JP2000205371A - 小型車両用伝動装置 - Google Patents

小型車両用伝動装置

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JP2000205371A
JP2000205371A JP11320901A JP32090199A JP2000205371A JP 2000205371 A JP2000205371 A JP 2000205371A JP 11320901 A JP11320901 A JP 11320901A JP 32090199 A JP32090199 A JP 32090199A JP 2000205371 A JP2000205371 A JP 2000205371A
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crankshaft
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H45/00Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches
    • F16H2045/002Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches comprising a clutch between prime mover and fluid gearing

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジン及び多段変速機間の伝動経路に流体
伝動手段を備える小型車両用伝動装置において,流体伝
動手段のクリープ現象を解消すると共に,変速機の変速
操作を軽快に行うことができるようにする。 【解決手段】 エンジンEのクランク軸2と,多段変速
機Mの入力軸10とを,エンジンEに連なるポンプ羽根
車50及び変速機M側に連なるタービン羽根車51を有
する流体伝動手段Tを介して連結した小型車両用伝動装
置において,エンジンEのクランク軸2及び多段変速機
M間に流体伝動手段Tと直列関係にして変速クラッチC
cを介裝する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,エンジンのクラン
ク軸と多段変速機の入力軸とを,該クランク軸に連なる
ポンプ羽根車及び該入力軸に連なるタービン羽根車を備
えた流体伝動手段,即ちトルクコンバータ又は流体継手
を介して連結した,小型車両用伝動装置,小型車両用伝
動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】かゝる小型車両用伝動装置は,例えば特
開昭57−69163号公報に開示されているように,
既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のかゝる小型車両
用伝動装置では,上記公報に開示されているように,エ
ンジンのクランク軸と,多段変速機の入力軸とをトルク
コンバータのみを介して連結して,発進時や変速時のト
ルクショックをトルクコンバータの滑り作用により吸収
するようにしている。
【0004】しかしながら,トルクコンバータや流体継
手は,滑り機能を有するとは言え,エンジンから動力を
入力される限り多少ともトルク伝達を行うので,従来装
置では,変速機をニュートラル位置からロー位置へ切換
える発進時には,エンジンがアイドリング状態にあって
も車両の駆動車輪に多少とも動力が伝達するクリープ現
象が発生する。また走行中,変速機の切換摺動部には常
に伝達トルクに起因する摩擦が作用するため,変速機の
切換抵抗が大きく,大なる変速操作荷重を要する等の欠
点がある。
【0005】本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたも
ので,クリープ現象を解消すると共に,変速機の変速操
作を軽快に行うことができるようにした,前記小型車両
用伝動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に,本発明は,エンジンのクランク軸と多段変速機の入
力軸とを,該クランク軸に連なるポンプ羽根車及び該入
力軸に連なるタービン羽根車を備えた流体伝動手段を介
して連結した,小型車両用伝動装置において,前記クラ
ンク軸及び前記入力軸間に,前記流体伝動手段と直列関
係にして変速クラッチを介裝したことを第1の特徴とす
る。
【0007】尚,前記流体伝動手段は,本発明の実施例
におけるトルクコンバータTに対応する。
【0008】この第1の特徴によれば,エンジンのアイ
ドリング時には,変速機のロー位置でも,変速クラッチ
をオフ状態に制御することにより,流体伝動手段の存在
に関わりなく変速クラッチ以降への動力伝達を遮断し
て,クリープ現象を防ぐことができる。また変速操作時
には,最初に変速クラッチをオフ状態に制御することに
より,流体伝動手段の存在にに関わりなく変速機を無負
荷状態にして,トルクショックを伴うことなく変速を軽
快に行うことができる。
【0009】また本発明は,第1の特徴に加えて,前記
変速クラッチを,半クラッチ領域を持たないオン・オフ
式に構成したことを第2の特徴とする。
【0010】この第2の特徴によれば,半クラッチによ
る摩擦部の発熱及び摩耗を回避して,変速クラッチの耐
久性を向上させることができる。しかも,変速クラッチ
がオフ状態から半クラッチ領域を飛び越えて一気にオン
状態へと移行しても,それに伴うトルクショックは,流
体伝動手段の滑り作用により吸収されるので,乗り心地
を阻害させることもない。
【0011】さらに本発明は,第2の特徴に加えて,前
記変速クラッチをオフ状態にすべく作動する変速クラッ
チアクチュエータを,これがエンジンのアイドリング状
態を検知するアイドリングセンサ,及び前記多段変速機
の変速操作を検知する変速センサの出力信号のそれぞれ
の発生時に作動するように構成したことを第3の特徴と
する。
【0012】この第3の特徴によれば,発進時及び変速
操作時に,変速クラッチのオン・オフ作動を的確に行う
ことができ,該クラッチの耐久性向上に寄与し得る。
【0013】さらにまた本発明は,第1の特徴に加え
て,入力側に連なる複数枚の駆動摩擦板及び,これら駆
動摩擦板と交互に積層されて出力側に連なる複数枚の被
動摩擦板を備える多板摩擦係合手段と,入力側の回転数
の所定値以上の上昇に応動して前記多板摩擦係合手段を
オン状態にする遠心機構と,この遠心機構の作動中で
も,前記多段変速機の変速時には前記多板摩擦係合手段
をオフ状態にするクラッチオフ機構とで前記変速クラッ
チを構成したことを第4の特徴とする。
【0014】尚,前記多板摩擦係合手段は,本発明の後
述する第4実施例におけるクラッチアウタ137,クラ
ッチインナ138,駆動摩擦板139,被動摩擦板14
0及び受圧環141に対応し,前記遠心機構は,駆動板
135,遠心重錘143及びピボット144に対応し,
前記クラッチオフ機構は,レリーズカム150,固定カ
ム152,クラッチアーム153に対応する。
【0015】この第4の特徴によれば,エンジンのアイ
ドリング時には,遠心機構により多板摩擦係合手段をオ
フ状態にしておくことにより,流体伝動手段のクリープ
現象による車両の微速前進を防ぐことができ,しかも変
速時には,クラッチオフ機構の作動により多板摩擦係合
手段をオフ状態にして変速ショックを確実に無くするこ
とができる。
【0016】さらにまた本発明は,第1〜第4の特徴の
何れかに加えて,前記変速クラッチのトルク容量を,前
記流体伝動手段のトルク容量以上に設定したことを第5
の特徴とする。
【0017】この第5の特徴によれば,全負荷状態で
も,変速クラッチの滑りを防ぎ,その耐久性を確保する
ことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を,添付図面
に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0019】図1〜図12は本発明の第1実施例を示す
もので,図1は本発明を適用した自動二輪車の側面図,
図2は同自動二輪車に搭載されるパワーユニットの縦断
面図,図3は上記パワーユニットにおける伝動装置の拡
大縦断面図,図4は図3の4−4線断面図,図5は図3
の5−5矢視図,図6は上記伝動装置の側面図,図7は
図3の変速クラッチの出口弁を閉弁状態で示す拡大図,
図8は同出口弁を開弁状態で示す拡大図,図9は図3の
9−9線断面図,図10は図3の10−10線断面図,
図11は図3のロックアップクラッチの制御弁を閉弁状
態で示す拡大図,図12は同制御弁を開弁状態で示す拡
大図である。図13は本発明の第2実施例を示す,図3
に対応した断面図,図14は本発明の第3実施例を示
す,図3に対応した断面図である。図15〜図17は本
発明の第4実施例を示すもので,図15は本発明を適用
した四輪バギーの側面図,図16は同四輪バギーの,パ
ワーユニット部を縦断して示した平面図,図17は上記
パワーユニットの伝動装置の拡大縦断面図である。
【0020】先ず,図1〜図12に示す本発明の第1実
施例の説明より始める。
【0021】図1において,自動二輪車Vmには,前輪
Wf及び後輪Wrを支持するボディフレームFmの上部
にサドルSmが,またその下部にパワーユニットPがそ
れぞれ取付けられ,サドルSmの直下には燃料タンクT
fmが配設される。
【0022】図1及び図2に示すように,上記パワーユ
ニットPは,エンジンE及び多段変速機Mを一体化して
構成される。そのエンジンEは,従来普通のように,ク
ランクケース1に左右一対のボールベアリング3,3′
を介して支承されるクランク軸2と,シリンダブロック
5のシリンダボア5aに摺動自在に嵌装されてコンロッ
ド6を介してクランク軸2に連接されるピストン7とを
備えると共に,クランク軸2を自動二輪車Vmの左右方
向へ向けて配置される。またシリンダブロック5には,
ピストン7の頂面との間に燃焼室4aを画成するシリン
ダヘッド4が接合され,このシリンダヘッド4に,燃焼
室4aに連なる吸,排気ポートを開閉する吸,排気弁
(図示せず)と,それらを開閉駆動するカム軸9とが設
けられる。このカム軸9はクランク軸2と平行にしてシ
リンダヘッド4に回転自在に支承される。
【0023】クランクケース1にはミッションケース8
が一体に連設されており,このミッションケース8の左
右両側壁により多段変速機Mの,クランク軸2と平行に
配置された入力軸10及び出力軸11がそれぞれボール
ベアリング12,12′;13,13′を介して支承さ
れ,これら入力軸10及び出力軸11にわたり,図2で
左側から第1速ギヤ列G1,第2速ギヤ列G2,第3速
ギヤ列G3及び第4速ギヤ列G4が配設される。そして
第2速ギヤ列G2の被動ギヤG2b,及び第3速ギヤ列
G3の駆動ギヤG3aがシフトギヤを兼ねており,両シ
フトギヤG2b,G3aが共に中立位置にあるときは,
変速機Mはニュートラル状態にあり,シフトギヤG2b
が図で左動又は右動すると第1速ギヤ列G1又は第3速
ギヤ列G3が確立し,シフトギヤG3aが左動又は右動
すると,第2速ギヤ列G2又は第4速ギヤ列G4が確立
するようになっている。上記シフトギヤG2b,G3a
は,図示しない公知のペダル式その他のマニュアル式チ
ェンジ装置により作動される。
【0024】前記クランク軸2の右端と変速機Mの入力
軸10の右端とは,クランクケース1及びミッションケ
ース8外で互いに直列関係に接続される変速クラッチC
c,トルクコンバータT及び1次減速装置14を介して
相互に連結される。その際,特に,変速クラッチCc,
トルクコンバータT及び1次減速装置14の駆動ギヤ1
4aはクランク軸2上に,クランクケース1の右側壁側
から外方に向かって駆動ギヤ14a,トルクコンバータ
T及び変速クラッチCcの順で取付けられる。そしてこ
れらを覆う右サイドカバー15aがクランクケース1及
びミッションケース8の右端面に接合される。
【0025】クランク軸2の左端には,発電機16のロ
ータ17が固着され,それのステータ18は,発電機1
6を覆ってクランクケース1の左端面に接合される左サ
イドカバー15bに取付けられる。またクランクケース
1及びシリンダブロック5には,トルクコンバータT及
び1次減速装置14と反対側の左側壁に一連の調時伝動
室90が形成され,該室90には,クランク軸2の回転
をカム軸9へ2分の1に減速して伝達する調時伝動装置
91が収容される。こうして,1次減速装置14,トル
クコンバータT及び変速クラッチCcと,調時伝動装置
91及び発電機16とは,クランクケース1内部即ちク
ランク室を挟んでクランク軸2の両端部に配置される。
【0026】図2及び図3に示すように,クランク軸2
には,その右端面に開口する上流供給油路27aと,コ
ンロッド6の大端部を支持するクランクピン外周のニー
ドルベアリング49に連通する下流供給油路27bと,
これら両油路27a,27bを直接連通するオリフィス
48と,上流供給油路27aから変速クラッチCcに向
かって半径方向に延びる第1流入孔43aと,上流供給
油路27aからトルクコンバータTに向かって半径方向
に延びる第2流入孔43bと,下流供給油路27bから
トルクコンバータTに向かって半径方向に延びる流出孔
45とが設けられる。上流供給油路27aには,エンジ
ンEにより駆動されるオイルポンプ44が油溜め46か
ら吸い上げたオイルを,右サイドカバー15aに形成さ
れた油路27を通して圧送するようになっている。油溜
め46は,クランクケース1,ミッションケース8及び
右サイドカバー15aの底部に形成されるものである。
【0027】変速機Mの出力軸11の左端には,ミッシ
ョンケース8外で,自動二輪車の後輪(図示せず)を駆
動するチェーン式の最終減速装置19が連結される。
【0028】図2及び図3において,変速クラッチCc
は,一端に端壁20aを,また中心部にクランク軸2に
スプライン結合されるボス20bを有する円筒状のクラ
ッチケーシング20と,このクラッチケーシング20内
にあって上記ボス20bの外周に摺動自在にスプライン
嵌合される加圧板21と,クラッチケーシング20の開
放端部に油密に固着される受圧板22と,上記加圧板2
1及び受圧板22の間に介裝される環状の摩擦クラッチ
板23とを備え,その摩擦クラッチ板23の内周に後述
するポンプ羽根車50の伝動板24がスプライン係合さ
れる(図4参照)。
【0029】加圧板21は,クラッチケーシング20の
端壁20a及び周壁との間に油圧室25を画成する。こ
の油圧室25は,クラッチケーシング20のボス20b
に設けられる入口弁26を介してクランク軸2の前記第
1流入孔43aに接続されると共に,端壁20aの外周
部に設けられる出口弁28を介してクラッチケーシング
20外に開放されるようになっている。
【0030】図3及び図4に示すように,ボス20bに
は,クランク軸2と平行に延びる複数個(図示例では3
個)の弁孔29と,各弁孔29を経て前記第1流入孔4
3aから油圧室25に至る複数本の通孔30とが穿設さ
れており,各弁孔29に,スプール弁からなる入口弁2
6が摺動可能に嵌合される。そして,これら入口弁26
が図3で右動位置を占めると(図3の上半部側),通孔
30を開通し,左動位置を占めると(図3の下半部側参
照),通孔30を閉鎖するようになっている。尚,ボス
20bの通孔30とクランク軸2の第1流入孔43aと
の連通を確実にするために,クランク軸2及びボス20
bの互いに嵌合するスプライン部の一部の歯を切除する
ことが効果的である。
【0031】またクラッチケーシング20の端壁20a
の外周部には,その周方向等間隔置きに複数個(図示例
では3個)の出口孔32が穿設され,これら出口孔32
を油圧室25側で開閉し得る,リード弁からなる出口弁
28の一端が端壁20aにかしめ結合される。
【0032】端壁20aには,さらに,各出口孔32に
連通するガイドカラー33が固着されており,各ガイド
カラー33に開弁棒31が摺動可能に嵌合される。この
開弁棒31は,その外周に軸方向に延びる溝31aを有
しており,図3で右動位置を占めると(図3の上半部側
及び図7参照),出口弁28の自己の弾性力による出口
孔32に対する閉鎖を許容し,左動位置を占めると(図
3の下半部側及び図8参照),出口弁28を油圧室25
内方へ撓ませて出口孔32を開放するようになってい
る。
【0033】上記入口弁26及開弁棒31の外端には,
共通の弁作動板34が連結される。この弁作動板34
は,クラッチケーシング20のボス20bに図3で左右
方向摺動可能に支承されるもので,その右動位置を規定
するストッパ環35がボス20bに係止され,このスト
ッパ環35に向けて弁作動板34を付勢する戻しばね3
6がクラッチケーシング20及び弁作動板34間に縮設
される。
【0034】弁作動板34には,ボス20bを同心上で
囲繞するレリーズベアリング37を介して押圧環38が
装着され,この押圧環38の外端面に変速クラッチ操作
軸39に固設されたアーム39aが係合し,変速クラッ
チ操作軸39を往復回動することにより,戻しばね36
と協働して,弁作動板34を入口弁26及び開弁棒31
と共に左右動させ得るようになっている。
【0035】変速クラッチ操作軸39には,図6に示す
ように,それを回動するための電動式又は電磁式の変速
クラッチアクチュエータ40が連結され,この変速クラ
ッチアクチュエータ40は,エンジンEのアイドリング
状態を検知するアイドリングセンサ41,及び変速機M
の変速操作を検知する変速センサ42の出力信号が入力
され,それらの何れの信号にも応動して,弁作動板34
を図3で左動する方向に変速クラッチ操作軸39を回動
するようになっている。
【0036】こゝで変速クラッチCcの作用について説
明すると,エンジンEの作動中で,アイドリングセンサ
41及び変速センサ42が出力信号を発していない状態
では,変速クラッチアクチュエータ40は非作動状態を
保持するので,弁作動板34が戻しばね36の付勢力に
より後退位置,即ち図3で右動位置に保持されて,図3
の上半部側及び図7に示すように,入口弁26を開弁す
ると共に,出口弁28の閉弁を許容する。したがって,
オイルポンプ44から圧送されたオイルが上流供給油路
27aから第1流入孔43a及び通孔30を経てクラッ
チケーシング20内の油圧室25に供給されて該室25
を満たすことになる。
【0037】クラッチケーシング20はクランク軸2と
共に回転しているから,クラッチケーシング20の油圧
室25のオイルは遠心力を受けて油圧を発生し,その油
圧をもって加圧板21が摩擦クラッチ板23を受圧板2
2に対して押圧することにより,加圧板21,受圧板2
2及び摩擦クラッチ板23の三者は摩擦係合される。即
ち変速クラッチCcはオン状態を呈し,クランク軸2の
出力トルクを摩擦クラッチ板23からトルクコンバータ
Tに伝達する。
【0038】一方,エンジンEのアイドリング時又は変
速機Mの変速操作時には,アイドリングセンサ41又は
変速センサ42が出力信号を出力するので,それを受け
た変速クラッチアクチュエータ40が直ちに作動して,
変速クラッチ操作軸39を回動し,弁作動板34を図3
で左動位置へ移動する。これにより,図3下半部側に示
すように,入口弁26を閉弁すると共に出口弁28を開
弁する。その結果,上流供給油路27aから油圧室25
へのオイル供給が遮断されると共に,油圧室25のオイ
ルが出口孔32及び開弁棒31の溝31aを通ってクラ
ッチケーシング20外に排出されて油圧室25の油圧を
低下させ,加圧板21の摩擦クラッチ板23に対する押
圧力が激減するため,加圧板21,受圧板22及び摩擦
クラッチ板23の三者の摩擦係合は解かれる。即ち変速
クラッチCcはオフ状態を呈し,クランク軸2からトル
クコンバータTへのトルク伝達を遮断する。クラッチケ
ーシング20外に排出されたオイルは油溜め46に還流
する。
【0039】その状態から,発進のためにエンジンEの
回転が加速され,又は変速操作が完了することにより,
アイドリングセンサ41及び変速センサ42が共に出力
信号を停止すると,変速クラッチアクチュエータ40は
直ちに非作動状態に戻り,弁作動板34は戻しばね36
の付勢力をもって右動位置まで一気に後退して,再び入
口弁26を開弁すると共に,出口弁28を閉弁させるの
で,前述の作用から明らかなように変速クラッチCc
は,半クラッチ状態を経ずにオフ状態からオン状態に復
帰することになる。即ち,変速クラッチCcは半クラッ
チ領域を持たないオン・オフ型であり,そのトルク容量
は,トルクコンバータTのそれより大きく設定される。
【0040】再び図3おいて,トルクコンバータTは,
ポンプ羽根車50,タービン羽根車51及びステータ羽
根車52からなっており,そのポンプ羽根車50は,前
記受圧板22に隣接して配置されると共に,そのボス5
0aがニードルベアリング53を介してクランク軸2に
支承される。このポンプ羽根車50の外側面に,前記摩
擦クラッチ板23の内周にスプライン係合する伝動板2
4が固着されている。したがって,摩擦クラッチ板23
の伝動トルクは,この伝動板24を介してポンプ羽根車
50に伝達される。
【0041】またクランク軸2には,ポンプ羽根車50
のボス50aと,クランク軸2を支持する前記ボールベ
アリング3′との間に配置されるステータ軸60の右端
部がニードルベアリング54を介して支承され,このス
テータ軸60にステータ羽根車52のボス52aが凹凸
係合により連結される。ステータ軸60の左端部にはス
テータアーム板56が固着されており,このステータア
ーム板56が中間部に有する円筒部56aの外周面がボ
ールベアリング57を介してクランクケース1に支承さ
れる。またステータアーム板56の外周部はフリーホイ
ール58を介してクランクケース1に支持される。
【0042】ポンプ羽根車50に対向するタービン羽根
車51は中心部にタービン軸59を一体に有し,その右
端部はニードルベアリング61を介してステータ軸60
に支承され,その左端部はステータアーム板56の円筒
部56a内周面にボールベアリング62を介して支承さ
れる。このタービン軸59とクランク軸2間には,ステ
ータ軸60の横孔63を貫通して一方向クラッチ64が
設けられる。この一方向クラッチ64は,タービン軸5
9に逆負荷が加えられたときオン状態となって,タービ
ン軸59及びクランク軸2間を直結するようになってい
る。
【0043】図3に示すように,ポンプ羽根車50のボ
ス50a,タービン軸59及びステータ羽根車52のボ
ス52aの各間の間隙がトルクコンバータTの流体入口
47iとされ,またタービン軸59のタービン羽根車5
1外側へ延びる部分にトルクコンバータTの流体出口4
7oが設けられ,その流体入口47iはクランク軸2の
前記第2流入孔43bと連通し,流体出口47oは,ス
テータ軸60の横孔63を介してクランク軸2の前記流
出孔45に連通する。したがって,オイルポンプ44か
らクランク軸2の上流供給油路27aに供給されたオイ
ルが第2流入孔43bに入ると,流体入口47iからポ
ンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室に入
り,その油室及び後述するロックアップクラッチLcの
油圧室77を満たした後,流体出口47oから流出孔4
5を経てクランク軸2の下流供給油路27bへと流れる
ようになっている。
【0044】タービン軸59には,1次減速装置14の
駆動ギヤ14aが一体に形成され,これに噛合する被動
ギヤ14bが変速機Mの入力軸10にスプライン結合さ
れる。こうして構成される1次減速装置14は,クラン
クケース1とトルクコンバータTとの間に配置される。
【0045】そのトルクコンバータTの作用について説
明する。
【0046】クランク軸2の出力トルクがオン状態の変
速クラッチCcを介してポンプ羽根車50に伝達される
と,そのトルクは,トルクコンバータT内を満たしたオ
イルの作用によりタービン羽根車51に流体的に伝達さ
れる。このとき,両羽根車50,51間でトルクの増幅
作用が生じていれば,それに伴う反力はステータ羽根車
52に負担され,ステータ羽根車52は,フリーホイー
ル58のロック作用によりクランクケース1に固定的に
支持される。またトルクの増幅作用が生じていなけれ
ば,ステータ羽根車52は,フリーホイール58の空転
作用により空転が可能となるから,ポンプ羽根車50,
タービン羽根車51及びステータ羽根車52の三者は,
共に同方向へ回転する。
【0047】ポンプ羽根車50からタービン羽根車51
に伝達されたトルクは1次減速装置14を介して変速機
Mの入力軸10に伝達され,そして確立を選択された変
速ギヤ列G1〜G4,出力軸11及び最終減速装置19
を順次経て図示しない後輪へと伝達され,それを駆動す
る。
【0048】走行中のエンジンブレーキ時には,タービ
ン軸59に逆負荷トルクが加わることにより,一方向ク
ラッチ64がオン状態となるから,タービン軸59及び
クランク軸2相互が直結され,逆負荷トルクがトルクコ
ンバータTを経由することなくクランク軸2に伝達され
ることになり,良好なエンジンブレーキ効果を得ること
ができる。
【0049】再び図3において,ポンプ羽根車50及び
タービン羽根車51間には,それらを直結状態にし得る
ロックアップクラッチLcが設けられる。このロックア
ップクラッチLcは,ポンプ羽根車50の外周部に連設
されてタービン羽根車51を囲繞する円筒状のポンプ延
長部70と,タービン軸59の外周面に回転自在に支承
された支持筒71に摺動可能にスプライン嵌合される加
圧板72と,この加圧板72に対向してポンプ延長部7
0の端部に油密に固着されると共に,上記支持筒71の
スプライン嵌合される受圧板73と,これら加圧板72
及び受圧板73間に介裝される環状の摩擦クラッチ板7
4とを備え,その摩擦クラッチ板74は,タービン羽根
車51の外側面に固着された伝動板75に外周部がスプ
ライン係合される(図9参照)。加圧板72は,受圧板
73に対する後退位置が支持筒71に係止されたストッ
パ環76によって規定される。
【0050】ポンプ延長部70の内部は受圧板73によ
り油圧室77に画成され,この油圧室77は,ポンプ羽
根車50及びタービン羽根車51の対向間隙を通してそ
れらの内部と連通していて,オイルが満たされ,トルク
コンバータTの作動時には,その内部と同様に高圧とな
る。
【0051】図3,図11及び図12に示すように,加
圧板72及び受圧板73には,摩擦クラッチ板74の内
周側で周方向等間隔置きに複数個(図示例では3個)の
弁孔78,79がそれぞれ穿設され,加圧板72の弁孔
78を油圧室77側で開閉し得る,リード弁からなる制
御弁80の一端が加圧板72にかしめ結合される。
【0052】加圧板72及び受圧板73の弁孔78,7
9は互いに同軸上に配置され,これらに制御弁80の開
閉を制御する制御棒81が摺動可能に嵌合される。この
制御棒81は,その外周に軸方向に延びる連通溝81a
を有しており,図3で左動位置を占めると(図3の上半
部側及び図11参照),制御弁80の自己の弾性力によ
る弁孔78に対する閉鎖を許容すると共に,制御棒81
の連通溝81aにより摩擦クラッチ板74の内周側を受
圧板73の弁孔79外へ開放し,また右動位置を占める
と(図3の下半部側及び図12参照),この制御棒81
により受圧板73の弁孔79を閉鎖すると共に,制御弁
80を油圧室77内方へ撓ませて,摩擦クラッチ板74
の内周側で加圧板72の両側面間を制御棒81の連通溝
81aを介して連通するようになっている。
【0053】上記制御棒81の外端には,弁作動板82
が連結される。この弁作動板82は,前記支持筒71に
図3で左右方向摺動可能に支承されるもので,その左動
位置を規定するストッパ環83が支持筒71に係止さ
れ,このストッパ環83に向けて弁作動板82を付勢す
る戻しばね84が受圧板73及び弁作動板82間に縮設
される。
【0054】弁作動板82には,支持筒71と同心配置
のレリーズベアリング85を介して,ロックアップクラ
ッチ操作軸86(操作手段)のアーム86aが係合さ
れ,ロックアップクラッチ操作軸86を往復回動するこ
とにより,戻しばね84と協働して,弁作動板82を制
御棒81と共に左右動させ得るようになっている。
【0055】ロックアップクラッチ操作軸86には,図
6に示すように,それを回動するための電動式又は電磁
式のロックアップクラッチアクチュエータ87が連結さ
れ,このロックアップクラッチアクチュエータ87は,
所定値以下の車速を検知する車速センサ88の出力信号
が入力され,その信号に応動して,弁作動板82を図3
で右動する方向にロックアップクラッチ操作軸86を回
動するようになっている。
【0056】このロックアップクラッチLcの作用につ
いて説明する。車速センサ88が所定値以下の車速を検
知して出力信号を発すると,それを受けてロックアップ
クラッチアクチュエータ87は作動して,ロックアップ
クラッチ操作軸86を回動し,弁作動板82を図3で右
動位置へ移動する。これに伴い,図3下半部側及び図1
2に示すように,制御棒81が制御弁80を開き,連通
溝81aを介して加圧板72の両側面を連通させるの
で,加圧板72の両側面に油圧室77の油圧が等しく作
用すること,及び制御棒81の制御弁80に対する押圧
力で加圧板72が後退位置へ押圧されることにより,加
圧板72,受圧板73及び摩擦クラッチ板74の三者の
摩擦係合は起こらず,ロックアップクラッチLcはオフ
状態を呈する。したがって,この状態では,ポンプ羽根
車50及びタービン羽根車51の相対回転が可能であ
り,したがってトルクの増幅作用が可能である。また,
この場合,受圧板73の弁孔79は制御棒81により閉
鎖されるので,油圧室77から弁孔79への油圧の無用
なリークを防ぐことができる。
【0057】車速が所定値以上に上昇して,車速センサ
88が出力信号を停止すると,ロックアップクラッチア
クチュエータ87は非作動状態に戻り,弁作動板82
は,図3の上半部側及び図11に示すように,戻しばね
84の付勢力をもって左動位置まで後退して,制御弁8
0の弁孔78に対する閉弁を許容すると共に,摩擦クラ
ッチ板74の内周側を制御棒81の連通溝81aを介し
て弁孔79外に開放するため,加圧板72は,その内側
面にのみ油圧室77の油圧を受けて,摩擦クラッチ板7
4を受圧板73に対して押圧する。その結果,加圧板7
2,受圧板73及び摩擦クラッチ板74の三者が摩擦係
合して,ロックアップクラッチLcはオン状態となり,
ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51を相互に直結
させるので,自動二輪車Vmの高速走行時には,両羽根
車50,51相互の滑りを無くし,伝動効率を高めるこ
とができる。
【0058】ところで,エンジンEの運転中,オイルポ
ンプ44から吐出されたオイルは,先ず上流供給油路2
7aに入り,第1流入孔43aを経て変速クラッチCc
の油圧室25に入り,その作動と冷却に寄与し,また第
2流入孔43bを経てポンプ羽根車50及びタービン羽
根車51間の油室及びロックアップクラッチLcの油圧
室77に流入して,トルクコンバータT及びロックアッ
プクラッチLcの作動と冷却に寄与する。そして,油圧
室77から流出孔45から下流供給油路27bへ出たオ
イルは,クランクピン外周のニードルベアリング49に
供給され,その潤滑に寄与し,その潤滑を終えたオイル
は,クランク軸2の回転に伴い周囲に飛散してピストン
7等の潤滑に供される。上記オイルポンプ44は,元
来,エンジンEに潤滑用オイルを供給するものである
が,そのオイルを変速クラッチCcやトルクコンバータ
T,ロックアップクラッチLcのための作動オイルに利
用するようにしたので,作動オイル供給のための専用オ
イルポンプを設ける必要がなく,構成の簡素化を図るこ
とができる。
【0059】またクランク軸2に設けられた上流供給油
路27a及び下流供給油路27bは,オリフィス48を
介して直接的にも連通しているから,オイルポンプ44
から上流供給油路27aに送られたオイルの一部は,ト
ルクコンバータT等を経由せず,オリフィス48を通し
て下流供給油路27bへ直接移るので,オリフィス48
の選定によりトルクコンバータT及びエンジンEへのオ
イルの分配割合を自由に設定することができる。
【0060】一方,トルクコンバータTにおいては,エ
ンジンEのアイドリング時でも,ポンプ羽根車50及び
タービン羽根車51間で多少ともトルク伝達が生ずると
ころ,アイドリング時には,変速クラッチCcが前述の
ようにオフ状態に制御されるので,多段変速機Mの第1
速ギヤ列G1が確立していても,トルクコンバータTの
存在に関係なく,変速クラッチCc以降への動力伝達を
遮断して,クリープ現象を防ぐことができる。このこと
は,多段変速機Mの各伝動部材が無負荷状態に置かれる
ことを意味するから,自動二輪車Vmの発進のために,
図2でシフトギヤG2bを左方へシフトして,第1速ギ
ヤ列G1を確立する場合でも,トルクショックを伴うこ
となく,スムーズなシフトが可能となる。そして,発進
すべくエンジンEの回転を加速すると,変速クラッチC
cは半クラッチ領域を飛び越えて一気にオン状態へと移
行するが,それに伴うトルクショックは,トルクコンバ
ータTのポンプ羽根車50及びタービン羽根車51相互
の滑り作用により吸収され,それらの増幅作用も手伝っ
て,スムーズな発進を行うことができ,乗り心地の改善
に寄与し得る。
【0061】また走行中,シフトギヤG2b,G3aを
所望の方向へシフトして,所望の変速を行う際にも,そ
の都度,前述のように変速クラッチCcがオフ状態に制
御され,多段変速機Mの各伝動部材を無負荷状態にする
ため,トルクショックを伴うことなく,スムーズな変速
が可能となる。変速後においても,変速クラッチCcは
半クラッチ領域を飛び越えて一気にオン状態へと移行す
るが,それに伴うトルクショックも,トルクコンバータ
Tのポンプ羽根車50及びタービン羽根車51相互の滑
り作用により吸収される。したがって乗員に違和感を与
えず,乗り心地が改善される。
【0062】このように変速クラッチCcのオン・オフ
に伴い生ずるトルクショックをトルクコンバータTに吸
収させるようにしたことで,変速クラッチCcを,半ク
ラッチ領域を持たないオン・オフ型に構成することを可
能にしたのであり,半クラッチによる摩擦部の発熱及び
摩耗を回避して,変速クラッチCcの耐久性を向上させ
ることができる。
【0063】また変速クラッチCcのトルク容量は,ト
ルクコンバータTのそれ以上に設定されるので,全負荷
状態でも,変速クラッチCcの滑りを防ぎ,その耐久性
を確保することができる。
【0064】またクランク軸2は,これが減速装置14
を介して駆動する多段変速機Mの入力軸10より高速で
回転するものであるから,このクランク軸2に取付けら
れるトルクコンバータT及び変速クラッチCcが負担す
る伝達トルクは比較的小さく,それだけトルクコンバー
タT及び変速クラッチCcの各容量を小さくして,それ
らのコンパクト化が可能となり,トルクコンバータT及
び変速クラッチCcの併設によるも,パワーユニットP
のコンパクト化を図ることができる。
【0065】しかも1次減速装置14,トルクコンバー
タT及び変速クラッチCcのうち,1次減速装置14が
クランクケース1の右側壁に最も近接して,次にトルク
コンバータTが近接して配置されるので,1次減速装置
14の作動に伴いクランク軸2及び入力軸10に加わる
曲げモーメントを最小とすることができ,またトルクコ
ンバータTは変速クラッチCcより重量が大であるが,
それらの重量によりクランク軸2に加わる曲げモーメン
トも最小にすることができ,トルクコンバータT及び変
速クラッチCcのコンパクト化と相俟って,クランク軸
2,入力軸10及びこれらを支持するベアリング3′,
12′の耐久性向上を図ることができる。
【0066】またクランク軸2上には,1次減速装置1
4,トルクコンバータT及び変速クラッチCcと調時伝
動装置91及び発電機16とがクランク室を挟んで互い
に反対側に配置されるので,パワーユニットPの左右へ
の重量配分の均等化を図ることができる上,四サイクル
エンジンEにおいても,1次減速装置14のクランクケ
ース1右側壁への近接配置を,調時伝動装置91に何等
干渉されることなく行うことができ,クランク軸2,入
力軸10及びこれらを支持するベアリング3′,12′
の耐久性を確保し得る。
【0067】さらに発電機16及びトルクコンバータT
のクランク軸2上での同軸配置により,発電機16で発
生する回転振動をトルクコンバータTにより吸収するこ
とができ,パワーユニットPの静粛性に寄与することが
できる。
【0068】次に,図13に示す本発明の第2実施例に
ついて説明する。
【0069】この第2実施例は,ロックアップクラッチ
Lc′を,ポンプ羽根車50の回転数依存の自動制御型
に構成した点で前二実施例とは異なる。即ち,このロッ
クアップクラッチLc′は,ポンプ羽根車50の外周部
に連設されてタービン羽根車51を囲繞する円筒状のポ
ンプ延長部70と,タービン軸59に回転自在に支承さ
れると共に,ポンプ延長部70の開放端に油密に結合さ
れる受圧板93と,タービン軸59に摺動可能に支承さ
れて,受圧板93の内面に対向配置される加圧板94
と,これら加圧板94及び受圧板93間に介裝される環
状の摩擦クラッチ板95と,ポンプ延長部70及び加圧
板94間に介裝されて加圧板94を受圧板93と反対方
向へ付勢する皿型の戻しばね96とを備え,その摩擦ク
ラッチ板95は,タービン羽根車51の外側面に固着さ
れた伝動板75に外周部がスプライン係合される。また
受圧板93及び加圧板94は,両者一体になって回転し
ながら軸方向に相対摺動し得るように,相対向面に互い
に係合するドグ97及び凹部98が形成される。
【0070】ポンプ延長部70の内部は受圧板93によ
り油圧室99に画成され,この油圧室99は,ポンプ羽
根車50及びタービン羽根車51の対向間隙を通してそ
れらの内部と連通していて,オイルが満たされる。
【0071】受圧板93には,摩擦クラッチ板95の内
周側を受圧板93外へ開放する逃がし孔100と,受圧
板93の内周面を軸方向に延びる空気抜き溝101とが
設けられる。
【0072】その他の構成は,第1実施例の構成と同一
であるので,図中,第1実施例との対応部分には同一の
参照符号を付して,その説明を省略する。
【0073】而して,ポンプ羽根車50の所定回転数以
下では,ポンプ延長部70内の油圧室99を満たすオイ
ルの遠心力が小さいことから,油圧室99の油圧は上が
らず,加圧板94は戻しばね96の付勢力により後退位
置に戻っていて,摩擦クラッチ板95を解放しているの
で,ロックアップクラッチLc′はオフ状態となってい
る。
【0074】この間,油圧室99のオイルは,受圧板9
3の逃がし孔100から外部に流出するが,その量は極
めて少なくから,その後の油圧室99の昇圧に支障を来
すものではない。
【0075】ポンプ羽根車50の回転数が所定値を超え
ると,それに応じて油圧室99のオイルの遠心力が増大
して油圧室99を昇圧させるので,その高油圧をもって
加圧板94は受圧板93に向かって前進して,受圧板9
3との間で摩擦クラッチ板95を挟圧し,ロックアップ
クラッチLc′はオン状態となる。オン状態となったロ
ックアップクラッチLc′は,ポンプ羽根車50及びタ
ービン羽根車51間を直結状態にするので,両羽根車5
0,51相互の滑りを無くし,伝動効率を高めることが
できる。
【0076】その際,摩擦クラッチ板95の内周側で
は,オイルが逃がし孔100から流出することにより昇
圧が起こらないので,加圧板94の両面間に大なる圧力
差が生じ,摩擦クラッチ板95に対する挟圧が効果的に
行われる。
【0077】かくして,ポンプ羽根車50に連なるポン
プ延長部70内の油圧室99の遠心油圧の利用により,
ロックアップクラッチLc′の自動制御をポンプ羽根車
回転数依存型とすることを簡単に達成することができ
る。
【0078】次に,図14に示す本発明の第3実施例に
ついて説明する。
【0079】この第3実施例は,ロックアップクラッチ
Lc″を,タービン羽根車52の回転数依存の自動制御
型に構成した点で第2実施例とは異なる。このロックア
ップクラッチLc″は,ポンプ羽根車50のポンプ延長
部70に油密に結合されてタービン羽根車51を覆うト
ルクコンバータサイドカバー105の外側に配設され
る。トルクコンバータサイドカバー105は,タービン
軸59の外周に回転自在に支承され,その内側は,ポン
プ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室と連通し
ていて,その油室と同様に作動油で満たされるようにな
っている。
【0080】ロックアップクラッチLc″は,タービン
軸59の左端部にスプライン結合されて,開放端をトル
クコンバータサイドカバー105側に向けた偏平のクラ
ッチシリンダ106と,このクラッチシリンダ106の
シリンダ孔106aにシール部材113を介して摺動可
能に嵌装されて,クラッチシリンダ106の端壁との間
に油圧室108を画成する加圧ピストン107と,クラ
ッチシリンダ106の内周面の開放端寄りに係止される
受圧環109と,この受圧環109及び加圧ピストン1
07間においてクラッチシリンダ106の内周面に摺動
可能にスプライン係合する複数枚(図示例では2枚)の
環状の被動摩擦クラッチ板111,111と,これら被
動摩擦クラッチ板111,111間に介裝されると共
に,トルクコンバータサイドカバー105の外側に突設
された複数の伝動爪112に内周面を軸方向摺動可能に
係合する環状の駆動摩擦クラッチ板110と,これら駆
動及び被動摩擦クラッチ板110,111の内周側で加
圧ピストン107及びトルクコンバータサイドカバー1
05間に配設されて,加圧ピストン107を油圧室10
8側に付勢するピストン戻しばね114とから構成さ
れ,上記クラッチシリンダ106及び加圧ピストン10
7は,両者一体になって回転しながら軸方向に相対摺動
し得るように,相対向面に互いに係合するドグ115及
び凹部116が形成される。
【0081】タービン軸59には,トルクコンバータサ
イドカバー105の内部及びクラッチシリンダ106の
油圧室108をそれぞれタービン軸59の内周側に連通
する流体出口47o及び入口孔117が穿設され,これ
ら流体出口47o及び入口孔117とタービン軸59内
とを通してトルクコンバータサイドカバー105の内部
及びクラッチシリンダ106の油圧室108間が連通さ
れる。
【0082】クラッチシリンダ106の周壁には,その
周方向に等間隔置きに並んで油圧室108をクラッチシ
リンダ106外に開放する複数の逃がし孔118が穿設
され,またクラッチシリンダ106の内周面には,これ
ら逃がし孔118間を連通する環状溝119が設けら
れ,この環状溝119に,クラッチシリンダ106の所
定回転数以上で逃がし孔118を遠心力をもって閉鎖す
る遠心弁120が配設される。遠心弁120は,1本の
弾性線材からなる遊端リングで構成されたもので,少な
くとも一端120aを加圧ピストン107の前記凹部1
16の一個に係合させていて,加圧ピストン107,し
たがってクラッチシリンダ106と共に回転するように
なっている。またこの遠心弁120は,その自由状態で
は逃がし孔118を開放するように半径方向に収縮する
が,クラッチシリンダ106の回転数が所定値以上にな
ると,遠心力により半径方向に拡張して環状溝119の
底面に密着し,全ての逃がし孔118を閉鎖するように
なっている。
【0083】その他の構成は,第1実施例の構成と同一
であるので,図中,第1実施例との対応部分には同一の
参照符号を付して,その説明を省略する。
【0084】而して,オイルポンプ44からクランク軸
2の上流供給油路27aに供給されたオイルが第2流入
孔43bに入ると,流体入口47iからポンプ羽根車5
0及びタービン羽根車51間の油室に入り,その油室
と,トルクコンバータサイドカバー105内側とを満た
した後,流体出口47oからタービン軸59内へ出る。
タービン軸59内へ出たオイルは,入口孔117と流出
孔45とに分流し,入口孔117に移ったオイルはロッ
クアップクラッチLc″の油圧室108に流入し,流出
孔45に移ったオイルは,前実施例の場合と同様にクラ
ンク軸2の下流供給油路27bへと流れていく。
【0085】ところで,ロックアップクラッチLc″の
クラッチシリンダ106はタービン軸59にスプライン
結合していて,タービン軸59と共に回転するので,タ
ービン軸59の所定回転数以下では,遠心弁120は遠
心力に抗して収縮状態を維持し,逃がし孔118を開放
しており,したがって,入口孔117から油圧室108
に流入したオイルは逃がし孔118からクラッチシリン
ダ106外に流出するので,油圧室108の油圧は上が
らず,加圧ピストン107は,ピストン戻しばね114
の付勢力により後退位置に保持され,駆動及び被動摩擦
クラッチ板110,111は非係合状態に置かれる。即
ち,ロックアップクラッチLc″はオフ状態となってい
る。
【0086】その際,油圧室108に切粉や摩耗粉等の
異物が存在すれば,その異物を上記オイルと共に逃がし
孔118からクラッチシリンダ106外へ排出すること
ができる。
【0087】タービン軸59の回転数が所定値を超える
と,それと共に回転する遠心弁120は,増大する自己
の遠心力により拡張して全部の逃がし孔118を閉鎖す
る。その結果,油圧室108は,入口孔117から供給
されるオイルによって満たされると共に,そのオイルの
遠心力により油圧室108に油圧が発生し,その油圧を
もって加圧ピストン107は受圧環109に向かって前
進して,駆動及び被動摩擦クラッチ板110,111を
摩擦係合状態にし,ロックアップクラッチLc″はオン
状態となる。オン状態となったロックアップクラッチL
c″は,ポンプ羽根車50及びタービン軸59間を直結
状態にするので,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車
51相互の滑りを無くし,伝動効率を高めることができ
る。
【0088】タービン軸59の回転数が所定値未満に低
下すると,遠心弁120は再び開弁するので,油圧室1
08の残圧を逃がし孔118から速やかに解放すること
ができ,したがってロックアップクラッチLc″のオフ
性能を高めることができる。
【0089】かくして,タービン軸59に連結したクラ
ッチシリンダ106内の油圧室108の遠心油圧の利用
により,ロックアップクラッチLc″の自動制御をター
ビン羽根車回転数依存型とすることを簡単に達成するこ
とができる。
【0090】最後に,図15〜図17に示す本発明の第
4実施例について説明する。
【0091】先ず,図15及び図16において,四輪バ
ギーVbには,各一対の前輪Wfa,Wfb及び後輪W
ra,Wrbを支持するボディフレームFbの上部に
は,前部に燃料タンクTfb,後部にサドルSbが取付
けられ,またその下部にパワーユニットPが搭載され
る。左右の前輪Wfa,Wfbにそれぞれ連なる左右の
前輪駆動軸121a,121bは,差動装置122を介
して相互に連結され,左右の後輪Wra,Wrbは,一
本の後輪駆動軸123により直結される。
【0092】パワーユニットPは,エンジンEのクラン
ク軸2を四輪バギーVbの左右方向へ向けて配置され
る。変速機Mの出力軸11にベベルギヤ伝動装置125
を介して連結する駆動軸126がパワーユニットPの発
電機16側に隣接して且つ前後方向に向けて配設され
る。この駆動軸126の前端は,中間ギヤ伝動装置12
7,前部プロペラ軸128及びベベルギヤ減速装置12
9を介して前記差動装置122に連結され,また駆動軸
126の後端は,自在継手130,後部プロペラ軸13
1及びベベルギヤ減速装置132を介して前記後輪駆動
軸123に連結される。したがって,パワーユニットP
から駆動軸126に伝達される動力により前輪Wfa,
Wfb及び後輪Wra,Wrbを駆動することができ
る。
【0093】図17に示すように,この第4実施例のパ
ワーユニットPでは,変速クラッチCc′及びトルクコ
ンバータT′の構成において前記第1実施例と相違す
る。
【0094】変速クラッチCc′は,クランク軸2にス
プライン嵌合してナット134により固着される駆動板
135と,この駆動板135の外側面に一体に突設され
た支持筒136に摺動可能に支承される有底円筒状のク
ラッチアウタ137とを備える。駆動板135は,クラ
ッチアウタ137の端壁に隣接して配置されると共に,
その外周がクラッチアウタ137の内周にスプライン結
合される。クラッチアウタ137内にはクラッチインナ
138が同軸状に配置され,クラッチアウタ137の円
筒部内周に摺動可能にスプライン係合した複数枚の環状
の駆動摩擦板139と,クラッチインナ138の外周に
摺動可能に係合した複数枚の環状の被動摩擦板140と
が交互に積層配置される。その際,これら摩擦板13
9,140群の内,外側に2枚の駆動摩擦板139,1
39が配置され,その外側の駆動摩擦板139の外側面
に対面する受圧環141がクラッチアウタ137の円筒
部内周に係止される。
【0095】両側の駆動摩擦板139,139間に,こ
れらを離間方向に付勢する離間ばね142が縮設され
る。また内側の被動摩擦板140には,クラッチインナ
138の外周に突設されたフランジ138aが対置され
る。
【0096】駆動板135には,複数個の遠心重錘14
3がピボット144により揺動自在に取付けられ,各遠
心重錘143の押圧腕部143aが内側の駆動摩擦板1
39を押圧し得るように配置される。また駆動板135
の支持筒136には,クラッチアウタ137の外方(図
17では右方)への摺動限を規定するストッパ145が
設けられ,このストッパ145に向けてクラッチアウタ
137を付勢するクラッチばね146が駆動板135及
びクラッチアウタ137間に装着される。
【0097】クラッチインナ138は,公知の逆負荷伝
達用ねじ機構147を介して環状の伝動部材148が連
結され,この伝動部材148は,トルクコンバータT′
のポンプ羽根車50のボス50a外周にスプライン結合
される。
【0098】而して,エンジンEのアイドリング時に
は,クランク軸2と共に回転する駆動板135の回転数
が低く,遠心重錘143の重錘部の遠心力が小さいの
で,押圧腕部143aの駆動摩擦板139に対する押圧
力も小さい。このため,両側の駆動摩擦板139,13
9は,離間ばね142の付勢力で離間していて,被動摩
擦板140を解放しており,変速クラッチCc′はオフ
状態となっている。したがってオフ状態の変速クラッチ
Cc′は,クランク軸2からトルクコンバータT′のポ
ンプ羽根車50への動力伝達を遮断するので,車輪ブレ
ーキを作動せずとも,トルクコンバータT′のクリープ
作用による四輪バギーVbの微速前進を防ぐことができ
る。
【0099】エンジンEの回転数が所定値以上に上昇す
ると,それに伴い遠心重錘143の重錘部の遠心力が増
大して,その押圧腕部143aが駆動及び被動摩擦板1
39,140群を受圧環141に対して強く押圧して,
駆動及び被動摩擦板139,140間を摩擦係合させる
ので,変速クラッチCc′は自動的にオン状態となり,
クランク軸2の動力をクラッチインナ138から伝動部
材148を介してトルクコンバータT′のポンプ羽根車
50へと伝達する。
【0100】遠心重錘143の駆動及び被動摩擦板13
9,140群に対する押圧力がクラッチばね146のセ
ット荷重を超えると,クラッチアウタ137がクラッチ
ばね146を撓ませながら図17で左方へ変位する。し
かもその後,遠心重錘143は,クラッチアウタ137
に設けられたストッパリング157に受け止められ,そ
れ以上の外方揺動を阻止されるようになっており,駆動
及び被動摩擦板139,140相互の圧接力は,クラッ
チばね146の荷重以上には増加しない。
【0101】クラッチアウタ137は,その外側面に突
出したボス137aを有しており,このボス137a
に,レリーズベアリング149を介してレリーズカム1
50が取付けられる。このレリーズカム150には,右
サイドカバー15aに調節ボルト151を介して取付け
られる固定カム152が対置され,この固定カム152
に付設されたボール153が,レリーズカム150の凹
部150aに係合される。
【0102】またレリーズカム150は,先端に切欠き
154aを有するアーム154を半径方向へ突出させて
おり,その切欠き154aには,変速機Mの切換え操作
に用いるチェンジスピンドル155に固着したクラッチ
アーム156の先端部が係合される。
【0103】而して,四輪バギーVbの走行中,変速機
Mの切換のために,チェンジスピンドル155が回動さ
れると,その回動の前半でクラッチアーム156がレリ
ーズカム150を回動し,それに伴いレリーズカム15
0は,その凹部150aから固定カム152のボール1
53を押し出し,そのときの反力によりレリーズベアリ
ング149を介してクラッチアウタ137を図で左方へ
クラッチばね146の荷重に抗して押動し,受圧環14
1を駆動及び被動摩擦板139,140群から離間させ
る。一方,遠心重錘143は,前述のようにストッパリ
ング157により外方揺動を阻止され,押圧腕部143
aが駆動及び被動摩擦板139,140群に対するそれ
までの押圧位置で止まることになるから,各駆動及び被
動摩擦板139,140間が確実に離間し,変速クラッ
チCc′はオフ状態となる。
【0104】チェンジスピンドル155の後半の回動は
変速機Mの切換えに供され,その切換後,チェンジスピ
ンドル155の戻り回動に伴い,レリーズカム150は
当初の位置に戻され,変速クラッチCc′はクラッチば
ね146の付勢力と,持続される遠心重錘143の遠心
力との協働によりオン状態に戻される。
【0105】トルクコンバータT′においては,前記伝
動部材148とスプライン結合されたポンプ羽根車50
のボス50aがクランク軸2にボールベアリング159
を介して支承され,タービン羽根車51に連なるタービ
ン軸59は,左右のニードルベアリング160及びボー
ルベアリング161を介してステータ軸60上に支承さ
れる。ステータ羽根車52のボス52aは,ボールベア
リング162又はニードルベアリングを介してクランク
軸2に支承されると共に,ステータ軸60にスプライン
結合される。
【0106】ポンプ羽根車50に連なるポンプ延長部7
0には,タービン羽根車51の外側を覆うトルクコンバ
ータサイドカバー163が油密に結合され,このトルク
コンバータサイドカバー163とタービン軸59との間
に,タービン軸59からトルクコンバータサイドカバー
163への逆負荷トルクのみを伝達する一方向クラッチ
64が介裝される。したがって,エンジンブレーキ時,
駆動軸126に加わる逆負荷トルクが変速機M及び1次
減速装置14を経てタービン軸59に伝達されると,上
記一方向クラッチ64が接続状態となって,その逆負荷
トルクをポンプ延長部70からポンプ羽根車50,伝動
部材148へと伝達される。
【0107】逆負荷トルクが伝動部材148に伝達され
ると,変速クラッチCc′では,ねじ機構147の作動
によりクラッチインナ138が図17で左方へ押動さ
れ,そのフランジ138aが,内側の駆動摩擦板139
を残して駆動及び被動摩擦板139,140群を受圧環
141に対して押圧するので,変速クラッチCc′はオ
ン状態となる。したがって,上記逆負荷トルクはクラン
ク軸2に伝達され,良好なエンジンブレーキ効果が得ら
れる。
【0108】クランク軸2には,上流供給油路27a及
び下流供給油路27b間を仕切る隔壁165が設けら
れ,また上流供給油路27aには,これを更に上流側と
下流側とに二分する仕切り栓166が圧入される。
【0109】前記変速クラッチCc′において,支持筒
136内には,その開放面を蓋体167で閉塞して油室
168が画成され,この油室168は通孔169を介し
てクラッチインナ138の内周側に連通される。また油
室169は,クランク軸2に穿設された流入孔170及
び流出孔171を介して上流供給油路27aの上流側及
び下流側に連通される。
【0110】また前記トルクコンバータT′において,
ステータ羽根車52のボス52aの右側に第1小油室1
72,左側に第2小油室173がそれぞれ設けられ,第
1小油室172は,ポンプ羽根車50及びタービン羽根
車51間の油室に連通すると共に,クランク軸2に穿設
された流入孔175を介して上流供給油路27aの下流
側に連通し,第2小油室173は,タービン根車51及
びステータ羽根車52間の油室に連通すると共に,クラ
ンク軸2に穿設された流出孔176を介して下流供給油
路27bに連通する。
【0111】さらに第1及び第2小油室172,173
は,ボス52aを支承する前記ベアリング162の各部
間隙と,ボス52aに設けた通孔174とを介して互い
に連通する。
【0112】而して,エンジンEにより駆動されるオイ
ルポンプ44からオイルが油路27を通して上流供給油
路27aに供給されると,そのオイルは流入孔170か
ら油室168に入り,そこから通孔169と流出孔17
1とに分流し,通孔169を通過したオイルは変速クラ
ッチCc′の摩擦部や摺動部に供給されて,その冷却や
潤滑に寄与する。
【0113】一方,流出孔171を通過したオイルは,
上流供給油路27aの下流側を通り,流入孔175から
第1小油室172を経てポンプ羽根車50及びタービン
羽根車51間の油室を満たし,それから第2小油室17
3及び流出孔176を経て下流供給油路27bへと流れ
ていき,エンジンE各部の潤滑に供される。
【0114】ところで,ステータ羽根車52のボス52
aは,ベアリング162を介してクランク軸2に支承さ
れるので,安定した回転が保障される。しかも,そのベ
アリング162は,ボス52aの両側の第1及び第2小
油室172,173に両端面を臨ませているので,これ
を常に良好な潤滑状態に置くことができる。また第1及
び第2小油室172,173は,ベアリング162及び
通孔174を介して互いに連通しているので,オイルポ
ンプ44からの供給油量が少ない場合には,ポンプ羽根
車50が,その回転により内部に多量のオイルを吸い込
もうとしたとき,上流供給油路27aから第1小油室1
72への供給油量が不足するが,それを補うように第2
小油室173から通孔174及びベアリング162を通
して第1小油室172にオイルが流れるので,トルクコ
ンバータT′内のオイル中での気泡の発生を抑え,伝動
効率の低下を防ぐと共に,ベアリング162を効果的に
潤滑することができる。
【0115】尚,第1及び第2油室172,173間
は,ベアリング162を迂回して設けられる通孔17
4′を介して連通することもでき,またその両方を介し
て連通することもできる。
【0116】またクランク軸2内の上流供給油路27a
及び下流供給油路27bは,流入孔175及び流出孔1
76間で隔壁165により直接的な連通が断たれるの
で,オイルポンプ44から上流供給油路27aに供給さ
れたオイルは,流入孔175及び流出孔176を通して
トルクコンバータT′内を通過することを強制されるこ
とになり,オイルポンプ44が比較的小容量であって
も,トルクコンバータT′の作動オイルの不足を極力防
ぐことができ,小型車両用として有効である。
【0117】その他の構成は,前記第1実施例と略同様
であり,図15〜図17中,第1実施例との対応部分に
は同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0118】本発明は上記実施例に限定されるものでは
なく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可
能である。例えば,変速クラッチCc,Cc′は,エン
ジンE及び1次減速装置14間の伝動経路上,上記実施
例ではエンジンEとトルクコンバータT,T′との間に
配置したが,トルクコンバータT,T′と1次減速装置
14との間に配置することもできる。またトルクコンバ
ータT,T′は,トルク増幅機能を持たない流体継手に
置き換えることもできる。
【0119】
【発明の効果】以上のように本発明の第1の特徴によれ
ば,エンジンのクランク軸と多段変速機の入力軸とを,
該クランク軸に連なるポンプ羽根車及び該入力軸に連な
るタービン羽根車を備えた流体伝動手段を介して連結し
た,小型車両用伝動装置において,前記クランク軸及び
前記入力軸間に,前記流体伝動手段と直列関係にして変
速クラッチを介裝したので,エンジンのアイドリング
時,及び変速操作時には変速クラッチのオフ制御によ
り,クリープ現象の解消,及びトルクショックを伴わな
い軽快な変速を達成することができる。
【0120】また本発明の第2の特徴によれば,前記変
速クラッチを,半クラッチ領域を持たないオン・オフ式
に構成したので,半クラッチによる摩擦部の発熱及び摩
耗を回避して,変速クラッチの耐久性を向上させること
ができる。しかも変速クラッチがオフ状態から半クラッ
チ領域を飛び越えて一気にオン状態へと移行しても,そ
れに伴うトルクショックは,流体伝動手段の滑り作用に
より吸収されるので,乗り心地の改善を図ることができ
る。
【0121】さらに本発明の第3の特徴によれば,前記
変速クラッチをオフ状態にすべく作動する変速クラッチ
アクチュエータを,これがエンジンのアイドリング状態
を検知するアイドリングセンサ,及び前記多段変速機の
変速操作を検知する変速センサの出力信号のそれぞれの
発生時に作動するように構成したので,発進時及び変速
操作時に,変速クラッチのオン・オフ作動を的確に行う
ことができ,該クラッチの耐久性向上に寄与し得る。
【0122】さらにまた本発明の第4の特徴によれば,
入力側に連なる複数枚の駆動摩擦板及び,これら駆動摩
擦板と交互に積層されて出力側に連なる複数枚の被動摩
擦板を備える多板摩擦係合手段と,入力側の回転数の所
定値以上の上昇に応動して前記多板摩擦係合手段をオン
状態にする遠心機構と,この遠心機構の作動中でも,前
記多段変速機の変速時には前記多板摩擦係合手段をオフ
状態にするクラッチオフ機構とで前記変速クラッチを構
成したので,エンジンのアイドリング時には,遠心機構
により多板摩擦係合手段をオフ状態にしておくことによ
り,流体伝動手段のクリープ現象による車両の微速前進
を防ぐことができ,しかも変速時には,クラッチオフ機
構の作動により多板摩擦係合手段をオフ状態にして変速
ショックを確実に無くすることができる。
【0123】さらにまた本発明の第5の特徴によれば,
前記変速クラッチのトルク容量を,前記流体伝動手段の
トルク容量以上に設定したので,全負荷状態でも,変速
クラッチの滑りを防ぎ,その耐久性を確保することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る自動二輪車の側面
図。
【図2】同自動二輪車に搭載されるパワーユニットの縦
断面図。
【図3】図3は上記パワーユニットの伝動装置の拡大縦
断面図。
【図4】図3の4−4線断面図。
【図5】図3の5−5矢視図。
【図6】上記伝動装置の側面図。
【図7】図3の変速クラッチの出口弁を閉弁状態で示す
拡大図。
【図8】同出口弁を開弁状態で示す拡大図。
【図9】図3の9−9線断面図。
【図10】図3の10−10線断面図。
【図11】図3のロックアップクラッチの制御弁を閉弁
状態で示す拡大図。
【図12】同制御弁を開弁状態で示す拡大図。
【図13】本発明の第2実施例を示す,図3に対応した
断面図
【図14】本発明の第3実施例を示す,図3に対応した
断面図
【図15】本発明の第4実施例に係る四輪バギーの側面
図。
【図16】同四輪バギーの,パワーユニット部を縦断し
て示した平面図。
【図17】上記パワーユニットの伝動装置の拡大縦断面
図。
【符号の説明】
Cc,Cc′・・・変速クラッチ E・・・・・・エンジン M・・・・・・多段変速機 T,T′・・・トルクコンバータ 2・・・・・・クランク軸 10・・・・・変速機の入力軸 40・・・・・変速クラッチアクチュエータ 41・・・・・アイドリングセンサ 42・・・・・変速センサ 137〜141・・・多板摩擦係合手段 135,143,144・・・遠心機構 150,152,156・・・クラッチオフ機構

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン(E)のクランク軸(2)と多
    段変速機(M)の入力軸(10)とを,該クランク軸
    (2)に連なるポンプ羽根車(50)及び該入力軸(1
    0)に連なるタービン羽根車(51)を備えた流体伝動
    手段(T,T′)を介して連結した,小型車両用伝動装
    置において,前記クランク軸(2)及び前記入力軸(1
    0)間に,前記流体伝動手段(T,T′)と直列関係に
    して変速クラッチ(Cc,Cc′)を介裝したことを特
    徴とする,小型車両用伝動装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の小型車両用伝動装置にお
    いて,前記変速クラッチ(Cc)を,半クラッチ領域を
    持たないオン・オフ式に構成したことを特徴とする,小
    型車両用伝動装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の小型車両用伝動装置にお
    いて,前記変速クラッチ(Cc)をオフ状態にすべく作
    動する変速クラッチアクチュエータ(40)を,これが
    エンジン(E)のアイドリング状態を検知するアイドリ
    ングセンサ(41),及び前記多段変速機(M)の変速
    操作を検知する変速センサ(42)の出力信号のそれぞ
    れの発生時に作動するように構成したことを特徴とす
    る,小型車両用伝動装置。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の小型車両用伝動装置にお
    いて,入力側に連なる複数枚の駆動摩擦板(139)及
    び,これら駆動摩擦板(139)と交互に積層されて出
    力側に連なる複数枚の被動摩擦板(140)を備える多
    板摩擦係合手段(137〜141)と,入力側の回転数
    の所定値以上の上昇に応動して前記多板摩擦係合手段
    (137〜141)をオン状態にする遠心機構(13
    5,143,144)と,この遠心機構(135,14
    3,144)の作動中でも,前記多段変速機(M)の変
    速時には前記多板摩擦係合手段(135,143,14
    4)をオフ状態にするクラッチオフ機構(150,15
    2,156)とで前記変速クラッチ(Cc′)を構成し
    たことを特徴とする,小型車両用伝動装置。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4の何れかに記載の小型車両
    用伝動装置において,前記変速クラッチ(Cc)のトル
    ク容量を,前記流体伝動手段(T)のトルク容量以上に
    設定したことを特徴とする,小型車両用伝動装置。
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