領域での応力が一様でなく
なるためである。
【0067】本実施の形態の弾性表面波素子の効果を確
認するため、本実施の形態の弾性表面波素子と従来の弾
性表面波素子を作製し、電気機械結合係数およびTCD
といった弾性表面波伝搬特性を測定して比較を行った。
比較の対象とする従来の弾性表面波素子は、本実施の形
態の伝搬基板11裏面に溝形成をしている点を除き、基
板材料の組み合わせや寸法などは同じである。
【0068】なお、本実施の形態においては、伝搬基板
11として異方性材料の36゜回転YカットX伝搬のタ
ンタル酸リチウム、補助基板12として等方性材料のガ
ラスを用いており、伝搬基板11の、弾性表面波伝搬方
向であるX方向の熱膨張係数は16ppm/℃であり、
また、補助基板12の熱膨張係数は4ppm/℃であっ
た。
【0069】本実施の形態の弾性表面波素子ならびに従
来の弾性表面波素子ともに基板接合の熱処理工程の熱処
理条件を約300℃で10時間としたが、従来の弾性表
面波素子は、作用する熱応力が伝搬基板11もしくは補
助基板12の弾性限界を超えて、接合基板の一部に破砕
が生じた。
【0070】一方、本実施の形態では伝搬基板11への
溝14形成によって、接合基板に作用する応力が緩和さ
れるため、熱処理工程における基板破砕を抑制すること
ができた。つぎに、弾性表面波伝搬特性を比較した。
【0071】なお、TCDについては、TCDと異符号
で絶対値が同じであるところの周波数温度係数を測定
し、それの異符号をとってTCDの測定値としたもので
ある。電気機械結合係数については、どちらの弾性表面
波素子においても5%程度で差がなかった。
【0072】一方、TCDについては、従来の弾性表面
波素子が25ppm/℃であるのに対し、本実施の形態
における弾性表面波素子は28ppm/℃であり、伝搬
基板(36゜回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム)
単体を用いた弾性表面波素子のTCD(36ppm/
℃)に対して改善されていることが確認された。なお、
図12にその伝搬基板単体を用いた弾性表面波素子の断
面図を示す。
【0073】また、本発明の実施の形態では、周波数応
答についても変化はなく、弾性表面波音速に変化がない
ことが確認された。また、従来の弾性表面波素子に比
べ、接合の不良による特性のばらつきも低減され、安定
した特性が得られていることも確認された。
【0074】以上のように、本実施の形態によれば、基
板接合の熱処理工程における基板破砕を抑制し、また、
電気機械結合係数や弾性表面波伝搬速度等の諸特性を変
化させることなく、良好な温度特性を有する弾性表面波
素子を得ることができる。
【0075】本実施の形態においては、弾性表面波の伝
搬方向の熱膨張係数の大きな伝搬基板11と、弾性表面
波の伝搬方向の熱膨張係数の小さな補助基板12を直接
接合しており、正の温度変化により伝搬基板11表層で
は、圧縮応力が作用し、伝搬基板11本来の弾性波の伝
搬方向の熱膨張係数よりも小さい値を示し、密度変化も
小さくなる。
【0076】また、本実施の形態においては、弾性表面
波伝搬方向に垂直な方向に作用する応力は従来のものと
比較して緩和される。一方、弾性表面波伝搬方向に平行
な方向については、伝搬基板11と補助基板12が直接
接合されているため、応力が従来のものとほぼ同等に作
用する。
【0077】なお、本実施の形態では、溝14の幅を4
00μmとしたが、溝14の幅を広くすることによって
さらに応力の緩和が行われる。また、溝14の深さを平
均で20μmとしたが、溝14を深くすることによって
さらに応力の緩和が行われる。また、本実施の形態にお
いては、溝14断面が矩形もしくは矩形に準じる形状で
あるが、V字型あるいは他の断面形状であってもよい。
【0078】また、直接接合プロセスにおいては、接合
面にパーティクルやダスト等の異物がある場合、異物の
ある部分では接合が行われず空隙が生じる、あるいは接
合強度が著しく弱くなる、といった接合不良の原因とな
る。基板を直接接合する場合、連続接合面積が小さいほ
ど接合不良の可能性は低くなるが、溝14形成によって
接合面を分割することによって、連続接合面積は減少
し、接合不良の可能性を低減することができる。
【0079】本実施の形態では、弾性表面波の伝搬する
伝搬基板11表層の直下領域では基板接合を行わないた
め、この領域での接合不良は生じない。そのため弾性表
面波伝搬特性の変動や劣化は生じない。
【0080】また、本実施の形態においては、伝搬基板
11として36°回転YカットX伝搬のタンタル酸リチ
ウムを用いたが、これに限らず、他の結晶方位を用いた
場合でも、補助基板12の弾性波伝搬方向の熱膨張係数
が伝搬基板11の弾性波の伝搬方向の熱膨張係数よりも
小さい基板を用いれば、同様の効果が得られる。
【0081】また、本実施の形態においては、補助基板
12としてガラスを用いたが、これに限らず、シリコン
などの他の低熱膨張材料を用いてもよい。補助基板12
としてガラスを用いた場合には、その非結晶性により、
単結晶である伝搬基板11との接合が容易となる。ま
た、ガラスの場合には、その組成によって種々の機械的
性質を持った材料を得ることができ、温度特性の制御が
容易となる。
【0082】また、本実施の形態の伝搬基板11の弾性
表面波伝搬領域の直下には、従来の弾性表面波素子が有
している伝搬基板31と補助基板32の鏡面接合界面が
なく、さらに溝14形成の際に、伝搬基板11の弾性表
面波伝搬領域の直下が実質的に荒らし加工を施したのと
同じ状態になっているため、溝14は伝搬基板11裏面
でのバルク波反射に起因する弾性表面波素子の周波数応
答における不要スプリアスを抑制する効果もある。
【0083】さらに、本実施の形態においては、溝14
部分は空洞となっているが、たとえば基板接合後、毛細
管現象を利用して溝14に樹脂を充填してもよい。溝1
4への樹脂充填によって、伝搬基板11の裏面でのバル
ク波反射がさらに抑制され、よりに効果的に不要スプリ
アスの抑制を行うことができる。
【0084】また、本実施の形態では伝搬基板11に溝
14形成しているが、これまで述べた効果は、本質的に
は本実施の形態の基板構造において溝14が存在するこ
とによって生じるものであり、図13に示すように、補
助基板12に溝14形成によっても同様の効果を得るこ
とができる。ただし、スプリアス抑制効果は得られな
い。
【0085】(第2の実施の形態)次に、本発明の第2
の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態
は、本発明の溝14に関する点以外は、上述した第1の
実施の形態における弾性表面波素子の構成と同様であ
る。したがって、本実施の形態において、第1の実施の
形態と基本的に同様のものについては、同一符号を付与
し、説明を省略する。また、特に説明のないものについ
ては、第1の実施の形態と同じとする。
【0086】図4は、本発明の第2の実施の形態におけ
る弾性表面波素子の一部切欠斜視図であり、図5は、図
4のb−b’部での断面図である。図6は、伝搬基板1
1と補助基板12を分解して示す斜視図である。図4〜
図6に示す弾性表面波素子は、溝14の構成以外は、図
1〜図3に示した弾性表面波素子と同じである。本実施
の形態における弾性表面波素子の溝14は、補助基板1
2上に、櫛形電極13を構成する櫛形電極指と実質的に
垂直な方向に形成されている。
【0087】つづいて本実施の形態における弾性表面波
素子の製造プロセスについて説明する。本実施の形態に
おける弾性表面波素子の製造プロセスは、伝搬基板11
上の溝14形成と直接接合の大きく2つのプロセスに分
かれる。
【0088】まず伝搬基板11上の溝14の形成につい
て説明する。伝搬基板11を洗浄したのち、伝搬基板1
1の溝14形成予定面にレジストマスクを形成する。次
にレジストマスクを形成した伝搬基板11をフッ酸と硝
酸の混合液でエッチングする。
【0089】本実施の形態においては、伝搬基板11は
タンタル酸リチウムであるため、エッチング液としてフ
ッ酸と硝酸の混合液を用いるが、基板材料に応じて適切
なエッチング液を用いる。溝14形成工程終了後、レジ
ストマスクを除去する。本実施の形態においては溝14
の深さは平均30μm、溝14の幅は400μmとして
いる。
【0090】伝搬基板11の溝14は以下のように形成
してもよい。伝搬基板11の溝14形成予定面は鏡面研
磨されている。溝14は、ダイシング・ソーを用いて、
溝14断面が矩形もしくは矩形に準じる形状で、線状に
形成される。広幅の溝14を形成する場合は、複数回ダ
イシングブレードを入れることによって所望の溝幅とす
る。
【0091】また、伝搬基板11の溝14は次のように
形成してもよい。まず伝搬基板11を洗浄したのち、伝
搬基板11の溝14形成予定面にレジストマスクを形成
する。つぎにレジストマスクを形成した伝搬基板11の
溝14形成予定面をブラスト砥粒によってサンドブラス
トする。最後にレジストマスクを除去する。
【0092】基板接合については第1の実施の形態と同
様に、伝搬基板11と補助基板12との直接接合を行
う。
【0093】以上のプロセスによって得られた接合基板
に、フォトリソグラフィーによって接合基板上に櫛形電
極13を形成する。本実施の形態においては、櫛形電極
13を櫛形電極指と補助基板12に形成した溝14との
なす角が0°(櫛形電極指の長手方向と溝14の主方向
が一致)となるように配置している。以上のプロセスを
経て、本実施の形態における弾性表面波素子は製造され
る。
【0094】本実施の形態の弾性表面波素子の効果を確
認するため、本実施の形態の弾性表面波素子と従来の弾
性表面波素子を作製し、電気機械結合係数およびTCD
といった弾性表面波伝搬特性を測定して比較を行った。
比較の対象とする従来の弾性表面波素子は、本実施の形
態の伝搬基板11裏面に溝形成をしている点を除き、基
板材料の組み合わせや寸法などは同じである。
【0095】なお、本実施の形態においては、伝搬基板
11として異方性材料のXカット112゜Y伝搬のタン
タル酸リチウム、補助基板12として等方性材料のガラ
スを用いた。補助基板12の熱膨張係数は4ppm/℃
であり、伝搬基板11の弾性表面波伝搬方向の熱膨張係
数は6ppm/℃、弾性表面波伝搬方向と垂直な方向の
熱膨張係数は14ppm/℃でるため、より大きな応力
緩和を得るため溝14形成方向は弾性表面波伝搬方向に
した。
【0096】本実施の形態の弾性表面波素子ならびに従
来の弾性表面波素子ともに基板接合の熱処理工程の熱処
理条件を約200℃で10時間としたが、従来の弾性表
面波素子は、接合基板に作用する熱応力が伝搬基板31
もしくは補助基板32の弾性限界を超えて、接合基板の
一部に破砕が生じた。
【0097】一方、本実施の形態では伝搬基板11への
溝14形成によって、接合基板に作用する応力が緩和さ
れるため、熱処理工程における基板破砕を抑制すること
ができた。つぎに、弾性表面波伝搬特性を比較した。な
お、TCDについては、TCDと異符号で絶対値が同じ
であるところの周波数温度係数を測定し、それの異符号
をとってTCDの測定値とした。電気機械結合係数につ
いては、どちらの弾性表面波素子においても0.7%程
度で差がなかった。
【0098】一方、TCDについては、従来の弾性表面
波素子が11ppm/℃であるのに対し、本実施の形態
における弾性表面波素子は14ppm/℃であり、伝搬
基板(Xカット112゜Y伝搬タンタル酸リチウム)単
体、のTCD(18ppm/℃)に対して改善されてい
ることが確認された。また、従来の弾性表面波素子に比
べ、接合の不良による特性のばらつきも低減され、安定
した特性が得られていることも確認された。また、周波
数応答についても変化はなく、弾性表面波音速に変化が
ないことが確認された。
【0099】以上のように、本実施の形態によれば、基
板接合の熱処理工程における基板破砕を抑制し、また、
電気機械結合係数や弾性表面波伝搬速度等の諸特性を変
化させることなく、良好な温度特性を有する弾性表面波
素子を得ることができる。
【0100】本実施の形態においては、弾性表面波の伝
搬方向の熱膨張係数の大きな伝搬基板11と、弾性波の
伝搬方向の熱膨張係数の小さな補助基板12を直接接合
しており、正の温度変化に対しては伝搬基板の表面近傍
では、圧縮応力が作用し、伝搬基板本来の弾性表面波の
伝搬方向の熱膨張係数よりも小さい値を示し、密度変化
も小さくなる。
【0101】また、本実施の形態においては、弾性表面
波伝搬方向に平行な方向に作用する応力は従来のものと
比較して緩和される。一方、弾性表面波伝搬方向に垂直
な方向については、伝搬基板11と補助基板12が直接
接合されているため、応力が従来のものとほぼ同等に作
用する。
【0102】なお、本実施の形態においては、伝搬基板
11としてXカット112゜Y伝搬のタンタル酸リチウ
ムを用いたが、これに限らず、他の結晶方位を用いた場
合でも、補助基板12の弾性表面波の伝搬方向の熱膨張
係数が伝搬基板11の弾性波の伝搬方向の熱膨張係数よ
りも小さい基板を用いれば、同様の効果が得られる。
【0103】また、本実施の形態においては、溝14の
深さを平均で30μmとしたが、溝14を深くすること
によってさらに応力の緩和が行われる。また、溝14の
幅を400μmとしたが、溝14の幅を広くすることに
よってさらに応力の緩和が行われる。
【0104】直接接合プロセスにおいては、接合面にパ
ーティクルやダスト等の異物がある場合、異物のある部
分では接合が行われず空隙が生じる、あるいは接合強度
が著しく弱くなる、といった接合不良の原因となる。基
板を直接接合する場合、連続接合面積が小さいほど接合
不良の可能性は低くなるが、溝14形成によって接合面
を分割することによって、連続接合面積は減少し、接合
不良の可能性を低減することができる。
【0105】本実施の形態では、弾性表面波の伝搬する
伝搬基板11表層の直下領域では基板接合を行わないた
め、この領域での接合不良は生じない。そのため弾性表
面波伝搬特性の変動や劣化は生じない。
【0106】また、本実施の形態においては、補助基板
12としてガラスを用いたが、これに限らず、シリコン
などの他の低熱膨張材料を用いてもよい。補助基板12
としてガラスを用いた場合には、その非結晶性により、
単結晶である伝搬基板11との接合が容易となる。
【0107】また、ガラスの場合には、その組成によっ
て種々の機械的性質を持った材料を得ることができ、温
度特性の制御が容易となる。
【0108】また、本実施の形態の伝搬基板11の弾性
表面波伝搬領域の直下には、従来の弾性表面波素子が有
している伝搬基板31と補助基板32の鏡面接合界面が
なく、さらに溝14形成の際に、伝搬基板11の弾性表
面波伝搬領域の直下が実質的に荒らし加工を施したのと
同じ状態になっているため、伝搬基板11裏面でのバル
ク波反射に起因する弾性表面波素子の周波数応答におけ
る不要スプリアスを抑制する効果もある。
【0109】さらに、本実施の形態においては、溝14
部分は空洞となっているが、たとえば基板接合後、毛細
管現象を利用して溝14に樹脂を充填してもよい。溝1
4への樹脂充填によって、伝搬基板11の裏面でのバル
ク波反射がさらに抑制され、よりに効果的に不要スプリ
アスの抑制を行うことができる。
【0110】また、本実施の形態では伝搬基板11に溝
14形成しているが、これまで述べた効果は、本質的に
は本実施の形態の基板構造における溝14が存在するこ
とによって生じるものであり、補助基板12に、図14
に示すように、溝14形成することによっても同様の効
果を得ることができる。
【0111】(第3の実施の形態)次に、本発明の第3
の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態
は、本発明の溝14の替わりに本発明の凹部15を備え
ることに関する点以外は、上述した第1の実施の形態に
おける弾性表面波素子の構成と同様である。したがっ
て、本実施の形態において、第1の実施の形態と基本的
に同様のものについては、同一符号を付与し、説明を省
略する。また、特に説明のないものについては、第1の
実施の形態と同じとする。
【0112】図7は、本発明の第3の実施の形態におけ
る弾性表面波素子の一部切欠斜視図であり、図8は、図
7のc−c’部での断面図である。また図9は、図7の
d−d’部での断面図である。図10は、伝搬基板11
と補助基板12を分解して示す斜視図である。
【0113】図7〜図10に示す弾性表面波素子は、溝
14が無く、凹部15が形成されている以外は、図1〜
図3に示した弾性表面波素子と同じである。本実施の形
態における弾性表面波素子の凹部15は、補助基板12
上に、少なくとも前記櫛形電極13の直下の位置を含む
ように形成されている。
【0114】つづいて本実施の形態における弾性表面波
素子の製造プロセスについて説明する。本実施の形態に
おける弾性表面波素子の製造プロセスは、補助基板上の
凹部形成と直接接合の大きく2つのプロセスに分かれ
る。
【0115】まず伝搬基板11上の凹部15形成につい
て説明する。伝搬基板11の凹部15形成予定面は鏡面
研磨されている。伝搬基板11を洗浄したのち、伝搬基
板11の凹部15形成予定面にレジストマスクを形成す
る。次にレジストマスクを形成した伝搬基板11をフッ
酸と硝酸の混合液でエッチングする。
【0116】本実施の形態においては、伝搬基板11は
タンタル酸リチウムであるため、エッチング液としてフ
ッ酸と硝酸の混合液を用いるが、基板材料に応じて適切
なエッチング液を用いる。凹部15形成工程終了後、レ
ジストマスクを除去する。伝搬基板11の凹部15は以
下のように形成してもよい。伝搬基板11の溝14形成
予定面は鏡面研磨されている。
【0117】凹部15は、まず補助基板12を洗浄した
のち、伝搬基板11の凹部15形成予定面にレジストマ
スクを形成する。つぎにレジストマスクを形成した伝搬
基板11の凹部15形成予定面をブラスト砥粒によって
サンドブラストする。最後にレジストマスクを除去す
る。
【0118】なお、伝搬基板11の凹部15形成は上記
の方法に限定するものではなく、凹部15を形成するも
のであれば方法は問わない。
【0119】基板接合については第1の実施の形態と同
様に、伝搬基板11と補助基板12との直接接合を行
う。
【0120】以上のプロセスによって得られた接合基板
に、フォトリソグラフィーによって接合基板上に櫛形電
極13を形成する。本実施の形態においては、櫛形電極
13が凹部15の直上となるように配置している。以上
のプロセスを経て、本実施の形態における弾性表面波素
子は製造される。
【0121】ここで、本実施の形態における補助基板1
2の凹部15の効果について説明する。第1の実施の形
態と同様に、凹部15の形成によって基板接合面積が小
さくなるため接合基板の熱歪みも小さくなり、結果とし
て応力が緩和され、直接接合の熱処理工程における基板
破砕を抑制する事ができる。
【0122】また、直接接合においては接合面にパーテ
ィクル、ダスト等の異物がある場合、異物のある部分の
接合が行われず空隙が生じる、あるいは接合強度が著し
く弱くなる、といった接合不良の原因となる。基板を直
接接合する場合、連続した接合面積が小さいほど接合不
良の可能性は低くなるが、凹部15形成によって接連続
した接合面積を小さくすると、接合不良の可能性を低減
することができる。
【0123】また、本実施の形態においては、櫛形電極
指に垂直な方向および平行な方向に作用する応力は従来
の弾性表面波素子と比較して小さくなる。しかしなが
ら、弾性表面波の伝搬領域すなわち櫛形電極の形成領域
直下には基板接合領域がないため、弾性表面波の伝搬領
域における接合不良による応力の不均一は生じることは
ない。
【0124】また、また凹部15形成によって、伝搬基
板11表層の弾性表面波伝搬領域に均一な応力がはたら
く弾性表面波素子を得ることができる。
【0125】本実施の形態における弾性表面波素子の効
果を確認するため、本実施の形態の弾性表面波素子と従
来の弾性表面波素子を作製し、電気機械結合係数および
TCDといった弾性表面波伝搬特性を測定して比較を行
った。
【0126】比較の対象とする従来の弾性表面波素子
は、本実施の形態の弾性表面波素子の伝搬基板11裏面
に凹部15形成をしている点を除き、基板材料の組み合
わせや寸法などは同じである。なお、本実施の形態にお
いては、伝搬基板11として、36°回転YカットX伝
搬のタンタル酸リチウム、補助基板12としてガラスを
用いている。
【0127】本実施の形態の弾性表面波素子ならびに従
来の弾性表面波素子ともに基板接合の熱処理工程の熱処
理条件を約200℃で10時間としたが、従来の弾性表
面波素子は、接合基板に作用する熱応力が伝搬基板31
もしくは補助基板32の弾性限界を超えて、接合基板の
一部に破砕が生じた。
【0128】一方、本実施の形態では伝搬基板11への
凹部15形成によって、接合基板に作用する応力が緩和
されるため、熱処理工程における基板破砕を抑制するこ
とができた。つぎに、弾性表面波伝搬特性を比較した。
なお、TCDについては、TCDと異符号で絶対値が同
じであるところの周波数温度係数を測定し、それの異符
号をとってTCDの測定値とした。電気機械結合係数に
ついては、どちらの弾性表面波素子においても5%程度
で差がなかった。
【0129】一方、TCDについては、従来の弾性表面
波素子が25ppm/℃であるのに対し、本実施の形態
における弾性表面波素子は30ppm/℃であった。温
度特性の改善度合いは小さくなっているが、図11で示
した従来の弾性表面波素子に比べ、接合の不良による特
性のばらつきも低減され、安定した特性が得られるとい
う効果がある。
【0130】また、36゜回転YカットX伝搬タンタル
酸リチウム単体基板を用いた弾性表面波素子のTCDが
36ppm/℃であることから比較すると、本実施の形
態の弾性表面波素子では、温度特性は改善されている。
また、周波数応答についても変化はなく、弾性表面波音
速に変化がないことが確認された。
【0131】以上のように、本実施の形態によれば、電
気機械結合係数や弾性表面波伝搬速度等の諸特性を変化
させることなく、良好な温度特性を有する弾性表面波を
得ることができる。
【0132】また、本実施の形態においては、弾性波の
伝搬方向の熱膨張係数の大きな伝搬基板11と、弾性波
の伝搬方向の熱膨張係数の小さな補助基板12を直接接
合しており、正の温度変化に対しては伝搬基板の表面近
傍では、圧縮応力が作用し、伝搬基板本来の弾性波の伝
搬方向の熱膨張係数よりも小さい値を示し、密度変化も
小さくなる。
【0133】また、本実施の形態においては、弾性表面
波伝搬方向に平行、および垂直な方向に作用する応力は
従来のものと比較して緩和される。
【0134】なお、本実施の形態では、凹部15領域寸
法は800μm×400μm、また、凹部の深さは平均
で20μmとしている。溝14の幅を400μmとした
が、凹部15の領域寸法、ならびに深さを変化させるこ
とによって応力の緩和の度合いを変化させることができ
る。
【0135】また、本実施の形態においては、伝搬基板
11として36°回転YカットX伝搬のタンタル酸リチ
ウムを用いたが、これに限らず、他の結晶方位を用いた
場合でも、補助基板12の弾性波伝搬方向の熱膨張係数
が伝搬基板11の弾性波の伝搬方向の熱膨張係数よりも
小さい基板を用いれば、同様の効果が得られる。
【0136】また、本実施の形態においては、補助基板
としてガラスを用いたが、これに限らず、シリコンなど
の他の低熱膨張材料を用いてもよい。補助基板としてガ
ラスを用いた場合には、その非結晶性により、単結晶で
ある伝搬基板との接合が容易となる。また、ガラスの場
合には、その組成によって種々の機械的性質を持った材
料を得ることができ、温度特性の制御が容易となる。
【0137】また、本実施の形態の伝搬基板11の弾性
表面波伝搬領域の直下には、従来の弾性表面波素子が有
している伝搬基板31と補助基板32の鏡面接合界面が
なく、さらに凹部15形成の際に、伝搬基板11の弾性
表面波伝搬領域の直下が実質的に荒らし加工を施したの
と同じ状態になっているため、伝搬基板11裏面でのバ
ルク波反射に起因する弾性表面波素子の周波数応答にお
ける不要スプリアスを抑制する効果もある。
【0138】また、本実施の形態では伝搬基板11に凹
部15形成しているが、これまで述べた効果は、本質的
には本実施の形態の基板構造における凹部15が存在す
ることによって生じるものであり、図15に示すよう
に、補助基板12への凹部15形成によっても同様の効
果を得ることができる。
【0139】また、本発明の携帯電話等の移動体通信機
器は、本発明の弾性表面波素子を、フィルタ又は発振子
として用いていることを特徴とするものである。本発明
の移動体通信機器は、それらフィルタ又は発振器以外の
構成要素としては、たとえば、アンテナ、送信信号処理
回路、受信信号処理回路等、当然に、それぞれの移動体
通信機器に必要な公知なものを備える。
【0140】なお、本発明の伝搬基板と補助基板との非
接合領域の形状は、上述した溝、凹部に限られず、曲が
った溝、深さの違う凹部、多角形、等任意の形状を含
む。
【0141】また、本発明の伝搬基板と補助基板との接
合領域の形状は、上述した帯状、円周形状の他に、一部
途切れた円周形状、点状、等任意の形状を含む。
【0142】また、本発明の接合領域は、基板の最外端
に位置する必要はなく、すこし内部に位置したところに
あってももちろんかまわない。
【0143】
【発明の効果】以上説明したところから明らかなよう
に、本発明は、弾性表面波の伝搬特性にばらつきを抑制
し、良好な温度特性を有する弾性表面波素子を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における弾性表面波
素子の一部切欠斜視図である。
【図2】図1のa−a’部での断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における弾性表面波
素子の分解斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における弾性表面波
素子の一部切欠斜視図である。
【図5】図4のb−b’部での断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における弾性表面波
素子の分解斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態における弾性表面波
素子の一部切欠斜視図である。
【図8】図7のc−c’部での断面図である。
【図9】図7のd−d’部での断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態における弾性表面
波素子の分解斜視図である。
【図11】従来の弾性表面波素子の断面図である。
【図12】従来の伝搬基板単体を用いた弾性表面波素子
の断面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態における弾性表面波
素子の分解斜視図である。
【図14】本発明の他の実施の形態における弾性表面波
素子の分解斜視図である。
【図15】本発明の他の実施の形態における弾性表面波
素子の分解斜視図である。
【符号の説明】
11、31 伝搬基板 12、32 補助基板 13、33 櫛形電極 14 溝 15 凹部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 南波 昭彦 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 田口 豊 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 冨田 佳宏 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電基板である伝搬基板と、前記伝搬基
    板に直接接合により積層された補助基板と、前記伝搬基
    板の前記補助基板との接合面と反対側の面上に形成さ
    れ、弾性波を励振する櫛形電極とを備え、前記伝搬基板
    と前記補助基板とは、少なくとも前記櫛形電極形成領域
    の直下の領域では、互いに接合しておらず、 前記補助基板の前記弾性波の伝搬方向の熱膨張係数は、
    前記伝搬基板の前記弾性波の伝搬方向の熱膨張係数より
    小さいことを特徴とする弾性表面波素子。
  2. 【請求項2】 前記伝搬基板側に、凹部または溝が形成
    され、その凹部または溝の存在によって、前記伝搬基板
    と前記補助基板とが接合しない領域を形成していること
    を特徴とする請求項1記載の弾性表面波素子。
  3. 【請求項3】 前記補助基板側に、凹部または溝が形成
    され、その凹部または溝の存在によって、前記伝搬基板
    と前記補助基板とが接合しない領域を形成していること
    を特徴とする請求項1記載の弾性表面波素子。
  4. 【請求項4】 前記伝搬基板と前記補助基板とが接合す
    る領域は、前記伝搬基板の全周囲に渡っていることを特
    徴とする請求項1,2,または3記載の弾性表面波素
    子。
  5. 【請求項5】 前記伝搬基板と前記補助基板とは実質上
    矩形形状をしており、それら基板同士が接合する領域
    は、前記伝搬基板のいずれかの一対の対向する二辺に存
    在することを特徴とする請求項1記載の弾性表面波素
    子。
  6. 【請求項6】 前記いずれかの一対の対向する二辺と
    は、二つある一対の二辺の内、前記弾性波の伝搬方向に
    実質上垂直な面内における受ける応力がより均一となる
    方の、一対の二辺であることを特徴とする請求項5記載
    の弾性表面波素子。
  7. 【請求項7】 前記溝は、前記櫛形電極の指の方向に平
    行に形成されていることを特徴とする請求項2または3
    記載の弾性表面波素子。
  8. 【請求項8】 前記伝搬基板の熱膨張係数は異方性を有
    し、前記溝は、前記伝搬基板の熱膨張係数のより大きい
    方向に実質上垂直な方向に形成されていることを特徴と
    する請求項2または3記載の弾性表面波素子。
  9. 【請求項9】 前記直接接合は、前記伝搬基板および前
    記補助基板それぞれの基板表面を平坦化し、鏡面化し、
    清浄化し、親水化して、重ね合わせた後、熱処理により
    接合したものであることを特徴とする請求項1〜8のい
    ずれかに記載の弾性表面波素子。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のいずれかに記載の弾性
    表面波素子と、アンテナと、送信信号処理回路と、受信
    信号処理回路とを備え、 前記弾性表面波素子は、フィルタ又は発振子として用い
    られていることを特徴とする移動体通信機器。
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